説明

変換器ヘッドおよび変換器ヘッド上のコンタクトパッドの製造方法

【課題】 耐摩耗性が改善された変換器ヘッド上のコンタクトパッドを提供する。
【解決手段】 コンタクトパッドは、第1の降伏強度を有する材料の第1の層と、第1の層に積層された、第2の降伏強度を有する材料の第2の層とを含む。第1の層および第2の層からなる積層複合体の第3の降伏強度は、ホールペッチ現象のため、第1の降伏強度および第2の降伏強度を上回る。保護膜が、コンタクトパッドの第1の層および第2の層の端部を覆うことによって磨耗を防止する。コンタクトパッドまたはその他の超小型電子部品構造の製造方法は、第1の降伏強度を有する材料の第1の層を基板上に配置することを含む。第2の降伏強度を有する材料の第2の層を第1の層の上に配置する。第1の層および第2の層の端部を保護膜材料で被覆して第1および第2の層の磨耗を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変換器ヘッドおよび変換器ヘッド上のコンタクトパッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
磁気記憶システムにおいて、薄膜変換器ヘッドは、スライダの表面上に配置された複数の超小型電子部品(たとえば再生部、記録部、1つ以上の再生部シールド、および1つ以上の戻り磁極)を含む。この変換器ヘッドは、アクチュエータアームの遠位端に設けられ、回転する磁気ディスクの表面の上に位置付けられる。揚力が、スライダと回転するディスクとの間の空気力学的相互作用によって生じる。この揚力に対抗して、等しくかつ逆向きのばね力がアクチュエータアームを通して加えられることにより、回転する磁気ディスクの表面上で、予め定められた浮上高さが保たれる。この浮上高さは、回転する磁気ディスクの表面とスライダアセンブリの最下点(すなわちコンタクトパッド)との間の間隔であると定義される。
【0003】
変換器ヘッドの設計の1つの目的は、超小型電子部品とディスク面との間の浮上高さをごく小さくすることである。浮上高さをディスクに近付けた磁気記憶システムを設計することにより、より短い波長またはより高い周波数の信号を用いてデータをディスクに記録できる。より短い波長またはより高い周波数の記録信号により、磁気ディスクの密度をより高くし格納データ記録容量をより大きくすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンタクトパッドが磁気ディスクと接触せずしたがってコンタクトパッド上に磨耗が生じないことが理想的である。しかしながら実際は、ディスク動作がさまざまな状態にある間に、コンタクトパッドは回転する磁気ディスク上の最も高い表面突起と接触する。浮上高さを小さくしてディスク性能を改善しようとすると、一般的にはコンタクトパッドがディスクに接触する頻度が高くなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
ある実施例において、ここで開示される技術は、再生部およびコンタクトパッドを有する変換器ヘッドを含む。コンタクトパッドは、再生部を超えて延在し、材料の第1の層と、材料の第2の層と、保護膜とを含む。材料の第1の層は、第1の降伏強度を有する。材料の第2の層は、第2の降伏強度を有し、材料の第1の層に積層される。第1の層および第2の層からなる積層複合体の第3の降伏強度は、第1の降伏強度および第2の降伏強度を上回る。保護膜は、第1の層および第2の層の端部と接触する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】積層体である第1の戻り磁極とともにスライダの後部面上に配置された超小型電子部品のアレイの一例の平面図を示す。
【図2】図1の超小型電子部品のアレイの一例の断面2−2に沿う断面等角図を示す。
【図3】積層体である第2の戻り磁極とともにスライダの後部面上に配置された超小型電子部品のアレイの一例の平面図を示す。
【図4】積層体である再生部シールドとともにスライダの後部面上に配置された超小型電子部品のアレイの一例の平面図を示す。
【図5】変換器アームの一例の平面図を、変換器アームの遠位端にある変換器ヘッドの詳細図とともに示す。
【図6】ここで開示される技術に従い積層体であるコンタクトパッドを作成するための作業の例を示す。
【図7】ディスクドライブの一例の平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
詳細な説明
