説明

変換器のノイズ低減装置

【課題】 本発明は、低周波域から高周波域まで広帯域のノイズ電流を除去することを目的とする。
【解決手段】 絶縁トランス13を介して入力した交流入力を整流する整流回路14、この整流回路14の出力端子間に直列接続されその接続中点が変換器5のアース側入力電源ラインに接続された2個のコンデンサC2,C3及び整流回路14の出力を動作電圧としてノイズ補償電流が流れる電流制御素子Tr1,Tr2を備えたノイズ低減回路9を有し、変換器5におけるスイッチング素子の駆動信号から生成した信号及びノイズ検出手段8のノイズ電流検出信号を合成した信号により電流制御素子Tr1,Tr2を駆動することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インバータ、コンバータ等の変換器において変換動作時に入力電源のアース側等に流れる大地漏洩電流であるノイズ電流を大幅に減少させることが可能な変換器のノイズ低減装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、インバータ、コンバータ等のスイッチング素子が発生する高調波が増大し、EMI(電磁妨害)問題がクローズアップされている。一般にインバータ装置で負荷に電力を供給すると、高速スイッチングによって負荷回路とフレームアース間及び負荷へのケーブル配線とアース間の浮遊容量Cを通じてノイズ電流である漏洩電流が流れる。
【0003】図6は、インバータ装置において漏洩電流の流れるメカニズムを示している。同図において、1は交流電源、2は交流を直流に変換する全波整流回路(PWMコンバータもあるがここでは簡単のため全波整流回路で説明する)、3は全波整流回路2の出力端子P・N間に接続された直流コンデンサ、4は直流コンデンサ3に並列に接続されたバッテリ等の直流電源、5は直流を交流に変換するインバータ回路、6はインバータ回路5で駆動される負荷である。インバータ回路5の各スイッチング素子Q1〜Q6がオン・オフすると、それに応じて負荷6の端子とフレームアース間にはパルス的な電圧が印加される。このときの電圧変化率(dv/dt)により、浮遊容量Cに漏洩電流I1が流れる。この漏洩電流I1がインバータ回路5を介したバッテリ等の直流電源4、負荷6及びアースからなる回路に流れ、漏電ブレーカの誤動作や感電事故等の原因となる。さらに、スイッチング素子Q1〜Q6がオン・オフする際のdv/dt,di/dtが原因と考えられる負荷回路の絶縁破壊、或いは他の電子機器への電磁誘導障害などの新たな問題も生じている。
【0004】図7を用いて従来のインバータ装置のノイズ低減回路を説明する。交流電源1〜インバータ回路5、負荷6の構成は図6と同様である。インバータ回路5はスイッチング素子Q1〜Q6からなる一般的な三相ブリッジのインバータである。スイッチング素子Q1〜Q6は制御回路(図示せず)からのPWMパルスによりオン・オフ制御される。インバータ回路5からの出力は負荷6の各相回路端子に入力されている。負荷6は大地との間に浮遊容量Cを持っているので、インバータ回路5からの出力であるパルス状の電圧が負荷6に印加されると、大地にノイズ電流である漏洩電流I1が流れる。このようなインバータ装置において、ノイズ低減回路としてEMIフィルタと呼ばれるラインフィルタ7が設けられている。ラインフィルタ7はノイズ除去の作用を持つが、スイッチング素子Q1〜Q6のオン・オフ周波数の上昇に伴いノイズ除去効果を十分に得ることは困難になる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来は、インバータ等の変換器におけるノイズ低減回路としてEMIフィルタと呼ばれるラインフィルタが用いられていた。しかしラインフィルタは変換器におけるスイッチング素子のオン・オフ周波数の上昇に伴いノイズ除去効果を十分に得ることは困難であった。これに対し、リアクトル又はリアクトルとコンデンサの組み合わせからなるノイズ低減回路を追加することで、ある程度、高周波域のノイズを除去することが可能となるが、ノイズ除去効果を高めるためには大きなリアクトルを用いることが必要となり、ノイズ低減回路が大型且つ高価になるという問題があった。
