説明

変性粘土を用いた膜

【課題】包装材、封止材、電気絶縁材等の技術分野において、柔軟性及びガスバリア性及び耐水性に優れた新素材・新技術を提供する。
【解決手段】変性粘土を主要構成成分とする材料であって、(1)変性粘土と添加物から構成される、(2)変性粘土の全固体に対する重量比が70%以上である、(3)ガスバリア性及び水蒸気バリア性を有する、(4)耐熱性を有する、(5)耐水性を有する、及び(6)自立膜として利用可能な機械的強度を有する、(7)金属、プラスチック、ゴム、紙等の表面に製膜できる、ことを特徴とする膜。
【効果】変性粘土粒子が高配向し、耐熱性に優れ、柔軟性に優れ、ガスバリア性に優れ、水蒸気バリア性に優れ、耐水性の高い変性粘土膜からなる素材を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性粘土を主要構成成分とする材料であり、更に詳しくは、自立膜として利用可能な機械的強度を有し、フレキシブルであり、耐水性を有し、ガスバリア性を有し、無機層状化合物粒子の積層を高度に配向させた構造を有する新素材に関するものである。包装材、封止材、絶縁材の技術分野において、従来、ガス遮蔽性が高く、水蒸気遮蔽性が高く、耐水性で、柔軟で、しかも湿潤環境下で使用可能な耐熱性材料の開発が強く要請されているが、本発明は、これを踏まえて開発されたものであり、耐水性が高く、しかも、柔軟性が高く、水蒸気バリア性、及びガスバリア性に優れた新素材であって、ガスバリアフィルム等に好適に使用することが可能な新素材・新技術を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、柔軟性に優れたガスバリア材は、ほとんどの場合、有機高分子材料をベースとして製造されてきた。しかし、そのガスバリア性は完璧とはいえない。また、耐熱性は最も高いエンジニアリングプラスチックで約350℃であり、これ以上の温度でのガスバリア材料としては、無機系シートあるいは金属シートを用いなければならなかった。無機系シートは、マイカやバーミキュライトなどの天然あるいは合成鉱物をシート状に加工したものであり、これらは、高い耐熱性を有し、グランドパッキンとして一応のガスシール部材として用いられているが、緻密に成型できていないため、微小なガス分子の流れるパスを完全に遮断することはできず、ガスバリア性がそれほど高くない。また、黒鉛を圧密したガスケットは、そのガスバリア性が十分でなく、使用温度も450℃程度に限られている。そのため、高温で高いガスバリア性を必要とする場合、金属シートを用いなければならない。金属シートを用いる場合、強く締め付ける機構が必要になる、締め付け時にあたり面に傷がつきリークの原因になる恐れがある、加熱冷却時周辺部材の体積変化に追随できず隙間が発生し、リークの原因になる、電気絶縁がとれない、等の問題点が生ずる。
【0003】
また、常温よりも高い温度条件下で用いられる用途、例えば、化学プラントのガスシールに対しては、従来材料よりも高い温度条件下で用いることが可能なフィルムが求められる。特に、健康被害を避ける観点から、アスベストを含まないジョイントシート用耐熱性、ガスバリア性材料が求められる。更に、食品用包装材においても、電子レンジの利用や、沸騰水による加熱が可能な材料が求められており、ガスバリア性が高く、水蒸気バリア性が高く、更に、120℃以上の温度における耐熱水性を有する材料が求められる。
【0004】
膨潤性粘土などの無機層状化合物を、水やアルコールに分散し、その分散液をガラス板の上に広げ、静置、乾燥することにより、粒子の配向の揃った膜が得られることが知られており、この膜形成により、例えば、X線回折用の定方位試料が調製されてきた(非特許文献1参照)。しかしながら、ガラス板上に膜を形成した場合、ガラス板から無機層状化合物薄膜を剥がすことが困難であり、剥がす際に膜に亀裂が生じるなど、自立膜として得ることが難しいという問題があった。また、膜を剥がせたとしても、得られた膜が脆く、強度が不足であり、これまで、ピンホールのないガスバリア性に優れた均一の厚さの膜を調製することは困難であった。
【0005】
一方、種々の高分子樹脂が、成形材料の他、分散剤、増粘剤、結合剤として、無機材料に配合され、ガスバリア材料として用いられている。例えば、ポリアクリル酸等の、分子中に2個以上のカルボキシル基を持つカルボキシル基含有高水素ガス結合性樹脂(A) と、澱粉類等の、分子鎖中に2個以上の水酸基を持つ水酸基含有高水素ガス結合性樹脂(B)の重量比A/B=80/20〜60/40の混合物100重量部と、粘土鉱物等の無機層状化合物1〜10重量部とで組成物を形成し、この組成物から作製した厚み0.1〜50μmの皮膜に、熱処理・電子線処理をすると、その皮膜は、ガスバリア性を示すことが知られている(特許文献1参照)。しかし、この場合には、添加物樹脂が主成分であり、耐熱性が高くないという問題がある。
【0006】
また、二つのポリオレフィン系樹脂層の間に、無機層状化合物と樹脂とを含む樹脂組成物からなる層を積層することにより、防湿性やガスバリア性に優れ、食品包装に適用可能な積層フィルムを得ることができる(特許文献2参照)。しかし、この場合には、無機層状化合物を含む樹脂組成物の層は、多層膜の一部として用いられているに過ぎず、自立膜として単独で用いられるものではない。また、この種の積層膜の耐熱性は、含まれる最も耐熱性の低い有機物材料、すなわち、この場合は、ポリオレフィンにより決定されるため、この種の材料は、一般には、高耐熱性とはなり得ない。
【0007】
プラスチックの耐熱性やガスバリア性を向上させることを目的として、スメクタイト、マイカ、タルク、バーミキュライト等種々の粘土がフィラーとしてプラスチックに添加されている。水分散性の高いスメクタイトは、親水性であるため、疎水性のプラスチックに対する親和性が低く、そのままプラスチックに高分散化して複合化することが困難である。そこで、疎水性プラスチックと複合化させる場合は、粘土を改質し、親水性/疎水性をコントロールした変性粘土を用いる(非特許文献2参照)。変性粘土を製造する方法は、二種類ある。その一つは、第四級アンモニウムカチオンあるいは第四級ホスホニウムカチオンによるイオン交換である。これら有機カチオンの種類、導入割合によって、親水性/疎水性をコントロールすることが可能である。このうち、第四級アンモニウムカチオンを用いた場合よりも、第四級ホスホニウムカチオンを用いた場合の方が耐熱性が高いと報告されている(非特許文献3参照)。親水性/疎水性の度合いにより、種々の溶剤を選択できる。もう一つは、シリル化である。粘土結晶の末端には、水酸基が存在し、この水酸基と添加したシリル化剤が反応して、末端を疎水化することが可能である。こちらの場合も、シリル化剤の種類、導入割合によって、親水性/疎水性をコントロールすることが可能である。この二種類の改質方法は両者を併用することも可能である。しかし、これまで、これら変性粘土を主成分として用いた自立膜材料の開発は行われてこなかった。通常、有機化は、塩化第四級アルキルアンモニウム試薬を用いて行われるため、水洗浄を行ってもその塩素濃度は高く、塩素の混入を嫌う用途には用いられづらいという問題点があった。
【0008】
最近、ラングミュアーブロジェット法(Langmuir−Blodgett Method)を応用した無機層状化合物薄膜の作製が行われている(例えば、非特許文献4参照)。しかし、この方法では、無機層状化合物薄膜は、ガラスなどの材料でできた基板表面上に形成されるものであり、自立膜としての強度を有する無機層状化合物薄膜は得られていない。他にも、従来から、機能性無機層状化合物薄膜等を調製する方法が種々報告されている。例えば、ハイドロタルサイト系層間化合物の水分散液を膜状化して乾燥することからなる粘土薄膜の製造方法(特許文献3参照)、粘土鉱物と燐酸又は燐酸基との反応を利用し、その反応を促進させる熱処理を施すことにより粘土鉱物が持つ結合構造を配向、固定した粘土鉱物薄膜の製造方法(特許文献4参照)、スメクタイト系粘土鉱物と2価以上の金属の錯化合物を含有する皮膜処理用水性組成物(特許文献5参照)などをはじめ、多数の事例が存在する。
【0009】
しかしながら、いずれの方法においても、これまで、耐熱性であり、自立膜として利用可能な機械的強度を有し、粘土粒子の積層を高度に配向させてガスバリア性を付与した無機層状化合物配向自立膜は得られてはいない。
【0010】
一方、化粧品及び医薬品分野において、好適な球状の有機複合粘土鉱物(例えば、特許文献6及び特許文献7参照)、粘土鉱物と酸と酵素とを混合した湿潤性水虫の治療薬の製造(例えば、特許文献8及び特許文献9参照)等、無機層状化合物と有機化合物を複合化させることが種々提案されてきた。しかしながら、これらの有機複合粘土鉱物を自立膜として用いることは、なされてこなかった。
【0011】
また、次世代のエネルギー源として、水の電気分解の逆反応を利用して、燃料の水素と空気中の酸素を化学反応させて電気を取り出す燃料電池が開発されているところであるが、固体高分子型燃料電池では、水素イオン導電膜を用いるが、この膜のイオン伝導性や100℃程度の温度での耐久性を向上させることが強く求められていた。
【0012】
このように、従来、包装材、封止材、ディスプレイ材、燃料電池材などの分野において、種々の材料開発が行われてきたが、ガス遮蔽性及び水蒸気遮蔽性が高く、柔軟で、高耐熱性、耐水性、水素イオン伝導性の膜材は未だ開発されておらず、当技術分野では、耐水性を有する膜であって、自立膜として利用可能な機械的強度を有する柔軟で高耐熱性の新しい材料を開発し、実用化することが強く求められていた。
【0013】
【特許文献1】特開平10−231434号公報
【特許文献2】特開平7−251489号公報
【特許文献3】特開平6−95290号公報
【特許文献4】特開平5−254824号公報
【特許文献5】特開2002−30255号公報
【特許文献6】特開昭63−64913号公報
【特許文献7】特公平07−17371号公報
【特許文献8】特開昭52−15807号公報
【特許文献9】特公昭61−3767号公報
【非特許文献1】白水晴雄「粘土鉱物学−粘土科学の基礎−」、朝倉書店、p.57(1988)
【非特許文献2】鬼形正信、SMECTITE、第8巻、第2号、8−13(1998)
【非特許文献3】鬼形正信、SMECTITE、第13巻、第1号、2−15(2003)
【非特許文献4】梅沢泰史、粘土科学、第42巻、第4号、218−222(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、自立膜として利用可能な機械的強度を有し、耐水性で、しかも、優れたフレキシビリティーを有し、200℃を超える高温度条件下で使用できる新しいガスバリア膜を開発することを目標として、鋭意研究を積み重ねる過程で、変性粘土を用い、必要に応じて添加物を用い、変性粘土結晶を配向させ、緻密に積層させることにより、自立膜として利用可能な機械的強度、ガスバリア性、耐水性、熱安定性及びフレキシビリティーを備えた膜材が得られるとの知見を得た。
【0015】
更に具体的には、耐水性の高い変性粘土と、必要に応じて少量の耐水性の高い添加物を、溶剤に分散させ、ダマを含まない均一な分散液を得た後、この分散液を、表面が平坦な支持体に塗布し、溶剤を種々の固液分離方法、例えば、遠心分離、ろ過、真空乾燥、凍結真空乾燥又は加熱蒸発法などで分離し、膜状に成形した後、これを必要に応じ乾燥・加熱・冷却するなどの方法により支持体から剥離することにより、変性粘土が配向し、耐水性が高く、柔軟性に優れ、ガスバリア性に優れ、耐熱性も高い無機層状化合物膜を作製できるとの知見が得られた。
【0016】
これらの知見に基づいて、本発明者らは、更に研究を重ねて、好ましい変性粘土とこれに好適な添加物、変性粘土と添加物の最適混合比率、分散液の最適固液比、好ましい支持体材料、好ましい分散方法等を見出し、膜の柔軟性、耐水性及び耐熱性を向上させることに成功し、本発明を完成するに至った。本発明は、変性粘土結晶を配向させ緻密に積層させることにより、自立膜として利用可能な機械的強度を有し、しかも、耐水性を有し、熱安定性に優れたフレキシブルな新規膜材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)変性粘土を主要構成成分とする材料であって、1)変性粘土と添加物から構成される、2)変性粘土の全固体に対する重量比が70%以上である、3)ガスバリア性を有する、及び4)自立膜として利用可能な機械的強度を有する、ことを特徴とする膜。
(2)変性粘土が、天然粘土あるいは合成粘土を用いたものである、前記(1)に記載の膜。
