説明

変性共役ジエン系ゴム組成物及び変性共役ジエン系ゴム組成物の製造方法

【課題】シリカ系無機充填剤等の各種無機充填剤との親和性に優れ、加硫物としたときに、ウェットスキッド特性と低ヒステリシスロス性とのバランスに優れ、実用上十分な耐摩耗性及び破壊強度を満足する変性共役ジエン系重合体を提供する。
【解決手段】ポリビニル芳香族化合物とリチウムとのモル比(ポリビニル芳香族化合物/リチウム)が0.05〜1.0の範囲で調製された多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を重合、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合することによって得られる共役ジエン系共重合体の重合活性末端に、2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子を有する化合物を、反応させることにより得られる、共役ジエン重合体の末端部に1つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基及び1つ以上の窒素原子を有する変性共役ジエン系重合体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性共役ジエン系(共)重合体を含むゴム組成物及び変性共役ジエン系ゴム組成物の製造方法に関する。
詳細には、特定の多官能開始剤により重合し、重合活性末端を分子中に3級アミノ基を2個以上およびアルコキシシリル基を1個以上有する化合物で変性した変性共役ジエン系重合体を含む変性共役ジエン系ゴム組成物及び変性共役ジエン系ゴム組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素排出量の抑制等、環境に対する配慮が社会的要請となっている。具体的には自動車に対する低燃費化要求が高まってきている。
このような現状から、自動車用タイヤ、特に地面と接するタイヤトレッドの材料として、転がり抵抗が小さい材料の開発が求められてきている。
一方、安全性の観点からは、ウェットスキッド抵抗に優れ、実用上十分な耐摩耗性、破壊特性を有する材料の開発が求められている。
従来、タイヤトレッドの補強性充填剤としては、カーボンブラック、シリカ等が使用されている。
シリカを用いると、低ヒステリシスロス性及びウェットスキッド抵抗性の向上が図られるという利点を有している。
しかし一方において、疎水性表面のカーボンブラックに対して、親水性表面のシリカは、共役ジエン系ゴムとの親和性が低く、カーボンブラックに比較して分散性が悪いという欠点を有していることから、分散性を改良させたり、シリカ−ゴム間の結合付与を行ったりするため、別途シランカップリング剤を含有させたりしなければならない。
さらに近年においては、運動性の高いゴム分子末端部に、シリカとの親和性や反応性を有する官能基を導入することによって、ゴム材中におけるシリカの分散性を改良し、さらにはゴム分子末端部をシリカ粒子との結合で封じることによって、ヒステリシスロスを低減化する試みがなされている。
【0003】
例えば、従来においては、グリシジルアミノ基を有する変性剤を重合体末端に反応させて得られる変性ジエン系ゴム(特許文献1参照。)や、グリシドキシアルコキシシランを重合体末端に反応させて得られる変性ジエン系ゴム(特許文献2参照。)、さらにはアミノ基を含有するアルコキシシラン類を重合体末端に反応させて得られる変性ジエン系ゴム(特許文献3、4参照。)、及びこれらとシリカとの組成物についての提案がなされている。
また、多官能アニオン重合開始剤を用いてジエン系ゴムの重合を行い、その後に、グリシジルアミノ基等の変性剤によって変性することにより、官能化された重合体末端数を増やして、ジエン系ゴムとシリカとにより構成される組成物の性能、すなわちシリカ分散性を向上させ、ヒステリシスロスを低減化させる技術(特許文献5参照。)の提案もなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開01/23467号
【特許文献2】特開平07−233217号公報
【特許文献3】特開2001−158834号公報
【特許文献4】特開2003−171418号公報
【特許文献5】特開2006−306962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年における低燃費化の要求のさらなる高まりとともに、一層、ヒステリシスロスを低減化させたゴム組成物の開発が、要求されるようになっている。
そこで本発明においては、シリカ系無機充填剤を含む加硫物としたときに低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性とのバランスに優れ、実用上十分な耐摩耗性や破壊強度をも満足する、変性共役ジエン系重合体組成物及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の多官能性アニオン重合開始剤を用いて重合し、重合活性末端を特定の官能基を有する化合物で変性することによって得られる変性共役ジエン系重合体に、無機充填剤、特にシリカ系無機充填剤を含有させ、さらに加硫物とした場合に、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性とのバランスに優れ、実用上十分な耐摩耗性や破壊強度をも満足することを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は以下のとおりである。
【0007】
[1]
(A)ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を使用して測定された分子量分布が1.2〜3.5の範囲である多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合させた後、得られた重合体の活性末端に、2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子を有する化合物を反応させて得られた変性共役ジエン系共重合体
及び
(B)ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を使用して測定された分子量分布が1.2〜3.5の範囲である多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を重合させた後、得られた重合体の活性末端に、2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子を有する化合物とを反応させて得られた変性共役ジエン重合体を含むことを特徴とする変性共役ジエン系ゴム組成物。
【0008】
[2]
(A)炭化水素溶媒中、ポリビニル芳香族化合物とリチウムとのモル比(ポリビニル芳香族化合物/リチウム)が0.05〜1.0の範囲で調製された多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合させた後、得られた重合体の活性末端に2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子を有する化合物とを反応させて得られた変性共役ジエン系共重合体
及び
(B)炭化水素溶媒中、ポリビニル芳香族化合物とリチウムとのモル比(ポリビニル芳香族化合物/リチウム)が0.05〜1.0の範囲で調製された多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を重合させた後、得られた重合体の活性末端に2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子を有する化合物とを反応させて得られた変性共役ジエン重合体
を含むことを特徴とする変性共役ジエン系ゴム組成物。
【0009】
[3]
2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子を有する化合物が、下記一般式(1)、一般式(2)もしくは一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の変性共役ジエン系ゴム組成物。
【0010】
【化1】

【0011】
(式(1)中、R、Rは各々独立して炭素数1〜12の炭化水素基であって、R、Rは炭素数1〜20の炭化水素基であって、R、R、RはSi、O、またはNを含み、活性水素を持たない有機基で置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基であってもよい。iは1〜3の整数である。)
【0012】
【化2】

【0013】
(式(2)中、R、Rは、各々独立して炭素数1〜20のアルキル基、又はアリール基であり、Rは炭素数1〜20のアルキレン基であり、R、Rは炭素数1〜6の炭化水素基であって、隣接する2つのNとともに5員環以上の環構造をなし、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されている炭素数1〜20の炭化水素基、又は3有機置換シリル基であり、mは、2又は3の整数である。)
【0014】
【化3】

【0015】
(式(3)中、R〜R、mの定義は、前記式(1)と同一であり、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は3有機置換シリル基である。)
【0016】
[4]
[1]〜[3]のいずれかに記載の変性共役ジエン系ゴム組成物を含むゴム成分100質量部に対してシリカ系無機充填剤0.5〜300質量部を含む変性共役ジエン系ゴム組成物
[5]
変性共役ジエン系ゴム組成物100質量部に対してシリカ系無機充填剤75質量部を含む変性共役ジエン系ゴム組成物の加硫物の50℃における周波数10Hz、ひずみ0.1%と10%で測定した貯蔵弾性率の差(ΔG’)が0.8MPa以下であることを特徴とする変性共役ジエン系ゴム組成物。
【0017】
[6]
ポリビニル芳香族化合物/リチウムのモル比が0.05〜1.0の範囲でポリビニル芳香族化合物と有機リチウム化合物を反応させて、
多官能アニオン重合開始剤を調製する工程、
(A)前記多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を共重合させて、共役ジエン系共重合体を得る工程、
前記共役ジエン系共重合体の活性末端に、2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子を有する化合物を反応させる工程、
(B)前記多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物重合させて、共役ジエン重合体を得る工程、
前記共役ジエン重合体の活性末端に、2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子を有する化合物を反応させる工程、
を有することを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の変性共役ジエン系ゴム組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、シリカ系無機充填剤を含む加硫物としたときに低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性とのバランスに優れ、実用上十分な耐摩耗性や破壊強度をも満足する、変性共役ジエン系ゴム組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、本実施の形態)について詳細に説明する。なお、本発明は、本実施の形態に限定されるものではなく、要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0020】
