変性メソポーラス酸化物
【課題】 表面や細孔内の性状が制御された熱安定性に優れた変性メソポ−ラス酸化物を提供すると共に、細孔の均一性が良好で高表面積を有する結晶性の高いメソポ−ラス酸化物を提供することである。
【解決手段】 メソポーラス酸化物(a)を、トリオルガノシラン単位、モノオキシジオルガノシラン単位、ジオキシオルガノシラン単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の構造単位を有する化合物類よりなる群から選ばれる少なくとも1種の変性剤化合物(b)を用いて変性処理することによって得られる変性メソポーラス酸化物(A)を熱処理することにより誘導される高結晶性メソポーラス酸化物(B)。
【解決手段】 メソポーラス酸化物(a)を、トリオルガノシラン単位、モノオキシジオルガノシラン単位、ジオキシオルガノシラン単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の構造単位を有する化合物類よりなる群から選ばれる少なくとも1種の変性剤化合物(b)を用いて変性処理することによって得られる変性メソポーラス酸化物(A)を熱処理することにより誘導される高結晶性メソポーラス酸化物(B)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特殊構造を有する変性剤で処理されてなるメソポーラス酸化物、及び該メソポーラス酸化物から誘導される細孔の均一性が良好で高表面積を有する結晶性の高いメソポーラス酸化物に関する。
【背景技術】
【0002】
メソポーラス酸化物とはナノサイズの細孔を有する酸化物材料である。メソポーラス酸化物は、その特徴である細孔の均一性や高い表面積から、種々の物理化学的な機能を持つ材料として期待されている。
近年、これらメソポーラス酸化物の中で、非シリカ系のメソポーラス酸化物、特にメソポーラス遷移金属酸化物が注目されている。これは、構成材料である遷移金属が種々の触媒として作用することが期待できるためである。
しかし、これまで合成されたメソポーラス遷移金属酸化物は、ほとんどが非晶質または結晶性が低いものであり、メソポーラス酸化物の結晶化度が充分高くなるように高温で結晶化処理をすると、結晶化の進行と共に細孔構造の崩壊が起こるという問題があった。
【0003】
これらの課題に対し、特開2003−321211号公報ではテトラエチルオルトシリケート(TEOS)或いは珪酸ナトリウム溶液を細孔内に充填後80〜100℃でゲル化させ、結晶化熱処理をした後、酸またはアルカリを添加した水により充填物(ゲル化物)を除去して結晶性を向上させたメソ多孔質を形成する方法が提案されている。しかし、この方法では細孔内を選択的にゲル化物で充填するのが困難であり、また結晶化熱処理前に細孔内以外で反応したものだけを選択的に除去することは不可能であった。その為、結晶化熱処理を後の酸またはアルカリを添加した水による充填物(ゲル化物)の除去が不可欠であると共に、生成するメソポーラス酸化物の細孔も一部は維持されるものの多くが崩壊するという課題があった。すなわち、メソポーラス酸化物を結晶化前の細孔、細孔の周期性を維持したまま、細孔壁を高度に結晶化させる技術が切望されていた。
一方、メソポーラス酸化物の表面や細孔内の性状を制御すると、細孔の均一性や高い表面積を利用した、メソポーラス酸化物のより広範な応用展開が期待できる。しかし、今までのところ、それらの性状を有効に制御する方法は提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−321211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、表面や細孔内の性状が制御された熱安定性に優れたメソポーラス酸化物を提供すると共に、細孔の均一性が良好で高表面積を有する結晶性の高いメソポーラス酸化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は以下の通りである。
1.メソポーラス酸化物(a)を、式(1)で表されるトリオルガノシラン単位、式(2)で表されるモノオキシジオルガノシラン単位、式(3)で表されるジオキシオルガノシラン単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の構造単位を有する化合物類よりなる群から選ばれる少なくとも1種の変性剤化合物(b)を用いて変性処理することによって得
られる変性メソポーラス酸化物(A)。
R3 Si− (1)
(式中、Rは各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のフルオロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基、フェニル基、水素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、又は水酸基を表す。)
−(R2 SiO)− (2)
(式中、Rは式(1)で定義した通りである。)
【化1】
(式中、Rは式(1)で定義した通りである。)
【0007】
2.メソポーラス酸化物(a)が、遷移金属を含有するメソポーラス酸化物であることを特徴とする上記1に記載の変性メソポーラス酸化物(A)。
3.該変性剤化合物(b)が、式(4)で表されるSi−H基含有ケイ素化合物(b1)であることを特徴とする上記1または2に記載の変性メソポーラス酸化物(A)。
Hx Ry Qz SiO(4-x-y-z)/2 (4)
(式中、Rは各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のフルオロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基、フェニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、又は水酸基を表す。
また、式中Qは、下記(あ)〜(う)からなる群より選ばれる少なくとも1つの機能性付与基を含有する基である。
(あ)カルボキシル基あるいはその塩、リン酸基あるいはその塩、スルホン酸基あるいはその塩、アミノ基あるいはその塩、ポリオキシアルキレン基からなる群から選ばれた少なくとも1つの親水性基。
(い)エポキシ基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、(環状)酸無水物基、ケト基、カルボキシル基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、水酸基、アミノ基、環状カーボネート基、チオール基、エステル基からなる群から選ばれた少なくとも1つの反応性基。
(う)少なくとも1つの分光増感基。
また、0<x<4、0<y<4、0≦z<4、及び(x+y+z)≦4である。)
【0008】
4.該変性剤化合物(b)が、式(5)又は式(6)で表されるモノSi−H基含有化合物、式(7)で表される両末端Si−H基含有化合物、式(8)で表されるHシリコーン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のSi−H基含有ケイ素化合物(b1)であることを特徴とする上記1または2に記載の変性メソポーラス酸化物(A)。
【化2】
{(式中、R1 は各々独立して直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、
炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のフルオロアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、フェニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、水酸基、もしくは式(9)で表されるシロキシ基から選ばれた1種以上からなる基を表す。
−O−(R2 SiO)n −SiR3 ・・・(9)
(式中、Rは各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のフルオロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基、フェニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、又は水酸基を表す。また、nは整数であり、0≦n≦1000である。)}
H−(R12SiO)m −SiR12−Q ・・・(6)
(式中、R1 は式(5)で定義した通りである。Qは、下記(あ)〜(う)からなる群より選ばれる少なくとも1つの機能性付与基を含有する基である。
(あ)カルボキシル基あるいはその塩、リン酸基あるいはその塩、スルホン酸基あるいはその塩、アミノ基あるいはその塩、ポリオキシアルキレン基からなる群から選ばれた少なくとも1つの親水性基。
(い)エポキシ基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、(環状)酸無水物基、ケト基、カルボキシル基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、水酸基、アミノ基、環状カーボネート基、チオール基、エステル基からなる群から選ばれた少なくとも1つの反応性基。
(う)少なくとも1つの分光増感基。
mは整数であり、0≦m≦1000である。)
H−(R12SiO)m −SiR12−H ・・・(7)
(式中、R1 は式(5)で定義した通りである。mは整数であり、0≦m≦1000である。)
(R1HSiO)a(R12SiO)b(R1QSiO)c(R13SiO1/2 )d・・・(8)
(式中、R1 は式(5)で定義した通りであり、Qは式(6)で定義した通りである。aは1以上の整数であり、b及びcは0又は1以上の整数であり、(a+b+c)≦10000であり、そしてdは0又は2である。但し、(a+b+c)が2以上の整数であり且つd=0の場合、該Hシリコーン化合物は環状シリコーン化合物であり、d=2の場合、該Hシリコーン化合物は鎖状シリコーン化合物である。)
【0009】
5.光触媒活性を有することを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の変性メソポーラス酸化物(A)。
6.Pt、Rh、Ru、Ir、Cu、Sn、Ni、Fe、W、Coよりなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属及び/又は該遷移金属の酸化物が坦持されてなる上記1〜5のいずれかに記載の変性メソポーラス酸化物(A)。
7.上記1〜6のいずれかに記載の変性メソポーラス酸化物(A)を熱処理することにより誘導される高結晶性メソポーラス酸化物(B)。
8.上記1〜6のいずれかに記載の変性メソポーラス酸化物(A)を溶媒で洗浄した後、熱処理することにより誘導される結晶性が向上したメソポーラス酸化物(B)。
9.熱処理の後に酸及び/又はアルカリ処理されてなる上記7または8に記載の高結晶性メソポーラス酸化物(B)。
10. Pt、Rh、Ru、Ir、Cu、Sn、Ni、Fe、W、Coよりなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属及び/又は該遷移金属の酸化物が坦持されてなる上記7〜9のいずれかに記載の高結晶性メソポーラス酸化物(B)。
【発明の効果】
【0010】
本発明の変性メソポーラス酸化物は種々の機能を有すると共に、熱安定性に優れるため、結晶加熱処理により細孔構造やその均一性を保持したまま容易に結晶性が向上した高結晶性メソポーラス酸化物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】参考例1で得られたメソポーラス酸化ニオブのX線回折パターンを示す。
【図2】参考例1で得られたメソポーラス酸化ニオブの窒素吸着等温線を示す。
【図3】実施例1で得られた変性メソポーラス酸化ニオブの窒素吸着等温線を示す。
【図4】実施例1で得られたTHF洗浄後の変性メソポーラス酸化ニオブの窒素吸着等温線を示す。
【図5】実施例1で得られた高結晶性メソポーラス酸化ニオブのX線回折パターンを示す。
【図6】実施例1で得られた高結晶性メソポーラス酸化ニオブの窒素吸着等温線を示す。
【図7】参考例2で得られたメソポーラス酸化チタンのX線回折パターンを示す。
【図8】参考例2で得られたメソポーラス酸化チタンの窒素吸着等温線を示す。
【図9】実施例2で得られた高結晶性メソポーラス酸化チタンのX線回折パターンを示す。
【図10】実施例2で得られた高結晶性メソポーラス酸化チタンの窒素吸着等温線を示す。
【図11】参考例3で得られたメソポーラスNbTa複合酸化物のX線回折パターンを示す。
【図12】参考例3で得られたメソポーラスNbTa複合酸化物の窒素吸着等温線を示す。
【図13】実施例4で得られた高結晶性メソポーラスNbTa複合酸化物のX線回折パターンを示す。
【図14】実施例4で得られた高結晶性メソポーラスNbTa複合酸化物の窒素吸着等温線を示す。
【図15】実施例4で得られたアルカリ処理後の高結晶性メソポーラスNbTa複合酸化物のX線回折パターンを示す。
【図16】実施例4で得られたアルカリ処理後の高結晶性メソポーラスNbTa複合酸化物の窒素吸着等温線を示す。
【図17】比較例1で得られた酸化ニオブ粉体のX線回折パターンを示す。
【図18】比較例1で得られた酸化ニオブ粉体の窒素吸着等温線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の変性メソポーラス酸化物(A)は、メソポーラス酸化物(a)を後述する少なくとも1種の変性剤化合物(b)を用いて変性処理することによって得られ、種々の機能を有すると共に熱安定性に優れることを特徴とする。
本発明によると、メソポーラス酸化物(a)の細孔内を、被覆率を制御して変性剤化合物(b)で被覆したり、変性剤化合物(b)で細孔内を充填したりすることができる。さらにメソポーラス酸化物(a)と相互作用をしていない変性剤化合物(b)およびその誘導体(変性剤化合物と水等から誘導される化合物)は溶媒洗浄や蒸留等によって容易に除去できる。即ち、本発明で提供される変性メソポーラス酸化物(A)は、細孔内や表面の変性程度が目的に応じて高度に制御されたものである。
本発明において変性とは、後述する少なくとも1種の変性剤化合物(b)を、メソポーラス酸化物(a)の表面(細孔表面及び粒子表面)に固定化することを意味する。上記の変性剤化合物のメソポーラス酸化物(a)表面への固定化は、ファン・デル・ワールス力(物理吸着)、クーロン力または化学結合によるものである。特に、化学結合を利用した変性は、変性剤化合物(b)とメソポーラス酸化物(a)との相互作用が強く、変性剤化合物がメソポーラス酸化物(a)の表面に強固に固定化されるので好ましい。
【0013】
本発明において好適に使用できるメソポーラス酸化物(a)は、公知の方法、例えば有機溶媒に界面活性剤を溶解した溶液に、メソポーラス酸化物(a)の前駆体を加えて溶解させ、該前駆体を加水分解して高分子量化および自己組織化したゾル溶液とし、前記ゾル溶液から組織の安定化したゲルを得た後、該ゲルを好ましくは酸素が存在する雰囲気中において、好ましくは300℃〜700℃で焼成することにより得ることができる。
ここで、上記有機溶媒としては、例えばイソプロパノール、ブタノール、エタノール、メタノール、ヘキサノール、エチレングリコール、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類、トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素等のハロゲン化合物類、ジメチルスルホキシド、ニトロベンゼン等やこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの中で、界面活性剤及び金属酸化物の前駆体の溶解性からアルコール類が特に好ましい。
【0014】
また、メソポーラス酸化物(a)を得るのに好適に使用できる上記界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤及びイオン性界面活性剤のいずれを用いても良いが、メソポーラス酸化物の細孔分布制御や界面活性剤の除去回収性の点などから非イオン性界面活性剤が好適に使用される。
上記の非イオン性界面活性剤としては特に制限がなく、エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型のものを用いることができるが、メソポーラス酸化物合成時の構造安定性の点から、エーテル型、含窒素型のものが好ましい。エーテル型の非イオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、単一鎖長ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。含窒素型の非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどが挙げられる。更に具体的に旭電化工業株式会社の非イオン性界面活性剤で例を挙げると、アデカプルロニック(L・p・Fシリーズ)、アデカプルロニック(TRシリーズ)、アデカトール(SOシリーズ)、アデカトール(LOシリーズ)、アデカトール(NP・OPL・OA・LA・SP・PCシリーズ)、アデカPEGシリーズ等を挙げることができる。
【0015】
また、上記イオン性界面活性剤としては、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウムブロミド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルピリジニウムクロリド、ヘキサデシルピリジニウムブロミド、メシチレンなどが挙げられる。また、カルボキシベタイン、アミノカルボン酸塩、イミダゾリヌウムベタイン等の両性界面活性剤も挙げることができる。
【0016】
本発明において、メソポーラス酸化物(a)を得るのに好適に使用できる酸化物の前駆体としては、金属及び/又はSiの塩やアルコキシド、キレート化合物等やそれらの混合物を挙げることができる。ここで、メソポーラス酸化物(a)の前駆体として金属を含有するものを選択すると、生成するメソポーラス酸化物(a)は種々の触媒作用等が発現できるため好ましい。該金属としては特に制限はないが遷移金属を好適に用いることができ
る。本発明に最も好適に用いる事ができるメソポーラス酸化物(a)の前駆体としては、Ti、Ta、Nb、Zr、W、Mg、Al、La等の塩化物及び/又はアルコキシドを挙げることができる。
上述したメソポーラス酸化物(a)の形状は任意のものであることができるが、1次粒子径が1nm〜100μmの粒子であることが好ましい。また、細孔の大きさは0.1〜100nm、好ましくは1〜50nmである。
また、上記メソポーラス酸化物(a)として光触媒活性を有するものは、環境浄化や防汚、防曇等の分野へ応用が可能となり特に好ましい。ここで、光触媒活性とは、光照射によって酸化、還元反応を起こすことを言う。これらの光触媒活性は、例えば材料表面の光照射時における色素等の有機物の分解性を測定することにより判定することができる。光触媒活性を有する表面は、優れた汚染有機物質の分解活性や耐汚染性を発現する。
【0017】
本発明において、変性メソポーラス酸化物(A)を得るのに用いられる少なくとも1種の変性剤化合物(b)は、式(1)で表されるトリオルガノシラン単位、式(2)で表されるモノオキシジオルガノシラン単位、式(3)で表されるジオキシオルガノシラン単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の構造単位を有する化合物類よりなる群から選ばれる。
