説明

変換器補強要素を備えた分析装置

検査試料内の検体の存在を検出するために、外部検査器具と共に使用するための分析装置が開示されている。この装置は、第1電極層と第2電極層との間で狭持された焦電性材料または圧電性材料の層から形成された変換器であって、焦電性材料の層または圧電性材料の層の熱または力に応じて電極層間に電圧を生じさせるように構成された変換器を備えている。また、装置は、変換器のための第1補強要素および第2補強要素であって、当該補強要素の間に狭持された変換器を平坦な状態に維持するための平面をそれぞれ画定する第1補強要素および第2補強要素を備えている。補強要素の各々は、変換器の対応する電極層の一部分を露出させて当該変換器を外部検査器具に電気的に接続させている。露出された部分は、互いに横方向にずらされて、当該露出された部分が、その全領域にわたって、変換器の反対側の面に設けられた補強要素によってそれぞれ支持されている。このような構成により、環境影響によって引き起こされるノイズを低減し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦電性若しくは圧電性の変換器またはセンサを備えた分析装置に関する。このような装置は、例えば、さまざまな病状または病気の体外診断(IVD)を実施するために使用され得る。より詳しくは、排他的ではなく、検体の存在で色変化を引き起こす試薬を利用するような装置に関する。この変化は、適切な波長の電磁放射線を試薬に照射することにより検出され、放射線の吸収を変換器の微小な熱として検出することによって検出される。また、本発明は、変換器に向かう色付きの種(coloured species)の移動(migration)が、試料の照射とその後の変換器の微小な加熱との間の時間遅延を分析することによって検出され得るような装置に関する。
【0002】
さらに、本発明は、焦電性または圧電性の変換器を有する分析装置を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
さまざまな診断および他の生化学検査は、検体の存在で、検出可能な色変化を引き起こす試薬を使用している。試薬は、通常、都合良く、試験紙上で支えられる。光学(optics)が、観察された色の変化と標準的な色見本との比較を援助するように設けられ得る。あるいは、光の吸収が、1つ以上の選択された波長で測定され得る。
【0004】
例えば、免疫学的検定の専門分野においては、内部反射分光法が使用されている。この技術によれば、試料材料の薄い層が、透明な光学要素の表面上に置かれ、試料の境界面における光の内部反射の測定がなされる。
【0005】
多くの既知の分析技術の欠点は、所望の吸収測定を提供する副次信号(subsequent signal)処理で、発光、反射または伝達される光または蛍光を検出することに依存していることである。このことは、精度良く、コンパクトで頑丈な分析器具の開発を妨げていると考えられている。ある環境下では、例えば、検体は、潜在的に毒性であり、または、微生物汚染若しくは健康リスクを引き起こす。このため、分析が終わるたびに使い捨て可能な形態の分析器具であることが望ましい。
【0006】
米国特許第5,622,868号明細書は、ストリップの形態の焦電性の変換器を備えた生化学分析装置を開示している。この変換器には薄膜電極が設けられ、1つ以上の試薬が変換器の表面上に置かれる。試薬は、検出される検体に接触すると比色変化を引き起こす。そして、分析装置は、一般的には検査器具に挿入され、所定の波長の光を提供する発光ダイオードによって照らされる。試薬による光の吸収は、変換器の表面における微小な熱として検出され、変換器からの電気信号が処理されて、検出される検体の濃度が得られる。また、圧電性の変換器も、分析装置によって使用され得る。
【0007】
国際公開第2004/090512A1号は、同様な分析装置を開示している。ここでは、変換器の表面の方向への色付きの種の移動が、電磁放射線による試料のパルス的な照射と、色付きの種による放射線の吸収によって引き起こされ、その後の変換器の微小な加熱との間の時間遅延を分析することによって検出され得る。
【0008】
米国特許第5,622,868号明細書および国際公開第2004/090512A1号の生化学分析装置は、複雑な光学検出システムと信号処理の電子機器の必要性を回避しており、1回使い切りの、使い捨て形態で製造され得る。しかしながら、焦電性および圧電性の変換器を有する生化学分析装置に関連する重大な問題は、変換器が機械的動作および振動にかなり影響を受けやすく、環境影響が、電気出力信号に高いレベルのノイズをもたらす傾向にある、ということである。