ディスク動作がさまざまな状態にある間に、変換器ヘッドスライダ上のコンタクトパッドは、回転する磁気ディスク上の最も高い表面突起と接触する。たとえば、コンタクトパッドとディスクとの接触は、ハードディスクの組立および検査中に、または変換器ヘッドスライダの浮上高さを設定する定期的調整作業中に生じることがある。さらに、何らかの製造欠陥またはスライダの経路にある汚染物質が、ディスク動作中にコンタクトパッドに当たることがある。加えて、ディスク固有の凹凸によってコンタクトパッドが周期的に磁気ディスクに接触する場合がある。また、ハードディスクの急激な運動によって(たとえばハードディスクドライブを備えたラップトップコンピュータが落下して硬い面に当たったとき)、コンタクトパッドがディスクと接触することもある。
【0008】
変換器ヘッドとディスクはこのように接触する可能性があるので、これに対処するために、変換器ヘッドの1つ以上の超小型電子部品を薄い保護膜材料で被覆することにより、コンタクトパッドおよび/または変換器ヘッドの部品を磨耗および潜在的な汚染物質への露出から保護することができる。しかしながら、この保護膜材料は、変換器ヘッドとディスクとの間に追加の層を加えることで、ディスク内の磁気媒体と変換器ヘッドとの間の距離を増加させる。磁気媒体と変換器ヘッドとの間の距離の増加は、浮上高さの増加と同様、ディスクの性能を低下させる。このため、従来、変換器ヘッドの保護膜はできる限り薄くされてきた。しかしながら、より薄い変換器ヘッド保護膜は、典型的には耐摩耗性が低い。結果として、変換器ヘッドの保護膜層の耐摩耗性と、磁気媒体と変換器ヘッドとの間の距離の増加との兼ね合いを図ることが多くなる。
【0009】
典型的には、変換器ヘッドの保護膜の耐摩耗性は、保護膜としてより硬い材料を用いること、保護膜の厚みを増すこと、および/またはコンタクトパッドと対応する回転磁気ディスクとが接触する可能性を低くすることによって、改善される。ここで開示される技術では、保護膜の耐摩耗性を高めるために、コンタクトパッドは積重ねられた複数の層を含む。
【0010】
図1は、積層体である第1の戻り磁極104とともにスライダ102の後部面上に配置された超小型電子部品100のアレイの一例の平面図を示す。超小型電子部品100は、基板116上に設けられ誘電体材料118によって隔てられた、情報を磁気媒体に対して読み書きするためのさまざまな部品(すなわち再生部106、記録部108、第1の再生部シールド110、第2の再生部シールド112、第1の戻り磁極104、および第2の戻り磁極114)を含む。超小型電子部品は、誘電体材料118によって、外部環境からも隔てられている。他の実施例では、さらなる超小型電子部品がスライダ102上に配置されていてもよい。図1では、超小型電子部品100のアレイは正しい比率で示されていない。多くの実施例において、基板116、超小型電子部品、および誘電体材料118のx方向の厚みは、y方向の幅と比較して非常に小さい。
【0011】
超小型電子部品100は、さまざまな超小型電子部品製造技術を用いてスライダ102上に設置できる。たとえば、基板材料116(たとえばシリコンウエハ)を、さまざまな超小型電子部品を受けるのによく適合したスライダ102に装着することができる。超小型電子部品100は、1つ以上の薄膜を用いて基板116上に配置されることが多い。この薄膜をパターニングすることによって、この層に特徴的な形状を与え、またはこの層に開口を形成してもよい。薄膜も超小型電子部品を隔てる誘電体材料118を含んでいてもよい。さらに、薄膜をエッチングすることによって薄膜または基板116の望ましくない部分を除去してもよい。さらに、薄膜および/または基板を、ドーピング(熱拡散および/またはイオン注入を用いる)、微細切削/微細加工、化学機械平坦化、ウエハ洗浄、またはそれ以外の表面処理、およびワイヤボンディングを含むがこれらに限定されないものを用いて、さらに改良してもよい。
【0012】
超小型電子部品100が堆積によって製造される実施例では、誘電体材料118がまず基板116上に配置される。誘電体材料118は、典型的には超小型電子部品100を基板116に結合するおよび/または超小型電子部品100を誘電体材料118内に固定する役割を果たす非導電性材料である。誘電体材料118は、さまざまな超小型電子部品の間の隙間を埋めてもよく、また、超小型電子部品100を包み込むことによって超小型電子部品100を外部環境(たとえば物理的衝突、汚染物質、および酸化)を原因とする損傷から保護してもよい。x方向に移動して、第1の再生部シールド110が誘電体材料118上に配置される。再生部106は第1の再生部シールド110上に配置され、第2の再生部シールド112は再生部106の上に配置される。再生部シールド110、112は、再生部106を、超小型電子部品100のその他の構成部品(たとえば記録部108)から、電気的および/または磁気的に分離する役割を果たす。