R3 Si− (1)
(式中、Rは各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のフルオロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基、フェニル基、水素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、又は水酸基を表す。)
−(R2 SiO)− (2)
(式中、Rは式(1)で定義した通りである。)
【化3】
(式中、Rは式(1)で定義した通りである。)
【0018】
本発明において、メソポーラス酸化物(a)の変性剤化合物(b)による変性処理は、水及び/又は有機溶媒の存在、あるいは非存在下において、前述したメソポーラス酸化物(a)と、同じく前述した変性剤化合物(b)を好ましくは質量比(a)/(b)=0.0001〜10000、より好ましくは(a)/(b)=0.001〜1000の割合で混合し、好ましくは0〜300℃、より好ましくは10〜150℃にて加熱することにより得ることができる。この際、変性剤化合物(b)の状態は液体、気体、固体、水及び/又は有機溶媒に溶解または分散した状態のいずれであっても良い。また、変性処理後に未反応の変性剤化合物(b)は、必要に応じ、蒸留や濾過、抽出等によって除去することもできる。
【0019】
本発明の上記変性処理に於いて、メソポーラス酸化物(a)と変性剤化合物(b)の比が0.0001より小さいと、反応しない変性剤化合物(b)が多くなり変性処理が非効率となり好ましくない。また、メソポーラス酸化物(a)と変性剤化合物(b)の比が10000より大きくなると、変性処理による効果が十分に発現できないので好ましくない。
ここで上記変性処理を行う場合、好ましく使用できる有機溶媒としては、例えばトルエンやキシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭
化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類、エチレングリコール、ブチルセロソルブ、イソプロパノール、n−ブタノール、エタノール、メタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素等のハロゲン化合物類、ジメチルスルホキシド、ニトロベンゼン等やこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0020】
本発明の変性メソポーラス酸化物(A)を得るのに使用される上記変性剤化合物(b)としては、例えばSi−H基、加水分解性シリル基(アルコキシシリル基、ヒドロキシシリル基、ハロゲン化シリル基、アセトキシシリル基、アミノキシシリル基等)、エポキシ基、アセトアセチル基、チオール基、酸無水物基等のメソポーラス酸化物(a)と反応性を有するケイ素化合物等を挙げることができる。
また、上記変性剤化合物(b)の他の例としては、例えばメソポーラス酸化物(a)とファン・デル・ワールス力、クーロン力等により相互作用する構造、例えばポリオキシアルキレン基、スルホン酸基、カルボキシル基等を有するケイ素化合物等を挙げることができる。
【0021】
本発明において、上記変性剤化合物(b)として、下記式(4)で表されるSi−H基含有ケイ素化合物(b1)を用いると、非常に効率よくメソポーラス酸化物(a)表面を変性することができるため好ましい。
Hx Ry Qz SiO(4-x-y-z)/2 (4)
(式中、Rは各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のフルオロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基、フェニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、又は水酸基を表す。
また、式中Qは、下記(あ)〜(う)からなる群より選ばれる少なくとも1つの機能性付与基を含有する基である。
(あ)カルボキシル基あるいはその塩、リン酸基あるいはその塩、スルホン酸基あるいはその塩、アミノ基あるいはその塩、ポリオキシアルキレン基からなる群から選ばれた少なくとも1つの親水性基。
(い)エポキシ基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、(環状)酸無水物基、ケト基、カルボキシル基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、水酸基、アミノ基、環状カーボネート基、チオール基、エステル基からなる群から選ばれた少なくとも1つの反応性基。
(う)少なくとも1つの分光増感基。
また、0<x<4、0<y<4、0≦z<4、及び(x+y+z)≦4である。)
【0022】
本発明において、上述したメソポーラス酸化物(a)の上記式(4)で表されるSi−H基含有ケイ素化合物(b1)による変性処理は、水及び/又は有機溶媒の存在、あるいは非存在下において、化合物(a)と該Si−H基含有ケイ素化合物(b1)を好ましくは質量比(a)/(b1)=0.0001〜10000、より好ましくは(a)/(b1)=0.001〜1000の割合で、好ましくは0〜200℃にて混合することにより実施できる。この際の混合は、液相、気相、固相のいずれの状態であっても良い。また、上記変性処理による化合物(a)とSi−H基含有ケイ素化合物(b1)との反応は、反応に伴って発生する水素ガス量を測定することにより定量することができる。
【0023】
本発明において、上記メソポーラス酸化物(a)のSi−H基含有ケイ素化合物(b1)による変性処理は、Si−H基に対する脱水素縮合触媒を使用して好ましくは0〜150℃で実施することもできる。
この場合、あらかじめ光還元法等の方法で脱水素縮合触媒をメソポーラス酸化物(a)
に固定し、上記Si−H基含有ケイ素化合物(b1)で変性処理しても良いし、脱水素縮合触媒の存在下に上記Si−H基含有化合物ケイ素(b1)でメソポーラス酸化物(a)を変性処理しても良い。
ここでSi−H基に対する脱水素縮合触媒とは、Si−H基とメソポーラス酸化物(a)の表面に存在する水酸基、さらには水等との脱水素縮合反応を加速する物質を意味し、該脱水素縮合触媒を使用することにより温和な条件でメソポーラス酸化物(a)の表面を変性することが可能となる。
【0024】
該脱水素縮合触媒としては、例えば白金族触媒、すなわちルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金の単体及びその化合物や、銀、鉄、銅、コバルト、ニッケル、錫等の単体及びその化合物が挙げられる。これらの中で白金族触媒が好ましく、白金の単体及びその化合物が特に好ましい。
ここで、上記白金の化合物としては、例えば塩化白金(II)、テトラクロロ白金酸(II)、塩化白金(IV)、ヘキサクロロ白金酸(IV)、ヘキサクロロ白金(IV)アンモニウム、ヘキサクロロ白金(IV)カリウム、水酸化白金(II)、二酸化白金(IV)、ジクロロ−ジシクロペンタジエニル−白金(II)、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−ホスフィン錯体、白金−オレフィン錯体等を使用することができる。
【0025】
また、本発明に好適に使用できるSi−H基含有ケイ素化合物(b1)としては、例えば式(5)や式(6)で表されるモノSi−H基含有化合物、式(7)で表される両末端Si−H基含有化合物、式(8)で表されるHシリコーン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のSi−H基含有ケイ素化合物を挙げることができる。
【化4】
{(式中、R1は各々独立して直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のフルオロアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、フェニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、水酸基、もしくは式(9)で表されるシロキシ基から選ばれた1種以上からなる基を表す。
−O−(R2 SiO)n −SiR3 ・・・(9)
(式中、Rは各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のフルオロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基、フェニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、又は水酸基を表す。また、nは整数であり、0≦n≦1000である。)}
H−(R12SiO)m −SiR12−Q ・・・(6)
(式中、R1 は式(5)で定義した通りである。Qは、下記(あ)〜(う)からなる群より選ばれる少なくとも1つの機能性付与基を含有する基である。
(あ)カルボキシル基あるいはその塩、リン酸基あるいはその塩、スルホン酸基あるいはその塩、アミノ基あるいはその塩、ポリオキシアルキレン基からなる群から選ばれた少なくとも1つの親水性基。
(い)エポキシ基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、(環状)酸無水物基、ケト基、カルボキシル基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、水酸基、アミノ基、環状カーボネート基、チオール基、エステル基からなる群から選ばれた少なくとも1つの反応性基。
(う)少なくとも1つの分光増感基。
mは整数であり、0≦m≦1000である。)
H−(R12SiO)m −SiR12−H ・・・(7)
(式中、R1 は式(5)で定義した通りである。mは整数であり、0≦m≦1000である。)
(R1HSiO)a(R12SiO)b(R1 QSiO)c(R13SiO1/2)d・・・(8)
(式中、R1 は式(5)で定義した通りであり、Qは式(6)で定義した通りである。aは1以上の整数であり、b及びcは0又は1以上の整数であり、(a+b+c)≦10000であり、そしてdは0又は2である。但し、(a+b+c)が2以上の整数であり且つd=0の場合、該Hシリコーン化合物は環状シリコーン化合物であり、d=2の場合、該Hシリコーン化合物は鎖状シリコーン化合物である。)
【0026】
本発明において、上記式(5)で表されるモノSi−H基含有化合物の具体例としては、例えばビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、ビス(トリメチルシロキシ)エチルシラン、ビス(トリメチルシロキシ)n−プロピルシラン、ビス(トリメチルシロキシ)i−プロピルシラン、ビス(トリメチルシロキシ)n−ブチルシラン、ビス(トリメチルシロキシ)n−ヘキシルシラン、ビス(トリメチルシロキシ)シクロヘキシルシラン、ビス(トリメチルシロキシ)フェニルシラン、ビス(トリエチルシロキシ)メチルシラン、ビス(トリエチルシロキシ)エチルシラン、トリス(トリメチルシロキシ)シラン、トリス(トリエチルシロキシ)シラン、ペンタメチルジシロキサン、1,1,1,3,3,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン、1,1,1,3,3,5,5,6,6−ノナメチルテトラシロキサン、トリメチルシラン、エチルジメチルシラン、メチルジエチルシラン、トリエチルシラン、フェニルジメチルシラン、ジフェニルメチルシラン、シクロヘキシルジメチルシラン、t−ブチルジメチルシラン、ジ−t−ブチルメチルシラン、n−オクタデシルジメチルシラン、トリ−n−プロピルシラン、トリ−i−プロピルシラン、トリ−i−ブチルシラン、トリ−n−ヘキシルシラン、トリフェニルシラン、アリルジメチルシラン、1−アリル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、クロロメチルジメチルシラン、7−オクテニルジメチルシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、フェニルメチルメトキシシラン、ジフェニルメトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリス(イソプロポキシ)シラン等を挙げることができる。
【0027】
これらのモノSi−H基含有化合物の中で、メソポーラス酸化物(a)の変性処理時におけるSi−H基の反応性(脱水素縮合反応)の良さから、ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(トリメチルシロキシ)シラン、ペンタメチルジシロキサン等の分子中にシロキシ基を有するものや、ジメチルメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、ジフェニルメトキシシラン、トリエトキシシラン等の分子中にアルコキシ基を有するものが好ましい。上記分子中にシロキシ基を有するモノSi−H基含有化合物は、メソポーラス酸化物(a)の表面との反応選択性に優れるため、特に好ましい。
【0028】
本発明において、上記式(7)で表される両末端Si−H基含有化合物の具体例としては、例えば1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン等の数平均分子量50000以下のH末端ポリジメチルシロキサン類や、1,1,3,3−テトラエチルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタエチルテトラシロキサン等の数平均分子量50000以下のH末端ポリジエチルシロキサン類や、1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサフェニルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタフェニルテトラシロキサン等の数平均分子量50000以下のH末端ポリジフェニルシロキサン類や、1,3−ジフェニル−1,3−ジメチル−ジシロキサン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニル−トリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニル−テトラシロキサン等の数平均分子量50000以下のH末端ポリフェニルメチルシロキサン類や、ジメチルシラン、エチルメチルシラン、ジエチルシラン、フェニルメチルシラン、ジフェニルシラン、シクロヘキシルメチルシラン、t−ブチルメチルシラン、ジ−t−ブチルシラン、n−オクタデシルメチルシラン、アリルメチルシラン等を例示することができる。
【0029】
本発明に用いる上記式(7)で表される両末端Si−H基含有化合物としては、メソポーラス酸化物(a)の変性処理時におけるSi−H基の反応性(脱水素縮合反応)の良さから、好ましくは数平均分子量が10000以下、より好ましくは2000以下、さらに好ましくは1000以下の両末端Si−H基含有化合物が好適に使用できる。
本発明に用いることができる上記式(8)で表されるHシリコーン化合物としては、変性処理時におけるメソポーラス酸化物(a)の凝集防止の点より、数平均分子量が、好ましくは10000以下、より好ましくは5000以下、さらに好ましくは2000以下のHシリコーン化合物が好適に使用できる。
また、上記一般式(4)で表されるSi−H基含有ケイ素化合物(b1)として、機能性付与基含有基(Q)を有するもの(式(6)、式(8)であってcが1以上の正数のもの等)を選択すると、本発明で得られる変性メソポーラス酸化物(A)に種々の機能を付与できるため好ましい。
【0030】
ここで機能性付与基含有基(Q)は下式(10)で表される基であることが好ましい。
−Z−(W)a ・・・(10)
(式中、Zは分子量14〜50,000の(a−1)価の有機基を表し、Wは上記式(4)中の機能性付与基(あ)〜(う)からなる群から選ばれる少なくとも1つであり、aは1〜20の整数である。)
例えば機能性付与基含有基(Q)として、カルボキシル基あるいはその塩を含む1価の基、リン酸基あるいはその塩を含む1価の基、スルホン酸基あるいはその塩を含む1価の基、アミノ基あるいはその塩を含む1価の基、ポリオキシアルキレン基からなる群から選ばれた少なくとも1つの親水性基[式(4)中の(あ)]を有するものを選択すると、得られる変性メソポーラス酸化物(A)の水に対する分散安定性が非常に良好なものとなる。
【0031】
また、例えば機能性付与基含有基(Q)として、エポキシ基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、環状酸無水物基、非環状酸無水物基、ケト基、カルボキシル基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、水酸基、アミノ基、環状カーボネート基、チオール基、エステル基からなる群から選ばれた少なくとも1つの反応性基[式(4)中の(い)]を含有する基を選択すると本発明の変性メソポーラス酸化物(A)は架橋性を有する。
また、例えば機能性付与基含有基(Q)として、分光増感基を有するものを選択すると、本発明の変性メソポーラス酸化物(A)が光触媒活性を有する場合は、可視光領域及び/又は赤外光領域の光の照射による光触媒活性や光電変換機能を向上させることができる。
ここで、分光増感基とは、可視光領域及び/又は赤外光領域に吸収を持つ種々の金属錯体や有機色素(即ち、増感色素)に由来する基を意味する。
増感色素としては、例えばキサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、ローダシアニン系色素、スチリル系色素、ヘミシアニン系色素、メロシアニン系色素、フタロシアニン系色素(金属錯体を含む)、ポルフィリン系色素(金属錯体を含む)、トリフェニルメタン系色素、ペリレン系色素、コロネン系色素、アゾ系色素、ニトロフェノール系色素、さらには例えば特開平1−220380号公報や特許出
願公表平5−504023号公報に記載のルテニウム、オスミウム、鉄、亜鉛の錯体や、他にルテニウムレッド等の金属錯体を挙げることができる。
【0032】
これらの増感色素の中で、400nm以上の波長領域で吸収を持ち、かつ最低空軌道のエネルギー準位(励起状態の酸化還元電位)がメソポーラス酸化物(a)の伝導帯のエネルギー準位より高いという特徴を有するものが好ましい。このような増感色素の特徴は、赤外・可視・紫外領域における光の吸収スペクトルの測定、電気化学的方法による酸化還元電位の測定( 例えばT.Tani, Photogr. Sci. Eng., 14, 72 (1970); R.W.Berriman et al., ibid., 17. 235 (1973); P.B.Gilman Jr., ibid., 18, 475 (1974)等) 、分子軌道法を用いたエネルギー準位の算定( 例えばT.Tani et al., Photogr. Sci. Eng., 11, 129 (1967); D.M.Sturmer et al., ibid., 17. 146 (1973); ibid., 18, 49 (1974); R.G.Selby et al., J. Opt. Soc. Am., 33, 1 (1970)等) 、更には光触媒と分光増感色素によって作成したGratzel 型湿式太陽電池の光照射による起電力の有無や効率等によって確認することができる。
