説明

変性顔料およびその製造方法

【課題】 有機溶媒に対し高い分散安定性を示す変性顔料、及び、汎用の顔料に適用でき有機溶媒に対し高い分散安定性を示す変性顔料を得る製造方法を提供する。
【解決手段】 顔料(A)表面に、アミノ基と反応しアミド結合を形成する官能基を片末端に有するビニル共重合体(B−1)をポリアミンのアミノ基と反応させた変性ポリアミン(B)と、非水溶媒に可溶でありかつ重合後に不溶もしくは難溶になる少なくとも1種の重合性不飽和単量体(C)を重合することにより得られるポリマー(P)を有することを特徴とする変性顔料、及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料表面にポリマーを有する変性顔料に関し、さらに詳細には、塗料、プラスチック、印刷インキ、ゴム、レザー、捺染、カラーフィルター、ジェットインキ、熱転写インキなどの色材として使用可能な変性顔料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
顔料は一般に不溶性の色材であるため、塗料、印刷インキ、カラーフィルター等の製造やプラスチックの着色において、溶剤や樹脂等の媒体中に顔料粒子を均一に分散させる事が重要な課題になっている。
顔料の分散性は顔料粒子の表面の性質に大きく依存することから、様々な表面処理による分散性の向上が試みられている。これらの処理方法としては、ロジン処理やカチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等の各種界面活性剤処理、顔料誘導体処理、ポリマー処理がある。
【0003】
これらの処理方法のうち、顔料表面にポリマーをコートさせることで分散性の向上を図るポリマー処理法には、in−situ重合法、相分離(コアセルベーション)法、液中乾燥法等がある。
その中で、溶媒として水を使用しないin−situ重合法としては、例えば特許文献1〜6に記載されている。これらはいずれも、誘電率1.5〜20および表面張力15〜60mN/mの非水溶媒中でin−situ重合法を行っている。しかし該文献に記載の方法はいずれも、表面処理された顔料を使用し、特定の分散安定剤で顔料を安定に分散させる事が必須条件であるため、汎用的ではない。
【0004】
一方、本発明者らは、顔料表面に、非水溶媒に可溶な重合性不飽和基を含有するポリマーと非水溶媒に可溶でありかつ重合後に不溶もしくは難溶になる少なくとも1種の重合性不飽和単量体とを重合することにより得られるポリマーを有することを特徴とする顔料が、分散性に優れることを既に見出している(特許文献7参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−2501号公報
【特許文献2】特開2004−18736号公報
【特許文献3】特開2004−35592号公報
【特許文献4】特開2004−083660号公報
【特許文献5】特開2004−107523号公報
【特許文献6】特開2004−107524号公報
【特許文献7】特開2008−88211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、有機溶媒に対し高い分散安定性を示す変性顔料、及び、汎用の顔料に適用でき有機溶媒に対し高い分散安定性を示す変性顔料を得る製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、顔料(A)表面に、変性ポリアミン(B)と、非水溶媒に可溶でありかつ重合後に不溶もしくは難溶になる少なくとも1種の重合性不飽和単量体(C)を重合することにより得られるポリマー(P)を有することを特徴とする変性顔料が、高い顔料分散性を示す事を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、顔料(A)表面に、アミノ基と反応しアミド結合を形成する官能基を片末端に有するビニル共重合体(B−1)をポリアミンのアミノ基と反応させた変性ポリアミン(B)と、非水溶媒に可溶でありかつ重合後に不溶もしくは難溶になる少なくとも1種の重合性不飽和単量体(C)を重合することにより得られるポリマー(P)を有する変性顔料を提供する。
【0009】
また、本発明は、顔料(A)と、ポリアミンのアミノ基と、アミノ基と反応しアミド結合を形成する官能基を片末端に有するビニル共重合体(B−1)とを反応させてなる変性ポリアミン(B)の存在下で、非水溶媒に可溶でありかつ重合後に不溶もしくは難溶になる少なくとも1種の重合性不飽和単量体(C)を重合させる変性顔料の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の変性顔料は有機溶媒に対し高い分散安定性を示すので、塗料、プラスチック、印刷インキ、ゴム、レザー、捺染、カラーフィルター、ジェットインキ、熱転写インキなどの有機溶剤を溶媒としたときの色材として非常に有用である。
また、本発明の変性顔料の製造方法は、未処理顔料、処理顔料、有機無機問わず、汎用の顔料に適用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(顔料(A))
本発明で使用する顔料(A)は、公知慣用の有機顔料あるいは無機顔料の中から選ばれる少なくとも一種の顔料である。また、本発明は未処理顔料、処理顔料のいずれでも適用することができる。
【0012】
有機顔料としては、例えば、ペリレン・ペリノン系化合物顔料、キナクリドン系化合物顔料、フタロシアニン系化合物顔料、アントラキノン系化合物顔料、フタロン系化合物顔料、ジオキサジン系化合物顔料、イソインドリノン系化合物顔料、メチン・アゾメチン系化合物顔料、ジケトピロロピロール系化合物顔料、不溶性アゾ系化合物顔料、縮合アゾ系化合物顔料等が挙げられる。有機顔料の具体例を挙げると、例えば次の通りである。
ペリレン・ペリノン系化合物顔料としては、例えばC.I.PigmentViolet 29、C.I.Pigment Red 123、同149、同178、同179、C.I.Pigment Black 31、同32、C.I.Pigment Orange 43等の顔料が挙げられる。
キナクリドン系化合物顔料としては、例えばC.I.Pigment Violet 19、同42、C.I.Pigment Red 122、同202、同206、同207、同209、C.I.Pigment Orange 48、同49等の顔料が挙げられる。
フタロシアニン系化合物顔料としては、例えばC.I.Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、C.I.Pigment Green 7、同36、同58等の顔料が挙げられる。
アントラキノン系化合物顔料としては、例えばC.I.Pigment Blue 60、C.I.Pigment Yellow 24、同108、C.I.Pigment Red 168、同177、C.I.Pigment Orange 40等の顔料が挙げられる。
フタロン系化合物顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 138等の顔料が挙げられる。
ジオキサジン系化合物顔料としては、例えばC.I.Pigment Violet 23、同37等の顔料が挙げられる。
イソインドリノン系化合物顔料としては、例えばC.I.Pigment Yellow 109、同110、同173、C.I.Pigment Orange 61等の顔料が挙げられる。
メチン・アゾメチン系化合物顔料としては、例えばC.I.PigmentYellow 139、同185、C.I.Pigment Orange 66、C.I.Pigment Brown 38等の顔料が挙げられる。
ジケトピロロピロール系化合物顔料としては、例えばC.I.PigmentRed 254、同255等の顔料がある。
不溶性アゾ系化合物顔料としては、例えば C.I.Pigment Yellow 1、同3、同12、同13、同14、同17、同55、同73、同74、同81、同83、同97、同130、同151、同152、同154、同156、同165、同166、同167、同170、同171、同172、同174、同175、同176、同180、同181、同188、C.I.Pigment Orange 16、同36、同60、C.I.Pigment Red5、同22、同31、同112、同146、同150、同171、同175、同176、同183、同185、同208、同213、C.I.PigmentViolet 43、同44、C.I.Pigment Blue 25、同26等の顔料が挙げられる。
