説明

変性剤、変性共役ジエン系重合体の製造方法、変性共役ジエン系重合体、ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】ゴム組成物のヒステリシスロスを大幅に低下させると共に、耐摩耗性を大幅に向上させることが可能な新規変性剤を提供する。また、かかる変性剤を用いた変性共役ジエン系重合体の製造方法、変性共役ジエン系重合体、ゴム組成物、及び空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】窒素含有ヒドロカルビルオキシ基を少なくとも一つ有するケイ素化合物からなり、該ケイ素化合物が少なくとも部分的に縮合していることを特徴とする変性剤である。また、該変性剤を用いた変性共役ジエン系重合体の製造方法、該製造方法により得た変性共役ジエン系重合体、該変性共役ジエン系重合体を配合したゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いた空気入りタイヤである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素含有ヒドロカルビルオキシ基を有するケイ素化合物が少なくとも部分的に縮合してなる変性剤、該変性剤を用いた変性共役ジエン系重合体の製造方法、該製造方法により得た変性共役ジエン系重合体、該変性共役ジエン系重合体を配合したゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関し、特には、ゴム組成物のヒステリシスロスを低下させると共に、耐摩耗性を向上させることが可能な変性剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ等の材料として使用した場合に高い低燃費性及び耐摩耗性を実現することができる変性ポリマーとして、種々のポリマーが知られている。具体的には、(共)重合体鎖に結合したアミノ基及びアルコキシシリル基を有する共役ジオレフィン(共)重合ゴムや(例えば、特許文献1参照)、リビングアニオンエラストマーポリマーと、シラン−スルフィド修飾剤との反応生成物を含む鎖末端修飾エラストマーポリマー(例えば、特許文献2参照)等が知られている。
【0003】
そして、上述した変性ポリマーの製造においては、ヒドロカルビルオキシ基(アルコキシ基ともいう)を有するケイ素化合物が変性剤として使用されているが、当該変性剤のヒドロカルビルオキシ基には窒素原子が含まれていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第03/029299号
【特許文献2】国際公開第07/047943号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そして、本発明者らが検討したところ、従来の変性剤を用いて製造した変性ポリマーを配合しても、ゴム組成物のヒステリシスロスの低減と耐摩耗性の向上とを十分満足できるレベルにすることができず、依然として改良の余地が有ることが分かった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、ゴム組成物のヒステリシスロスを大幅に低下させると共に、耐摩耗性を大幅に向上させることが可能な新規変性剤を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかる変性剤を用いた変性共役ジエン系重合体の製造方法、該製造方法により得た変性共役ジエン系重合体、該変性共役ジエン系重合体を配合したゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いた空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、窒素含有ヒドロカルビルオキシ基を有するケイ素化合物が縮合してなる変性剤は、それをポリマーに導入することで、カーボンブラックやシリカ等の充填剤に対するポリマーの反応性を向上させられることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明の変性剤は、窒素含有ヒドロカルビルオキシ基を少なくとも一つ有するケイ素化合物からなり、該ケイ素化合物が少なくとも部分的に縮合してなることを特徴とする。
【0009】
なお、本発明において、窒素含有ヒドロカルビルオキシ基とは、アミノ基、イミノ基、置換アミノ基、置換イミノ基、アンモニウム基等の含窒素官能基を含むヒドロカルビルオキシ基である。また、本発明において、アンモニウム基とは、窒素部位がアンモニウムイオンである基を意味する。
【0010】
本発明の変性剤としては、縮合した前記ケイ素化合物が、下記一般式(I):
【化1】

[式中のA1は、飽和環状3級アミン化合物残基、不飽和環状3級アミン化合物残基、ケチミン残基、ニトリル基、(チオ)イソシアナート基、(チオ)エポキシ基、イソシアヌル酸トリヒドロカルビルエステル基、炭酸ジヒドロカルビルエステル基、ニトリル基、ピリジン基、(チオ)ケトン基、(チオ)アルデヒド基、アミド基、(チオ)カルボン酸エステル基、(チオ)カルボン酸金属塩残基、カルボン酸無水物残基、カルボン酸ハロゲン化物残基、並びに加水分解可能な基を有する1級若しくは2級アミノ基又はメルカプト基の中から選択される少なくとも一種の官能基であり、
1は、窒素含有有機基若しくは窒素非含有有機基であるか、又はR3と一体となって窒素含有複素環を形成しており、
2は、窒素含有有機基又は窒素非含有有機基であり、
3は、窒素含有有機基であるか、又はR1と一体となって窒素含有複素環を形成しており、
4は、窒素非含有有機基であり、
50は、窒素含有有機基又は窒素非含有有機基であり、
1、R2、R3、R4及びR50は、同一でも異なっていてもよく、
5は、二価の窒素含有有機基又は窒素非含有有機基であり、
但し、R1、R2、R3、R4、R5及びR50は、それぞれ独立して炭素数が1〜20であり、また、R1、R2、R3、R4、R5及びR50の内の少なくとも一つが芳香族基であってもよく、その場合、該芳香族基は、それぞれ独立して炭素数が6〜18であり、
aは2〜20で、bは0〜1で、c、d及びeは0〜2で、ccは0〜1で、但し、R1が窒素含有有機基であるか又はR3と一体となって窒素含有複素環を形成し且つbが1である場合、c+d+e=2(ここで、c、d及びeは0〜2である)で、ccは0であり、R1が窒素含有有機基であるか又はR3と一体となって窒素含有複素環を形成し且つbが0である場合、c+d+e=2(ここで、c、d及びeは0〜2である)で、ccは1であり、R1が窒素非含有有機基で且つbが1である場合、c+d+e=2(ここで、dは1〜2で、c及びeは0〜1である)で、ccは0であり、R1が窒素非含有有機基で且つbが0である場合、c+d+e=2(ここで、dは1〜2で、c及びeは0〜1である)で、ccは1である]で表されることが好ましい。
【0011】
また、本発明の変性剤としては、縮合した前記ケイ素化合物が、下記一般式(II):
【化2】

