説明

変性物および窒素含有導電性カーボン

【課題】電子移動を伴うレドックス反応における酸素還元活性に優れることから、燃料電池の電極触媒の形成材料として好適に用いることが可能な変性物を提供する。
【解決手段】導電性カーボンの官能基または多重結合と窒素含有化合物とを反応させてなる窒素含有導電性カーボンと、金属錯体と、の混合物に、加熱処理、放射線照射処理および放電処理の何れかの変性処理を行うことにより得られる変性物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性物に関する。さらに本発明は、変性物を含む燃料電池用触媒組成物、該燃料電池用触媒組成物を用いて形成する燃料電池用電極触媒、該触媒を用いた膜電極接合体、燃料電池、および変性物に用いる窒素含有導電性カーボンに関する。
【背景技術】
【0002】
金属を担持させた炭素材料は、不均一触媒として工業的に、酸素添加反応、酸化カップリング反応、脱水素反応、水素添加反応、酸化物分解反応等の電子移動を伴うレドックス反応における触媒(レドックス触媒)として作用し、有機化合物の製造に使用されている。さらに、添加剤、改質剤、電池、センサーの材料、吸着剤、消臭剤、フィラー等の種々の用途にも使用されている。
【0003】
特に、燃料電池用電極触媒においては通常白金の微粒子を導電性カーボンに担持させたものを利用している。しかし、白金は非常に高価であり、燃料電池の普及、実用化において大きな障害となっているため、白金担持量低減化や白金代替材料の検討が行われている。
【0004】
こうした検討の中、遷移金属化合物と、熱硬化性樹脂と、窒素を含んだ化合物とを混合し不活性雰囲気下にて熱処理を行うことで酸素還元能を有する触媒を合成できることが報告されている(特許文献1)。
また、金属錯体と窒素成分を含んだ樹脂を熱処理することにより得られる触媒についてが報告されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−282725号公報
【特許文献2】特開2007−26746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これらの触媒は、従来の白金触媒に比べて、酸素還元活性が不十分であり、酸素還元活性の高い触媒を開発することが切望されていた。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、酸素還元活性に優れ電極触媒として好適に用いることが可能な変性物を提供することを目的とする。また、該変性物を含む燃料電池用触媒組成物、該燃料電池用触媒組成物を用いて形成する燃料電池用電極触媒、該触媒を用いた膜電極接合体、および燃料電池を提供することを目的とする。さらに、変性物に好適に用いることができる窒素含有導電性カーボンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、導電性カーボンの官能基または多重結合と窒素含有化合物とを反応させてなる窒素含有導電性カーボンと、金属錯体と、の混合物に、加熱処理、放射線照射処理および放電処理の何れかの変性処理を行うことにより得られる変性物を提供する。
【0009】
本発明においては、前記窒素含有化合物がアミノ基を有することが望ましい。
【0010】
本発明においては、前記窒素含有導電性カーボンが窒素原子を1質量%以上含むことが望ましい。
【0011】
本発明においては、前記窒素含有導電性カーボンが、アルデヒド、N−モノ置換−α−アミノ酸および前記導電性カーボンを混合し反応させてなることが望ましい。
【0012】
本発明においては、前記N−モノ置換−α−アミノ酸がN−モノ置換グリシンであることが望ましい。
【0013】
本発明においては、前記アルデヒドが芳香族アルデヒドであることが望ましい。
【0014】
本発明においては、前記アルデヒド、前記N−モノ置換−α−アミノ酸、および前記導電性カーボンを混合し、80℃以上300℃以下で加熱し反応させて前記窒素含有導電性カーボンを生成させた後、該窒素含有導電性カーボンと前記金属錯体とを混合して前記変性処理を行うことにより得られることが望ましい。
【0015】
本発明においては、前記窒素含有導電性カーボンの導電率が1×10−2S/cm以上であることが望ましい。
【0016】
本発明においては、前記変性処理が、600℃以上1200℃以下の加熱処理であることが望ましい。
【0017】
本発明においては、前記金属錯体が、ピロール骨格若しくはピリジン骨格、又はこれらの両方を含むことが望ましい。
【0018】
本発明においては、前記金属錯体が、鉄およびコバルトから選ばれる1種以上の金属原子を含むことが望ましい。
【0019】
また、本発明は、上述の変性物を含む燃料電池用電極触媒組成物を提供する。
【0020】
本発明において燃料電池用触媒組成物は、上述の変性物と、カーボンおよび高分子のいずれか一方または両方を含むことが望ましい。
【0021】
また、本発明は、上述の燃料電池用触媒組成物からなる燃料電池用電極触媒を提供する。
【0022】
また、本発明は、燃料電池用電極触媒を含む触媒層を電解質膜の両側に備えた膜電極接合体であって、該触媒層の少なくとも一方が上述の燃料電池用電極触媒を含む、膜電極接合体を提供する。
【0023】
また、本発明は、上述の膜電極接合体を有する燃料電池を提供する。
【0024】
また、本発明は、アルデヒド、N−モノ置換−α−アミノ酸、および導電性カーボンを混合し、80℃以上300℃以下で加熱して得られる窒素含有導電性カーボンを提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の変性物は、酸素還元活性に優れ燃料電池用電極触媒として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の好適な一実施態様の燃料電池のセルについての縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0028】
[変性物]
本実施形態の変性物は、窒素含有導電性カーボンと金属錯体との混合物を、加熱処理、放射線照射処理および放電処理の何れかの変性処理を行うことにより得られる。以下、順に説明する。
【0029】
(窒素含有導電性カーボン)
まず、窒素含有導電性カーボンについて詳しく説明する。本実施形態において窒素含有導電性カーボンとは、元素分析にて窒素原子を0.5質量%以上含む導電性カーボンをいう。
【0030】
窒素含有導電性カーボンの中でも、窒素含有率が1質量%以上であるカーボンが金属錯体と相互作用しやすいため好ましい。この窒素含有率は、より好ましくは2質量%以上であり、更に好ましくは3質量%以上であり、特に好ましくは4質量%以上である。また、窒素含有率が高過ぎると導電性が低下してしまうことがあるため、窒素含有率は、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、更に好ましくは30質量%以下である。
【0031】
また、窒素含有導電性カーボンの中でも、1×10−2S/cm以上の導電率を示す窒素含有導電性カーボンが好ましく、1×10−1S/cm以上の導電率を示す窒素含有導電性カーボンがより好ましく、1S/cm以上の導電率を示す窒素含有導電性カーボンが更に好ましく、10S/cm以上の導電率を示す窒素含有導電性カーボンが特に好ましい。
【0032】