【0013】
さらにx方向に移動して、第2の戻り磁極114は、誘電体材料118の層が第2の再生部シールド112を第2の戻り磁極114から分離している状態で、配置される。次に、記録部108および第1の戻り磁極104は、誘電体材料118の層が記録部108と戻り磁極104、114それぞれとの間にある状態で、配置される。磁束は、記録部108から、記録部108のごく近くにある磁気媒体に流れ、データのビットを磁気媒体に書込むために、戻り磁極104、114のうち一方または双方を通って戻る。誘電体材料118は、第1の戻り磁極104を覆い、超小型電子部品100を外部環境から封止する。誘電体材料118は、超小型電子部品100のすべての領域に対して1つの材料を含むものでもよく、または、基板に隣接する、超小型電子部品の間にある、および/または超小型電子部品100を外部環境から封止する、誘電体材料118の層に対して、異なる材料を含んでいてもよい。
【0014】
超小型電子部品(たとえば再生部106、記録部108、再生部シールド110、112、および/または戻り磁極104、114)は、磁気媒体へのおよび磁気媒体からの磁束を検出および/または通過させる。このため、超小型電子部品は、周知の磁気特性を有する金属を含むことが多い。しかしながら、変換器ヘッドの保護膜は、より硬い材料(たとえばセラミック)の上に配置されたときに耐久性がより高くなる。より具体的には、基板上の薄い被膜の耐摩耗性は、基板および被膜双方の機械的特性の影響を受ける。なぜなら、異物(たとえば磁気媒体)との接触の弾性応力場は、被膜を通して基板の中に広がるからである。このため、接触応答は、基板および被膜双方の複合応答である。この現象を調査するために、ピンオンディスク往復ボール試験(pin-on-disk reciprocating ball test)およびナノ押込磨耗ボックス試験(nanoindentation wear box text)という2つの試験を行なった。
【0015】
このピンオンディスク往復ボール試験は、非晶質炭素で被覆された鋼製の玉軸受を、2つの試験片において摺動させることを含む。この2つの試験片のうち第1の試験片は、堆積させた金属(たとえばNiFe)およびダイヤモンドライクカーボン膜で被覆されたシリコン基板を有し、第2の試験片は、セラミック材料(たとえばアルミナ)およびダイヤモンドライクカーボン膜で被覆されたAl−TiC基板を有する。ピンオンディスク往復ボール試験の実施例の一例において、鋼球は直径が9.5mmであり、鋼球と試験片との間の接触力を、20ミリニュートンと500ミリニュートンとの間で数回増分させて測定し、鋼球を、試験片において、接触力の1回の増分当たり毎秒8ミリメートルで3分間移動させる。さらに、この実施例の一例において、堆積させた金属材料は、厚み400オングストロームのスパッタリングされたパーマロイであり、セラミック材料は、厚み3マイクロメートルのスパッタリングされたアルミナである。さらに、この実施例の一例において、パーマロイおよびアルミナはよく似たヤング率を有するが、アルミナの硬度はパーマロイと比較しておよそ50%高い。加えて、この実施例の一例では、アルミナは高降伏応力で比較的脆いため、押込試験を受けたときには、アルミナよりも低降伏応力で比較的延性があるパーマロイよりも破断しやすい。
【0016】
上記のようにパーマロイおよびアルミナで被覆された試験片に対する上記ピンオンディスク往復ボール試験の終了後、結果として生じた試験片上の磨耗の痕跡を検査すると、力が特定の大きさのときに、試験片上のダイヤモンドライクカーボン膜が軽度の磨耗から重度の磨耗に移行することが判明した。この移行を本明細書では臨界磨耗力と呼ぶ。アルミナで被覆された試験片に対する臨界磨耗力は、パーマロイで被覆された試験片の少なくとも2倍である。さらに、被膜の厚み(パーマロイ被膜およびアルミナ被膜双方)を増すと、臨界磨耗力も増す。
【0017】
ナノ押込磨耗ボックス試験は、3面のピラミッド型のダイヤモンドの「ベルコビッチ(Berkovich)」圧子チップを有するナノ圧子を用いることを含む。この圧子チップは、保護膜を有する完成したスライダの変換器上のコンタクトパッド領域(ニッケル鉄合金からなる)および誘電体領域(アルミナからなる)双方を通過する。圧子チップは、5マイクロニュートンと60マイクロニュートンとの間で負荷を数回増分させながら、蛇行パターンで変換器を通過することによって、以下「磨耗ボックス」と呼ぶ、2マイクロメートル四方の正方形の磨耗領域を、変換器上に形成する。負荷の増分毎に磨耗して失われた保護膜材料(たとえばダイヤモンドライクカーボン材料)の量を、変換器上の炭素ピーク高さを磨耗ボックス内の保護膜の厚みに関連付けるように較正されたオージェ電子分光法を用いて求めてもよい。
