説明

変性共役ジエン系共重合体、変性共役ジエン系共重合体組成物、ゴム組成物、及び変性共役ジエン系共重合体の製造方法

【課題】強度と耐摩耗性能、履き心地、柔軟性のバランスに優れた履物用に好適な変性共役ジエン系共重合体、及び当該変性共役ジエン系共重合体を用いたゴム組成物を提供する。
【解決手段】ポリビニル芳香族化合物とリチウムとを用いて調製された多官能アニオン開始剤を用いて共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合することによって得られる共役ジエン系共重合体の末端部に、2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基及び1つ以上の窒素原子を有する変性共役ジエン系共重合体であり、さらに下記(I)〜(III)の条件を満たす変性共役ジエン系共重合体を提供する。
(I)芳香族ビニル化合物の結合量が25〜75質量%である。
(II)芳香族ビニル化合物のブロック結合量が3〜50質量%である。
(III)シリカ粒子充填カラムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー測定のカラムへの吸着量によって求められる変性率が、78質量%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性共役ジエン系共重合体、変性共役ジエン系共重合体組成物、ゴム組成物、及び変性共役ジエン系共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、履物用素材としては、ゴム素材が多岐に亘って使用されている。
これらの加工品には、ゴム素材本来の特性を発揮するとともに、用途に応じて要求される各種特性を付与し又は改良するために、ゴム素材を主成分とし、さらに各種の充填材、添加剤、着色剤、補強剤等を配合したゴム組成物が原料として用いられている。
具体的には、補強性を付与するために、充填材としてカーボンブラックが配合されている。
【0003】
一方、要求されるゴム製品が黒色以外の場合には、カーボンブラックに替えて、シリカ等の配合が行われている。
しかしながら、シリカを補強充填材としたゴム組成物は、下記のような課題を有している。
例えば、シリカはカーボンブラックに比較してゴムとの親和性が低いため、ゴム中への分散性が必ずしも良好ではないため、分散性不良により耐摩耗性や強度特性の不足を招来しがちである。
【0004】
シリカの分散性の改良を図るために、従来においては、分子中にエポキシ基を持つ多官能化合物を反応させて得られる変性重合体を含有する履物用組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、特定のゴム状重合体と無機充填材とを混合し、無機充填材が微分散し透明で耐摩耗性の向上したゴム組成物とその製造方法についての提案もなされている(例えば、特許文献2参照。)。
また、変性重合体と所定量の無機充填材とを予め混合しておき、それを残りの無機充填材と混合することにより組成物を得る製造方法についての開示もなされている(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
また、より一層、シリカ等の無機充填材との相互作用の強いゴム組成物を得る目的で、アミノ基とアルコキシシリル基で変性された種々の構造のスチレン−ブタジエン(共)重合体についての提案がなされている。
例えば、3級アミノ基とアルコキシシリル基が導入されたジエン系ゴム(例えば、特許文献4、5参照。)、1級のアミノ基とアルコキシシリル基とを有する変性重合体(例えば、特許文献6参照。)がある。
これらの変性重合体は、シリカとの相互作用が強く、シリカがゴム中へ微細に分散し、かつ、ゴムと直接に化学結合することにより優れた性能が発現されているため、例えば自動車タイヤのトレッド部材に使用した場合には、ブレーキ性能、転がり抵抗性能等の改良が効果的に図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−284931号公報
【特許文献2】国際公開第2003/091327号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2003/085010号パンフレット
【特許文献4】特開平7−233217号公報
【特許文献5】国際公開第2003/087171号パンフレット
【特許文献6】特開2004−18795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されている組成物は、従来の変性重合体からなる組成物に比べて耐摩耗性、防滑性能についての改良は図られているが、物理的強度は不十分である。
また、特許文献2に開示されているゴム組成物も、やはり物理的強度が不十分である。
さらに、特許文献3に開示されている組成物は、物理的強度及び耐摩耗性の改良効果が得られていない。
またさらに、特許文献4〜6に開示されている変性重合体はシリカとの相互作用が強いためにシリカの分散粒子径が微細になり、組成物において十分な強度が得られないという問題がある。
【0009】
一方、近年は、靴、特にスポーツシューズ等において、軽量化を目的とした材料の薄肉化や発泡化が進んでおり、それに伴って使用される材質にはより高い強度と耐摩耗性能が要求されている。
そこで本発明においては、シリカ等の無機充填材の分散性を向上しながらも無機充填材を増量することなく、強度と耐摩耗性、履き心地、柔軟性のバランスに優れたゴム組成物を得ることを目的として、変性共役ジエン系共重合体及び当該変性共役ジエン共重合体組成物、及びこれを用いたゴム組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記従来技術の課題を解決するべく鋭意研究を行った結果、特定の多官能性アニオン重合開始剤を用いて重合し、重合活性末端を特定の官能基を有する化合物で変性することによって得られる変性共役ジエン系共重合体に、無機充填剤、特にシリカ系無機充填剤を含有させ、さらに加硫物とした場合に、強度と耐摩耗性、履き心地、柔軟性のバランスに優れるゴム組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0011】
〔1〕
ポリビニル芳香族化合物とリチウムとを用いて調製された多官能アニオン開始剤を用いて共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合することによって得られる共役ジエン系共重合体の末端部に、2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基及び1つ以上の窒素原子を有する変性共役ジエン系共重合体であり、さらに下記(I)〜(III)の条件を満たす変性共役ジエン系共重合体を提供する。
(I)芳香族ビニル化合物の結合量が25〜75質量%である。
(II)芳香族ビニル化合物のブロック結合量が3〜50質量%である。
(III)シリカ粒子充填カラムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー測定のカラムへの吸着量によって求められる変性率が、78質量%以上である。
【0012】
〔2〕
前記2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子とを有する化合物が、下記式(1)
【0013】
【化1】

【0014】
(前記式(1)中、R1、R2は、各々独立して炭素数1〜20のアルキル基又はアリール
基である。
3は、炭素数1〜20のアルキレン基である。
4、R5は、同一であっても異なっていてもよい、炭素数1〜6の炭化水素基であって隣接する2つのNとともに5員環以上の環構造をなす。
6は、炭素数1〜20の炭化水素基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されている炭素数1〜20の炭化水素基、3有機置換シリル基からなる群から選ばれるいずれかである。
mは、2又は3の整数である。)
【0015】
又は、下記式(2)
【0016】
【化2】

【0017】
(前記式(2)中、R1、R2は、各々独立して炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基である。
3は、炭素数1〜20のアルキレン基である。
4、R5は、同一であっても異なっていてもよい、炭素数1〜6の炭化水素基であって隣接する2つのNとともに5員環以上の環構造をなす。
6は、炭素数1〜20の炭化水素基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されている炭素数1〜20の炭化水素基、3有機置換シリル基からなる群から選ばれるいずれかである。
mは、2又は3の整数である。
7は、炭素数1〜20の炭化水素基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、3有機置換シリル基からなる群から選ばれるいずれかである。)
【0018】
により表される前記〔1〕に記載の変性共役ジエン系共重合体を提供する。
【0019】
〔3〕
前記変性共役ジエン系共重合体は、芳香族ビニル化合物のブロック結合に共役ジエン系化合物が共役ジエン系共重合体の末端として結合しており、当該末端が、2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子を有する化合物で変性されている前記〔1〕又は〔2〕に記載の変性共役ジエン系共重合体を提供する。
【0020】
〔4〕
前記ポリビニル芳香族化合物と前記リチウムとのモル比(ポリビニル芳香族化合物/リチウム)が0.05〜1.0である〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の変性共役ジエン系重合体を提供する。
【0021】
〔5〕
前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載の変性共役ジエン系共重合体を10質量%以上含有する重合体組成物を100質量部、シリカ系無機充填材を1〜150質量部、を含有する変性共役ジエン系共重合体組成物を提供する。