本実施の形態における変性共役ジエン系ゴム組成物は変性共役ジエン系共重合体(A)及び変性共役ジエン重合体(B)を含む。
変性共役ジエン系共重合体(A)は、ポリビニル芳香族化合物とリチウムとのモル比(ポリビニル芳香族化合物/リチウム)が0.05〜1.0の範囲で調製された多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合することによって得られる共役ジエン系共重合体の重合活性末端に、2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子を有する化合物を反応させることにより得られる変性共役ジエン系共重合体である。
変性共役ジエン重合体(B)は、ポリビニル芳香族化合物とリチウムとのモル比(ポリビニル芳香族化合物/リチウム)が0.05〜1.0の範囲で調製された多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を重合することによって得られる共役ジエン系重合体の重合活性末端に、2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子を有する化合物を反応させることにより得られる変性共役ジエン重合体である。
【0021】
本実施の形態における変性共役ジエン系共重合体(A)及び変性共役ジエン重合体(B)の製造方法(以下、「変性共役ジエン系共重合体(A)」及び「変性共役ジエン重合体(B)」を、「変性共役ジエン系(共)重合体」とする。)は、ポリビニル芳香族化合物と有機リチウム化合物とを反応させて、ポリビニル芳香族化合物/リチウムのモル比が0.05〜1.0の範囲の多官能アニオン重合開始剤を調製する工程と、前記多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を共重合させ、又は共役ジエン化合物を重合させて、共役ジエン系(共)重合体を得る工程と、前記共役ジエン系(共)重合体の活性末端に、2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子を有する低分子化合物を反応させる工程を有する。
【0022】
先ず、変性前に共役ジエン系(共)重合体を得るための多官能アニオン重合開始剤について説明する。
多官能アニオン重合開始剤は、ポリビニル芳香族化合物と有機リチウム化合物とを反応させることにより調製できる。
例えば、炭化水素溶媒中で、有機リチウム化合物とポリビニル芳香族化合物とを反応させる方法、有機リチウム化合物と共役ジエン化合物とを反応させた後にポリビニル芳香族化合物を反応させる方法、有機リチウム化合物とモノビニル芳香族化合物とを反応させた後にポリビニル芳香族化合物を反応させる方法、共役ジエン化合物及び/又はモノビニル芳香族化合物及びポリビニル芳香族化合物の二者又は三者の存在下で有機リチウム化合物を反応させる方法等が挙げられる。
【0023】
上記のようにして調製された多官能アニオン重合開始剤が、後述する共役ジエン化合物、あるいは共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物よりなる共役ジエン系共重合体の重合に使用される。
特に、炭化水素溶媒中で、有機リチウム化合物とポリビニル芳香族化合物とを反応させる方法、有機リチウム化合物と共役ジエン化合物とを反応させた後にポリビニル芳香族化合物を反応させる方法、共役ジエン化合物及びポリビニル芳香族化合物の存在下でモノ有機リチウム化合物を反応させる方法で調製された多官能アニオン開始剤が好ましい。
また、多官能アニオン重合開始剤の生成の促進や安定化を図るために、調製の際に系内にルイス塩基を添加することが好ましい。
【0024】
<ポリビニル芳香族化合物>
多官能アニオン重合開始剤の調製に用いるポリビニル芳香族化合物としては、例えば、o,m及びp−ジビニルベンゼン、o,m及びp−ジイソプロペニルベンゼン、1,2,4−トリビニルベンゼン、1,2−ビニル−3,4−ジメチルベンゼン、1,3−ジビニルナフタレン、1,3,5−トリビニルナフタレン、2,4−ジビニルビフェニル、3,5,4’−トリビニルビフェニル、1,2−ジビニル−3,4−ジメチルベンゼン、1,5,6−トリビニル−3,7−ジエチルナフタレン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
特に、ジビニルベンセン、ジイソプロペニルベンゼンが好ましく、これらのo−,m−,p−の異性体の混合物であってもよい。工業的利用を行う場合には、これら異性体混合物を用いる方が経済的に有利である。
【0025】
<共役ジエン化合物とモノビニル芳香族化合物>
多官能アニオン重合開始剤の調製には、ポリビニル芳香族化合物と共に共役ジエン化合物及び/又はモノ芳香族ビニル化合物を用いることもできる。
共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられ、特に、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
また、モノビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン等が挙げられ、特に、スチレンが好ましい。
共役ジエン化合物及び/又はモノ芳香族ビニル化合物は、GPCで測定した多官能アニオン重合開始剤のポリスチレン換算の重量平均分子量が500〜20,000の範囲内となるように添加することが好ましく、1,000〜10,000となるように添加することがさらに好ましい。
【0026】
<有機リチウム化合物>
多官能アニオン重合開始剤の調製に用いる有機リチウム化合物としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−プロピルリチウム、iso−プロピルリチウム、ベンジルリチウム等のモノ有機リチウム化合物;1,4−ジリチオブタン、1,5−ジリチオペンタン、1,6−ジリチオヘキサン、1,10−ジリチオデカン、1,1−ジリチオジフェニレン、ジリチオポリブタジエン、ジリチオポリイソプレン、1,4−ジリチオベンゼン、1,2−ジリチオ−1,2−ジフェニルエタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼン、1,3,5−トリリチオ−2,4,6−トリエチルベンゼン等の多官能性有機リチウム化合物が挙げられる。特に、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムのモノ有機リチウム化合物が好ましい。
<溶媒>
多官能アニオン重合開始剤の調製に用いる溶媒としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
【0027】
<ルイス塩基>
多官能アニオン重合開始剤の生成の促進や安定化のためには、系内にルイス塩基を添加することが有効である。
ルイス塩基としては、3級モノアミン、3級ジアミン、鎖状又は環状エーテル等が挙げられる。
3級モノアミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、1,1−ジメトキシトリメチルアミン、1,1−ジエトキシトリメチルアミン、1,1−ジエトキシトリエチルアミン、N,N−ジメチルホルムアミドジイソプロピルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジシクロヘキシルアセタール等の化合物が挙げられる。
【0028】
3級ジアミンとしては、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノメタン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノブタン、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノペンタン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、ジピペリジノペンタン、ジピペリジノエタン等の化合物が挙げられる。
鎖状エーテルとしては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレンジメチルエーテルが挙げられる。
【0029】
環状エーテルとしては、例えば、テトラヒドロフラン、ビス(2−オキソラニル)エタン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン、1,1−ビス(2−オキソラニル)エタン、2,2−ビス(2−オキソラニル)ブタン、2,2−ビス(5−メチル−2−オキソラニル)プロパン、2,2−ビス(3,4,5−トリメチル−2−オキソラニル)プロパン等の化合物が挙げられる。
前記ルイス塩基の中でも、3級モノアミンであるトリメチルアミン、トリエチルアミン、3級ジアミンであるN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、及び環状エーテルであるテトラヒドロフラン、2,2−ビス(3,4,5−トリメチル−2−オキソラニル)プロパンが好ましい。
【0030】
前記ルイス塩基は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリビニル芳香族化合物の使用量が多いほど、後述する変性反応によって官能基を付与される分子鎖末端の割合が増加し、後述するシリカ系粒子との親和性や反応性の向上が図られ、変性共役ジエン系重合体組成物における低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性とのバランスが良好なものとなり、耐摩耗性、破壊特性の向上も図られる。一方、有機リチウム化合物に対してポリビニル芳香族化合物の使用量が少ない方が組成物混練時などでの加工性を良好なものにする観点から1.0モル以下とすることが好ましい。加工性については配合物ムーニー粘度を指標とすることができる。配合物ムーニー粘度が高すぎる場合、溶融時のトルクが上昇して電力消費が増大するなどの悪影響が生じる。また混練後のシーティング工程で均一なシート作製が難しくなるといったことも生じる。一般に低ヒステリシスロス性を改善する場合、配合物ムーニー粘度が上昇し加工性が悪化する傾向にあるが、あまり高くしないことが実用上重要である。これらのバランスからポリビニル芳香族化合物の量は、有機リチウム化合物1モルに対して0.05〜1.0モルの範囲が好ましく、0.1〜0.5モル、0.1〜0.45、0.1〜0.4モル、の範囲がさらに好ましい。
【0031】
また、多官能アニオン重合開始剤を調製する際にルイス塩基を添加する場合は、重合開始剤を調製するときに用いられる前記溶媒に対し30〜50,000ppmの範囲内で添加することが好ましく、200〜20,000ppmの範囲内で添加することが好ましい。反応促進や安定化の効果を十分に発現するためには30ppm以上の添加が好ましく、後の重合工程でのミクロ構造調整の自由度を確保することや重合後の溶媒を回収し、精製する工程における重合溶媒との分離を考慮すると50,000ppm以下で添加することが好ましい。
多官能アニオン重合開始剤を調製する際の温度は、10℃〜140℃の範囲が好ましく、35℃〜110℃の範囲がより好ましい。
生産性の観点から10℃以上であることが好ましく、高温による副反応を抑制するために140℃以下であることが好ましい。