[式中のA1は、飽和環状3級アミン化合物残基、不飽和環状3級アミン化合物残基、ケチミン残基、ニトリル基、(チオ)イソシアナート基、(チオ)エポキシ基、イソシアヌル酸トリヒドロカルビルエステル基、炭酸ジヒドロカルビルエステル基、ニトリル基、ピリジン基、(チオ)ケトン基、(チオ)アルデヒド基、アミド基、(チオ)カルボン酸エステル基、(チオ)カルボン酸金属塩残基、カルボン酸無水物残基、カルボン酸ハロゲン化物残基、並びに加水分解可能な基を有する1級若しくは2級アミノ基又はメルカプト基の中から選択される少なくとも一種の官能基であり、
1は、窒素含有有機基若しくは窒素非含有有機基であるか、又はR3と一体となって窒素含有複素環を形成しており、
2は、窒素含有有機基又は窒素非含有有機基であり、
3は、窒素含有有機基であるか、又はR1と一体となって窒素含有複素環を形成しており、
4は、窒素非含有有機基であり、
5は、二価の窒素含有有機基又は窒素非含有有機基であり、
Xは、窒素含有有機基、窒素非含有有機基、−OR6(ここで、R6は窒素含有有機基又は窒素非含有有機基である)、又はハロゲン原子であり、
1、R2、R3、R4及びXは、同一でも異なっていてもよく、
但し、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びX(但し、Xがハロゲン原子である場合を除く)は、それぞれ独立して炭素数が1〜20であり、また、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びX(但し、Xがハロゲン原子である場合を除く)の内の少なくとも一つが芳香族基であってもよく、その場合、該芳香族基は、それぞれ独立して炭素数が6〜18であり、
fは2〜20で、kは1で、g、h、i及びjは0〜2であり、
但し、R1が窒素含有有機基であるか又はR3と一体となって窒素含有複素環を形成し且つg+h+i+j=2(ここで、g、h、i及びjは0〜2である)である]で表されることも好ましい。
【0012】
なお、本発明において、窒素含有有機基とは、少なくとも一つの窒素原子を含む有機基であり、窒素非含有有機基とは、窒素原子を含まない有機基であり、窒素含有複素環とは、少なくとも一つの窒素原子を含む環である。また、窒素含有有機基、窒素非含有有機基及び窒素含有複素環は、窒素原子以外のヘテロ原子、例えば硫黄原子、酸素原子等を含んでいてもよい。
【0013】
また、本発明の変性共役ジエン系重合体の製造方法は、分子中に重合活性末端を有する共役ジエン系重合体の該重合活性末端に、変性剤を反応させて変性共役ジエン系重合体を製造する方法であって、
前記変性剤が、上記変性剤のいずれかであることを特徴とする。
【0014】
本発明の変性共役ジエン系重合体の製造方法は、前記共役ジエン系重合体の重合活性末端に変性剤を反応させた後に、周期律表の4A族、2B族、3B族、4B族および5B族のうち少なくとも一つに属する元素の化合物からなる縮合促進剤の存在下で縮合反応を行うことが好ましい。
【0015】
更に、本発明の変性共役ジエン系重合体は、上記製造方法により得られたことを特徴とする。
【0016】
また更に、本発明のゴム組成物は、上記変性共役ジエン系重合体を含むことを特徴とし、前記変性共役ジエン系重合体を15質量%以上含むゴム成分100質量部に対し、充填剤を10〜120質量部配合したものであることが好ましい。ここで、前記充填剤としては、シリカ及びカーボンブラックが挙げられる。
【0017】
更にまた、本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、窒素含有ヒドロカルビルオキシ基を有するケイ素化合物を少なくとも部分的に縮合させてなり、それをポリマーに導入することで、充填剤に対するポリマーの反応性を向上させることが可能な変性剤を提供することができる。また、かかる変性剤を用いることで、ゴム組成物のヒステリシスロスを大幅に低下させると共に、耐摩耗性を大幅に向上させることが可能な変性共役ジエン系重合体を提供することができる。更に、かかる変性剤を用いた変性共役ジエン系重合体の製造方法、該変性共役ジエン系重合体を配合したゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いた空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<変性剤>
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明の変性剤は、窒素含有ヒドロカルビルオキシ基を少なくとも一つ有するケイ素化合物からなり、該ケイ素化合物が少なくとも部分的に縮合してなることを特徴とする。ここで、少なくとも部分的に縮合したケイ素化合物とは、ケイ素化合物の単量体(1量体)と該ケイ素化合物が二分子以上結合した多量体とからなる部分縮合物、及びケイ素化合物の多量体からなる完全縮合物を含む概念である。上記変性剤を共役ジエン系重合体に導入して得た変性共役ジエン系重合体は、充填剤との反応性が高く、ゴム組成物のヒステリシスロスを大幅に低下させると共に、耐摩耗性を大幅に向上させることができる。また、上記変性剤を構成するケイ素化合物は、充填剤の分散性を向上させるため、窒素含有ヒドロカルビルオキシ基の酸素原子がケイ素原子に直接結合していることが好ましい。即ち、該ケイ素化合物は、分子内に、1個以上のケイ素−酸素結合(Si−O)を有することが好ましい。
【0020】
本発明の変性剤を構成するケイ素化合物の縮合体として、より具体的には、上記一般式(I)で表わされる化合物又は上記一般式(II)で表わされる化合物が好ましい。これら縮合したケイ素化合物は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
<<式(I)の化合物>>
上記一般式(I)において、A1は、一価の官能基であり、具体例として、飽和環状3級アミン化合物残基、不飽和環状3級アミン化合物残基、ケチミン残基、ニトリル基、(チオ)イソシアナート基、(チオ)エポキシ基、イソシアヌル酸トリヒドロカルビルエステル基、炭酸ジヒドロカルビルエステル基、ニトリル基、ピリジン基、(チオ)ケトン基、(チオ)アルデヒド基、アミド基、(チオ)カルボン酸エステル基、(チオ)カルボン酸金属塩残基、カルボン酸無水物残基、及びカルボン酸ハロゲン化物残基の他、加水分解可能な基を有する1級若しくは2級アミノ基又はメルカプト基等が挙げられる。ここで、加水分解可能な基としては、トリメチルシリル(TMS)基、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)基等が挙げられる。
【0022】
また、上記式(I)において、R1は、窒素含有有機基若しくは窒素非含有有機基であるか又はR3と一体となって窒素含有複素環を形成しており、但し、R1は炭素数が1〜20であり、また、R1が芳香族基であってもよく、その場合、該芳香族基は炭素数が6〜18である。ここで、窒素含有有機基としては、アミノ基含有炭化水素基、加水分解可能な基で保護されたアミノ基を有するアミノ基含有炭化水素基等が挙げられ、より具体的には、アミノプロピル基、ジメチルアミノエチル基、ジメチルアミノプロピル基、TMS基又はTBDMS基で保護されたアミノプロピル基等が挙げられ、窒素非含有有機基としては、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の一価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。ここで、加水分解可能な基については、上述の通りである。また、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、炭素数6〜20の一価の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基、ベンジル基、キシリル基、ナフチル基などが挙げられる。なお、R1がR3と一体となって形成する窒素含有複素環とは、ケイ素に直接結合した二つの酸素に対して二価の窒素含有有機基が結合して形成される複素環であり、例えば、下記式(III):
【化3】

