説明

変成シリコーン樹脂発泡体

【課題】高温での圧縮残留ひずみが小さく、かつ、柔軟性が良好な変成シリコーン樹脂発泡体を提供する。
【解決手段】分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰り返し単位がオキシアルキレン系単位からなる重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、発泡剤(D)、主鎖を構成する繰り返し単位がオキシアルキレン系単位からなり、分子鎖中に平均して1個未満のアルケニル基を有し、数平均分子量が1000以上である可塑剤(F)を含んでなる発泡性液状樹脂組成物を硬化してなる変成シリコーン樹脂発泡体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変成シリコーン樹脂からなる発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子化合物の発泡体としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂を用いた発泡体が、ビーズ、シート、あるいはボードとして、その断熱性、軽量性、緩衝性などの特性を活かし、土木建築分野、包装分野、家電分野、自動車分野などに利用されている。これらはいずれも、発泡体とするのに大規模な設備を必要とする。これらはまた、一般的に硬質の発泡体である。
【0003】
一方、液状樹脂組成物を硬化・発泡してなる熱硬化性樹脂を用いた発泡体として、ポリウレタンの発泡体がよく知られている。ポリウレタンの発泡体は、小規模な設備で簡単に成形でき、軟質の発泡体も作製可能であるが、毒性の懸念されるイソシアネートを使用するという欠点を有している。また、ポリウレタン発泡体は、充分な柔軟性があるとは言えず、触感が良い物とは言えない。そこで、毒性の懸念される原料を使用せず、成形が容易であり、柔軟で触感の良い発泡体が望まれている。
【0004】
毒性の懸念される原料を使用せず、成形が容易であり、柔軟で触感の良い発泡体として、本発明者等は、変成シリコーン樹脂を用いた発泡体を提案している(特許文献1)。変成シリコーン樹脂発泡体は、一般的な軟質発泡体であるポリウレタンの軟質発泡体と比較して、柔軟性や触感に優れ、また毒性の懸念される原料を使用していないことから、枕等の寝具や各種クッション材等への展開が期待される。また、寝具等に使用する場合、低密度の発泡体が期待される。特許文献1に具体的に開示されている変成シリコーン樹脂発泡体は、発泡体密度が171kg/m3以上である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2008/117734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者等は、特許文献1記載の変成シリコーン樹脂発泡体に関して種々の検討を行ううちに、変成シリコーン樹脂発泡体は、高温での圧縮残留ひずみが大きい場合があることがわかった。そこで、圧縮残留ひずみを低減させるべく、例えば、変成シリコーン樹脂発泡体の加熱養生を行うと、圧縮残留ひずみは改善されるものの硬度が上昇し、変成シリコーン樹脂発泡体が元来有している柔軟性や触感が悪化することがわかった。そこで、本発明の目的は、高温での圧縮残留ひずみが小さく、かつ、柔軟性が良好な変成シリコーン樹脂発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題の解決のため鋭意研究を重ねた結果、変成シリコーン樹脂発泡体が、主鎖を構成する繰り返し単位がオキシアルキレン系単位からなり、分子鎖中に平均して1個未満のアルケニル基を有し、数平均分子量が1000以上である可塑剤を含有することにより、本来変成シリコーン樹脂発泡体が有している柔軟性という利点を損なうことなく、かつ、圧縮残留ひずみが小さい変成シリコーン樹脂発泡体が得られることを見出し、本発明の完成に至った。さらに、発泡助剤として、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基と、少なくとも1個のヒドロキシル基を有する重合体を含有することで、低密度の変成シリコーン樹脂発泡体が得られる傾向を見出した。
【0008】
即ち、本発明は、以下の構成よりなる。
〔1〕 分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰り返し単位がオキシアルキレン系単位からなる重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、発泡剤(D)、主鎖を構成する繰り返し単位がオキシアルキレン系単位からなり、分子鎖中に平均して1個未満のアルケニル基を有し、数平均分子量が1000以上である可塑剤(F)を含んでなる発泡性液状樹脂組成物を硬化してなる変成シリコーン樹脂発泡体。
〔2〕 分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰り返し単位がオキシアルキレン系単位からなる重合体(B)の数平均分子量が15000以上である〔1〕記載の変成シリコーン樹脂発泡体。
〔3〕 発泡剤(D)が、分子鎖中にアルケニル基を有さず、数平均分子量が1000以下、水酸基当量1.0mmol/g以上の活性水素化合物である〔1〕または〔2〕に記載の変成シリコーン樹脂発泡体。
〔4〕 発泡助剤として、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基と、少なくとも1個のヒドロキシル基を有する化合物(E)を含んでなる発泡性液状樹脂組成物を硬化してなる〔1〕〜〔3〕何れか一項に記載の変成シリコーン樹脂発泡体。