【0009】
このため、環境影響によって引き起こされるノイズが低減される焦電性または圧電性の変換器を備えた分析装置が必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本発明の特徴によれば、
検査試料内の検体の存在を検出するために、外部検査器具と共に使用するための分析装置であって、
第1電極層と第2電極層との間で狭持された焦電性材料の層または圧電性材料の層から形成された変換器であって、前記焦電性材料の層または前記圧電性材料の層の熱または力(straining)に応じて前記電極層間に電圧を生じさせるように構成された前記変換器と、
前記変換器のための第1補強要素および第2補強要素であって、当該補強要素の間に狭持された前記変換器を平坦な状態に維持するための平面をそれぞれ画定する前記第1補強要素および前記第2補強要素と、を備え、
前記補強要素の各々は、前記変換器の対応する前記電極層の一部分を露出させて当該変換器を前記外部検査器具に電気的に接続させ、
前記露出された部分は、互いに横方向にずらされて、当該露出された部分が、その全領域にわたって、前記変換器の反対側の面に設けられた前記補強要素によってそれぞれ支持されている分析装置、
が提供される。
【0011】
発明者は、平らな補強要素の間に焦電性または圧電性の変換器を狭持することによって、環境影響によって引き起こされるノイズが低減され得ることを見いだした。また、発明者は、電気接続をなす変換器の電極層にアクセス可能であると同時に、補強要素で変換器を支持するための特に効果的な構成を開発した。
【0012】
変換器を有する既知の分析装置においては、変換器の一部分は通常露出されており、バネ接点が対向する電極層を弾性的に支持することができるようになっている。このような構成は、支持されない変換器が対向するバネ接点の間で把持されて振動または共振し、これにより高いレベルでのノイズを引き起こすということを発明者は見いだした。本発明によれば、変換器の接続部分は、横方向にずれており、補強要素によって一の面がそれぞれ支持され、これによりノイズを低減している。
【0013】
新しい構成は、電極層の電気接続部分で変換器を機械的に支持するだけでなく、横方向にずれた位置での電気接続を容易にする。これらの特徴の各々は、環境要因によって引き起こされるノイズを著しく低減することをもたらす。ここで、“横方向”という文言は、変換器の面に平行な方向を意味している。
【0014】
好ましい実施の形態においては、第1電極層および第2電極層の露出された部分は、対応する第1補強要素および第2補強要素内に形成された切り欠きによって画定されている。切り欠きは任意の形状を有することができるが、通常、矩形状の切り欠きが好適である。切り欠きの提供は、露出された部分の大きさを比較的小さくすることを可能とし、これにより一方の面のみで支持される変換器の領域の範囲を制限する。この切り欠きは、補強要素の縁部に設けられるようにしてもよい。
【0015】
切り欠きは、横方向に離間し、切り欠きの間の変換器の領域は、第1補強要素および第2補強要素の両方によって支持されるようにしてもよい。このようにして、変換器の機械的安定性が改善され得る。切り欠きは、変換器の一方の直線縁部に沿って構成されていてもよい。当該変換器は、例えば、実質的に矩形形状であるようにしてもよい。
【0016】
好ましくは、変換器の全領域は、補強要素によって支持されている。言い換えると、装置は、好適には、任意の位置で変換器が補強要素の少なくとも一方によって支持されるように構成されている。好ましくは、補強要素は、例えば感圧式接着剤などの接着剤によって変換器に付着されている。代替的にまたは追加的に、補強要素および変換器は、適切なクランプ機構によって共にクランプされていてもよい。
【0017】
変換器の焦電性材料の層または圧電性材料の層は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含むようにしてもよい。適切にポーリングされる場合、既知の技術のように、PVDFは、焦電性材料および圧電性材料の両方の特性を有する。
【0018】