[式中、R'1及びR'3はそれぞれ独立して炭素数1〜20の二価の炭化水素基であり、R7は窒素含有有機基、窒素非含有有機基、水素又は加水分解可能な基である]で表されることが好ましい。ここで、炭素数1〜20の二価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基等の炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、炭素数7〜20のアラルキレン基等が挙げられる。なお、窒素含有有機基、窒素非含有有機基及び加水分解可能な基については、上述の通りである。
【0023】
上記式(I)において、R2は窒素含有有機基又は窒素非含有有機基であり、R3は窒素含有有機基であるか又はR1と一体となって窒素含有複素環を形成しており、R4は窒素非含有有機基であり、R50は窒素含有有機基又は窒素非含有有機基であり、但し、R2、R3、R4及びR50は、それぞれ独立して炭素数が1〜20であり、また、R2、R3、R4及びR50の内の少なくとも一つが芳香族基であってもよく、その場合、該芳香族基は、それぞれ独立して炭素数が6〜18である。ここで、窒素含有有機基、窒素非含有有機基、及び窒素含有複素環については、上述の通りである。なお、R1、R2、R3、R4及びR50は、同一でも異なっていてもよい。
【0024】
上記式(I)において、R5は二価の窒素含有有機基又は窒素非含有有機基であり、但し、R5は炭素数が1〜20であり、また、R5が芳香族基であってもよく、その場合、該芳香族基は炭素数が6〜18である。ここで、二価の窒素含有有機基は、下記式(IV):
【化4】

[式中、R8は、−NR9−、−NR9−NR9−又は−N=N−であり、但し、R9は−Cl2l+1、水素又は加水分解可能な基であり、l、m、及びnはそれぞれ独立して0〜20である]で表される。なお、−Cm2m−及び−Cn2n−は、m及びnが0〜20であるため、単結合又は炭素数1〜20のアルキレン基である。ここで、炭素数1〜20のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基等が挙げられる。また、−Cl2l+1は、lが0〜20であるため、水素又は炭素数1〜20のアルキル基である。ここで、炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。更に、加水分解可能な基については、上述の通りである。一方、二価の窒素非含有有機基としては、炭素数1〜20の二価の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の二価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。該炭素数1〜20の二価の脂肪族炭化水素基としては、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基等が挙げられ、炭素数6〜20の二価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基等が挙げられる。
【0025】
上記式(I)において、aは2〜20で、bは0〜1で、c、d及びeは0〜2で、ccは0〜1で、但し、R1が窒素含有有機基であるか又はR3と一体となって窒素含有複素環を形成し且つbが1である場合、c+d+e=2(ここで、c、d及びeは0〜2である)で、ccは0であり、R1が窒素含有有機基であるか又はR3と一体となって窒素含有複素環を形成し且つbが0である場合、c+d+e=2(ここで、c、d及びeは0〜2である)で、ccは1であり、R1が窒素非含有有機基で且つbが1である場合、c+d+e=2(ここで、dは1〜2で、c及びeは0〜1である)で、ccは0であり、R1が窒素非含有有機基で且つbが0である場合、c+d+e=2(ここで、dは1〜2で、c及びeは0〜1である)で、ccは1である。
【0026】
<<式(II)の化合物>>
上記一般式(II)において、A1は、一価の官能基であり、具体例として、飽和環状3級アミン化合物残基、不飽和環状3級アミン化合物残基、ケチミン残基、ニトリル基、(チオ)イソシアナート基、(チオ)エポキシ基、イソシアヌル酸トリヒドロカルビルエステル基、炭酸ジヒドロカルビルエステル基、ニトリル基、ピリジン基、(チオ)ケトン基、(チオ)アルデヒド基、アミド基、(チオ)カルボン酸エステル基、(チオ)カルボン酸金属塩残基、カルボン酸無水物残基、及びカルボン酸ハロゲン化物残基の他、加水分解可能な基を有する1級若しくは2級アミノ基又はメルカプト基等が挙げられる。ここで、加水分解可能な基については、上述の通りである。
【0027】
また、上記式(II)において、R1は窒素含有有機基若しくは窒素非含有有機基であるか又はR3と一体となって窒素含有複素環を形成しており、R2は窒素含有有機基又は窒素非含有有機基であり、R3は窒素含有有機基であるか又はR1と一体となって窒素含有複素環を形成しており、R4は窒素非含有有機基であり、但し、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して炭素数が1〜20であり、また、R1、R2、R3及びR4の内の少なくとも一つが芳香族基であってもよく、その場合、該芳香族基は、それぞれ独立して炭素数が6〜18である。ここで、窒素含有有機基、窒素非含有有機基、及び窒素含有複素環については、上述の通りである。更に、R5は二価の窒素含有有機基又は窒素非含有有機基であり、但し、R5は炭素数が1〜20であり、また、R5が芳香族基であってもよく、その場合、該芳香族基は炭素数が6〜18である。ここで、二価の窒素含有有機基及び二価の窒素非含有有機基については、上述の通りである。
【0028】
上記式(II)において、Xは、窒素含有有機基、窒素非含有有機基、−OR6(ここで、R6は窒素含有有機基又は窒素非含有有機基である)、又はハロゲン原子(F、Cl、Br、I)であり、但し、R6及びX(但し、Xがハロゲン原子である場合を除く)は、炭素数が1〜20であり、また、R6及びX(但し、Xがハロゲン原子である場合を除く)が芳香族基であってもよく、その場合、該芳香族基は、炭素数が6〜18である。ここで、窒素含有有機基及び窒素非含有有機基については、上述の通りである。なお、R1、R2、R3、R4及びXは、同一でも異なっていてもよい。
【0029】
上記式(II)において、fは2〜20で、kは1で、g、h、i及びjは0〜2であり、但し、R1が窒素含有有機基であるか又はR3と一体となって窒素含有複素環を形成し且つg+h+i+j=2(ここで、g、h、i及びjは0〜2である)である。
【0030】
<<ケイ素化合物の縮合方法>>
本発明において、窒素含有ヒドロカルビルオキシ基を少なくとも一つ有するケイ素化合物を少なくとも部分的に縮合させるには、例えば、該ケイ素化合物を、窒素雰囲気下又は空気中で20〜100℃にて8〜72時間攪拌すればよい。ここで、窒素含有ヒドロカルビルオキシ基を少なくとも一つ有するケイ素化合物としては、例えば、下記一般式(V)、(VI)、(VII)及び(VIII)で表される化合物が好ましい。これらケイ素化合物は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化5】