溶性アゾ系化合物顔料としては、例えばC.I.Pigment Red 53:1、同57:1、同48等の顔料がある。
縮合アゾ系化合物顔料としては、例えば C.I.Pigment Yellow 93、同94、同95、同128、同166、C.I.PigmentOrange 31C.I.Pigment Red 144、同166、同214、同220、同221、同242、同248、同262、C.I.Pigment Brown 41、同42等の顔料がある。
【0013】
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、硫化亜鉛、鉛白、亜鉛華、リトボン、アンチモンホワイト、塩基性硫酸鉛、塩基性ケイ酸鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、シリカ、カーボンブラック、鉄黒、コバルトバイオレット、バーミリオン、モリブデンオレンジ、鉛丹、ベンガラ、黄鉛、カドミウムイエロー、ジンククロメート、イエローオーカー、酸化クロム、群青、紺青、コバルトブルー等が挙げられる。
【0014】
本発明においては特に有機顔料であると、本発明の効果をより発揮することができ好ましく、前記キナクリドン系化合物顔料、前記フタロシアニン系化合物顔料、前記不溶性アゾ系化合物顔料、前記縮合アゾ系化合物顔料、ジケトピロロピロール系化合物顔料、ジオキサジン系化合物顔料を使用することが特に好ましい。
【0015】
(非水溶媒)
本発明で使用する非水溶媒は、脂肪族および/または脂環式炭化水素系溶剤を必須とする有機溶剤である。脂肪族および/または脂環式炭化水素系溶剤としては、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シェルケミカルズ社製品の「ロウス」もしくは「ミネラルスプリットEC」、エクソンモービルケミカル社製品の「アイソパーC」、「アイソパーE」、「アイソパーG」、「アイソパーH」、「アイソパーL」、「アイソパーM」、「ナフサ3号」、「ナフサ5号」もしくは「ナフサ6号」、出光石油化学株式会社製品の「ソルベント7号」、「IPソルベント1016」、「IPソルベント1620」、「IPソルベント2028」もしくは「IPソルベント2835」、株式会社ジャパンエナジー製品の「ホワイトゾール」等が挙げられる。
【0016】
また、本発明の効果を損なわない範囲において、他の有機溶剤を混合して使用してもよい。このような有機溶剤としては、具体的には例えば、丸善石油株式会社製品の「スワゾール100ないしは150」、トルエンもしくはキシレンの等の芳香族炭化水素系溶剤類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−ブチルもしくは酢酸アミルの等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンもしくはシクロヘキサノンの等のケトン類;またはメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノールもしくはn−ブタノールの等のアルコール類が挙げられる。
混合して使用する際には、前記脂肪族および/または脂環式炭化水素系溶剤の使用量を、50質量%以上とすることが好ましく、より好ましくは60質量%以上である。
【0017】
(変性ポリアミン(B))
本発明で使用する変性ポリアミン(B)は、アミノ基と反応しアミド結合を形成する官能基を片末端に有するビニル共重合体(B−1)(以下、「アミノ基と反応しアミド結合を形成する官能基を片末端に有するビニル共重合体(B−1)」を単にビニル共重合体(B−1)と称す。)をポリアミンのアミノ基と反応させた変性ポリアミン(B)である。ポリアミンは一般に顔料への吸着性が高いことが知られており、本発明の変性ポリアミン(B)は疎水性溶媒中での顔料の分散安定性を高める。その結果後述する重合性不飽和単量体(C)を顔料表面で重合させて得られる変性顔料(D)の分散粒子径がより細かくなるため好ましいと考えられる。
【0018】
(ポリアミン)
本発明で使用するポリアミンとは、1級あるいは2級アミノ基を有する繰り返し単位を有するポリマーのことである。このようなポリアミンとしては、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン及びポリエチレンイミンからなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。また、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、あるいはポリエチレンイミンと、他の重合性単量体との共重合体であってもよい。
ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、あるいはポリエチレンイミンと他の重合性単量体の共重合体を用いる場合、本発明のポリアミンのアミン価は50以上のものが好ましく、300以上のものがより好ましい。アミン価が50未満のものは、顔料に対する吸着力が不足して得られる変性顔料の分散性が低下する恐れがある。これらのポリアミン類は、一種類のみを用いても良いし、複数を混合して用いても良い。この中でも、工業的に入手が容易であるという観点から、ポリアリルアミンあるいは、ポリエチレンイミンが好ましく、その中でも、最も好ましいものとして、ポリアリルアミンが挙げられる。この理由としては、ポリエチレンイミンが一般に分岐状のポリマー構造をしているのに対して、ポリアリルアミンは直鎖状のポリマー構造をしているため、アミンの顔料へのアンカー効果が高いためと考えている。
本発明におけるポリアミンの数平均分子量は、好ましくは150〜100,000であり、より好ましくは600〜20,000である。本発明で用いるポリアミンの数平均分子量が150未満であると、顔料に対する吸着力が不足して顔料分散が困難となるおそれがあり、一方100,000を越える量ではビニル重合体との反応時に粘度の上昇やゲル化を起こすことがある上、ポリマーの分子量が大きくなりすぎ、顔料同士の凝集により分散性が低下するおそれがある。
【0019】
(ポリアリルアミン)
本発明で使用するポリアリルアミンは、アリルアミンを重合開始剤の存在下、場合によっては連鎖移動触媒存在下で公知の方法により重合させて得てもよいし、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、日東紡績株式会社よりPAA−01、PAA−03、PAA−05、PAA−15、PAA−10C等のポリアリルアミンシリーズとして市販されている。
【0020】
(ポリビニルアミン)
本発明で使用するポリビニルアミンは、例えば、N−ビニルホルムアミドを重合開始剤の存在下、場合によっては連鎖移動触媒存在下で公知の方法により重合させた後、加水分解反応を行うといった、公知各種の方法で得ることができる。
【0021】
(ポリエチレンイミン)
本発明で使用するポリエチレンイミンは、エチレンイミンを公知の方法により重合させて得てもよいし、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、日本触媒株式会社よりSP−003、SP−006、SP−012、SP−018、SP−200、P−1000等のポリエチレンイミンシリーズとして市販されている。
【0022】
(ビニル共重合体(B−1))
本発明で使用するビニル共重合体(B−1)において、アミノ基と反応しアミド結合を形成する官能基としては、カルボキシル基、クロロホルミル基などのハロホルミル基、メトキシカルボニル基などのオキシカルボニル基が挙げられる。中でもカルボキシル基がビニル共重合体に容易に導入することができ好ましい。