【0006】本発明は、上記に鑑みてなされたもので、低周波域から高周波域まで広帯域のノイズ電流を除去することができ、また小型化、低コスト化を図ることができる変換器のノイズ低減装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、インバータを含む変換器におけるノイズ低減装置であって、ノイズ電流を検出するノイズ検出手段と、絶縁トランスを介して入力した交流入力を整流する整流回路、この整流回路の正・負出力端子間に直列接続されその接続中点が前記変換器のアース側入力電源ラインに接続された2個のコンデンサ及び前記整流回路の出力電圧が動作電圧として印加されノイズ補償電流が流れる電流制御素子を備えたノイズ低減回路とを有し、前記変換器を構成するスイッチング素子の駆動信号から生成した信号及び前記ノイズ検出手段の検出信号を合成した信号により前記電流制御素子を駆動することを要旨とする。この構成により、インバータ等の変換器で負荷に電力を供給すると、高速スイッチングによって負荷回路とフレームアース間の浮遊容量を通じてノイズ電流である漏洩電流が生じる。このノイズ電流はノイズ低減回路を通って変換器のアース側入力電源ラインに流れる。このとき、ノイズ低減回路の電流制御素子を変換器におけるスイッチング素子の駆動信号から生成した信号及びノイズ検出手段の検出信号を合成した信号で駆動することで、スイッチング素子の駆動信号から生成した信号分でフィードフォワード的に高速にノイズ電流を減少させるとともにノイズ検出手段からの検出信号分でフィードバック制御によりノイズ電流を抑制するノイズ補償電流が生じ、このノイズ補償電流でノイズ電流が打ち消される。フィードフォワード的な制御要素を加えることで、フィードバック制御系の遅れ要素のために除去が困難な高周波域のノイズ電流を抑制することが可能となる。また、ノイズ低減回路は、2個のコンデンサの接続中点を変換器のアース側入力電源ラインに接続することで、そのアース側入力電源ラインに対して常に一定電圧差の動作電圧を確保することができ、ノイズ電流を打ち消すためのノイズ補償電流を任意に制御することができて制御不能になることがない。さらに、この動作電圧は、ノイズ低減回路が交流入力系に対して絶縁トランスを介しているためインバータ等の変換器に印加する電圧、容量に関係なく自由な電圧値に設定することが可能である。
【0008】請求項2記載の発明は、請求項1記載の変換器のノイズ低減装置において、前記ノイズ検出手段は、前記2個のコンデンサの接続中点からの接続点よりも、前記変換器の入力電源側に配置してなることを要旨とする。この構成により、ノイズ低減回路で低減されたノイズ電流がノイズ検出手段で検出される。
【0009】請求項3記載の発明は、請求項1記載の変換器のノイズ低減装置において、前記スイッチング素子の駆動信号から生成した信号は、前記変換器の各相に対応した複数のスイッチング素子に対する駆動信号の加算値としてなることを要旨とする。この構成により、フィードフォワード的に、より高速で且つ確実にノイズ電流を減少させることが可能となる。
【0010】請求項4記載の発明は、請求項1記載の変換器のノイズ低減装置において、前記スイッチング素子の駆動信号から生成した信号は、前記スイッチング素子の駆動信号の変化時をトリガとしたパターンの信号としてなることを要旨とする。この構成により、ノイズ低減回路の電流制御素子は、スイッチング素子の駆動信号の変化時でトリガすることで、フィードフォワード的に、高速、且つ確実にノイズ電流を減少させることが可能となる。
【0011】請求項5記載の発明は、請求項1記載の変換器のノイズ低減装置において、前記ノイズ低減回路における2個のコンデンサの接続中点を、前記変換器のアース側入力電源ラインへの接続に代えて、前記変換器の入力電源ライン間に他の2個のコンデンサを直列接続し、この他の2個のコンデンサの接続中点に接続してなることを要旨とする。この構成により、変換器の入力電源ラインや変換器及びその負荷系統の浮遊容量が大きい場合、他の2個のコンデンサの接続中点は仮想アース点となり、この仮想アース点を通じてノイズ補償電流を流すことでノイズ電流を打ち消すことが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】図1は、本発明の第1の実施の形態を示す図である。本実施の形態は、インバータのノイズ低減装置に適用されている。まず、本実施の形態の変換器のノイズ低減装置の構成を説明する。