[式(V)中、p+q+r+s=4(但し、rは1〜4で、p、q及びsは0〜3である)であり、A1、R2、R4、及びR5については上述の通りであり、R10は窒素含有有機基であり、但し、rが2以上の場合には、一体となって窒素含有複素環を形成してもよい。ここで、窒素含有有機基及び窒素含有複素環については、上述の通りである。なお、R2、R4及びR10は、同一でも異なっていてもよい。]
【化6】

[式(VI)中、t+u+v=2(但し、uは1〜2で、t及びvは0〜1である)であり、A2は、NR11(ここで、R11は、窒素含有有機基、窒素非含有有機基、水素又は加水分解可能な基である)又は硫黄であり、R2、R4、及びR5については上述の通りであり、R10は窒素含有有機基であり、但し、uが2の場合には、一体となって窒素含有複素環を形成してもよい。ここで、窒素含有有機基、窒素非含有有機基、窒素含有複素環及び加水分解可能な基については、上述の通りである。なお、R2、R4及びR10は、同一でも異なっていてもよい。]
【化7】

[式(VII)中、w+x+y+z=3(但し、w、x、y及びzは0以上で、y又はzの少なくとも一方は1以上である)であり、A1、R2、R4、R5及びXについては上述の通りであり、R12は窒素含有有機基である。ここで、窒素含有有機基については、上述の通りである。なお、R2、R4、R12及びXは、同一でも異なっていてもよい。]
【化8】

[式(VIII)中、aa+bb=1(但し、aa及びbbは0〜1である)であり、A2、R4、R5、R12及びXについては上述の通りである。なお、R4、R12及びXは、同一でも異なっていてもよい。]
【0031】
上記窒素含有ヒドロカルビルオキシ基を少なくとも一つ有するケイ素化合物として、具体的には、下記式(XX)、(XXI)、(XXII)、(XXIII)、(XXIV)、(XXV)、(XXVI)、(XXVII)及び(XXVIII)で表される化合物等が挙げられる。
なお、式中、R20は一価の炭化水素基又は芳香族炭化水素基であり、ddが2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、R21は一価の炭化水素基、芳香族炭化水素基又はハロゲン原子であり、eeが2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、R22は二価の炭化水素基、例えばエチレン基であり、R23及びR24は一価の炭化水素基、1級若しくは2級アミン含有炭化水素基、加水分解可能な基で保護された1級若しくは2級アミンを有するアミン含有炭化水素基、水素、加水分解可能な基又は含窒素有機基、例えばメチル基であり、互いに同一若しくは異なり、或いは、一緒になって環を形成しており、R25、R26及びR27は炭素数1〜20の二価の炭化水素基であり、Zは加水分解可能な基、例えばトリメチルシリル基(TMS)、tert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)基であり、YはSZ、例えばS(TMS)又はNZ2、例えばN(TMS)2である。また、ffは1以上の整数、dd及びeeは0以上の整数であり、式(XX)においてはdd+ee+ff=4であり、式(XXI)においてはdd+ee=2であり、式(XXII)においてはdd+ee+ff=3であり、式(XXIII)においてはdd+ee=1であり、式(XXIV)及び(XXVI)においてはdd+ee+ff=2である。なお、ffが2以上の場合にはR22、R23及びR24は同一でも異なっていてもよい。
【化9】