〔5〕 60℃、24時間条件下で75%圧縮したときの圧縮残留ひずみが8%以下である〔1〕〜〔4〕何れか一項に記載の変成シリコーン樹脂発泡体。
〔6〕 密度が150kg/m3以下である〔1〕〜〔5〕何れか一項に記載の変成シリコーン樹脂発泡体。
〔7〕 40%圧縮時の硬度が30N以下である〔1〕〜〔6〕何れか一項に記載の変成シリコーン樹脂発泡体。
〔8〕 〔1〕〜〔7〕何れか一項に記載の変成シリコーン樹脂発泡体からなる寝具。
【発明の効果】
【0009】
本発明の変成シリコーン樹脂発泡体は、高温での圧縮残留ひずみが小さく、かつ、柔軟性を有する。したがって、枕等の寝具や各種クッション材として使用した場合、ソフトな沈み込みが得られると同時に、ひずみが抑えられて優れた復元性が得られるため、好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の発泡体を構成する変成シリコーン樹脂発泡体は、分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰り返し単位がオキシアルキレン系単位からなる重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、発泡剤(D)、主鎖を構成する繰り返し単位がオキシアルキレン系単位からなり、分子鎖中に平均して1個未満のアルケニル基を有し、数平均分子量が1000以上である可塑剤(F)を含んでなる発泡性液状樹脂組成物を硬化してなる。
【0011】
本発明の変成シリコーン樹脂発泡体は、主鎖を構成する繰り返し単位がオキシアルキレン系単位からなり、分子鎖中に平均して1個未満のアルケニル基を有し、数平均分子量が1000以上である可塑剤(F)(以下、単に「可塑剤」と称す場合がある)を含有することを特徴とする。可塑剤とは、成形加工性を改善したり、柔軟性を付与することができる化合物を言う。
【0012】
本発明の変成シリコーン樹脂発泡体は、可塑剤(F)を含有することで、圧縮残留ひずみを低減させるために変成シリコーン樹脂発泡体を加熱養生した後でも、過度の硬度上昇や触感悪化が抑制され、柔軟性があり圧縮残留ひずみが小さいものとなる。
【0013】
本発明の可塑剤は、主鎖を構成する繰り返し単位がオキシアルキレン系単位からなる。主鎖の具体例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド;エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びブチレンオキシドから選ばれる2種以上のランダムまたはブロック共重合体等が挙げられ、これらは単独で使用しても良く、二種類以上を併用しても良い。これらのうち、後述の重合体(B)との相溶性の点で、ポリプロピレンオキシドが好ましい。
【0014】
可塑剤の分子量は、得られる変成シリコーン樹脂発泡体の柔軟性や、可塑剤の系外への流出防止の観点から数平均分子量で1000以上であり、3000以上が好ましい。数平均分子量が低すぎると、熱や圧縮等により可塑剤が経時的に系外に流出し、初期の物性を長期に渡り維持できないだけでなく、触感への悪影響が懸念される。また、上限値は特に限定は無いが、数平均分子量が高くなりすぎると粘度が高くなり、作業性が悪化するため50000以下が好ましく、30000以下がより好ましい。なお、本発明の可塑剤は、変成シリコーン樹脂発泡体に柔軟性を付与できるものであれば、直鎖状でも分岐状でも特に限定はない。
【0015】
また、本発明で用いる可塑剤(F)は、分子鎖中に平均して1個未満のアルケニル基を有するものである。好ましくは、分子鎖中にアルケニル基を有さない。分子鎖中に平均して1個未満のアルケニル基を有する可塑剤であれば、硬化剤(A)と重合体(B)の硬化反応を阻害することがほとんどなく、硬化不良が起こりにくい。他の官能基についても、硬化剤(A)と重合体(B)の硬化反応を阻害することがほとんどないのであれば、ある程度有していてもよい。
【0016】
可塑剤(F)の添加量は、重合体(B)100重量部に対して、好ましくは、5重量部以上150重量部以下、より好ましくは10重量部以上120重量部以下、さらに好ましくは20重量部以上100重量部以下である。5重量部未満では、圧縮残留ひずみの抑制と柔軟性の効果が発現し難い場合があり、150重量部を超えると変成シリコーン樹脂発泡体の機械強度が不足したり、発泡倍率が低下する傾向がある。可塑剤(F)の製造方法は特に限定なく、公知の製造方法を適用することができ、さらに市販の化合物を用いてもよい。
【0017】
分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)(以下、単に「硬化剤(A)」と称す場合がある)は、分子鎖中に少なくとも2個、好ましくは3個以上のヒドロシリル基を有する。ヒドロシリル基数の上限は、好ましくは100個、より好ましくは70個、さらに好ましくは50個である。このように分子鎖中にヒドロシリル基を有するため、それぞれのヒドロシリル基が、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰返し単位がオキシアルキレン系単位からなる重合体(B)の分子鎖中に存在するアルケニル基と反応して硬化する。前記ヒドロシリル基の数が2個より少ないと、本発明の液状樹脂組成物をヒドロシリル化反応により硬化させる場合の硬化速度が遅くなり、硬化不良を起こす。また、前記ヒドロシリル基の個数が100個より多くなると、硬化剤(A)の安定性、即ち液状樹脂組成物の安定性が悪くなる場合があり、その上、硬化後も多量のヒドロシリル基が発泡体中に残存しやすくなり、圧縮残留ひずみや加熱養生時の硬度上昇、及びクラックの原因となる場合がある。