(3)変性粘土に用いられる粘土が、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、マガディアイト、アイラライト、カネマイト、イライト、セリサイトのうちの一種以上である、前記(1)に記載の膜。
(4)変性粘土が有機カチオンとして第四級アンモニウムカチオンあるいは第四級ホスホニウムカチオンを含む、前記(1)に記載の膜。
(5)変性粘土における有機カチオン組成が、30重量パーセント未満である、前記(4)に記載の膜。
(6)塩素濃度が、150ppm未満である、前記(4)に記載の膜。
(7)変性粘土が、粘土にシリル化剤を反応させたものである、前記(1)から(6)のいずれかに記載の膜。
(8)粘土とシリル化剤に対するシリル化剤の組成が、30重量パーセント未満である、前記(7)に記載の膜。
(9)添加物が、セルロイド、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ユリア樹脂、酢酸セルロース、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン、ポリウレタン樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、不飽和ポリエステル、ケイ素樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリカーボナート、ポリアセタール、ポリイミド、ポリスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタラート、ポリエーテルスルホン、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミドのうちの1種以上である、前記(1)に記載の膜。
(10)エポキシ樹脂が、リグニン由来、あるいはスクロース由来エポキシである、前記(9)に記載の膜。
(11)変性粘土の交換性イオンの少なくとも50パーセントが、リチウムイオンである、前記(1)に記載の膜。
(12)加熱処理により耐水性を向上させた、前記(11)に記載の膜。
(13)シリル化粘土が、エポキシ末端シリル化粘土であり、製膜過程でエポキシ反応させ粘土間に共有結合を形成する、前記(1)に記載の膜。
(14)シリル化粘土A及びシリル化粘土Bを混合し、シリル化粘土Aの末端とシリル化粘土Bの末端を反応させることにより、粘土間に共有結合を形成する、前記(1)に記載の膜。
(15)シリル化粘土Aの末端が、エポキシ基であり、シリル化粘土Bの末端がアミノ基である、前記(14)に記載の膜。
(16)表面処理が行われている、前記(1)に記載の膜。
(17)表面処理が、撥水処理、防水処理、補強処理、及び表面平坦化処理のうちの一種以上である、前記(16)に記載の粘土膜。
(18)表面処理が、酸化ケイ素膜、フッ素系膜、シリコン系膜、ポリシロキサン膜、フッ素含有オルガノポリシロキサン膜、アクリル樹脂膜、塩化ビニル樹脂膜、ポリウレタン樹脂膜、高撥水メッキ膜、金属蒸着膜、又はカーボン蒸着膜を表面に形成することである、前記(16)に記載の粘土膜。
(19)補強材により補強されている、前記(1)に記載の膜。
(20)補強材が、鉱物繊維、グラスウール、炭素繊維、セラミックス繊維、植物繊維、及び有機高分子繊維からなる群のうちの一種以上である、前記(19)に記載の粘土膜。
(21)補強材が、布の形態を有している、前記(19)に記載の粘土膜。
(22)布が、織物、不織布、紙である、前記(21)に記載の粘土膜。
(23)補強材の、全固体に対する重量割合が、多くとも30パーセントである、前記(19)に記載の粘土膜。
(24)加熱、光照射等の任意の方法により、上記添加物分子内、添加物分子間、添加物と無機層状化合物間、無機層状化合物結晶間において、付加反応、縮合反応、又は重合反応の化学反応を行わせ、新たな化学結合を生じさせて、光透過性、ガスバリア性、水蒸気バリア性あるいは機械的強度を改善させた、前記(1)に記載の膜。
(25)厚みが0.003ミリメートル以上、0.3ミリメートル以下である、前記(1)に記載の膜。
(26)酸素ガスに対する透過係数が、室温において2.0×10−9cm−1cmHg−1未満である、前記(1)から(25)のいずれかに記載の膜。
(27)40℃、相対湿度90パーセントにおける水蒸気透過度が、10gm−2day−1未満である、前記(1)から(26)のいずれかに記載の膜。
(28)20℃、相対湿度65パーセントにおける吸水率が2パーセント未満である、前記(1)から(27)のいずれかに記載の膜。
(29)150℃の過熱水に1時間浸漬処理後に膜形状に損傷が視覚的に観察されず、酸素ガスに対する透過係数が、室温において2.0×10−9cm−1cmHg−1未満である、前記(1)から(28)のいずれかに記載の膜。
(30)膜に対して、垂直方向の体積抵抗率が、少なくとも2.8×1011Ωcmである、前記(1)から(29)のいずれかに記載の膜。
(31)膜に垂直方向のイオン伝導率が、少なくとも1×10−4Scm−1である、前記(1)から(30)のいずれかに記載の膜。
(32)曲げ半径8ミリメートルでクラックが発生せず、使用が可能である、前記(1)から(31)のいずれかに記載の膜。
(33)熱重量測定において5パーセント減量温度が235℃以上760℃以下である、前記(1)から(32)のいずれかに記載の膜。
(34)膜平面と平行方向における50℃から250℃の平均熱線膨張係数が、5ppm以上10ppm以下である、前記(1)から(33)のいずれかに記載の膜。
(35)前記(1)から(34)のいずれか1項に記載の膜Aと前記(1)から(34)のいずれか1項に記載の膜Bを含み、AとBの構成成分が同一ではない多層膜。
(36)変性処理を行わない粘土を主成分とする膜が含まれる、前記(35)に記載の多層膜。
(37)変性処理を行わない粘土を主成分とする膜が、1)粘土の全固体に対する重量比が少なくとも70%である、2)ガスバリア性を有する、前記(36)に記載の多層膜。
(38)変性処理を行わない粘土が、天然あるいは合成粘土である、前記(36)に記載の多層膜。
(39)変性処理を行わない粘土が、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト及びノントロナイトのうちの1種以上である、前記(36)に記載の多層膜。
(40)変性処理を行わない粘土を主成分とする膜の添加剤が、イプシロンカプロラクタム、デキストリン、澱粉、セルロース系樹脂、ゼラチン、寒天、小麦粉、グルテン、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアマイド、ポリエチレンオキサイド、タンパク質、デオキシリボヌクレイン酸、リボヌクレイン酸及びポリアミノ酸、多価フェノール、安息香酸類化合物のうちの1種以上である、前記(36)に記載の多層膜。
(41)添加剤の、全固体に対する重量割合が、多くとも30パーセントである、前記(35)に記載の多層膜。
(42)加熱、光照射等の任意の方法により、上記添加物分子内、添加物分子間、添加物と無機層状化合物間、無機層状化合物結晶間において、付加反応、縮合反応、又は重合反応の化学反応を行わせ、新たな化学結合を生じさせて、光透過性、ガスバリア性、水蒸気バリア性あるいは機械的強度を改善させた、前記(35)に記載の多層膜。
(43)厚みが0.003ミリメートル以上、0.5ミリメートル以下である、前記(35)に記載の多層膜。
(44)酸素ガスに対する透過係数が、室温において2.0×10−9cm−1cmHg−1未満である、前記(35)に記載の多層膜。
(45)40℃、相対湿度90パーセントにおける水蒸気透過度が、6gm−2day−1未満である、前記(33)に記載の多層膜。
(46)前記(1)から(45)のいずれか1項に記載の膜と、金属ホイル、プラスチックフィルム、ゴム、紙の一種以上からなる複合多層膜。
(47)プラスチックフィルムとして、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルイミドの一種以上を含む、前記(46)に記載の複合多層膜。
(48)前記(1)から(47)のいずれか1項に記載の膜からなることを特徴とする表面保護膜。
(49)被保護材料が、金属、金属酸化物、セラミックス、プラスチック、プラスチック発泡材、木材、石膏、ゴムである、前記(48)に記載の表面保護膜。
(50)前記(1)から(49)のいずれかに記載の膜からなることを特徴とする封止材、包装材、保護材、断熱材、絶縁材、耐熱材、不燃材、又は燃料電池隔膜。
(51)前記(1)に記載の膜を製造する方法であって、変性粘土のプレゲル溶媒を加え、変性粘土プレゲルを作製し、その後、極性溶媒を加え、その後、添加物を加えることを特徴とする上記膜の製造方法。
(52)変性粘土のプレゲル溶媒が、水である、前記(51)に記載の膜の製造方法。
(53)極性溶媒が、エタノールあるいはジメチルアセトアミドである、前記(51)に記載の膜の製造方法。
(54)前記(34)に記載の膜を製造する方法であって、前記(1)から(34)のいずれか1項に記載の膜の表面に、前記(36)から(45)のいずれか1項に記載の膜を形成させる手順、あるいはその逆である手順を含むことを特徴とする上記膜の製造方法。
【0018】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明の膜材は、変性粘土を主要構成成分とする耐水性を有する材料であって、(1)変性粘土と添加物から構成される、(2)変性粘土の全固体に対する重量比が70%以上である、(3)ガスバリア性を有する、及び(4)自立膜として利用可能な機械的強度を有する、ことを特徴とする膜であることを特徴とするものである。本発明では、耐水性の高い有機粘土と、必要に応じて少量の耐水性の高い添加物を、溶剤に分散させ、ダマを含まない均一な分散液を得た後、この分散液を、表面が平坦な支持体に塗布し、分散媒である溶剤を、適宜の固液分離方法で分離し、膜状に成形した後、これを必要に応じて乾燥・加熱・冷却するなどの方法により支持体から剥離することにより、変性粘土結晶が配向し、耐水性が高く、柔軟性に優れ、ガスバリア性に優れ、耐熱性も高い変性粘土膜が得られる。
【0019】
この場合、上記固液分離方法としては、例えば、遠心分離、ろ過、真空乾燥、凍結真空乾燥又は加熱蒸発法などが例示されるが、これらに制限されるものではない。本発明においては、好適な変性粘土と添加物、変性粘土と添加物の混合比率、分散液の固液比、好適な支持体材料、好適な分散方法等を任意に設定することが可能であり、それにより、膜の柔軟性、耐水性及び耐熱性を向上させた膜材を得ることができる。
【0020】
すなわち、本発明では、耐水性の高い変性粘土及び少量の耐水性の高い添加物を用い、表面を平坦に成型し、変性粘土を配向して緻密に積層し、内部クラックやダマに起因する不均一性を最小限に抑え、均一な厚さで自立膜として利用可能な機械的強度を得るための好適な製造条件を採用することが重要である。それにより、耐水性を有し、熱安定性、ガスバリア性に優れたフレキシブルな膜を自立膜として得ることができる。
【0021】
本発明で用いる変性粘土に用いられる粘土としては、天然あるいは合成物、好適には、例えば、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、マガディアイト、アイラライト、カネマイト、イライト、セリサイトのうちの1種以上、更に好適には、それらの天然あるいは合成物の何れかあるいはそれらの混合物が例示される。本発明で用いる変性粘土に用いる有機カチオンとして第四級アンモニウムカチオンあるいは第四級ホスホニウムカチオンを用いるものが例示される。その際、変性粘土における有機カチオン組成が30重量パーセント未満である場合が例示される。本発明では、変性粘土にシリル化剤を反応させたものである場合が例示される。その際、粘土とシリル化剤の総重量に対するシリル化剤組成が30重量パーセント未満である場合が例示される。
【0022】