【0022】
〔6〕
前記〔5〕に記載の変性共役ジエン系共重合体組成物を含有し、加硫されている履物用のゴム組成物を提供する。
【0023】
〔7〕
前記〔1〕乃至〔4〕に記載の変性共役ジエン系共重合体の製造方法であって、
(A)ポリビニル芳香族化合物とリチウムとを用いて多官能アニオン重合開始剤を調整する工程、
(B)前記多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合し、共役ジエン系共重合体を得る工程、
(C)前記共役ジエン系共重合体の重合活性末端に、2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子とを有する化合物を反応させる工程、
を、含む変性共役ジエン系共重合体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、各種無機充填材、特にシリカと組み合わせた場合に、強度、耐摩耗性、柔軟性のバランスに優れた効果を発揮する変性共役ジエン系共重合体、変性共役ジエン系共重合体組成物が得られる。
本発明によれば、特に履物用途として優れた強度と耐摩耗性、履き心地、柔軟性のバランスを発揮し得るゴム組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について説明するが、本発明は以下に示す形態に限定されるものではない。
【0026】
〔変性共役ジエン系共重合体〕
本実施形態の変性共役ジエン系共重合体は、ポリビニル芳香族化合物とリチウムとを用いて調製された多官能アニオン開始剤を用いて共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合することによって得られる共役ジエン系共重合体の末端部に、2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基及び1つ以上の窒素原子を有する変性共役ジエン系共重合体であり、さらに下記(I)〜(III)の条件を満たす変性共役ジエン系共重合体である。
(I)芳香族ビニル化合物の結合量が25〜75質量%である。
(II)芳香族ビニル化合物のブロック結合量が3〜50質量%である。
(III)シリカ粒子充填カラムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー測定のカラムへの吸着量によって求められる変性率が、78質量%以上である。
【0027】
本実施形態の変性共役ジエン系共重合体について、その製造方法とともに説明する。
本実施形態の変性共役ジエン系共重合体は、(A)ポリビニル芳香族化合物とリチウムとを用いて多官能アニオン重合開始剤を調整する工程と、(B)前記多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合し、共役ジエン系共重合体を得る工程と、(C)前記共役ジエン系共重合体の重合活性末端に、2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子とを有する化合物を反応させる工程とにより作製できる。
すなわち、前記共役ジエン系共重合体の重合活性末端に、2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子とを有する化合物(変性剤)を反応させることにより、下記式(3)に示すように、もとの変性剤の構造からアルコキシ基が1つ以上減少した形で変性共役ジエン系共重合体が得られる。
なお、前記(A)の工程においては、ポリビニル芳香族化合物と有機リチウム化合物とを反応させて、ポリビニル芳香族化合物/リチウムのモル比が0.05〜1.0の範囲の多官能アニオン重合開始剤を調製することが好ましい。
【0028】
【化3】

【0029】
前記式(3)中、Polymは、共役ジエン系重合体鎖であり、R1、R2は、各々独立してアルキル基、又はアリール基を表す。
Aは、窒素原子を含む有機基である、
mは、2又は3の整数である。
【0030】
ここで、1つのシリル基に結合しているアルコキシ基に1番目のポリマー鎖が反応する際の反応速度定数をk1、2番目のポリマー鎖が反応する際の反応速度定数をk2、・・・とすると、変性剤のまわりの立体的な効果等から、k1>k2>・・・、となり、AやR2の種類によって、さらに反応速度の差が大きくなる。そのため、現実的には同一変性剤中の全てのアルコキシ基が活性末端と反応することは困難である。
従って、活性末端のモル数に対してアルコキシ基が十分なモル数となるように変性剤を添加することにより、重合体末端に1つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基を有する変性共役ジエン系共重合体が得られる。
【0031】
(多官能アニオン重合開始剤)
変性前の共役ジエン系共重合体を得るための、多官能アニオン重合開始剤について説明する。
多官能アニオン重合開始剤は、上記のように、ポリビニル芳香族化合物と有機リチウム化合物とを反応させることにより調製できる。
例えば、所定の炭化水素溶媒中で、有機リチウム化合物とポリビニル芳香族化合物とを反応させる方法;有機リチウム化合物と共役ジエン化合物とを反応させた後にポリビニル芳香族化合物を反応させる方法;有機リチウム化合物とモノビニル芳香族化合物とを反応させた後にポリビニル芳香族化合物を反応させる方法;共役ジエン化合物及び/又はモノビニル芳香族化合物及びポリビニル芳香族化合物の二者又は三者の存在下で有機リチウム化合物を反応させる方法等が挙げられる。
上記のようにして調製された多官能アニオン重合開始剤が、共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物よりなる共役ジエン系共重合体の重合に使用される。
特に、炭化水素溶媒中で、有機リチウム化合物とポリビニル芳香族化合物とを反応させる方法;有機リチウム化合物と共役ジエン化合物とを反応させた後にポリビニル芳香族化合物を反応させる方法;共役ジエン化合物及びポリビニル芳香族化合物の存在下でモノ有機リチウム化合物を反応させる方法で調製された多官能アニオン開始剤が好ましい。
また、多官能アニオン重合開始剤の生成の促進や安定化を図るために、調製の際に、系内にルイス塩基を添加することが好ましい。
【0032】
<ポリビニル芳香族化合物>
多官能アニオン重合開始剤の調製に用いるポリビニル芳香族化合物としては、例えば、o,m及びp−ジビニルベンゼン、o,m及びp−ジイソプロペニルベンゼン、1,2,4−トリビニルベンゼン、1,2−ビニル−3,4−ジメチルベンゼン、1,3−ジビニルナフタレン、1,3,5−トリビニルナフタレン、2,4−ジビニルビフェニル、3,5,4’−トリビニルビフェニル、1,2−ジビニル−3,4−ジメチルベンゼン、1,5,6−トリビニル−3,7−ジエチルナフタレン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
特に、ジビニルベンセン、ジイソプロペニルベンゼンが好ましく、これらのo−,m−,p−の異性体の混合物であってもよい。工業的利用を行う場合には、これら異性体混合物を用いる方が経済的に有利である。
【0033】
<共役ジエン化合物とモノビニル芳香族化合物>
多官能アニオン重合開始剤の調製には、上述したポリビニル芳香族化合物と共に、共役ジエン化合物及び/又はモノ芳香族ビニル化合物を用いることもできる。
多官能アニオン重合開始剤の調製に用いる共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。特に、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
また、多官能アニオン重合開始剤の調製に用いるモノビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。特に、スチレンが好ましい。
共役ジエン化合物及び/又はモノ芳香族ビニル化合物は、GPCで測定した多官能アニオン重合開始剤のポリスチレン換算の重量平均分子量が500〜20,000の範囲内となるように添加することが好ましく、1,000〜10,000となるように添加することがさらに好ましい。
【0034】
<有機リチウム化合物>
多官能アニオン重合開始剤の調製に用いる有機リチウム化合物としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−プロピルリチウム、iso−プロピルリチウム、ベンジルリチウム等のモノ有機リチウム化合物;1,4−ジリチオブタン、1,5−ジリチオペンタン、1,6−ジリチオヘキサン、1,10−ジリチオデカン、1,1−ジリチオジフェニレン、ジリチオポリブタジエン、ジリチオポリイソプレン、1,4−ジリチオベンゼン、1,2−ジリチオ−1,2−ジフェニルエタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼン、1,3,5−トリリチオ−2,4,6−トリエチルベンゼン等の多官能性有機リチウム化合物が挙げられる。特に、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムのモノ有機リチウム化合物が好ましい。
【0035】
<炭化水素溶媒>
多官能アニオン重合開始剤の調製に用いる炭化水素溶媒としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
【0036】
<ルイス塩基>
多官能アニオン重合開始剤の調製の際には、多官能アニオン重合開始剤の生成の促進や安定化のために、系内にルイス塩基を添加することが有効である。
ルイス塩基としては、3級モノアミン、3級ジアミン、鎖状又は環状エーテル等が挙げられる。
3級モノアミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、1,1−ジメトキシトリメチルアミン、1,1−ジエトキシトリメチルアミン、1,1−ジエトキシトリエチルアミン、N,N−ジメチルホルムアミドジイソプロピルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジシクロヘキシルアセタール等の化合物が挙げられる。