第1電極層および第2電極層は、導電性材料、好適には、特有の波長の電磁放射線に対して実質的に透明である材料から形成されている。電極層は、例えばインジウム錫酸化物(ITO)から形成されていてもよい。変換器の合計の厚さは、10μm〜200μmの範囲、好ましくは、20μm〜120μmの範囲、より好ましくは25μm〜75μmの範囲である。
【0019】
装置は、例えば変換器の表面に、変換器に近接して配設された少なくとも1つの試薬を更に備えていてもよい。また、装置は、変換器と第1補強要素との間に配設された平らなスペーサ要素を備えていてもよい。この場合、スペーサ要素に、変換器の表面にアクセス可能であると共に試薬を収容する分析チャンバを画定する少なくとも一つの開口部が設けられていてもよい。スペーサ要素は、第1補強要素および第2補強要素のいずれか一方よりも薄くなっていてもよい。例えば、各補強要素の厚さは、0.1mm〜10mmの範囲、好ましくは、0.2mm〜1.0mmの範囲となるようにしてもよい。スペーサ要素の厚さは、0.05mm〜1.0mmの範囲、好ましくは、0.1mm〜0.5mmの範囲となるようにしてもよい。
【0020】
第1補強要素および第2補強要素のうちの一方または両方は、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)などのポリマー材料から形成されていてもよい。合成物を含む他の材料は、変換器に所定の機械的支持を提供するのに十分に堅くなっていれば、適切となり得る。補強要素は、モールド成形されていてもよく、または、シート材料の供給物から切り取られるなどのような他のプロセスによって形成されていてもよい。このようなプロセスは、通常、結果として生じる補強要素が変換器を支持するための少なくとも一つの平面を有することを提供する場合、適切となり得る。補強要素は、好ましくは、電磁放射線に対して実質的に透明である。
【0021】
好適な実施の形態においては、第1補強要素は、モールド成形されたプラスチック材料から形成された本体の一体的な一部となっている。本体は凹部を画定し、変換器および第2補強要素は凹部内に配設されて、変換器の第1電極層および第2電極層の露出された部分は、露出されたままとなっている。本体は、検査試料を受け入れるための流路を画定していてもよい。本体は、例えばポリメチルメタクリレートなどのようなポリマー材料から形成されていてもよい。
【0022】
本発明の他の特徴によれば、上述した生化学分析装置と、変換器の第1電極層および第2電極層の露出された部分に電気的に接続され、第1電極層および第2電極層から受け取った電気信号を処理するマイクロプロセッサを有する検査器具と、を備えた生化学分析システムが提供される。
【0023】
本発明の更なる他の特徴によれば、
検査試料内の検体の存在を検出するために、外部検査器具と共に使用するための分析装置を製造する方法において、
焦電性材料の層または圧電性材料の層の両側の表面上に第1電極層および第2電極層を形成することにより変換器を形成する工程であって、前記焦電性材料の層または前記圧電性材料の層の熱または力に応じて前記電極層間に電圧を生じさせるように構成される前記変換器を形成する工程と、
前記変換器の対応する前記電極層上に第1補強要素および第2補強要素を設ける工程であって、前記変換器を平坦な状態に維持するための平面をそれぞれ画定する前記第1補強要素および前記第2補強要素を設ける工程と、を備え、
前記補強要素は、各々が前記変換器の対応する前記電極層の一部分を露出させて当該変換器を前記外部検査器具に電気的に接続させるように構成され、
前記露出される部分は、互いに横方向にずらされて、当該露出される部分が、その全領域にわたって、前記変換器の反対側に設けられる前記補強要素によってそれぞれ支持されることを特徴とする方法、
が提供される。
【0024】
好適には、変換器を形成する工程は、電極層が形成される前に、焦電性材料の層または圧電性材料の層をポーリング(poling)する工程を含んでいる。
【0025】
更なる特徴および利点は、以下に提供される本発明の詳細な説明から明らかにされる。
【0026】
以下に、本発明の詳細な実施の形態を、添付する図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、既知の分析システムの概略図である。
【図2】図2は、図1に示された既知のシステムを具体化した検査器具および検査要素を示している。
【図3】図3は、本発明による分析装置の斜視図である。