多官能アニオン重合開始剤を調製する反応時間は、反応温度に左右されるが、5分〜24時間の範囲である。
【0032】
本発明の方法により調整された多官能アニオン重合開始剤のGPCで測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、500〜20,000の範囲であり、好ましくは1,000〜10,000である。
分子量分布は(Mw/Mn)1.2〜3.5の範囲であり、好ましくは1.2〜2.5の範囲である。この範囲の分子量分布を有する多官能アニオン重合開始剤を使用して得られた重合体を含む変性重合体組成物は、配合物ムーニー粘度が低下し、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性のバランスが優れる加硫物となる。
【0033】
本発明の変性共役ジエン系(共)重合体は、上述した多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを(共)重合させ、又は共役ジエン化合物を重合させた後、(共)重合体の活性末端に、分子中に3級アミノ基を2個以上およびアルコキシシリル基を2個以上有する低分子化合物を反応させることで製造される。特定の変性基を分子中に有しているため、本発明の変性共役ジエン系ゴム組成物は前述の優れた効果を発現することができる。
共役ジエン化合物の例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられ、一種又は二種以上を組み合わせて用いられる。好ましい化合物としては、1,3−ブタジエン、イソプレンが挙げられる。
【0034】
芳香族ビニル化合物の例としては、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン等が挙げられ、一種又は二種以上を組み合わせて用いられる。好ましい化合物としては、スチレンが挙げられる。
共役ジエン系(共)重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。ランダム共重合体としては、ブタジエン−イソプレンランダム共重合体、ブタジエン−スチレンランダム共重合体、イソプレン−スチレンランダム共重合体、ブタジエン−イソプレン−スチレンランダム共重合体などが挙げられる。共重合体鎖中の各単量体の組成分布としては、統計的ランダムな組成に近い完全ランダム共重合体、もしくはテーパー状に組成に分布があるテーパーランダム共重合体などがある。共役ジエンの結合様式、すなわち1,4−結合と1,2−結合などの組成は均一であっても分布があってもよい。
【0035】
ブロック共重合体としては、ブロックが2個からなる2型ブロック共重合体、3個からなる3型ブロック共重合体、4個からなる4型ブロック共重合体などがある。例えば、スチレン等の芳香族ビニル化合物からなるブロックをSで、ブタジエンやイソプレン等の共役ジエン化合物からなるブロック及び/又は芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体からなるブロックをBであらわすと、S−B2型ブロック共重合体、S−B−S3型ブロック共重合体、S−B−S−B4型ブロック共重合体などであらわされる。上式において、各ブロックの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はない。ブロックBが芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の場合、ブロックB中の芳香族ビニル化合物は均一に分布していても、またはテーパー状に分布していてもよい。またブロックBには、芳香族ビニル化合物が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個共存していてもよい。またブロックBには、芳香族ビニル化合物含有量が異なるセグメントが複数個共存していてもよい。共重合体中にブロックS、ブロックBがそれぞれ複数存在する場合、それらの分子量や組成等の構造は同一でも、異なっていても良い。
【0036】
ブロック共重合体の例として、より一般的には、例えば次の一般式で表されるような構造が挙げられる。
(S−B)n、 S−(B−S)n、B−(S−B)n、(S−B)m−X
[(S−B)n]m−X、[(B−S)n−B]m−X、[(S−B)n−S]m−X
(nは1以上の整数、好ましくは1〜5の整数である。mは2以上の整数、好ましくは2〜11の整数である。Xはカップリング剤の残基又は多官能開始剤の残基を示す。また、Xに結合しているポリマー鎖の構造は同一でも異なっていても良い。)
本発明において、変性共役ジエン系共重合体は,上記一般式で表される構造を有するものの任意の混合物でもよい。
【0037】
本発明の変性共役ジエン系(共)重合体は、共役ジエン系重合体の二重結合の全部または一部を飽和炭化水素に変換した水素化共役ジエン系(共)重合体であってもよい。このような二重結合の全部または一部が飽和炭化水素に変換された変性共役ジエン系(共)重合体は、耐熱性、耐候性が向上するため、高温で加工する場合の製品の劣化を防止することができ、また、分子の運動性を変化させ、あるいは他の高分子化合物との相容性を改善することができる。その結果、このような水素化された変性共役ジエン系(共)重合体は、自動車用途など種々の用途で優れた性能を発揮するため、好ましい。より具体的には、本発明において、共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合の水素化率(すなわち水添率)は目的に合わせて任意に選択でき、特に限定されない。耐熱老化性及び耐候性の良好な重合体を得る場合、(共)重合体中の共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合の水添率は70%を超えることが好ましい。より好ましくは75%以上、更に好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上が水添されていることが推奨される。また、熱安定性、分子運動性または樹脂との相容性の改良には、(共)重合体中の水添率は好ましくは3%〜70%、更に好ましくは5%〜65%、特に好ましくは10%〜60%である。なお、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体中の芳香族ビニル化合物に基づく芳香族二重結合の水添率については特に制限はないが、水添率を50%以下とすると好ましく、より好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下である。水添率は、核磁気共鳴装置(NMR)により測定することができる。
【0038】
水素化の方法としては公知の方法が利用できる。特に好適な水素化の方法は、触媒の存在下、重合体溶液に気体状水素を吹き込む方法である。触媒としては、不均一系触媒として、貴金属を多孔質無機物質に担持させた触媒、均一系触媒として、ニッケル、コバルト等の塩を可溶化し有機アルミニウム等と反応させた触媒、チタノセン等のメタロセンを用いた触媒等が挙げられる。このうち、特にマイルドな水素化条件を選択できるチタノセン触媒が好適である。また、芳香族基の水素化は貴金属の担持触媒を用いることによって可能である。
【0039】
例えば、(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩などの遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等が挙げられる。具体例としては、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭63−4841号公報、特公平1−37970号、公報、特公平1−53851号公報、特公平2−9041号公報、特開平8−109219号公報に記載された水素化触媒を使用することができる。好ましい水素化触媒としてはチタノセン化合物と還元性有機金属化合物との反応混合物があげられる。
【0040】
本実施形態において、共役ジエン系(共)重合体は、上述した多官能アニオン重合開始剤を重合開始剤とし、アニオン重合反応により成長して得られることが好ましい。特に、共役ジエン系(共)重合体は、リビングアニオン重合による成長反応によって得られる活性末端を有する(共)重合体であることがより好ましい。これにより、高変性率の変性共役ジエン系重合体を得ることができる。重合様式としては、特に限定されないが、回分式、連続式等の重合様式で行うことができる。連続式においては、1個または2個以上の連結された反応器を用いることができる。反応器は、攪拌機付きの槽型、管型などのものが用いられる。
共役ジエン化合物中に、アレン類、アセチレン類等が不純物として含有されていると、後述する変性反応を阻害するおそれがある。そのため、これらの不純物の含有量濃度(質量)の合計は、200ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることがさらに好ましい。アレン類としては、例えば、プロパジエン、1,2−ブタジエン等が挙げられる。アセチレン類としては、例えば、エチルアセチレン、ビニルアセチレン等が挙げられる。
【0041】
共役ジエン系(共)重合体の重合反応は、溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、例えば、飽和炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素系溶媒が挙げられる。具体的には、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素及びそれらの混合物からなる炭化水素等が挙げられる。重合反応に供する前に、不純物であるアレン類やアセチレン類を有機金属化合物で処理することは、高濃度の活性末端を有する重合体が得られる傾向にあり、更には高い変性率が達成される傾向にあるため好ましい。
共役ジエン系(共)重合体の重合反応においては、芳香族ビニル化合物を共役ジエン化合物とランダムに共重合させる目的で、共役ジエン部のミクロ構造を制御するためのビニル化剤として、あるいは重合速度の改善等の目的で、少量の極性化合物を添加してもよい。
【0042】
極性化合物としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジメトキシベンゼン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン等のエーテル類;テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジン等の第三級アミン化合物;カリウム−t−アミラート、カリウム−t−ブチラート、ナトリウム−t−ブチラート、ナトリウムアミラート等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物等を用いることができる。これらの極性化合物は、それぞれ単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
極性化合物の使用量は、特に限定されず、目的と効果の程度に応じて選択される。通常、重合開始剤1モルに対して0.01〜100モルが好ましい。このような極性化合物(ビニル化剤)は重合体共役ジエン部分のミクロ構造の調節剤として、所望のビニル結合量に応じて、適量用いることができる。多くの極性化合物は、同時に共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合において有効なランダム化効果を有し、芳香族ビニル化合物の分布の調整やスチレンブロック量の調整剤として用いることができる。共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをランダム化する方法としては、特開昭59−140211号公報に記載されているような、共重合の途中に1,3−ブタジエンの一部を断続的に添加する方法を用いてもよい。