3級ジアミンとしては、例えば、N,N,N',N'−テトラメチルジアミノメタン、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチルプロパンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチルジアミノブタン、N,N,N',N'−テトラメチルジアミノペンタン、N,N,N',N'−テトラメチルヘキサンジアミン、ジピペリジノペンタン、ジピペリジノエタン等の化合物が挙げられる。
鎖状エーテルとしては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレンジメチルエーテルが挙げられる。
環状エーテルとしては、例えば、テトラヒドロフラン、ビス(2−オキソラニル)エタン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン、1,1−ビス(2−オキソラニル)エタン、2,2−ビス(2−オキソラニル)ブタン、2,2−ビス(5−メチル−2−オキソラニル)プロパン、2,2−ビス(3,4,5−トリメチル−2−オキソラニル)プロパン等の化合物が挙げられる。
上述したルイス塩基の中でも、3級モノアミンであるトリメチルアミン、トリエチルアミン、3級ジアミンであるN,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、及び環状エーテルであるテトラヒドロフランが好ましい。
前記ルイス塩基は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
<ポリビニル芳香族化合物の使用量>
多官能アニオン重合開始剤の調製の際に使用する上述したポリビニル芳香族化合物の量は、上述した有機リチウム化合物1モルに対して0.05〜1.0モルの範囲であるものとし、0.1〜0.5モルの範囲が好ましい。
これにより、ポリビニル芳香族化合物/リチウムのモル比が0.05〜1.0の範囲の多官能アニオン重合開始剤を調製できる。
ポリビニル芳香族化合物の使用量が多いほど、後述する変性反応によって官能基を付与される分子鎖末端の割合が増加し、後述するシリカ系粒子との親和性や反応性の向上が図られ、変性共役ジエン系共重合体組成物における強度と耐摩耗性、履き心地、柔軟性のバランスの向上も図られるが、組成物混練時の加工性を良好なものにする観点から、有機リチウム化合物1モルに対して1.0モル以下とすることが好ましい。
【0038】
<ルイス塩基の添加量>
また、多官能アニオン重合開始剤を調製する際に、上述のようにルイス塩基を添加する場合は、多官能アニオン重合開始剤を調製するときに用いられる前記炭化水素溶媒に対し、30〜50,000ppmの範囲内で添加することが好ましく、200〜20,000ppmの範囲内で添加することが好ましい。
反応促進や安定化の効果を十分に発現するためには30ppm以上の添加が好ましく、後の重合工程でのミクロ構造調整の自由度を確保することや重合後の溶媒を回収し、精製する工程における重合溶媒との分離を考慮すると50,000ppm以下で添加することが好ましい。
【0039】
<多官能アニオン重合開始剤の調製温度、反応時間>
多官能アニオン重合開始剤を調製する際の温度は、10℃〜140℃の範囲が好ましく、35℃〜110℃の範囲がより好ましい。生産性の観点から10℃以上であることが好ましく、高温による副反応を抑制するために140℃以下であることが好ましい。
多官能アニオン重合開始剤を調製する反応時間は、上述した反応温度に左右されるが、5分〜24時間の範囲である。
【0040】
(共役ジエン系共重合体)
次に、本実施形態の変性共役ジエン系共重合体を得るための、変性前の共役ジエン系共重合体について説明する。
変性前の共役ジエン系共重合体は、上述した多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合することによって得られる。
共重合工程においては、多官能アニオン重合開始剤を、予め所定の反応器で調製しておき、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合を行うための反応器に供給して重合反応を行ってもよいし、共重合を行うための反応器中で多官能アニオン重合開始剤を調製しておいて、この反応器に所定のモノマー類を供給して重合反応を行ってもよい。
重合体の大量生産時の生産性や品質安定性の観点からは、予め所定の反応器で多官能アニオン重合開始剤を調製しておき、これを、必要に応じて重合に使用する反応器に供給して、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合を行うことが好ましい。
また、共役ジエン系共重合体の重合は、回分式、又は1個の反応器若しくは2個以上の連結された反応器での連続式等の重合様式により行うことが好ましい。
【0041】
<極性化合物>
変性前の共役ジエン系共重合体を製造する際、芳香族ビニル化合物を共役ジエン化合物とランダムに共重合する目的で、又は共役ジエン部のミクロ構造を制御するためのビニル化剤として、更には重合速度の改善等の目的で、下記の極性化合物を少量添加してもよい。
極性化合物としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジメトキシベンゼン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン等のエーテル類;テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジン等の第三級アミン化合物;カリウム−t−アミラート、カリウム−t−ブチラート、ナトリウム−t−ブチラート、ナトリウムアミラート等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物等が挙げられる。
これらの極性化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上述した極性化合物の使用量は、目的と効果の程度に応じて選択されるが、通常、多官能アニオン重合開始剤中のリチウム1モルに対して0.01〜100モルである。
【0042】
<共役ジエン化合物>
共役ジエン系共重合体の合成に用いられる共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、特に、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
不純物として、アレン類、アセチレン類が含有されていると、後述する変性反応を阻害するため、これらの濃度の合計は200ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることがさらに好ましい。
【0043】
<芳香族ビニル化合物>
共役ジエン系共重合体の合成に用いられる芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で特にスチレンが好ましい。
【0044】
<重合溶媒>
共役ジエン系共重合体は、所定の溶媒中で重合する。
重合溶媒としてが、例えば、飽和炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素系溶媒が用いられる。
具体的には、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素及びそれらの混合物からなる炭化水素が挙げられる。
【0045】
<重合温度>
共役ジエン系共重合体の重合温度は、リビングアニオン重合が進行する温度であれば特に限定されるものではないが、生産性の観点から0℃以上が好ましく、重合終了後の活性末端へ変性反応量を充分に確保する観点から120℃以下で行うことが好ましく、より好ましくは20〜100℃の範囲であり、さらに好ましくは30〜85℃の範囲である。
重合温度は、重合が発熱反応であることを考慮に入れ、さらにはモノマー及び溶媒のフィード温度を調節し、モノマー濃度を制御し、反応器外部からの冷却や加熱を行うことによって制御できる。
【0046】
<不純物処理>
上述した共役ジエン化合物、芳香族ビニル化合物、及び重合溶媒は、それぞれ単独で、あるいはこれらの混合液を、予め重合反応に供する前に、不純物であるアレン類やアセチレン類を、有機金属化合物を用いて処理しておくことによって、高濃度の活性末端を有する重合体が得られるようになり、高い変性率を達成できるようになる。
【0047】
本実施形態の変性共役ジエン系共重合体は、後述する所定の変性剤によって、共役ジエン系共重合体の重合活性末端を変性することにより得られる。
詳細には、上述したように、多官能性アニオン開始剤を用いて共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合して共役ジエン系共重合体を得、この重合活性末端に、変性剤を反応させることによって得られた変性共役ジエン系共重合体を得る。
【0048】
<変性剤>
変性剤としては、2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子とを有する化合物が用いられる。
変性反応に用いる2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子を有する化合物としては、下記式(1)、
【0049】
【化4】

【0050】
(式(1)中、R1、R2は、それぞれ独立して炭素数1〜20のアルキル基、又はアリール基であり、R3は炭素数1〜20のアルキレン基であり、R4、R5は同一であっても異なっていてもよい炭素数1〜6の炭化水素基であって隣接する2つのNとともに5員環以上の環構造をなし、R6は炭素数1〜20の炭化水素基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されている炭素数1〜20の炭化水素基、3有機置換シリル基よりなる群から選択されるいずれかであり、mは2又は3の整数である。)
【0051】
又は、下記式(2)
【0052】
【化5】

【0053】
(式(2)中、R1〜R6、mの定義は、上記式(1)と同様である。