片末端にカルボキシル基を有するビニル共重合体を得るには、例えば、重合時にカルボキシル基を有する連鎖移動剤を共存させる方法が挙げられる。カルボキシル基を有する連鎖移動剤としては、例えば、メルカプト酢酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸などのチオカルボン酸類が挙げられる。また、4,4’−アゾビス−4−シアノペンタン酸などカルボキシル基を有する重合開始剤を用いて重合性単量体をリビングラジカル重合法により合成する方法によっても得ることができる。
【0023】
ビニル共重合体(B−1)の原料となる重合性単量体は、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルのホモポリマー、または、これらのエステル同士あるいはこれらのエステルと、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のアルケニルベンゼン、さらには酢酸ビニル、ビニルピリジン、アクリルアミド、メタクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ) アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル等とのコポリマーが挙げられる。これらのうち1種または2種以上を使用することができる。
但し、アミノ基と反応しアミド結合を形成する官能基、例えばカルボキシル基と同等あるいはそれ以上にアミノ基との反応性が高い官能基を有する重合性単量体は、使用しないことが好ましい。該重合性単量体を原料に含んだビニル重合体は、該ビニル共重合体の末端だけでなく、共重合体の主鎖にランダムに該官能基がグラフトされるので、ポリアリルアミンとの反応中にゲル化したり、得られる変性顔料の性能が低下するおそれがある。具体的には、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、(メタ) アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸等の重合性単量体は、アミノ基に対して高い反応性をもつ基を有するので、ビニル共重合体(B−1) の原料としては使用しないことが好ましい。
【0024】
ビニル共重合体(B−1) は、上記各種重合性単量体を、重合開始剤の存在下、反応容器中で加熱、必要により熟成することにより得ることが出来る。反応条件としては例えば、重合開始剤及び溶媒によって異なるが、反応温度が30〜150℃ 、好ましくは60〜120℃ である。重合は、非反応性溶剤の存在下で行っても差し支えない。
【0025】
重合開始剤としては、例えばt−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシド、クメンパーヒドロキシド、アセチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等の如き過酸化物; アゾビスイソブチルニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等の如きアゾ化合物などが挙げられる。
【0026】
非反応性溶剤としては、例えばヘキサン、ミネラルスピリット等の如き脂肪族炭化水素系溶剤; ベンゼン、トルエン、キシレン等の如き芳香族炭化水素系溶剤;酢酸ブチル等の如きエステル系溶剤; メタノール、ブタノール等の如きアルコール系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ピリジン等の如き非プロトン性極性溶剤などが挙げられる。これらの溶剤を併用してもよい。これらの溶剤は、得られるビニル共重合体(B−1)が溶解するものを適宜選択して使用することができる。
【0027】
本発明で用いるビニル共重合体(B−1)の分子量は、数平均分子量500〜100,000の範囲であることが好ましく、1000〜20,000の範囲であることがなお好ましい。数平均分子量が500未満では顔料分散剤としての十分な立体反発効果を保持できないことがあり、また100,000を越えるとビニル重合体の粘度の上昇や溶剤溶解性の低下を起こし、いずれも得られる変性顔料の性能が低下する場合がある。
【0028】
また、本発明における変性ポリアミン(B)は、前記ポリアミンに、ビニル共重合体(B−1)と、下記(B−2)〜(B−5)からなる群から選択される一つまたはそれ以上の化合物とを反応させることが好ましい。
【0029】
(b1)アミノ基と反応する官能基を片末端に有するビニル共重合体であって、アミノ基と反応する官能基量、共重合体組成又は共重合体組成比が前記ビニル共重合体(B−1)と異なるビニル共重合体(B−2)。
【0030】
前記ビニル共重合体(B−2)として、ビニル共重合体(B−2−1)が好ましい。ビニル共重合体(B−2−1)は、前記ビニル共重合体(B−1)の片末端にあるアミノ基と反応する官能基の重量%と、前記ビニル共重合体(B−2−1)の片末端にあるアミノ基と反応する官能基の重量%の比率が、0.4〜0.8の範囲であり、且つ前記ビニル共重合体(B−1)とのモル比率(B−1)/(B−2−1)が、(B−1)/(B−2−1)=0.25〜4.0であるように、変性ポリアミンと反応していることが好ましい。(以下ビニル共重合体(B−2−1)と称する)
【0031】
また、前記ビニル共重合体(B−2)として、ビニル共重合体(B−2−2)が好ましい。ビニル共重合体(B−2)は複数のビニルモノマーを重合させてなるビニル共重合体であり、前記ビニル共重合体(B−1)のTgと前記ビニル共重合体(B−2−2)のTgの差が20℃以上あり、且つ、前記ビニル共重合体(B−1)と前記ビニル共重合体(B−2−2)とのモル比率(B−1)/(B−2−2)が、(B−1)/(B−2−2)=0.25〜4.0であるように、変性ポリアミンと反応していることが好ましい。(以下ビニル共重合体(B−2−2)と称する)
【0032】
(b2)ポリアルキレングリコール鎖を有する(メタ)アクリレート(B−3)。(以下(メタ)アクリレート(B−3)と称する)。中でも前記ポリアルキレングリコール鎖を分子全体に対して1〜30重量%の割合で有するように、変性ポリアミンと反応していることが好ましい。
【0033】
(b3)アミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリエステル、アミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリアミド又はアミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリエステルアミド(B−4)(以下ポリマー(B−4)と称する)。中でも前記変性ポリアミンが、これらの残基を分子全体に対して1〜50重量%の割合で有するように、変性ポリアミンと反応していることが好ましい。
【0034】
(b4)モノカルボン酸又は(メタ)アクリレート(B−5)。中でもこれら残基を分子全体に対して1〜30重量%の割合で有するように、変性ポリアミンと反応していることが好ましい。
【0035】
((b1)ビニル共重合体(B−2−1))
前記ビニル共重合体(B−2−1)は、アミノ基と反応する官能基を片末端に有し、且つ前記ビニル共重合体(A)とは異なる共重合体であり、前記ビニル共重合体(B−1)の片末端にあるアミノ基と反応する官能基の重量%と、前記ビニル共重合体(B−2−1)の片末端にあるアミノ基と反応する官能基の重量%の比率が、0.4〜0.8の範囲であり、且つ前記ビニル共重合体(B−1)とのモル比率(B−1)/(B−2−1)が、(B−1)/(B−2−1)=0.25〜4.0であるように、変性ポリアミンと反応していることが好ましい。
具体的にはビニル共重合体(B−2−1)は、カルボキシル基を有するビニル共重合体であって、且つ前記ビニル共重合体(B−1)と分子量が異なる共重合体である。分子量の調整はビニル共重合体の片末端にあるカルボキシル基の含有量によって行い、ビニル共重合体におけるカルボキシル基の重量%は1から10の範囲であるのが好ましく、且つ前記ビニル共重合体(B−1)の片末端にあるカルボキシル基の重量%と、前記ビニル共重合体(B−2−1)の片末端にあるカルボキシル基の重量%の比率が、0.4〜0.8の範囲であるのが好ましい。(但しこのときの前記ビニル共重合体(B−2−1)は前記ビニル共重合体(B−1)に比べて分子量が大きいとする。)