【化10】

【化11】

【0032】
ここで、上述した一般式において、一価の(脂肪族)炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、二価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基等の炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、炭素数7〜20のアラルキレン基等が挙げられ、一価の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基、ベンジル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられ、加水分解可能な基としては、トリメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基等が挙げられる。また、含窒素有機基としては、アミノプロピル基、ジメチルアミノエチル基、ジメチルアミノプロピル基等が挙げられる。なお、一般式(I)及び(II)においてR1及びR3が一体となって窒素含有複素環を形成しているとは、例えば一般式(XXI)、(XXIII)、(XXV)、(XXVII)及び(XXVIII)に示すように、ケイ素原子に直接結合した二つの酸素原子に対して三価の含窒素有機基が結合し、環を形成していることを意味する。
【0033】
上記窒素含有ヒドロカルビルオキシ基を少なくとも一つ有するケイ素化合物として、更に具体的には、下記式(IX)、(X)、(XI)、(XII)及び(XIII)で表される化合物等が挙げられる。
【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【0034】
なお、上述した窒素含有ヒドロカルビルオキシ基を少なくとも一つ有するケイ素化合物は、例えば、以下のようにして製造することができる。
下記一般式(XIV):
【化17】

[式中、R13、R14、R15及びR16のうち少なくとも1つはアルコキシ基又はハロゲン原子であり、残りは任意の有機基である]で表されるような、アルコキシ基を一つ以上有するケイ素化合物に対し、2-(ジメチルアミノ)エタノール、2-(ジエチルアミノ)エタノール、2-(ジメチルアミノ)プロパノール、2-(ジエチルアミノ)プロパノール、N-メチルジエタノールアミン等のアミン化合物を加え、更に触媒としてp-トルエンスルホン酸、塩酸等の酸や、チタンテトラn-ブトキシド等のチタンアルコキシドを添加し、加熱して、アルコキシ基またはハロゲン原子の一つ以上を一価の窒素含有ヒドロカルビルオキシ基で置換、或いは、隣接する(例えばR13とR14の位置関係にある)二つのアルコキシ基又はハロゲン原子を二価の窒素含有ヒドロカルビルオキシ基で置換する(この場合、生成物においてヒドロカルビルオキシ基は環を形成する)ことで合成できる。
【0035】
また、アルコキシ基又はハロゲン原子を一つ以上有するケイ素化合物は、任意にTMS(トリメチルシリル)基等で保護した後に上記アミン化合物を加えてアルコキシ基又はハロゲン原子を置換しても良い。ここで、ケイ素化合物をTMS基で保護する方法としては、例えば国際公開第2008/050854号に記載されているような既知の方法を用いることができる。
【0036】
<変性共役ジエン系重合体の製造方法>
本発明の変性共役ジエン系重合体の製造方法は、分子中に重合活性末端を有する共役ジエン系重合体の該重合活性末端に、上記変性剤を反応させて変性共役ジエン系重合体を製造する方法である。なお、変性剤を用いた変性反応は、既知の条件下で行うことができる。
【0037】
ここで、本発明の変性共役ジエン系重合体の製造方法においては、変性反応の後に、例えば国際公開第2008/050845号に記載されているチタン化合物からなる既知のチタン系縮合促進剤、又は、例えば国際公開第2008/050851号に記載されている周期律表の4A族(Tiを除く)、2B族、3B族および5B族のうち少なくとも一つに属する元素の化合物からなる既知の縮合促進剤、或いは、4B族に属する元素(例えばSn)の化合物からなる縮合促進剤を用いて、変性剤として用いたケイ素化合物の縮合体が関与する縮合反応を行っても良い。このようにすれば、カーボンブラック、シリカ等の充填剤との相互作用に優れ、充填剤の分散性を改善することができ、低発熱性、破壊特性、耐摩耗性等に優れた変性共役ジエン系重合体を製造することができる。なお、縮合促進剤は、変性反応後に添加することが好ましいが、変性反応の前に添加しても良い。なお、これらの縮合促進剤は、窒素含有ヒドロカルビルオキシ基が存在する場合、効果的に縮合反応を起こし易い。
【0038】
本発明の製造方法に用いる分子中に重合活性末端を有する共役ジエン系重合体は、共役ジエン化合物を重合し、又は芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とを共重合して製造される。ここで、上記重合体成分の重合方法としては、特に制限されず、リチウム系開始剤を用いるアニオン重合、配位重合、ドデシルメルカプタン等を用いる乳化重合等が挙げられる。例えば、アニオン重合による製造方法としては、例えば国際公開第03/048216号に記載されている重合方法が挙げられ、配位重合による製造方法としては、例えば国際公開第03/046020号に記載されている重合方法が挙げられる。
【0039】
なお、上記共役ジエン化合物としては、特に限定されず、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられる。一方、上記芳香族ビニル化合物としては、特に限定されず、スチレン、α-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、3-ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4-シクロへキシルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン等が挙げられる。
【0040】
<変性共役ジエン系重合体>
本発明の変性共役ジエン系重合体は、上述した製造方法により得られる。上記変性共役ジエン系重合体は、上述した変性剤が導入され、充填剤との反応性が高いため、充填剤と共にゴム組成物に配合することで、ゴム組成物のヒステリシスロスを大幅に低下させると共に、耐摩耗性を大幅に向上させることができる。
【0041】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、上記変性共役ジエン系重合体を含むことを特徴とし、好ましくは、該変性共役ジエン系重合体を15質量%以上含むゴム成分100質量部に対し、充填剤を10〜120質量部配合してなる。
【0042】
ここで、上記変性共役ジエン系重合体の含有量が15質量%未満では、ゴム組成物のヒステリシスロスを低下させる効果、並びに耐摩耗性を向上させる効果が十分に得られないことがある。なお、本発明のゴム組成物において、上記変性共役ジエン系重合体とブレンドすることが可能なゴム成分としては、特に限定されず、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレン共重合体等が挙げられる。これらゴム成分は、一種単独で用いても、二種以上をブレンドして用いてもよい。
【0043】
本発明のゴム組成物に用いることができる充填剤としては、カーボンブラック、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、クレー、炭酸カルシウム等が挙げられ、これらの中でも、タイヤ材料への用途から、カーボンブラック及びシリカが好ましく、シリカが特に好ましい。充填剤がシリカの場合は、上記変性共役ジエン系重合体は、シリカ表面のシラノール基との親和力の高い官能基及び/又はケイ素原子(Si)との親和性が高い官能基を有するため、反応性が大幅に向上して、ゴム組成物のヒステリシスロスを低下させ、耐摩耗性を向上させる効果が一層顕著になる。なお、シリカとしては、特に制限はなく、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)等を使用することができ、カーボンブラックとしては、特に制限はなく、SRF、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等が挙げられる。
【0044】
上記充填剤の配合量は、上記ゴム成分100質量部に対して10〜120質量部の範囲である。充填剤の配合量が上記ゴム成分100質量部に対して10質量部未満では、ヒステリシスを低下させる効果が不十分になり得、一方、120質量部を超えると、作業性が著しく悪化するためである。
【0045】
本発明のゴム組成物には、上記ゴム成分、充填剤の他に、ゴム業界で通常使用される配合剤、例えば、軟化剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、亜鉛華、ステアリン酸等を目的に応じて適宜配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。なお、本発明のゴム組成物は、ゴム成分に、必要に応じて適宜選択した各種配合剤を配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
【0046】
<空気入りタイヤ>
本発明の空気入りタイヤは、上述のゴム組成物を用いたことを特徴とし、上述のゴム組成物がトレッドに用いられていることが好ましい。本発明の空気入りタイヤは、転がり抵抗が大幅に低減されていることに加え、耐摩耗性も大幅に向上している。なお、本発明の空気入りタイヤは、従来公知の構造で、特に限定はなく、通常の方法で製造できる。また、タイヤ内に充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0047】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0048】
<変性剤の合成例1>
(変性剤A〜E)
まず、窒素含有ヒドロカルビルオキシ基を有さないケイ素化合物として、下記一般式(XV)、(XVI)、(XVII)、(XVIII)及び(XIX)で表される化合物を既知の方法で合成した。
次いで、得られたケイ素化合物を、窒素雰囲気下、所定の温度及び時間で攪拌することにより、該ケイ素化合物を少なくとも部分的に縮合させて、変性剤A〜Eを得た。得られた変性剤の平均縮合度を下記の方法で求めた。結果を表1に示す。
【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【0049】
(1)平均縮合度
GPC及びNMRの測定結果から、平均縮合度を算出した。
【0050】
【表1】