R7は、炭素数1〜20の炭化水素基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、3有機置換シリル基よりなる群から選択されるいずれかである。)
【0054】
で表される、2つ以上の窒素原子を含む環状アミノ基を有するヒドロカルビルオキシシランや、その他の環状アミン、非環状アミン、イミン、イソシアネート等の官能基を含有するヒドロカルビルオキシシラン、環状アザシランが挙げられる。
【0055】
前記式(1)で表される環状アミノ基を有するヒドロカルビルオキシシランの具体例を下記に示す。
例えば、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(ジエトキシエチルシリル)プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−3−メチルイミダゾリジン、1−[3−(ジエトキシエチルシリル)プロピル]−3−エチルイミダゾリジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、1−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、3−[3−(トリブトキシシリル)プロピル]−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、3−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]−1−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、1−(2−エトキシエチル)−3−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]イミダゾリジン、(2−{3−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]テトラヒドロピリミジン−1−イル}エチル)ジメチルアミン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−(トリメチルシリル)ピペラジン、1−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]−4−(トリメチルシリル)ピペラジン、1−[3−(トリブトキシシリル)プロピル]−4−(トリメチルシリル)ピペラジン、1−[3−(ジエトキシエチルシリル)プロピル]−3−(トリエチルシリル)イミダゾリジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−3−(トリメチルシリル)イミダゾリジン、1−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]−3−(トリメチルシリル)ヘキサヒドロピリミジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−3−(トリメチルシリル)ヘキサヒドロピリミジン、1−[4−(トリエトキシシリル)ブチル]−4−(トリメチルシリル)ピペラジン等が挙げられる。
これらの中でも、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−3−メチルイミダゾリジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−(トリメチルシリル)ピペラジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−3−(トリメチルシリル)イミダゾリジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−3−(トリメチルシリル)ヘキサヒドロピリミジンが好ましく用いられ、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−(トリメチルシリル)ピペラジンが好ましい。
【0056】
前記式(2)で表される環状アミノ基を有するヒドロカルビルオキシシランの具体例を下記に示す。
例えば、2−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,3−ジメチルイミダゾリジン、2−(ジエトキシエチルシリル)−1,3−ジエチルイミダゾリジン、2−(トリエトキシシリル)―1,4−ジエチルピペラジン、2−(ジメトキシメチルシリル)−1,4−ジメチルピペラジン、5−(トリエトキシシリル)−1,3−ジプロピルヘキサヒドロピリミジン、5−(ジエトキシエチルシリル)−1,3−ジエチルヘキサヒドロピリミジン、{2−[3−(2−ジメチルアミノエチル)−2−(エチルジメトキシシリル)−イミダゾリジン−1−イル]−エチル}−ジメチルアミン、5−(トリメトキシシリル)−1,3−ビス−(2−メトキシエチル)−ヘキサヒドロピリミジン、5−(エチルジメトキシシリル)−1,3−ビス−(2−トリメチルシリルエチル)−ヘキサヒドロピリミジンル)−1,3−ジメチルイミダゾリジン、2−(3−ジエトキシエチルシリル−プロピル)−1,3−ジエチルイミダゾリジン、2−(3−トリエトキシシリル−プロピル)−1,4−ジエチルピペラジン、2−(3−ジメトキシメチルシリル−プロピル)−1,4−ジメチルピペラジン、5−(3−トリエトキシシリル−プロピル)−1,3−ジプロピルヘキサヒドロピリミジン、5−(3−ジエトキシエチルシリル−プロピル)−1,3−ジエチルヘキサヒドロピリミジン、{2−[3−(2−ジメチルアミノエチル)−2−(3−エチルジメトキシシリル−プロピル)−イミダゾリジン−1−イル]−エチル}−ジメチルアミン、5−(3−トリメトキシシリル−プロピル)−1,3−ビス−(2−メトキシエチル)−ヘキサヒドロピリミジン、5−(3−エチルジメトキシシリル−プロピル)−1,3−ビス−(2−トリメチルシリルエチル)−ヘキサヒドロピリミジン、2−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,3−ビス(トリメチルシリル)イミダゾリジン、2−(ジエトキシエチルシリル)−1,3−ビス(トリエチルシリル)イミダゾリジン、2−(トリエトキシシリル)−1,4−ビス(トリメチルシリル)ピペラジン、2−(ジメトキシメチルシリル)−1,4−ビス(トリメチルシリル)ピペラジン、5−(トリエトキシシリル)−1,3−ビス(トリプロピルシリル)ヘキサヒドロピリミジン等が挙げられる。
これらの中でも、2−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,3−ジメチルイミダゾリジン、2−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,3−(ビストリメチルシリル)イミダゾリジンが好ましい。
【0057】
変性剤として用いられる、2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子とを有する化合物であって、前記式(1)、(2)で表される化合物以外の、環状アミノ基を有するヒドロカルビルオキシシランの具体例を下記に示す。
例えば、[3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル]トリエトキシシラン、[3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[2−(1−ヘキサメチレンイミノ)エチル]トリエトキシシラン、[2−(1−ヘキサメチレンイミノ)エチル]トリメトキシシラン、[3−(1−ピロリジニル)プロピル]トリエトキシシラン、[3−(1−ピロリジニル)プロピル]トリメトキシシラン、[3−(1−ヘプタメチレンイミノ)プロピル]トリエトキシシラン、[3−(1−ドデカメチレンイミノ)プロピル]トリエトキシシラン、[3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル]ジエトキシメチルシラン、[3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル]ジエトキシエチルシラン等が挙げられる。
【0058】
変性剤として用いられる、2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子とを有する化合物であって、非環状アミノ基を有するヒドロカルビルオキシシランの具体例を下記に示す。
例えば、[3−(ジメチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン、[3−(ジメチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[3−(ジエチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン、[3−(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[2−(ジメチルアミノ)エチル]トリエトキシシラン、[2−(ジメチルアミノ)エチル]トリメトキシシラン、[3−(ジメチルアミノ)プロピル]ジエトキシメチルシラン,[3−ジブチルアミノプロピル]トリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジメトキシシラン及びN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0059】
変性剤として用いられる、2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子とを有する化合物であって、イミノ基を含有するヒドロカルビルオキシシランの具体例を下記に示す。
例えば、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルエチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−エチリデン−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(シクロヘキシリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−イソプロポキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−メチルジエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール等が挙げられる。