このような物性を有する窒素含有導電性カーボンは、窒素含有化合物と導電性カーボンとを原料として作製することができる。すなわち、導電性カーボンには、表面に不飽和結合、カルボニル基、水酸基、カルボキシル基などが存在しているため、それらの不飽和結合や官能基と、窒素含有化合物とを反応させて、窒素含有化合物で表面を修飾することにより、高い導電性を有する窒素含有導電性カーボンを作製することができる。
【0033】
窒素含有化合物としては、アミノ基が効率的に窒素原子を導入できるので、アミノ基を有する窒素含有化合物が好ましい。この窒素含有化合物を得るには、例えば、「高分子機能電極」(学会出版センター出版、1983年初版)に記載されているように、表面のカルボキシル基をアミン化合物と反応させてアミド化する。
【0034】
導電性カーボンに窒素原子を導入する方法としては、他にも、カルボニル基とフェニルヒドラジンを反応させる方法、水酸基とハロゲン化シアヌルを反応させる方法等が知られている。
【0035】
本実施形態においては、導電性カーボンが有し得る二重結合に対し、窒素含有化合物を反応させ化学結合を生じさせることにより、窒素含有化合物に由来する窒素原子を有する窒素含有導電性カーボンを作製することが好ましい。
【0036】
導電性カーボンに窒素原子を導入する方法としては、例えば、N−モノ置換−α−アミノ酸とアルデヒドとを導電性カーボンと混合して反応させる方法が好ましい。
【0037】
本実施形態の窒素含有導電性カーボンが得られる反応は、例えば、下記式(1)で表される。
【0038】
【化1】

【0039】
式(1)中、N−モノ置換−α−アミノ酸が有するRは、水素原子、または、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、シクロへキシル基、ノルボルニル基、n−ノニル基、シクロノニル基、n−デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、アダマンチル基、n−ドデシル基、シクロドデシル基、n−ペンタデシル基、n−オクタデシル基、n−ドコシル基等の直鎖状の炭素数1〜50の1価の飽和炭化水素基、又は、分岐状若しくは環状の炭素数3〜50の1価の飽和炭化水素基、フェニル基、4−メチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基等の炭素数6〜60のアリール基から選ばれる置換基である。
【0040】
式(1)中、N−モノ置換−α−アミノ酸が有するRは、水素原子、または、アミノカルボニルメチル基、アミノプロピル基、カルボキシメチル基、メルカプト基、アミノカルボニルエチル基、カルボキシエチル基、4−イミダゾリルメチル基、2−ブチル基、イソブチル基、アミノブチル基、メチルチオエチル基、フェニルメチル基、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−インドリル基、4−ヒドロキシフェニルメチル基、イソプロピル基から選ばれる置換基である。
【0041】
上記N−モノ置換−α−アミノ酸の中でも、反応がし易いので、N−メチルグリシン、N−フェニルグリシン、N-エチルグリシン、N-メチルヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンが好ましく、N−メチルグリシン、N−フェニルグリシン、N−エチルグリシンがより好ましく、N−メチルグリシン、N−フェニルグリシンが特に好ましい。
【0042】
式(1)中、アルデヒドが有するRは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、シクロへキシル基、ノルボルニル基、n−ノニル基、シクロノニル基、n−デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、アダマンチル基、n−ドデシル基、シクロドデシル基、n−ペンタデシル基、n−オクタデシル基、n−ドコシル基等の直鎖状の炭素数1〜50の1価の飽和炭化水素基、又は、分岐状若しくは環状の炭素数3〜50の1価の飽和炭化水素基、フェニル基、4−メチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基等の炭素数6〜60のアリール基、ピロリル基、ピリジル基、フリル基、チエニル基、チアゾリル基、イミダゾリル基、ピラジル基、ピリダジル基、オキサゾリル基、キノリル基、ナフチリジル基等の複素環基から選ばれる置換基である。
【0043】
上記アルデヒドの中でも、上記式(1)中のRが、アリール基、複素環基である芳香族アルデヒドが好ましく、Rがフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、ピロリル基、ピリジル基、チアゾリル基、イミダゾリル基、キノリル基、ナフチリジル基であるアルデヒドがより好ましい。
【0044】
上記導電性カーボンとしては、黒鉛、無定形炭素、カーボンブラック、C60、C70等のフラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等のカーボン繊維が例示される。これらの中でも、担体として用いる場合にはカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ノーリット(登録商標)、ケッチェンブラック(登録商標)、バルカン(登録商標)、ブラックパール(登録商標)、アセチレンブラック(登録商標)等の導電性カーボンが好ましく、ケッチェンブラック、バルカン、アセチレンブラックがより好ましい。
【0045】
上記導電性カーボンを、上述のN−モノ置換−α−アミノ酸およびアルデヒドと混合することで窒素含有導電性カーボンを合成することができる。混合にあたっては、導電性カーボン、N−モノ置換−α−アミノ酸およびアルデヒドの混合方式として、乾式および湿式のいずれの混合方式も採用することができるが、よく混合できるよう、湿式の混合方式を採用することが好ましい。
【0046】
また、混合にあたっては、乾式および湿式のいずれの混合方式においても、導電性カーボン、N−モノ置換−α−アミノ酸およびアルデヒドを室温で混合してもよく、加熱して混合してもよいが、反応が進行しやすいよう加熱条件下で混合する方が好ましい。加熱温度としては、好ましくは、80℃以上300℃以下であり、より好ましくは、100℃以上200℃以下であり、特に好ましくは、120℃以上200℃以下である。
【0047】
湿式で混合する場合、適当な分散媒を用いて、導電性カーボン、N−モノ置換−α−アミノ酸及びアルデヒドを分散および溶解させて混合する。
【0048】
用いる分散媒としては、具体的には、水、メタノール、エタノール、n−プロパノ−ル、イソプロピルアルコール、ブタノール、2−メトキシエタノール、1,1−ジメチルエタノール、エチレングリコール、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトン、クロロホルム、ジクロロベンゼン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、トリエチルアミン、ピリジン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、メチルエチルエーテル、1,4−ジオキサンが例示できる。
【0049】