【0051】
<変性剤の合成例2>
(変性剤F〜J)
上記式(IX)、(X)、(XI)、(XII)及び(XIII)で表された、窒素含有ヒドロカルビルオキシ基を有するケイ素化合物を下記の方法で合成し、それを少なくとも部分的に縮合させることで、変性剤F〜Jを得た。なお、出発物質となるケイ素化合物に対するTMS基での保護は、前述したように、国際公開第2008/050854号に記載されている既知の方法で行った。
【0052】
(変性剤F)
容積50mLのナスフラスコに、上記式(XV)で表される化合物30mmol、2-(ジメチルアミノ)エタノール90mmol、チタンテトラn-ブトキシド0.15gを計量した。次に、乾燥窒素を流しつつ(0.2L/min)、マグネティックスターラーで撹拌しながら温度145〜150℃のオイルバスにて加熱した。気泡が発生しなくなった後、ロータリーエバポレーターを用い、温度85℃、圧力45mmHgでエタノールを除去して、上記式(IX)で表されるケイ素化合物を得た。
次いで、得られたケイ素化合物を、空気中50℃にて48時間攪拌し、該ケイ素化合物を少なくとも部分的に縮合させて、変性剤Fを得た。得られた変性剤Fの平均縮合度を上記の方法により求めたところ、2.7であった。
【0053】
(変性剤G)
容積50mLのナスフラスコに、上記式(XVI)で表される化合物30mmol、2-(ジメチルアミノ)エタノール90mmol、チタンテトラn-ブトキシド0.15gを計量した。次に、乾燥窒素を流しつつ(0.2L/min)、マグネティックスターラーで撹拌しながら温度145〜150℃のオイルバスにて加熱した。気泡が発生しなくなった後、滴下ロートにて2-(ジメチルアミノ)エタノール30mmolを10分かけて滴下し、更に30分間加熱した。その後、ロータリーエバポレーターを用い、温度85℃、圧力45mmHgでエタノールを除去して、上記式(X)で表されるケイ素化合物を得た。
次いで、得られたケイ素化合物を、空気中50℃にて48時間攪拌し、該ケイ素化合物を少なくとも部分的に縮合させて、変性剤Gを得た。得られた変性剤Gの平均縮合度を上記の方法により求めたところ、3.3であった。
【0054】
(変性剤H)
容積200mLのナスフラスコに、上記式(XVII)で表される化合物30mmol、N-メチルジエタノールアミン30mmol、チタンテトラn-ブトキシド0.15g、キシレン100mLを計量した。次に、乾燥窒素を流しつつ(0.2L/min)、マグネティックスターラーで撹拌しながら温度145〜150℃のオイルバスにて加熱し、ジムロートコンデンサーを取り付けて11時間還流を行った。その後、圧力20hPa、温度40℃にてロータリーエバポレーターにより溶媒を除去し、更に、ロータリーポンプ(10Pa)とコールドトラップ(ドライアイス+エタノール)にて残存する揮発分を除去して、上記式(XI)で表されるケイ素化合物を得た。
次いで、得られたケイ素化合物を、空気中50℃にて48時間攪拌し、該ケイ素化合物を少なくとも部分的に縮合させて、変性剤Hを得た。得られた変性剤Hの平均縮合度を上記の方法により求めたところ、3.2であった。
【0055】
(変性剤I)
容積200mLのナスフラスコに、上記式(XVIII)で表される化合物30mmol、N-メチルジエタノールアミン30mmol、チタンテトラn-ブトキシド0.15g、キシレン100mLを計量した。次に、乾燥窒素を流しつつ(0.2L/min)、マグネティックスターラーで撹拌しながら温度145〜150℃のオイルバスにて加熱し、ジムロートコンデンサーを取り付けて11時間還流を行った。その後、圧力20hPa、温度40℃にてロータリーエバポレーターにより溶媒を除去し、更に、ロータリーポンプ(10Pa)とコールドトラップ(ドライアイス+エタノール)にて残存する揮発分を除去して、上記式(XII)で表されるケイ素化合物を得た。
次いで、得られたケイ素化合物を、空気中100℃にて48時間攪拌し、該ケイ素化合物を少なくとも部分的に縮合させて、変性剤Iを得た。得られた変性剤Iの平均縮合度を上記の方法により求めたところ、3.5であった。
【0056】
(変性剤J)
容積50mLのナスフラスコに、上記式(XIX)で表される化合物30mmol、2-(ジメチルアミノ)エタノール60mmol、チタンテトラn-ブトキシド0.15gを計量した。次に、乾燥窒素を流しつつ(0.2L/min)、マグネティックスターラーで撹拌しながら温度145〜150℃のオイルバスにて加熱した。気泡が発生しなくなった後、滴下ロートにて2-(ジメチルアミノ)エタノール30mmolを10分かけて滴下し、更に30分間加熱した。その後、ロータリーエバポレーターを用い、温度85℃、圧力45mmHgでエタノールを除去して、上記式(XIII)で表されるケイ素化合物を得た。
次いで、得られたケイ素化合物を、空気中50℃にて48時間攪拌し、該ケイ素化合物を少なくとも部分的に縮合させて、変性剤Jを得た。得られた変性剤Jの平均縮合度を上記の方法により求めたところ、3.6であった。
【0057】
<変性共役ジエン系重合体の製造例1>
乾燥し、窒素置換した容積800mLの耐圧ガラス容器に、1,3-ブタジエンのシクロヘキサン溶液及びスチレンのシクロヘキサン溶液を、1,3-ブタジエンが60g、スチレンが15gとなるように加え、次いで2,2-ジテトラヒドロフリルプロパンを0.70mmol加え、更にn-ブチルリチウムを0.70mmol加えた後、50℃の温水浴中で1.5時間重合反応を行った。なお、この際の重合転化率はほぼ100%であった。
このようにして得た重合反応系に、上記変性剤A〜Jを0.63mmol添加し、更に50℃で30分間変性反応を行い、変性スチレン−ブタジエン共重合体A〜Jを得た。
なお、変性剤は、GPCによってその平均分子量を測定し、該平均分子量からモルを算出した。
【0058】
得られた重合体の結合スチレン量及びビニル結合量を下記の方法で測定した。結果を表2に示す。
(2)結合スチレン量(質量%)
重合体の結合スチレン量をH-NMRスペクトルの積分比から算出した。
(3)ビニル結合量(%)
重合体のブタジエン部分のビニル結合量を赤外法により求めた。
【0059】
【表2】