【0060】
変性剤として用いられる、2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子とを有する化合物であって、イソシアネート基を有するヒドロカルビルオキシシランの具体例を下記に示す。
例えば、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリイソプロポキシシラン、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0061】
変性剤として用いられる、2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子とを有する化合物であって、環状アザシラン化合物の具体例を下記に示す。
例えば、N−n−ブチル−アザ−2,2−ジメトキシシラシクロペンタン、N−エチル−アザ−2,2−ジエトキシ−4−メチルシラシクロペンタン、N−アリル−アザ−2,2−ジメトキシシラシクロペンタン、1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン等が挙げられる。
【0062】
上述した変性剤の中でも、上記式(1)又は式(2)で表される化合物が好ましく、特に、上記式(1)で表される化合物が好ましい。
これらの変性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
<変性反応温度、反応時間>
上記変性剤を、共役ジエン系共重合体の重合活性末端に反応させる際の、反応温度、反応時間等については、特に制限されるものではないが、0℃以上120℃以下で30秒以上反応させることが好ましい。
【0064】
<変性剤の添加量>
上記変性剤は、添加した変性剤中のシリル基に結合したアルコキシ基の合計モル数が、上述した重合開始剤に含まれるリチウムの合計モル数の1〜5倍の範囲となるように、添加することが好ましく、1.5〜3倍の範囲で添加することがより好ましく、1.5〜2.5倍の範囲で添加することがさらに好ましい。
後述する所定の変性率を得て、かつ、変性共役ジエン系分子鎖末端部に1つ以上のアルコキシ基を残存させるようにする観点から、1倍以上とすることが好ましく、コスト的な観点から5倍以下とすることが好ましい。
【0065】
<反応停止剤、その他の処理>
上述した変性剤により、共役ジエン系共重合体の変性反応を行った後、重合体溶液中に、必要に応じて反応停止剤を添加してもよい。
反応停止剤としては、通常、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;ステアリン酸、ラウリン酸、オクタン酸等の有機酸:水等が使用できる。
また、共役ジエン系重合体の変性反応を行った後、必要に応じて、重合体に含まれる金属類を脱灰してもよい。脱灰方法としては、例えば、水、有機酸、無機酸、過酸化水素等の酸化剤等を、重合体溶液に接触させて金属類を抽出し、その後水層を分離する方法が用いられる。
また、共役ジエン系共重合体の変性反応を行った後、重合体溶液に、酸化防止剤を添加してもよい。酸化防止剤としては、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤等が挙げられる。
【0066】
<変性共役ジエン系共重合体の取得方法>
変性共役ジエン系共重合体を、重合体溶液から取得する方法としては、従来公知の方法を適用できる。
例えば、スチームストリッピング等で溶媒を分離した後、重合体を濾別し、さらにそれを脱水及び乾燥して重合体を取得する方法、フラッシングタンクで濃縮し、さらにベント押し出し機等で脱揮する方法、ドラムドライヤー等で直接脱揮する方法等が適用できる。
【0067】
<変性率>
変性率、すなわち変性共役ジエン系共重合体中の官能基成分を有する重合体の含有量は、78質量%以上であることが好ましく、86質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
これにより、後述する変性共役ジエン系重合体を用いた組成物を加硫物とした場合において、強度、耐摩耗性、履き心地、柔軟性のバランスが良好なものとなり、実用上十分な強度、耐摩耗性、履き心地、柔軟性のバランスが得られる。
変性率は、上述した共役ジエン化合物中の不純物であるアレン類、アセチレン類の濃度やこれらの処理方法、及び重合温度を制御することによって、上記のように78質量%以上に調製できる。
官能基成分を有する重合体の含有量、すなわち変性率の測定方法としては、官能基含有の変性成分と非変性成分とを分離できるクロマトグラフィーによる測定が好ましい。
このクロマトグラフィーによる測定方法としては、官能基成分を吸着するシリカ等の極性物質を充填剤としたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)カラムを使用し、非吸着成分の内部標準を比較に用いて定量する方法が好適である。
【0068】
<変性共役ジエン系共重合体の重量平均分子量>
本実施形態における変性共役ジエン系共重合体の重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、加工性や物性を考慮して10万〜200万が好ましく、20万〜100万がより好ましく、25万〜50万がさらに好ましい。
なお、回分式プロセスにより、上述した、変性前の共役ジエン系共重合体の重合を行った場合には、変性共役ジエン系共重合体は、GPCによる分子量分布で複数のピークが観察される。その最も低分子量側のピークは、多官能重合開始剤混合物中の単官能成分により重合が開始して生成した成分と考えられる。
重合開始剤として多官能成分が多いほど、変性共役ジエン系共重合体を用いた組成物は、強度、耐摩耗性、履き心地、柔軟性に優れたものとなるが、反面において加工性が悪化することから、かかる観点から、最も低分子量側のピーク面積が20〜50%であることが好ましい。
【0069】
<変性共役ジエン系共重合体中における芳香族ビニル化合物の結合量>
本実施形態の変性共役ジエン系共重合体の共重合体中における芳香族ビニル化合物の結合量は25〜75質量%であり、好ましくは30〜65質量%であり、より好ましくは35〜55質量%の範囲である。
芳香族ビニル化合物の結合量が25質量%未満であると、強度と耐摩耗性能が劣り、75質量%を超えると後述する変性共役ジエン系共重合体組成物の硬度が上昇し、十分な柔軟性が得られなくなり、特に、後述するゴム組成物を履物として使用した場合に、履き心地が悪化する。
芳香族ビニル化合物の結合量は、後述する実施例において記載されている方法により測定できる。
【0070】
<変性共役ジエン系共重合体中における芳香族ビニル化合物のブロック結合量>
変性共役ジエン系共重合体中における芳香族ビニル化合物のブロック結合量は、所定の試料をクロロホルムに溶解し、t−ブチルヒドロペルオキシドとオスミウムテトラオキシドを添加し攪拌し、得られた分解溶液にメタノールを添加して生成沈殿物をろ過し、これをクロロホルムで溶解希釈して、UV計を用いて吸光度を測定し、所定の検量線により求めた係数(F)を用いて算出できる。
ブロック結合量(質量%)=(F)×(吸光度)×100/試料重量
本実施形態の変性共役ジエン系共重合体における芳香族ビニル化合物のブロック結合量は、3〜50質量%であり、好ましくは5〜35質量%である。
芳香族ビニル化合物のブロック結合量が3質量%未満であると強度が劣るものとなり、50質量%を超える場合には耐摩耗性能が著しく劣る。
変性共役ジエン系共重合体組成物を、タイヤのトレッド部等に利用する場合には、耐摩耗性を向上させるために、好ましくないとされてきた変性共役ジエン系共重合体中の芳香族ビニル化合物のブロック構造が、履物用のゴム組成物とする場合には、強度と耐摩耗性とのバランスを図るためには重要となる。
一方、タイヤトレッド材料用ゴムにおいては、芳香族ビニル化合物のブロック構造は、発熱性の悪化、省燃費性能の低下、耐摩耗性の低下を招来する原因となっていた。
芳香族ビニル化合物のブロック結合量は、後述する実施例において記載されている方法により測定できる。
【0071】
本実施形態の変性共役ジエン系共重合体は、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを重合させ、その末端と変性剤(2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子を有する化合物)を反応させる前又は後に、一般的にカップリング剤と言われる多官能性変性剤を反応させてもよい。
この場合、多官能性変性剤としては、シリカとの親和性の大きい官能基を有するものが好ましく、分子中にアミノ基を含むグリシジル化合物、更には1分子中にジグリシジルアミノ基を2個又は3個有する化合物である。
例えば、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等が挙げられる。これらの多官能性変性剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
<変性共役ジエン系共重合体のビニル結合量>
本実施形態の変性共役ジエン系共重合体のビニル結合量は、60%以下が好ましく、45%以下がより好ましい。ビニル結合量が60%を超えると、耐摩耗性が低下するため好ましくない。
変性共役ジエン系共重合体のビニル結合量は、後述する実施例において記載されている方法により測定できる。
【0073】
<変性共役ジエン系共重合体の変性状態>
本実施形態の変性共役ジエン系共重合体は、芳香族ビニル化合物のブロック結合に共役ジエン系化合物が共役ジエン系共重合体の末端として結合し、その末端が、2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子を有する化合物で変性されているものとする。