本発明の変性粘土に含まれる有機物としては、第四級アンモニウムカチオンあるいは第四級ホスホニウムカチオンがあげられる。第四級アンモニウムカチオンとしては、特に限定されるものではないが、ジメチルジオクタデシルタイプ、ジメチルステアリルベンジルタイプ、トリメチルステアリルタイプが例示される。また、類似の有機物として第四級ホスホニウムカチオンが例示される。これらの有機物は、原料粘土のイオン交換によって粘土に導入される。このイオン交換は、例えば、原料粘土を、大過剰の有機物を溶解した水に分散し、一定時間攪拌し、遠心分離あるいはろ過により固液分離し、水により洗浄を繰り返すことにより行われる。これらのイオン交換プロセスは1回のみの場合もあり、複数回繰り返す場合もある。複数回繰り返すことによって、粘土に含まれるナトリウム、カルシウムなどの交換性イオンが有機物によって交換される比率が高くなる。用いる有機物及び交換比率によって変性粘土の極性にバリエーションを持たせることができ、異なる極性の変性粘土はそれぞれ好適な添加物及び好適な溶剤が異なる。このとき、第四級アンモニウムカチオンの導入に用いられる試薬として、第四級アンモニウムカチオン塩化物が用いられることが一般的である。第四級アンモニウムカチオンの導入とともに混入する塩素は、水洗浄により薄められるが、水洗浄を繰り返してもその濃度を150ppm以下にすることは困難である。しかし、エレクトロニクス用途などでは、塩素の混入を著しく嫌うものがあり、そのため、塩素濃度を150ppm以下に抑えなければならないことがある。そのような場合は、第四級アンモニウム塩化物を用いず、塩素を含まない他の試薬、例えば、第四級アンモニウム臭化物、第四級アンモニウムカチオン水酸化物を用いなければならない。
【0023】
本発明の変性粘土に含まれるシリル化剤としては、特に制限されるものではないが、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシランを例示することができる。粘土へのシリル化剤の導入方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、原料粘土と、原料粘土に対して2重量パーセントのシリル化剤を混合し、それらをボールミルにより一時間ミルすることによって製造される(鬼形正信、近藤三二、Clay Science、第9巻、 第5号、 299−310(1995)参照)。
【0024】
また、本発明で用いる添加物としては、セルロイド、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ユリア樹脂、酢酸セルロース、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン、ポリウレタン樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、不飽和ポリエステル、ケイ素樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリカーボナート、ポリアセタール、ポリイミド、ポリスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタラート、ポリエーテルスルホン、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミドのうちの1種以上が例示される。
【0025】
エポキシ樹脂が、石油由来樹脂ではなく、生物由来樹脂を用いることができる。これによって、膜の環境に対する負荷を小さくすることができる。具体的には、リグニン由来エポキシ、あるいはスクロース由来エポキシを用いることが可能である。
【0026】
粘土の層間イオンをリチウム化して、加熱処理することによって層間のリチウムが粘土八面体層内に移動し、層間のイオン成分が減少することにより耐水性が向上する。この耐水性の向上は、層間のイオン性物質のうちリチウムイオンを50パーセント以上にすることによって顕著に現れる。熱処理は、通常、製膜後であり、温度条件は、通常、230℃以上であることが好ましく、300℃以上であることが更に好ましく、350℃以上であることが最適である。800℃を超えると粘土が劣化するため好ましくない。熱処理時間は、20分以上24時間以内である。低温の場合は、より長時間処理が必要になる傾向がある。
【0027】
シリル化粘土を調製する場合のシリル化剤には、種々のものが市販されており、その中には反応性官能基を有するものがある。例えば、エポキシ基、アクリル基、アミノ基、ハロゲン基などである。このような反応性末端を有するシリル化剤を用いて調製されたシリル化粘土は、その末端に反応性末端を有し、製膜中あるいは製膜後の処理によって、付加反応、縮合反応、重合反応等の化学反応を行わせ、新たな化学結合を生じさせて、光透過性、ガスバリア性、水蒸気バリア性あるいは機械的強度を改善することが可能である。特に、シリル化粘土がエポキシ末端を有する場合、製膜中あるいは製膜後の処理でエポキシ反応させ、粘土間に共有結合を形成させることが可能である。
【0028】
上述のように、種々の異なる反応性末端を有するシリル化粘土が調製できることから、ある反応性末端を有するシリル化粘土Aと別の反応性末端を有するシリル化粘土Bを混合し、これを原料として製膜し、製膜中あるいは製膜後の処理で粘土Aと粘土Bのそれぞれの反応性末端同士を化学結合させることが可能であり、これにより、光透過性、ガスバリア性、水蒸気バリア性あるいは機械的強度を改善することが可能である。ここで、シリル化粘土Aの末端がエポキシ基であり、シリル化粘土Bの末端がアミノ基であることが例示される。
【0029】
同様な発想で、粘土層間の交換性無機イオンを交換することによって導入される有機カチオンも、反応性末端のものを用い、成膜後、これを加熱などすることにより、有機カチオン間、あるいは有機カチオンと添加剤の間で化学結合させ、より機械的強度に優れるなどの好適な特性を有する粘土膜を製造することが可能である。
【0030】
本発明で用いる変性粘土は、有機溶剤によく分散する場合がある。このような添加物と変性粘土とは、互いの親和性があり、両者を有機溶剤中で混合すると、容易に結合し、複合化する。この場合の膜の製造方法においては、最初に、有機溶剤に変性粘土及び添加物を加えた、均一な分散液を調製しなければならない。この分散液の調製方法としては、変性粘土を分散させてから添加物を加える方法、添加物を含む溶液に変性粘土を分散させる方法並びに変性粘土及び添加物を同時に上記分散媒に加えて分散液とする方法、変性粘土及び添加物をそれぞれ別に分散液とし、それらを混合する方法などが例示されるが、分散の容易さから、変性粘土を有機溶剤に分散させてから、添加物を加えるか、変性粘土及び添加物をそれぞれ別に分散液とし、それらを混合することが好ましい。
【0031】
この場合、先ず、変性粘土を、溶剤に加え、希薄で均一な変性粘土分散液を調製する。この変性粘土分散液における変性粘土濃度は、好適には0.3から15重量パーセント、より好ましくは、1から10重量パーセントである。このとき、変性粘土の濃度が薄過ぎる場合、乾燥に時間がかかり過ぎるという問題がある。また、変性粘土の濃度が濃過ぎる場合、変性粘土が良好に分散しないため、ダマが発生しやすく、均一な膜ができないという問題がある。また、変性粘土の濃度が濃過ぎる場合、乾燥時に収縮によるクラックや表面荒れ、膜厚の不均一性等が生じるという問題がある。
【0032】
次に、添加物あるいはそれを含む溶液を秤量して、上記変性粘土分散液に加え、変性粘土及び添加物を含む均一な分散液を調製する。この場合、変性粘土及び添加物は、ある種の有機溶剤によく分散する。また、変性粘土及び添加物は、互いに親和性があるので、両者は、溶剤中で混合すると、容易に相互作用し、複合化する。
【0033】
以上述べたように、粘土添加物複合体を作製する場合に、純粋な溶媒に好分散する粘土とこれと同一な溶媒に溶解する添加物を使うことが一般的である。しかし、粘土の分散液に用いる溶媒と添加物を溶解する溶媒がお互いに混合可能であれば、混合溶媒を用いることが可能である。粘土の分散液に用いる溶媒と添加物を溶解する溶媒は同一である必要はないことを見出した。これらの組合せとしては、例えば、水とメタノール、水とエタノール、水とジメチルアセトアミド、水とジメチルホルムアミドなどがある。このような場合、まず変性粘土を水で膨潤させ、プレゲルを作り、その後、二種類目の極性溶媒を足す方法を取ることが好適である。
【0034】
粘土膜の耐熱性を高いものにするためには、極力有機化合物量を少なくする必要がある。しかし、有機溶媒に分散させるためには、通常、粘土に30重量パーセント程度有機カチオンを導入した粘土を用いることが一般的である。このような有機化粘土は、耐熱性が300℃以下であることが一般的である。そこで、優れた耐熱性の粘土膜を作製するために、有機物導入量の少ない粘土を用い、水分散液を用いる場合がある。一方、添加物として水溶性のものを用いる場合、作製した粘土膜の耐水性が劣る傾向がある。そのため、添加物は、水と混合可能な極性溶媒に溶解するものを用い、粘土と水でプレゲルを調製し、これに極性溶媒を加え、次に、添加物を加え、均一なペーストとすることが好適に用いられる。
【0035】
添加物の、全固体に対する重量割合は、30パーセント未満であり、好ましくは5パーセントから20パーセントである。
【0036】
用いる溶剤であるが、変性粘土が分散し、添加物が溶解するものであれば特に限定されることはなく、種々の極性の溶剤を用いることが可能であり、例示すれば、水、エチルアルコール、エーテル、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトン、トルエンなどをあげることができる。
【0037】
このとき、添加物の割合が低過ぎる場合、使用の効果が現れず、添加物の割合が高過ぎる場合、得られる膜の耐熱性が低下する。分散方法としては、できるだけ激しく分散できる方法であれば特に限定されるものではないが、攪拌翼を備えた攪拌装置、振とう攪拌装置、ホモジナイザー等を用いる方法があり、特に、小さなダマをなくすためには、分散の最終段階でホモジナイザーを用いる方法が好ましい。ダマが分散液に残存している場合、膜表面の荒れあるいは膜組成の不均一の原因となる。
【0038】
本発明の膜において、必要に応じて秤量した補強材を、変性粘土分散液に加え、均一な分散液を調製する。補強材として、鉱物繊維、グラスウール、炭素繊維、セラミックス繊維、植物繊維、有機高分子繊維樹脂のうちの一種以上を用いることができる。補強材は、これらの繊維が布状になっている場合がある。布は、織物になっている場合と不織布になっている場合がある。補強材が布の場合は、分散液には混合せず、布を支持体上に置いておき、分散液をその上から塗布するような工程を用いることができる。補強材の全固体に対する重量割合は、30パーセント以下であり、好ましくは1パーセントから10パーセントである。このとき、補強材の割合が低過ぎる場合、添加の効果が現れず、補強材の割合が高すぎる場合、調製した膜中で補強材と粘土の分布が不均一になり、結果として、得られる粘土膜の均一性が低下し、やはり添加効果が薄れる。なお、補強材と添加物の添加順序は、どちらが先と決まっているわけではなく、どちらを先に加えてもよい。
【0039】
次に、分散液を必要に応じ脱気処理する。脱気処理の方法としては、例えば、真空引き、加熱、遠心などによるがあるが、真空引きを含む方法がより好ましい。次に、分散液を支持体表面に一定厚みで塗布する。次に、分散媒である溶剤をゆっくりと蒸発させ、残部を膜状に成形する。このようにして形成された複合無機層状化合物膜は、好適には、例えば、遠心分離、ろ過、真空乾燥、凍結真空乾燥及び加熱蒸発法の何れか、あるいはこれらの方法を組み合わせて乾燥される。
【0040】
これらの方法のうち、例えば、加熱蒸発法を用いる場合、分散液を、平坦なトレイ、例えば、真鍮、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)などのトレイなどの支持体に塗布し、水平を保った状態で、強制送風式オーブン中において、30℃から90℃の温度条件下、好ましくは30℃から50℃の温度条件下で、10分から3時間程度、好ましくは20分から1時間、乾燥して、添加物複合有機粘土膜を得る。
【0041】
このとき、膜材料との剥離性が十分でない場合は、膜が支持体に貼りついた状態になり、剥離させることが困難になるという問題点がある。剥離性を良くするために、支持体表面に何らかの表面加工をすることがある。例えば、金属材料上へのフッ素膜加工などである。支持体表面はできるかぎり平坦であることが望ましい。平坦でない場合には、膜表面に支持体表面の荒れが転写され、膜表面の平滑性が低下する原因となる。
【0042】
分散液を、事前に脱気処理しない場合は、得られる複合無機層状化合物膜に気泡に由来する孔ができ易くなるという問題が生ずる場合がある。複合変性粘土膜に気泡が含まれる場合、膜の均一性が低下する他、光の内部散乱の原因となり、膜が曇るという問題点がある。また、乾燥条件は、液体分を蒸発によって取り除くのに十分であるように設定される。このとき、温度が低過ぎると、乾燥に時間がかかるという問題がある。また、温度が高過ぎると、分散液の対流が起こり、膜が均一な厚みにならず、また、変性粘土粒子の配向度が低下するという問題がある。