上記の特徴を有する増感色素の例としては、9−フェニルキサンテン骨格を有する化合物、2,2−ビピリジン誘導体を配位子として含むルテニウム錯体、ペリレン骨格を有する化合物、フタロシアニン系金属錯体、ポルフィリン系金属錯体等を挙げることができる。
【0033】
本発明において、上述した機能性付与基含有基(Q)を有するSi−H基含有ケイ素化合物を得る方法としては、
(Q−1):下記一般式(11)で表されるSi−H基含有化合物と、機能性付与基[上記式(4)中の(あ)〜(う)]を有する炭素−炭素不飽和結合化合物をヒドロシリル化反応させる方法。
(Q−2):下記一般式(11)で表されるSi−H基含有ケイ素化合物と、反応性基[上記式(4)中の(い)]を有する炭素−炭素不飽和結合化合物をヒドロシリル化反応させて反応性基を有するSi−H基含有ケイ素化合物を得た後、該反応性基と反応性を有する機能性付与基含有化合物を反応させる方法が挙げられる。
H(x+z) Ry SiO(4-X-Y-Z)/2 (11)
(式中、Rは各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のフルオロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜30のアルケニル基、フェニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、水酸基を表す。 また、0<(x+z)<4、0<y<4、及び(x+y+z)≦4である。)
【0034】
まず、機能性付与基(Q)を有するSi−H基含有ケイ素化合物を得る方法として、上述した(Q−1)の方法[以下(Q−1)−方法]について説明する。 (Q−1)−方法において、上記式(11)で表されるSi−H基含有ケイ素化合物に、機能性付与基として親水性基を導入するのに用いる炭素−炭素不飽和結合化合物としては、カルボキシル基あるいはその塩、リン酸基あるいはその塩、スルホン酸基あるいはその塩、アミノ基あるいはその塩、ポリオキシアルキレン基、環状酸無水物からなる群から選ばれた少なくとも1つの親水性基を有するオレフィン類、アリルエーテル類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン誘導体等が挙げられる。
上記親水性基を有する炭素−炭素不飽和結合化合物の好ましい具体例として、例えば式(12)で表されるポリオキシエチレン基含有アリルエーテルや、さらには5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、アリルコハク酸無水物等を挙げることができる。
CH2 =CHCH2 O(CH2 CH2 O)b R5 (12)
(式中、bは1〜1000の整数を表す。R5 は、水素原子或いは直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基を表す。)
【0035】
また、上記式(11)で表されるSi−H基含有ケイ素化合物に反応性基を導入するのに用いる炭素−炭素不飽和結合化合物としては、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、(環状)酸無水物基、ケト基、カルボキシル基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、水酸基、アミノ基、環状カーボネート基、エステル基からなる群から選ばれた少なくとも1種の反応性基を有するオレフィン類、アリルエーテル類、アリルエステル類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン誘導体等が挙げられる。
上記反応性基を有する炭素−炭素不飽和結合化合物の好ましい具体例として、例えばアリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アリル、ジアリルエーテル、ジアリルフタレート、(メタ)アクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、エチレングリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、5−ヘキセン−2−オン、アリルイソシアネート、アリルアルコール、エチレングリコールモノアリルエーテル、アリルアミン、アリルイソチオシアネート、アリルセミカルバジド、(メタ)アクリル酸ヒドラジド、4−アリルオキシメチル−2−オキソ−1,3−ジオキソラン等を挙げることができる。
【0036】
また、上記式(11)で表されるSi−H基含有ケイ素化合物に分光増感基を導入するのに用いる炭素−炭素不飽和結合化合物としては、前述した分光増感色素を有するオレフィン類、アリルエーテル類、アリルエステル類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン誘導体等が挙げられる。これらは、例えば前述した反応性基を有する炭素−炭素不飽和結合化合物と、該反応性基と反応性を有する分光増感色素との反応によって容易に得ることができる。
例えば、反応性基を有する炭素−炭素不飽和結合化合物の反応性基がエポキシ基、(環状)酸無水物、イソシアネート基、イソチオシアネート基、環状カーボネート基、エステル基、ケト基、(メタ)アクリロイル基の場合は、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、ヒドラジン残基、(メタ)アクリロイル基からなる群から選ばれた少なくとも1つの官能基を有する分光増感色素であり、逆に反応性基を有する炭素−炭素不飽和結合化合物の反応性基がアミノ基、カルボキシル基、水酸基、ヒドラジン残基、(メタ)アクリロイル基の場合は、エポキシ基、(環状)酸無水物、イソシアネート基、イソチオシアネート基、環状カーボネート基、エステル基、ケト基、(メタ)アクリロイル基からなる群から選ばれた少なくとも1つの官能基を有する分光増感色素が挙げられる。
上記反応性基を有する炭素−炭素不飽和結合化合物とそれに反応性を有する分光増感色素との反応は、各々の反応性基の種類に応じた反応温度、反応圧力、溶媒等の反応条件を選択して実施できる。その際、分光増感色素の安定性の点から、反応温度としては300℃以下が好ましく、150℃以下0℃以上がさらに好ましい。
【0037】
(Q−1)−方法において、上記炭素−炭素不飽和結合化合物と上記式(11)で表されるSi−H基含有ケイ素化合物とのヒドロシリル化反応は、好ましくは触媒の存在下、有機溶媒の存在下あるいは非存在下において0〜200℃で炭素−炭素不飽和結合化合物(C)と式(11)で表されるSi−H基含有ケイ素化合物(b1’)を、重量比(C)/(b1’)=0.01以上、より好ましくは(C)/(b1’)=0.01〜2、さらに好ましくは(C)/(b1’)=0.01〜1で接触させることにより行うことができる。
上記ヒドロシリル化反応の触媒としては、白金族触媒、すなわちルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金の化合物が適しているが、特に白金の化合物とパラジウムの化合物が好適である。白金の化合物としては、例えば塩化白金(II)、テトラクロロ白金酸(II)、塩化白金(IV)、ヘキサクロロ白金酸(IV)、ヘキサクロロ白金(IV)アンモニウム、ヘキサクロロ白金(IV)カリウム、水酸化白金(II)、二酸化白金(IV)、ジクロロ−ジシクロペンタジエニル−白金(II)、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−ホスフィン錯体、白金−オレフィン錯体や白金の単体、
アルミナやシリカや活性炭に固体白金を担持させたものが挙げられる。パラジウムの化合物としては、例えば塩化パラジウム(II)、塩化テトラアンミンパラジウム(II)酸アンモニウム、酸化パラジウム(II)等が挙げられる。
また、ヒドロシリル化反応に使用できる有機溶媒としては、例えばトルエンやキシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素等のハロゲン化合物類、ジメチルスルホキシド、ニトロベンゼン等やこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0038】
次に、機能性付与基を有するSi−H基含有ケイ素化合物を得る方法として、上述した(Q−2)の方法[以下(Q−2)−方法]について説明する。
(Q−2)−方法において使用される反応性基を有する炭素−炭素不飽和結合化合物としては、(Q−1)−方法において述べたものを挙げることができる。また、上述した式(11)で表されるSi−H基含有ケイ素化合物と該反応性基を有する炭素−炭素不飽和結合化合物とのヒドロシリル化反応は、(Q−1)−方法で述べたヒドロシリル化反応と同じ条件で実施することができる。
(Q−2)−方法によると、上記ヒドロシリル化反応によって反応性基を有するSi−H基含有ケイ素化合物を得ることができる。この反応性基を有するSi−H基含有ケイ素化合物とそれに反応性を有する機能性付与基含有化合物との反応は、各々の反応性基の種類に応じた反応温度、反応圧力、溶媒等の反応条件を選択して実施できる。その際、Si−H基の安定性の点から、反応温度としては300℃以下が好ましく、150℃以下0℃以上がさらに好ましい。
【0039】
本発明によって得られた上記変性メソポーラス酸化物(A)は、有機溶媒分散性や樹脂相溶性の発現、架橋性能の発現等、様々な機能が付与され、構造熱安定性が向上したメソポーラス酸化物である。ここで、構造熱安定性とは、加熱時、特に結晶化熱処理時における細孔構造の安定性を意味する。
本発明の変性メソポーラス酸化物(A)は、構造熱安定性に優れるため、熱処理によって変性前のメソポーラス酸化物(a)の細孔構造を高度に維持した高結晶性メソポーラス酸化物(B)を得ることができる。この際の熱処理条件としては、メソポーラス酸化物(a)が結晶化する条件であれば制限はないが、例えば空気中、真空中、窒素気流中、アルゴン気流中、ヘリウム気流中等の雰囲気下で、300〜2000℃、好ましくは400〜1500℃において、好ましくは1分以上、更に好ましくは1〜100時間保持することが好ましい。
また、変性メソポーラス酸化物(A)を熱処理する前に溶媒で洗浄すると、未反応の変性剤化合物(b)が除去できるため生成する高結晶性メソポーラス酸化物(B)の細孔径が変性前のメソポーラス酸化物(a)の状態をより高度に維持でき、高表面積となるため好ましい。該溶媒としては、メソポーラス酸化物(a)を変性剤化合物(b)で変性処理する際に好適に使用できる、上述した水及び/または有機溶媒を例示することができる。
【0040】
本発明において、上記メソポーラス酸化物の細孔構造維持は変性処理前後および熱処理前後における窒素吸着等温線の測定やTEM観察等によって評価する事ができる。また、メソポーラス酸化物の結晶性は、例えばX線回折(XRD)等により通常の方法で評価することができる。
本発明において、変性メソポーラス酸化物(A)の熱処理によって得られる高結晶性メソポーラス酸化物(B)は、酸またはアルカリ処理、またはそれらの組み合わせ処理により変性前のメソポーラス酸化物(a)の細孔径の状態をより高度に維持することができる。
上記酸としては、例えば塩酸等のハロゲン化水素、硫酸、硝酸、トリクロル酢酸等のカルボン酸、p−トルエンスルホン酸等を挙げることをできる。
また、上記アルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、ナトリウムメチラート等のナトリウムアルコキシド、カリウムメチラート等のカリウムアルコキシド等を挙げることができる。
上記高結晶性メソポーラス酸化物(B)の酸またはアルカリ処理は、水及び/または親水性の溶媒(アルコール類、エーテル類、ケトン類、アミド類、ジメチルスルホキシド等)中で実施することが好ましい。
【0041】
本発明において、変性メソポーラス酸化物(A)の熱処理によって得られる高結晶性メソポーラス酸化物(B)は、変性メソポーラス酸化物(A)表面に存在する上記変性剤化合物(b)に由来する珪素原子に結合した有機基(R)の少なくとも一部(好ましくは5モル%以上、更に好ましくは50モル%以上)が水酸基及び/又は該水酸基の脱水縮合反応で生成するシロキサン結合に変換された状態である。
本発明の変性メソポーラス酸化物(A)または高結晶性メソポーラス酸化物(B)において、半導体特性を有するものはバンドギャップエネルギーよりも高いエネルギーの光を照射することにより親水性及び/又は光触媒活性、さらには光電変換機能を示す。
【0042】
また、光触媒活性を有する変性メソポーラス酸化物(A)または高結晶性メソポーラス酸化物(B)は、Pt、Rh、Ru、Ir、Cu、Sn、Ni、Fe、W、Coよりなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属及び/又は該遷移金属の酸化物を担持することにより光触媒活性が向上させることが可能である。これら遷移金属及び/又は該遷移金属の酸化物の担持方法としては、例えば担持する遷移金属及び/又は該遷移金属の酸化物の前駆体を変性メソポーラス酸化物(A)または高結晶性メソポーラス酸化物(B)に共存させて加熱する方法(焼成法)や光を照射する方法(光電着法)、及びそれらの組み合わせ等を挙げる事ができる。
本発明において、上記バンドギャップエネルギーよりも高いエネルギーの光の光源としては、太陽光や室内照明灯等の一般住宅環境下で得られる光の他、ブラックライト、キセノンランプ、水銀灯、LED等の光が利用できる。
本発明の変性メソポーラス酸化物(A)または高結晶性メソポーラス酸化物(B)であって、有機物分解等の光触媒活性を有するものは、抗菌、防汚、防臭、NOx分解等の様々な機能を発現し、大気、水等の環境浄化等の用途に使用することができるため非常に好ましい。
【実施例】
【0043】
以下の実施例、参考例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
実施例、参考例及び比較例中において、各種の物性は下記の方法で測定した。
1.X線回折(XRD)
X線回折(XRD)はRINT−2100(Rigaku(株)製)を用いて測定した。
2.窒素吸着等温線
窒素吸着等温線はSA3100(Coulter 社製)を用いて測定した。窒素吸着量(Y軸/容積(mL/g))の急激に増加する相対圧(P/P0)(X軸)領域と細孔径とが対応するする。立ち上がりの程度は細孔容積と関連する。
3.TEM観察
TEM観察は、JEM2010F(JEOL(株)製)を用い、加速電圧200kVで実施した。
・装置:日立製HF2000型
4.赤外線吸収スペクトル
赤外線吸収スペクトルは、FT/IR−410(日本分光(株)製)を用い、デュラサ
ンプラーIR(エス.ティ.ジャパン(株))で拡散反射スペクトルとして測定した。
【0044】
5.有機溶剤分散性
トルエン2gにサンプル0.01gを添加して1分間超音波処理を行ってから5分間静置した後、サンプルの分散の程度(目視で評価)に基づき、有機溶剤分散性を以下の3段階で評価した。
◎:サンプルが完全に分散。
○:サンプルがわずかに沈殿。
×:サンプルが完全に沈殿。
6.光触媒活性
メチレンブルーの0.01 mmol/lの水溶液10gにサンプル0.01gを添加し、撹拌下において東芝ライテック製FL20SBLB型ブラックライトを3時間照射した後、メチレンブルーの分解の程度(退色の程度に基づき、目視で評価)に基づき、光触媒の活性を以下の4段階で評価した。
なおこのときの光強度は、トプコン製UVR−2型紫外線強度計を用いて測定した紫外線強度(受光部として、上記UD−36型受光部を使用)が1mW/cm2 となるように調整した。
◎:メチレンブルーの青色が消失し、透明になる。
○:メチレンブルーの青色がわずかに残る。
△:メチレンブルーの青色が、試験前に比べて薄くなる。
×:メチレンブルーの青色が、試験前とほぼ同じ。
【0045】
[参考例1]
メソポーラス酸化ニオブの調製
界面活性剤として、P123〔商品名、BASF社製:(HO(CH2 CH2 O)20(CH2 CH(CH3 )O)70(CH2 CH2 O)20H)1gをビーカー内に仕込み、これに10gのn−プロパノールを加え、撹拌して前記界面活性剤を溶解させた。これに五塩化ニオブ(NbCl5)1.89g(7mmol)を加え、20分間撹拌溶解させた。次いで加水分解のために水を1.26g(70mmol)を加えて更に10分間撹拌した。得られたゾル溶液をシャーレに移し、40℃の恒温槽で7日間熟成した後、空気雰囲気下の電気炉中にて450℃で5時間焼成することにより化合物(1)を得た。
得られた化合物(1)のX線回折(XRD)を図1に示す。また、図2に化合物(1)の窒素吸着等温線を示す。これらの結果より、得られた化合物(1)は、BET表面積205m2 /g、細孔径6.0nmのアモルファスのメソポーラス酸化ニオブであることがわかる。また、TEM観察の結果、メソポーラス酸化ニオブは2次元ヘキサゴナル構造であることが確認できた。
【0046】
[実施例1]
還流冷却器、温度計および撹拌装置を有する反応器に参考例1で合成したメソポーラス酸化ニオブ0.8gを添加し70℃に昇温した。これに4.0gのビス(トリメチルシロキシ)メチルシランを70℃にて撹拌下に約5分かけて添加し、さらに70℃で5時間撹拌を続けた。ビス(トリメチルシロキシ)メチルシランの反応に伴い生成した水素ガス量は23℃において27.0mlであった。続いて、反応液から未反応のビス(トリメチルシロキシ)メチルシランを減圧加熱除去し、変性メソポーラス酸化ニオブを得た。得られた変性メソポーラス酸化ニオブの赤外線吸収スペクトルを測定したところ、Si−CH3 基の吸収(1271cm-1)が観測された。
得られた変性メソポーラス酸化ニオブの有機溶剤分散性は良好(○)であり、変性前のメソポーラス酸化ニオブの有機溶剤分散性(×)が変性処理により向上していた。
得られた変性メソポーラス酸化ニオブ0.1gをテトラヒドロフラン(THF)40mlに入れ、60℃で30分撹拌した後、吸引濾過することにより変性メソポーラス酸化ニ
オブを洗浄した。
【0047】
THF洗浄前の変性メソポーラス酸化ニオブの窒素吸着等温線を図3に、THF洗浄後の窒素吸着等温線を図4に示す。THF洗浄前の変性メソポーラス酸化ニオブのBET表面積は35m2 /gであるのに対し、THF洗浄後はBET表面積129m2 /gとなり、THF洗浄により表面積が増大した。
また、X線回折(XRD)の測定により、変性メソポーラス酸化ニオブはTHF洗浄前後において、どちらもアモルファスである事が観察された。
続いてTHF洗浄した変性メソポーラス酸化ニオブを空気中において670℃で3時間熱処理した。得られた化合物のX線回折(XRD)を図5に示す。また、図6に窒素吸着等温線の測定結果を示す。これらの結果より、得られた化合物は、表面積136m2 /g、細孔径6.0nmの高結晶性のメソポーラス酸化ニオブであることがわかる。また、TEM観察の結果、得られた高結晶性メソポーラス酸化ニオブは2次元ヘキサゴナル構造であることが確認できた。
【0048】
[参考例2]
メソポーラス酸化チタンの調製
界面活性剤として、P85〔商品名、BASF社製:HO(CH2 CH2 O)26(CH2 CH(CH3 )O)39(CH2 CH2 O)26H〕1gをビーカー内に仕込み、これに10gのn−プロパノールを加え、撹拌して前記界面活性剤を溶解させた。これにチタンテトライソプロポキシド(Ti(i−PrO)4 )2.84g(10mmol)を加え、20分間撹拌溶解させた。次いで36質量%塩酸0.85ml(0.01mol)を加えて更に10分間撹拌した。得られたゾル溶液をシャーレに移し、40℃の恒温槽で7日間熟成した後、空気雰囲気下の電気炉中にて300℃で10時間焼成することにより化合物(2)を得た。