重合温度はリビングアニオン重合が進行する温度であれば、特に限定されないが、生産性の観点から、0℃以上であることが好ましく、重合終了後の活性末端に対する変性剤の反応量を充分に確保する観点から、120℃以下であることが好ましい。
【0044】
本実施形態の共役ジエン系共重合体中の結合芳香族ビニル量は、特に限定されないが、5〜70質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。結合芳香族ビニル量が上記範囲であると、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性のバランスがさらに優れ、耐摩耗性や破壊強度も満足する加硫物を得ることができる。ここで、結合芳香族ビニル量は、フェニル基の紫外吸光によって測定でき、ここから結合共役ジエン量も求めることができる。具体的には、後述する実施例に従った方法により測定することができる。
また、本実施形態の共役ジエン−芳香族ビニル共重合体は芳香族ビニル単位が30以上連鎖しているブロックの数が少ないか又は無いものであることが好ましい。具体的には、共重合体がブタジエン−スチレン共重合体の場合、Kolthoffの方法(I.M.KOLTHOFF,et al.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)により重合体を分解し、メタノールに不溶なポリスチレン量を分析する公知の方法において、芳香族ビニル単位が30以上連鎖しているブロックが、重合体量に対して好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
【0045】
また、共役ジエン結合単位中のビニル結合量は、特に限定されないが、10〜75モル%であることが好ましく、25〜65モル%であることがより好ましい。ビニル結合量が上記範囲であると、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性のバランスがさらに優れ、耐摩耗性や破壊強度も満足する加硫物を得ることができる。ここで、変性共役ジエン系重合体がブタジエンとスチレンの共重合体である場合には、ハンプトンの方法(R.R.Hampton,Analytical Chemistry,21,923(1949))により、ブタジエン結合単位中のビニル結合量(1,2−結合量)を求めることができる。
ミクロ構造(上記変性共役ジエン系共重合体中の各結合量)が上記範囲にあり、さらに共重合体のガラス転移温度が−45〜−15℃の範囲にあるときに、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性のバランスにより一層優れた加硫物を得ることができる。ガラス転移温度については、ISO22768:2006に従い、所定の温度範囲で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とする。
【0046】
本実施の形態における変性共役ジエン系共重合体及び変性共役ジエン重合体は、所定の変性剤によって重合活性末端が変性されている。
詳細には、上述した方法で、活性末端を有する共役ジエン系共重合体、または共役ジエン重合体を得た後、その活性末端に、分子中に3級アミノ基を2個以上およびアルコキシシリル基を2個以上有する化合物を反応させることによって、本実施の形態における変性共役ジエン系(共)重合体が得られる。
変性反応に用いる分子中に3級アミノ基を2個以上およびアルコキシシリル基を1個以上有する化合物としては、下記式(1)
【0047】
【化4】

【0048】
(式(1)中、R、Rは各々独立して炭素数1〜12の炭化水素基であって、不飽和結合が存在してもよく、またそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、R、Rは炭素数1〜20の炭化水素基であって、不飽和結合が存在してもよく、R、R、RはSi、O、またはNを含み、活性水素を持たない有機基で置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基であって、不飽和結合が存在してもよく、またそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。iは1〜3の整数である。
【0049】
【化5】

【0050】
(式(2)中、R、Rは、各々独立して炭素数1〜20のアルキル基、又はアリール基であり、Rは炭素数1〜20のアルキレン基であり、R、Rは炭素数1〜6の炭化水素基であって隣接する2つのNとともに5員環以上の環構造をなし、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されている炭素数1〜20の炭化水素基、又は3有機置換シリル基であり、mは、2又は3の整数である。)
上記式(2)においてはR、Rは同一であっても異なっていてもよい。
【0051】
【化6】

【0052】
(式(3)中、R〜R、mの定義は、前記式(1)と同一であり、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は3有機置換シリル基である。)
で表される。
【0053】
上記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、N−[2−(トリメトキシシラニル)−エチル]−N,N’,N’−トリメチルエタン−1,2−ジアミン、N−[2−(ジメトキシメチルシラニル)−エチル]−N−エチル−N’,N’−ジメチルエタン−1,2−ジアミン、N−[3−(トリメトキシシラニル)−プロピル] −N,N’,N’−トリメチルプロパン−1,3−ジアミン、N−[3−(ジメトキシメチルシラニル)−プロピル] −N−エチル−N’,N’−ジメチルプロパン−1,3−ジアミン、N−[3−(トリエトキシシラニル)−プロピル]−N,N’,N’−トリエチル−2−メチルプロパン−1,3−ジアミン、N−[3−(ジメトキシメチルシラニル)−プロピル]−2,N,N’,N’−テトラメチルプロパン−1,3−ジアミン、N−(2−ジメチルアミノエチル)−N’−[2−(トリメトキシシラニル)−エチル]−N,N’−ジメチルエタン−1,2−ジアミン、N−[2−(ジエトキシプロピルシラニル)−エチル]−N’−(3−エトキシプロピル)−N,N’−ジメチルエタン−1,2−ジアミン、N−[2−(トリメトキシシラニル)−エチル]−N’−メトキシメチル−N,N’−ジメチルエタン−1,2−ジアミン、N−[2−(トリメトキシシラニル)−エチル]−N,N’−ジメチル−N’−(2−トリメチルシラニルエチル)−エタン−1,2−ジアミン、N−[2−(トリエトキシシラニル)−エチル]−N,N’−ジエチル−N’−(2−ジブチルメトキシシラニルエチル)−エタン−1,2−ジアミン等が挙げられる。好ましい化合物としては、N−[2−(トリメトキシシラニル)−エチル]−N,N’,N’−トリメチルエタン−1,2−ジアミンである。この化合物で変性された変性共役ジエン系重合体は、加硫処理を施したときに、ウエットスキッド特性、低ヒステリシスロス性、耐摩耗性、破壊強度のバランスに特に優れる。
【0054】
上記式(2)で表される化合物としては、例えば、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(ジエトキシエチルシリル)プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−3−メチルイミダゾリジン、1−[3−(ジエトキシエチルシリル)プロピル]−3−エチルイミダゾリジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、1−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、3−[3−(トリブトキシシリル)プロピル]−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、3−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]−1−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、1−(2−エトキシエチル)−3−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]イミダゾリジン、(2−{3−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]テトラヒドロピリミジン−1−イル}エチル)ジメチルアミン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−(トリメチルシリル)ピペラジン、1−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]−4−(トリメチルシリル)ピペラジン、1−[3−(トリブトキシシリル)プロピル]−4−(トリメチルシリル)ピペラジン、1−[3−(ジエトキシエチルシリル)プロピル]−3−(トリエチルシリル)イミダゾリジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−3−(トリメチルシリル)イミダゾリジン、1−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]−3−(トリメチルシリル)ヘキサヒドロピリミジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−3−(トリメチルシリル)ヘキサヒドロピリミジン、1−[4−(トリエトキシシリル)ブチル]−4−(トリメチルシリル)ピペラジン等が挙げられる。
【0055】
これらの中でも1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−3−メチルイミダゾリジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−(トリメチルシリル)ピペラジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−3−(トリメチルシリル)イミダゾリジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−3−(トリメチルシリル)ヘキサヒドロピリミジンが好ましく用いられ、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−(トリメチルシリル)ピペラジンがより好ましい。
【0056】