【0043】
本発明の膜の厚さについては、分散液に用いる固体重量を増減することによって、任意の厚さの膜を得ることができる。厚みについては、薄く成膜した方が表面平滑性に優れる傾向がある。その他、膜が厚くなることによって、柔軟性が低下するという問題があり、厚みは0.2ミリメートル以下であることが望ましい。
【0044】
本発明において、変性粘土粒子の積層を高度に配向させるとは、変性粘土粒子の単位構造層(厚さ約1ナノメートルから1.5ナノメートル)を、層面の向きを一にして積み重ね、層面に垂直な方向に、高い周期性を持たせることを意味する。このような変性粘土粒子の配向を得るためには、変性粘土及び添加物を含む、希薄で均一な分散液を支持体に塗布し、分散媒である液体をゆっくりと蒸発させ、変性粘土粒子が緻密に積層した膜状に成形することが重要である。
【0045】
この製膜の好適な製造条件を示すと、変性粘土分散液中の変性粘土の濃度は、好ましくは0.3から15重量パーセント、より好ましくは、1から10重量パーセントであり、また、加熱乾燥法による乾燥条件は、用いる溶剤の種類によるが、室温から90℃の温度条件下、より好ましくは、30℃から50℃の温度条件下で、10分から3時間程度の乾燥、より好ましくは、20分から1時間程度の乾燥である。
【0046】
また、添加物複合変性粘土膜がトレイなどの支持体から自然に剥離しない場合は、好適には、例えば、約80℃から200℃の温度条件下で乾燥し、剥離を容易にして自立膜を得る。乾燥時間は一時間あれば十分である。このとき、温度が低過ぎる場合には、剥離が起こりにくいという問題がある。また、温度が高過ぎる場合には、添加物が劣化し、結果として、膜の着色が起る、機械的強度が低減する、及びガスバリア性が低減する等の問題が生じる。
【0047】
本発明の変性粘土膜は、その表面を処理することにより、表面特性を変え、耐水性・高遮湿性を向上させることが可能である。表面処理としては、均一にできるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、被覆層作製法がある。
【0048】
被覆層作製による方法としては、フッ素系膜、シリコン系膜、ポリシロキサン膜、フッ素含有オルガノポリシロキサン膜、アクリル樹脂膜、塩化ビニル樹脂膜、ポリウレタン樹脂膜、高撥水メッキ膜、金属蒸着膜、カーボン蒸着膜などを表面に形成する方法が例示される。この場合、膜作製法として、湿式法、乾式法、蒸着法、噴霧法等の方法があげられる。表面に作製された被覆層は疎水性であり、そのため、結果として、変性粘土膜表面の撥水性が実現する。この処理は、用途に応じて、粘土膜の片面のみ、あるいは両面とも行うことができる。表面処理法としては、他に、シリル化、イオン交換などの化学処理によって表面改質を行う方法があげられる。
【0049】
この表面処理により、以上述べた撥水性、防水性の向上の他に、膜強度を高める補強効果、表面における光散乱を押さえ、光沢を与え、外見を美麗にするとともに、透明度を高める表面平坦化効果が期待できる。一方、被覆層を有機高分子とする場合、粘土膜の常用温度範囲が被覆層の材料の常用温度範囲によって規定される場合がある。そのため、用途によって、表面処理に用いる材料の選定や膜厚が注意深く選択される。
【0050】
本発明の粘土膜自体は、変性粘土を主原料(70重量%〜)として用い、基本構成として、好適には、例えば、層厚約1から2nm、粒子径〜5μm、分子の大きさ〜数nmの天然又は合成の低分子・高分子の添加物が〜30重量%の構成、が例示される。この粘土膜は、例えば、厚さ約1から1.5nmの変性粘土層状結晶を同じ向きに配向させて緻密に積層することで作製される。
【0051】
得られた膜は、膜厚が3〜100μm、好適には3〜80μmであり、ガスバリア性能は、室温における酸素ガスの透過係数は、1.28×10−9cm−1cmHg−1未満であり、面積は100×40cm以上に大面積化することが可能であり、高耐熱性を有し、150℃で1時間加熱処理後もガスバリア性の低下はみられず、高耐水性を有し、室温で1時間水に浸漬後もガスバリア性の低下はみられず、高耐熱水性を有し、150℃の水に1時間浸漬後もガスバリア性の低下がみられず、膜の垂直方向への体積抵抗率は10メガオーム以上である。
【0052】
このように、本発明の変性粘土膜は、変性粘土粒子の積層が高度に配向し、自立膜として用いることが可能であり、フレキシビリティーに優れ、ピンホールが存在せず、150℃までの高温においても、気体・液体のバリア性を保持することを可能とするものである。また、本発明の変性粘土膜は、例えば、はさみ、カッター等で、容易に、円、正方形、長方形などの任意の大きさ、形状に、切り取ることができる。
【0053】
また、本発明の変性粘土膜は、その電気絶縁性を生かして電気絶縁膜として広範に用いることが可能である。更に、本発明の変性粘土膜は、そのイオン伝導性を生かして、燃料電池隔膜として広範に用いることが可能である。
【0054】
したがって、本発明の変性粘土膜は、高温条件下でフレキシビリティーに優れ、ガスバリア性、水蒸気バリア性に優れた自立膜として、広範に使用することができ、例えば、150℃を超える高温においても、化学的に安定で、耐水性を保つことが可能な、柔軟な包装材料・封止材料・絶縁材料・燃料電池隔膜材料などとして用いることができる。また、添加物変性粘土と相互作用し、フレキシビィリティー、強度、耐水性の点で優れた薄膜を生成する。そのため、変性粘土薄膜の引っ張り、捩れ等による容易な破壊が抑えられ、それにより、自立膜として利用可能な優れた特性を有する変性粘土膜が得られる。
【0055】
更に、本発明の変性粘土膜は、例えば、LCD用基板フィルム、有機EL用基板フィルム、電子ペーパー用基板フィルム、電子デバイス用封止フィルム、PDP用フィルム、LED用フィルム、光通信用部材、各種機能性フィルムの基板フィルム、ICタグ用フィルム、その他電子機器用フレキシブルフィルム、燃料電池用封止フィルム、太陽電池用フィルム、食品包装用フィルム、飲料包装用フィルム、医薬品包装用フィルム、日用品包装用フィルム、工業製品包装用フィルム、その他各種製品包装用フィルム等として用いることが可能である。更に、本発明の変性粘土膜は、二酸化炭素及び水素を含むガス種に対するガスバリアシール材として広範に用いることが可能である。
【0056】
上記変性粘土膜を他部材に貼り付ける一例として、多層化が例示される。つまり、変性粘土複合膜を他の材料から作製された膜Bと多層化することにより、ガスバリア性、水蒸気バリア性、及び機械的強度を向上させることが可能である。このような多層化の事例として、例えば、変性粘土複合膜とプラスチック膜としてポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、フッ素樹脂フィルム等を接着剤によって貼り合わせて多層化した膜が例示される。
【0057】
フッ素樹脂フィルムは、低透湿性であることから、フッ素樹脂フィルムと変性粘土複合膜との多層膜は、高遮湿性及び高ガスバリア性の膜として利用可能である。ここで、膜Bの材質としては、粘土膜との多層膜の成形性が良好であれば、特に制限はないが、好適には、例えば、金属箔、薄板硝子、各種プラスチック膜、紙、ゴムなどが例示される。更に、同様に変性粘土複合膜を含む三層以上の多層膜を用いることも可能である。また、膜Bの材質として、酸素ガスバリア性に優れた、変性処理を行わない粘土を主成分とする膜を用いることが可能である。変性粘土膜は、水蒸気バリア性に優れていることを特徴としており、変性処理を行わない粘土を主成分とする膜は、乾燥ガスバリア性及び耐熱性に優れている。したがって、これらの多層膜は、酸素ガスバリア性、水蒸気バリア性の両者に優れた性能を発揮する。この多層膜の製造法としては、変性処理粘土膜上に変性処理を行わない粘土膜を形成する場合、また、その逆の場合の両者があげられる。
【0058】
本発明の変性粘土膜は、半透明の外観を示す。透明なガスバリア材としては、薄板ガラスがあるが、これは、薄くても0.4ミリメートル程度が限界である。一方、本発明の変性粘土複合膜は、0.1ミリメートルから3マイクロメートル程度まで薄く作製することが可能であり、デバイス全体のフレキシビリティー及び軽量化を図ることができる。フレキシブルデバイス材料や電子デバイス封止材料としては、膜のフレキシビリティーが重要な特性である。本発明の変性粘土膜は、半径8ミリに曲げても、クラックなど発生せず、フレキシブルデバイスに広範に使用が可能であるという特徴を有する。更に、本発明の変性粘土膜は、イオン伝導性があることから、燃料電池隔膜に用いることが可能である。
【0059】
本発明の膜は、フレキシビリティー、加工性に優れていることから、ロールトゥーロールプロセスの適用も可能と考えられる。本発明の膜は、ケイ酸塩が主成分であることから、プラスチック材料よりも耐放射線性に優れており、ガンマ線、電子線等を用いた放射線殺菌を用いる医薬品包装材料として有望である。本発明の膜は、他材料への接着が容易であり、一般的な接着剤を用いることが可能であり、表面コーティングが可能であり、表面コーティング及びラミネートすることにより、ガスバリア性・水蒸気バリア性・耐水性・耐熱性・難燃性等の向上が可能である。多層膜として、本発明の変性粘土膜を金属ホイル、プラスチックフィルム、紙などと多層化したものが例示される。また、プラスチックフィルムとして、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリイミドが例示される。表面コーティングされる材料としては、金属、金属酸化物、セラミックス、プラスチック、プラスチック発泡材、木材、石膏ボード、ゴムなどが例示される。本発明の変性粘土膜の表面コーティングにより、抗酸化性、耐食性、耐候性、ガスバリア性、水蒸気バリア性、耐水性、耐熱性、耐薬品性、防炎性等を向上させることが可能である。
【0060】
従来、ハイガスバリア材として、例えば、薄板ガラス、あるいは金属ホイル材等が考えられるが、これらの製品は、柔軟性、耐熱性、軽量性、電気絶縁性及び内部の視認性の全ての要件を満たすものではなく、そのために、それらの応用範囲が制約されるという問題点があった。これに対し、本発明は、変性粘土粒子の積層を高度に配向させた構造を有する変性粘土を主要構成成分とする膜材料を利用することにより、ガスバリア性、水蒸気バリア性、柔軟性、耐熱性、電気絶縁性、内部の視認性及び軽量性の全ての要件を満たす新規膜材を作製し、提供することを可能とするものである。
【発明の効果】
【0061】
本発明により、(1)変性粘土粒子の配向が揃った透明な変性粘土からなる膜材料を提供することができる、(2)該変性粘土からなる膜材料は、自立膜として用いることができ、例えば、150℃を超える高温においても、化学的に安定でガスバリア性を保つ、(3)ガスバリア性、水蒸気バリア性、柔軟性、耐熱性、軽量性、電気絶縁性及び耐水性の要件を全て満たすことができる新規膜材を提供することができる、(4)半透明であり、内部の視認が可能な膜材が得られる、(5)本発明の膜材は、柔軟なガスシール材料、包装材料、封止材料、電気絶縁材料などとして好適に用いることができる、(6)本発明の膜材は、例えば、金属、プラスチック、ゴム、紙、セラミックなどの表面に塗布することによって、多層膜として広範に用いることが可能である、(7)本発明の膜材は、例えば、金属、金属酸化物、セラミックス、プラスチック、プラスチック発泡材、木材、石膏ボード、ゴムなどの表面に塗布することによって、表面保護膜として広範に用いることが可能である、(8)本発明の膜材は、例えば、燃料電池用隔膜として好適に用いることができる、という格別の効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0063】
(1)変性粘土薄膜の製造
変性粘土として、天然ベントナイトにジメチルステアリルベンジルタイプの第四級アンモニウムイオン、及びシリル化剤としてトリメチルシランを導入した市販品(ホージュン株式会社製)を用いた。14グラムの前記変性粘土を、440cmのトルエンに加え、プラスチック製密封容器に、テフロン(登録商標)回転子とともに入れ、25℃で2時間激しく振とうし、均一な分散液を得た。この分散液を二等分し、それぞれ添加物として、市販のエポキシ系接着剤(コニシ株式会社製)のエポキシ樹脂(A剤)及び変性ポリアミド(B剤)を、3グラムずつ加え、激しく振とうし、均一な分散液を得た。次に、二つの分散液を混合し、更に、25℃で20分間激しく振とうし、均一な粘土ペーストを得た。