【0018】
なお、ヒドロシリル基を1個有するとは、SiH結合を1個有することを言い、SiH2の場合にはヒドロシリル基を2個有することになるが、1つのSiに結合するHの数は、1つである方が硬化性は良くなり、また、柔軟性の点からも好ましい。
【0019】
硬化剤(A)の数平均分子量は、分散性や加工性等の点から、上限値は30000であることが好ましく、20000がより好ましく、15000であることがさらに好ましい。重合体(B)との反応性や相溶性まで考慮すると、数平均分子量は、300以上10000以下が特に好ましい。
【0020】
前記硬化剤(A)の構造は、分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有していれば特に制限はないが、例えば、国際公開2008/117734号公報に記載のポリシロキサン系硬化剤等が例示できる。特に、入手のしやすさ、反応性等の観点から、ポリメチルハイドロジェンシロキサン(メチルハイドロジェンシリコーンオイル)や、メチルハイドロジェンシロキサンとジメチルシロキサンやジフェニルシロキサン、メチルフェニルシロキサンの共重合体、及びこれらのスチレンもしくはαメチルスチレンの変成体等が好ましく用いられる。
【0021】
分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰り返し単位がオキシアルキレン系単位からなる重合体(B)(以下、単に「重合体(B)」と称す場合がある)とは、硬化剤(A)とヒドロシリル化反応して硬化する成分であり、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有するため、ヒドロシリル化反応が起こって高分子状となり、硬化する。重合体(B)に含まれるアルケニル基の数は、硬化剤(A)とヒドロシリル化反応するという点から少なくとも1個必要であるが、硬化性、柔軟性の点からは分子鎖の両末端にアルケニル基が存在するのが好ましい。
【0022】
重合体(B)の構造としては、直鎖状であっても分岐していても良いが、直鎖状であるほうが、柔軟性の観点から好ましい。ここで、直鎖状とは、分子構造が直鎖状であるか、ある程度分岐していても良いが、分岐が主鎖の分子量よりも少なければ、直鎖状とする。
【0023】
重合体(B)の分子量は、柔軟性・触感、及び反応性のバランスの点から、数平均分子量(Mn)が15000以上であることが好ましい。より好ましくは17000以上である。上限値には特に限定は無いが50000以下が好ましく、45000以下がより好ましく、40000以下がさらに好ましい。
【0024】
重合体(B)は、主鎖を構成する繰返し単位がオキシアルキレン系単位であるため、主鎖を形成する出発物質として活性水素を2個以上有する化合物を重合させることにより製造されることが好ましい。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ビスフェノール化合物、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリストール等を用い、C2〜C4のアルキレンオキシドを重合させることにより製造される。
【0025】
主鎖の具体例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド;エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びブチレンオキシドから選ばれる2種以上のランダムまたはブロック共重合体等が挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種の末端に、アルケニル基を導入することが好ましい。柔軟性、及び触感の点から、主鎖の繰返し単位がポリプロピレンオキシドであることがより好ましい。
【0026】
硬化剤(A)、及び重合体(B)の含有割合は、硬化剤(A)中のヒドロシリル基、及び重合体(B)中のアルケニル基の数にもよるが、柔軟性、及び触感の点から、硬化剤(A)/重合体(B)(モル/モル)が3/4以上であることが好ましく、4/5以上であることがより好ましく、1以上であることがさらに好ましい。
【0027】
さらに、硬化剤(A)中のヒドロシリル基の含有量が、重合体(B)中のアルケニル基1モル当り0.1モル以上50モル以下となるようにすることが好ましい。
【0028】
ヒドロシリル化触媒(C)としては、ヒドロシリル化触媒として使用し得るものである限り、特に制限はなく、任意のものを使用し得る。ヒドロシリル化触媒(C)の具体例としては、例えば、白金−オレフィン錯体や白金−ビニルシロキサン錯体等、国際公開2008/117734号公報に記載のものが挙げられる。
【0029】
ヒドロシリル化触媒(C)の含有量としては、重合体(B)のアルケニル基1モルに対して10-8モル以上10-1モル以下が好ましく、10-6モル以上10-2モル以下がより好ましい。前記含有量が10-8モルより少ないと十分に硬化が進行しない場合がある。また10-1モルよりも多いと、液状樹脂組成物の硬化の制御が困難な場合や、得られた変成シリコーン樹脂発泡体が着色する場合がある。
【0030】
本発明において、発泡剤(D)としては、分子鎖中にアルケニル基を有さない活性水素基含有化合物を用いることが好ましい。
【0031】
分子鎖中にアルケニル基を有さない活性水素含有化合物としては、アルコール類、カルボン酸類、フェノール性ヒドロキシル基を有する化合物、水等が例示できる。さらに、具体例としては、水;
【0032】
メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等の1価のアルコール;