【図4】図4は、図3に示された分析装置の要素を示す詳細な斜視図である。
【図5】図5は、図3に示された分析装置の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、検査試料内の検体の存在を検出するために、外部検査器具と共に使用されることを目的としている分析装置を提供する。装置は、第1電極層と第2電極層との間で狭持された焦電性材料の層または圧電性材料の層から形成された変換器を備えている。当該変換器は、焦電性材料の層または圧電性材料の層の熱または力に応じて電極層間に電圧を生じさせるように構成されている。また、装置は、変換器のための第1補強要素および第2補強要素を備えている。変換器は、当該補強要素の間で狭持されている。補強要素の各々は、変換器を平坦な状態に維持するための平面を画定している。
【0029】
本発明によれば、補強要素の各々は、変換器の対応する電極層の一部分を露出させて、当該変換器を外部検査器具に電気的に接続させている。電極層の露出された部分は、互いに横方向にずらされて、当該露出された部分が、その全領域にわたって、変換器の反対側の面に設けられた補強要素によってそれぞれ支持されている。
【0030】
本発明の好適な実施の形態は、米国特許第5,622,868号明細書および国際公開第2004/090512A1号に開示されたタイプの既知の生化学分析システムに基づいている。この既知のシステムは、検出可能に色変化をもたらすと共に、変換器の方向への色付き種の移動(migration)を引き起こす試薬を使用し、生体液試料内での検体の指標を提供する。システムは、適切な波長の電磁放射線を試薬に照射して、放射線の吸収を試薬に近接して配設された焦電性の変換器の微小な熱として検出することによって、色の変化を検出するように構成され得る。システムは、試料の照射とその後の変換器の微小な加熱との間の時間遅延を分析することによって変換器の方向への色付きの種の移動を検出するように構成され得る。
【0031】
図1は、既知のシステムの概略図である。当該システムは、焦電性の変換器を有する分析装置を含んでいる。図面を参照すると、変換器は、PVDF膜10を含み、当該PVDF膜10は、上面および下面にそれぞれ設けられた電極コーティング12、14を有している。電極コーティングは、5nm〜100nmの範囲の厚さを有するインジウム錫酸化物(ITO)から形成されている。適切な技術を用いて、試薬16のストリップが、変換器の上側の電極コーティング12上に置かれている。
【0032】
電極コーティング12および14は、分析装置上に設けられた露出された電気コネクタを介して外部検査器具に接続されている。コネクタ(図示せず)は、高い入力インピーダンスを示す電荷増幅器20の入力部に連結され、電荷増幅器の出力は、位相ロック増幅器22に送られる。検査器具の光源24は、発光ダイオード(LED)から形成されており、焦電性膜10およびそれに関連付けられた電極コーティングを通して試薬のストリップを照らすように位置付けられている。光源には、一般に約15Hz以下の方形波出力を提供する変調器26を通して電力が供給される。基準信号は、変調器26から位相ロック増幅器22にライン28で送られる。
【0033】
既知のシステムの使用時、生体液試料は、分析装置の焦電性変換器の上面に集められて置かれる。滴の外形が図面に30で示されている。検体の存在レベルにおいて、適切に選択された試薬は、光吸収の変化をもたらし、または、変換器の表面の方向へ色付きの種が移動する。光源24からの適切な波長の光が試薬に吸収されて、局部領域18に微小な熱を発生させる。この熱は、変換器によって感知されて、結果として増幅器20からの出力に変化を生じさせる。ライン28上の基準信号の位相ロックを通して、増幅器22は、試薬内での熱および光吸収の示唆並びに生体試料内での検体の存在を示す感知出力信号を提供することができる。位相ロック増幅器22の出力は、デジタル化されて、マイクロプロセッサへ適切なバスで送信される。
【0034】
選択される試薬のタイプは、分析手順に依存して大きく異なる。例えば、イオン、pHおよび重金属の検査時では、指示染料が使用されてもよく、この場合、イオンのキレート化/結合化(binding)で色を変化させる。さまざまな試薬が、血液および尿内の代謝産物、薬物および生化学の分析で知られている。1つの例は、アリールアシルアミダーゼ(arylacylamidase)によってパラセタモールからアミノフェノールを生成するパラセタモール分析である。免疫学的分析では、試薬は、たんぱく質や微生物の抗原の形態を取り得る。また、試薬は、抗体であってもよい。また、この技術は、酵素免疫測定法(ELISA)に適用可能である。