すなわち、2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子を有する化合物で変性する前に、共役ジエン系共重合体の芳香族ビニル化合物のブロック結合部に共役ジエン系化合物が付加されているものとする。
共役ジエン系化合物の付加量は、変性共役ジエン系共重合体の重量に対して、好ましくは0.5〜10質量%の範囲であり、より好ましくは1〜6質量%である。0.5質量%未満では前記変性剤(2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子を有する化合物)の変性率が低くなり耐摩耗性能が劣る。10質量%を超えると共重合体のランダム構造の柔軟性が低下して靴底が硬くなるので好ましくない。
【0074】
<変性共役ジエン系共重合体の変性率>
本実施形態の変性共役ジエン系共重合体の変性率は、78質量%以上であるものとする。
変性率は、シリカ粒子充填カラムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー測定のカラムへの吸着量によって求められる。
【0075】
<変性共役ジエン系共重合体のムーニー粘度>
本実施形態の変性共役ジエン系共重合体の、100℃で測定されたムーニー粘度(ML1+4(100℃))は、好ましくは30〜100の範囲であり、より好ましくは40〜80の範囲である。
ムーニー粘度が30未満の場合は、本実施形態の変性共役ジエン系共重合体を用いたゴム組成物の強度及び耐摩耗性能が低下し、100を超える場合は、加工性能が極端に低下し、実用上良好なゴム組成物を得ることが困難となる。
【0076】
〔変性共役ジエン系共重合体組成物〕
本実施形態の変性共役ジエン系共重合体組成物は、上述した変性共役ジエン系共重合体を10質量%以上含有する重合体組成物100質量部に対し、後述するシリカ系無機充填材が1〜150質量部含有されているものとする。
シリカ系無機充填材の含有量は、好ましくは10〜100質量部であり、より好ましくは20〜80質量部である。
シリカ系無機充填材の配合割合が1質量部未満であると、配合効果が得られず、150質量部を超えると、加工性が低下し、耐摩耗性が劣化する。
なお、重合体組成物とは、上述した変性共役ジエン系共重合体と、当該変性共役ジエン系共重合体以外の後述するゴム成分とにより構成されているものとする。
【0077】
(シリカ系無機充填材)
シリカ系無機充填材としては、SiO2、又はSi3Alを構成単位の主成分とする固体粒子が使用できる。
例えば、シリカ、クレイ、タルク、マイカ、珪藻土、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、ガラス繊維等の無機繊維状物質等が挙げられる。
また、表面を疎水化したシリカ系無機充填剤や、シリカ系無機充填剤とシリカ系以外の無機充填剤との混合物も使用できる。これらの中でも、シリカ及びガラス繊維が好ましく、シリカがより好ましい。
シリカとしては、乾式シリカ、湿式シリカ、合成ケイ酸塩シリカ等のいずれも使用できるが、特に、破壊特性の改良効果及び防滑性の両立効果が顕著に得られる湿式シリカが好ましい。
【0078】
変性共役ジエン系共重合体組成物において、実用上良好な耐摩耗性や破壊特性を得る観点から、シリカ系無機充填材のBET吸着法で求められる窒素吸着比表面積は、170〜300mm2/gであることが好ましく、200〜300mm2/gであることがより好ましい。
【0079】
(シリカ以外の無機充填材)
変性共役ジエン系共重合体組成物には、上述したシリカ系無機充填剤以外に、補強性を向上させるために、その他の無機充填材を添加してもよい。
シリカ以外の無機充填材としては、カーボンブラックが挙げられる。
カーボンブラックとしては、SRF、FEF、HAF、ISAF、SAF等の各クラスのカーボンブラックが使用でき、窒素吸着比表面積が50mg/g以上、ジブチルフタレート(ASTM−D2414−79規格によるDBP)吸油量が80ml/100gのカーボンブラックが好ましい。
【0080】
また、変性共役ジエン系共重合体組成物には、上述したシリカ系無機充填剤、カーボンブラック以外にも金属酸化物や金属水酸化物を添加してもよい。
金属酸化物とは、化学式MxOy(Mは金属原子、x、yは各々1〜6の整数)を構成単位の主成分とする固体粒子のことをいい、例えばアルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等が挙げられる。
金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム等が挙げられる。
さらに、変性共役ジエン系共重合体組成物には、金属酸化物、金属酸化物以外の無機充填剤の混合物も使用できる。
【0081】
(シランカップリング剤)
変性共役ジエン系共重合体組成物においては、シランカップリング剤を含有させたものとしてもよい。
シランカップリング剤は、変性共役ジエン系共重合体及びその他のゴム成分と、シリカ系無機充填剤との相互作用を緊密にする機能を有しており、変性共役ジエン系共重合体及びその他のゴム成分及びシリカ系無機充填剤のそれぞれに対する親和性又は結合性の基を有している。
シランカップリング剤としては、例えば、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−ジスルフィド、ビス−[2−(トリエトキシシリル)−エチル]−テトラスルフィド等が挙げられる。
シランカップリング剤の配合量は、上述したシリカ系無機充填材100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部がより好ましく、1〜15質量部がさらに好ましい。
シランカップリング剤の配合量が。上述したシリカ系無機充填材100質量部に対して0.1質量部未満であると、有効な配合効果が得られず、一方において、30質量部を超える量は実用上の効果を得るためには必要ではない。
【0082】
(変性共役ジエン系共重合体組成物の製造方法)
上述した変性共役ジエン系共重合体、シリカ系無機充填剤、カーボンブラック、その他の充填材、及びシランカップリング剤を混合し、変性共役ジエン系共重合体組成物を製造する方法については、特に限定されるものではなく、従来公知の方法が適用できる。
例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解混合後、溶剤を加熱除去する方法等が挙げられる。
これらのうち、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機による溶融混練法が生産性、良混練性の観点から好ましい。
また、変性共役ジエン系共重合体と各種配合剤とは、一度の工程で混練してもよく、複数の回数に分けて混合し、混練してもよい。
【0083】
本実施形態における変性共役ジエン系共重合体組成物は、加硫剤により加硫処理を施してもよい。
(加硫剤)
加硫剤としては、例えば、有機過酸化物及びアゾ化合物等のラジカル発生剤、オキシム化合物、ニトロソ化合物、ポリアミン化合物、硫黄、硫黄化合物が使用できる。
硫黄化合物には、一塩化硫黄、二塩化硫黄、ジスルフィド化合物、高分子多硫化合物等が含まれる。
加硫剤の使用量は、通常は、変性共役ジエン系共重合体及びその他のゴム成分100質量部に対して0.01〜20質量部であるものとし、0.1〜15質量部が好ましい。
加硫方法としては、従来公知の方法を適用できる。加硫温度は120〜200℃とすることができ、140〜180℃の範囲が好ましい。
【0084】
(加硫促進剤、加硫助剤)
また、変性共役ジエン系重合体組成物の加硫に際しては、必要に応じて加硫促進剤を用いてもよい。
加硫促進剤としては、従来公知の材料を用いることができる。例えば、スルフェンアミド系、グアニジン系、チウラム系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、チオ尿素系、ジチオカルバメート系等の加硫促進剤が挙げられる。
加硫助剤としては、亜鉛華、ステアリン酸等が挙げられる。
加硫促進剤の使用量は、通常、変性共役ジエン系共重合体及びその他のゴム成分100質量部に対し、0.01〜20質量部であるものとし、0.1〜15質量部が好ましい。
加硫助剤の使用量は、通常、一次促進剤を0.5〜2.0phr、二次促進剤を0.2〜0.5phrとすることが好ましい。
【0085】
(ゴム用軟化剤)
本実施形態における変性共役ジエン系共重合体組成物は、加工性の改良を図るため、ゴム用軟化剤を配合してもよい。
ゴム用軟化剤としては、鉱物油、又は液状若しくは低分子量の合成軟化剤が好適である。
ゴムの軟化、増容、加工性の向上を図るために使用されているプロセスオイル又はエクステンダーオイルと呼ばれる鉱物油系ゴム用軟化剤は、芳香族環、ナフテン環、及びパラフィン鎖の混合物であり、パラフィン鎖の炭素数が全炭素中50%以上を占めるものがパラフィン系と呼ばれ、ナフテン環炭素数が30〜45%のものがナフテン系、芳香族炭素数が30%を超えるものが芳香族系と呼ばれている。
ゴム用軟化剤としては、ナフテン系及び/又はパラフィン系のものが好ましい。
ゴム用軟化剤の配合量は、変性共役ジエン系共重合体及びその他のゴム成分100質量部に対し、0〜100質量部が好ましく、10〜90質量部がより好ましく、30〜90質量部がさらに好ましい。
ゴム用軟化剤の配合量が変性共役ジエン系共重合体及びその他のゴム成分100質量部に対し、100質量部を超えると、ブリードアウトを生じやすく、組成物表面にベタツキを生ずるおそれがあるため好ましくない。
【0086】
(変性共役ジエン系共重合体以外の、その他のゴム成分)
本実施形態の変性共役ジエン系共重合体組成物においては、上述した変性共役ジエン系共重合体以外のゴム成分としてのゴム状重合体を、変性共役ジエン系共重合体と組み合わせて使用できる。
例えば、共役ジエン系重合体又はその水添物、共役ジエン系化合物とビニル芳香族化合物のランダム共重合体又はその水添物、共役ジエン系化合物とビニル芳香族化合物とのブロック共重合体又はその水添物、非ジエン系重合体、天然ゴム等が挙げられる。
具体的には、ブタジエンゴム又はその水素添加物、イソプレンゴム又はその水素添加物、スチレン−ブタジエンゴム又はその水素添加物、スチレンーブタジエンブロック共重合体又はその水素添加物、スチレン−イソプレンブロック共重合体又はその水素添加物等のスチレン系エラストマ−、アクリロニトリル−ブタジエンゴム又はその水素添加物等が挙げられる。