得られた化合物(2)のX線回折(XRD)を図7に示す。また、図8に化合物(2)の窒素吸着等温線を示す。これらの結果より、得られた化合物(2)は、BET表面積291m2 /g、細孔径3.7nmのアモルファスのメソポーラス酸化チタンであることがわかる。また、TEM観察の結果、メソポーラス酸化チタンはワーム−ホール構造であることが確認できた。
【0049】
[実施例2]
還流冷却器、温度計および撹拌装置を有する反応器に参考例2で合成したメソポーラス酸化チタン0.8gを添加し70℃に昇温した。これに4.0gのビス(トリメチルシロキシ)メチルシランを70℃にて撹拌下に約5分かけて添加し、さらに70℃で5時間撹拌を続けた。ビス(トリメチルシロキシ)メチルシランの反応に伴い生成した水素ガス量は23℃において67.0mlであった。続いて、反応液から未反応のビス(トリメチルシロキシ)メチルシランを減圧加熱除去し、変性メソポーラス酸化チタンを得た。得られた変性メソポーラス酸化チタンの赤外線吸収スペクトルを測定したところ、Si−CH3 基の吸収(1271cm-1)が観測された。
得られた変性メソポーラス酸化チタンの有機溶剤分散性は良好(○)であり、変性前のメソポーラス酸化チタンの有機溶剤分散性(×)が変性処理により向上していた。
得られた変性メソポーラス酸化チタン0.1gをテトラヒドロフラン(THF)40mlに入れ、60℃で30分撹拌した後、吸引濾過することにより変性メソポーラス酸化チタンを洗浄した。
【0050】
続いてTHF洗浄した変性メソポーラス酸化ニオブを空気中において600℃で3時間熱処理した。得られた化合物のX線回折(XRD)を図9に示す。また、図10に窒素吸着等温線の測定結果を示す。これらの結果より、得られた化合物は、表面積274m2 /g、細孔径3.5nmの結晶性(アナターゼ型)メソポーラス酸化チタンであることがわ
かる。また、TEM観察の結果、得られた高結晶性メソポーラス酸化チタンはワーム−ホール構造であることが確認できた。 また、得られた高結晶性メソポーラス酸化チタンの光触媒活性評価を実施したところ、良好な結果(○)であった。
【0051】
[実施例3]
実施例2で得た高結晶性メソポーラス酸化チタンの0.2gに0.1質量%のRu3 (CO)12を含有するテトラヒドロフラン溶液2gを添加して1時間攪拌した後、テトラヒドロフランを蒸発除去し、さらに大気中400℃で3時間加熱することによりRuO2 を担持した高結晶性メソポーラス酸化チタンを得た。
得られたRuO2 担持高結晶性メソポーラス酸化チタンの光触媒活性評価を実施したところ、非常に良好な結果(◎)であった。
【0052】
[参考例3]
メソポーラスNbTa複合酸化物の調製
界面活性剤として、P123〔商品名、BASF社製〕1gをビーカー内に仕込み、これに10gのエタノールを加え、撹拌して前記界面活性剤を溶解させた。これに五塩化ニオブ0.81g(3mmol)と五塩化タンタル1.07g(3mmol)を加え、20分間撹拌溶解させた。次いで加水分解のために水を0.32g(18mmol)を加えて更に10分間撹拌した。得られたゾル溶液をシャーレに移し、40℃の恒温槽で7日間熟成した後、空気雰囲気下の電気炉中にて450℃で5時間焼成することにより化合物(3)を得た。
得られた化合物(3)のX線回折(XRD)を図11に示す。また、図12に化合物(3)の窒素吸着等温線を示す。これらの結果より、得られた化合物(3)は、BET表面積205m2 /g、細孔径7.4nmのアモルファスのメソポーラスNbTa複合酸化物であることがわかる。また、TEM観察の結果、メソポーラスNbTa複合酸化物は2次元ヘキサゴナル構造であることが確認できた。
【0053】
[実施例4]
還流冷却器、温度計および撹拌装置を有する反応器に参考例3で合成したメソポーラスNbTa複合酸化物0.7gを添加し70℃に昇温した。これに3.5gのビス(トリメチルシロキシ)メチルシランを70℃にて撹拌下に約5分かけて添加し、さらに70℃で5時間撹拌を続けた。ビス(トリメチルシロキシ)メチルシランの反応に伴い生成した水素ガス量は23℃において26.0mlであった。続いて、反応液から未反応のビス(トリメチルシロキシ)メチルシランを減圧加熱除去し、変性メソポーラスNbTa複合酸化物を得た。得られた変性メソポーラスNbTa複合酸化物の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、Si−CH3 基の吸収(1271cm-1)が観測された。
得られた変性メソポーラスNbTa複合酸化物の有機溶剤分散性は良好(○)であり、変性前のメソポーラスNbTa複合酸化物の有機溶剤分散性(×)が変性処理により向上していた。
【0054】
得られた変性メソポーラスNbTa複合酸化物を空気中において793℃で3時間熱処理した。得られた化合物のX線回折(XRD)を図13に示す。また、図14に窒素吸着等温線の測定結果を示す。これらの結果より、得られた化合物は、表面積102m2 /g、細孔径4.5nmの高結晶性のメソポーラスNbTa複合酸化物であることがわかる。
さらに、得られた高結晶性のメソポーラスNbTa複合酸化物0.1gをpH13に調整した水酸化ナトリウム水溶液50mlに入れ、100℃で30分撹拌し冷却した後、吸引濾過することにより高結晶性メソポーラスNbTa複合酸化物をアルカリ処理した。アルカリ処理後の高結晶性メソポーラスNbTa複合酸化物のX線回折(XRD)を図15に、窒素吸着等温線を図16に示す。アルカリ処理により高結晶性メソポーラスNbTa複合酸化物は結晶性を維持したまま、BET表面積(138m2 /g)及び細孔径(6.
5nm)が増大していることが確認できた。また、TEM観察の結果、アルカリ処理した高結晶性メソポーラスNbTa複合酸化物は2次元ヘキサゴナル構造であることが確認できた。
【0055】
[比較例1]
参考例1で得たメソポーラス酸化ニオブ0.1gを空気中において570℃で3時間熱処理した。得られた化合物のX線回折(XRD)を図17に、窒素吸着等温線を図18に示す。これらの結果とTEM観察より、得られた化合物は細孔構造が崩壊したBET表面積59m2 /gの結晶性酸化ニオブ粉体であることが確認できた。
[比較例2]
参考例2で得たメソポーラス酸化チタン0.1gを空気中において600℃で3時間熱処理した。X線回折(XRD)、窒素吸着等温線、TEM観察より、得られた化合物は細孔構造が崩壊したBET表面積12m2 /gのアナターゼ型酸化チタン粉体であることが確認できた。
また、得られたアナターゼ型酸化チタン粉体の光触媒活性評価は△であり、実施例2で得た高結晶性メソポーラス酸化チタンの光触媒活性評価(○)に劣る結果であった。
【0056】
[比較例3]
テトラエチルオルトシリケート(TEOS)3.5gをエタノール10gに溶解した溶液に参考例3で合成したメソポーラスNbTa複合酸化物0.7gを添加し室温で30分撹拌した。次いで36質量%塩酸0.85ml(0.01mol)を加えて更に5時間撹拌した後、空気雰囲気下の電気炉中にて300℃で10時間焼成することにより化合物(4)を得た。
得られた化合物(4)の有機溶剤分散性は悪い結果(×)であった。
得られた化合物(4)を空気中において793℃で3時間熱処理したものの窒素吸着等温線を測定したところ、細孔の存在は観察されなかった。
さらに、上記方法で熱処理した化合物(5)0.1gをpH13に調整した水酸化ナトリウム水溶液50mlに入れ、100℃で30分撹拌し、冷却した後、吸引濾過したものの窒素吸着等温線を測定したが、細孔の存在は観察されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の変性メソポーラス酸化物(A)及び高結晶性メソポーラス酸化物(B)は、種々の物理化学的な機能を持つ細孔の均一性が良好で高表面積を有する材料であり、例えば種々の触媒として、また例えば極めて優れた吸着能を有する無機高分子として利用する事ができる。
さらに、本発明の変性メソポーラス酸化物(A)又は高結晶性メソポーラス酸化物(B)であって、有機物分解等の光触媒活性を有するものは、抗菌、防汚、防臭、NOx分解等の様々な機能を発現し、大気、水等の環境浄化等の用途に使用することができる。
本発明の変性メソポーラス酸化物(A)又は高結晶性メソポーラス酸化物(B)であって、光照射により20℃における水との接触角が60゜以下(好ましくは10゜以下)となった親水性のもの(親水性膜、及び該親水性膜で被覆された基材等)は、鏡やガラスの曇りを防止する防曇技術、さらには建築外装等に対する防汚技術や帯電防止技術等への応用が可能である。
【0058】
本発明の光触媒活性を有する変性メソポーラス酸化物(A)又は高結晶性メソポーラス酸化物(B)の防汚技術分野への応用例としては、例えば建材、建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、構造部材、住宅等建築設備、特に便器、浴槽、洗面台、照明器具、照明カバー、台所用品、食器、食器洗浄器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇等、また、乗物の外装および塗装、用途によってはその内装にも使用でき、車両用照明灯のカバー、窓ガラス、計器、表示盤等透明性が要求される部材での使用に効果があ
り、また、機械装置や物品の外装、防塵カバーおよび塗装、表示機器、そのカバー、交通標識、各種表示装置、広告塔等の表示物、道路用、鉄道用等の遮音壁、橋梁、ガードレールの外装および塗装、トンネル内装および塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー等外部で使用される電子、電気機器の外装部、特に透明部材、ビニールハウス、温室等の外装、特に透明部材、また、室内にあっても汚染のおそれのある環境、たとえば医療用や体育用の施設、装置等の用途を挙げることができる。
【0059】
本発明の光触媒活性を有する変性メソポーラス酸化物(A)又は高結晶性メソポーラス酸化物(B)の防曇技術分野への応用例としては、例えば鏡(車両用後方確認ミラー、浴室用鏡、洗面所用鏡、歯科用鏡、道路鏡等)、レンズ(眼鏡レンズ、光学レンズ、照明用レンズ、半導体用レンズ、複写機用レンズ、車両用後方確認カメラレンズ等)、プリズム、建物や環視塔の窓ガラス、乗物の窓ガラス(自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、ロープウェイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、宇宙船等)、乗物の風防ガラス(自動車、オートバイ、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、スノーモービル、ロープウェイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、宇宙船等)、防護用ゴーグル、スポーツ用ゴーグル、防護用マスクのシールド、スポーツ用マスクのシールド、ヘルメットのシールド、冷凍食品陳列ケースのガラス、保温食品の陳列ケースのガラス、計測機器のカバー、車両用後方確認カメラレンズのカバー、レーザー歯科治療器等の集束レンズ、車間距離センサー等のレーザー光検知用センサーのカバー、赤外線センサーのカバー、カメラ用フィルター等の用途を挙げることができる。
【0060】
本発明の光触媒活性を有する変性メソポーラス酸化物(A)又は高結晶性メソポーラス酸化物(B)の帯電防止技術分野への応用例としては、例えばブラウン管、磁気記録メディア、光記録メディア、光磁気記録メディア、オーディオテープ、ビデオテープ、アナログレコード、家庭用電気製品のハウジングや部品や外装および塗装、OA機器製品のハウジングや部品や外装および塗装、建材、建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、構造部材、乗物の外装および塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバーおよび塗装等の用途を挙げることができる。
【0061】
本発明の光触媒活性を有する変性メソポーラス酸化物(A)又は高結晶性メソポーラス酸化物(B)の抗菌、防カビ技術分野への応用例としては、例えば建材、建物外装、建物内装、窓枠、構造部材、住宅等建築設備、特に便器、浴槽、洗面台、照明器具、照明カバー、台所用品、食器、食器洗浄器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、食器棚、飾り棚、浴室や洗面所の壁、天井、ドアノブ、さらには医療用や公共施設等、例えば病院内の部材、救急車の各種部材あるいは食品・医薬品工場、学校・体育館・駅などの公共施設、公衆浴場、公衆トイレ、旅館、ホテル、その他における衛生管理のために、壁面、床面や天井面、各所の什器、備品、ドアノブなどの用途を挙げることができる。特に、院内感染防止方法として病院内の部材に広範囲に用いることが可能である。該病院内の部材としては、例えば病室、診察室、廊下、階段、エレベーター、待合室、洗面所等、不特定多数のものが接触する場所における床、壁、天井、手すり、ドア把手、水道蛇口、各種診療機器等が挙げられる。また、病院内に限らず、救急車や食品保管室、食品調理室等の衛生を必要とする場所の各種部材に対しても効果的に抗菌性や防カビ性を付与することができる。
【0062】
本発明によって提供される光触媒活性を有する変性メソポーラス酸化物(A)又は高結晶性メソポーラス酸化物(B)であって、光照射により20℃における水との接触角が70゜以上(好ましくは90゜以上)となった疎水性のもの(疎水性の成形体や疎水性膜、及び該疎水性膜で被覆された基材等)は、防滴性や水切れ性の付与、水系汚れの付着防止や流水洗浄性を利用した防汚技術、さらには着氷雪防止技術等への応用が可能であり、窓ガラス、風防ガラス、鏡、レンズ、ゴーグル、カバー、碍子、建材、建物外装、建物内装
、構造部材、乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の外装、各種表示装置、照明装置、住宅設備、食器、台所用品、家庭用電気製品、屋根材、アンテナ、送電線、氷雪滑走具等の用途に使用することができる。
【0063】
本発明によって提供される変性メソポーラス酸化物(A)又は高結晶性メソポーラス酸化物(B)であって光電変換機能を有するものは、太陽エネルギーの電力変換等の機能を発現することが可能であり、(湿式)太陽電池等に用いる光半導体電極等の用途に使用することができる。
また、本発明によって提供される、光照射によって水との濡れ性が変化(疎水性から親水性への変化、あるいは親水性から疎水性への変化)するものは、オフセット印刷用原版等への応用に対し非常に有用である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、特殊構造を有する変性剤で処理されてなるメソポーラス酸化物、及び該メソポーラス酸化物から誘導される細孔の均一性が良好で高表面積を有する結晶性の高いメソポーラス酸化物に関する。
【背景技術】
【0002】
メソポーラス酸化物とはナノサイズの細孔を有する酸化物材料である。メソポーラス酸化物は、その特徴である細孔の均一性や高い表面積から、種々の物理化学的な機能を持つ材料として期待されている。
近年、これらメソポーラス酸化物の中で、非シリカ系のメソポーラス酸化物、特にメソポーラス遷移金属酸化物が注目されている。これは、構成材料である遷移金属が種々の触媒として作用することが期待できるためである。
しかし、これまで合成されたメソポーラス遷移金属酸化物は、ほとんどが非晶質または結晶性が低いものであり、メソポーラス酸化物の結晶化度が充分高くなるように高温で結晶化処理をすると、結晶化の進行と共に細孔構造の崩壊が起こるという問題があった。
【0003】
これらの課題に対し、特開2003−321211号公報ではテトラエチルオルトシリケート(TEOS)或いは珪酸ナトリウム溶液を細孔内に充填後80〜100℃でゲル化させ、結晶化熱処理をした後、酸またはアルカリを添加した水により充填物(ゲル化物)を除去して結晶性を向上させたメソ多孔質を形成する方法が提案されている。しかし、この方法では細孔内を選択的にゲル化物で充填するのが困難であり、また結晶化熱処理前に細孔内以外で反応したものだけを選択的に除去することは不可能であった。その為、結晶化熱処理を後の酸またはアルカリを添加した水による充填物(ゲル化物)の除去が不可欠であると共に、生成するメソポーラス酸化物の細孔も一部は維持されるものの多くが崩壊するという課題があった。すなわち、メソポーラス酸化物を結晶化前の細孔、細孔の周期性を維持したまま、細孔壁を高度に結晶化させる技術が切望されていた。
一方、メソポーラス酸化物の表面や細孔内の性状を制御すると、細孔の均一性や高い表面積を利用した、メソポーラス酸化物のより広範な応用展開が期待できる。しかし、今までのところ、それらの性状を有効に制御する方法は提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−321211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、表面や細孔内の性状が制御された熱安定性に優れたメソポーラス酸化物を提供すると共に、細孔の均一性が良好で高表面積を有する結晶性の高いメソポーラス酸化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は以下の通りである。
1.メソポーラス酸化物(a)を、式(1)で表されるトリオルガノシラン単位、式(2)で表されるモノオキシジオルガノシラン単位、式(3)で表されるジオキシオルガノシラン単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の構造単位を有する化合物類よりなる群から選ばれる少なくとも1種の変性剤化合物(b)を用いて変性処理することによって得
られる変性メソポーラス酸化物(A)。
R3 Si− (1)
(式中、Rは各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のフルオロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基、フェニル基、水素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、又は水酸基を表す。)
−(R2 SiO)− (2)
(式中、Rは式(1)で定義した通りである。)
【化1】
(式中、Rは式(1)で定義した通りである。)
【0007】
2.メソポーラス酸化物(a)が、遷移金属を含有するメソポーラス酸化物であることを特徴とする上記1に記載の変性メソポーラス酸化物(A)。
3.該変性剤化合物(b)が、式(4)で表されるSi−H基含有ケイ素化合物(b1)であることを特徴とする上記1または2に記載の変性メソポーラス酸化物(A)。
Hx Ry Qz SiO(4-x-y-z)/2 (4)
(式中、Rは各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のフルオロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基、フェニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、又は水酸基を表す。