これらのうち、高沸点の分散媒を用いるとより高温で反応を行うことができるため、沸点が100℃以上である分散媒、具体的には、水、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジクロロベンゼン、ベンゾニトリルが好ましい。より好ましくは、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジクロロベンゼン、ベンゾニトリルであり、特に好ましくは、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ベンゾニトリル、ジメチルスルホキシドである。
【0050】
乾式で混合する場合、乳鉢などを用いて混合することができるが、よく混合できるようボールミルを用いて混合することが好ましい。
【0051】
本実施形態においては、このようにして、導電性カーボン、N−モノ置換−α−アミノ酸およびアルデヒドを原料として、窒素含有導電性カーボンを作製することができる。
【0052】
上記のようにして得られる窒素含有導電性カーボンは、後述の変性物の原料として好適である。
【0053】
(金属錯体)
次に、金属錯体について説明する。本実施形態において金属錯体とは、金属原子(金属イオンの状態を含む。以下同じ)と有機配位子とを有し、有機配位子を結合する原子の一部と金属原子との間に配位結合を持つ化学種である。なお、多核金属錯体とは、1分子に金属原子が2つ以上含まれる金属錯体であり、本発明に用いる金属錯体としては、多核金属錯体を用いることが好ましい。
【0054】
まず、金属錯体を構成する有機配位子について説明する。
金属錯体を構成する有機配位子としては、窒素含有化合物を用いることができる。この窒素含有化合物としては、ピロール骨格若しくはピリジン骨格、又はこれらの両方を含むものが、金属錯体の安定性が高まるので、好ましい。ピロール骨格とは、ピロールおよびピロールを含む構造をもつ化合物をいう。ピリジン骨格も同様である。金属錯体を構成する有機配位子としては、シッフ塩基、ポルフィリン、フタロシアニン、カリックスピロール等の大環状化合物;ビピリジン、フェナントロリン、ターピリジン等の2座以上で配位できる配位子が好ましく、シッフ塩基、ポルフィリン、フタロシアニン、ビピリジン、フェナントロリンを含む配位子が好ましい。
【0055】
金属錯体を構成する有機配位子としては、具体的に、以下の構造式(a)〜(z)で表される化合物が好ましい。
【0056】
【化2】

【0057】
これらの中でも、式(a)〜(k)、(q)〜(z)で表される化合物が好ましく、式(a)〜(k)、(u)〜(z)で表される化合物がより好ましく、式(a)〜(k)で表される化合物が更に好ましく、式(a)〜(g)で表される化合物が特に好ましい。
【0058】
前記構造式(a)〜(x)で表される化合物は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等のハロゲノ基;ヒドロキシ基;カルボキシル基;メルカプト基;スルホン酸基(スルホ基);ニトロ基;ホスホン酸基;炭素数1〜4のアルキル基を有するシリル基;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、シクロへキシル基、ノルボルニル基、n−ノニル基、シクロノニル基、n−デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、アダマンチル基、n−ドデシル基、シクロドデシル基、n−ペンタデシル基、n−オクタデシル基、n−ドコシル基等の直鎖状の炭素数1〜50の1価の飽和炭化水素基、又は、分岐状若しくは環状の炭素数3〜50の1価の飽和炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロピオキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、シクロへキシルオキシ基、ノルボニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基等の直鎖状の炭素数1〜50のアルコキシ基、又は、分岐状若しくは環状の炭素数3〜50のアルコキシ基;フェニル基、4−メチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基等の炭素数6〜60のアリール基等が挙げられる。
【0059】
これらの中でも好ましくは、ハロゲノ基、メルカプト基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、炭素数1〜20の1価の飽和炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリール基であり、より好ましくは、クロロ基、ブロモ基、カルボキシル基、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、シクロへキシル基、ノルボニル基、アダマンチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基である。
【0060】
上記配位子は、ヘテロ原子が金属原子と配位結合することにより、金属錯体を形成する。また、金属錯体中に2個以上の金属原子が存在する場合には、該金属原子同士がヘテロ原子を介して架橋配位していてもよい。ヘテロ原子が酸素原子であり、金属原子及び金属イオンが合計2個である場合における架橋配位の状態を、金属原子と酸素原子のみについて以下に例示する。
【0061】
【化3】

(Mは、金属原子又は金属イオンを表し、2つのMは、同じでも異なっていてもよい。以下、同様である。)
【0062】
以下に、本発明に用いることができる好ましい金属錯体の例を示す。下記金属錯体は、置換基を有していてもよい。なお、金属錯体の電荷は省略してある。
【0063】
【化4】

【0064】
なお、上述の金属錯体において、配位子の結合位置に起因して幾何異性体や光学異性体が存在する場合、これらの異性体も本発明に用いることができる。その場合、異性体ごとに単離して用いてもよく、幾何異性体の混合物、または光学異性体のラセミ体を用いてもよい。
【0065】
次に、金属錯体をなす金属原子について説明する。
該金属原子は原子の状態であってもイオンの状態であってもよい。金属原子としては、数種類の金属が挙げられるが、第4周期の金属原子が好ましく、中でも、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅がより好ましく、バナジウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅がさらに好ましく、鉄、コバルトが特に好ましい。
【0066】
該金属錯体は、さらに、中性分子、金属錯体を電気的に中性にする対イオンを有していてもよい。
【0067】
前記中性分子としては、溶媒和して溶媒和塩を形成する分子等が挙げられ、好ましくは、水、メタノール、エタノール、n−プロパノ−ル、イソプロピルアルコール、2−メトキシエタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトン、クロロホルム、アセトニトリル、ベンゾニトリル、トリエチルアミン、ピリジン、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、4,4’−ビピリジン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、メチルエチルエーテル、1,4−ジオキサンであり、より好ましくは、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、クロロホルム、アセトニトリル、ベンゾニトリル、トリエチルアミン、ピリジン、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、4,4’−ビピリジン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサンである。