【0064】
次に、真空脱泡装置により、この粘土ペーストの脱気を行った。次いで、この粘土ペーストを、厚さ0.1mmのテフロン(登録商標)フィルムを貼り付けた金属板に塗布した。塗布には、ステンレス製地べらを用いた。高さ4ミリメートルのスペーサーをガイドとして利用し、均一厚の粘土ペースト膜を成型した。このトレイを室温で自然乾燥することにより、厚さ約60マイクロメートルの均一な変性粘土薄膜を得た。一昼夜静置後生成した変性粘土膜をトレイから剥離して、自立した、フレキシビリティーに優れた膜(WR30−60)を得た。
【0065】
(2)変性粘土薄膜の特性
マンドレル型屈曲試験機を用い柔軟性を測定した(ISO1519)。その結果、WR30−60を、半径6ミリメートルに曲げても、クラックなど何の欠陥も生じなかった。この膜の酸素の透過係数を、日本分光株式会社製Gasperm−100で測定した。その結果、室温における酸素ガスの透過係数は、1.28×10−9cm−1cmHg−1未満であることが確認され、高ガスバリア性能を示すことが分かった。カップ法により測定された40℃、相対湿度90パーセントにおける水蒸気透過度(JIS Z0208−1976)は2.15グラム/m/dayであった。WR30−60の垂直方向の直流電気抵抗を交流二端子法で測定した結果、1メガオーム以上であった。同様の製法で作製した、厚み40マイクロメートルの膜WR30−40において、その1MHzにおける誘電率を測定したところ、3.34であった。また、体積抵抗率を測定した結果、2.15×1013[Ωcm]であった。
【0066】
WR30−60の膜厚み方向のイオン伝導度は下記のように測定した。すなわち、自作測定用セル(テフロン(登録商標)製)を用い、単一正弦波測定方式による交流インピーダンス測定により伝導度を測定した。5X10mmの穴のあいた2枚のテフロ(登録商標)ン製ブロック間に膜試料をはさみ、膜の両端を白金箔で接触させ、AC電圧振幅0.02V,周波数0.001〜106Hzにおける交流インピーダンスを湿潤状態で周波数応答分析器により測定した。その結果、イオン伝導度は1×10−4Scm−1と測定された。
【0067】
同様にして作製された、厚さ40マイクロメートルの膜の耐薬品性を評価した。JIS K6258−1993に基づく、蒸留水、塩水(10wt%NaCl)、アルカリ(1wt%NaOH)、トルエン、アセトン、酢酸エチル、エタノールに対する耐薬品試験結果(40℃、72時間浸漬の重量変化)として、それぞれ17パーセント、3パーセント、39パーセント、44パーセント、32パーセント、25パーセント、6パーセントであった。
【0068】
(3)変性粘土薄膜の構造
WR30−60のX線回折チャートを、図1に示す。このX線回折チャートにおいて、きわめてシャープな底面反射ピーク001が、d=3.855nmに観察された。加えて、他のシャープな高次反射ピークがd=1.845(002)、d=1.260(003)、d=0.948(004)等に観察されていることから、WR30−60において、粘土層状結晶が高配向して積層していることが分かる。
【0069】
WR30−60の熱分析(昇温速度5℃毎分、通常空気フロー雰囲気下)を行った。TG曲線から、室温から150℃までに、吸着水の脱水による約1.5パーセントの重量減少が観察され、また、170℃から500℃にかけて、有機物の熱分解に伴う重量減少が約42パーセント観察された(図2)。5%減量温度は235℃であった。
【0070】
WR30−60の断面の走査型電子顕微鏡写真を図3に示す。変性粘土の板状結晶は、膜に平行に配向し、積層している構造が分かる。この構造が膜のフレキシビリティー及びガスバリア性に寄与すると考えられる。
【0071】
(4)変性粘土薄膜の耐熱性
WR30−60を電気炉で加熱した。室温から150℃まで約20分で昇温した。次に、150℃で1時間保持した後、電気炉内で放冷した。この加熱処理の後、肉眼でピンホール・クラックの発生などの異常は観察されなかった。この膜の酸素の透過係数を、日本分光株式会社製Gasperm−100で測定した。その結果、室温における酸素ガスの透過係数は、1.28×10−9cm−1cmHg−1未満であることが確認され、高ガスバリア性能を示すことが分かった。
【0072】
(5)変性粘土薄膜の耐水性
WR30−60を一時間蒸留水に浸漬した。この処理の後、肉眼でピンホール・クラックの発生などの異常は観察されなかった。この処理の後、肉眼でピンホール・クラックの発生などの異常は観察されなかった。この膜の酸素の透過係数を、日本分光株式会社製Gasperm−100で測定した。その結果、室温における酸素ガスの透過係数は、1.28×10−9cm−1cmHg−1未満であることが確認され、高ガスバリア性能を示すことが分かった。
【0073】
(6)変性粘土薄膜の耐熱水性
WR30−60をオートクレーブに入れ、蒸留水を注ぎWR30−60が蒸留水に浸漬するようにした。このオートクレーブを電気炉内に置き加熱した。室温から150℃まで約20分で昇温した。次に、これを150℃で1時間保持した後、電気炉内で放冷した。一時間蒸留水に浸漬した。この処理の後、肉眼でピンホール・クラックの発生などの異常は観察されなかった。この膜の酸素の透過係数を、日本分光株式会社製Gasperm−100で測定した。その結果、室温における酸素ガスの透過係数は、1.28×10−9cm−1cmHg−1未満であることが確認され、高ガスバリア性能を示すことが分かった。WR30−60のJIS K7105に基づく全光線透過率は89.3パーセントであり、ヘーズ(曇価)は31.2パーセントであった。
【0074】
比較例1
(1)粘土薄膜の製造
粘土として、2.7グラムの天然モンモリロナイト(クニピア P、クニミネ工業株式会社製)と0.72グラムの合成雲母(ソマシフME−100、コープケミカル株式会社製)とを、100cmの蒸留水に加え、プラスチック製密封容器に、テフロン(登録商標)回転子とともに入れ、25℃で2時間激しく振とうし、均一な分散液を得た。この分散液に、添加物として、メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体(ダイセル化学工業株式会社製)を0.18グラム加え、激しく振とうし、天然モンモリロナイト及びイプシロンカプロラクタムを含む均一な分散液を得た。これを徐々に乾燥させ、粘土ペーストを得た。次に、真空脱泡装置により、この粘土ペーストの脱気を行った。次に、この粘土ペーストを、真鍮製トレイに塗布した。塗布には、ステンレス製地べらを用いた。スペーサーをガイドとして利用し、均一厚の粘土ペースト膜を成型した。ここで、ペーストの厚みを2ミリメートルとした。このトレイを強制送風式オーブン中において、60℃の温度条件下で1時間乾燥することにより、厚さ約40マイクロメートルの均一な添加物複合粘土膜を得た。生成した粘土膜をトレイから剥離して、自立した、フレキシビリティーに優れた粘土膜(HR)を得た。
【0075】
(2)粘土薄膜の特性
HR膜を蒸留水に一時間浸漬したところ、膜を構成する粘土が水に再分散し、膜形状を失った。カップ法により測定された40℃、相対湿度90パーセントにおける水蒸気透過度(JIS Z0208−1976)は71.9グラム/m/dayであった。
【実施例2】
【0076】
(1)変性粘土薄膜の製造
変性粘土として、天然ベントナイトにジメチルステアリルベンジルタイプの第四級アンモニウムイオン、及びシリル化剤としてトリメチルシランを導入した市販品(ホージュン株式会社製)を用いた。14グラムの前記変性粘土を、440cmのトルエンに加え、プラスチック製密封容器に、テフロン(登録商標)回転子とともに入れ、25℃で2時間激しく振とうし、均一な分散液を得た。この分散液を二等分し、それぞれ添加物として、市販のエポキシ系接着剤(コニシ株式会社製)のエポキシ樹脂(A剤)及び変性ポリアミド(B剤)を、3グラムずつ加え、激しく振とうし、均一な分散液を得た。次に、二つの分散液を混合し、更に、25℃で20分間激しく振とうし、均一な粘土ペーストを得た。
【0077】
次に、真空脱泡装置により、この粘土ペーストの脱気を行った。次いで、この粘土ペーストを、厚さ0.1mmのテフロン(登録商標)フィルムを貼り付けた金属板に塗布した。塗布には、ステンレス製地べらを用いた。高さ2ミリメートルのスペーサーをガイドとして利用し、均一厚の粘土ペースト膜を成型した。このトレイを室温で自然乾燥することにより、厚さ約30マイクロメートルの均一な変性粘土薄膜を得た。一昼夜静置後生成した変性粘土膜をトレイから剥離して、自立した、フレキシビリティーに優れた膜(WR30−30)を得た。
【実施例3】
【0078】
(1)変性粘土の作製
天然の精製ベントナイトであるクニピアP(クニミネ工業株式会社製)60グラムを蒸留水600cmに分散させた。次に、この分散液に市販のテトラブチルアンモニウムブロミド特級試薬を60グラム混合し、25℃で2時間振とう攪拌することにより、均一な分散液を調製した。この分散液を6000回転、10分間遠心分離機にかけ固液分離した。更に、ホモジナイザーを用いて20分間混合した。得られた固体を水洗浄し、乾燥、粉砕することにより変性粘土を作製した。
【0079】
(2)変性粘土薄膜の作製
作製した変性粘土19.2グラムを、665cmのトルエンに加え、プラスチック製密封容器に、テフロン(登録商標)回転子とともに入れ、25℃で2時間激しく振とうし、均一な粘土ペーストを得た。次に、真空脱泡装置により、この粘土ペーストの脱気を行った。次いで、この粘土ペーストを、厚さ0.1mmのテフロン(登録商標)フィルムを貼り付けた金属板に塗布した。塗布には、ステンレス製地べらを用いた。スペーサーをガイドとして利用し、均一厚の粘土ペースト膜を成型した。このトレイを室温で自然乾燥することにより、厚さ約60マイクロメートルの均一な変性粘土薄膜を得た。一昼夜静置後生成した変性粘土膜をトレイから剥離して、自立した、フレキシビリティーに優れた膜(WRCF0−60)を得た。WRCF0−60を、半径2ミリメートルに曲げても、クラックなどが発生せず、何らの欠陥も生じなかった。
【実施例4】
【0080】
(1)変性粘土の作製
天然の精製ベントナイトであるクニピアP(クニミネ工業株式会社製)60グラムを蒸留水600cmに分散させた。次に、この分散液に市販のテトラブチルアンモニウムブロミド特級試薬を60グラム混合し、25℃で2時間振とう攪拌することにより、均一な分散液を調製した。この分散液を6000回転、10分間遠心分離機にかけ固液分離した。更に、ホモジナイザーを用いて20分間混合した。得られた固体を水洗浄し、乾燥、粉砕することにより変性粘土を作製した。この変性粘土の塩素濃度は150ppm以下であった。
【0081】
(2)変性粘土薄膜の作製
作製した変性粘土19.2グラムを、665cmのトルエンに加え、プラスチック製密封容器に、テフロン(登録商標)回転子とともに入れ、25℃で2時間激しく振とうし、均一な分散液を得た。この分散液を二等分し、それぞれ添加物として、市販のエポキシ系接着剤(コニシ株式会社製)のエポキシ樹脂(A剤)及び変性ポリアミド(B剤)を、2.4グラムずつ加え、激しく振とうし、均一な分散液を得た。次に、二つの分散液を混合し、更に、25℃で20分間激しく振とうし、均一な粘土ペーストを得た。次に、真空脱泡装置により、この粘土ペーストの脱気を行った。次いで、この粘土ペーストを、厚さ0.1mmのテフロン(登録商標)フィルムを貼り付けた金属板に塗布した。塗布には、ステンレス製地べらを用いた。スペーサーをガイドとして利用し、均一厚の粘土ペースト膜を成型した。このトレイを室温で自然乾燥することにより、厚さ約50マイクロメートルの均一な変性粘土薄膜を得た。一昼夜静置後生成した変性粘土膜をトレイから剥離して、自立した、フレキシビリティーに優れた膜(WRCF20−50)を得た。WRCF20−50を、半径2ミリメートルに曲げても、クラックなどが発生せず、何らの欠陥も生じなかった。
【実施例5】
【0082】
(1)変性粘土薄膜の製造
変性粘土として、天然ベントナイトにジメチルステアリルベンジルタイプの第四級アンモニウムイオン、及びシリル化剤としてトリメチルシランを導入した市販品(ホージュン株式会社製)を用いた。14グラムの前記変性粘土を、440cmのトルエンに加え、プラスチック製密封容器に、テフロン(登録商標)回転子とともに入れ、25℃で2時間激しく振とうし、均一な分散液を得た。この分散液を二等分し、それぞれ添加物として、市販のエポキシ系接着剤(コニシ株式会社製)のエポキシ樹脂(A剤)及び変性ポリアミド(B剤)を、3グラムずつ加え、激しく振とうし、均一な分散液を得た。次に、二つの分散液を混合し、更に、25℃で20分間激しく振とうし、均一な粘土ペーストを得た。