またビニル重合体(B−2−1)残鎖(ここでいうビニル重合体(B−2−1)残鎖とは、カルボキシル基が反応した残りの部分をいう)とビニル共重合体(B−1)残鎖の比率は前記ビニル共重合体(B−1)とのモル比率(B−1)/(B−2−1)が、(B−1)/(B−2−1)=0.25〜4.0であることが好ましい。
【0036】
((b1)ビニル共重合体(B−2−2))
前記ビニル共重合体(B−2−2)は複数のビニルモノマーを重合させてなり、且つ前記ビニル共重合体(B−1)のTgと前記ビニル共重合体(B2)のTgの差が20℃以上であるビニル共重合体である。なおここでTgとはDSC(示差走査熱量測定)または動的粘弾性のtB−1nδピークにより測定される値で定義される。
前述の通り、前記ビニル共重合体(B−1)と前記ビニル共重合体(B−2−2)とのモル比率(B−1)/(B−2−2)が、(B−1)/(B−2−2)=0.25〜4.0であるように、変性ポリアミンと反応していることが好ましい。
具体的には、ビニル共重合体(B−2−2)のTgは100℃から−50℃であるのが好ましく、ビニル共重合体(B−1)のTgによっても異なるが、Tgは60℃から−50℃であるのが特に好ましい。
【0037】
((b2)(メタ)アクリレート(B−3))
前記(メタ)アクリレート(B−3)において、ポリアルキレングリコール鎖を有するとは、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの状態を示す。ポリアルキレングリコールは、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、およびそれらの混合物等であり、中でもポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールが好ましい。
(メタ)アクリレート(B−3)は、前記ポリアルキレングリコール鎖を分子全体に対して1〜30重量%の割合で有するように、変性ポリアミンと反応していることが好ましい。
【0038】
((b3)ポリマー(B−4))
前記ポリマー(B−4)は、具体的には、下記(b3−1)〜(b3−3)のいずれかのポリマーである。
(b3−1)アミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリエステル、
(b3−2)アミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリアミド
(b3−3)アミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリエステルアミド
【0039】
(b3−1)アミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリエステルとは、具体的には末端にカルボキシル基を有するポリエステルである。これは、次のような種々な方法で合成することができる。
(B−1)モノカルボン酸化合物へラクトン化合物を付加させる付加反応、(b)ヒドロキシカルボン酸化合物へラクトン化合物を付加させる付加反応、(c)モノカルボン酸化合物、ヒドロキシカルボン酸化合物およびラクトン化合物の3成分を縮合させる縮合反応、などを挙げることができる。
【0040】
(b3−2)アミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリアミドとは、具体的には末端にカルボキシル基を有するポリアミドである。これは、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタムやアミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸などのアミノカルボン酸を原料にして作成される。
【0041】
(b3−3)アミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリエステルアミドとは具体的には末端にカルボキシル基を有するエステルとアミドの共縮合物である。これは前記のポリエステル及びポリアミドの製造に用いたヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどと、アミノカルボン酸、ラクタムなどを共縮合させることにより作成できる。
【0042】
前記ポリマー(B−4)は、これらの残基を分子全体に対して1〜50重量%の割合で有するように、変性ポリアミンと反応していることが好ましい。ここで残基とは、カルボキシル基が反応した残りのポリマー部分を表す。
【0043】
((b4)モノカルボン酸又は(メタ)アクリレート(B−5))
前記モノカルボン酸は、1分子中に1つのカルボン酸基を有する化合物であれば特に限定はなく、具体的には酢酸、プロピオン酸、カプリル酸、ノナン酸、カプリン酸、オクチル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソノナン酸、アラキン酸などの脂肪族モノカルボン酸、安息香酸、p−ブチル安息香酸などの芳香族モノカルボン酸が挙げられる。
【0044】
また、本発明に使用する(メタ)アクリレートは、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルのホモポリマー、または、これらのエステル同士あるいはこれらのエステルと、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のアルケニルベンゼン、さらには酢酸ビニル、ビニルピリジン、アクリルアミド、メタクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル等とのコポリマーが挙げられる。
前記モノカルボン酸や前記(メタ)アクリレートは、中でもこれら残基を分子全体に対して1〜30重量%の割合で有するように、変性ポリアミンと反応していることが好ましい。ここで残基とは、カルボキシル基が反応した残りのモノカルボン酸又は(メタ)アクリレートを表す。
【0045】
(ポリアミンとビニル共重合体(B−1)との反応)
前記ポリアミンと前記ビニル共重合体(B−1)、あるいは前記ビニル共重合体(B−1)〜化合物(B−5)との混合物との反応は、例えば、窒素ガス気流下、200℃以下で行うことが出来る。反応にはスズ系やチタン系などの公知の重合触媒を使ってもよい。また必要に応じて、反応に関与しないトルエン、キシレン、ソルベッソ等の非反応性溶剤を使用することができる。使用した溶剤は必ずしも除去する必要はない。
【0046】
ポリアミンに対するビニル共重合体(B−1) のグラフト率は、およそ20〜95%の範囲であることが好ましく、30〜90% の範囲であることが、希釈溶剤や造膜樹脂との親和性と、顔料との親和性のバランスに優れており特に好ましい。なおここでグラフト率とは、ポリアミンが有するアミノ基の総量に対するビニル共重合体(B−1) のカルボキシル基の反応量を表すものであり、本発明の変性ポリアミンが有する、アミド結合を介したビニル共重合体(B−1) 残鎖( ここでいうビニル共重合体(B−1) 残鎖とは、カルボキシル基が反応した残りの部分をいう)の% を表す。
【0047】
前記変性ポリアミンが有する前記ビニル共重合体(B−1)残鎖が20%未満であると、顔料同士の凝集が起こりやすく、粘度低下効果の不足やインキ皮膜に影響が生じることがある。また、前記変性ポリアミンが有する前記ビニル共重合体(B−1)残鎖が95%を越えると、顔料と吸着する官能基であるアミノ基が不足し、顔料によっては分散安定性が低下する傾向にあり、やはり粘度低下効果の不足やインキ皮膜に不具合を生じることがある。
【0048】
(ポリアミンと前記(B−2)〜(B−5)からなる群から選択される一つまたはそれ以上の化合物との反応)
ポリアミンと前記(B−2)〜(B−5)からなる群から選択される一つまたはそれ以上の化合物との反応は、例えば、窒素ガス気流下、200℃以下で行うことが出来る。反応にはスズ系やチタン系などの公知の重合触媒を使ってもよい。また必要に応じて、反応に関与しないトルエン、キシレン、ソルベッソ等の非反応性溶剤を使用することができる。使用した溶剤は必ずしも除去する必要はなく、そのまま顔料分散剤の1成分として使用することも可能である。