【0033】
エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、1,9−ノナメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、スクロース等の多価アルコール;
【0034】
ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、これらの共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ソルビトール、スクロース、テトラエチレンジアミン、エチレンジアミン等を開始剤とした1分子内にヒドロキシル基を3個以上含むものも含む等のポリエーテルポリオール;
【0035】
アジペート系ポリオール、ポリカプロラクトン系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール等のポリエステルポリオール;
【0036】
エポキシ変成ポリオール;ポリエーテルエステルポリオール;ベンジリックエーテル型フェノールポリオール等のフェノール系ポリオール;ルミフロン(旭硝子社製)等のフッ素ポリオール;水添ポリブタジエンポリオール;ひまし油系ポリオール;ハロゲン含有難燃性ポリオール;リン含有難燃性ポリオール;
【0037】
ヒドロキシル基含有ビニル系モノマーとアクリル酸、メタクリル酸、それらの誘導体等との共重合により得ることが可能なヒドロキシル基を有するアクリル樹脂;その他アルキド樹脂、エポキシ樹脂等のヒドロキシル基を有する樹脂;
等のアルコール類;
【0038】
酢酸、プロピオン酸等の一価の飽和カルボン酸等のカルボン酸類;フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ピロガロール、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールS、フェノール樹脂等のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物;
等が挙げられる。
【0039】
これらの分子鎖中にアルケニル基を含まない活性水素基含有化合物の中でも、反応性や取り扱い性の点からは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール等の1級飽和炭化水素アルコール、ポリエチレングリコール等のポリエーテルポリオール、水よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、また、柔軟性の観点からは、酸素が直接炭素に結合している化合物または水が好ましい。とりわけ、水、エタノール、ポリエチレングリコールのいずれかが好ましい。
【0040】
本発明において発泡剤(D)として、分子鎖中にアルケニル基を含まない活性水素基含有化合物を使用する場合、分子鎖中にアルケニル基を含まない活性水素基含有化合物の数平均分子量は、大きくなると反応性が低下し、所望の発泡倍率が得られない傾向があるため、1000以下が好ましく、500以下がより好ましい。
【0041】
また、分子鎖中にアルケニル基を含まない活性水素基含有化合物の水酸基当量は、水酸基当量が小さくなると、添加する活性水素基含有化合物の体積が大きくなり、発泡倍率が上がりにくくなる傾向があるため、発泡倍率を上げようとする場合には、1.0mmol/g以上が好ましく、さらに反応性の点から5.0mmol/g以上がより好ましい。
【0042】
本発明においては、発泡剤(D)として分子鎖中にアルケニル基を有さない活性水素基含有化合物以外の発泡剤を併用しても良い。分子鎖中にアルケニル基を有さない活性水素基含有化合物以外の発泡剤としては、例えば、通常、ポリウレタン、フェノール、ポリスチレン、ポリオレフィン等の有機発泡体に用いられる、揮発性液体や気体の物理発泡剤、加熱分解もしくは化学反応により気体を発生させる化学発泡剤等が挙げられる。
【0043】
前記物理発泡剤としては、ヒドロシリル化反応を阻害しないものであれば特に限定はないが、発泡性や作業性と安全性の点から、物理発泡剤の沸点は、100℃以下であることが好ましく、50℃以下がより好ましい。具体的には、炭化水素、フロン、塩化アルキル、エーテル等の有機化合物、二酸化炭素、窒素、空気等の無機化合物が挙げられるが、環境適合性の観点から、炭化水素、エーテル、二酸化炭素、窒素、空気から選ばれる化合物を用いることが好ましい。
【0044】
炭化水素としては、メタン、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタンクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。また、エーテル類としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ブチルメチルエーテル、ブチルエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、tert−ブチルエチルエーテル、1,1−ジメチルプロピルメチルエーテル等が挙げられる。
【0045】
なお、発泡体製造時に、空気中で機械的な攪拌を行う場合は、攪拌に伴って巻き込まれた空気により気泡が形成される場合があり、これもまた物理発泡剤のひとつであると考える。ただし、これら物理発泡剤を使用する場合、残存物による発泡体成形後の物性変化が懸念されること等から、発泡体製造後、使用した物理発泡剤の沸点以上の温度で加熱養生することにより、残留発泡剤を取り除いておくことが好ましい。
【0046】