また、非ジエン系重合体としては、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−ブテン−ジエンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレン−ヘキセンゴム、エチレン−オクテンゴム等のオレフィン系エラストマ−、ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、α,β−不飽和ニトリル−アクリル酸エステル−共役ジエン共重合ゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム等が挙げられる。
上述した各種ゴム成分としてのゴム状重合体は、官能基を付与した変性ゴムであってもよい。
これらは、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、2種以上を混合する場合、上述した変性共役ジエン系共重合体の混合量が、重合体組成物の10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。
上述した変性共役ジエン系共重合体の混合量が、重合体組成物の10質量%未満であると、添加効果が十分に発現されない。
【0087】
(その他の添加剤)
本実施形態の変性共役ジエン系共重合体組成物には、特性を損なわない範囲内で、h上記以外の所定の軟化剤、充填材、さらには、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、滑剤等の各種添加剤を含有させてもよい。
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム等が挙げられる。
軟化剤は、目的とする製品の硬さや流動性を調節する機能を有し、例えば、流動パラフィン、ヒマシ油、アマニ油等が挙げられる。
耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、潤滑剤としては、公知の材料を適用できる。
【0088】
(ゴム組成物)
本実施形態のゴム組成物は、上述した変性共役ジエン系共重合体を10質量%以上含有する重合体組成物、シリカ系無機充填材、及び必要に応じて配合されるシランカップリング剤、各種添加剤を加え、公知の混練方法、例えば、バンバリーミキサー、加熱ロール、各種ニーダー、単軸押出機、二軸押出機等の溶融混練機を用いて各成分を均一に混練し、さらに加硫処理を施すことにより得られるものである。必要に応じて架橋処理を行ってもよい。
本実施形態のゴム組成物は、ジョギングシューズ、テニスシューズ、バスケットボールシューズ、バレーボールシューズ等のスポーツシューズや、岩場等で使用するトレッキングシューズ、釣り用の長靴、ダイビング用シューズ、バイク用シューズ、お風呂靴、レインシューズ、ビーチサンダル等の靴のアウトソール等の履物用途として好適である。ただしこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0089】
以下、本発明の実施例と、比較例を挙げて具体的に説明する。
実施例及び比較例に適用した、物性の測定方法、評価方法について下記に示す。
【0090】
〔(1)結合スチレン量〕
測定用の試料をクロロホルム溶液とし、島津製作所製:UV−2450を用いて、スチレンのフェニル基によるUV254nmの吸収により結合スチレン量(質量%)を測定した。
【0091】
〔(2)スチレンブロック結合量〕
秤量した測定用の試料をクロロホルムに溶解し、ターシャリーブチルヒドロペルオキシドとオスミウムテトラオキシドを添加した後、攪拌しながら80℃湯浴中で15分間分解した後、その分解溶液に10倍容量のメタノールを添加して生成沈殿物を濾別した。
その生成沈殿物をクロロホルムで溶解希釈し、UV計を用いて吸光度を測定し、下記式からスチレンブロック結合量を求めた。
スチレンブロック結合量(質量%)=(F)×(吸光度)×100/測定用の試料の重量
((F)は検量線より求めた係数である。)
【0092】
〔(3)ブタジエン1,2結合量〕
測定用の試料を二硫化炭素溶液とし、溶液セルを用いて赤外線スペクトルを600〜1000cm-1の範囲で測定し、所定の吸光度よりハンプトンの方法の計算式に従い、ブタジエン部分のミクロ構造を求め、ブタジエン1,2結合量を求めた。
IRスペクトル分析装置としては、「日本分光製:FT−IR230」を用いた。
【0093】
〔(4)ムーニー粘度〕
JIS K 6300に従って、ムーニー粘度計を使用し、JIS K 6300に従い、100℃で、予熱1分、2回転4分後の粘度を測定した。
【0094】
〔(5)変性率〕
シリカ系ゲルを充填材としたGPCカラムに、変性した成分が吸着する特性を応用し、試料及び低分子量内部標準ポリスチレンを含む試料溶液に関して、ポリスチレン系ゲル(昭和電工製:Shodex)のGPC(東ソー製:HLC−8020)と、シリカ系カラム(デュポン社製:Zorbax)GPC(東ソー製:カラムオーブン;CO−8020、検出器;RI−8021)の両クロマトグラムを測定し、それらの差分よりシリカカラムへの吸着量を測定し、変性率を求めた。
【0095】
〔多官能アニオン重合開始剤の調製〕
後述する実施例、比較例で用いる変性共役ジエン系共重合体を重合する際に使用する多官能アニオン重合開始剤の調製方法について説明する。
内容積10Lの撹拌装置及びジャケットを具備するオートクレーブを洗浄乾燥し、窒素置換を行った。
その後、乾燥処理を施した1,3−ブタジエン1000g、シクロヘキサン4800g、テトラヒドロフラン500ppm、ジビニルベンゼン42gを加えた。
次に、n−ブチルリチウムを104g加えて、75℃で1時間反応させ、調製した。
多官能アニオン重合開始剤の調製には、m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼン、エチルビニルベンゼン等を含有し、ジビニルベンゼン濃度が57質量%であるジビニルベンゼン混合物(新日鐵化学製)を用いた。
【0096】
〔後述する実施例1〜3で用いた変性共役ジエン系共重合体の製造〕
(試料Aの製造方法)
内容積10リットルの撹拌機及びジャケットを付けた温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用した。
不純物を除去したブタジエン575g、スチレン510g、シクロヘキサン4800g、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン0.19gを前記反応器へ入れ、反応器内温を50℃に保持した。
その後、上述のようにして調製した多官能重合開始剤を、リチウム添加量として10.5mmolとなるように前記反応器に供給した。
反応開始後、重合による発熱で、反応器内の温度が75℃に達した後、ブタジエン40gを30秒で供給した(追添)。
重合反応終了後、反応器にテトラグリシジル−1、3−ビスアミノメチルシクロヘキサンを0.38mmolを添加し、30秒間攪拌して反応を実施した。
その後、変性剤として、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジンを5.25mmol添加し、5分間攪拌して変性反応を実施した。
上述した反応により得られた重合体溶液に、酸化防止剤(BHT)を1.8g添加した後、溶媒を除去し、変性成分を有するスチレン−ブタジエン共重合体(試料A)を得た。
(試料A)を分析した結果、結合スチレン量は45質量%であり、スチレンブロック結合量は16質量%であり、重合体のムーニー粘度は60であった。
赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準じて計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造の1,2−結合量は27%であり、シリカ系吸着カラムを用いるGPCから求めた変性率は85%であった。
【0097】
(試料Bの製造方法)
変性剤として、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン
を用いた。
その他の条件は、上述した試料Aと同様の条件で反応を行い、変性共役ジエン系共重合体(試料B)を得た。
(試料B)を分析した結果、結合スチレン量は45質量%であり、スチレンブロック結合量は16質量%であり、重合体のムーニー粘度は60であった。
赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準じて計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造の1,2−結合量は27%であり、シリカ系吸着カラムを用いるGPCから求めた変性率は83%であった。
【0098】
(試料Cの製造方法)
内容積10リットルの撹拌機及びジャケットを付けた温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用した。
不純物を除去したスチレン115g、n−ヘキサン4800g、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン0.19gを前記反応器へ入れ、反応器内温を50℃に保持した。
その後、上述のようにして調製した多官能重合開始剤を、リチウム添加量として10.5mmolとなるように反応器に供給した。
反応開始後、重合の発熱反応による反応器内の温度上昇がなくなった後(ピーキング)、ブタジエン720g、スチレン280gを供給し、反応器内の温度が75℃に達した後、ブタジエン10gを30秒で供給した。
重合反応終了後、前記反応器に、テトラグリシジル−1、3−ビスアミノメチルシクロヘキサンを0.38mmolを添加し、30秒間攪拌して反応を実施し、その後、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジンを5.25mmol添加し、5分間攪拌して変性反応を実施した。