ポリアミンと前記(B−2)〜(B−5)からなる群から選択される一つまたはそれ以上の化合物との反応は、ビニル共重合体(B−1)と同時であっても順次行っても構わない。
【0049】
(その他の成分)
本発明で使用する変性ポリアミン(B)は、変性ポリアミン(B)の製造時に用いた非反応性溶剤を含有していても良く、また製造時に用いた非反応性溶剤を留去した後に別の溶剤を新たに加えてもかまわない。
【0050】
本発明で使用する変性ポリアミン(B)に、後述する重合性不飽和単量体(C)を重合させることにより得られるポリマー(P)との架橋点を持たせるために、重合性不飽和基を導入することも好ましい。この理由としては、ポリマー(P)と変性ポリアミン(B)を架橋させることにより、顔料表面をより強固に被覆することが可能となるためである。変性ポリアミン(B)に重合性不飽和基を導入する方法としては、例えば、ポリアミンとビニル共重合体(B−1)とを反応させた後、グリシジルメタクリレートを加えて重合性不飽和基を導入する方法などがある。
【0051】
(非水溶媒に可溶でありかつ重合後に不溶もしくは難溶になる重合性不飽和単量体(C))
本発明で使用する、該非水溶媒に可溶でありかつ重合後に不溶もしくは難溶になる重合性不飽和単量体(C)とは、具体的には例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレートもしくはi−プロピル(メタ)アクリレート、または(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニルもしくはフッ化ビニリデンのようなオレフィン類などの、いわゆる反応性極性基(官能基)をもたないビニル系モノマー類;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドもしくはアルコキシ化N−メチロール化(メタ)アクリルアミド類などのアミド結合含有ビニル系モノマー類;ジアルキル〔(メタ)アクリロイロキシアルキル〕ホスフェート類もしくは(メタ)アクリロイロキシアルキルアシッドホスフェート類、またはジアルキル〔(メタ)アクリロイロキシアルキル〕ホスファイト類もしくは(メタ)アクリロイロキシアルキルアシッドホスファイト類;上記(メタ)アクリロイロキシアルキルアシッドホスフェート類ないしはアシッドホスファイト類のアルキレンオキシド付加物やグリシジル(メタ)アクリレートやメチルグリシジル(メタ)アクリレートなどエポキシ基含有ビニル系モノマーとリン酸または亜リン酸あるいはこれらの酸性エステル類とのエステル化合物をはじめ、3−クロロ−2−アシッドホスホキシプロピル(メタ)アクリレートなどのリン原子含有ビニル系モノマー類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジ−2−ヒドロキシエチルフマレートもしくはモノ−2−ヒドロキシエチルモノブチルフマレートまたは、ポリプロピレングリコールもしくは、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、あるいは「プラクセルFM、FAモノマー」(ダイセル化学株式会社製のカプロラクトン付加モノマー)の等の重合性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類またはこれらとε−カプロラクトンとの付加物などをはじめ、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸もしくはシトラコン酸の等の不飽和モノ−ないしはジカルボン酸をはじめ、これらのジカルボン酸と1価のアルコールとのモノエステル類などの重合性不飽和カルボン酸類、または前記の重合性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル類とマレイン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘンゼントリカルボン酸、ベンゼンテトラカルボン酸、「ハイミック酸」、テトラクロルフタル酸もしくはドデシニルコハク酸の等のポリカルボン酸の無水物との付加物のような各種の不飽和カルボン酸類と「カージュラE」、やし油脂肪酸グリシジルエステルもしくはオクチル酸グリシジルエステルの等の1価のカルボン酸のモノグリシジルエステルまたはブチルグリシジルエーテル、エチレンオキシド、もしくはプロピレンオキシドの等のモノエポキシ化合物との付加物またはこれらとε−カプロラクトンとの付加物あるいはヒドロキシビニルエーテルのような水酸基含有重合性不飽和単量体類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類;グリシジル(メタ)アクリレート、(β−メチル)グルシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグルシジルエーテルもしくは重合性不飽和カルボン酸類またはモノ−2−(メタ)アクリロイルオキシモノエチルフタレートの等の水酸基含有ビニルモノマーと前記ポリカルボン酸無水物との等モル付加物の等の各種の不飽和カルボン酸に、「エピクロン200」、「エピクロン400」、「エピクロン441」、「エピクロン850」もしくは「エピクロン1050」(DIC(株)製のエポキシ樹脂〕、または「エピコート828」、「エピコート1001」もしくは「エピコート1004」(ジャパンエポキシレジン株式会社製エポキシ樹脂)、「アラルダイト6071」もしくは「アラルダイト6084」(スイス国チバ・ガイギー社製のエポキシ樹脂)、さらには「チッソノックス221」〔チッソ株式会社製のエポキシ化合物〕、または「デナコールEX−611」〔長瀬化成株式会社製のエポキシ化合物の等の、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する各種のポリエポキシ化合物を等モル比で付加反応させて得られるエポキシ基含有重合性化合物などのエポキシ基含有重合性不飽和単量体類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート−ヘキサメチレンジイソシアネート等モル付加物や、イソシアネートエチル(メタ)アクリレートの等のイソシアネート基とビニル基とを有するモノマーなどのイソシアネート基含有α,β−エチレン性不飽和単量体類;ビニルエトキシシラン、α−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシロキシエチル(メタ)アクリレート、「KR−215、X−22−5002」(信越化学工業株式会社製品)等のシリコン系モノマー類などのアルコキシシリル基含有重合性不飽和単量体類;そして、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸もしくはシトラコン酸の等の不飽和モノ−もしくはジカルボン酸をはじめ、これらのジカルボン酸と1価アルコールとのモノエステル類などのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸類、または2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジ−2−ヒドロキシエチルフマレート、モノ−2−ヒドロキシエチル−モノブチルフマレートもしくはポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートの等のα,β−不飽和カルボン酸ヒドロアルキルエステル類とマレイン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ベンゼントリカルボン酸、ベンゼンテトラカルボン酸、「ハイミック酸」、テトラクロルフタル酸もしくはドデシニルコハク酸の等のポリカルボン酸の無水物との付加物などのカルボキシル基含有α,β−エチレン性不飽和単量体類などがある。
中でも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等のC3以下のアルキル(メタ)アクリレート類の使用が好ましい。さらに、顔料表面の表面特性を変化させ、顔料分散剤あるいは顔料分散樹脂との相互作用を高めるために、少なくとも1種のカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、ヒドロキシル基、ジメチルアミノ基等の官能基を含有する重合性不飽和単量体を、共重合する事が好ましい。