上記式(3)で表される化合物としては、例えば、2−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,3−ジメチルイミダゾリジン、2−(ジエトキシエチルシリル)−1,3−ジエチルイミダゾリジン、2−(トリエトキシシリル)―1,4−ジエチルピペラジン、2−(ジメトキシメチルシリル)−1,4−ジメチルピペラジン、5−(トリエトキシシリル)−1,3−ジプロピルヘキサヒドロピリミジン、5−(ジエトキシエチルシリル)−1,3−ジエチルヘキサヒドロピリミジン、{2−[3−(2−ジメチルアミノエチル)−2−(エチルジメトキシシリル)−イミダゾリジン−1−イル]−エチル}−ジメチルアミン、5−(トリメトキシシリル)−1,3−ビス−(2−メトキシエチル)−ヘキサヒドロピリミジン、5−(エチルジメトキシシリル)−1,3−ビス−(2−トリメチルシリルエチル)−ヘキサヒドロピリミジンル)−1,3−ジメチルイミダゾリジン、2−(3−ジエトキシエチルシリル−プロピル)−1,3−ジエチルイミダゾリジン、2−(3−トリエトキシシリル−プロピル)−1,4−ジエチルピペラジン、2−(3−ジメトキシメチルシリル−プロピル)−1,4−ジメチルピペラジン、5−(3−トリエトキシシリル−プロピル)−1,3−ジプロピルヘキサヒドロピリミジン、5−(3−ジエトキシエチルシリル−プロピル)−1,3−ジエチルヘキサヒドロピリミジン、{2−[3−(2−ジメチルアミノエチル)−2−(3−エチルジメトキシシリル−プロピル)−イミダゾリジン−1−イル]−エチル}−ジメチルアミン、5−(3−トリメトキシシリル−プロピル)−1,3−ビス−(2−メトキシエチル)−ヘキサヒドロピリミジン、5−(3−エチルジメトキシシリル−プロピル)−1,3−ビス−(2−トリメチルシリルエチル)−ヘキサヒドロピリミジン、2−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,3−ビス(トリメチルシリル)イミダゾリジン、2−(ジエトキシエチルシリル)−1,3−ビス(トリエチルシリル)イミダゾリジン、2−(トリエトキシシリル)−1,4−ビス(トリメチルシリル)ピペラジン、2−(ジメトキシメチルシリル)−1,4−ビス(トリメチルシリル)ピペラジン、5−(トリエトキシシリル)−1,3−ビス(トリプロピルシリル)ヘキサヒドロピリミジン等が挙げられる。
【0057】
これらの中でも、2−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,3−ジメチルイミダゾリジン、2−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,3−(ビストリメチルシリル)イミダゾリジンが好ましい。
これらの変性剤は、単独で用いてもよく、2種類以上併用しても良い。
上述した変性剤を、重合活性末端に反応させる際の、反応温度、反応時間等については、特に限定されないが、0〜120℃で、30秒以上反応させることが好ましい。
上述した変性剤は、化合物中のシリル基に結合したアルコキシ基の合計モル数が、重合開始剤のアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の添加モル数の0.8〜3倍となる範囲であることが好ましく、1〜2.5倍となる範囲であることがより好ましく、1〜2倍となる範囲であることがさらに好ましい。得られる変性共役ジエン系重合体が十分な変性率を得るために0.8倍以上とすることが好ましく、加工性改良のために重合体末端同士をカップリングさせ分岐状重合体成分を得ることが好ましいことに加え、変性剤コストの観点から3倍以下とすることが好ましい。
【0058】
本実施形態の効果をより優れたものにする観点から、変性共役ジエン系(共)重合体が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上含有する重合体となるように、変性共役ジエン系(共)重合体を製造することが好ましい。官能基含有の変性成分を有する重合体の定量方法としては、官能基含有の変性成分と非変性成分を分離できるクロマトグラフィーによって測定可能である。このクロマトグラフィーを用いた方法としては、官能基成分を吸着するシリカ等の極性物質を充填剤としたGPCカラムを使用し、非吸着成分の内部標準を比較に用いて定量する方法が挙げられる。
【0059】
本実施形態の変性共役ジエン系(共)重合体の製造方法においては、変性反応を行った後、共重合体溶液に、必要に応じて、失活剤、中和剤等を添加してもよい。失活剤としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール等が挙げられる。中和剤としては、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、バーサチック酸等のカルボン酸;無機酸の水溶液、炭酸ガス等が挙げられる。
また、本実施形態の変性共役ジエン系(共)重合体は、重合後の仕上げ工程におけるゲル生成を防止する観点や、加工時の安定性を向上させる観点から、ゴム用安定剤を添加することが好ましい。ゴム用安定剤は、特に限定されず、公知のものを用いることができるが、2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェノール)プロピネート、2−メチル−4,6−ビス[(オクチルチオ)メチル]フェノール等が好ましい。
【0060】
また、本実施形態の変性共役ジエン系(共)重合体の加工性を改良するために、必要に応じて伸展油を変性共役ジエン系共重合体に添加することができる。伸展油を変性共役ジエン系重合体に添加する方法としては、特に限定されないが、伸展油を重合体溶液に加え、混合して、油展共重合体溶液としたものを脱溶媒する方法が好ましい。伸展油としては、例えば、アロマ油、ナフテン油、パラフィン油等が挙げられる。これらの中でも、環境安全上の観点や、オイルブリード防止及びウェットグリップ特性の観点から、IP346法による多環芳香族(PCA)成分が3質量%以下であるアロマ代替油が好ましい。アロマ代替油としては、Kautschuk Gummi Kunststoffe 52(12)799(1999)に示されるTDAE、MES等の他、RAE等が挙げられる。伸展油の添加量は、特に限定されないが、通常は、変性共役ジエン系重合体100質量部に対し、10〜60質量部であり、20〜37.5質量部が好ましい。
【0061】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体を、重合体溶液から取得する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、スチームストリッピング等で溶媒を分離した後、重合体を濾別し、さらにそれを脱水及び乾燥して重合体を取得する方法、フラッシングタンクで濃縮し、さらにベント押し出し機等で脱揮する方法、ドラムドライヤー等で直接脱揮する方法等が挙げられる。
本実施形態の変性共役ジエン系ゴム組成物の配合比率(質量比)は、変性共役ジエン系共重合体(A)/変性共役ジエン重合体(B)として、10/90〜90/10が好ましく、30/70〜90/10がより好ましく、50/50〜80/20がさらに好ましい。変性共役ジエン系共重合体(A)/変性共役ジエン重合体(B)の配合比率が上記範囲であると、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性のバランスがさらに優れ、耐摩耗性や破壊強度もより一層満足する加硫物を得ることができる。
【0062】
本実施形態の変性共役ジエン系ゴム組成物は、加硫物として好適に用いられる。加硫物は、例えば、本実施形態の変性共役ジエン系ゴム組成物を、必要に応じて、シリカ系無機充填剤やカーボンブラック等の無機充填剤、本実施形態の変性共役ジエン系ゴム組成物以外のゴム状重合体、シランカップリング剤、ゴム用軟化剤、加硫剤、加硫促進剤・助剤等と混合して、変性共役ジエン系重合体組成物とした後、加熱して加硫することにより得ることができる。これらの中でも、本実施形態の変性共役ジエン系ゴム組成物を含むゴム成分と、シリカ系無機充填剤と、を含む変性共役ジエン系重合体組成物とすることが好ましい。本実施形態の変性共役ジエン系ゴム組成物に、シリカ系無機充填剤を分散させることで、加硫物としたときに、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性とのバランスに優れ、かつ実用上十分な耐摩耗性や破壊強度を有し、優れた加工性を付与できる。本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物が、タイヤ、防振ゴム等の自動車部品、靴等の加硫ゴム用途に用いられる場合にも、補強性充填剤としてシリカ系無機充填剤を含むことが好ましい。
【0063】
変性共役ジエン系ゴム組成物においては、本実施形態の変性共役ジエン系(共)重合体以外のゴム状重合体を、本実施形態の変性共役ジエン系(共)重合体と組み合わせて使用できる。このようなゴム状重合体としては、例えば、共役ジエン系重合体又はその水素添加物、共役ジエン系化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体又はその水素添加物、共役ジエン系化合物とビニル芳香族化合物とのブロック共重合体又はその水素添加物、非ジエン系重合体、天然ゴム等が挙げられる。具体的には、ブタジエンゴム又はその水素添加物、イソプレンゴム又はその水素添加物、スチレン−ブタジエンゴム又はその水素添加物、スチレン−ブタジエンブロック共重合体又はその水素添加物、スチレン−イソプレン ブロック共重合体又はその水素添加物等のスチレン系エラストマ−、アクリロニトリル−ブタジエンゴム又はその水素添加物等が挙げられる。
【0064】
非ジエン系重合体としては、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−ブテン−ジエンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレン−ヘキセンゴム、エチレン−オクテンゴム等のオレフィン系エラストマ−、ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、α、β−不飽和ニトリル−アクリル酸エステル−共役ジエン共重合ゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム等が挙げられる。
上述した各種ゴム状重合体は、水酸基やアミノ基等の極性を有する官能基を付与した変性ゴムであってもよい。またその重量平均分子量は、性能と加工特性のバランスの観点から、2,000〜2,000,000であることが好ましく、5,000〜1,500,000であることがより好ましい。また、低分子量のいわゆる液状ゴムを用いることもできる。これらのゴム状重合体は、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
シリカ系無機充填剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができるが、SiO、又はSiAlを構成単位として含む固体粒子が好ましく、SiO、又はSiAlを構成単位の主成分とすることがより好ましい。シリカ系無機充填剤として、具体的には、シリカ、クレイ、タルク、マイカ、珪藻土、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、ガラス繊維等の無機繊維状物質等が挙げられる。また、表面を疎水化したシリカ系無機充填剤や、シリカ系無機充填剤とシリカ系以外の無機充填剤との混合物も用いることができる。これらの中でも、補強性の観点から、シリカ及びガラス繊維が好ましく、シリカがより好ましい。シリカとしては、乾式シリカ、湿式シリカ、合成ケイ酸塩シリカ等が挙げられる。これらの中でも、破壊特性の改良効果及びウェットスキッド抵抗性のバランスに優れる観点から、湿式シリカが好ましい。
【0066】