【0018】
ナノ押込磨耗ボックス試験の実施例の一例において、ニッケル鉄合金コンタクトパッド領域上の保護膜は、負荷が20マイクロニュートンのときに磨耗し始め、40マイクロニュートンに負荷を増分した後、15オングストロームの保護膜材料が磨耗した。アルミナ誘電体領域上の保護膜は、磨耗し始めるまでに、コンタクトパッド上の保護膜よりもはるかに大きい負荷(すなわち臨界磨耗力)に耐えることができる。さらに、臨界磨耗力を超えた後は、コンタクトパッド領域と比較して、誘電体領域で磨耗する保護膜材料ははるかに少ない。
【0019】
ピンオンディスク往復ボール試験およびナノ押込磨耗ボックス試験はどちらも、保護膜材料の磨耗抵抗が、アルミナ基板を試験したときの方が、パーマロイ基板を試験したときよりもはるかに大きいことを示す。アルミナおよびパーマロイは同様のヤング率を有するので、磨耗性能が改善するのは、アルミナがパーマロイよりも高い硬度(すなわち降伏強度)を有するからである。結果として、再生部106、記録部108、再生部シールド110、112、および/または戻り磁極104、114により硬い材料を用いることにより、再生部106、記録部108、再生部シールド110、112、および/または戻り磁極104、114を覆う保護膜の磨耗抵抗を改善することができる。
【0020】
残念ながら、再生部106、記録部108、再生部シールド110、112、および/または戻り磁極104、114にとって不可欠の磁気特性に適うより硬い材料を、常に利用できるとは限らない。より硬い材料の使用に代わるのは、所望の磁気特性を有するより軟質の材料をともに積層することである。結果として得られる降伏強度は、ホールペッチ現象により、改善される。この現象は、粒界が転位運動を妨げ、1つの結晶粒内の転移の数が、転位が粒界をどれほど横断しやすいかおよび結晶粒から結晶粒へと移動しやすいかに影響するという理論に基づいて作用する。各層を非常に薄いものにすると、複合材料における粒径が現象する。結果として、各層を単独で構成する材料と比較して、降伏強度が改善されたより脆性が高い材料となる。
【0021】
このため、超小型電子部品のうち1つ以上が、交互に積層された軟質金属の積層体を含むことにより、超小型電子部品の降伏強度を、超小型電子部品の磁気特性に大きな影響を与えることなく、高めることができる。図1に示される実施例では、第1の戻り磁極104はともに積層された軟質金属からなる8つの薄膜層を含む。その他さまざまな実施例において、第1の戻り磁極104が、これよりも多いかまたは少ない積層された層を含んでいてもよく、1つ以上のその他の超小型電子部品も積層されてもよい。
【0022】
実施例の一例において、コンタクトパッドは、各層の厚みが200ナノメートル未満であるが50ナノメートルよりも大きい、銀(または銀合金)および銅(または銅合金)からなる薄膜を交互にしたものを含む。厚みは50ナノメートル未満で10ナノメートルよりも大きいものを使用することもできるが、このように薄い膜を加工することが困難な場合もある。純金属として、銀および銅はどちらも、軟質金属に典型的な比較的低い降伏強度を有する。しかしながら、銀および銅の層の厚みを小さくすると、銀および銅の複合体は、より降伏硬度が高い性質を示し最終的には脆性の性質を示す。
【0023】
他の実施例では、非強磁性材料を強磁性材料とともに積層して所望の降伏強度を得るとともに、複合材料の所望の磁気特性を保つことができる。可能性のある強磁性−強磁性および強磁性−非強磁性の組合せの例は、ニッケルフェライト(NiFe)/コバルトニッケルフェライト(CoNiFe)、コバルトフェライト(CoFe)/CoNiFe、NiFe/ニッケルリン(NiP)、CoFe/コバルトリン(CoP)、およびCoFe/NiFeを含む。さまざまな実施例において、2つ以上の異なる材料を含む2つ以上の層があってもよい。本明細書では上記以外の厚みおよび材料も意図されている。
【0024】