【0083】
次に、真空脱泡装置により、この粘土ペーストの脱気を行った。次いで、この粘土ペーストを、水平に保った市販の厚み50マイクロメートルのフッ素樹脂粘着シートの粘着層側に塗布した。塗布には、ステンレス製地べらを用いた。高さ4ミリメートルのスペーサーをガイドとして利用し、均一厚の粘土ペースト膜を成型した。この膜を室温で自然乾燥することにより、厚さ約60マイクロメートルの均一な変性粘土薄膜を含むフッ素樹脂フィルムとの多層フィルム(DL30)を得た。
【0084】
(2)変性粘土多層膜の特性
マンドレル型屈曲試験機を用い柔軟性を測定した(ISO1519)。その結果、DL30を、半径6ミリメートルに曲げても、クラックなど何の欠陥も生じなかった。この膜の酸素の透過係数を、日本分光株式会社製Gasperm−100で測定した。その結果、室温における酸素ガスの透過係数は、1.28×10−9cm−1cmHg−1未満であることが確認され、高ガスバリア性能を示すことが分かった。変性粘土層の接着を評価するために、JIS K5600に基づく1mm25マスクロスカット試験を行ったところ変性粘土層の剥離を観察しなかった。
【実施例6】
【0085】
(1)変性粘土薄膜の製造
変性粘土として、天然ベントナイトにジメチルステアリルベンジルタイプの第四級アンモニウムイオン、及びシリル化剤としてトリメチルシランを導入した市販品(ホージュン株式会社製)を用いた。14グラムの前記変性粘土を、440cmのトルエンに加え、プラスチック製密封容器に、テフロン(登録商標)回転子とともに入れ、25℃で2時間激しく振とうし、均一な分散液を得た。この分散液を二等分し、それぞれ添加物として、市販のエポキシ系接着剤(コニシ株式会社製)のエポキシ樹脂(A剤)及び変性ポリアミド(B剤)を、3グラムずつ加え、激しく振とうし、均一な分散液を得た。次に、二つの分散液を混合し、更に、25℃で20分間激しく振とうし、均一な粘土ペーストを得た。
【0086】
次に、真空脱泡装置により、この粘土ペーストの脱気を行った。次いで、この粘土ペーストを、水平に保った市販の厚み50マイクロメートルのフッ素樹脂粘着シートの粘着層側に塗布した。塗布には、ステンレス製地べらを用いた。高さ4ミリメートルのスペーサーをガイドとして利用し、均一厚の粘土ペースト膜を成型した。この膜を室温で自然乾燥することにより、厚さ約60マイクロメートルの均一な変性粘土薄膜を含むフッ素樹脂フィルムとの多層フィルム(DL30)を得た。更に、DL30の変性粘土側に市販の厚み50マイクロメートルのフッ素樹脂粘着シートを貼り付け、多層フィルム(TL30)を得た。
【0087】
(2)変性粘土多層膜の特性
マンドレル型屈曲試験機を用い柔軟性を測定した(ISO1519)。その結果、TL30を、半径6ミリメートルに曲げても、クラックなど何の欠陥も生じなかった。この膜の酸素の透過係数を、日本分光株式会社製Gasperm−100で測定した。その結果、室温における酸素ガスの透過係数は、1.28×10−9cm−1cmHg−1未満であることが確認され、高ガスバリア性能を示すことが分かった。この膜のカップ法により測定された水蒸気透過度(JIS Z0208−1976)は0.6グラム/m/dayであった。
【実施例7】
【0088】
(1)繊維強化変性粘土薄膜の製造
変性粘土として、天然ベントナイトにジメチルステアリルベンジルタイプの第四級アンモニウムイオン、及びシリル化剤としてトリメチルシランを導入した市販品(ホージュン株式会社製)を用いた。14グラムの前記変性粘土を、440cmのトルエンに加え、プラスチック製密封容器に、テフロン(登録商標)回転子とともに入れ、25℃で2時間激しく振とうし、均一な分散液を得た。この分散液を二等分し、それぞれ添加物として、市販のエポキシ系接着剤 (コニシ株式会社製)のエポキシ樹脂(A剤)及び変性ポリアミド(B剤)を、3グラムずつ加え、激しく振とうし、均一な分散液を得た。次に二つの分散液を混合し、更に25℃で20分間激しく振とうし、均一な粘土ペーストを得た。
【0089】
次に、真空脱泡装置により、この粘土ペーストの脱気を行った。次いで、この粘土ペーストを、厚さ0.1mmのテフロン(登録商標)フィルムを貼り付けた金属板に塗布した。このときテフロン(登録商標)フィルム上に、細いガラス繊維でできた不織布を置き、不織布を塗りこめるように粘土ペーストを塗布した。不織布の厚みは約25マイクロメートルである。塗布には、ステンレス製地べらを用いた。高さ3ミリメートルのスペーサーをガイドとして利用し、均一厚の粘土ペースト膜を成型した。このトレイを室温で自然乾燥することにより、厚さ約45マイクロメートルの均一な変性粘土薄膜を得た。一昼夜静置後生成した変性粘土膜をトレイから剥離して、自立した、フレキシビリティーに優れた膜(FRWR30−45)を得た。
【0090】
(2)繊維強化変性粘土膜の特性
FRWR30−45を一時間蒸留水に浸漬した。この処理の後、肉眼でピンホール・クラックの発生などの異常は観察されなかった。マンドレル型屈曲試験機を用い柔軟性を測定した(ISO1519)。その結果、FRWR30−45を、半径6ミリメートルに曲げても、クラックなど何の欠陥も生じなかった。この膜の引っ張り強度を測定したところ、破断強さは68MPaであった。
【実施例8】
【0091】
(1)変性粘土薄膜の製造
変性粘土として、天然ベントナイトにジメチルステアリルベンジルタイプの第四級アンモニウムイオン、及びシリル化剤としてトリメチルシランを導入した市販品(ホージュン株式会社製)を用いた。14グラムの前記変性粘土を、440cmのトルエンに加え、プラスチック製密封容器に、テフロン(登録商標)回転子とともに入れ、25℃で2時間激しく振とうし、均一な分散液を得た。この分散液を二等分し、それぞれ添加物として、市販のエポキシ系接着剤(コニシ株式会社製)のエポキシ樹脂(A剤)及び変性ポリアミド(B剤)を、3グラムずつ加え、激しく振とうし、均一な分散液を得た。次に、二つの分散液を混合し、更に、25℃で20分間激しく振とうし、均一な粘土ペーストを得た。
【0092】
次に、真空脱泡装置により、この粘土ペーストの脱気を行った。次いで、この粘土ペーストを、水平に保った厚さ10マイクロメートルのアルミホイルに塗布した。塗布には、ステンレス製地べらを用いた。高さ3ミリメートルのスペーサーをガイドとして利用し、均一厚の粘土ペースト膜を成型した。このトレイを室温で自然乾燥することにより、アルミホイル上に厚さ約45マイクロメートルの均一な変性粘土塗膜を得た。塗膜後のアルミホイルは表裏に通電しないことが確認され、膜は電気絶縁層として機能することが分かった。
【実施例9】
【0093】
(1)変性処理をしていない粘土薄膜の製造
粘土として、2.765グラムの天然モンモリロナイト(クニピア P、クニミネ工業株式会社製)と0.691グラムの合成雲母(ソマシフME−100、コープケミカル株式会社製)とを、100cmの蒸留水に加え、プラスチック製密封容器に、テフロン(登録商標)回転子とともに入れ、25℃で2時間激しく振とうし、均一な分散液を得た。この分散液に、添加物として、イプシロンカプロラクタム(和光純薬工業株式会社製)を0.144グラム加え、激しく振とうし、天然モンモリロナイト及びイプシロンカプロラクタムを含む均一な分散液を得た。これを徐々に乾燥させ、粘土ペーストを得た。次に、真空脱泡装置により、この粘土ペーストの脱気を行った。次に、この粘土ペーストを、真鍮製トレイに塗布した。塗布には、ステンレス製地べらを用いた。スペーサーをガイドとして利用し、均一厚の粘土ペースト膜を成型した。ここで、ペーストの厚みを2ミリメートルとした。このトレイを強制送風式オーブン中において、60℃の温度条件下で1時間乾燥することにより、厚さ約40マイクロメートルの均一な添加物複合粘土膜を得た。
【0094】
(2)多層膜の製造
変性粘土として、天然ベントナイトにジメチルステアリルベンジルタイプの第四級アンモニウムイオン、及びシリル化剤としてトリメチルシランを導入した市販品(ホージュン株式会社製)を用いた。14グラムの前記変性粘土を、440cmのトルエンに加え、プラスチック製密封容器に、テフロン(登録商標)回転子とともに入れ、25℃で2時間激しく振とうし、均一な分散液を得た。この分散液を二等分し、それぞれ添加物として、市販のエポキシ系接着剤(コニシ株式会社製)のエポキシ樹脂(A剤)及び変性ポリアミド(B剤)を、3グラムずつ加え、激しく振とうし、均一な分散液を得た。次に、二つの分散液を混合し、更に、25℃で20分間激しく振とうし、均一な粘土ペーストを得た。次に、真空脱泡装置により、この粘土ペーストの脱気を行った。次いで、この粘土ペーストを、添加物複合粘土膜Aに塗布した。塗布には、ステンレス製地べらを用いた。高さ2ミリメートルのスペーサーをガイドとして利用し、均一厚の粘土ペースト膜を成型した。このトレイを室温で自然乾燥することにより、添加物複合粘土膜上に厚さ約30マイクロメートルの均一な変性粘土薄膜が塗布されたトータルの厚み約70マイクロメートルの多層膜DL(HW)を得た。
【0095】
(3)多層膜の特性
DL(HW)の酸素の透過係数を、日本分光株式会社製Gasperm−100で測定した。その結果、室温における酸素ガスの透過係数は、1.28×10−9cm−1cmHg−1未満であることが確認され、高ガスバリア性能を示すことが分かった。マンドレル型屈曲試験機を用い柔軟性を測定した(ISO1519)。その結果、DL(HW)を、半径2ミリメートルに曲げても、クラックなど何の欠陥も生じなかった。
【実施例10】
【0096】
(1)変性粘土薄膜の製造
変性粘土として、天然ベントナイトにジメチルステアリルベンジルタイプの第四級アンモニウムイオン、及びシリル化剤としてトリメチルシランを導入した市販品(ホージュン株式会社製)を用いた。14グラムの前記変性粘土を、440cmのトルエンに加え、プラスチック製密封容器に、テフロン(登録商標)回転子とともに入れ、25℃で2時間激しく振とうし、均一な分散液を得た。この分散液を二等分し、それぞれ添加物として、市販のエポキシ系接着剤(コニシ株式会社製)のエポキシ樹脂(A剤)及び変性ポリアミド(B剤)を、3グラムずつ加え、激しく振とうし、均一な分散液を得た。次に、二つの分散液を混合し、更に、25℃で20分間激しく振とうし、均一な粘土ペーストを得た。次に、真空脱泡装置により、この粘土ペーストの脱気を行った(粘土ペーストC)。次いで、この粘土ペーストCを、厚さ0.1mmのテフロン(登録商標)フィルムを貼り付けた金属板に塗布した。塗布には、ステンレス製地べらを用いた。高さ2ミリメートルのスペーサーをガイドとして利用し、均一厚の粘土ペースト膜を成型した。このトレイを室温で自然乾燥することにより、厚さ約30マイクロメートルの均一な変性粘土薄膜を得た。
【0097】
(2)二層膜の製造
粘土として、2.765グラムの天然モンモリロナイト(クニピア P、クニミネ工業株式会社製)と0.691グラムの合成雲母(ソマシフME−100、コープケミカル株式会社製)とを、100cmの蒸留水に加え、プラスチック製密封容器に、テフロン(登録商標)回転子とともに入れ、25℃で2時間激しく振とうし、均一な分散液を得た。この分散液に、添加物として、イプシロンカプロラクタム(和光純薬工業株式会社製)を0.144グラム加え、激しく振とうし、天然モンモリロナイト及びイプシロンカプロラクタムを含む均一な分散液を得た。これを徐々に乾燥させ、粘土ペーストを得た。次に、真空脱泡装置により、この粘土ペーストの脱気を行った。次に、この粘土ペーストを、変性粘土薄膜に塗布した。塗布には、ステンレス製地べらを用いた。スペーサーをガイドとして利用し、均一厚の粘土ペースト膜を成型した。ここで、ペーストの厚みを2ミリメートルとした。このトレイを強制送風式オーブン中において、60℃の温度条件下で1時間乾燥することにより、厚さ約40マイクロメートルのトータルの厚み約70マイクロメートルの均一な二層膜を得た。
【0098】
(3)三層膜の製造
粘土ペーストCを、二層膜上に塗布した。塗布には、ステンレス製地べらを用いた。高さ2ミリメートルのスペーサーをガイドとして利用し、均一厚の粘土ペースト膜を成型した。この膜を室温で自然乾燥することにより、厚さ約30マイクロメートルの均一な変性粘土薄膜を含む、トータルの厚み約100マイクロメートルの三層膜TL(WHW)を得た。
【0099】
(4)変性粘土多層膜の特性