変性共役ジエン系ゴム組成物において、実用上良好な耐摩耗性や破壊特性を得る観点から、シリカ系無機充填剤のBET吸着法で求められる窒素吸着比表面積は、100〜300m/gであることが好ましく、170〜250m/gであることがより好ましい。また必要に応じて、比較的比表面積が小さい(例えば、比表面積が200m/g以下のシリカ系無機充填剤)と、比較的比表面積の大きい(例えば、200m/g以上のシリカ系無機充填剤)と、を組み合わせて用いることができる。これにより、良好な耐摩耗性や破壊特性と低ヒステリシスロス性を高度にバランスさせることができる。
【0067】
上記のように、変性共役ジエン系ゴム組成物におけるシリカ系無機充填剤の配合量は、本実施形態の変性共役ジエン系(共)重合体を含むゴム成分100質量部に対し、0.5〜300質量部であることが好ましく、5〜200質量部がより好ましく、20〜100質量部がさらに好ましい。シリカ系無機充填剤の配合量は、無機充填剤の添加効果が発現する観点から、0.5質量部以上とすることが好ましく、一方、無機充填剤を十分に分散させ、組成物の加工性や機械強度を実用的に十分なものとする観点から、300質量部以下とすることが好ましい。
また上記変性共役ジエン系ゴム組成物の加硫物は50℃における周波数10Hz、ひずみ0.1%と10%で測定した貯蔵弾性率の差(ΔG’)が0.8MPa以下であり、シリカ等の分散性が良い。
【0068】
変性共役ジエン系ゴム組成物には、カーボンブラックを含有させてもよい。カーボンブラックとしては、特に限定されず、例えば、SRF、FEF、HAF、ISAF、SAF等の各クラスのカーボンブラックが使用できる。これらの中でも、窒素吸着比表面積が50m/g以上、DBP吸油量が80mL/100gのカーボンブラックが好ましい。
カーボンブラックの配合量は、本実施形態の変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対し、0.5〜100質量部が好ましく、3〜100質量部がより好ましく、5〜50質量部がさらに好ましい。カーボンブラックの配合量は、ドライグリップ性能や導電性等のタイヤ等の用途に求められる性能を発現する観点から、0.5質量部以上とすることが好ましく、分散性の観点から、100質量部以下とすることが好ましい。
また、変性共役ジエン系ゴム組成物には、シリカ系無機充填剤やカーボンブラック以外に、金属酸化物や金属水酸化物を含有させてもよい。金属酸化物とは、化学式MxOy(Mは金属原子を表し、x及びyは各々1〜6の整数を表す。)を構成単位の主成分とする固体粒子のことをいい、例えば、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等を用いることができる。また金属酸化物と金属酸化物以外の無機充填剤の混合物も用いることができる。金属水酸化物としては、特に限定されず、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム等が挙げられる。
【0069】
変性共役ジエン系ゴム組成物には、シランカップリング剤を含有させてもよい。シランカップリング剤は、ゴム成分とシリカ系無機充填剤との相互作用を緊密にする機能を有しており、ゴム成分及びシリカ系無機充填剤のそれぞれに対する親和性又は結合性の基を有しており、一般的には、硫黄結合部分とアルコキシシリル基、シラノール基部分を一分子中に有する化合物が用いられる。具体的には、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−ジスルフィド、ビス−[2−(トリエトキシシリル)−エチル]−テトラスルフィド等が挙げられる。
シランカップリング剤の配合量は、上述したシリカ系無機充填剤100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部がより好ましく、1〜15質量部がさらに好ましい。シランカップリング剤の配合量が上記範囲であると、シランカップリング剤による上記添加効果を一層顕著なものにできる。
【0070】
変性共役ジエン系ゴム組成物には、加工性の改良を図るために、ゴム用軟化剤を含有させてもよい。ゴム用軟化剤としては、鉱物油、又は液状若しくは低分子量の合成軟化剤が好適である。ゴムの軟化、増容、加工性の向上を図るために使用されているプロセスオイル又はエクステンダーオイルと呼ばれる鉱物油系ゴム用軟化剤は、芳香族環、ナフテン環、及びパラフィン鎖の混合物であり、パラフィン鎖の炭素数が全炭素中50%以上を占めるものがパラフィン系と呼ばれ、ナフテン環炭素数が30〜45%のものがナフテン系、芳香族炭素数が30%を超えるものが芳香族系と呼ばれている。本実施形態の変性共役ジエン−芳香族ビニル共重合体とともに用いるゴム用軟化剤としては、適度な芳香族含量を有するものが共重合体との馴染みがよい傾向にあるため好ましい。
ゴム用軟化剤の配合量は、本実施形態の変性共役ジエン系ゴム組成物を含有するゴム成分100質量部に対して、0〜100質量部が好ましく、10〜90質量部がより好ましく、30〜90質量部がさらに好ましい。ゴム用軟化剤の配合量がゴム成分100質量部に対して100質量部を超えると、ブリードアウトを生じやすく、組成物表面にベタツキを生ずるおそれがある。
【0071】
本実施形態の変性共役ジエン系(共)重合体とその他のゴム状重合体、シリカ系無機充填剤、カーボンブラックやその他の充填剤、シランカップリング剤、ゴム用軟化剤等の添加剤を混合する方法については特に限定されるものではない。例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解混合後、溶剤を加熱除去する方法等が挙げられる。これらのうち、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機による溶融混練法が生産性、良混練性の観点から好ましい。また、変性共役ジエン系(共)重合体と各種配合剤とを一度に混練する方法、複数の回数に分けて混合する方法のいずれも適用可能である。
【0072】
変性共役ジエン系ゴム組成物は、加硫剤により加硫処理を施した加硫組成物としてもよい。加硫剤としては、例えば、有機過酸化物及びアゾ化合物等のラジカル発生剤、オキシム化合物、ニトロソ化合物、ポリアミン化合物、硫黄、硫黄化合物が使用できる。硫黄化合物には、一塩化硫黄、二塩化硫黄、ジスルフィド化合物、高分子多硫化合物等が含まれる。加硫剤の使用量は、通常は、本実施形態の変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対して0.01〜20質量部であり、0.1〜15質量部が好ましい。加硫方法としては、従来公知の方法を適用でき、加硫温度は、通常120〜200℃、であり、好ましくは140〜180℃である。
また、加硫に際しては、必要に応じて加硫促進剤を用いてもよい。加硫促進剤としては、従来公知の材料を用いることができ、例えば、スルフェンアミド系、グアニジン系、チウラム系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、チオ尿素系、ジチオカルバメート系等の加硫促進剤が挙げられる。また、加硫助剤としては、亜鉛華、ステアリン酸等を使用できる。加硫促進剤の使用量は、通常、本実施形態の変性共役ジエン系重合体を含有するゴム成分100質量部に対して0.01〜20質量部であり、0.1〜15質量部が好ましい。
【0073】
変性共役ジエン系ゴム組成物には、本実施形態の目的を損なわない範囲内で、上述した以外のその他の軟化剤や充填剤、さらに、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、滑剤等の各種添加剤を用いてもよい。その他の軟化剤としては、公知の軟化剤を用いることができる。その他の充填剤としては、具体的には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム等が挙げられる。上記の耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、潤滑剤としては、それぞれ公知の材料を用いることができる。
【実施例】
【0074】
以下の実施例により本実施形態を更に詳しく説明するが、本実施形態は以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、試料の分析は下記に示す方法により行った。
(1)結合スチレン量
試料をクロロホルム溶液とし、スチレンのフェニル基によるUV254nmの吸収により結合スチレン量(質量%)を測定した(島津製作所製:UV−2450)。
(2)ブタジエン部分のミクロ構造(1,2−ビニル結合量)
試料を二硫化炭素溶液とし、溶液セルを用いて、赤外線スペクトルを600〜1000cm−1の範囲で測定して所定の波数における吸光度によりハンプトンの方法又はモレロの方法の計算式に従いブタジエン部分のミクロ構造を求めた(日本分光(株)製:FT−IR230)。
【0075】
(3)ムーニー粘度
JIS K 6300に従い、100℃で1分間余熱し、4分後の粘度を測定した。
(4)重量平均分子量及び分子量分布
ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを3本連結して用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用して、クロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンを使用した検量線により重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を求め、重量平均分子量と数平均分子量の比から分子量分布の指標(Mw/Mn)を計算した。
溶離液としてはテトラヒドロフラン(THF)を使用した。
カラムは、ガードカラム:東ソー TSKguardcolumn HHR−H、カラム:東ソー TSKgel G6000HHR、TSKgel G5000HHR、TSKgel G4000HHRを使用した。
オーブン温度40℃、THF流量1.0mL/分の条件で、東ソー製 HLC8020のRI検出器を用いて分子量の測定を行った。試料10mgをTHF20mLに溶解し、この溶液200μLを装置に注入して測定した。
【0076】
(5)変性率
シリカ系ゲルを充填剤としたGPCカラムに変性した成分が吸着する特性を応用し、試料及び分子量5000の標準ポリスチレン(ポリスチレンはカラムに吸着しない)を含む試料溶液を用いて、前記ポリスチレン系ゲルカラムのGPCと、シリカ系カラム(ガードカラム:DIOL 4.6×12.5mm 5micron、カラム:Zorbax PSM−1000S、PSM−300S、PSM−60S、オーブン温度40℃、THF流量0.5ml/分)のGPC(東ソー製CCP8020シリーズ ビルドアップ型GPCシステム:AS−8020、SD−8022、CCPS、CO−8020、RI−8021)の両クロマトグラムを、RI検出器を用いて測定し、それらの差分よりシリカカラムへの吸着量を測定し変性率を求めた。
試料は、20mLのTHFに対して10mgを標準ポリスチレン5mgとともに溶解し、200μL注入して測定した。
具体的な手順としては、ポリスチレン系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、サンプルピーク面積をP1、標準ポリスチレンのピーク面積をP2とし、シリカ系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、サンプルピーク面積をP3、標準ポリスチレンのピーク面積をP4として、変性率(%)は[1−(P2×P3)/(P1×P4)]×100の計算式により算出した。
【0077】
(共役ジエン系(共)重合体)
変性前の共役ジエン系(共)重合体は、下記の多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合し、又は共役ジエン化合物を重合することによって得られる。