図2は、図1の超小型電子部品100のアレイの一例の断面2−2に沿う断面等角図を示す。図2は説明のためだけに描かれているため、超小型電子部品200のいずれについてもスライダ202に対する正しい比率で示されていない。たとえば、多くの実施例において、超小型電子部品200および誘電体材料218のx方向の厚みは、超小型電子部品200および誘電体材料218のy方向の幅およびz方向の高さと比較して、誇張して示されている。典型的には、超小型電子部品(たとえば再生部206、記録部208、第1の再生部シールド210、第2の再生部シールド212、第1の戻り磁極204、および第2の戻り磁極214)のうち1つ以上は、その他の超小型電子部品よりも前に磁気媒体222と接触するようにされている。より具体的には、他の超小型電子部品よりも前に磁気媒体222に接触するようにされている超小型電子部品は、磁気媒体222により近づくように突出していてもよい。磁気媒体222の最も近くまで延びている超小型電子部品を、本明細書ではコンタクトパッドと呼ぶ。図2において、第1の戻り磁極204は、他の超小型電子部品よりも磁気媒体222の近くまで延びているので、コンタクトパッドである。
【0025】
図1に関して詳述したように、x方向に移動すると、図2は、基板216上に配置された誘電体材料218を示す。第1の再生部シールド210は誘電体材料218の上に配置される。再生部206は第1の再生部シールド210上に配置され、第2の再生部シールド212は再生部206上に配置される。誘電体材料218の層は、第2の再生部シールド212を、第2の戻り磁極214から分離する。記録部208および第1の戻り磁極204は、記録部208および戻り磁極204、214それぞれの間に誘電体材料218の層を挟んだ状態で、配置される。第1の戻り磁極204(ここではコンタクトパッド)は、この実施例ではともに積層される軟質金属からなる8つの薄膜層を含む。さまざまな他の実施例では、第1の戻り磁極204はこれよりも多いかまたは少ない積層された層を含んでいてもよく、他の超小型電子部品も第1の戻り磁極204に加えてコンタクトパッドとして用いてもよい。誘電体材料218は、第1の戻り磁極204を覆い、超小型電子部品200を封止する(ただし磁気媒体222に対向する超小型電子部品の部分は露出したままである)。
【0026】
超小型電子部品200は、第1の戻り磁極204に取付けられたヒータ224を備えていてもよい。ヒータ224は、充電されると膨張することによって第1の戻り磁極204を磁気媒体に近付けるようにされている(負のz方向)。第1の戻り磁極204を押して磁気媒体に近付けると、第1の戻り磁極204は、磁気媒体に最も近い超小型電子部品となることにより、有効なコンタクトパッドとなる。同様に、ヒータ224は、収縮することによって第1の戻り磁極204を磁気媒体から引離す(正のz方向)。他の実施例では、ヒータはなく、第1の戻り磁極204は、磁気媒体222に向かって負のz方向に定められた距離だけ延びる。さらに他の実施例では、ヒータ224は、他の超小型電子部品(たとえば再生部206、記録部208、第1の再生部シールド210、第2の再生部シールド212、および第2の戻り磁極214)のうち1つ以上に取付けられ、他の超小型電子部品を正のz方向および/または負のz方向に移動させる。この実施例では、ヒータ224に取付けられた他の超小型電子部品のうち1つ以上がコンタクトパッドとして機能する。
【0027】
誘電体材料218から磁気媒体222に向かって突出した第1の戻り磁極204の一部は、保護膜226で覆われている。ある実施例では、保護膜226は第1の戻り磁極204の8つの薄膜層各々の端部と接触する。保護膜226は、第1の戻り磁極を、磁気媒体との衝突によって生じる損傷または磁気媒体上の汚染物質から保護する。保護膜226は、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)材料を含むことが多いが、他の材料を用いて第1の戻り磁極204の露出した部分を覆ってもよい。保護膜226はまた、磁気媒体222または磁気媒体222上の汚染物質と接触するかもしれない他の超小型電子部品の露出した部分を被覆してもよい。たとえば、第2の戻り磁極214が、第1の戻り磁極204に加えてまたはその代わりにコンタクトパッドである場合、第2の戻り磁極214も保護膜226で覆われていてもよい。さらに、磁気媒体222に対向する超小型電子部品200の表面全体を保護膜226で覆ってもよい。なぜなら、保護膜226を超小型電子部品200の特定領域のみに集中させるのが困難なことがあるからである。図1に関してより詳しく述べたように、1つの軟質金属第1戻り磁極214ではなく積層体である複合第1戻り磁極214を用いることにより、第1の戻り磁極204の領域における保護膜226の耐磨耗性が改善される。
【0028】
図3は、積層体である第2の戻り磁極314とともにスライダ302の後部面上に配置された超小型電子部品300のアレイの一例の平面図である。図1および図2の超小型電子部品100、200と同様、超小型電子部品300は、情報を磁気媒体に対して読み書きするためのさまざまな構成部品(たとえば再生部306、記録部308、第1の再生部シールド310、第2の再生部シールド312、第1の戻り磁極304、および第2の戻り磁極314)を含む。