【0068】
前記金属錯体が錯イオンである場合、該金属錯体と錯塩を形成する対イオンは、該金属錯体を電気的に中性にする陽イオン又は陰イオンである。
錯イオンが正に帯電している場合、対イオンとしては、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫化物イオン、酸化物イオン、水酸化物イオン、水素化物イオン、亜硫酸イオン、リン酸イオン、シアン化物イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸水素イオン、トリフルオロ酢酸イオン、チオシアン化物イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、アセチルアセトナート、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオンが挙げられ、好ましくは、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、酸化物イオン、水酸化物イオン、水素化物イオン、リン酸イオン、シアン化物イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、アセチルアセトナート、テトラフェニルホウ酸イオンである。なお、対イオンが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。また、中性分子とイオンとが共存していてもよい。
【0069】
錯イオンが負に帯電している場合、対イオンとしては、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、テトラ(n−ブチル)アンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン等のテトラアルキルアンモニウムイオン;テトラフェニルホスホニウムイオン等のテトラアリールホスホニウムイオンが挙げられる。
【0070】
これらの中でも、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、テトラ(n−ブチル)アンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラフェニルホスホニウムイオンが好ましく、テトラ(n−ブチル)アンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラフェニルホスホニウムイオンがより好ましく、テトラ(n−ブチル)アンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオンがさらに好ましい。
【0071】
(金属錯体の製造方法)
前記金属錯体は、例えば、以下に示すように、配位子となる化合物(以下、「配位子化合物」と言うことがある。)を有機化学的に合成し、これを金属原子又は金属イオンを付与する反応剤(以下、「金属付与剤」と言う。)と混合する工程を有する方法で製造できる。前記金属付与剤としては、例えば、前記金属原子の酢酸塩、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、過塩素酸塩、トリフルオロ酢酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、テトラフェニルホウ酸塩が挙げられ、酢酸塩が好ましい。酢酸塩としては、例えば、酢酸コバルト(II)、酢酸鉄(II)、酢酸マンガン(II)、酢酸マンガン(III)、酢酸ニッケル(II)、酢酸銅(II)、酢酸亜鉛(II)が挙げられ、好ましくは、酢酸コバルト(II)である。
【0072】
前記金属付与剤は、水和物であってもよい。水和物としては、例えば、酢酸コバルト(II)4水和物、酢酸マンガン(II)4水和物、酢酸マンガン(III)2水和物、酢酸銅(II)1水和物が挙げられる。
【0073】
前記配位子化合物は、例えば、「Journal of Organic Chemistry,69,5419(2004)」に記載されているように、アルデヒド基を有するフェノール化合物と、アミノ基を有する化合物とを、アルコール等の溶媒中で反応させる工程を有する方法で製造できる。また、例えば、「Australian Journal of Chemistry,23,2225(1970))に記載されているように、反応時に金属塩又は酸を添加する方法で、目的とする配位子化合物を製造することもできる。また、「Tetrahedron.,1999,55,8377.」に記載されているように、有機金属反応剤の複素環への付加及び酸化反応を行い、ハロゲン化反応、次いで遷移金属触媒を用いたクロスカップリング反応を行う工程を有する方法でも、目的とする配位子化合物を製造できる。また、複素環のハロゲン化物を用いて、段階的にクロスカップリング反応を行う工程を有する方法でも、目的とする配位子化合物を製造できる。
【0074】
前記配位子化合物及び金属付与剤を混合する工程は、適当な溶媒の存在下で行う。
前記溶媒としては、例えば、水、酢酸、アンモニア水、メタノール、エタノール、n−プロパノ−ル、イソプロピルアルコール、2−メトキシエタノール、1−ブタノール、1,1−ジメチルエタノール、エチレングリコール、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、メチルエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、デュレン、デカリン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、トリエチルアミン、ピリジンが挙げられ、前記配位子化合物及び金属付与剤が溶解し得る溶媒が好ましい。
前記溶媒は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0075】
前記配位子化合物及び金属付与剤の混合温度は、通常、−10℃以上200℃以下であり、好ましくは0℃以上150℃以下であり、より好ましくは0℃以上100℃以下である。混合時間は、通常、1分間以上1週間以下であり、好ましくは5分間以上24時間以下であり、より好ましくは1時間以上12時間以下である。なお、前記混合温度及び混合時間は、前記配位子化合物及び金属付与剤の種類を考慮して調節することができる。
【0076】
生成した前記金属錯体は、公知の再結晶法、再沈殿法、クロマトグラフィー法から適した方法を選択して適用することで、前記溶媒から取り出すことができ、この時、複数の前記方法を組み合わせてもよい。なお、前記溶媒の種類によっては、生成した前記金属錯体が析出することがあり、この場合には、析出した前記金属錯体を濾別等で分離した後、洗浄、乾燥等を行えばよい。
【0077】