(多官能アニオン重合開始剤a〜dの調製)
内容積10Lの撹拌装置及びジャケットを具備するオートクレーブを洗浄乾燥し、窒素置換を行った後、下記表1に示す条件に従い、乾燥処理を施した1,3−ブタジエン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、ジビニルベンゼンを加え、次いでn−ブチルリチウムを加えて75℃で1時間反応し調製した。
下記表1に示す条件により調製した多官能アニオン重合開始剤は、シクロヘキサンに可溶でありゲルは全くなかった。
多官能アニオン重合開始剤の調製には、m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼン、エチルビニルベンゼン等を含有し、ジビニルベンゼン濃度が57重量%であるジビニルベンゼン混合物(新日鐵化学製)を用いた。
下記表1中のジビニルベンゼン量については、上記市販のジビニルベンゼンが混合物であることから、不純物の含有量を除いて換算したジビニルベンゼン純量を表した。
【0078】
【表1】

【0079】
(多官能アニオン重合開始剤eの調製)
マグネット攪拌子を備えた三方フラスコに、冷却管及び滴下漏斗をセットし、窒素置換を行った後、微加圧した窒素を流通させ、系内をシールした状態で、前記三方フラスコ中に、1.01mol/Lのsec−ブチルリチウムのシクロヘキサン/n−ヘキサン混合溶液99.0mL(100ミリモル)、トリエチルアミン13.9mL(100ミリモル)、及びシクロヘキサン10mLを導入し、20℃で攪拌混合した。
さらに減圧蒸留により精製したm−ジイソプロペニルベンゼン7.91g(50ミリモル)を室温で3時間かけて滴下し、攪拌を15時間継続して行い、調製した。
【0080】
〔変性共重合SB1の製造(成分A)〕
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去したブタジエン740g、スチレン260g、シクロヘキサン4800g、極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン0.85gを反応器へ入れ、反応器内の温度を42℃に保持した。
上述のようにして調製した多官能重合開始剤aをリチウム添加量として10.5mmolとなるように反応器に供給した。反応開始後、重合による発熱で、反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は75℃に達した。
【0081】
重合反応終了後、反応器に1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジンを5.25mmol添加して、74℃の温度条件で5分間の変性反応を実施した。この重合体溶液に酸化防止剤(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール:BHT)2.1gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するスチレン−ブタジエン共重合体(試料SB1)を得た。
試料SB1を分析した結果、結合スチレン量は26質量%、結合ブタジエン量は74質量%であった。また、試料SB1のムーニー粘度は56であった。
赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準じて計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造の1,2−結合量は57%であった。また、シリカ系吸着カラムを用いるGPCから求めた変性率は89%であった。試料SB1の分析結果を下記表2に示す。
【0082】
〔変性共重合体SB2、SB3の製造(成分A)〕
上述した多官能アニオン重合開始剤の種類、これらの添加量、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン、及び1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジンの添加量を、下記表2に示すように調整して、製造条件については、上述した同様の方法として、(試料SB2)及び(試料SB3)を得た。
変性成分を有するスチレンブタジエン共重合体(試料SB2)、(試料SB3)の分析結果を下記表2に示す。
【0083】
〔変性共重合体SB4の製造(成分A)〕
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去したブタジエン740g、スチレン260g、シクロヘキサン4800g、極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン1.01gを反応器へ入れ、反応器内の温度を42℃に保持した。
リチウム添加量として6.3mmolの上述した多官能アニオン重合開始剤eと、ノルマルブチルリチウム4.8mmolとを混合した後、反応器に供給した。
このとき、重合系に添加したポリビニル芳香族化合物とリチウムの比は0.284となった。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は74℃に達した。重合反応終了後、反応器に1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジンを6.93mmol添加して、73℃の条件下で5分間、変性反応を実施した。
重合体溶液に酸化防止剤(BHT)2.1gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施し、変性成分を有するスチレン−ブタジエン共重合体(試料SB4)を得た。試料SB4の分析結果を下記表2に示す。
【0084】
〔変性共重合体SB5〜8の製造(成分A)〕
多官能アニオン重合開始剤bを用いて、SB2と同様の製造方法でスチレン−ブタジエン共重合体を得、その後、下記表2に示すように変性剤の種類を変えて変性を行い、変性成分を有するスチレン−ブタジエン共重合体(試料SB5〜8)を得た。試料5〜試料8の分析結果を下記表2に示す。
【0085】
〔変性共重合体SB9の製造(成分A)〕
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去したブタジエン740g、スチレン260g、シクロヘキサン4800g、極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン0.62gを反応器へ入れ、反応器内温を42℃に保持した。重合開始剤として、n−ブチルリチウム7.5mmolを含むシクロヘキサン溶液を反応器に供給した。重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は71℃に達した。重合反応終了後、反応器にテトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン0.28mmolを添加し、70℃で2分間攪拌して変性反応を実施した。その後、さらに1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジンを4.0mmol添加して69℃で5分間変性反応を実施した。
【0086】
この重合体溶液に、酸化防止剤(BHT)2.1gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するスチレン−ブタジエン共重合体(試料SB9)を得た。なお、前記テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンは、重合体活性末端との反応部が4箇所ある変性剤であり、重合体の一部を高分子量化することでコールドフローを抑制するために添加した。
一方において、(試料SB1〜SB8)においては、多官能開始剤を使用することで、変性後の重合体の一部が高分子量化してコールドフロー抑制効果があるため、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンによる変性の必要はなかった。
試料SB9を分析した結果、結合スチレン量は26質量%、結合ブタジエン量は74%であった。重合体のムーニー粘度は65であった。
赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準じて計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造の1,2−結合量は56%であり、またシリカ系吸着カラムを用いるGPCから求めた変性率は82%であった。
【0087】
〔変性重合体B1の製造(成分B)〕
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去したブタジエン1000g、シクロヘキサン4800gを反応器へ入れ、反応器内の温度を42℃に保持した。上述のようにして調製した多官能重合開始剤aをリチウム添加量として10.5mmolとなるように反応器に供給した。反応開始後、重合による発熱で、反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は79℃に達した。重合反応終了後、反応器に1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジンを5.25mmol添加して、77℃の温度条件で5分間の変性反応を実施した。この重合体溶液に酸化防止剤(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール:BHT)2.1gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するブタジエン重合体(試料B1)を得た。
試料B1を分析した結果、ムーニー粘度は50あった。赤外分光光度計を用いた測定結果よりモレロ法に準じて計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造の1,2−結合量は13であった。また、シリカ系吸着カラムを用いるGPCから求めた変性率は93%であった。試料B1の分析結果を下記表2に示す。
【0088】
〔変性重合体B2〜B4の製造(成分B)〕
多官能アニオン重合開始剤の種類及びこれらの添加量、変性剤の種類及び添加量を、下記表2に示すように調整して、上述した製造条件と同様の方法(試料B1)により、試料B2〜B4を得た。変性成分を有するブタジエン重合体(試料B2)、(試料B3)、(試料B4)の分析結果を下記表2に示す。
【0089】
〔変性重合体B5の製造(成分B)〕
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去したブタジエン1000g、シクロヘキサン4800gを反応器へ入れ、反応器内温を42℃に保持した。重合開始剤として、n−ブチルリチウム7.5mmolを含むシクロヘキサン溶液を反応器に供給した。重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は71℃に達した。重合反応終了後、反応器にテトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン0.28mmolを添加し、70℃で2分間攪拌して変性反応を実施した。その後、さらに1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジンを4.0mmol添加して69℃で5分間変性反応を実施した。
【0090】