【0060】
<ゴム組成物の調製及び評価>
表3の第1ステージに従う配合処方のゴム組成物をバンバリーミキサーにて混練し、次いで、得られたゴム組成物と表3の第2ステージに示す添加剤とを表3に示す配合処方でバンバリーミキサーにて混練して、ゴム組成物を調製した。その後、得られたゴム組成物を160℃で20分間加硫して加硫ゴムを得、この加硫ゴムに対し、tanδ及び耐摩耗性を下記の方法で評価した。結果を表4に示す。
(4)tanδ
上島製作所製スペクトロメーター(動的粘弾性測定試験機)を用い、周波数52Hz、初期歪10%、測定温度50℃、動歪1%で、加硫ゴムのtanδを測定し、比較例1〜3及び実施例1〜3については比較例1のtanδの値を100とし、比較例4〜6及び実施例4〜6については比較例4のtanδの値を100とし、比較例7〜8及び実施例7〜8については比較例7のtanδの値を100として指数表示した。指数値が小さい程、tanδが低く、ゴム組成物が低発熱性であることを示す。
(5)耐摩耗性
JIS K6264−2:2005に準拠し、ランボーン型摩耗試験機を用いて、室温、スリップ率25%の条件で試験を行い、比較例1〜3及び実施例1〜3については比較例1の摩耗量の逆数を100とし、比較例4〜6及び実施例4〜6については比較例4の摩耗量の逆数を100とし、比較例7〜8及び実施例7〜8については比較例7の摩耗量の逆数を100として指数表示した。指数値が大きい程、摩耗量が少なく、耐摩耗性に優れることを示す。
【0061】
【表3】

【0062】
*1 上記方法で製造した重合体A〜J,使用した重合体の種類を表4に示す.
*2 JSR社製「IR2200」
*3 富士興産社製「アロマックス#3」
*4 三菱化学社製「ダイヤブラックN234」,ISAF−HS
*5 東ソーシリカ社製「AQ」
*6 デグッサ社製「Si69」
*7 大内新興化学工業社製「ノクラック6C」
*8 大内新興化学工業社製「ノクセラーD」
*9 大内新興化学工業社製「ノクセラーDM」
*10 大内新興化学工業社製「ノクセラーNS−F」
【0063】
【表4】

【0064】
表4から、従来のケイ素化合物を少なくとも部分的に縮合させた変性剤A〜Eに代えて、更に窒素含有ヒドロカルビルオキシ基を導入した変性剤F〜Jを用いて得た変性共役ジエン系重合体F〜Jは、対応する変性剤A〜Eを用いて得た変性共役ジエン系重合体A〜Eと比較して、ゴム組成物のtanδを大幅に低減、即ち、ヒステリシスロスを大幅に低減して、低発熱性にしつつ、耐摩耗性を大幅に改善できることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素含有ヒドロカルビルオキシ基を少なくとも一つ有するケイ素化合物からなり、該ケイ素化合物が少なくとも部分的に縮合してなることを特徴とする変性剤。
【請求項2】
縮合した前記ケイ素化合物が、下記一般式(I):
【化1】