前記化学発泡剤としては、ヒドロシリル化反応を阻害しないものであれば特に限定はないが、例えば、NaHCO3等の無機系化学発泡剤や有機系化学発泡剤等が挙げられる。
【0047】
本発明において、発泡助剤として、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基と、少なくとも1個のヒドロキシル基を有する化合物(E)(以下、単に「化合物(E)」と称す場合がある)を添加することが、低密度の変成シリコーン樹脂発泡体を得ることが出来る傾向があるため好ましい。化合物(E)中のアルケニル基は、重合体(B)中のアルケニル基と競争して硬化剤(A)中のヒドロシリル基への付加反応を起こすことにより、架橋反応を遅延させ、かつ、分子内のヒドロキシル基が、硬化剤(A)中のヒドロシリル基と縮合反応を起こす結果、水素を発生させることにより、変成シリコーン樹脂発泡体の密度を低下させることができると考えられる。ただし、上記付加反応と縮合反応により、化合物(E)を介した架橋構造を導入すると、発泡倍率が上がる一方で、機械強度の低下や、硬度の上昇等の不具合が生じる場合があるが、可塑剤(F)を添加すること、さらには、重合体(B)の数平均分子量(Mn)を15000以上とすることで、低密度と柔軟性の両立を達成しやすい傾向がある。化合物(E)以外の活性水素基含有化合物である発泡剤(D)の多量添加や、その他の発泡剤の添加等により倍率を向上させることも可能ではあるが、得られる変成シリコーン樹脂発泡体の硬度や物性バランスの観点から、本発明の化合物(E)を使用することが好ましい。
【0048】
化合物(E)としては、代表的には以下のものが例示できる。
【0049】
エチレングリコールモノアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル等の1価のアルコール;
グリセリンモノアリルエーテル等の多価アルコール;
ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、及びこれらの共重合体等の主鎖を構成する繰返し単位がオキシアルキレン系単位からなる重合体の片末端アリルエーテル、ビニルエーテルもしくは(メタ)アクリル酸エステル;
【0050】
ポリテトラメチレングリコール、ソルビトール、スクロース、テトラエチレンジアミン、エチレンジアミン等を開始剤とした1分子内にヒドロキシル基を3個以上含むもの等のポリエーテルポリオールの片末端アリルエーテル、ビニルエーテルもしくは(メタ)アクリル酸エステル;
【0051】
アジペート系ポリオール、ポリカプロラクトン系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール等のポリエステルポリオールの片末端アリルエーテル、ビニルエーテルもしくは(メタ)アクリル酸エステル;
ポリブタジエンポリオール;ひまし油系不飽和基含有ポリオール;
【0052】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、東亜合成化学工業(株)製「アロニクス5700」、4−ヒドロキシスチレン、日本触媒化学工業(株)製「HE−10」、「HE−20」、「HP−10」、及び「HP−20」[いずれも末端にヒドロキシル基を有するアクリル酸エステルオリゴマー]、日本油脂(株)製のブレンマーシリーズとして、PPシリーズ[ポリプロピレングリコールメタクリレート]、ブレンマーPEシリーズ[ポリエチレングリコールモノメタクリレート]、ブレンマーPEPシリーズ[ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールメタクリレート]、ブレンマーAP−400[ポリプロピレングリコールモノアクリレート]、ブレンマーAE−350[ポリエチレングリコールモノアクリレート]、ブレンマーNKH−5050[ポリプロピレングリコールポリトリメチレンモノアクリレート]、及びブレンマーGLM[グリセロールモノメタクリレート]、ヒドロキシル基含有ビニル系化合物とε−カプロラクトンとの反応により得られるε−カプロラクトン変成ヒドロキシアルキルビニル系モノマー等のヒドロキシル基含有ビニル系モノマー;
等のアルコール類;
等である。
【0053】
これらの化合物の中でも、反応性や取り扱い性の点から、主鎖を構成する繰返し単位がオキシアルキレン系単位からなる重合体の片末端アリルエーテル、ビニルエーテルもしくは(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、高倍化に寄与する効率が良いことからポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、及びこれらの共重合体の片末端アリルエーテルがさらに好ましく、ポリエチレングリコールの片末端アリルエーテルが特に好ましい。
【0054】
化合物(E)、及び重合体(B)の割合は、低密度の変成シリコーン樹脂発泡体が得られるという点から、化合物(E)/重合体(B)(モル/モル)が6以上であることが好ましく、7以上であることがより好ましく、8以上であることがさらに好ましい。
【0055】
本発明において、硬化剤(A)、重合体(B)、発泡剤(D)、化合物(E)、の配合割合は、各化合物の構造、目的とする発泡倍率、目的とする物性により適宜選択されるものであって特に限定はされないが、硬化剤(A)中のヒドロシリル基のモル数:xと、重合体(B)、及び化合物(E)中のアルケニル基のモル数:y、発泡剤(D)、及び化合物(E)中のヒドロキシル基のモル数:zの和との比率が、x/(y+z)=1/10〜50/1であることが好ましく、x/(y+z)=1/5〜30/1であることがより好ましく、x/(y+z)=1/2〜20/1であることがさらに好ましい。x/(y+z)が50/1を越えると、架橋密度が低くなり、十分な機械的強度が得られない場合があり、x/(y+z)が1/10未満であると、十分な発泡、硬化が起こらない場合がある。