また、式中Qは、下記(あ)〜(う)からなる群より選ばれる少なくとも1つの機能性付与基を含有する基である。
(あ)カルボキシル基あるいはその塩、リン酸基あるいはその塩、スルホン酸基あるいはその塩、アミノ基あるいはその塩、ポリオキシアルキレン基からなる群から選ばれた少なくとも1つの親水性基。
(い)エポキシ基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、(環状)酸無水物基、ケト基、カルボキシル基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、水酸基、アミノ基、環状カーボネート基、チオール基、エステル基からなる群から選ばれた少なくとも1つの反応性基。
(う)少なくとも1つの分光増感基。
また、0<x<4、0<y<4、0≦z<4、及び(x+y+z)≦4である。)
【0008】
4.該変性剤化合物(b)が、式(5)又は式(6)で表されるモノSi−H基含有化合物、式(7)で表される両末端Si−H基含有化合物、式(8)で表されるHシリコーン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のSi−H基含有ケイ素化合物(b1)であることを特徴とする上記1または2に記載の変性メソポーラス酸化物(A)。
【化2】
{(式中、R1 は各々独立して直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、
炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のフルオロアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、フェニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、水酸基、もしくは式(9)で表されるシロキシ基から選ばれた1種以上からなる基を表す。
−O−(R2 SiO)n −SiR3 ・・・(9)
(式中、Rは各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のフルオロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基、フェニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、又は水酸基を表す。また、nは整数であり、0≦n≦1000である。)}
H−(R12SiO)m −SiR12−Q ・・・(6)
(式中、R1 は式(5)で定義した通りである。Qは、下記(あ)〜(う)からなる群より選ばれる少なくとも1つの機能性付与基を含有する基である。
(あ)カルボキシル基あるいはその塩、リン酸基あるいはその塩、スルホン酸基あるいはその塩、アミノ基あるいはその塩、ポリオキシアルキレン基からなる群から選ばれた少なくとも1つの親水性基。
(い)エポキシ基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、(環状)酸無水物基、ケト基、カルボキシル基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、水酸基、アミノ基、環状カーボネート基、チオール基、エステル基からなる群から選ばれた少なくとも1つの反応性基。
(う)少なくとも1つの分光増感基。
mは整数であり、0≦m≦1000である。)
H−(R12SiO)m −SiR12−H ・・・(7)
(式中、R1 は式(5)で定義した通りである。mは整数であり、0≦m≦1000である。)
(R1HSiO)a(R12SiO)b(R1QSiO)c(R13SiO1/2 )d・・・(8)
(式中、R1 は式(5)で定義した通りであり、Qは式(6)で定義した通りである。aは1以上の整数であり、b及びcは0又は1以上の整数であり、(a+b+c)≦10000であり、そしてdは0又は2である。但し、(a+b+c)が2以上の整数であり且つd=0の場合、該Hシリコーン化合物は環状シリコーン化合物であり、d=2の場合、該Hシリコーン化合物は鎖状シリコーン化合物である。)
【0009】
5.光触媒活性を有することを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の変性メソポーラス酸化物(A)。
6.Pt、Rh、Ru、Ir、Cu、Sn、Ni、Fe、W、Coよりなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属及び/又は該遷移金属の酸化物が坦持されてなる上記1〜5のいずれかに記載の変性メソポーラス酸化物(A)。
7.上記1〜6のいずれかに記載の変性メソポーラス酸化物(A)を熱処理することにより誘導される高結晶性メソポーラス酸化物(B)。
8.上記1〜6のいずれかに記載の変性メソポーラス酸化物(A)を溶媒で洗浄した後、熱処理することにより誘導される結晶性が向上したメソポーラス酸化物(B)。
9.熱処理の後に酸及び/又はアルカリ処理されてなる上記7または8に記載の高結晶性メソポーラス酸化物(B)。
10. Pt、Rh、Ru、Ir、Cu、Sn、Ni、Fe、W、Coよりなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属及び/又は該遷移金属の酸化物が坦持されてなる上記7〜9のいずれかに記載の高結晶性メソポーラス酸化物(B)。
【発明の効果】
【0010】
本発明の変性メソポーラス酸化物は種々の機能を有すると共に、熱安定性に優れるため、結晶加熱処理により細孔構造やその均一性を保持したまま容易に結晶性が向上した高結晶性メソポーラス酸化物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】参考例1で得られたメソポーラス酸化ニオブのX線回折パターンを示す。
【図2】参考例1で得られたメソポーラス酸化ニオブの窒素吸着等温線を示す。
【図3】実施例1で得られた変性メソポーラス酸化ニオブの窒素吸着等温線を示す。
【図4】実施例1で得られたTHF洗浄後の変性メソポーラス酸化ニオブの窒素吸着等温線を示す。
【図5】実施例1で得られた高結晶性メソポーラス酸化ニオブのX線回折パターンを示す。
【図6】実施例1で得られた高結晶性メソポーラス酸化ニオブの窒素吸着等温線を示す。
【図7】参考例2で得られたメソポーラス酸化チタンのX線回折パターンを示す。
【図8】参考例2で得られたメソポーラス酸化チタンの窒素吸着等温線を示す。
【図9】実施例2で得られた高結晶性メソポーラス酸化チタンのX線回折パターンを示す。
【図10】実施例2で得られた高結晶性メソポーラス酸化チタンの窒素吸着等温線を示す。
【図11】参考例3で得られたメソポーラスNbTa複合酸化物のX線回折パターンを示す。
【図12】参考例3で得られたメソポーラスNbTa複合酸化物の窒素吸着等温線を示す。
【図13】実施例4で得られた高結晶性メソポーラスNbTa複合酸化物のX線回折パターンを示す。
【図14】実施例4で得られた高結晶性メソポーラスNbTa複合酸化物の窒素吸着等温線を示す。
【図15】実施例4で得られたアルカリ処理後の高結晶性メソポーラスNbTa複合酸化物のX線回折パターンを示す。
【図16】実施例4で得られたアルカリ処理後の高結晶性メソポーラスNbTa複合酸化物の窒素吸着等温線を示す。
【図17】比較例1で得られた酸化ニオブ粉体のX線回折パターンを示す。
【図18】比較例1で得られた酸化ニオブ粉体の窒素吸着等温線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の変性メソポーラス酸化物(A)は、メソポーラス酸化物(a)を後述する少なくとも1種の変性剤化合物(b)を用いて変性処理することによって得られ、種々の機能を有すると共に熱安定性に優れることを特徴とする。
本発明によると、メソポーラス酸化物(a)の細孔内を、被覆率を制御して変性剤化合物(b)で被覆したり、変性剤化合物(b)で細孔内を充填したりすることができる。さらにメソポーラス酸化物(a)と相互作用をしていない変性剤化合物(b)およびその誘導体(変性剤化合物と水等から誘導される化合物)は溶媒洗浄や蒸留等によって容易に除去できる。即ち、本発明で提供される変性メソポーラス酸化物(A)は、細孔内や表面の変性程度が目的に応じて高度に制御されたものである。
本発明において変性とは、後述する少なくとも1種の変性剤化合物(b)を、メソポーラス酸化物(a)の表面(細孔表面及び粒子表面)に固定化することを意味する。上記の変性剤化合物のメソポーラス酸化物(a)表面への固定化は、ファン・デル・ワールス力(物理吸着)、クーロン力または化学結合によるものである。特に、化学結合を利用した変性は、変性剤化合物(b)とメソポーラス酸化物(a)との相互作用が強く、変性剤化合物がメソポーラス酸化物(a)の表面に強固に固定化されるので好ましい。
【0013】
本発明において好適に使用できるメソポーラス酸化物(a)は、公知の方法、例えば有機溶媒に界面活性剤を溶解した溶液に、メソポーラス酸化物(a)の前駆体を加えて溶解させ、該前駆体を加水分解して高分子量化および自己組織化したゾル溶液とし、前記ゾル溶液から組織の安定化したゲルを得た後、該ゲルを好ましくは酸素が存在する雰囲気中において、好ましくは300℃〜700℃で焼成することにより得ることができる。
ここで、上記有機溶媒としては、例えばイソプロパノール、ブタノール、エタノール、メタノール、ヘキサノール、エチレングリコール、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類、トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素等のハロゲン化合物類、ジメチルスルホキシド、ニトロベンゼン等やこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの中で、界面活性剤及び金属酸化物の前駆体の溶解性からアルコール類が特に好ましい。
【0014】
また、メソポーラス酸化物(a)を得るのに好適に使用できる上記界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤及びイオン性界面活性剤のいずれを用いても良いが、メソポーラス酸化物の細孔分布制御や界面活性剤の除去回収性の点などから非イオン性界面活性剤が好適に使用される。
上記の非イオン性界面活性剤としては特に制限がなく、エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型のものを用いることができるが、メソポーラス酸化物合成時の構造安定性の点から、エーテル型、含窒素型のものが好ましい。エーテル型の非イオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、単一鎖長ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。含窒素型の非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどが挙げられる。更に具体的に旭電化工業株式会社の非イオン性界面活性剤で例を挙げると、アデカプルロニック(L・p・Fシリーズ)、アデカプルロニック(TRシリーズ)、アデカトール(SOシリーズ)、アデカトール(LOシリーズ)、アデカトール(NP・OPL・OA・LA・SP・PCシリーズ)、アデカPEGシリーズ等を挙げることができる。
【0015】
また、上記イオン性界面活性剤としては、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウムブロミド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルピリジニウムクロリド、ヘキサデシルピリジニウムブロミド、メシチレンなどが挙げられる。また、カルボキシベタイン、アミノカルボン酸塩、イミダゾリヌウムベタイン等の両性界面活性剤も挙げることができる。
【0016】
本発明において、メソポーラス酸化物(a)を得るのに好適に使用できる酸化物の前駆体としては、金属及び/又はSiの塩やアルコキシド、キレート化合物等やそれらの混合物を挙げることができる。ここで、メソポーラス酸化物(a)の前駆体として金属を含有するものを選択すると、生成するメソポーラス酸化物(a)は種々の触媒作用等が発現できるため好ましい。該金属としては特に制限はないが遷移金属を好適に用いることができ
る。本発明に最も好適に用いる事ができるメソポーラス酸化物(a)の前駆体としては、Ti、Ta、Nb、Zr、W、Mg、Al、La等の塩化物及び/又はアルコキシドを挙げることができる。
上述したメソポーラス酸化物(a)の形状は任意のものであることができるが、1次粒子径が1nm〜100μmの粒子であることが好ましい。また、細孔の大きさは0.1〜100nm、好ましくは1〜50nmである。
また、上記メソポーラス酸化物(a)として光触媒活性を有するものは、環境浄化や防汚、防曇等の分野へ応用が可能となり特に好ましい。ここで、光触媒活性とは、光照射によって酸化、還元反応を起こすことを言う。これらの光触媒活性は、例えば材料表面の光照射時における色素等の有機物の分解性を測定することにより判定することができる。光触媒活性を有する表面は、優れた汚染有機物質の分解活性や耐汚染性を発現する。
【0017】
本発明において、変性メソポーラス酸化物(A)を得るのに用いられる少なくとも1種の変性剤化合物(b)は、式(1)で表されるトリオルガノシラン単位、式(2)で表されるモノオキシジオルガノシラン単位、式(3)で表されるジオキシオルガノシラン単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の構造単位を有する化合物類よりなる群から選ばれる。
R3 Si− (1)
(式中、Rは各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のフルオロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基、フェニル基、水素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、又は水酸基を表す。)
−(R2 SiO)− (2)
(式中、Rは式(1)で定義した通りである。)
【化3】
(式中、Rは式(1)で定義した通りである。)
【0018】
本発明において、メソポーラス酸化物(a)の変性剤化合物(b)による変性処理は、水及び/又は有機溶媒の存在、あるいは非存在下において、前述したメソポーラス酸化物(a)と、同じく前述した変性剤化合物(b)を好ましくは質量比(a)/(b)=0.0001〜10000、より好ましくは(a)/(b)=0.001〜1000の割合で混合し、好ましくは0〜300℃、より好ましくは10〜150℃にて加熱することにより得ることができる。この際、変性剤化合物(b)の状態は液体、気体、固体、水及び/又は有機溶媒に溶解または分散した状態のいずれであっても良い。また、変性処理後に未反応の変性剤化合物(b)は、必要に応じ、蒸留や濾過、抽出等によって除去することもできる。
【0019】
本発明の上記変性処理に於いて、メソポーラス酸化物(a)と変性剤化合物(b)の比が0.0001より小さいと、反応しない変性剤化合物(b)が多くなり変性処理が非効率となり好ましくない。また、メソポーラス酸化物(a)と変性剤化合物(b)の比が10000より大きくなると、変性処理による効果が十分に発現できないので好ましくない。
ここで上記変性処理を行う場合、好ましく使用できる有機溶媒としては、例えばトルエンやキシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭
化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類、エチレングリコール、ブチルセロソルブ、イソプロパノール、n−ブタノール、エタノール、メタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素等のハロゲン化合物類、ジメチルスルホキシド、ニトロベンゼン等やこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0020】
本発明の変性メソポーラス酸化物(A)を得るのに使用される上記変性剤化合物(b)としては、例えばSi−H基、加水分解性シリル基(アルコキシシリル基、ヒドロキシシリル基、ハロゲン化シリル基、アセトキシシリル基、アミノキシシリル基等)、エポキシ基、アセトアセチル基、チオール基、酸無水物基等のメソポーラス酸化物(a)と反応性を有するケイ素化合物等を挙げることができる。
また、上記変性剤化合物(b)の他の例としては、例えばメソポーラス酸化物(a)とファン・デル・ワールス力、クーロン力等により相互作用する構造、例えばポリオキシアルキレン基、スルホン酸基、カルボキシル基等を有するケイ素化合物等を挙げることができる。
【0021】
本発明において、上記変性剤化合物(b)として、下記式(4)で表されるSi−H基含有ケイ素化合物(b1)を用いると、非常に効率よくメソポーラス酸化物(a)表面を変性することができるため好ましい。
Hx Ry Qz SiO(4-x-y-z)/2 (4)
(式中、Rは各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のフルオロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基、フェニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、又は水酸基を表す。
また、式中Qは、下記(あ)〜(う)からなる群より選ばれる少なくとも1つの機能性付与基を含有する基である。
(あ)カルボキシル基あるいはその塩、リン酸基あるいはその塩、スルホン酸基あるいはその塩、アミノ基あるいはその塩、ポリオキシアルキレン基からなる群から選ばれた少なくとも1つの親水性基。
(い)エポキシ基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、(環状)酸無水物基、ケト基、カルボキシル基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、水酸基、アミノ基、環状カーボネート基、チオール基、エステル基からなる群から選ばれた少なくとも1つの反応性基。
(う)少なくとも1つの分光増感基。
また、0<x<4、0<y<4、0≦z<4、及び(x+y+z)≦4である。)
【0022】
本発明において、上述したメソポーラス酸化物(a)の上記式(4)で表されるSi−H基含有ケイ素化合物(b1)による変性処理は、水及び/又は有機溶媒の存在、あるいは非存在下において、化合物(a)と該Si−H基含有ケイ素化合物(b1)を好ましくは質量比(a)/(b1)=0.0001〜10000、より好ましくは(a)/(b1)=0.001〜1000の割合で、好ましくは0〜200℃にて混合することにより実施できる。この際の混合は、液相、気相、固相のいずれの状態であっても良い。また、上記変性処理による化合物(a)とSi−H基含有ケイ素化合物(b1)との反応は、反応に伴って発生する水素ガス量を測定することにより定量することができる。
【0023】
本発明において、上記メソポーラス酸化物(a)のSi−H基含有ケイ素化合物(b1)による変性処理は、Si−H基に対する脱水素縮合触媒を使用して好ましくは0〜150℃で実施することもできる。