この重合体溶液に、酸化防止剤(BHT)2.1gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するブタジエン共重合体(試料B5)を得た。なお、前記テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンは、重合体活性末端との反応部が4箇所ある変性剤であり、重合体の一部を高分子量化することでコールドフローを抑制するために添加した。
一方において、(試料B1〜B4)においては、多官能開始剤を使用することで、変性後の重合体の一部が高分子量化してコールドフロー抑制効果があるため、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンによる変性の必要はなかった。
試料SB4を分析した結果、重合体のムーニー粘度は51であった。赤外分光光度計を用いた測定結果よりモレロ法に準じて計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造の1,2−結合量は13%であり、またシリカ系吸着カラムを用いるGPCから求めた変性率は93%であった。
【0091】
【表2】

【0092】
[実施例1〜8、比較例1〜5]
上記表2に示す試料(試料SB1〜SB10、試料B1〜B5)を原料ゴムとして、以下に示す配合に従い、それぞれの原料ゴムを含有するゴム組成物を得た。
変性スチレン−ブタジエン共重合体(試料SB1〜SB10) 80.0質量部変性ブタジエン重合体(試料B1〜B5) 20.0質量部
シリカ(デグサ社製 Ultrasil VN3) 75.0質量部
カーボンブラック(東海カーボン社製 N339) 5.0質量部
シランカップリング剤(デグサ社製Si69) 7.5質量部
S−RAEオイル
(ジャパンエナジー社製JOMOプロセスNC140) 37.5質量部
亜鉛華 2.5質量部
ステアリン酸 2.0質量部
老化防止剤
(N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン) 2.0質量部
硫黄 1.7質量部
加硫促進剤(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフィンアミド)1.7質量部
加硫促進剤(ジフェニルグアニジン) 1.5質量部
合計 236.4質量部
【0093】
ゴム組成物は、下記の方法により混練を行った。
温度制御装置を具備する密閉混練機(内容量0.3リットル)を使用し、第一段の混練として、充填率65%、ローター回転数50/57rpmの条件で、原料ゴム(変性スチレン−ブタジエン共重合体、変性ブタジエン重合体)、充填剤(シリカ、カーボンブラック)、有機シランカップリング剤、プロセスオイル、亜鉛華、ステアリン酸を混練した。
このとき、密閉混合機の温度を制御し、排出温度(配合物)は155〜160℃でゴム組成物を得た。
次に、第二段の混練として、上記で得た配合物を室温まで冷却後、老化防止剤を加え、シリカの分散を向上させるため再度混練した。この場合も、混合機の温度制御により排出温度(配合物)を155〜160℃に調整した。
次に、第三段の混練として、上記で得た配合物を室温まで冷却後、シリカの分散を向上させるため再度混練した。この場合も、混合機の温度制御により排出温度(配合物)を155〜160℃に調整した。
冷却後、第四段の混練として、70℃に設定したオープンロールにて、硫黄、加硫促進剤を加えて混練した。その後、成型し、160℃で20分間、加硫プレスにて加硫した。
加硫後、ゴム組成物の物性を測定した。物性測定結果を下記表3に示した。
【0094】
[比較例6]
変性ブタジエン重合体の代わりに天然ゴム(NR)を使用した以外は、実施例1と同様な方法で加硫物を得た。加硫後、ゴム組成物の物性を測定した。物性測定結果を下記表3に示した。
ゴム組成物の物性は、下記の方法により測定した。
<バウンドラバー量>
第2段混練工程の終了後の配合物:約0.2グラムを約1mm角状に裁断し、ハリスかご(100メッシュ金網製)へ入れ、重量を測定した。
その後、トルエン中に24時間浸せき後、乾燥処理を施し、重量を測定した。
非溶解成分の量から充填剤に結合したゴム(変性共役ジエン系重合体+天然ゴム)の量を計算し、最初の配合物中のゴム量に対する充填剤と結合したゴムの割合を求めた。
<配合物ムーニー粘度>
ムーニー粘度計を使用し、JIS K6300−1により、130℃で、予熱を1分間行った後に、ローターを毎分2回転で回転させ4分後の粘度を測定した。
<引張強さ>
JIS K6251の引張試験法により測定した。
【0095】
<粘弾性パラメータ>
レオメトリックス・サイエンティフィック社製の粘弾性試験機(ARES)を使用し、ねじりモードで粘弾性パラメータを測定した。
0℃において周波数10Hz、ひずみ1%で測定したtanδをウェットグリップ性能の指標とした。値が大きいほどウェットグリップ性能が良好であることを示す。
また50℃において周波数10Hz、ひずみ3%で測定したtanδを省燃費特性の指標とした。値の小さいほど省燃費性能が良好であることを示す。
また、ひずみ0.1%と10%での貯蔵弾性率(G’)の差をΔG’としてペイン効果の指標とした。値の小さいほどシリカ等充填剤の分散性が良いことを示す。
<耐摩耗性>
アクロン摩耗試験機を使用し、荷重6ポンド、1000回転の摩耗量を測定し、指数化した。
指数の大きいほど耐摩耗性が優れることを示す。
【0096】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の変性共役ジエン系重合体を無機充填剤と組み合わせた組成物は、ウェットスキッド特性、低ヒステリシスロス性、耐摩耗性、破壊強度といった物性バランス及び加工性にも優れているので、自動車の内装・外装品、防振ゴム、ベルト、はきもの、発泡体、各種工業部品、タイヤ用途等の分野において、産業上の利用可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を使用して測定された分子量分布が1.2〜3.5の範囲である多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合させた後、得られた重合体の活性末端に、2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子を有する化合物を反応させて得られた変性共役ジエン系共重合体
及び
(B)ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を使用して測定された分子量分布が1.2〜3.5の範囲である多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を重合させた後、得られた重合体の活性末端に、2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子を有する化合物とを反応させて得られた変性共役ジエン重合体を含むことを特徴とする変性共役ジエン系ゴム組成物。
【請求項2】
(A)炭化水素溶媒中、ポリビニル芳香族化合物とリチウムとのモル比(ポリビニル芳香族化合物/リチウム)が0.05〜1.0の範囲で調製された多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合させた後、得られた重合体の活性末端に2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子を有する化合物とを反応させて得られた変性共役ジエン系共重合体
及び
(B)炭化水素溶媒中、ポリビニル芳香族化合物とリチウムとのモル比(ポリビニル芳香族化合物/リチウム)が0.05〜1.0の範囲で調製された多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を重合させた後、得られた重合体の活性末端に2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子を有する化合物とを反応させて得られた変性共役ジエン重合体
を含むことを特徴とする変性共役ジエン系ゴム組成物。
【請求項3】
2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子を有する化合物が、下記一般式(1)、一般式(2)もしくは一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の変性共役ジエン系ゴム組成物。
【化1】

(式(1)中、R、Rは各々独立して炭素数1〜12の炭化水素基であって、R、Rは炭素数1〜20の炭化水素基であって、R、R、RはSi、O、またはNを含み、活性水素を持たない有機基で置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基であってもよい。iは1〜3の整数である。)
【化2】

(式(2)中、R、Rは、各々独立して炭素数1〜20のアルキル基、又はアリール基であり、Rは炭素数1〜20のアルキレン基であり、R、Rは炭素数1〜6の炭化水素基であって、隣接する2つのNとともに5員環以上の環構造をなし、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されている炭素数1〜20の炭化水素基、又は3有機置換シリル基であり、mは、2又は3の整数である。)
【化3】

(式(3)中、R〜R、mの定義は、前記式(1)と同一であり、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、又は3有機置換シリル基である。)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の変性共役ジエン系ゴム組成物を含むゴム成分100質量部に対してシリカ系無機充填剤0.5〜300質量部を含む変性共役ジエン系ゴム組成物
【請求項5】
変性共役ジエン系ゴム組成物100質量部に対してシリカ系無機充填剤75質量部を含む変性共役ジエン系ゴム組成物の加硫物の50℃における周波数10Hz、ひずみ0.1%と10%で測定した貯蔵弾性率の差(ΔG’)が0.8MPa以下であることを特徴とする変性共役ジエン系ゴム組成物。
【請求項6】
ポリビニル芳香族化合物/リチウムのモル比が0.05〜1.0の範囲でポリビニル芳香族化合物と有機リチウム化合物を反応させて、
多官能アニオン重合開始剤を調製する工程、
(A)前記多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を共重合させて、共役ジエン系共重合体を得る工程、
前記共役ジエン系共重合体の活性末端に、2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子を有する化合物を反応させる工程、
(B)前記多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物重合させて、共役ジエン重合体を得る工程、
前記共役ジエン重合体の活性末端に、2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子を有する化合物を反応させる工程、
を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の変性共役ジエン系ゴム組成物の製造方法。

【公開番号】特開2011−219699(P2011−219699A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93402(P2010−93402)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】