【0029】
図1および図2の実施例とは異なり、図3では、第1の戻り磁極304ではなく第2の戻り磁極314が、コンタクトパッドであり、この実施例ではともに積層された4つの薄膜層を含む。この実施例において、第2の戻り磁極314は、第1の戻り磁極304を含む他の超小型電子部品よりも磁気媒体の近くまで延びる。さまざまな他の実施例では、第2の戻り磁極314がこれよりも多いかまたは少ない積層された層を含んでいてもよく、第1の戻り磁極304の代わりにではなく第1の戻り磁極304に加えてコンタクトパッドとして用いられてもよい。
【0030】
図4は、積層体である再生部シールド410、412とともにスライダ402の後部面上に配置された超小型電子部品400のアレイの一例の平面図を示す。図1〜図3の超小型電子部品100、200、300と同様、超小型電子部品400は、情報を磁気媒体に対して読み書きするためのさまざまな構成部品(たとえば再生部406、記録部408、第1の再生部シールド410、第2の再生部シールド412、第1の戻り磁極404、および第2の戻り磁極414)を含む。
【0031】
図1〜図3の実施例とは異なり、図4では、戻り磁極404、414のうちの1つ以上ではなく再生部シールド410、412が、コンタクトパッドであり、この実施例では各々がともに積層された軟質金属からなる2つの薄膜層を含む。この実施例では、再生部シールド410、412は、戻り磁極404、414および再生部406を含む他の超小型電子部品よりも磁気媒体の近くまで延びる。さまざまな他の実施例では、再生部シールド410、412各々が、より多くの積層された層を含んでいてもよく、戻り磁極404、414の代わりにではなく、戻り磁極404、414のうちいずれかまたは双方に加えてコンタクトパッドとして使用されてもよい。
【0032】
図5は、アクチュエータアセンブリ528の一例の平面図を、アクチュエータアセンブリ528の遠位端にある変換器ヘッド530の詳細図とともに示す。アクチュエータアセンブリ528は、1つ以上のアクチュエータアーム532を含み、1つ以上のフレクシャ534がアクチュエータアーム532各々から延びている。各フレクシャ534の遠位端に設けられているのは、空気軸受スライダ502を含むヘッド530であり、このスライダによって、ヘッド530は、関連するディスクの対応する面の上のごく近くで浮上することができる。図5の変換器ヘッド530は関連するディスクから見上げた状態で示されている。
【0033】
スライダ502は、空気軸受の特徴536を取り入れることにより、スライダ502とその下にあり回転する磁気ディスクとの間の空気力学的相互作用を制御して、変換器ヘッド530の浮上高さを設定し制御する。(先に詳述した)超小型電子部品500は、スライダ502の後端上に設けられる。他の実施例では、超小型電子部品500をスライダ502の先端または側端に設けてもよい。超小型電子部品500は、誘電体材料518の層によって、スライダ502から隔てられ、環境から封止される。超小型電子部品500は、図5に示される空気軸受の特徴536上に設けられてもよく、または、スライダ502上の他の場所に設けられてもよい。
【0034】
図6は、ここに開示される技術に従う積層体コンタクトパッドを作るための作業の例を示す。第1の配置作業602において、第1の降伏強度を有する第1の材料の層を基板上に配置する。ある実施例では、第1の材料は所望の磁気特性(たとえば保磁力および異方性)を有するが降伏強度は低い。第2の配置作業604では、第2の降伏強度を有する第2の材料の層を第1の材料の層の上に配置する。ある実施例では、第2の材料も所望の磁気特性(たとえば保磁力および異方性)を有するがこれも降伏強度は低い。
【0035】
交互にされた第1の材料の層および第2の材料の層の配置を、これらの層からなる複合体が所望の総厚になるまで続ける。これに代わる実施例では、さらなる材料をこの層の複合体に取り入れる。判断作業606において所望の厚みに達したと判断されると、被覆作業608により、配置した層の端部を保護膜で覆う。この保護膜は、第1の材料または第2の材料単独の端部の保護膜と比較して、下にある層の複合体の降伏強度が改善されているために、より頑強である。
【0036】