この場合、あらかじめ光還元法等の方法で脱水素縮合触媒をメソポーラス酸化物(a)
に固定し、上記Si−H基含有ケイ素化合物(b1)で変性処理しても良いし、脱水素縮合触媒の存在下に上記Si−H基含有化合物ケイ素(b1)でメソポーラス酸化物(a)を変性処理しても良い。
ここでSi−H基に対する脱水素縮合触媒とは、Si−H基とメソポーラス酸化物(a)の表面に存在する水酸基、さらには水等との脱水素縮合反応を加速する物質を意味し、該脱水素縮合触媒を使用することにより温和な条件でメソポーラス酸化物(a)の表面を変性することが可能となる。
【0024】
該脱水素縮合触媒としては、例えば白金族触媒、すなわちルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金の単体及びその化合物や、銀、鉄、銅、コバルト、ニッケル、錫等の単体及びその化合物が挙げられる。これらの中で白金族触媒が好ましく、白金の単体及びその化合物が特に好ましい。
ここで、上記白金の化合物としては、例えば塩化白金(II)、テトラクロロ白金酸(II)、塩化白金(IV)、ヘキサクロロ白金酸(IV)、ヘキサクロロ白金(IV)アンモニウム、ヘキサクロロ白金(IV)カリウム、水酸化白金(II)、二酸化白金(IV)、ジクロロ−ジシクロペンタジエニル−白金(II)、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−ホスフィン錯体、白金−オレフィン錯体等を使用することができる。
【0025】
また、本発明に好適に使用できるSi−H基含有ケイ素化合物(b1)としては、例えば式(5)や式(6)で表されるモノSi−H基含有化合物、式(7)で表される両末端Si−H基含有化合物、式(8)で表されるHシリコーン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のSi−H基含有ケイ素化合物を挙げることができる。
【化4】
{(式中、R1は各々独立して直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のフルオロアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、フェニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、水酸基、もしくは式(9)で表されるシロキシ基から選ばれた1種以上からなる基を表す。
−O−(R2 SiO)n −SiR3 ・・・(9)
(式中、Rは各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のフルオロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基、フェニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、又は水酸基を表す。また、nは整数であり、0≦n≦1000である。)}
H−(R12SiO)m −SiR12−Q ・・・(6)
(式中、R1 は式(5)で定義した通りである。Qは、下記(あ)〜(う)からなる群より選ばれる少なくとも1つの機能性付与基を含有する基である。
(あ)カルボキシル基あるいはその塩、リン酸基あるいはその塩、スルホン酸基あるいはその塩、アミノ基あるいはその塩、ポリオキシアルキレン基からなる群から選ばれた少なくとも1つの親水性基。
(い)エポキシ基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、(環状)酸無水物基、ケト基、カルボキシル基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、水酸基、アミノ基、環状カーボネート基、チオール基、エステル基からなる群から選ばれた少なくとも1つの反応性基。
(う)少なくとも1つの分光増感基。
mは整数であり、0≦m≦1000である。)
H−(R12SiO)m −SiR12−H ・・・(7)
(式中、R1 は式(5)で定義した通りである。mは整数であり、0≦m≦1000である。)
(R1HSiO)a(R12SiO)b(R1 QSiO)c(R13SiO1/2)d・・・(8)
(式中、R1 は式(5)で定義した通りであり、Qは式(6)で定義した通りである。aは1以上の整数であり、b及びcは0又は1以上の整数であり、(a+b+c)≦10000であり、そしてdは0又は2である。但し、(a+b+c)が2以上の整数であり且つd=0の場合、該Hシリコーン化合物は環状シリコーン化合物であり、d=2の場合、該Hシリコーン化合物は鎖状シリコーン化合物である。)
【0026】
本発明において、上記式(5)で表されるモノSi−H基含有化合物の具体例としては、例えばビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、ビス(トリメチルシロキシ)エチルシラン、ビス(トリメチルシロキシ)n−プロピルシラン、ビス(トリメチルシロキシ)i−プロピルシラン、ビス(トリメチルシロキシ)n−ブチルシラン、ビス(トリメチルシロキシ)n−ヘキシルシラン、ビス(トリメチルシロキシ)シクロヘキシルシラン、ビス(トリメチルシロキシ)フェニルシラン、ビス(トリエチルシロキシ)メチルシラン、ビス(トリエチルシロキシ)エチルシラン、トリス(トリメチルシロキシ)シラン、トリス(トリエチルシロキシ)シラン、ペンタメチルジシロキサン、1,1,1,3,3,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン、1,1,1,3,3,5,5,6,6−ノナメチルテトラシロキサン、トリメチルシラン、エチルジメチルシラン、メチルジエチルシラン、トリエチルシラン、フェニルジメチルシラン、ジフェニルメチルシラン、シクロヘキシルジメチルシラン、t−ブチルジメチルシラン、ジ−t−ブチルメチルシラン、n−オクタデシルジメチルシラン、トリ−n−プロピルシラン、トリ−i−プロピルシラン、トリ−i−ブチルシラン、トリ−n−ヘキシルシラン、トリフェニルシラン、アリルジメチルシラン、1−アリル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、クロロメチルジメチルシラン、7−オクテニルジメチルシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、フェニルメチルメトキシシラン、ジフェニルメトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリス(イソプロポキシ)シラン等を挙げることができる。
【0027】
これらのモノSi−H基含有化合物の中で、メソポーラス酸化物(a)の変性処理時におけるSi−H基の反応性(脱水素縮合反応)の良さから、ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(トリメチルシロキシ)シラン、ペンタメチルジシロキサン等の分子中にシロキシ基を有するものや、ジメチルメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、ジフェニルメトキシシラン、トリエトキシシラン等の分子中にアルコキシ基を有するものが好ましい。上記分子中にシロキシ基を有するモノSi−H基含有化合物は、メソポーラス酸化物(a)の表面との反応選択性に優れるため、特に好ましい。
【0028】
本発明において、上記式(7)で表される両末端Si−H基含有化合物の具体例としては、例えば1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン等の数平均分子量50000以下のH末端ポリジメチルシロキサン類や、1,1,3,3−テトラエチルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタエチルテトラシロキサン等の数平均分子量50000以下のH末端ポリジエチルシロキサン類や、1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサフェニルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタフェニルテトラシロキサン等の数平均分子量50000以下のH末端ポリジフェニルシロキサン類や、1,3−ジフェニル−1,3−ジメチル−ジシロキサン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニル−トリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニル−テトラシロキサン等の数平均分子量50000以下のH末端ポリフェニルメチルシロキサン類や、ジメチルシラン、エチルメチルシラン、ジエチルシラン、フェニルメチルシラン、ジフェニルシラン、シクロヘキシルメチルシラン、t−ブチルメチルシラン、ジ−t−ブチルシラン、n−オクタデシルメチルシラン、アリルメチルシラン等を例示することができる。
【0029】
本発明に用いる上記式(7)で表される両末端Si−H基含有化合物としては、メソポーラス酸化物(a)の変性処理時におけるSi−H基の反応性(脱水素縮合反応)の良さから、好ましくは数平均分子量が10000以下、より好ましくは2000以下、さらに好ましくは1000以下の両末端Si−H基含有化合物が好適に使用できる。
本発明に用いることができる上記式(8)で表されるHシリコーン化合物としては、変性処理時におけるメソポーラス酸化物(a)の凝集防止の点より、数平均分子量が、好ましくは10000以下、より好ましくは5000以下、さらに好ましくは2000以下のHシリコーン化合物が好適に使用できる。
また、上記一般式(4)で表されるSi−H基含有ケイ素化合物(b1)として、機能性付与基含有基(Q)を有するもの(式(6)、式(8)であってcが1以上の正数のもの等)を選択すると、本発明で得られる変性メソポーラス酸化物(A)に種々の機能を付与できるため好ましい。
【0030】
ここで機能性付与基含有基(Q)は下式(10)で表される基であることが好ましい。
−Z−(W)a ・・・(10)
(式中、Zは分子量14〜50,000の(a−1)価の有機基を表し、Wは上記式(4)中の機能性付与基(あ)〜(う)からなる群から選ばれる少なくとも1つであり、aは1〜20の整数である。)
例えば機能性付与基含有基(Q)として、カルボキシル基あるいはその塩を含む1価の基、リン酸基あるいはその塩を含む1価の基、スルホン酸基あるいはその塩を含む1価の基、アミノ基あるいはその塩を含む1価の基、ポリオキシアルキレン基からなる群から選ばれた少なくとも1つの親水性基[式(4)中の(あ)]を有するものを選択すると、得られる変性メソポーラス酸化物(A)の水に対する分散安定性が非常に良好なものとなる。
【0031】
また、例えば機能性付与基含有基(Q)として、エポキシ基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、環状酸無水物基、非環状酸無水物基、ケト基、カルボキシル基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、水酸基、アミノ基、環状カーボネート基、チオール基、エステル基からなる群から選ばれた少なくとも1つの反応性基[式(4)中の(い)]を含有する基を選択すると本発明の変性メソポーラス酸化物(A)は架橋性を有する。
また、例えば機能性付与基含有基(Q)として、分光増感基を有するものを選択すると、本発明の変性メソポーラス酸化物(A)が光触媒活性を有する場合は、可視光領域及び/又は赤外光領域の光の照射による光触媒活性や光電変換機能を向上させることができる。
ここで、分光増感基とは、可視光領域及び/又は赤外光領域に吸収を持つ種々の金属錯体や有機色素(即ち、増感色素)に由来する基を意味する。
増感色素としては、例えばキサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、ローダシアニン系色素、スチリル系色素、ヘミシアニン系色素、メロシアニン系色素、フタロシアニン系色素(金属錯体を含む)、ポルフィリン系色素(金属錯体を含む)、トリフェニルメタン系色素、ペリレン系色素、コロネン系色素、アゾ系色素、ニトロフェノール系色素、さらには例えば特開平1−220380号公報や特許出
願公表平5−504023号公報に記載のルテニウム、オスミウム、鉄、亜鉛の錯体や、他にルテニウムレッド等の金属錯体を挙げることができる。
【0032】
これらの増感色素の中で、400nm以上の波長領域で吸収を持ち、かつ最低空軌道のエネルギー準位(励起状態の酸化還元電位)がメソポーラス酸化物(a)の伝導帯のエネルギー準位より高いという特徴を有するものが好ましい。このような増感色素の特徴は、赤外・可視・紫外領域における光の吸収スペクトルの測定、電気化学的方法による酸化還元電位の測定( 例えばT.Tani, Photogr. Sci. Eng., 14, 72 (1970); R.W.Berriman et al., ibid., 17. 235 (1973); P.B.Gilman Jr., ibid., 18, 475 (1974)等) 、分子軌道法を用いたエネルギー準位の算定( 例えばT.Tani et al., Photogr. Sci. Eng., 11, 129 (1967); D.M.Sturmer et al., ibid., 17. 146 (1973); ibid., 18, 49 (1974); R.G.Selby et al., J. Opt. Soc. Am., 33, 1 (1970)等) 、更には光触媒と分光増感色素によって作成したGratzel 型湿式太陽電池の光照射による起電力の有無や効率等によって確認することができる。
上記の特徴を有する増感色素の例としては、9−フェニルキサンテン骨格を有する化合物、2,2−ビピリジン誘導体を配位子として含むルテニウム錯体、ペリレン骨格を有する化合物、フタロシアニン系金属錯体、ポルフィリン系金属錯体等を挙げることができる。
【0033】
本発明において、上述した機能性付与基含有基(Q)を有するSi−H基含有ケイ素化合物を得る方法としては、
(Q−1):下記一般式(11)で表されるSi−H基含有化合物と、機能性付与基[上記式(4)中の(あ)〜(う)]を有する炭素−炭素不飽和結合化合物をヒドロシリル化反応させる方法。
(Q−2):下記一般式(11)で表されるSi−H基含有ケイ素化合物と、反応性基[上記式(4)中の(い)]を有する炭素−炭素不飽和結合化合物をヒドロシリル化反応させて反応性基を有するSi−H基含有ケイ素化合物を得た後、該反応性基と反応性を有する機能性付与基含有化合物を反応させる方法が挙げられる。
H(x+z) Ry SiO(4-X-Y-Z)/2 (11)
(式中、Rは各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のフルオロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜30のアルケニル基、フェニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、水酸基を表す。 また、0<(x+z)<4、0<y<4、及び(x+y+z)≦4である。)
【0034】
まず、機能性付与基(Q)を有するSi−H基含有ケイ素化合物を得る方法として、上述した(Q−1)の方法[以下(Q−1)−方法]について説明する。 (Q−1)−方法において、上記式(11)で表されるSi−H基含有ケイ素化合物に、機能性付与基として親水性基を導入するのに用いる炭素−炭素不飽和結合化合物としては、カルボキシル基あるいはその塩、リン酸基あるいはその塩、スルホン酸基あるいはその塩、アミノ基あるいはその塩、ポリオキシアルキレン基、環状酸無水物からなる群から選ばれた少なくとも1つの親水性基を有するオレフィン類、アリルエーテル類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン誘導体等が挙げられる。
上記親水性基を有する炭素−炭素不飽和結合化合物の好ましい具体例として、例えば式(12)で表されるポリオキシエチレン基含有アリルエーテルや、さらには5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、アリルコハク酸無水物等を挙げることができる。
CH2 =CHCH2 O(CH2 CH2 O)b R5 (12)
(式中、bは1〜1000の整数を表す。R5 は、水素原子或いは直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基を表す。)
【0035】
また、上記式(11)で表されるSi−H基含有ケイ素化合物に反応性基を導入するのに用いる炭素−炭素不飽和結合化合物としては、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、(環状)酸無水物基、ケト基、カルボキシル基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、水酸基、アミノ基、環状カーボネート基、エステル基からなる群から選ばれた少なくとも1種の反応性基を有するオレフィン類、アリルエーテル類、アリルエステル類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン誘導体等が挙げられる。
上記反応性基を有する炭素−炭素不飽和結合化合物の好ましい具体例として、例えばアリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アリル、ジアリルエーテル、ジアリルフタレート、(メタ)アクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、エチレングリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、5−ヘキセン−2−オン、アリルイソシアネート、アリルアルコール、エチレングリコールモノアリルエーテル、アリルアミン、アリルイソチオシアネート、アリルセミカルバジド、(メタ)アクリル酸ヒドラジド、4−アリルオキシメチル−2−オキソ−1,3−ジオキソラン等を挙げることができる。
【0036】
また、上記式(11)で表されるSi−H基含有ケイ素化合物に分光増感基を導入するのに用いる炭素−炭素不飽和結合化合物としては、前述した分光増感色素を有するオレフィン類、アリルエーテル類、アリルエステル類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン誘導体等が挙げられる。これらは、例えば前述した反応性基を有する炭素−炭素不飽和結合化合物と、該反応性基と反応性を有する分光増感色素との反応によって容易に得ることができる。
例えば、反応性基を有する炭素−炭素不飽和結合化合物の反応性基がエポキシ基、(環状)酸無水物、イソシアネート基、イソチオシアネート基、環状カーボネート基、エステル基、ケト基、(メタ)アクリロイル基の場合は、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、ヒドラジン残基、(メタ)アクリロイル基からなる群から選ばれた少なくとも1つの官能基を有する分光増感色素であり、逆に反応性基を有する炭素−炭素不飽和結合化合物の反応性基がアミノ基、カルボキシル基、水酸基、ヒドラジン残基、(メタ)アクリロイル基の場合は、エポキシ基、(環状)酸無水物、イソシアネート基、イソチオシアネート基、環状カーボネート基、エステル基、ケト基、(メタ)アクリロイル基からなる群から選ばれた少なくとも1つの官能基を有する分光増感色素が挙げられる。