交流電源1〜インバータ回路5、負荷6の構成は、前記図6と略同様である。ノイズ低減装置は、ノイズ検出手段としての漏洩電流検出器8、ノイズ低減回路9及びインバータ回路5におけるスイッチング素子Q1〜Q6の駆動信号から出力を生成する演算回路10からなっている。漏洩電流検出器8は、例えばフェライトからなる環状のコアの零相CTであり、入力電源ラインの電流の差からなる漏洩電流を検出する。ノイズ低減回路9には、絶縁トランス13を介して入力した交流電源1からの交流を全波整流する整流回路14、この整流回路14の正側出力端子P1と負側出力端子N1との間に直列接続され、その接続中点がアース側入力電源ライン(全波整流回路2の負側出力端子N)に接続された2個のコンデンサC2,C3、及び整流回路14の出力電圧が動作電圧として印加され、ノイズ補償電流が流れる電流制御用素子としての2個のトランジスタTr1,Tr2が備えられている。2個のトランジスタTr1,Tr2は互いに逆極性を有し、トランジスタTr1はNPN型、トランジスタTr2はPNP型である。トランジスタTr1,Tr2の両ベース(制御端子)には、制御回路11からのインバータ回路5のスイッチング素子Q1〜Q6の駆動信号を基に演算回路10で生成した信号と漏洩電流検出器8の検出出力とを加算器を兼ねた増幅器12で合成した信号が与えられ、トランジスタTr1,Tr2は互いに逆に動作する。トランジスタTr1,Tr2の各エミッタは共通接続され、結合コンデンサC1を介してアースされている。このノイズ低減回路9におけるトランジスタTr1,Tr2は、高周波、高電流増幅であることが必要である。なお、ノイズ低減回路9を通って直流電源4に帰る電流は漏洩電流I1を減少させた電流であり、漏洩電流検出器8は、この漏洩電流I1を減少させた電流を検出するため、直流電源4側に配置することが必要である。演算回路10は、インバータ回路5の各相出力がP側となったときに(−)の信号を出力し、N側となったときに(+)の信号を出力する。ここでは、インバータ回路5の上アームであるQ1〜Q3の各スイッチング素子の駆動信号は減算し、下アームであるQ4〜Q6の各スイッチング素子の駆動信号は加算する。
【0014】次に、上述のように構成されたノイズ低減装置の動作を説明する。交流電源1は全波整流回路2で直流に整流され、直流コンデンサ3及び直流電源4につながる。この直流電圧はインバータ回路5の入力電圧となる。インバータ回路5のスイッチング素子Q1〜Q6は制御回路11からのPWMパルスによりオン・オフ制御され、負荷6はインバータ回路5の出力により駆動される。前述したように、負荷6は大地との間に浮遊容量Cを有している。したがって、インバータ回路5からの出力であるパルス状の電圧を負荷6に印加すると、大地にノイズ電流である漏洩電流I1が、直流電源4のアースされた端子を介して流れる。このとき、スイッチング素子Q1〜Q6の駆動信号に合わせた信号に、漏洩電流検出器8は直流回路に流れる漏洩電流I1を等価的に検出した信号を加えて、ノイズ低減回路9のトランジスタTr1,Tr2を駆動する。よって、漏洩電流検出器8の出力を増幅器12で増幅した駆動電流がトランジスタTr1,Tr2のベースに流入し、増幅され、漏洩電流I1を打ち消すような電流を注入する。
【0015】ここで、漏洩電流検出器8からの検出信号による動作と、スイッチング素子Q1〜Q6の駆動信号から生成された信号によるノイズ低減回路9の動作を別々に説明する。
【0016】前者では、漏洩電流I1が負荷6から直流電源4のアースラインに向かって流れる場合には、トランジスタTr2をオンさせ、結合コンデンサC1からトランジスタTr2を通ってインバータ回路5の入力ラインNにつながる閉回路にノイズ補償電流が流れ、アースラインを通って直流電源4のアース端子に流れ込む漏洩電流I1を打ち消すことになる。また、直流電源4のアースラインから負荷6へ漏洩電流I1が流れる場合には、トランジスタTr1がオンし、インバータ回路 5の直流入力ラインP、トランジスタTr1、結合コンデンサC1を通って流れる直流電源4の漏洩電流I1を打ち消すことになる。