【0056】
また、重合体(B)と化合物(E)のアルケニル基のモル数:yと発泡剤(D)と化合物(E)のヒドロキシル基のモル数:zとの比率には特に限定はなく、目的とする発泡倍率、目的とする物性、硬化剤(A)の骨格、発泡剤(D)の種類により、適宜選定することが出来るが、一般的には、y:z=100:1〜1:100が好ましく、y:z=10:1〜1:20がより好ましい。
【0057】
本発明の変成シリコーン樹脂発泡体には、本発明の効果を損なわない限り、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、貯蔵安定剤、気泡調整剤、界面活性剤等を必要に応じて添加しても良い。
【0058】
前記耐光性安定剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、及びイオウ原子、リン原子、1級アミン、2級アミンを含まないヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。ここで、耐光性安定剤とは、紫外線領域の波長の光を吸収してラジカルの生成を抑制する機能、または、光吸収により生成したラジカルを捕捉して熱エネルギーに変換し無害化する機能等を有し、光に対する安定性を高める化合物である。
【0059】
前記紫外線吸収剤としては、とくに限定されるものではないが、ベンゾオキサジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等が例示される。ここで、紫外線吸収剤とは、紫外線領域の波長の光を吸収してラジカルの生成を抑制する機能を有する化合物である。
【0060】
耐光性安定剤及び紫外線吸収剤の添加量は、重合体(B)100重量部に対して、0.01重量部以上5重量部以下であることが好ましく、さらには0.1重量部以上3重量部以下がより好ましく、特に0.3重量部以上2.0重量部以下が好ましい。耐光性安定剤及び紫外線吸収剤の添加量が当該範囲であると、経時的な表面粘着性の上昇を抑制する効果が得やすい傾向がある。
【0061】
また、前記貯蔵安定性改良剤としては、硬化剤(A)の貯蔵安定剤として知られている通常の安定剤で所期の目的を達成するものであれば使用することができる。
【0062】
このような貯蔵安定性改良剤の好ましい例としては、例えば、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物、チッ素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。具体例としては、例えばベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレート、ジメチルアセチレンジカルボキシレート、2−ペンテンニトリル、2,3−ジクロロプロペン、キノリン等が挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができるが、これらに限定されるわけではない。これらの中では、ポットライフや速硬化性の両立という点から、チアゾール、ベンゾチアゾール、ジメチルマレートが特に好ましい。
【0063】
前記貯蔵安定性改良剤の使用量は、硬化剤(A)、及び重合体(B)に均一に分散するかぎりほぼ任意に選ぶことができるが、硬化剤(A)中、SiH基1モルに対し、10-6モル以上10-1モル以下の範囲で用いるのが好ましい。前記使用量が10-6モル未満では硬化剤(A)の貯蔵安定性が充分に改良されない場合があり、また10-1モルを超えると硬化性が不充分になる場合がある。
【0064】
本発明の変成シリコーン樹脂発泡体には、必要であれば、気泡調整剤を添加しても良い。気泡調整剤の種類には特に限定はなく、通常使用される、例えば、タルク、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、シリカ等の無機固体粉末や、ポリエーテル変成シリコーンオイル等のシリコーンオイル系化合物、フッ素系化合物等が挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種用いることができる。気泡調整剤の使用量は、硬化剤(A)、重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、化合物(E)の合計量を100重量部としたときに、0.1重量部以上100重量部以下が好ましく、0.5重量部以上50重量部以下がより好ましい。
【0065】
また、硬化剤(A)、重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、発泡剤(D)、化合物(E)、可塑剤(F)を含んでなる発泡性液状樹脂組成物の相溶性を向上する目的で、界面活性剤を添加することもできる。界面活性剤の具体例としては、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化アルコキシプロピルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム液、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤等が挙げられ、一種または2種以上を使用することが出来る。
【0066】