【0052】
また、変性顔料の使用時に顔料(A)から変性ポリアミン(B)やポリマー(P)を溶出させないために、該ポリマーは架橋していると尚好ましい。架橋成分として使用する多官能重合性不飽和単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、またはアリルメタクリレート等が挙げられる。
【0053】
また、少なくとも1種の該非水溶媒に可溶でありかつ重合後に不溶もしくは難溶になる重合性不飽和単量体(C)を必須成分とするポリマーが該非水溶媒系で溶解しない使用範囲において、その他の重合性不飽和単量体を使用してもよい。その他の重合性不飽和単量体としては、例えば前述の炭素原子数4個以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートや前記のアルキル(メタ)アクリレート以外の使用が可能な重合性不飽和単量体が挙げられる。
【0054】
本発明の変性顔料は、顔料(A)と、変性ポリアミン(B)の存在下で、非水溶媒に可溶でありかつ重合後に不溶もしくは難溶になる少なくとも1種の重合性不飽和単量体(C)を重合させることで得られる。
顔料(A)と変性ポリアミン(B)とは、重合を行う前に混合することが好ましい。混合することで、変性ポリアミン(B)で顔料(A)の表面が濡らされ、これにより形成される(顔料(A)と変性ポリアミン(B)との)界面が重合の場になると考えており、前記顔料(A)と変性ポリアミン(B)の混合後に、前記重合性不飽和単量体(C)をさらに混合し、重合を行う事で変性ポリアミン(B)とポリマー(P)でコートされた変性顔料が得られる。この方法は、即ち顔料(A)が分散安定剤で微細かつ安定に分散された場は必須としないため、微細に分散された状態を形成するための顔料(A)の表面処理等は必ずしも必要ではなく、広範囲の種類の顔料に適用できるものである。
【0055】
混合方法としては、例えば、ホモジナイザー、ディスパー、ビーズミル、ペイントシェーカー、ニーダー、ロールミル、ボールミル、アトライター、サンドミル等を使用することが可能である。本発明においては、使用する顔料の形態は問わず、スラリー、ウエットケーキ、粉体のいずれの形態でもかまわない。即ち、本発明の製造方法においては、ウエットケーキのような水を含む顔料であっても使用可能である。
前記顔料(A)と変性ポリアミン(B)の混合後に、重合性不飽和単量体(C)および後述の重合開始剤をさらに混合し、重合を行う事で変性顔料が得られる。
その際、変性ポリアミン(B)の使用量は目的に応じて適宜最適化されるので特に限定はないが、通常は顔料(A)100部に対して1〜200部を使用し、より好ましくは2〜50部、さらに好ましくは3〜30部である。
また、前記重合性不飽和単量体(C)の使用量も、目的に応じて適宜最適化されるので特に限定はないが、通常は顔料(A)100部に対して1〜200部を使用し、より好ましくは2〜50部、さらに好ましくは3〜30部である。
【0056】
最終的に顔料にコートされる変性ポリアミン(B)とポリマー(P)との量は、顔料(A)100部に対して、2〜400部が好ましく使用され、より好ましくは4〜100部、さらに好ましくは6〜60部である。その際、前記変性ポリアミン(B)の100部に対して、少なくとも1種の前記重合性不飽和単量体(C)は通常10〜400部の割合で使用することが好ましく、好ましくは30〜400部、さらに好ましくは50〜200部である。
【0057】
前記顔料(A)、前記非水溶媒、及び変性ポリアミン(B)の存在下で、前記重合性不飽和単量体(C)を重合させる方法は、公知慣用の重合方法によって行えばよいが、通常は重合開始剤の存在下で行う。かかる重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーベンゾエート、t−ブチル−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルハイドロパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、またはクメンハイドロパーオキシドなどのラジカル発生重合触媒が単独で、あるいは2種以上の併用の形で用いられる。
重合開始剤は該非水溶媒系に溶解し難いものもあるため、前記重合性不飽和単量体(C)に溶解し、顔料(A)と変性ポリアミン(B)の混合系に加える方法が好ましい。
また、前記重合性不飽和単量体(C)あるいは重合開始剤を溶解した前記重合性不飽和単量体(C)は、重合温度に達した状態で滴下法により加えることもできるが、昇温前の常温の状態で加え、充分に混合された後に昇温し、重合させる方法が安定であり好ましい。
重合温度は通常60℃〜130℃の範囲である。また顔料(A)が有機顔料の場合、重合温度があまり高温では該顔料の変質や結晶成長などの形態変化が著しい場合があるため、その場合は70〜100℃で重合することが好ましい。
【0058】
重合後、ろ過により重合に使用した非水溶媒等を除去し、さらに乾燥、粉砕を行う事で粉体のポリマーコート顔料として得ることができる。ろ過方法には、ヌッチェ、フィルタープレス等を使用できる。また乾燥には、箱型乾燥機、真空乾燥機、バンド乾燥機、スプレードライヤー等の公知の乾燥装置により乾燥することができる。また粉砕には、乳鉢、ハンマーミル、ディスクミル、ピンミル、ジェットミル等の公知の粉砕装置を使用することができる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例により説明する。特に断りのない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0060】
<合成例1 ビニル重合体(X1)の合成>
キシレン100部とチオグリコール酸10部を、窒素気流中80℃に保ち、攪拌しながらメタクリル酸メチル54部、アクリル酸ブチル36部、および重合開始剤(「パーブチル(登録商標)O」〔有効成分ペルオキシ2−エチルヘキサン酸t−ブチル、日本油脂(株)製〕)2部からなる混合物を4時間かけて滴下した。滴下終了後、4時間ごとに「パーブチル(登録商標)O」0.5部を添加し、80℃で12時間攪拌した。反応終了後不揮発分調整のためキシレンを加え、不揮発分50%の、片末端にカルボキシル基を有するビニル共重合体のキシレン溶液(X1)を得た。該樹脂の質量平均分子量は5000、酸価は60.5mgKOH/gであった。
【0061】
<合成例2 ビニル重合体(X2)の合成>
キシレン100部を、窒素気流中80℃に保ち、攪拌しながらメタクリル酸エチル68部、メタクリル酸2−エチルヘキシル29部、チオグリコール酸3部、および重合開始剤(「パーブチル(登録商標)O」〔有効成分ペルオキシ2−エチルヘキサン酸t−ブチル、日本油脂(株)製〕)0.2部からなる0混合物を4時間かけて滴下した。滴下終了後、4時間ごとに「パーブチル(登録商標)O」0.5部を添加し、80℃で12時間攪拌した。反応終了後不揮発分調整のためキシレンを加え、不揮発分50%の、片末端にカルボキシル基を有するビニル共重合体(X2)のキシレン溶液を得た。該樹脂の重量平均分子量は7000、酸価は18.0mgKOH/g、ガラス転移温度Tgは38℃であった。
【0062】
<合成例3 ビニル重合体(X3)の合成>
キシレン100部を、窒素気流中80℃に保ち、攪拌しながらメタクリル酸エチル66部、メタクリル酸2−エチルヘキシル28部、チオグリコール酸6部、および重合開始剤(「パーブチル(登録商標)O」〔有効成分ペルオキシ2−エチルヘキサン酸t−ブチル、日本油脂(株)製〕)0.3部からなる混合物を4時間かけて滴下した。滴下終了後、4時間ごとに「パーブチル(登録商標)O」0.5部を添加し、80℃で12時間攪拌した。反応終了後、不揮発分調整のため適宜量のキシレンを添加し、不揮発分50%の、片末端にカルボキシル基を有するビニル共重合体(X3)のキシレン溶液を得た。該樹脂の重量平均分子量は4000、酸価は36.0mgKOH/g、ガラス転移温度Tgは38℃であった。
【0063】