以上の金属錯体は、混合物を調製する際に、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0078】
(変性物の製造方法)
次に、本実施形態の変性物の製造方法について説明する。本実施形態の変性物は、上述の窒素含有導電性カーボンと金属錯体との混合物を調製した後に、該混合物を変性処理することにより製造する。
【0079】
(混合物の調製方法)
窒素含有導電性カーボンと金属錯体を混合する方法としては、分散媒に分散させた状態で混合する湿式法であってもよく、分散媒を用いずに各成分を混合して機械的に混合する乾式法であってもよく、金属錯体を真空蒸着にて窒素含有導電性カーボンに担持させる方法であってもよいが、より均質な混合物が得られることから、湿式法が好ましい。
【0080】
湿式法の場合、窒素含有導電性カーボンおよび金属錯体を、それぞれ適切な分散媒に個別に分散させて得られる分散液を混合することで調製してもよく、同一の分散媒に窒素含有導電性カーボンおよび金属錯体を加え混合することで調製してもよい。
なお、混合物という表現には、分散媒は含まない。
【0081】
上記分散媒としては、具体的には、水、メタノール、エタノール、n−プロパノ−ル、イソプロピルアルコール、ブタノール、2−メトキシエタノール、1,1−ジメチルエタノール、エチレングリコール、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトン、ニトロメタン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロベンゼン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、トリエチルアミン、ピリジン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、メチルエチルエーテル、1,4−ジオキサン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、デカリンが例示できる。
【0082】
中でも、窒素含有導電性カーボンおよび金属錯体の両方が分散しやすい分散媒が好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、エタノール、n−プロパノ−ル、イソプロピルアルコール、ブタノール、2−メトキシエタノール、1,1−ジメチルエタノール、エチレングリコール、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトニトリル、トリエチルアミン、ピリジン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、メチルエチルエーテル、1,4−ジオキサン、ヘキサン、オクタン、トルエン、キシレンが好ましく、メタノール、エタノール、n−プロパノ−ル、イソプロピルアルコール、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、クロロホルム、アセトニトリル、ベンゾニトリル、トリエチルアミン、ピリジン、トルエンが特に好ましい。
【0083】
前記混合物を調製する際、金属錯体と窒素含有導電性カーボンの量は、混合物を100質量部としたとき、金属錯体の量が、通常、1質量部以上であり、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましい。また、金属錯体の量の上限は、通常、70質量部であり、60質量部であることが好ましく、50質量部であることがより好ましい。
【0084】
窒素含有導電性カーボンの量は、混合物を100質量部としたとき、通常、30質量部以上であり、40質量部以上であることが好ましく、50質量部以上であることがより好ましい。また、窒素含有導電性カーボンの量の上限は、通常、99質量部であり、95質量部であることが好ましく、90質量部であることがより好ましい。
【0085】
混合物には、金属錯体、窒素含有導電性カーボン以外の成分を含んでいてもよい。
【0086】
(変性処理方法)
次に変性処理の方法について説明する。
【0087】
本実施形態において変性処理とは、加熱処理、放射線照射処理および放電処理のいずれかの方法により、混合物を処理することを意味する。これらの処理の中でも加熱処理が好ましい。加熱処理は、通常、加熱することにより行う。
【0088】
なお、変性処理に先だって、前記混合物を15℃以上200℃以下で、加圧、常圧または減圧のいずれかの条件で、6時間以上乾燥させることが好ましい。このような事前乾燥を行うことで、混合を湿式法で行った場合に用いる分散媒などの低分子量物質を除去する。事前乾燥時の圧力条件は、除去対象とする化合物の性質に応じて選択することができる。
【0089】
変性処理は、処理前後の質量減少率(即ち、処理前の混合物の質量に対する、処理後に得られる変性金属錯体の質量の減少率)が、好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上、特に好ましくは5%以上となるまで行えばよい。また、質量減少率の上限は、好ましくは80%、より好ましくは70%、特に好ましくは60%である。
【0090】
また、処理後の変性物は炭素含有率が高いと、得られる変性物を電極触媒として用いた場合、該電極触媒の安定性が良好である。そのため、この炭素含有率が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上、とりわけ好ましくは40質量%以上となるように前記変性処理を行うことがよい。
【0091】
ここで、炭素含有率は、得られた変性物の質量に対する、得られた変性物に含まれる炭素原子の質量の割合として定義され、質量%で表される値である。炭素含有率は、元素分析により測定することが可能である。
【0092】
変性処理が加熱処理である場合、加熱温度は、通常、400℃以上とするが、500℃以上とすることが好ましく、600℃以上とすることがより好ましく、700℃以上とすることが更に好ましく、800℃以上とすることが特に好ましい。加熱温度の上限は、1200℃であるが、好ましくは1150℃であり、より好ましくは1100℃であり、更に好ましくは1050℃であり、特に好ましくは1000℃である。
【0093】
加熱処理では、加熱時間を、変性処理を行う雰囲気や加熱温度に応じて調整することができる。例えば、変性処理を行う処理室内に混合物を配置し、変性処理を行う雰囲気とするためのガスを密閉又は通気させた状態において、室内温度を室温から徐々に温度を上昇させて熱処理を行う場合、室内温度が目的とする上記処理条件の温度(熱処理温度)に到達後、すぐに冷却してもよい。また、目的とする熱処理温度に到達後、室内温度を当該温度に維持することで、処理室内に配置した混合物を加熱し続けることができ、十分に変性を行うこととするとよりよい。
【0094】
ここで、目的とする温度に到達後の保持時間は、好ましくは30分以上100時間以下であり、より好ましくは1時間以上40時間以下であり、さらに好ましくは1時間以上10時間以下であり、特に好ましくは1時間以上3時間以下である。
【0095】
変性処理が加熱処理である場合、加熱処理は、オーブン、ファーネス(管状炉など)、IHホットプレート等の装置で行うことができる。
【0096】