【0017】後者では、インバータ回路5のスイッチング素子Q1がオンした場合、負荷6に正の電圧が印加され、漏洩電流I1が負荷6から直流電源4のアースラインに向かって流れるが、この時、演算回路10によりトランジスタTr2をオンさせ、結合コンデンサC1からトランジスタTr2を通ってインバータ回路5の入力ラインNにつながる閉回路にノイズ補償電流が流れ、アースラインを通って直流電源4のアース端子に流れ込む漏洩電流I1を打ち消すことになる。逆に、インバータ回路5のスイッチング素子Q2がオンした場合、負荷6に負の電圧が印加され、漏洩電流I1が直流電源4のアースラインから負荷6に向かって流れるが、この時、演算回路10によりトランジスタTr1をオンさせ、結合コンデンサC1からトランジスタTr1を通ってインバータ回路5の入力ラインPにつながる閉回路にノイズ補償電流が流れ、アースラインを通って直流電源4のアース端子に流れ込む漏洩電流I1を打ち消すことになる。
【0018】このように、漏洩電流検出器8からの漏洩電流検出によるフィードバック制御で漏洩電流を抑制するとともに、予め動作応答を予測したインバータ回路5のスイッチング信号に合わせた信号によりノイズ低減回路9のトランジスタTr1,Tr2を駆動することで、フィードフォワード的に漏洩電流を減少させることができる。フィードフォワード的な要素を加えることで、フィードバック制御系の遅れ要素のために除去が困難な高周波の漏洩電流を抑制することが可能になる。
【0019】本実施の形態では、整流回路14の正側P1は、アース電位に対して常に正の一定電圧を供給できる。また、整流回路14の負側N1はアース電位に対してやはり常に負の一定電圧を供給できる。そのため、入力電源ラインに対して一定の電圧差を常に確保できるので任意の制御が可能となる。また、絶縁トランス13を介しているためインバータ回路5に印加する電圧、容量に関係なく自由な動作電圧に設定することができる。そのため、一般に市販されている電流制御素子を使用することができ、構成が簡単で小形、安価、高速制御可能な変換器のノイズ低減装置を提供することが可能となる。
【0020】図2には、本発明の第2の実施の形態を示す。なお、図2及び後述の第3の実施の形態以下の各実施の形態を示す図において前記図1における構成要素と同一ないし均等のものは、前記と同一符号を以て示し、重複した説明を省略する。本実施の形態では、演算回路10におけるスイッチング素子Q1〜Q3の駆動信号から生成した信号を、インバータ回路5のスイッチング素子Q1〜Q3における駆動信号の変化をトリガとした信号パターンに変更する。インバータ回路5の上アームのスイッチング素子Q1〜Q3をオフからオンに変化したときに負のパルス信号を出力し、逆に下アームのスイッチング素子Q4〜Q6をオフからオンに変化したときに正のパルス信号を出力する演算回路10とする。これによって、第1の実施の形態と同様な効果が期待できる。漏洩電流検出器8の検出出力によるフィードバック制御で漏洩電流を抑制するとともに、インバータ回路5のスイッチング信号に合わせた信号によりノイズ低減回路9を駆動することで、フィードフォワード的に高周波の漏洩電流を抑制することが可能になる。
【0021】図3には、本発明の第3の実施の形態を示す。直流電源4は、中性点が接地されているか、もしくは接地されていないが、設置場所が遠く配線等のケーブルや、装置自体の浮遊容量が大きい場合に、直流電源4とインバータ回路5の間の直流電源ラインに直列接続されたコンデンサ15,16を追加する。この直列接続されたコンデンサ15,16は、ノイズ低減回路9よりインバータ回路5側に設置する。このコンデンサ15,16の中性点とノイズ低減回路9であるコンデンサC2,C3の直列接続中点を接続する。
【0022】この接続方式によって、直流電源4のアース接続点である中性点を等価に直列に結線したコンデンサ15,16の中性点で仮想アース点を作り、その仮想アース点にノイズ低減回路9におけるコンデンサC2,C3の接続中点を接続することで、ノイズ電流を打ち消すためのノイズ補償電流を流すことができる。直流電源4が絶縁されていて、配線等の浮遊容量でつながっている場合にも、追加したコンデンサ15,16の中性点の仮想アース点を通してノイズ補償電流を流すことができる。
【0023】中性点アースされた直流電源4でも、直流入力電源ラインから直列接続で分圧したコンデンサ15,16の中性点にノイズ低減回路9におけるコンデンサC2,C3の接続中点を接続することにより、漏洩電流検出器8からの検出信号によるフィードバック制御で漏洩電流を抑制するとともに、インバータ回路5のスイッチング信号に合わせた信号によりノイズ低減回路9を駆動することで、フィードフォワード的に高周波の漏洩電流を抑制することが可能になる。