上記反応性基を有する炭素−炭素不飽和結合化合物とそれに反応性を有する分光増感色素との反応は、各々の反応性基の種類に応じた反応温度、反応圧力、溶媒等の反応条件を選択して実施できる。その際、分光増感色素の安定性の点から、反応温度としては300℃以下が好ましく、150℃以下0℃以上がさらに好ましい。
【0037】
(Q−1)−方法において、上記炭素−炭素不飽和結合化合物と上記式(11)で表されるSi−H基含有ケイ素化合物とのヒドロシリル化反応は、好ましくは触媒の存在下、有機溶媒の存在下あるいは非存在下において0〜200℃で炭素−炭素不飽和結合化合物(C)と式(11)で表されるSi−H基含有ケイ素化合物(b1’)を、重量比(C)/(b1’)=0.01以上、より好ましくは(C)/(b1’)=0.01〜2、さらに好ましくは(C)/(b1’)=0.01〜1で接触させることにより行うことができる。
上記ヒドロシリル化反応の触媒としては、白金族触媒、すなわちルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金の化合物が適しているが、特に白金の化合物とパラジウムの化合物が好適である。白金の化合物としては、例えば塩化白金(II)、テトラクロロ白金酸(II)、塩化白金(IV)、ヘキサクロロ白金酸(IV)、ヘキサクロロ白金(IV)アンモニウム、ヘキサクロロ白金(IV)カリウム、水酸化白金(II)、二酸化白金(IV)、ジクロロ−ジシクロペンタジエニル−白金(II)、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−ホスフィン錯体、白金−オレフィン錯体や白金の単体、
アルミナやシリカや活性炭に固体白金を担持させたものが挙げられる。パラジウムの化合物としては、例えば塩化パラジウム(II)、塩化テトラアンミンパラジウム(II)酸アンモニウム、酸化パラジウム(II)等が挙げられる。
また、ヒドロシリル化反応に使用できる有機溶媒としては、例えばトルエンやキシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素等のハロゲン化合物類、ジメチルスルホキシド、ニトロベンゼン等やこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0038】
次に、機能性付与基を有するSi−H基含有ケイ素化合物を得る方法として、上述した(Q−2)の方法[以下(Q−2)−方法]について説明する。
(Q−2)−方法において使用される反応性基を有する炭素−炭素不飽和結合化合物としては、(Q−1)−方法において述べたものを挙げることができる。また、上述した式(11)で表されるSi−H基含有ケイ素化合物と該反応性基を有する炭素−炭素不飽和結合化合物とのヒドロシリル化反応は、(Q−1)−方法で述べたヒドロシリル化反応と同じ条件で実施することができる。
(Q−2)−方法によると、上記ヒドロシリル化反応によって反応性基を有するSi−H基含有ケイ素化合物を得ることができる。この反応性基を有するSi−H基含有ケイ素化合物とそれに反応性を有する機能性付与基含有化合物との反応は、各々の反応性基の種類に応じた反応温度、反応圧力、溶媒等の反応条件を選択して実施できる。その際、Si−H基の安定性の点から、反応温度としては300℃以下が好ましく、150℃以下0℃以上がさらに好ましい。
【0039】
本発明によって得られた上記変性メソポーラス酸化物(A)は、有機溶媒分散性や樹脂相溶性の発現、架橋性能の発現等、様々な機能が付与され、構造熱安定性が向上したメソポーラス酸化物である。ここで、構造熱安定性とは、加熱時、特に結晶化熱処理時における細孔構造の安定性を意味する。
本発明の変性メソポーラス酸化物(A)は、構造熱安定性に優れるため、熱処理によって変性前のメソポーラス酸化物(a)の細孔構造を高度に維持した高結晶性メソポーラス酸化物(B)を得ることができる。この際の熱処理条件としては、メソポーラス酸化物(a)が結晶化する条件であれば制限はないが、例えば空気中、真空中、窒素気流中、アルゴン気流中、ヘリウム気流中等の雰囲気下で、300〜2000℃、好ましくは400〜1500℃において、好ましくは1分以上、更に好ましくは1〜100時間保持することが好ましい。
また、変性メソポーラス酸化物(A)を熱処理する前に溶媒で洗浄すると、未反応の変性剤化合物(b)が除去できるため生成する高結晶性メソポーラス酸化物(B)の細孔径が変性前のメソポーラス酸化物(a)の状態をより高度に維持でき、高表面積となるため好ましい。該溶媒としては、メソポーラス酸化物(a)を変性剤化合物(b)で変性処理する際に好適に使用できる、上述した水及び/または有機溶媒を例示することができる。
【0040】
本発明において、上記メソポーラス酸化物の細孔構造維持は変性処理前後および熱処理前後における窒素吸着等温線の測定やTEM観察等によって評価する事ができる。また、メソポーラス酸化物の結晶性は、例えばX線回折(XRD)等により通常の方法で評価することができる。
本発明において、変性メソポーラス酸化物(A)の熱処理によって得られる高結晶性メソポーラス酸化物(B)は、酸またはアルカリ処理、またはそれらの組み合わせ処理により変性前のメソポーラス酸化物(a)の細孔径の状態をより高度に維持することができる。
上記酸としては、例えば塩酸等のハロゲン化水素、硫酸、硝酸、トリクロル酢酸等のカルボン酸、p−トルエンスルホン酸等を挙げることをできる。
また、上記アルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、ナトリウムメチラート等のナトリウムアルコキシド、カリウムメチラート等のカリウムアルコキシド等を挙げることができる。
上記高結晶性メソポーラス酸化物(B)の酸またはアルカリ処理は、水及び/または親水性の溶媒(アルコール類、エーテル類、ケトン類、アミド類、ジメチルスルホキシド等)中で実施することが好ましい。
【0041】
本発明において、変性メソポーラス酸化物(A)の熱処理によって得られる高結晶性メソポーラス酸化物(B)は、変性メソポーラス酸化物(A)表面に存在する上記変性剤化合物(b)に由来する珪素原子に結合した有機基(R)の少なくとも一部(好ましくは5モル%以上、更に好ましくは50モル%以上)が水酸基及び/又は該水酸基の脱水縮合反応で生成するシロキサン結合に変換された状態である。
本発明の変性メソポーラス酸化物(A)または高結晶性メソポーラス酸化物(B)において、半導体特性を有するものはバンドギャップエネルギーよりも高いエネルギーの光を照射することにより親水性及び/又は光触媒活性、さらには光電変換機能を示す。
【0042】
また、光触媒活性を有する変性メソポーラス酸化物(A)または高結晶性メソポーラス酸化物(B)は、Pt、Rh、Ru、Ir、Cu、Sn、Ni、Fe、W、Coよりなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属及び/又は該遷移金属の酸化物を担持することにより光触媒活性が向上させることが可能である。これら遷移金属及び/又は該遷移金属の酸化物の担持方法としては、例えば担持する遷移金属及び/又は該遷移金属の酸化物の前駆体を変性メソポーラス酸化物(A)または高結晶性メソポーラス酸化物(B)に共存させて加熱する方法(焼成法)や光を照射する方法(光電着法)、及びそれらの組み合わせ等を挙げる事ができる。
本発明において、上記バンドギャップエネルギーよりも高いエネルギーの光の光源としては、太陽光や室内照明灯等の一般住宅環境下で得られる光の他、ブラックライト、キセノンランプ、水銀灯、LED等の光が利用できる。
本発明の変性メソポーラス酸化物(A)または高結晶性メソポーラス酸化物(B)であって、有機物分解等の光触媒活性を有するものは、抗菌、防汚、防臭、NOx分解等の様々な機能を発現し、大気、水等の環境浄化等の用途に使用することができるため非常に好ましい。
【実施例】
【0043】
以下の実施例、参考例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
実施例、参考例及び比較例中において、各種の物性は下記の方法で測定した。
1.X線回折(XRD)
X線回折(XRD)はRINT−2100(Rigaku(株)製)を用いて測定した。
2.窒素吸着等温線
窒素吸着等温線はSA3100(Coulter 社製)を用いて測定した。窒素吸着量(Y軸/容積(mL/g))の急激に増加する相対圧(P/P0)(X軸)領域と細孔径とが対応するする。立ち上がりの程度は細孔容積と関連する。
3.TEM観察
TEM観察は、JEM2010F(JEOL(株)製)を用い、加速電圧200kVで実施した。
・装置:日立製HF2000型
4.赤外線吸収スペクトル
赤外線吸収スペクトルは、FT/IR−410(日本分光(株)製)を用い、デュラサ
ンプラーIR(エス.ティ.ジャパン(株))で拡散反射スペクトルとして測定した。
【0044】
5.有機溶剤分散性
トルエン2gにサンプル0.01gを添加して1分間超音波処理を行ってから5分間静置した後、サンプルの分散の程度(目視で評価)に基づき、有機溶剤分散性を以下の3段階で評価した。
◎:サンプルが完全に分散。
○:サンプルがわずかに沈殿。
×:サンプルが完全に沈殿。
6.光触媒活性
メチレンブルーの0.01 mmol/lの水溶液10gにサンプル0.01gを添加し、撹拌下において東芝ライテック製FL20SBLB型ブラックライトを3時間照射した後、メチレンブルーの分解の程度(退色の程度に基づき、目視で評価)に基づき、光触媒の活性を以下の4段階で評価した。
なおこのときの光強度は、トプコン製UVR−2型紫外線強度計を用いて測定した紫外線強度(受光部として、上記UD−36型受光部を使用)が1mW/cm2 となるように調整した。
◎:メチレンブルーの青色が消失し、透明になる。
○:メチレンブルーの青色がわずかに残る。
△:メチレンブルーの青色が、試験前に比べて薄くなる。
×:メチレンブルーの青色が、試験前とほぼ同じ。
【0045】
[参考例1]
メソポーラス酸化ニオブの調製
界面活性剤として、P123〔商品名、BASF社製:(HO(CH2 CH2 O)20(CH2 CH(CH3 )O)70(CH2 CH2 O)20H)1gをビーカー内に仕込み、これに10gのn−プロパノールを加え、撹拌して前記界面活性剤を溶解させた。これに五塩化ニオブ(NbCl5)1.89g(7mmol)を加え、20分間撹拌溶解させた。次いで加水分解のために水を1.26g(70mmol)を加えて更に10分間撹拌した。得られたゾル溶液をシャーレに移し、40℃の恒温槽で7日間熟成した後、空気雰囲気下の電気炉中にて450℃で5時間焼成することにより化合物(1)を得た。
得られた化合物(1)のX線回折(XRD)を図1に示す。また、図2に化合物(1)の窒素吸着等温線を示す。これらの結果より、得られた化合物(1)は、BET表面積205m2 /g、細孔径6.0nmのアモルファスのメソポーラス酸化ニオブであることがわかる。また、TEM観察の結果、メソポーラス酸化ニオブは2次元ヘキサゴナル構造であることが確認できた。
【0046】
[実施例1]
還流冷却器、温度計および撹拌装置を有する反応器に参考例1で合成したメソポーラス酸化ニオブ0.8gを添加し70℃に昇温した。これに4.0gのビス(トリメチルシロキシ)メチルシランを70℃にて撹拌下に約5分かけて添加し、さらに70℃で5時間撹拌を続けた。ビス(トリメチルシロキシ)メチルシランの反応に伴い生成した水素ガス量は23℃において27.0mlであった。続いて、反応液から未反応のビス(トリメチルシロキシ)メチルシランを減圧加熱除去し、変性メソポーラス酸化ニオブを得た。得られた変性メソポーラス酸化ニオブの赤外線吸収スペクトルを測定したところ、Si−CH3 基の吸収(1271cm-1)が観測された。
得られた変性メソポーラス酸化ニオブの有機溶剤分散性は良好(○)であり、変性前のメソポーラス酸化ニオブの有機溶剤分散性(×)が変性処理により向上していた。
得られた変性メソポーラス酸化ニオブ0.1gをテトラヒドロフラン(THF)40mlに入れ、60℃で30分撹拌した後、吸引濾過することにより変性メソポーラス酸化ニ
オブを洗浄した。
【0047】
THF洗浄前の変性メソポーラス酸化ニオブの窒素吸着等温線を図3に、THF洗浄後の窒素吸着等温線を図4に示す。THF洗浄前の変性メソポーラス酸化ニオブのBET表面積は35m2 /gであるのに対し、THF洗浄後はBET表面積129m2 /gとなり、THF洗浄により表面積が増大した。
また、X線回折(XRD)の測定により、変性メソポーラス酸化ニオブはTHF洗浄前後において、どちらもアモルファスである事が観察された。
続いてTHF洗浄した変性メソポーラス酸化ニオブを空気中において670℃で3時間熱処理した。得られた化合物のX線回折(XRD)を図5に示す。また、図6に窒素吸着等温線の測定結果を示す。これらの結果より、得られた化合物は、表面積136m2 /g、細孔径6.0nmの高結晶性のメソポーラス酸化ニオブであることがわかる。また、TEM観察の結果、得られた高結晶性メソポーラス酸化ニオブは2次元ヘキサゴナル構造であることが確認できた。
【0048】
[参考例2]
メソポーラス酸化チタンの調製
界面活性剤として、P85〔商品名、BASF社製:HO(CH2 CH2 O)26(CH2 CH(CH3 )O)39(CH2 CH2 O)26H〕1gをビーカー内に仕込み、これに10gのn−プロパノールを加え、撹拌して前記界面活性剤を溶解させた。これにチタンテトライソプロポキシド(Ti(i−PrO)4 )2.84g(10mmol)を加え、20分間撹拌溶解させた。次いで36質量%塩酸0.85ml(0.01mol)を加えて更に10分間撹拌した。得られたゾル溶液をシャーレに移し、40℃の恒温槽で7日間熟成した後、空気雰囲気下の電気炉中にて300℃で10時間焼成することにより化合物(2)を得た。
得られた化合物(2)のX線回折(XRD)を図7に示す。また、図8に化合物(2)の窒素吸着等温線を示す。これらの結果より、得られた化合物(2)は、BET表面積291m2 /g、細孔径3.7nmのアモルファスのメソポーラス酸化チタンであることがわかる。また、TEM観察の結果、メソポーラス酸化チタンはワーム−ホール構造であることが確認できた。
【0049】
[実施例2]
還流冷却器、温度計および撹拌装置を有する反応器に参考例2で合成したメソポーラス酸化チタン0.8gを添加し70℃に昇温した。これに4.0gのビス(トリメチルシロキシ)メチルシランを70℃にて撹拌下に約5分かけて添加し、さらに70℃で5時間撹拌を続けた。ビス(トリメチルシロキシ)メチルシランの反応に伴い生成した水素ガス量は23℃において67.0mlであった。続いて、反応液から未反応のビス(トリメチルシロキシ)メチルシランを減圧加熱除去し、変性メソポーラス酸化チタンを得た。得られた変性メソポーラス酸化チタンの赤外線吸収スペクトルを測定したところ、Si−CH3 基の吸収(1271cm-1)が観測された。
得られた変性メソポーラス酸化チタンの有機溶剤分散性は良好(○)であり、変性前のメソポーラス酸化チタンの有機溶剤分散性(×)が変性処理により向上していた。
得られた変性メソポーラス酸化チタン0.1gをテトラヒドロフラン(THF)40mlに入れ、60℃で30分撹拌した後、吸引濾過することにより変性メソポーラス酸化チタンを洗浄した。
【0050】
続いてTHF洗浄した変性メソポーラス酸化ニオブを空気中において600℃で3時間熱処理した。得られた化合物のX線回折(XRD)を図9に示す。また、図10に窒素吸着等温線の測定結果を示す。これらの結果より、得られた化合物は、表面積274m2 /g、細孔径3.5nmの結晶性(アナターゼ型)メソポーラス酸化チタンであることがわ
かる。また、TEM観察の結果、得られた高結晶性メソポーラス酸化チタンはワーム−ホール構造であることが確認できた。 また、得られた高結晶性メソポーラス酸化チタンの光触媒活性評価を実施したところ、良好な結果(○)であった。
【0051】
[実施例3]
実施例2で得た高結晶性メソポーラス酸化チタンの0.2gに0.1質量%のRu3 (CO)12を含有するテトラヒドロフラン溶液2gを添加して1時間攪拌した後、テトラヒドロフランを蒸発除去し、さらに大気中400℃で3時間加熱することによりRuO2 を担持した高結晶性メソポーラス酸化チタンを得た。
得られたRuO2 担持高結晶性メソポーラス酸化チタンの光触媒活性評価を実施したところ、非常に良好な結果(◎)であった。
【0052】
[参考例3]
メソポーラスNbTa複合酸化物の調製
界面活性剤として、P123〔商品名、BASF社製〕1gをビーカー内に仕込み、これに10gのエタノールを加え、撹拌して前記界面活性剤を溶解させた。これに五塩化ニオブ0.81g(3mmol)と五塩化タンタル1.07g(3mmol)を加え、20分間撹拌溶解させた。次いで加水分解のために水を0.32g(18mmol)を加えて更に10分間撹拌した。得られたゾル溶液をシャーレに移し、40℃の恒温槽で7日間熟成した後、空気雰囲気下の電気炉中にて450℃で5時間焼成することにより化合物(3)を得た。
得られた化合物(3)のX線回折(XRD)を図11に示す。また、図12に化合物(3)の窒素吸着等温線を示す。これらの結果より、得られた化合物(3)は、BET表面積205m2 /g、細孔径7.4nmのアモルファスのメソポーラスNbTa複合酸化物であることがわかる。また、TEM観察の結果、メソポーラスNbTa複合酸化物は2次元ヘキサゴナル構造であることが確認できた。
【0053】
[実施例4]
還流冷却器、温度計および撹拌装置を有する反応器に参考例3で合成したメソポーラスNbTa複合酸化物0.7gを添加し70℃に昇温した。これに3.5gのビス(トリメチルシロキシ)メチルシランを70℃にて撹拌下に約5分かけて添加し、さらに70℃で5時間撹拌を続けた。ビス(トリメチルシロキシ)メチルシランの反応に伴い生成した水素ガス量は23℃において26.0mlであった。続いて、反応液から未反応のビス(トリメチルシロキシ)メチルシランを減圧加熱除去し、変性メソポーラスNbTa複合酸化物を得た。得られた変性メソポーラスNbTa複合酸化物の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、Si−CH3 基の吸収(1271cm-1)が観測された。
得られた変性メソポーラスNbTa複合酸化物の有機溶剤分散性は良好(○)であり、変性前のメソポーラスNbTa複合酸化物の有機溶剤分散性(×)が変性処理により向上していた。
【0054】
得られた変性メソポーラスNbTa複合酸化物を空気中において793℃で3時間熱処理した。得られた化合物のX線回折(XRD)を図13に示す。また、図14に窒素吸着等温線の測定結果を示す。これらの結果より、得られた化合物は、表面積102m2 /g、細孔径4.5nmの高結晶性のメソポーラスNbTa複合酸化物であることがわかる。
さらに、得られた高結晶性のメソポーラスNbTa複合酸化物0.1gをpH13に調整した水酸化ナトリウム水溶液50mlに入れ、100℃で30分撹拌し冷却した後、吸引濾過することにより高結晶性メソポーラスNbTa複合酸化物をアルカリ処理した。アルカリ処理後の高結晶性メソポーラスNbTa複合酸化物のX線回折(XRD)を図15に、窒素吸着等温線を図16に示す。アルカリ処理により高結晶性メソポーラスNbTa複合酸化物は結晶性を維持したまま、BET表面積(138m2 /g)及び細孔径(6.