[式中のA1は、飽和環状3級アミン化合物残基、不飽和環状3級アミン化合物残基、ケチミン残基、ニトリル基、(チオ)イソシアナート基、(チオ)エポキシ基、イソシアヌル酸トリヒドロカルビルエステル基、炭酸ジヒドロカルビルエステル基、ニトリル基、ピリジン基、(チオ)ケトン基、(チオ)アルデヒド基、アミド基、(チオ)カルボン酸エステル基、(チオ)カルボン酸金属塩残基、カルボン酸無水物残基、カルボン酸ハロゲン化物残基、並びに加水分解可能な基を有する1級若しくは2級アミノ基又はメルカプト基の中から選択される少なくとも一種の官能基であり、
1は、窒素含有有機基若しくは窒素非含有有機基であるか、又はR3と一体となって窒素含有複素環を形成しており、
2は、窒素含有有機基又は窒素非含有有機基であり、
3は、窒素含有有機基であるか、又はR1と一体となって窒素含有複素環を形成しており、
4は、窒素非含有有機基であり、
50は、窒素含有有機基又は窒素非含有有機基であり、
1、R2、R3、R4及びR50は、同一でも異なっていてもよく、
5は、二価の窒素含有有機基又は窒素非含有有機基であり、
但し、R1、R2、R3、R4、R5及びR50は、それぞれ独立して炭素数が1〜20であり、また、R1、R2、R3、R4、R5及びR50の内の少なくとも一つが芳香族基であってもよく、その場合、該芳香族基は、それぞれ独立して炭素数が6〜18であり、
aは2〜20で、bは0〜1で、c、d及びeは0〜2で、ccは0〜1で、但し、R1が窒素含有有機基であるか又はR3と一体となって窒素含有複素環を形成し且つbが1である場合、c+d+e=2(ここで、c、d及びeは0〜2である)で、ccは0であり、R1が窒素含有有機基であるか又はR3と一体となって窒素含有複素環を形成し且つbが0である場合、c+d+e=2(ここで、c、d及びeは0〜2である)で、ccは1であり、R1が窒素非含有有機基で且つbが1である場合、c+d+e=2(ここで、dは1〜2で、c及びeは0〜1である)で、ccは0であり、R1が窒素非含有有機基で且つbが0である場合、c+d+e=2(ここで、dは1〜2で、c及びeは0〜1である)で、ccは1である]で表されることを特徴とする請求項1に記載の変性剤。
【請求項3】
縮合した前記ケイ素化合物が、下記一般式(II):
【化2】

[式中のA1は、飽和環状3級アミン化合物残基、不飽和環状3級アミン化合物残基、ケチミン残基、ニトリル基、(チオ)イソシアナート基、(チオ)エポキシ基、イソシアヌル酸トリヒドロカルビルエステル基、炭酸ジヒドロカルビルエステル基、ニトリル基、ピリジン基、(チオ)ケトン基、(チオ)アルデヒド基、アミド基、(チオ)カルボン酸エステル基、(チオ)カルボン酸金属塩残基、カルボン酸無水物残基、カルボン酸ハロゲン化物残基、並びに加水分解可能な基を有する1級若しくは2級アミノ基又はメルカプト基の中から選択される少なくとも一種の官能基であり、
1は、窒素含有有機基若しくは窒素非含有有機基であるか、又はR3と一体となって窒素含有複素環を形成しており、
2は、窒素含有有機基又は窒素非含有有機基であり、
3は、窒素含有有機基であるか、又はR1と一体となって窒素含有複素環を形成しており、
4は、窒素非含有有機基であり、
5は、二価の窒素含有有機基又は窒素非含有有機基であり、
Xは、窒素含有有機基、窒素非含有有機基、−OR6(ここで、R6は窒素含有有機基又は窒素非含有有機基である)、又はハロゲン原子であり、
1、R2、R3、R4及びXは、同一でも異なっていてもよく、
但し、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びX(但し、Xがハロゲン原子である場合を除く)は、それぞれ独立して炭素数が1〜20であり、また、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びX(但し、Xがハロゲン原子である場合を除く)の内の少なくとも一つが芳香族基であってもよく、その場合、該芳香族基は、それぞれ独立して炭素数が6〜18であり、
fは2〜20で、kは1で、g、h、i及びjは0〜2であり、
但し、R1が窒素含有有機基であるか又はR3と一体となって窒素含有複素環を形成し且つg+h+i+j=2(ここで、g、h、i及びjは0〜2である)である]で表されることを特徴とする請求項1に記載の変性剤。
【請求項4】
分子中に重合活性末端を有する共役ジエン系重合体の該重合活性末端に、変性剤を反応させて変性共役ジエン系重合体を製造する方法であって、
前記変性剤が、請求項1〜3のいずれかに記載の変性剤であることを特徴とする変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項5】
前記共役ジエン系重合体の重合活性末端に変性剤を反応させた後に、周期律表の4A族、2B族、3B族、4B族および5B族のうち少なくとも一つに属する元素の化合物からなる縮合促進剤の存在下で縮合反応を行うことを特徴とする請求項4に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の製造方法により得たことを特徴とする変性共役ジエン系重合体。
【請求項7】
請求項6に記載の変性共役ジエン系重合体を含むことを特徴とするゴム組成物。
【請求項8】
前記変性共役ジエン系重合体を15質量%以上含むゴム成分100質量部に対し、充填剤を10〜120質量部配合したことを特徴とする請求項7に記載のゴム組成物。
【請求項9】
前記充填剤が、シリカ及び/又はカーボンブラックであることを特徴とする請求項8に記載のゴム組成物。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかに記載のゴム組成物を用いたことを特徴とする空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2011−57840(P2011−57840A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208628(P2009−208628)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】