また、加熱処理は、水素ガス、ヘリウムガス、窒素ガス、アンモニアガス、酸素ガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガス、アセトニトリルガスの雰囲気、又はこれらのうちの二種以上の混合ガスの雰囲気下で行うことが好ましく、水素ガス、ヘリウムガス、窒素ガス、アンモニアガス、酸素ガス、ネオンガス、アルゴンガス、又はこれらのうちの二種以上の混合ガスの雰囲気下で行うことがより好ましく、水素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、アルゴンガス、又はこれらのうちの二種以上の混合ガスの雰囲気下で行うことが特に好ましい。
【0097】
変性処理が放射線照射処理である場合には、混合物にα線、β線、中性子線、電子線、γ線、マイクロ波、X線、電波、レーザー等の電磁波、粒子線等の放射線、好ましくは、マイクロ波、X線、電子線、レーザー、より好ましくは、マイクロ波、レーザーを照射すればよい。
【0098】
変性処理が放電処理である場合には、混合物にコロナ放電、グロー放電、プラズマ処理(低温プラズマ処理を含む)を行うこと等が挙げられ、中でも低温プラズマ処理を行うことが好ましい。
【0099】
放射線照射処理、放電処理は、通常、高分子フィルムの表面改質処理に用いられる機器、処理方法に準じて行うことが可能であり、例えば、文献(日本接着学会編、「表面解析・改質の化学」、日刊工業新聞社、2003年12月19日発行)等に記載された方法を用いることができる。
【0100】
放射線照射処理、放電処理は、通常、10時間以内、好ましくは3時間以内、より好ましくは1時間以内、特に好ましくは30分以内で行う。
【0101】
以上のようにして、本実施形態の変性物を製造することができる。
【0102】
本実施形態の変性物は、主として金属錯体に由来する金属原子と、変性処理により金属錯体の配位子が炭化した炭化物と、窒素含有導電性カーボンとを含むものである。
【0103】
変性物中においては、金属原子の近傍に窒素原子が存在している。これは、混合物の状態において、窒素含有導電性カーボンに含まれる窒素原子や金属錯体の配位子に含まれる窒素原子が金属錯体に含まれる金属原子と配位結合を形成することで、変性処理時には金属原子の近傍に窒素原子が配置され、そのような状態で変性処理が成されるために、変性物中において窒素原子が金属原子の近傍に存在しやすくなっているためであると考えられる。
【0104】
したがって、本実施形態の変性物は、金属原子の近傍に窒素原子が存在する構造を有することで、高い酸素還元活性が得られる。
【0105】
[組成物]
本実施形態の変性物は、そのまま単独で用いてもよいが、その他の成分と併用して組成物として用いてもよい。ここで、変性物と併用するその他の成分としては、例えば、カーボン、高分子化合物が挙げられる。なお、本実施形態の組成物において、各成分は、それぞれ一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。カーボンとしては、例えば、前述した導電性カーボン、窒素含有導電性カーボンが挙げられる。
【0106】
本実施形態の組成物において、その他の成分の合計含有量は、本実施形態の変性物100質量部に対して、10質量部以上300質量部以下が好ましく、30質量部以上100質量部以下がより好ましい。
【0107】
本実施形態の組成物に用いられる変性物、本実施形態の組成物は、いずれも、加工して、形状を変えてもよい。
【0108】
本実施形態の変性物は、特に、高分子化合物を含む組成物の態様で燃料電池用電極触媒を形成する形成材料として用いると、酸素還元活性がより向上するので好ましい。該組成物中の本発明の変性物の量は、通常、25質量%以上91質量%以下であり、好ましくは、33質量%以上77質量%以下であり、高分子化合物、又はこれらの合計量は、通常、5質量%以上75質量%以下である。
【0109】
組成物に含まれる高分子化合物としては、例えば、ナフィオン(登録商標)、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ(アリーレン・エーテル)、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリフルオレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリチオフェン及びその単独重合体にスルホン酸基が導入された高分子化合物が挙げられ、好ましくは、スルホン酸基が導入された上記高分子化合物である。
【0110】
本実施形態の変性物、組成物の用途としては、燃料電池用の電極触媒や膜劣化防止剤(例えば、固体高分子電解質型燃料電池用や水電気分解用のイオン伝導膜の劣化防止剤)、過酸化水素等の過酸化物の分解触媒、芳香族化合物の酸化カップリング触媒、排ガス・排水浄化用触媒(例えば、脱硫・脱硝触媒)、色素増感太陽電池の酸化還元触媒層、二酸化炭素還元触媒、改質水素製造用触媒、酸素センサー、医農薬や食品の抗酸化剤等が挙げられる。
【0111】
本実施形態の変性物、組成物を、芳香族化合物の酸化カップリング触媒として用いる場合、ポリフェニレンエーテルやポリカーボネート等のポリマー製造に関わる触媒として使用することができる。使用形態としては、前記触媒を反応溶液に直接添加する方法や、ゼオライトやシリカ等に担持させる方法が挙げられる。
【0112】
本実施形態の触媒を脱硫・脱硝触媒としても用いる場合、使用形態としては、工場からの排ガスが通気する塔に充填する方法や、自動車のマフラーに充填する方法が挙げられる。
【0113】
本実施形態の組成物は、燃料電池用触媒組成物として用いることができる。また、本実施形態の組成物を燃料電池用触媒組成物として用いることで、例えば、膜電極接合体の作製に用いることができる。
本発明の膜電極接合体は、上述の燃料電池用電極触媒を含む触媒層を電解質膜の両側に備えた膜電極接合体であって、該触媒層の少なくとも一方が該燃料電池用電極触媒を含む。
ここで、本発明の膜電極接合体は、例えば、以下の製造方法で作製することができる。まず、組成物を、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、または、それらの混合液に分散させた後、ナフィオン(登録商標)等の電解質膜に、ダイコーターやスプレーを用いて塗布する。組成物を適当な大きさに成型した後、前述の電解質膜に熱転写することにより、圧着させる。こうして、膜電極接合体を作製することができる。膜電極接合体は、セパレータ、ガスケット、集電板を組み合わせて、エンドプレート等で固定し、燃料電池セルとして用いることができる。
【0114】
[燃料電池用電極触媒、膜電極接合体、燃料電池]
次に、本発明の変性物を備えた燃料電池の好ましい一実施態様について、添付の図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の好適な一実施態様の燃料電池のセルについての縦断面図である。図1では、燃料電池10は、電解質膜12(プロトン伝導膜)と、これを挟む一対の触媒層14a,14bとから構成された膜電極接合体20を備えている。燃料電池10は、膜電極接合体20の両側に、これを挟むようにガス拡散層16a,16b及びセパレータ18a,18b(セパレータ18aは、触媒層14a側に、セパレータ18bは、触媒層14b側に、それぞれ燃料ガス等の流路となる溝(図示せず)が形成されていると好ましい)を順に備えている。なお、電解質膜12、触媒層14a,14b及びガス拡散層16a,16bとからなる構造体は、一般的に、膜電極ガス拡散層接合体(MEGA)と呼ばれることがある。