図7は、ディスクドライブ700の一例の平面図を示す。ディスクドライブ700はベース702を含み、このベースに、ディスクドライブ700のさまざまな構成部品が設けられる。一部が切取られた状態で示されているトップカバー704は、ベース702と協働し、従来のやり方で、ディスクドライブに対して内部の封止された環境を形成する。構成部品は、1つ以上の記憶媒体ディスク708を一定の高速度で回転させるスピンドルモータ706を含む。アクチュエータアセンブリ710を用いることにより、ディスク708の上のトラックに情報を書込みこのトラックから情報を読出す。アクチュエータアセンブリ710は、シーク動作中、ディスク708の隣に位置付けられた軸受の軸アセンブリ712を中心として回転する。アクチュエータアセンブリ710は、ディスク708に向かって延びる複数のアクチュエータアーム714を含み、1つ以上のフレクシャ716が各アクチュエータアーム714から延びている。フレクシャ716各々の遠位端に設けられているのは、空気軸受スライダを含むヘッド718であり、このスライダによって、ヘッド718は関連するディスク708の対応する表面の上のごく近くで浮上することができる。空気軸受スライダは、本明細書に記載の1つ以上の積層されたコンタクトパッドを含む。1つ以上の積層されたコンタクトパッドと、記憶媒体の表面との間の、浮上中の距離を、本明細書では浮上高さと呼ぶ。
【0037】
積層体であるコンタクトパッドを作り出すための作業は、1つ以上のコンピュータシステムにおける論理的工程として実現できる。本発明の論理的作業は、(1)1つ以上のコンピュータシステム内で実行する、プロセッサによって実現される一連のステップとして、および(2)1つ以上のコンピュータシステム内の相互接続されたマシンまたは回路モジュールとして、実現される。この実現は、本発明を実現するコンピュータシステムの性能要件に応じた選択事項である。したがって、本明細書に記載の発明の実施例を構成する論理的作業を、さまざまに、作業、工程、オブジェクト、またはモジュールと呼ぶ。さらに、論理的作業は、請求項において別段明確に示されていない限り、または請求項の文言が本質的に特定の順序を必要としていない限り、どのような順序で行なわれてもよい。
【0038】
上記明細書、例、およびデータは、本発明の代表的な実施例の構造および用途に関する完全な説明を提供する。本発明の多くの実施例は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく可能であるため、本発明は添付の請求項にある。さらに、異なる実施例の構造的特徴を、別の実施例において、記載された請求項から逸脱することなく組合せてもよい。
【符号の説明】
【0039】
100、200、300、400超小型電子部品、102、202、302、402スライダ、104、114、204、214、304、314、404、414戻り磁極、106、206、306、406再生部、108、208、308、408記録部、110、112、210、212、310、312、410、412再生部シールド、118、218、318、418誘電体材料。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変換器ヘッドであって、
再生部と、
コンタクトパッドとを備え、前記コンタクトパッドは、前記再生部を超えて延在し、
第1の降伏強度を有する材料の第1の層と、
前記第1の層に積層された、第2の降伏強度を有する材料の第2の層とを含み、前記第1の層および前記第2の層からなる積層複合体の第3の降伏強度は、前記第1の降伏強度および前記第2の降伏強度を上回り、前記コンタクトパッドはさらに、
前記第1の層および前記第2の層の端部と接触する保護膜を含む、変換器ヘッド。
【請求項2】
前記コンタクトパッドはさらに、前記第2の層に積層された、第4の降伏強度を有する材料の第3の層を含み、
前記第1の層、前記第2の層、および前記第3の層からなる積層複合体の第5の降伏強度は、前記第1の降伏強度、前記第2の降伏強度および前記第4の降伏強度を上回り、前記保護膜はさらに前記第3の層の端部と接触する、請求項1に記載の変換器ヘッド。
【請求項3】
前記コンタクトパッドはさらに、
前記第2の層に積層された、前記第1の降伏強度を有する材料の第3の層と、
前記第3の層に積層された、前記第2の降伏強度を有する材料の第4の層とを含み、
前記第1の層、前記第2の層、前記第3の層、および前記第4の層からなる積層複合体の第4の降伏強度は、前記第1の降伏強度および前記第2の降伏強度を上回り、前記保護膜はさらに前記第3の層および前記第4の層の端部と接触する、請求項1に記載の変換器ヘッド。
【請求項4】
前記第1の材料および前記第2の材料のうち少なくとも一方は元素金属を含む、請求項1に記載の変換器ヘッド。
【請求項5】
前記第1の材料および前記第2の材料のうち少なくとも一方は磁性体である、請求項1に記載の変換器ヘッド。