【0024】ノイズ低減回路9における整流回路14の正側P1はアース電位に対して常に正の一定電圧を供給でき、また、整流回路14の負側N1はアース電位に対してやはり常に一定の負の電圧を供給できる。そのため、中性点アースされた直流電源4でもインバータ回路5に印加する電圧、容量に関係なく自由な動作電圧に設定することができるノイズ低減回路9が使用できる。そのため、一般に市販されている電流制御素子を使用することができ、構成が簡単で小形、安価、高速制御可能な変換器のノイズ低減装置を提供することが可能となる。
【0025】図4には、本発明の第4の実施の形態を示す。トランジスタTr1,Tr2に流せる電流は、その素子の定格電流で制限される。したがって、ノイズ電流である漏洩電流I1が大きな場合、図4に示すように、ノイズ低減回路9のトランジスタTrn-1,Trnを並列に接続することにより、流れる漏洩電流I1を制御することができる。なお、このような制御が可能な電流制御素子は、一般には電圧の低い且つ容量の小さなものしか存在せず、仮に高電圧大容量のトランジスタを製造したとしても使用目的が限られ、コストの非常に高いものになる。このように、ノイズ低減回路9は絶縁トランス13を介することで動作電圧が自由に設定可能であるため、トランジスタTrn-1,Trnを並列にすることで動作電圧に無関係に電流容量を増大させることが可能となる。
【0026】図5には、本発明の第5の実施の形態を示す。直流電源4とインバータ回路5の間で、且つノイズ低減回路9の外側の直流電源4側にEMIフィルタであるラインフィルタ17を付加する。
【0027】これにより、第1の実施の形態の作用・効果とともに、より高い高周波成分の除去が可能になる。また、ノイズ低減回路9により、低周波域の漏洩電流が減衰しているため、EMIフィルタ17は小型化が可能になる。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1記載の発明によれば、ノイズ電流を検出するノイズ検出手段と、絶縁トランスを介して入力した交流入力を整流する整流回路、この整流回路の正・負出力端子間に直列接続されその接続中点が変換器のアース側入力電源ラインに接続された2個のコンデンサ及び前記整流回路の出力電圧が動作電圧として印加されノイズ補償電流が流れる電流制御素子を備えたノイズ低減回路とを有し、前記変換器を構成するスイッチング素子の駆動信号から生成した信号及び前記ノイズ検出手段の検出信号を合成した信号により前記電流制御素子を駆動するようにしたため、ノイズ低減回路の電流制御素子の駆動・制御に、スイッチング素子の駆動信号から生成した信号分によりフィードフォワード的な制御要素を加えることで、フィードバック制御系の遅れ要素のために除去が困難な高周波域のノイズ電流を抑制することができて、低周波域から高周波域まで広帯域のノイズ電流を除去することができる。また、ノイズ低減回路が交流入力系に対し絶縁トランスを介していることで、電流制御素子の動作電圧は、インバータ等の変換器に印加する電圧、容量に関係なく自由な電圧値に設定することができる。したがって電流制御素子には一般の市販のものを使用することができて、ノイズ低減回路の低コスト化及び小型化を達成することができる。
【0029】請求項2記載の発明によれば、前記ノイズ検出手段は、前記2個のコンデンサの接続中点からの接続点よりも、前記変換器の入力電源側に配置したため、ノイズ検出手段により、ノイズ低減回路で低減されたノイズ電流が検出され、このノイズ電流の検出信号分によるフィードバック制御でノイズ電流を確実に除去することができる。
【0030】請求項3記載の発明によれば、前記スイッチング素子の駆動信号から生成した信号は、前記変換器の各相に対応した複数のスイッチング素子に対する駆動信号の加算値としたため、フィードフォワード的に、より高速で且つ確実にノイズ電流を減少させることができる。
【0031】請求項4記載の発明によれば、前記スイッチング素子の駆動信号から生成した信号は、前記スイッチング素子の駆動信号の変化時をトリガとしたパターンの信号としたため、ノイズ低減回路の電流制御素子は、スイッチング素子の駆動信号の変化時でトリガすることで、フィードフォワード的に、高速、且つ確実にノイズ電流を減少させることができる。