TL(WHW)の酸素の透過係数を、日本分光株式会社製Gasperm−100で測定した。その結果、室温における酸素ガスの透過係数は、1.28×10−9cm−1cmHg−1未満であることが確認され、高ガスバリア性能を示すことが分かった。この膜のカップ法により測定された水蒸気透過度(JIS Z0208−1976)は4.9グラム/m/dayであった。マンドレル型屈曲試験機を用い柔軟性を測定した(ISO1519)。その結果、TL(WHW)を、半径2ミリメートルに曲げても、クラックなど何の欠陥も生じなかった。TL(WHW)のJIS K7105に基づく全光線透過率は38.3パーセントであり、ヘーズ(曇価)は92.1パーセントであった。
【実施例11】
【0100】
(1)変性粘土薄膜の製造
オーブンで110℃以上の温度で十分乾燥させたクニミネ工業株式会社製精製ベントナイトクニピアFを300グラム、アルミナボールとともにボールミル用ポットに入れた。次に、シリル化剤(チッソ株式会社製サイラエースS330)6グラムを加え、ポット内を窒素に置換し、一時間ボールミル処理を行うことにより変性粘土を得た。用いたシリル化剤は末端にアミノ基を持つ。変性粘土24グラムを0.5規定の硝酸リチウム水溶液400ミリリットルに加え、振とうにより混合分散させた。2時間振とう分散し、粘土の層間イオンリチウムに交換した。次に、遠心分離により固液分離し、得られた固体を280グラムの蒸留水と120グラムのエタノールの混合液で洗浄し、過剰の塩分を除いた。この洗浄操作は二回以上繰り返した。得られた生成物をオーブンで十分に乾燥後、粉砕してリチウム交換変性粘土を得た。リチウム交換変性粘土15グラムを蒸留水485グラムに加え、振とうにより2時間程度混合分散させ、固液比3パーセントのリチウム交換変性粘土分散液を得た。一方、ポリイミド原料として、和光純薬工業株式会社製1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物及び株式会社同仁化学研究所製3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジンを用いた。まず、ジメチルアセトアミドを溶媒として用い、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジンを溶解し、30℃で30分攪拌した。これに1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物を混合し、30℃で一時間攪拌し、固液比約16パーセントのポリイミド酸ペーストを作製した。次に、リチウム交換変性粘土分散液とポリイミド酸ペーストを混合し、この混合ペースト得た。ここで、混合比は、乾燥固体基準で、ポリイミド酸が約20重量パーセント、リチウム交換変性粘土が約80重量パーセントとするように決定した。次に、真空脱泡装置により、この混合ペーストの脱気を行った。次に、この混合ペーストを、フッ素樹脂コーティングした金属製基板に塗布した。塗布には、ステンレス製地べらを用いた。スペーサーをガイドとして利用し、均一厚の混合ペースト膜を成型した。ここで、混合ペーストの厚みを1ミリメートルとした。次に、混合ペーストを室温条件下で4日乾燥し、ポリイミド酸リチウム交換変性粘土複合膜を得た。この混合膜を金属製基板から剥離し、加熱炉内で加熱処理した。この加熱処理において、300℃まで100℃/時間で昇温し、その後、300℃で二時間保持した。この加熱処理によって、厚み約20マイクロメートルのポリイミドリチウム交換変性粘土複合膜を得た。
【0101】
(2)変性粘土膜の特性
マンドレル型屈曲試験機を用い柔軟性を測定した(ISO1519)。その結果、この膜を、半径2ミリメートルに曲げても、クラックなど何の欠陥も生じなかった。膜の1MHzにおける誘電率、誘電正接は、それぞれ4.32と0.071であった。膜の体積抵抗率は2.87×1011Ωcmであった。膜の絶縁破壊電圧は14kVmm−1であった。
【実施例12】
【0102】
(1)変性粘土薄膜の製造
実施例11と同様に、リチウム交換変性粘土分散液を得た。次に、真空脱泡装置により、この分散液の脱気を行った。次に、分散液を、金属製基板に塗布した。塗布には、ステンレス製地べらを用いた。スペーサーをガイドとして利用し、均一厚の分散液膜を成型した。ここで、分散液膜の厚みを2ミリメートルとした。次に、分散液膜を強制対流式オーブン内で60℃で一晩乾燥し、金属製基板から剥離し、加熱炉内で加熱処理した。この加熱処理において、350℃まで100℃/時間で昇温し、その後、350℃で二時間保持した。この加熱処理によって、厚み約60マイクロメートルのリチウム交換変性粘土膜を得た。
【0103】
(2)変性粘土膜の特性
マンドレル型屈曲試験機を用い、柔軟性を測定した(ISO1519)。その結果、この膜を、直径6ミリメートルに曲げても、クラックなど何の欠陥も生じなかった。膜の1MHzにおける誘電率は5.54であった。膜の体積抵抗率は3.2×1011Ωcmであった。熱重量測定装置を用いて測定した5パーセント減量温度は760℃であった。膜平面と平行方向における50℃から250℃の平均熱線膨張係数は5.1ppm以下であった。JIS K6258−1993に基づく、蒸留水、塩水(10wt%NaCl)、アルカリ(1wt%NaOH)、トルエン、アセトン、酢酸エチル、エタノールに対する耐薬品試験結果(40℃、72時間浸漬の重量変化)として、それぞれ28パーセント、21パーセント、評価不能、0パーセント、37パーセント、18パーセント、26パーセントであった。
【実施例13】
【0104】
(1)変性粘土複合膜の製造
実施例11と同様に、リチウム交換変性粘土を得た。この変性粘土重量部1に対して、重量部9の蒸留水を添加し、混合して練ることにより、プレゲルを調製した。更に、このプレゲルに、変性粘土重量部1に対して重量部16のエタノールを添加し、変性粘土ペーストを調製した。次に、添加物である、ナガセケムテックス株式会社製トレジンFS350(固液比18.2重量パーセント)を加え、2時間攪拌溶解し、混合ペースト得た。ここで、混合比は、乾燥固体基準で、添加物が約20重量パーセント、リチウム交換変性粘土が約80重量パーセントとするように決定した。次に、真空脱泡装置により、この混合ペーストの脱気を行った。次に、混合ペーストを、金属製基板に塗布した。塗布には、ステンレス製地べらを用いた。スペーサーをガイドとして利用し、均一厚のペーストを塗布した。ここで、ペーストの厚みを2ミリメートルとした。次に、ペーストを強制対流式オーブン内で60℃で一晩乾燥し、金属製基板から剥離し、加熱炉内で加熱処理した。この加熱処理において、300℃まで100℃/時間で昇温し、その後、300℃で二時間保持した。この加熱処理によって、厚み約30マイクロメートルのリチウム交換変性粘土複合膜を得た。
【0105】
(2)変性粘土複合膜の特性
マンドレル型屈曲試験機を用い、柔軟性を測定した(ISO1519)。その結果、この膜を、直径5ミリメートルに曲げても、クラックなど何の欠陥も生じなかった。膜の1MHzにおける誘電率は3.78であった。膜の体積抵抗率は1.9×1016Ωcmであった。この膜のカップ法により測定された水蒸気透過度(JIS Z0208−1976)は2.4グラム/m/dayであった。熱重量測定装置を用いて測定した5パーセント減量温度は393℃であった。 膜平面と平行方向における50℃から250℃の平均熱線膨張係数は6.5ppm以下であった。JIS K6258−1993に基づく、蒸留水、塩水(10wt%NaCl)、アルカリ(1wt%NaOH)、トルエン、アセトン、酢酸エチル、エタノールに対する耐薬品試験結果(40℃、72時間浸漬の重量変化)として、それぞれ26パーセント、17パーセント、評価不能、−1パーセント、1パーセント、0パーセント、1パーセントであった。
【実施例14】
【0106】
(1)変性粘土複合膜の製造
実施例11の通りリチウム交換変性粘土を得た。この変性粘土重量部1に対して、重量部9の蒸留水を添加し、混合して練ることにより、プレゲルを調製した。更に、このプレゲルに、変性粘土重量部1に対して重量部22のジメチルアセトアミドを添加し、変性粘土ペーストを調製した。この変性粘土ペーストに添加物として、リグニン由来エポキシ樹脂を加え、2時間攪拌溶解し、混合ペースト得た。ここで、混合比は、乾燥固体基準で、添加物が約20重量パーセント、リチウム交換変性粘土が約80重量パーセントとするように決定した。次に、真空脱泡装置により、この混合ペーストの脱気を行った。次に、混合ペーストを、金属製基板に塗布した。塗布には、ステンレス製地べらを用いた。スペーサーをガイドとして利用し、均一厚のペーストを塗布した。ここで、ペーストの厚みを1ミリメートルとした。次に、ペーストを強制対流式オーブン内で60℃で一晩乾燥し、金属製基板から剥離し、加熱炉内で加熱処理した。この加熱処理において、150℃まで100℃/時間で昇温し、150℃で2時間保持した。次に、230℃まで100℃/時間で昇温し、その後、230℃で24時間保持した。この加熱処理によって、厚み約20マイクロメートルのリチウム交換変性粘土複合膜を得た。
【0107】
(2)変性粘土複合膜の特性
マンドレル型屈曲試験機を用い柔軟性を測定した(ISO1519)。その結果、この膜を、直径2ミリメートルに曲げても、クラックなど何の欠陥も生じなかった。膜の1MHzにおける誘電率は9.1であった。膜の体積抵抗率は2.4×1015Ωcmであった。この膜のカップ法により測定された水蒸気透過度(JIS Z0208−1976)は2.0グラム/m/dayであった。熱重量測定装置を用いて測定した5パーセント減量温度は334℃であった。 膜平面と平行方向における50℃から250℃の平均熱線膨張係数は9.0ppm以下であった。JIS K6258−1993に基づく、蒸留水、塩水(10wt%NaCl)、アルカリ(1wt%NaOH)、トルエン、アセトン、酢酸エチル、エタノールに対する耐薬品試験結果(40℃、72時間浸漬の重量変化)として、それぞれ13パーセント、13パーセント、評価不能、1パーセント、7パーセント、0パーセント、0パーセントであった。
【実施例15】
【0108】
オーブンで110℃以上の温度で十分乾燥させたクニミネ工業株式会社製精製ベントナイトクニピアFを300グラム、アルミナボールとともにボールミル用ポットに入れた。次に、シリル化剤(チッソ株式会社製サイラエースS330)6グラムを加え、ポット内を窒素に置換し、一時間ボールミル処理を行うことにより変性粘土を得た。用いたシリル化剤は末端にアミノ基を持つ。これを変性粘土Aとする。一方、オーブンで110℃以上の温度で十分乾燥させたクニミネ工業株式会社製精製ベントナイトクニピアFを300グラム、アルミナボールとともにボールミル用ポットに入れた。次に、シリル化剤(チッソ株式会社製サイラエースS510)6グラムを加え、ポット内を窒素に置換し、一時間ボールミル処理を行うことにより変性粘土Bを得た。用いたシリル化剤は末端にエポキシ基を持つ。等重量の変性粘土Aと変性粘土Bをよく混合し、蒸留水に加え、振とうにより2時間程度混合分散させ、固液比約3パーセントの変性粘土混合分散液を得た。次に、真空脱泡装置により、この変性粘土混合分散液の脱気を行った。次に、変性粘土混合分散液を、金属製基板に塗布した。塗布には、ステンレス製地べらを用いた。スペーサーをガイドとして利用し、均一厚のペーストを塗布した。ここで、分散液の厚みを5ミリメートルとした。次に、分散液を強制対流式オーブン内で60℃で三日乾燥し、金属製基板から剥離し、変性粘土混合自立膜を得た。この処理によって、リチウム交換変性粘土A及び変性粘土Bの間に化学結合を形成し、最終的に厚み約90マイクロメートルの変性粘土自立膜を得た。
【産業上の利用可能性】
【0109】
以上詳述したように、本発明は、変性粘土を主要構成成分とする膜であることを特徴とする膜材であり、自立膜として利用可能な機械的強度を有し、変性粘土粒子の配向積層を高度に向上させた膜材に係るものであり、本発明の変性粘土膜は、自立膜として用いることが可能であり、また、150℃を超える高温条件下で使用が可能であり、かつ、耐水性に優れ、フレキシビリティーに優れており、更に、ガスバリア性、水蒸気バリア性に優れ、他素材フィルムとの積層フィルムとすることが可能であり、他素材の表面保護膜として使用できるといった特徴を有するものである。更に、本発明の変性粘土膜は、イオン伝導性を有するものである。
【0110】