また、特に硬化剤(A)の相溶性を向上する目的では、ポリオキシアルキレン−ポリジメチルシロキサンブロック共重合体のようなシリコーン系界面活性剤を添加することもできる。ポリオキシアルキレン−ポリジメチルシロキサンブロック共重合体としては、特に限定されず、例えば、AB型のジブロック体、ABA型のトリブロック体、(AB)n型のマルチブロック体のほか、枝分かれ型、ペンダント型、星型等が挙げられる。また、ポリオキシアルキレンの具体的な構造としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体等が挙げられ、また、その末端構造についても、OH基末端、メトキシ、t−ブトキシ等のエーテル末端、反応性のアリル基末端等が挙げられる。
【0067】
その他、必要に応じて、充填剤、ラジカル禁止剤、接着性改良剤、難燃剤、整泡剤、酸あるいは塩基性化合物、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、増粘剤、カップリング剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤等を、本発明の目的や効果を損なわない範囲において添加することができる。
【0068】
変成シリコーン樹脂発泡体の製造方法は、特に限定はないが、例えば、変成シリコーン樹脂として、硬化剤(A)、重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、発泡剤(D)、化合物(E)、可塑剤(F)を含んでなる発泡性液状樹脂組成物を使用して、以下のように製造できる。
【0069】
重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、発泡剤(D)、化合物(E)、及び可塑剤(F)を予め混合しておき、硬化剤(A)を添加し、攪拌混合して調整し、型枠に注入する、或いは、ベルトコンベア上の基材に垂らす等した後、適切な条件で発泡性液状樹脂組成物を発泡させてから硬化する、または硬化と同時に発泡させることにより、本発明の変成シリコーン樹脂発泡体が得られる。
【0070】
得られた変成シリコーン樹脂発泡体は、加熱養生を行うことが、圧縮残留ひずみを低減させることができる傾向があるため、好ましい。加熱養生の条件としては、特に限定するものではないが、20℃以上200℃以下で、10分以上72時間以下の条件で加熱養生を行うことが、圧縮残留ひずみが減少するため好ましい。変成シリコーン樹脂発泡体では、一般的には加熱養生により硬度が上昇し、触感が悪化する場合があるが、本発明の変成シリコーン樹脂発泡体においては、可塑剤(F)を含有していることから、過度の硬度上昇や触感悪化が抑制され、加熱養生後でも柔軟性と触感を維持したまま、圧縮残留ひずみを低減させることができる。
【0071】
本発明の、変成シリコーン樹脂発泡体の圧縮残留ひずみは、8%以下が好ましく、より好ましくは5%以下である。圧縮残留ひずみが小さいことは、例えば枕として用いた場合に、使用時のひずみが少なく、優れた復元性を発現する。
【0072】
圧縮残留ひずみは、JIS K 6400−4に従って実施しており、60℃、24時間条件下で発泡体を75%圧縮し、その後室温で開放し、30分間回復させた後の厚みの元の厚さに対する低下率をいう。
【0073】
本発明の変成シリコーン樹脂発泡体は、JIS K 6400−2に準拠して測定される40%圧縮時の硬度が、好ましくは30N以下であり、より好ましくは25N以下である。40%圧縮時の硬度が30Nを越える場合には、発泡体が過度に硬くなって触感が悪くなる傾向がある。40%圧縮時の硬度の下限値は特に限定するものではないが、低すぎると発泡体が柔らかくなり過ぎて沈み込みが大きく、底付きが起きるため、10N以上が好ましい。
【0074】
本発明の変成シリコーン樹脂発泡体は、密度が150kg/m3以下であることが好ましい。より好ましくは140kg/m3以下、さらに好ましくは130kg/m3以下である。密度が当該範囲であると、例えば寝具やクッション等として製品化した場合、比較的軽量であり日常的な持ち運びが楽になるものと想定される。下限は、特に限定するものではないが、好ましくは30kg/m3以上、さらに好ましくは50kg/m3以上、特に好ましくは70kg/m3以上である。密度が小さすぎる場合は、寝具やクッション等として使用する際、圧縮により底付きする場合がある。
【0075】
以上のようにして得られた本発明の変成シリコーン樹脂発泡体は、有害な副生物の発生が懸念される物質を含まず、柔軟性が高く触感が良い上に、圧縮残留ひずみが小さい。したがって、枕、マットレス等の寝具や各種クッション材として好適に使用することが出来る。中でも寝具として使用することが好ましい。
【0076】
変成シリコーン樹脂発泡体を寝具して使用する場合は、そのまま、あるいは発泡成形時に形成される表皮層を切除したり、適当な形状に切り出したり、打ち抜いたりしたものを使用することができる。あるいは、柔軟性が高く触感が良い特徴を生かす範囲であれば、未発泡体であるプラスチック、発泡倍率の異なる変成シリコーン樹脂発泡体、フィルム、布、不織布、紙、繊維等の素材と一体成形して用いても良く、変成シリコーン樹脂発泡体の表面に綿、アクリル繊維、毛、ポリエステル繊維等でできた織布や不織布を、張り合わす、縫合する等して組み合わせて使用しても良い。
【実施例】
【0077】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例、及び比較例中の測定、評価は、次の条件・方法により行った。なお、特にことわりがない場合、実施例、及び比較例の部や%は重量基準である。
【0078】
<発泡体の密度>
変成シリコーン樹脂発泡体から30mm角程度の直方体を切り出し、3辺のサイズを測定して体積(m3)を算出し、測定した重さ(kg)から除することで算出した。