【請求項6】
前記コンタクトパッドは、戻り磁極および再生部シールドのうちの一方または双方である、請求項1に記載の変換器ヘッド。
【請求項7】
前記保護膜はデータ記憶媒体に対向する、請求項1に記載の変換器ヘッド。
【請求項8】
変換器ヘッドであって、
記録部と、
戻り磁極とを備え、前記戻り磁極は、前記記録部を超えて延在し、第1の降伏強度を有する材料の第1の層と、第2の降伏強度を有する材料の第2の層とを含み、前記第2の層は前記第1の層に積層され、前記第1の層および前記第2の層からなる積層複合体の第3の降伏強度は、前記第1の降伏強度および前記第2の降伏強度を上回り、
前記戻り磁極はさらに、前記第1の層の端部および前記第2の層の端部と接触する保護膜を含む、変換器ヘッド。
【請求項9】
前記戻り磁極はさらに、前記第2の層に積層された、第4の降伏強度を有する材料の第3の層を含み、前記第1の層、前記第2の層、および前記第3の層からなる積層複合体の第5の降伏強度は、前記第1の降伏強度、前記第2の降伏強度、および前記第4の降伏強度を上回り、前記保護膜はさらに前記第3の層の端部と接触する、請求項8に記載の変換器ヘッド。
【請求項10】
前記戻り磁極はさらに、前記第2の層に積層された、前記第1の降伏強度を有する材料の第3の層と、前記第3の層に積層された、前記第2の降伏強度を有する材料の第4の層とを含み、前記第1の層、前記第2の層、前記第3の層、および前記第4の層からなる積層複合体の第4の降伏強度は、前記第1の降伏強度および前記第2の降伏強度を上回り、前記保護膜はさらに前記第3の層および前記第4の層の端部と接触する、請求項8に記載の変換器ヘッド。
【請求項11】
前記第1の材料および前記第2の材料のうち少なくとも一方は元素金属を含む、請求項8に記載の変換器ヘッド。
【請求項12】
前記第1の材料および前記第2の材料のうち少なくとも一方は磁性体である、請求項8に記載の変換器ヘッド。
【請求項13】
前記保護膜はデータ記憶媒体に対向する、請求項8に記載の変換器ヘッド。
【請求項14】
前記戻り磁極は、データ記憶媒体と対向するように構成されたコンタクトパッドである、請求項8に記載の変換器ヘッド。
【請求項15】
変換器ヘッド上のコンタクトパッドの製造方法であって、
第1の降伏強度を有する材料の第1の層を、変換器ヘッド上の基板上に配置するステップと、
第2の降伏強度を有する材料の第2の層を、前記第1の層の上に配置するステップとを含み、前記第1の層および前記第2の層からなる複合体の第3の降伏強度は、前記第1の降伏強度および前記第2の降伏強度を上回り、
前記第1の層および前記第2の層の端部を被膜で覆うステップを含み、前記第1の層、前記第2の層、および前記被膜が合わさってコンタクトパッドを構成し、前記コンタクトパッドはデータ記憶媒体に対向するように構成される、方法。
【請求項16】
第4の降伏強度を有する材料の第3の層を前記第2の層の上に配置するステップをさらに含み、前記第1の層、前記第2の層、および前記第3の層からなる複合体の第5の降伏強度は、前記第1の降伏強度、前記第2の降伏強度、および前記第4の降伏強度を上回り、前記被膜で覆うステップはさらに、前記第3の層の端部を被膜で覆うステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の降伏強度を有する材料の第3の層を前記第2の層の上に配置するステップと、
前記第2の降伏強度を有する材料の第4の層を前記第3の層の上に配置するステップとをさらに含み、
前記第1の層、前記第2の層、前記第3の層、および前記第4の層からなる複合体の第4の降伏強度は、前記第1の降伏強度および前記第2の降伏強度を上回り、前記被膜で覆うステップはさらに、前記第3の層および前記第4の層の端部を被膜で覆うステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の材料および前記第2の材料のうち少なくとも一方は元素金属を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の材料および前記第2の材料のうち少なくとも一方は磁性体である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の層および前記第2の層各々の厚みは50ナノメートルよりも大きく200ナノメートルよりも小さい、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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