<合成例4 ビニル重合体(X4)の合成>
撹拌機,還流冷却器,窒素吹込み管、温度計を備えたフラスコにイオン交換水30部とイソプロピルアルコール30部を窒素気流中80℃に保ち、攪拌しながらN−ビニルホルムアミド40部、2−メルカプトエタノール8部、および重合開始剤(「パーブチル(登録商標)O」〔有効成分ペルオキシ2−エチルヘキサン酸t−ブチル、日本油脂(株)製〕)0.8部からなる混合物を4時間かけて滴下した。反応終了後、不揮発分調整のため適宜量のイオン交換水を添加し、不揮発分40%の、ビニル重合体(X4)を得た。
【0064】
<合成例5 ポリビニルアミン共重合体(PA−1)の合成>
撹拌機,還流冷却器,窒素吹込み管、温度計を備えたフラスコに合成例4で得られた不揮発分40%のビニル重合体(X4)を125部、20%水酸化ナトリウム溶液を141部加えて、攪拌しながら80℃にて16時間反応させた。反応終了後、アセトンを加えて樹脂分を沈殿させ、分離、乾燥を行い、ポリビニルアミン共重合体(PA−1)の固形分を得た。ポリビニルアミン共重合体(PA−1)のアミン価は、1174mg KOH/gであり、アミン価から計算されるN−ビニルホルムアミドの加水分解率は、90%であった。
【0065】
<合成例6 ポリビニルアミン共重合体(PA−2)の合成>
撹拌機,還流冷却器,窒素吹込み管、温度計を備えたフラスコに合成例4で得られた不揮発分40%のビニル重合体(X4)を125部、20%水酸化ナトリウム溶液を42部加えて、攪拌しながら80℃にて2時間反応させた。反応終了後、アセトンを加えて樹脂分を沈殿させ、分離、乾燥を行い、ポリビニルアミン共重合体(PA−2)の固形分を得た。ポリビニルアミン共重合体(PA−2)のアミン価は、305mg KOH/gであり、アミン価から計算されるN−ビニルホルムアミドの加水分解率は、23%であった。
【0066】
<合成例7 変性ポリアミン(BJ−1)の合成>
撹拌機,還流冷却器,窒素吹込み管、温度計を備えたフラスコに、キシレン100部とポリアリルアミン20%水溶液(日東紡績(株)製「PAA−05」、数平均分子量約5,000)37.5部からなる混合物を仕込み、窒素気流下撹拌しながら140℃で撹拌し、分離装置を使用して水を溜去すると共に、キシレンを反応溶液に返流しながら、これに合成例1で得たビニル共重合体(X1)(本願におけるビニル共重合体(B−1)として使用) 168.8部を140℃まで昇温したものを加え、8時間140℃で反応を行った。反応終了後、不揮発分調整のため適宜量のキシレンを添加し、不揮発分40%の、変性ポリアミン(BJ−1)を得た。該樹脂の質量平均分子量は7,500、アミン価は32.5mg KOH/gであった。
【0067】
<合成例8 変性ポリアミン(BJ−2)の合成>
撹拌機,還流冷却器,窒素吹込み管、温度計を備えたフラスコに、キシレン54.5部、合成例2で得たビニル共重合体(X2)(本願におけるビニル共重合体(B−1)として使用)19.0部、合成例3で得たビニル共重合体(X2)(本願におけるビニル共重合体(B−2−1)として使用)38.0部、およびポリアリルアミン20%水溶液(日東紡績(株)製「PAA−05」、数平均分子量約5,000)7.5部からなる混合物を仕込み、窒素気流下撹拌しながら140℃で撹拌し、分離装置を使用して水を溜去すると共に、キシレンを反応溶液に返流しながら8時間140℃で反応を行った。
反応終了後、不揮発分調整のため適宜量のキシレンを添加し、不揮発分40%の、変性ポリアミン(BJ−2)を得た。該樹脂の重量平均分子量は10,000、アミン価は22.0mg KOH/gであった。
【0068】
<合成例9 変性ポリアミン(BJ−3)の合成>
撹拌機,還流冷却器,窒素吹込み管、温度計を備えたフラスコに、ポリアリルアミン20%水溶液「PAA−03」10.5部とポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日油(株)製「ブレンマー70PEP−350B」、平均エチレングリコール鎖数5、平均プロピレングリコール鎖数2)(本願における(メタ)アクリレート(B−3)として使用)1.5部を仕込み、窒素気流下撹拌しながら50℃で撹拌し、3時間反応させた。次いでキシレン35.2部、合成例3で得たビニル共重合体(X3)(本願におけるビニル共重合体(B−1)として使用)52.8部を仕込み、窒素気流下撹拌しながら140℃で撹拌し、分離装置を使用して水を溜去すると共に、キシレンを反応溶液に返流しながら8時間140℃で反応を行った。反応終了後、不揮発分調整のため適宜量のキシレンを添加し、不揮発分40%の、変性ポリアミン(BJ−3)を得た。該樹脂の重量平均分子量は8,000、アミン価は31.0mg KOH/gであった。
【0069】
<合成例10 変性ポリアミン(BJ−4)の合成>
撹拌機,還流冷却器,窒素吹込み管、温度計を備えたフラスコに、合成例9で得られた不揮発分40%の変性ポリアミン(BJ−3)100部及びグリシジルメタクリレート1.6部を加え、80℃にて8時間反応させた。反応終了後、不揮発分調整のため適宜量のキシレンを添加し、不揮発分40%の、メタクリロイル基を有する変性ポリアミン(BJ−4)を得た。
【0070】
<合成例11 変性ポリアミン(BJ−5)の合成>
撹拌機,還流冷却器,窒素吹込み管、温度計を備えたフラスコにキシレン11部、ポリエチレンイミン(エポミンSP−006,日本触媒化学工業(株)製,平均分子量約600)7.5部を加え、窒素気流下撹拌しながら140℃で撹拌し、分離装置を使用して水を溜去すると共に、キシレンを反応溶液に返流しながら、これに合成例1で得たビニル共重合体(X1)(本願におけるビニル共重合体(B−1)として使用) 168.8部を140℃まで昇温したものを加え、8時間140℃で反応を行った。反応終了後、不揮発分調整のため適宜量のキシレンを添加し、不揮発分40%の、変性ポリアミン(BJ−5)を得た。
【0071】
<合成例12 変性ポリアミン(BJ−6)の合成>
撹拌機,還流冷却器,窒素吹込み管、温度計を備えたフラスコにキシレン11部、合成例5で得られたポリビニルアミン共重合体(PA−1)7.5部を加え、窒素気流下撹拌しながら140℃で撹拌し、分離装置を使用して水を溜去すると共に、キシレンを反応溶液に返流しながら、これに合成例1で得たビニル共重合体(X1)(本願におけるビニル共重合体(B−1)として使用) 152部を140℃まで昇温したものを加え、8時間140℃で反応を行った。反応終了後、反応溶液中の水分を不揮発分調整のため適宜量のキシレンを添加し、不揮発分40%の、変性ポリアミン(BJ−6)を得た。
【0072】
<合成例13 変性ポリアミン(BJ−7)の合成>
撹拌機,還流冷却器,窒素吹込み管、温度計を備えたフラスコにキシレン11部、合成例6で得られたポリビニルアミン共重合体(PA−2)7.5部を加え、窒素気流下撹拌しながら140℃で撹拌し、分離装置を使用して水を溜去すると共に、キシレンを反応溶液に返流しながら、これに合成例1で得たビニル共重合体(X1)(本願におけるビニル共重合体(B−1)として使用) 42.2部を140℃まで昇温したものを加え、8時間140℃で反応を行った。反応終了後、反応溶液中の水分を不揮発分調整のため適宜量のキシレンを添加し、不揮発分40%の、変性ポリアミン(BJ−7)を得た。
【0073】
<比較合成例1 ポリマー(BH−1)の合成>
温度計、攪拌機、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、ヘプタンの800部、酢酸ブチルの170部を仕込んで90℃に昇温し、同温度に達したところで、アクリル酸2エチルヘキシルの950部、ジメチルアミノエチルメタクリレートの50部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)の7部からなる混合物を5時間かけて滴下し、滴下終了後も、同温度に10時間保持して反応を続行した。その後、t−ブチルピロカテコールの0.2部を酢酸ブチルの15部に溶解した溶液を加え、さらにグリシジルメタクリレートの15部、ジメチルアミノエタノールの30部を加えた後に、80℃まで昇温し、同温度で10時間反応を行う事で、非水溶媒に可溶な重合性不飽和基を含有するポリマー(BH−1)の溶液を得た。