【0079】
<触感>
発泡体を掌で圧縮したときの触感を以下の基準で評価した。
○:触感がよい…掌で圧縮したときに柔らかく、跳ね返りが弱いため、圧縮している間掌が包み込まれるような感触。
×:触感が悪い…掌で圧縮したときに硬い、もしくは跳ね返りが強く、抵抗を感じるような感触。
△:触感が良くも悪くもないもの
【0080】
<40%圧縮時の硬度>
JIS K 6400−2 A法に準拠し、40%圧縮時における硬度を測定した。
【0081】
<圧縮残留ひずみ>
JIS K 6400−4 C法に従い、60℃、24時間、75%圧縮で実施した。
【0082】
<使用化合物>
実施例・比較例においては、表1に示す化合物を用いた。
【0083】
【表1】

【0084】
(可塑剤3の合成)
苛性アルカリを用いた重合法により、数平均分子量3000のオキシプロピレン重合体グリコールを得た。得られたオキシプロピレン重合体グリコールを開始剤として複合金属シアン化物錯体(亜鉛ヘキサシアノコバルテート)を用いてプロピレンオキシドを重合し、数平均分子量20000の重合物を得た。
【0085】
(実施例1〜5)
100部の重合体(B)に対して、触媒(C)を0.13部、発泡剤(D)を12.3部、化合物(E)を20部、界面活性剤を2部、さらに可塑剤を表2に示した部数添加して十分に混合し、さらに、硬化剤(A)を16.1部添加してすばやく混合した。この混合物を型枠に注入し、50℃に設定したオーブンで60分加熱硬化し、変成シリコーン樹脂発泡体を得た。その後、100℃に設定したオーブンで5時間加熱養生を行った。加熱養生後の評価結果を表2に示す。
【0086】
(比較例1)
可塑剤を添加しないこと以外、実施例1と同様にして変成シリコーン樹脂発泡体を得た。その後、100℃に設定したオーブンで5時間加熱養生を行った。加熱養生後の評価結果を表2に示す。
【0087】
(比較例2)
100部の重合体(B)に対して、触媒(C)を0.029部、発泡剤(D)を7.7部、界面活性剤を2部加えて十分に混合し、さらに、硬化剤(A)を12部添加してすばやく混合した。この混合物を型枠に注入し、50℃に設定したオーブンで60分加熱硬化し、変成シリコーン樹脂発泡体を得た。その後、100℃に設定したオーブンで5時間加熱養生を行った。加熱養生後の評価結果を表2に示す。
【0088】
(参考例1)
比較例1において、100℃に設定したオーブンで5時間加熱養生を行わない時の評価結果を表2に示す。
【0089】
(参考例2)
比較例2において、100℃に設定したオーブンで5時間加熱養生を行わない時の評価結果を表2に示す。
【0090】
【表2】

【0091】
比較例1、2から、化合物(D)を添加することで密度が低下していることが分かる。しかしながら、比較例1、2では、加熱養生を行うと圧縮残留ひずみは小さい値になるが、硬度の上昇が見られ、触感も悪いものになっていた。これら比較例1、2について、参考例1、2には、加熱養生を行わないときの評価結果を示しているが、加熱養生を行わない時は、40%圧縮硬度が30N以下と柔軟な性質ではあるが、圧縮残留ひずみが大きくひずみ易いことが分かる。
【0092】
上記に対して、数平均分子量3000〜20000の可塑剤を含有している実施例では、加熱養生を行った後でも、40%圧縮硬度が25N以下の柔軟な性質が得られ、かつ、5%以下の低圧縮残留ひずみが得られることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰り返し単位がオキシアルキレン系単位からなる重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、発泡剤(D)、主鎖を構成する繰り返し単位がオキシアルキレン系単位からなり、分子鎖中に平均して1個未満のアルケニル基を有し、数平均分子量が1000以上である可塑剤(F)を含んでなる発泡性液状樹脂組成物を硬化してなる変成シリコーン樹脂発泡体。
【請求項2】
分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰り返し単位がオキシアルキレン系単位からなる重合体(B)の数平均分子量が15000以上である請求項1記載の変成シリコーン樹脂発泡体。
【請求項3】
発泡剤(D)が、分子鎖中にアルケニル基を有さず、数平均分子量が1000以下、水酸基当量1.0mmol/g以上の活性水素化合物である請求項1または2に記載の変成シリコーン樹脂発泡体。
【請求項4】
発泡助剤として、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基と、少なくとも1個のヒドロキシル基を有する化合物(E)を含んでなる発泡性液状樹脂組成物を硬化してなる請求項1〜3何れか一項に記載の変成シリコーン樹脂発泡体。
【請求項5】
60℃、24時間条件下で75%圧縮したときの圧縮残留ひずみが8%以下である請求項1〜4何れか一項に記載の変成シリコーン樹脂発泡体。
【請求項6】
密度が150kg/m3以下である請求項1〜5何れか一項に記載の変成シリコーン樹脂発泡体。
【請求項7】
40%圧縮時の硬度が30N以下である請求項1〜6何れか一項に記載の変成シリコーン樹脂発泡体。
【請求項8】
請求項1〜7何れか一項に記載の変成シリコーン樹脂発泡体からなる寝具。

【公開番号】特開2011−79937(P2011−79937A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232701(P2009−232701)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】