したがって、本発明の変性粘土膜は、生産あるいは加工時の高温条件に耐える部材であり、フレキシビリティーに優れた膜材料として広範に使用することができる。また、本発明の変性粘土膜は、高温条件下において、フレキシビリティーに優れた膜材料として広範に使用することがでる。更に、本発明の変性粘土膜は、高いガスバリア性、水蒸気バリア性が要求される膜材料として広範に使用することができる。更に、本発明の変性粘土膜は、積層フィルムの構成層の一つとして広範に使用することが可能である。更に、本発明の変性粘土膜は他素材の表面保護膜として広範に使用することができる。更に、本発明の変性粘土膜は、イオン導電性膜として広範に使用することができる。
【0111】
そのため、本発明の変性粘土膜は、多くの製品に利用することができる。製品例としては、例えば、LCD用基板フィルム、有機EL用基板フィルム、電子ペーパー用基板フィルム、電子デバイス用封止フィルム、PDP用フィルム、LED用フィルム、光通信用部材、各種機能性フィルムの基板フィルム、ICタグ用フィルム、その他電子機器用フレキシブルフィルム、燃料電池用封止フィルム、太陽電池用フィルム、食品包装用フィルム、飲料包装用フィルム、医薬品包装用フィルム、日用品包装用フィルム、工業製品包装用フィルム、その他各種製品包装用フィルム、二酸化炭素及び水素を含むガス種に対するガスバリアシールテープ、多層包装フィルム、抗酸化皮膜、耐食性皮膜、耐候性皮膜、不燃性皮膜、耐熱性皮膜、耐薬品性皮膜、燃料電池隔膜等があげられる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の、変性粘土及びエポキシ樹脂を用いて調製した複合変性粘土薄膜のX線回折チャートを示す図である。用いたエポキシ樹脂の全固体に対する重量割合は、WR30−60が30パーセント、WR0−40が0パーセントである。
【図2】本発明の、変性粘土及びエポキシ樹脂を用いて調製した複合変性粘土薄膜のTG−DTAチャートを示す図である。用いたエポキシ樹脂の全固体に対する重量割合は、WR30−60が30パーセント、WR0−40が0パーセントである。
【図3】本発明の、変性粘土及びエポキシ樹脂を用いて調製した複合変性粘土薄膜WR30−60の走査電子顕微鏡を示す図である。倍率は5000倍である。用いたエポキシ樹脂の全固体に対する重量割合は、30パーセントである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性粘土を主要構成成分とする材料であって、(1)変性粘土と添加物から構成される、(2)変性粘土の全固体に対する重量比が70%以上である、(3)ガスバリア性を有する、及び(4)自立膜として利用可能な機械的強度を有する、ことを特徴とする膜。
【請求項2】
変性粘土が、天然粘土あるいは合成粘土を用いたものである、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
変性粘土に用いられる粘土が、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、マガディアイト、アイラライト、カネマイト、イライト、セリサイトのうちの一種以上である、請求項1に記載の膜。
【請求項4】
変性粘土が有機カチオンとして第四級アンモニウムカチオンあるいは第四級ホスホニウムカチオンを含む、請求項1に記載の膜。
【請求項5】
変性粘土における有機カチオン組成が、30重量パーセント未満である、請求項4に記載の膜。
【請求項6】
塩素濃度が、150ppm未満である、請求項4に記載の膜。
【請求項7】
変性粘土が、粘土にシリル化剤を反応させたものである、請求項1から6のいずれかに記載の膜。
【請求項8】
粘土とシリル化剤に対するシリル化剤の組成が、30重量パーセント未満である、請求項7に記載の膜。
【請求項9】
添加物が、セルロイド、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ユリア樹脂、酢酸セルロース、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン、ポリウレタン樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、不飽和ポリエステル、ケイ素樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリカーボナート、ポリアセタール、ポリイミド、ポリスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタラート、ポリエーテルスルホン、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミドのうちの1種以上である、請求項1に記載の膜。
【請求項10】
エポキシ樹脂が、リグニン由来、あるいはスクロース由来エポキシである、請求項9に記載の膜。
【請求項11】
変性粘土の交換性イオンの少なくとも50パーセントが、リチウムイオンである、請求項1に記載の膜。
【請求項12】
加熱処理により耐水性を向上させた、請求項11に記載の膜。
【請求項13】
シリル化粘土が、エポキシ末端シリル化粘土であり、製膜過程でエポキシ反応させ粘土間に共有結合を形成する、請求項1に記載の膜。
【請求項14】
シリル化粘土A及びシリル化粘土Bを混合し、シリル化粘土Aの末端とシリル化粘土Bの末端を反応させることにより、粘土間に共有結合を形成する、請求項1に記載の膜。
【請求項15】
シリル化粘土Aの末端が、エポキシ基であり、シリル化粘土Bの末端がアミノ基である、請求項14に記載の膜。
【請求項16】
表面処理が行われている、請求項1に記載の膜。
【請求項17】
表面処理が、撥水処理、防水処理、補強処理、及び表面平坦化処理のうちの一種以上である、請求項16に記載の粘土膜。
【請求項18】
表面処理が、酸化ケイ素膜、フッ素系膜、シリコン系膜、ポリシロキサン膜、フッ素含有オルガノポリシロキサン膜、アクリル樹脂膜、塩化ビニル樹脂膜、ポリウレタン樹脂膜、高撥水メッキ膜、金属蒸着膜、又はカーボン蒸着膜を表面に形成することである、請求項16に記載の粘土膜。
【請求項19】
補強材により補強されている、請求項1に記載の膜。
【請求項20】
補強材が、鉱物繊維、グラスウール、炭素繊維、セラミックス繊維、植物繊維、及び有機高分子繊維からなる群のうちの一種以上である、請求項19に記載の粘土膜。
【請求項21】
補強材が、布の形態を有している、請求項19に記載の粘土膜。
【請求項22】
布が、織物、不織布、紙である、請求項21に記載の粘土膜。
【請求項23】
補強材の、全固体に対する重量割合が、多くとも30パーセントである、請求項19に記載の粘土膜。
【請求項24】
加熱、光照射等の任意の方法により、上記添加物分子内、添加物分子間、添加物と無機層状化合物間、無機層状化合物結晶間において、付加反応、縮合反応、又は重合反応の化学反応を行わせ、新たな化学結合を生じさせて、光透過性、ガスバリア性、水蒸気バリア性あるいは機械的強度を改善させた、請求項1に記載の膜。
【請求項25】
厚みが0.003ミリメートル以上、0.3ミリメートル以下である、請求項1に記載の膜。
【請求項26】
酸素ガスに対する透過係数が、室温において2.0×10−9cm−1cmHg−1未満である、請求項1から25のいずれかに記載の膜。
【請求項27】
40℃、相対湿度90パーセントにおける水蒸気透過度が、10gm−2day−1未満である、請求項1から26のいずれかに記載の膜。
【請求項28】
20℃、相対湿度65パーセントにおける吸水率が2パーセント未満である、請求項1から27のいずれかに記載の膜。
【請求項29】
150℃の過熱水に1時間浸漬処理後に膜形状に損傷が視覚的に観察されず、酸素ガスに対する透過係数が、室温において2.0×10−9cm−1cmHg−1未満である、請求項1から28のいずれかに記載の膜。
【請求項30】
膜に対して、垂直方向の体積抵抗率が、少なくとも2.8×1011Ωcmである、請求項1から29のいずれかに記載の膜。
【請求項31】
膜に垂直方向のイオン伝導率が、少なくとも1×10−4Scm−1である、請求項1から30のいずれかに記載の膜。
【請求項32】
曲げ半径8ミリメートルでクラックが発生せず、使用が可能である、請求項1から31のいずれかに記載の膜。
【請求項33】
熱重量測定において5パーセント減量温度が235℃以上760℃以下である、請求項1から32のいずれかに記載の膜。
【請求項34】
膜平面と平行方向における50℃から250℃の平均熱線膨張係数が、5ppm以上10ppm以下である、請求項1から33のいずれかに記載の膜。
【請求項35】
請求項1から34のいずれか1項に記載の膜Aと、請求項1から34のいずれか1項に記載の膜Bを含み、AとBの構成成分が同一ではない多層膜。
【請求項36】
変性処理を行わない粘土を主成分とする膜が含まれる、請求項35に記載の多層膜。
【請求項37】
変性処理を行わない粘土を主成分とする膜が、(1)粘土の全固体に対する重量比が少なくとも70%である、(2)ガスバリア性を有する、請求項36に記載の多層膜。
【請求項38】
変性処理を行わない粘土が、天然あるいは合成粘土である、請求項36に記載の多層膜。
【請求項39】
変性処理を行わない粘土が、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト及びノントロナイトのうちの1種以上である、請求項36に記載の多層膜。
【請求項40】
変性処理を行わない粘土を主成分とする膜の添加剤が、イプシロンカプロラクタム、デキストリン、澱粉、セルロース系樹脂、ゼラチン、寒天、小麦粉、グルテン、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアマイド、ポリエチレンオキサイド、タンパク質、デオキシリボヌクレイン酸、リボヌクレイン酸及びポリアミノ酸、多価フェノール、安息香酸類化合物のうちの1種以上である、請求項36に記載の多層膜。
【請求項41】
添加剤の、全固体に対する重量割合が、多くとも30パーセントである、請求項35に記載の多層膜。
【請求項42】
加熱、光照射等の任意の方法により、上記添加物分子内、添加物分子間、添加物と無機層状化合物間、無機層状化合物結晶間において、付加反応、縮合反応、又は重合反応の化学反応を行わせ、新たな化学結合を生じさせて、光透過性、ガスバリア性、水蒸気バリア性あるいは機械的強度を改善させた、請求項35に記載の多層膜。
【請求項43】
厚みが0.003ミリメートル以上、0.5ミリメートル以下である、請求項35に記載の多層膜。
【請求項44】
酸素ガスに対する透過係数が、室温において2.0×10−9cm−1cmHg−1未満である、請求項35に記載の多層膜。
【請求項45】
40℃、相対湿度90パーセントにおける水蒸気透過度が、6gm−2day−1未満である、請求項33に記載の多層膜。
【請求項46】
請求項1から45のいずれか1項に記載の膜と、金属ホイル、プラスチックフィルム、ゴム、紙の一種以上からなる複合多層膜。
【請求項47】
プラスチックフィルムとして、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルイミドの一種以上を含む、請求項46に記載の複合多層膜。
【請求項48】
請求項1から47のいずれか1項に記載の膜からなることを特徴とする表面保護膜。
【請求項49】
被保護材料が、金属、金属酸化物、セラミックス、プラスチック、プラスチック発泡材、木材、石膏、ゴムである、請求項48に記載の表面保護膜。
【請求項50】
請求項1から49のいずれかに記載の膜からなることを特徴とする封止材、包装材、保護材、断熱材、絶縁材、耐熱材、不燃材、又は燃料電池隔膜。
【請求項51】
請求項1に記載の膜を製造する方法であって、変性粘土のプレゲル溶媒を加え、変性粘土プレゲルを作製し、その後、極性溶媒を加え、その後、添加物を加えることを特徴とする上記膜の製造方法。
【請求項52】
変性粘土のプレゲル溶媒が、水である、請求項51に記載の膜の製造方法。
【請求項53】
極性溶媒が、エタノールあるいはジメチルアセトアミドである、請求項51に記載の膜の製造方法。
【請求項54】
請求項34に記載の膜を製造する方法であって、請求項1から34のいずれか1項に記載の膜の表面に、請求項36から45のいずれか1項に記載の膜を形成させる手順、あるいはその逆である手順を含むことを特徴とする上記膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−277078(P2007−277078A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62688(P2007−62688)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】