【0115】
触媒層14a及び14bは、燃料電池における電極層として機能する層であり、これらの一方がアノード電極層となり、他方がカソード電極層となる。かかる触媒層14a及び14bには、電極触媒(即ち、本発明の変性物である)とナフィオン(登録商標)に代表されるプロトン伝導性を有する電解質とを含む。本発明の燃料電池用電極触媒は、カソード電極層(カソード電極)用として好適である。その場合、アノード電極層(アノード電極)に用いる触媒としては、燃料電池用触媒として一般に用いられているPt触媒またはPt合金触媒等を用いることが好ましい。
【0116】
前記電解質膜(プロトン伝導膜)としては、例えば、Nafion NRE211、Nafion NRE212、Nafion112、Nafion1135、Nafion115、Nafion117(いずれもデュポン社製)、フレミオン(旭硝子社製)、アシプレックス(旭化成社製)(いずれも商品名、登録商標)などフッ素系電解質膜を用いることができる。また、炭化水素系電解質膜としては、ポリアリーレンエーテルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、シンジオタクチックポリスチレンスルホン酸、ポリフェニレンエーテルスルホン酸、変性ポリフェニレンエーテルスルホン酸、ポリエーテルスルホンスルホン酸、ポリエーテルエーテルケトンスルホン酸、ポリフェニレンサルファイドスルホン酸等からなる炭化水素系電解質膜を用いることができる。
【0117】
ガス拡散層16a及び16bは、触媒層14a及び14bへの原料ガスの拡散を促進する機能を有する層である。このガス拡散層16a及び16bは、電子伝導性を有する多孔質材料により構成されることが好ましい。前記多孔質材料としては、多孔質性のカーボン不織布、カーボンペーパーが、原料ガスを触媒層14a及び14bへ効率的に輸送することができるために好ましい。
【0118】
セパレータ18a及び18bは、電子伝導性を有する材料で形成されている。前記電子伝導性を有する材料としては、例えば、カーボン、樹脂モールドカーボン、チタン、ステンレスが挙げられる。
【0119】
次いで、燃料電池10の好適な製造方法を説明する。
まず、電解質を含む溶液と電極触媒とを混合してスラリーを形成させる。これを、カーボン不織布やカーボンペーパーの上にスプレーやスクリーン印刷法により塗布し、溶媒等を蒸発させることで、ガス拡散層16a上に触媒層14aが形成され、ガス拡散層16b上に触媒層14bが形成された積層体をそれぞれ得る。得られた一対の積層体をそれぞれの触媒層が対向するように配置するとともに、その間に電解質膜12を配置し、これらを圧着することにより、MEGAが得られる。このMEGAを、一対のセパレータ18a及び18bで挟み込み、これらを接合させることで、燃料電池10が得られる。この燃料電池10は、ガスシール等で封止することもできる。
なお、ガス拡散層16a上への触媒層14aの形成、及びガス拡散層16b上への触媒層14bの形成は、例えば、ポリイミド、ポリ(テトラフルオロエチレン)等の基材の上に、前記スラリーを塗布し、乾燥させて触媒層を形成させた後、これをガス拡散層に熱プレスで転写することにより行うこともできる。
【0120】
また、燃料電池10は、固体高分子型燃料電池の最小単位であるが、単一の燃料電池10(セル)の出力は限られている。そこで、必要な出力が得られるように複数の燃料電池10を直列に接続して、燃料電池スタックとして使用することが好ましい。
【0121】
本発明の燃料電池は、燃料が水素である場合は固体高分子型燃料電池として、また、燃料がメタノールである場合は直接メタノール型燃料電池として動作させることができる。
【0122】
本発明の電極触媒は、燃料電池用電極触媒、水電気電解用触媒として用いることができるが、燃料電池用電極触媒として用いることが好ましい。本発明の電極触媒を用いた燃料電池は、例えば、自動車用電源、家庭用電源、携帯電話、携帯用パソコン等のモバイル機器用小型電源として有用である。
【実施例】
【0123】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に制限されるものではない。
【0124】
・金属錯体(A)の合成
金属錯体(A)を下記反応式に従って合成した。
【0125】
【化5】

【0126】
金属錯体(A)の配位子として用いる化合物である、反応式左辺に示す化合物(X)は、Tetrahedron.,1999,55,8377に記載の方法を用いて合成した。
窒素雰囲気下において、化合物(X)1.39gと酢酸コバルト4水和物(Aldrich社製)1.245gとを含んだ2−メトキシエタノール(TCI社製)200ml溶液を500mlナスフラスコに入れ、80℃に加熱しながら2時間攪拌したところ、褐色固体が生成した。
この褐色固体を濾取し、2−メトキシエタノール20mlで洗浄した後、乾燥させることにより、金属錯体(A)を得た(収量1.54g、収率74%)。
生成物が目的とする金属錯体(A)であることは、元素分析およびESI−MS(エレクトロスプレー質量分析、Agilemt 1100 LC/MSD 質量分析計)測定を行うことにより確認した。
【0127】
元素分析値(質量%):
Calcd for C4950Co:C,62.56;H,5.36;N,5.96;Co, 12.53.
Found:C,62.12;H,5.07;N,6.03;Co, 12.74.
ESI−MS[M−CHCOO]:805.0
【0128】
・金属錯体(B)の合成
金属錯体(B)を下記反応式に従って合成した。
【0129】
【化6】

【0130】
金属錯体(B)の配位子として用いる化合物である、反応式左辺に示す化合物(Y)は、特開2009-173627号公報に記載の方法を用いて合成した。
窒素雰囲気下において、化合物(Y)0.045gと酢酸コバルト4水和物0.040gとを含んだ、メタノール(和光純薬社製)3mlとクロロホルム(和光純薬社製)3mlとの混合溶液を50mlナスフラスコに入れ、80℃に加熱しながら5時間攪拌した。得られた溶液を濃縮し乾燥させ固化させることにより、青色固体を得た。
この青色固体を水で洗浄することにより、金属錯体(B)を得た。
生成物が目的とする金属錯体(B)であることは、ESI−MS(エレクトロスプレー質量分析、Agilemt 1100 LC/MSD 質量分析計)測定を行うことにより確認した。
【0131】
ESI−MS[M+・]:866.0
【0132】
<実施例1>
・窒素含有導電性カーボン
窒素雰囲気下で、ケッチェンブラック600JD(ライオン社製)1.00g、N−メチルグリシン(和光純薬社製)4.46g及びベンズアルデヒド(ナカライテスク社製)1.06gを100mlのN,N’−ジメチルホルムアミド(和光純薬社製)に分散させた。分散液を、130℃で加熱しながら70時間攪拌した。
その後、濾取して得られた固体を、N,N’−ジメチルホルムアミド50mlで洗浄して、200Paの減圧下において50℃で12時間乾燥させることにより、1.35gの窒素含有導電性カーボン(C)を得た。
窒素含有導電性カーボン(C)の導電率を測定したところ、導電率は12S/cmであった。なお、導電率の測定には、三菱化学アナリテック社製粉体抵抗測定システム(MCP−PD51及びMCP−T610)を用いた。
【0133】
元素分析値(質量%):C,85.09;H,3.90;N,4.56.