【0074】
<実施例1 変性顔料(1)の合成>
ファーストゲンブルーFGF(DIC株式会社のブルー顔料)のウェットケーキ(顔料分48%)の208部、合成例1で得られた変性ポリアミン(BJ−1)の20部(固形分換算)、1.25mmのジルコニアビーズの300部、ヘプタンの300部をポリエチレン広口瓶に入れ、ペイントシェーカー(東洋精機株式会社)で60分間混合を行った。ヘプタンの200部で希釈した後、ジルコニアビーズを除去し、顔料混合液を作成した。
得られた顔料混合液の400部を温度計、攪拌機、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに仕込んだ後、重合性単量体(C)としてt−ブチルアクリルアミドスルホン酸の2部を20部のイオン交換水に溶解したものを加え、さらにメタクリル酸メチルの3部およびエチレングリコールジメタクリレートの5部の重合性単量体組成物に2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)の2部を溶解したものを加えた。室温で30分間攪拌を続けた後、80℃に昇温し、同温度で15時間反応を続けた。降温後、濾過を行う事で、変性顔料と重合溶剤を分離した。得られた変性顔料を熱風乾燥機により100℃で5時間乾燥後、粉砕機にて粉砕を行う事で、変性顔料(1)を得た。
【0075】
<実施例2〜17及び比較例1 変性顔料(2)〜(17)及び比較変性顔料(1)の合成>
使用する顔料(A)及び変性ポリアミン(BJ−1)を表2〜表4に記載の顔料(A)及び変性ポリアミンに変更する以外は実施例1と同様にして、顔料混合液を作成した。
得られた顔料混合液の400部を使用し、重合性単量体(C)を表2〜表4に記載の重合性単量体に変更した以外は実施例1と同様にして、変性顔料(2)〜(17)及び比較変性顔料(1)を得た。
【0076】
【表1】

【0077】
表1中、
ファーストゲンブルーFGF(ウェットケーキ) C.I.Pigment Blue 15:3は、(DIC株式会社製ブルー顔料) 顔料成分48.0%
シムラーファーストレッド4590(粉体) C.I.Pigment Red 146は、(DIC株式会社製レッド顔料)
シムラーファーストイエロー4400T(粉体) C.I.Pigment Yellow 14は、(DIC株式会社製イエロー顔料)
ファーストゲングリーンS(ウエットケーキ) C.I.Pigment Green 7は、(DIC株式会社製グリーン顔料) 顔料成分 46%
タイペーク CR−93(粉体)酸化チタンは、(石原産業株式会社製ルチル型酸化チタン顔料)
【0078】
【表2】

【0079】
表2中、
ファーストゲンブルーFGF(ウェットケーキ) C.I.Pigment Blue 15:3は、(DIC株式会社製ブルー顔料) 顔料成分48.0%
【0080】
【表3】

【0081】
表3中、
ファーストゲンブルーFGF(ウェットケーキ) C.I.Pigment Blue 15:3は、(DIC株式会社製ブルー顔料) 顔料成分48.0%
【0082】
<応用例1>
実施例1で得られた変性顔料(1)の4.75部とソルスパーズ5000(ルーブリゾール株式会社製品)の0.25部、アジスパーPB−821(味の素ファインテクノ株式会社製顔料分散剤)の2.1部を酢酸エチルの21.4部に溶解した溶液を、1.25mmのジルコニアビーズの125部をポリエチレン広口瓶に入れ、ペイントシェーカー(東洋精機株式会社)で2時間分散を行った。酢酸エチルの7.1部を加え、ジルコニアビーズを除去した後、バーコーターNo.6によりガラス板に塗装した。室温にて、10時間乾燥後、ヘイズグロス計(BYKガードナー製品)にて、60°光沢を測定した結果、95あった。また、スペクトロアイ(SpectroEye)(GretagMacbeth社製品)により、シアンの濃度(OD値)を測定した結果、2.0であり、さらに塗装フィルムは良好な透明性を示しており、良好な顔料分散性を示す事が確認された。
【0083】
<応用例2〜17>
変性顔料(1)、顔料分散剤、および溶剤を表4〜表6の様に変更する以外は、応用例1と同様の方法にて、顔料分散、塗装、および評価を行った。
【0084】
<比較応用例1〜6>
顔料、顔料分散剤、および溶剤を表7の様に変更する以外は、応用例1と同様の方法にて、顔料分散、塗装、および評価を行った。
【0085】
【表4】

【0086】
表4中、
アジスパーPB−821 味の素ファインテクノ株式会社製顔料分散剤 有効成分100%
顔料分散剤2:ディスパーBYK2050 BYK社製顔料分散剤 有効成分52%
【0087】
【表5】

【0088】
表5中、
顔料分散剤1:アジスパーPB−821 味の素ファインテクノ株式会社製顔料分散剤 有効成分100%
顔料分散剤2:ディスパーBYK2050 BYK社製顔料分散剤 有効成分52%
【0089】
【表6】

【0090】
表6中、
顔料分散剤1:アジスパーPB−821 味の素ファインテクノ株式会社製顔料分散剤 有効成分100%
【0091】
【表7】

【0092】
表7中、
顔料分散剤1:アジスパーPB−821 味の素ファインテクノ株式会社製顔料分散剤 有効成分100%
顔料分散剤2:ディスパーBYK2050 BYK社製顔料分散剤 有効成分52%
ファーストゲンブルーFGF C.I.Pigment Blue 15:3(DIC株式会社製ブルー顔料)
シムラーファーストレッド4590 C.I.Pigment Red 146(DIC株式会社製レッド顔料)
シムラーファーストイエロー4400T C.I.Pigment Yellow 14(DIC株式会社製イエロー顔料)
ファーストゲングリーンS C.I.Pigment Green 7(DIC株式会社製グリーン顔料)
タイペーク CR−93 (石原産業株式会社製ルチル型酸化チタン顔料)
【0093】
以上の結果より、本願の変性顔料は、OD値が特に高いものが得られ、顔料分散性に優れていることが示唆される。なおOD値とは、シアン、イエロー、マゼンタのそれぞれの補色(レッド、ブルー、グリーン)の波長域の光の吸収率を示した指標であり、吸収率が高いほど高い値となる。顔料の分散性が低い、すなわち粗大な顔料粒子が塗膜中に存在するほど、着色塗膜表面で白色の散乱光が発生し、着色塗膜の補色の光の吸収率が低下するため、OD値は低下する。従って、一般的にOD値が高いほど、顔料の分散性が高いということができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料(A)表面に、
アミノ基と反応しアミド結合を形成する官能基を片末端に有するビニル共重合体(B−1)をポリアミンのアミノ基と反応させた変性ポリアミン(B)と、
非水溶媒に可溶でありかつ重合後に不溶もしくは難溶になる少なくとも1種の重合性不飽和単量体(C)
を重合することにより得られるポリマー(P)を有することを特徴とする変性顔料。
【請求項2】
前記ポリアミンが、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン及びポリエチレンイミンからなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1記載の変性顔料。
【請求項3】
前記非水溶媒が脂肪族炭化水素系溶剤及び/又は脂環式炭化水素系溶剤を含む、請求項1または2に記載の変性顔料。
【請求項4】
顔料(A)と、
ポリアミンのアミノ基と、アミノ基と反応しアミド結合を形成する官能基を片末端に有するビニル共重合体(B−1)とを反応させてなる変性ポリアミン(B)の存在下で、
非水溶媒に可溶でありかつ重合後に不溶もしくは難溶になる少なくとも1種の重合性不飽和単量体(C)
を重合させることを特徴とする変性顔料の製造方法。
【請求項5】
前記非水溶媒が脂肪族炭化水素系溶剤及び/又は脂環式炭化水素系溶剤を含む、請求項4に記載の変性顔料の製造方法。

【公開番号】特開2011−57822(P2011−57822A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208060(P2009−208060)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】