上述した反応により得られた重合体溶液に、酸化防止剤(BHT)を1.8g添加後、溶媒を除去し、変性成分を有するスチレン−ブタジエン共重合体(試料C)を得た。
(試料C)を分析した結果、結合スチレン量は35質量%、スチレンブロック結合量は5質量%であり、重合体のムーニー粘度は59であった。
赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準じて計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造の1,2−結合量は32%であり、シリカ系吸着カラムを用いるGPCから求めた変性率は87%であった。
【0099】
〔後述する比較例1、2で用いた変性共役ジエン系共重合体の製造〕
(試料Dの製造方法)
ブタジエン430g、スチレン510g、追添するブタジエン185g、重合開始剤としてn−ブチルリチウム10.2mmolに変えた以外は(試料A)を得たのと同じ方法で重合反応を実施し、(試料D)の変性共役ジエン系共重合体を得た。
(試料D)を分析した結果、結合スチレン量は45質量%、スチレンブロック結合量は0質量%であり、重合体のムーニー粘度は59であった。
赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準じて計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造の1,2−結合量は32%であり、シリカ系吸着カラムを用いるGPCから求めた変性率は80%であった。
【0100】
(試料Eの製造方法)
重合開始剤を、n−ブチルリチウム10.2mmolに変えた。
その他の条件は、上述した(試料A)と同様に反応を行い、(試料E)の変性共役ジエン系共重合体を得た。
(試料E)を分析した結果、結合スチレン量は45質量%、スチレンブロック結合量は16質量%であり、重合体のムーニー粘度は60であった。
赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準じて計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造の1,2−結合量は27%であり、シリカ系吸着カラムを用いるGPCから求めた変性率は79%であった。
【0101】
〔実施例1〜3〕、〔比較例1、2〕
上述のようにして作製した(試料A)〜(試料E)の変性共役ジエン系共重合体を原料ゴムとして、下記表1に示す配合に従い、ゴム組成物を得た。
混練りは、下記の方法により行った。
温度制御装置を付属した密閉混練機(内容量0.3リットル)を使用し、第一段の混練として、充填率65%、ローター回転数50/57rpmの条件で、原料ゴム(試料A)〜(試料E)、充填材(シリカ)、有機シランカップリング剤を混練した。この際、密閉混練機の温度を制御し、排出温度(配合物)は155〜160℃でゴム組成物を得た。
次に、第二段の混練として、亜鉛華、ステアリン酸、老化防止剤を混練した。この場合も、密閉混練機の温度を制御し、排出温度(配合物)は155〜160℃でゴム組成物を得た。
冷却後、第三段の混練として、70℃に設定したオープンロールにて、硫黄、加硫促進剤を混練した。
得られた混練物を、160℃で20分間加硫プレスにて加硫して、ゴム組成物の試験片を作製した。
この試験片を用いて、下記の物性試験を行った。
【0102】
(1)硬度
JIS−Aの硬さ試験機を用い、JIS−K−6301に従い、測定した。
【0103】
(2)履き心地(反発弾性)
JIS−K−6301によるリュプケ法により、試験片を50℃に加熱して反発弾性を測定し、指数化した。
値が大きいほど履き心地が良いことを示す。
【0104】
(3)柔軟性
レオメトリックス・サイエンティフィック社製の粘弾性試験機(ARES)を使用し、ねじりモードで粘弾性パラメータを測定した。
50℃において周波数10Hz、ひずみ3%で測定した貯蔵弾性率(G’)を測定し、指数化した。
値が大きいほど柔軟性に優れることを示す。
【0105】
(4)耐摩耗性
アクロン摩耗試験機を使用し、荷重6ポンド、1000回転の摩耗量を測定し、指数化した。指数の大きいほど耐摩耗性が優れることを示す。
【0106】
(5)引張強さ
JIS K 6251の引張試験法に従い測定を行い指数化した。
指数が大きいほど引張強さが優れていることを示す。
評価結果を下記表1に示す。
【0107】
【表1】

【0108】
表1に示すように、実施例1〜3の共役ジエン系共重合体を使用したゴム組成物は、いずれも、硬度、引張強さ、反発弾性(履き心地)、柔軟性、耐摩耗性に優れていることが分かった。
比較例1は、芳香族ビニル化合物のブロック結合量において、本発明で規定する要件を満たしていない変性共役ジエン系共重合体を使用したため、上記特性がいずれも、実施例1〜3に比較して劣ったものとなった。
比較例2においては、共役ジエン系共重合体の重合工程において用いた重合開始剤が多官能アニオン重合開始剤ではなく、n−ブチルリチウムを用いたため、上記特性のバランスにおいて、実施例1〜3に劣ったものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の変性共役ジエン系共重合体、変性共役ジエン系共重合体組成物、及びゴム組成物は、履物用素材、各種自動車部品、工業用品、アスファルト組成物等として、産業上の利用可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニル芳香族化合物とリチウムとを用いて調製された多官能アニオン開始剤を用いて共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合することによって得られる共役ジエン系共重合体の末端部に、2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基及び1つ以上の窒素原子を有する変性共役ジエン系共重合体であり、
さらに下記(I)〜(III)の条件を満たす変性共役ジエン系共重合体。
(I)芳香族ビニル化合物の結合量が25〜75質量%である。
(II)芳香族ビニル化合物のブロック結合量が3〜50質量%である。
(III)シリカ粒子充填カラムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー測定のカラムへの吸着量によって求められる変性率が、78質量%以上である。
【請求項2】
前記2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子とを有する化合物が、
下記式(1)
【化1】

(前記式(1)中、R1、R2は、各々独立して炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基である。
3は、炭素数1〜20のアルキレン基である。
4、R5は、同一であっても異なっていてもよい、炭素数1〜6の炭化水素基であって隣接する2つのNとともに5員環以上の環構造をなす。
6は、炭素数1〜20の炭化水素基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されている炭素数1〜20の炭化水素基、3有機置換シリル基からなる群から選ばれるいずれかである。
mは、2又は3の整数である。)
又は、
下記式(2)
【化2】

(前記式(2)中、R1、R2は、各々独立して炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基である。
3は、炭素数1〜20のアルキレン基である。
4、R5は、同一であっても異なっていてもよい、炭素数1〜6の炭化水素基であって隣接する2つのNとともに5員環以上の環構造をなす。
6は、炭素数1〜20の炭化水素基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されている炭素数1〜20の炭化水素基、3有機置換シリル基からなる群から選ばれるいずれかである。
mは、2又は3の整数である。
7は、炭素数1〜20の炭化水素基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、3有機置換シリル基からなる群から選ばれるいずれかである。)
により表される請求項1に記載の変性共役ジエン系共重合体。
【請求項3】
前記変性共役ジエン系共重合体は、芳香族ビニル化合物のブロック結合に共役ジエン系化合物が共役ジエン系共重合体の末端として結合しており、当該末端が、2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子を有する化合物で変性されている請求項1又は2に記載の変性共役ジエン系共重合体。
【請求項4】
前記ポリビニル芳香族化合物と前記リチウムとのモル比(ポリビニル芳香族化合物/リチウム)が0.05〜1.0である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系共重合体を10質量%以上含有する重合体組成物を100質量部、
シリカ系無機充填材を1〜150質量部、
を、含有する変性共役ジエン系共重合体組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の変性共役ジエン系共重合体組成物を含有し、加硫されている履物用のゴム組成物。
【請求項7】
前記請求項1乃至4に記載の変性共役ジエン系共重合体の製造方法であって、
(A)ポリビニル芳香族化合物とリチウムとを用いて多官能アニオン重合開始剤を調整する工程、
(B)前記多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合し、共役ジエン系共重合体を得る工程、
(C)前記共役ジエン系共重合体の重合活性末端に、2つ以上のアルコキシ基で置換されたシリル基と1つ以上の窒素原子とを有する化合物を反応させる工程、
を、含む変性共役ジエン系共重合体の製造方法。

【公開番号】特開2011−68828(P2011−68828A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223010(P2009−223010)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】