【0134】
<実施例2>
窒素雰囲気下において、金属錯体(A)0.020gを含んだエタノール10ml溶液を室温下で攪拌し、これに窒素含有導電性カーボン(C)を加えた。窒素含有導電性カーボン(C)は、窒素含有導電性カーボン(C):金属錯体(A)=4:1の質量比で混合した。得られた混合溶液を、室温にて攪拌後、200Paの減圧下で12時間乾燥させることにより、混合物(F)を調製した。
【0135】
次いで、混合物(F)を、管状炉を用いて、窒素雰囲気下、800℃で1時間加熱した後、0.1M塩酸で洗浄して変性物(G)を得た。用いた管状炉及び加熱条件を以下に示す。また、加熱(変性処理)前後の質量減少率を、加熱、洗浄後の炭素含有率(元素分析値)、窒素含有率(元素分析値)と共に、表1に示す。
【0136】
−測定装置−
管状炉:プログラム制御開閉式管状炉EPKRO−14R、いすゞ製作所製
【0137】
−測定条件−
熱処理雰囲気:窒素ガスフロー(200ml/分)
昇温速度及び降温速度:200℃/時間
【0138】
<実施例3>
実施例2において、金属錯体(A)に代えて金属錯体(B)を用いた以外は、実施例2と同様にして、混合物(以下、「混合物(H)」という。)を調製し、加熱、洗浄することにより、変性物(I)を得た。加熱(変性処理)前後の質量減少率、加熱、洗浄後の炭素含有率(元素分析値)、窒素含有率(元素分析値)と共に、表1に示す。
【0139】
<比較例1>
窒素雰囲気下において、金属錯体(A)0.020gを含んだエタノール10ml溶液を室温下で攪拌し、これにカーボン担体(商品名:ケッチェンブラックEC600JD、ライオン製)を加えた。カーボン担体は、カーボン担体:金属錯体(A)=4:1の質量比で混合した。得られた混合溶液を、室温にて攪拌後、200Paの減圧下で12時間乾燥させることにより、混合物(J)を調製した。
【0140】
次いで、実施例2と同様にして、混合物(J)を、管状炉を用いて加熱し、変性物(K)を得た。加熱(変性処理)前後の質量減少率、加熱、洗浄後の炭素含有率(元素分析値)、窒素含有率(元素分析値)と共に、表1に示す。
【0141】
【表1】

【0142】
<評価>
(電極の作製)
電極には、ディスク部がグラッシーカーボン(直径4.0mm)、リング部が白金(リング内径5.0mm、リング外径7.0mm)であるリングディスク電極を用いた。
各変性物2mgを入れたサンプル瓶に対し、それぞれ水0.6ml、エタノール0.4ml、ナフィオン(登録商標)溶液(Aldrich製、5質量%溶液)20μLを加えた後、超音波で分散させた。
得られた懸濁液4.4μLを上記電極のディスク部に滴下した後、室温にて12時間乾燥させることにより、各変性物を用いて形成した測定用電極を得た。
【0143】
(回転リングディスク電極による酸素還元能の評価)
測定用電極を回転させることにより、その時点における酸素還元反応の電流値の測定・評価を行った。電流値の測定は、室温において、酸素を飽和させた状態、窒素を飽和させた状態でそれぞれ行い、酸素を飽和させた状態での測定で得られた電流値から、窒素を飽和させた状態での測定で得られた電流値を引いた値を、酸素還元の電流値として求めた。なお、測定装置及び測定条件は、以下の通りである。
【0144】
−測定装置−
ビー・エー・エス株式会社製
RRDE−2回転リングディスク電極装置
ALSモデル701Cデュアル電気化学アナライザー
【0145】
−測定条件−
セル溶液:0.05mol/L硫酸水溶液(酸素飽和)
溶液温度:25℃
参照電極:銀/塩化銀電極(飽和塩化カリウム)
カウンター電極:白金ワイヤー
掃引速度:5mV/秒
電極回転速度:600rpm
【0146】
実施例2,3、比較例1の各変性物について、得られた結果を表2に示す。なお、酸素還元活性は、電流密度の値を指標として評価することができる。表2では、可逆水素電極に対して0.7Vにおける電流密度を示す。
【0147】
【表2】

【0148】
測定の結果、実施例の変性物は比較例の変性物と比べて高い電流密度を示した。すなわち、実施例の変性物は、比較例の変性物より酸素還元能が優れていることが分かった。これにより、本発明の有用性が確かめられた。
【符号の説明】
【0149】
10…燃料電池、12…電解質膜(プロトン伝導膜)、14a,14b…触媒層、16a,16b…ガス拡散層、18a,18b…セパレータ、20…膜電極接合体(MEA)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性カーボンの官能基または多重結合と窒素含有化合物とを反応させてなる窒素含有導電性カーボンと、金属錯体と、の混合物に、加熱処理、放射線照射処理および放電処理の何れかの変性処理を行うことにより得られる変性物。
【請求項2】
前記窒素含有化合物がアミノ基を有する請求項1に記載の変性物。
【請求項3】
前記窒素含有導電性カーボンが窒素原子を1質量%以上含む請求項1または2に記載の変性物。
【請求項4】
前記窒素含有導電性カーボンが、アルデヒド、N−モノ置換−α−アミノ酸および前記導電性カーボンを混合し反応させてなる請求項1〜3のいずれか一項に記載の変性物。
【請求項5】
前記N−モノ置換−α−アミノ酸がN−モノ置換グリシンである請求項4に記載の変性物。
【請求項6】
前記アルデヒドが芳香族アルデヒドである請求項4または5に記載の変性物。
【請求項7】
前記アルデヒド、前記N−モノ置換−α−アミノ酸、および前記導電性カーボンを混合し、80℃以上300℃以下で加熱し反応させて前記窒素含有導電性カーボンを生成させた後、該窒素含有導電性カーボンと前記金属錯体とを混合して前記変性処理を行うことにより得られる請求項4〜6のいずれか一項に記載の変性物。
【請求項8】
前記窒素含有導電性カーボンの導電率が1×10−2S/cm以上である請求項1〜7のいずれか一項に記載の変性物。
【請求項9】
前記変性処理が、600℃以上1200℃以下の加熱処理である請求項1〜8のいずれか一項に記載の変性物。
【請求項10】
前記金属錯体が、ピロール骨格若しくはピリジン骨格、又はこれらの両方を含む請求項1〜9のいずれか一項に記載の変性物。
【請求項11】
前記金属錯体が、鉄およびコバルトから選ばれる1種以上の金属原子を含む請求項1〜10のいずれか一項に記載の変性物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の変性物を含む燃料電池用触媒組成物。
【請求項13】
前記変性物と、カーボンおよび高分子のいずれか一方または両方を含む請求項12に記載の燃料電池用触媒組成物。
【請求項14】
請求項12または13に記載の燃料電池用触媒組成物からなる燃料電池用電極触媒。
【請求項15】
燃料電池用電極触媒を含む触媒層を電解質膜の両側に備えた膜電極接合体であって、該触媒層の少なくとも一方が請求項14に記載の燃料電池用電極触媒を含む、膜電極接合体。
【請求項16】
請求項15に記載の膜電極接合体を有する燃料電池。
【請求項17】
アルデヒド、N−モノ置換−α−アミノ酸、および導電性カーボンを混合し、80℃以上300℃以下で加熱して得られる窒素含有導電性カーボン。

【図1】
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【公開番号】特開2012−72052(P2012−72052A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185095(P2011−185095)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】