【0032】請求項5記載の発明によれば、前記ノイズ低減回路における2個のコンデンサの接続中点を、前記変換器のアース側入力電源ラインへの接続に代えて、前記変換器の入力電源ライン間に他の2個のコンデンサを直列接続し、この他の2個のコンデンサの接続中点に接続したため、変換器の入力電源ラインや変換器及びその負荷系統の浮遊容量が大きい場合、他の2個のコンデンサの接続中点は仮想アース点となり、この仮想アース点を通じてノイズ補償電流が流れてノイズ電流を打ち消すことができる。この仮想アース点方式は、変換器の入力電源である直流電源が中性点アースされている場合に特に効果的となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態である変換器のノイズ低減装置の回路図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態の回路図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態の回路図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態の回路図である。
【図5】本発明の第5の実施の形態の回路図である。
【図6】従来のインバータ装置における漏洩電流の流れるメカニズムを説明するための回路図である。
【図7】従来のインバータ装置のノイズ低減回路を示す回路図である。
【符号の説明】
2 全波整流回路(入力電源)
4 直流電源(入力電源)
5 インバータ回路(変換器)
6 負荷
8 漏洩電流検出器(ノイズ検出手段)
9 ノイズ低減回路
10 演算回路
11 制御回路
12 加算器を兼ねた増幅器
13 絶縁トランス
14 整流回路
15,16 他の2個のコンデンサ
17 EMIフィルタ
2,C3 2個のコンデンサ
1〜Q6 スイッチング素子
Tr1,Tr2 トランジスタ(電流制御素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 インバータを含む変換器におけるノイズ低減装置であって、ノイズ電流を検出するノイズ検出手段と、絶縁トランスを介して入力した交流入力を整流する整流回路、この整流回路の正・負出力端子間に直列接続されその接続中点が前記変換器のアース側入力電源ラインに接続された2個のコンデンサ及び前記整流回路の出力電圧が動作電圧として印加されノイズ補償電流が流れる電流制御素子を備えたノイズ低減回路とを有し、前記変換器を構成するスイッチング素子の駆動信号から生成した信号及び前記ノイズ検出手段の検出信号を合成した信号により前記電流制御素子を駆動することを特徴とする変換器のノイズ低減装置。
【請求項2】 前記ノイズ検出手段は、前記2個のコンデンサの接続中点からの接続点よりも、前記変換器の入力電源側に配置してなることを特徴とする請求項1記載の変換器のノイズ低減装置。
【請求項3】 前記スイッチング素子の駆動信号から生成した信号は、前記変換器の各相に対応した複数のスイッチング素子に対する駆動信号の加算値としてなることを特徴とする請求項1記載の変換器のノイズ低減装置。
【請求項4】 前記スイッチング素子の駆動信号から生成した信号は、前記スイッチング素子の駆動信号の変化時をトリガとしたパターンの信号としてなることを特徴とする請求項1記載の変換器のノイズ低減装置。
【請求項5】 前記ノイズ低減回路における2個のコンデンサの接続中点を、前記変換器のアース側入力電源ラインへの接続に代えて、前記変換器の入力電源ライン間に他の2個のコンデンサを直列接続し、この他の2個のコンデンサの接続中点に接続してなることを特徴とする請求項1記載の変換器のノイズ低減装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2002−51570(P2002−51570A)
【公開日】平成14年2月15日(2002.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−235876(P2000−235876)
【出願日】平成12年8月3日(2000.8.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】