5nm)が増大していることが確認できた。また、TEM観察の結果、アルカリ処理した高結晶性メソポーラスNbTa複合酸化物は2次元ヘキサゴナル構造であることが確認できた。
【0055】
[比較例1]
参考例1で得たメソポーラス酸化ニオブ0.1gを空気中において570℃で3時間熱処理した。得られた化合物のX線回折(XRD)を図17に、窒素吸着等温線を図18に示す。これらの結果とTEM観察より、得られた化合物は細孔構造が崩壊したBET表面積59m2 /gの結晶性酸化ニオブ粉体であることが確認できた。
[比較例2]
参考例2で得たメソポーラス酸化チタン0.1gを空気中において600℃で3時間熱処理した。X線回折(XRD)、窒素吸着等温線、TEM観察より、得られた化合物は細孔構造が崩壊したBET表面積12m2 /gのアナターゼ型酸化チタン粉体であることが確認できた。
また、得られたアナターゼ型酸化チタン粉体の光触媒活性評価は△であり、実施例2で得た高結晶性メソポーラス酸化チタンの光触媒活性評価(○)に劣る結果であった。
【0056】
[比較例3]
テトラエチルオルトシリケート(TEOS)3.5gをエタノール10gに溶解した溶液に参考例3で合成したメソポーラスNbTa複合酸化物0.7gを添加し室温で30分撹拌した。次いで36質量%塩酸0.85ml(0.01mol)を加えて更に5時間撹拌した後、空気雰囲気下の電気炉中にて300℃で10時間焼成することにより化合物(4)を得た。
得られた化合物(4)の有機溶剤分散性は悪い結果(×)であった。
得られた化合物(4)を空気中において793℃で3時間熱処理したものの窒素吸着等温線を測定したところ、細孔の存在は観察されなかった。
さらに、上記方法で熱処理した化合物(5)0.1gをpH13に調整した水酸化ナトリウム水溶液50mlに入れ、100℃で30分撹拌し、冷却した後、吸引濾過したものの窒素吸着等温線を測定したが、細孔の存在は観察されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の変性メソポーラス酸化物(A)及び高結晶性メソポーラス酸化物(B)は、種々の物理化学的な機能を持つ細孔の均一性が良好で高表面積を有する材料であり、例えば種々の触媒として、また例えば極めて優れた吸着能を有する無機高分子として利用する事ができる。
さらに、本発明の変性メソポーラス酸化物(A)又は高結晶性メソポーラス酸化物(B)であって、有機物分解等の光触媒活性を有するものは、抗菌、防汚、防臭、NOx分解等の様々な機能を発現し、大気、水等の環境浄化等の用途に使用することができる。
本発明の変性メソポーラス酸化物(A)又は高結晶性メソポーラス酸化物(B)であって、光照射により20℃における水との接触角が60゜以下(好ましくは10゜以下)となった親水性のもの(親水性膜、及び該親水性膜で被覆された基材等)は、鏡やガラスの曇りを防止する防曇技術、さらには建築外装等に対する防汚技術や帯電防止技術等への応用が可能である。
【0058】
本発明の光触媒活性を有する変性メソポーラス酸化物(A)又は高結晶性メソポーラス酸化物(B)の防汚技術分野への応用例としては、例えば建材、建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、構造部材、住宅等建築設備、特に便器、浴槽、洗面台、照明器具、照明カバー、台所用品、食器、食器洗浄器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇等、また、乗物の外装および塗装、用途によってはその内装にも使用でき、車両用照明灯のカバー、窓ガラス、計器、表示盤等透明性が要求される部材での使用に効果があ
り、また、機械装置や物品の外装、防塵カバーおよび塗装、表示機器、そのカバー、交通標識、各種表示装置、広告塔等の表示物、道路用、鉄道用等の遮音壁、橋梁、ガードレールの外装および塗装、トンネル内装および塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー等外部で使用される電子、電気機器の外装部、特に透明部材、ビニールハウス、温室等の外装、特に透明部材、また、室内にあっても汚染のおそれのある環境、たとえば医療用や体育用の施設、装置等の用途を挙げることができる。
【0059】
本発明の光触媒活性を有する変性メソポーラス酸化物(A)又は高結晶性メソポーラス酸化物(B)の防曇技術分野への応用例としては、例えば鏡(車両用後方確認ミラー、浴室用鏡、洗面所用鏡、歯科用鏡、道路鏡等)、レンズ(眼鏡レンズ、光学レンズ、照明用レンズ、半導体用レンズ、複写機用レンズ、車両用後方確認カメラレンズ等)、プリズム、建物や環視塔の窓ガラス、乗物の窓ガラス(自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、ロープウェイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、宇宙船等)、乗物の風防ガラス(自動車、オートバイ、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、スノーモービル、ロープウェイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、宇宙船等)、防護用ゴーグル、スポーツ用ゴーグル、防護用マスクのシールド、スポーツ用マスクのシールド、ヘルメットのシールド、冷凍食品陳列ケースのガラス、保温食品の陳列ケースのガラス、計測機器のカバー、車両用後方確認カメラレンズのカバー、レーザー歯科治療器等の集束レンズ、車間距離センサー等のレーザー光検知用センサーのカバー、赤外線センサーのカバー、カメラ用フィルター等の用途を挙げることができる。
【0060】
本発明の光触媒活性を有する変性メソポーラス酸化物(A)又は高結晶性メソポーラス酸化物(B)の帯電防止技術分野への応用例としては、例えばブラウン管、磁気記録メディア、光記録メディア、光磁気記録メディア、オーディオテープ、ビデオテープ、アナログレコード、家庭用電気製品のハウジングや部品や外装および塗装、OA機器製品のハウジングや部品や外装および塗装、建材、建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、構造部材、乗物の外装および塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバーおよび塗装等の用途を挙げることができる。
【0061】
本発明の光触媒活性を有する変性メソポーラス酸化物(A)又は高結晶性メソポーラス酸化物(B)の抗菌、防カビ技術分野への応用例としては、例えば建材、建物外装、建物内装、窓枠、構造部材、住宅等建築設備、特に便器、浴槽、洗面台、照明器具、照明カバー、台所用品、食器、食器洗浄器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、食器棚、飾り棚、浴室や洗面所の壁、天井、ドアノブ、さらには医療用や公共施設等、例えば病院内の部材、救急車の各種部材あるいは食品・医薬品工場、学校・体育館・駅などの公共施設、公衆浴場、公衆トイレ、旅館、ホテル、その他における衛生管理のために、壁面、床面や天井面、各所の什器、備品、ドアノブなどの用途を挙げることができる。特に、院内感染防止方法として病院内の部材に広範囲に用いることが可能である。該病院内の部材としては、例えば病室、診察室、廊下、階段、エレベーター、待合室、洗面所等、不特定多数のものが接触する場所における床、壁、天井、手すり、ドア把手、水道蛇口、各種診療機器等が挙げられる。また、病院内に限らず、救急車や食品保管室、食品調理室等の衛生を必要とする場所の各種部材に対しても効果的に抗菌性や防カビ性を付与することができる。
【0062】
本発明によって提供される光触媒活性を有する変性メソポーラス酸化物(A)又は高結晶性メソポーラス酸化物(B)であって、光照射により20℃における水との接触角が70゜以上(好ましくは90゜以上)となった疎水性のもの(疎水性の成形体や疎水性膜、及び該疎水性膜で被覆された基材等)は、防滴性や水切れ性の付与、水系汚れの付着防止や流水洗浄性を利用した防汚技術、さらには着氷雪防止技術等への応用が可能であり、窓ガラス、風防ガラス、鏡、レンズ、ゴーグル、カバー、碍子、建材、建物外装、建物内装
、構造部材、乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の外装、各種表示装置、照明装置、住宅設備、食器、台所用品、家庭用電気製品、屋根材、アンテナ、送電線、氷雪滑走具等の用途に使用することができる。
【0063】
本発明によって提供される変性メソポーラス酸化物(A)又は高結晶性メソポーラス酸化物(B)であって光電変換機能を有するものは、太陽エネルギーの電力変換等の機能を発現することが可能であり、(湿式)太陽電池等に用いる光半導体電極等の用途に使用することができる。
また、本発明によって提供される、光照射によって水との濡れ性が変化(疎水性から親水性への変化、あるいは親水性から疎水性への変化)するものは、オフセット印刷用原版等への応用に対し非常に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソポーラス酸化物(a)を、式(1)で表されるトリオルガノシラン単位、式(2)で表されるモノオキシジオルガノシラン単位、式(3)で表されるジオキシオルガノシラン単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の構造単位を有する化合物類よりなる群から選ばれる少なくとも1種の変性剤化合物(b)を用いて該メソポーラス酸化物(a)の表面に固定化処理することによって得られる変性メソポーラス酸化物(A)を熱処理することにより誘導される高結晶性メソポーラス酸化物(B)。
R3 Si− (1)
(式中、Rは各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のフルオロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基、フェニル基、水素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、又は水酸基を表す。)
−(R2 SiO)− (2)
(式中、Rは式(1)で定義した通りである。)
【化1】
(式中、Rは式(1)で定義した通りである。)
【請求項2】
請求項1に記載の変性メソポーラス酸化物(A)を溶媒で洗浄した後、熱処理することにより誘導される高結晶性メソポーラス酸化物(B)。
【請求項3】
熱処理の後に酸及び/又はアルカリ処理されてなる請求項2または3に記載の高結晶性メソポーラス酸化物(B)。
【請求項4】
メソポーラス酸化物(a)が、遷移金属を含有するメソポーラス酸化物であることを特徴とする請求項1〜3のいづれか1項に記載の高結晶性メソポーラス酸化物(B)。
【請求項5】
Pt、Rh、Ru、Ir、Cu、Sn、Ni、Fe、W、Coよりなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属及び/又は該遷移金属の酸化物が坦持されてなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の高結晶性メソポーラス酸化物(B)。
【請求項1】
メソポーラス酸化物(a)を、式(1)で表されるトリオルガノシラン単位、式(2)で表されるモノオキシジオルガノシラン単位、式(3)で表されるジオキシオルガノシラン単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の構造単位を有する化合物類よりなる群から選ばれる少なくとも1種の変性剤化合物(b)を用いて該メソポーラス酸化物(a)の表面に固定化処理することによって得られる変性メソポーラス酸化物(A)を熱処理することにより誘導される高結晶性メソポーラス酸化物(B)。
R3 Si− (1)
(式中、Rは各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のフルオロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基、フェニル基、水素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、又は水酸基を表す。)
−(R2 SiO)− (2)
(式中、Rは式(1)で定義した通りである。)
【化1】
(式中、Rは式(1)で定義した通りである。)
【請求項2】
請求項1に記載の変性メソポーラス酸化物(A)を溶媒で洗浄した後、熱処理することにより誘導される高結晶性メソポーラス酸化物(B)。
【請求項3】
熱処理の後に酸及び/又はアルカリ処理されてなる請求項2または3に記載の高結晶性メソポーラス酸化物(B)。
【請求項4】
メソポーラス酸化物(a)が、遷移金属を含有するメソポーラス酸化物であることを特徴とする請求項1〜3のいづれか1項に記載の高結晶性メソポーラス酸化物(B)。
【請求項5】
Pt、Rh、Ru、Ir、Cu、Sn、Ni、Fe、W、Coよりなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属及び/又は該遷移金属の酸化物が坦持されてなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の高結晶性メソポーラス酸化物(B)。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−265174(P2010−265174A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167722(P2010−167722)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【分割の表示】特願2004−28753(P2004−28753)の分割
【原出願日】平成16年2月5日(2004.2.5)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【分割の表示】特願2004−28753(P2004−28753)の分割
【原出願日】平成16年2月5日(2004.2.5)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】
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