【0035】
図2は、図1に示された既知のシステムを具体化するリモート検査器具70および分析装置50を示している。分析装置50は使い捨てカートリッジの形態になっており、これにより、汚染および潜在的に有害な試料材料の清掃の問題を除去している。分析装置50は、矩形形状の不活性な透明な基板を備えている。一方の端部において、検査器具70に、検査要素を差し込むことを可能にする電気コネクタ54が基板に設けられている。基板は、電極コーティング12、14を有するPVDF膜10を含む焦電性変換器を支持している。変換器の表面に、生体液試料を受け入れるための穴(well)60が画定されている。
【0036】
図2を参照すると、検査器具70はハウジングを備え、当該ハウジングには、分析装置50がスライド式に嵌め込まれ得るスロット72が設けられている。内部では、ハウジングにエッジコネクタ74が設けられ、当該エッジコネクタ74は、分析装置50に設けられた電気コネクタ54と結合するように設計されている。76で概略的に示された光源は、ハウジング70内に位置付けられ、分析装置50が完全に嵌め込まれた場合に穴60に整列されるようになっている。
【0037】
検査器具70は、図1を参照して上述した変調信号源、電荷増幅器および位相ロック増幅器を提供する電気回路(図示せず)を含んでいる。さらに、マイクロプロセッサが設けられており、当該マイクロプロセッサは、市販の形態であってもよく、位相ロック増幅器の出力を受けると共にディスプレイ78を制御するように接続されている。
【0038】
本発明は、上述したように、既知の分析装置に基づいているが、環境影響によって引き起こされるノイズを低減する新しい構成を有している。
【0039】
図3は、本発明による生化学分析装置の斜視図である。図4は、図3に示された装置の拡大図である。図5は、図3に示された装置の拡大図であって、主要な構成要素部品をより詳細に示した図である。
【0040】
これらの図を参照すると、本発明による生化学分析装置101は、1回使い切りの使い捨てカートリッジとして提供されている。分析装置101の外形は、ポリメチルメタクリレートからモールド成形された透明な本体103によって画定されている。本体103には、例えば、全血、血清、血漿または尿などの生体液の試料を受け入れるように構成された流路105と、流路105を通して試料を引き込むための真空源を受け入れるように構成されたポート(図示せず)と、が設けられている。また、本体103は、その上面に、変換器組立体を受け入れるための矩形状の凹部107を画定している。凹部107のベースは、第1(下側)補強要素111aを形成している。
【0041】
変換器組立体は、平らなスペーサ要素108と第2(上側)補強要素111bとの間に配設された変換器109を備えている。
【0042】
変換器109は、第1(下側)電極層と第2(上側)電極層との間に狭持されたポリフッ化ビニリデンから形成された焦電性材料の2つの薄膜から形成されている。焦電性膜は、この技術分野において良く知られた技術によってポーリングされ、それらの両極性が共通モードのノイズ除去を提供するために反転されるように構成されている。電極層は、インジウム錫酸化物(ITO)から形成されている。
【0043】
変換器109は、矩形状の外形を有しており、焦電性膜と電極層とが同一の広がりを持っている。変換器109の合計の厚さは約70μmであり、電極層の各々は、約35nmの厚さを占めている。変換器109は、特有の波長の電磁放射線を通すように形成されている。このように構築された変換器109は、焦電性膜の一方の微小な熱に応じて電極層間に電圧を生じさせ得る。
【0044】
補強要素111a、111bは、薄く形成されてはいるが、変換器109に対向する平らな(平坦な)面を有するポリメチルメタクリレート(アクリル)の堅い層として形成されている。第1補強要素111aは、本体103に一体に形成されており、約1.5mmの厚さを有している。第2補強要素111bは、別体の構成要素であって、約0.75mmの厚さを有している。
【0045】
第1補強要素111aと変換器109との間に配設された平坦なスペーサ要素108に、3つの開口部113が設けられている。また、スペーサ要素108は、約0.25mmの厚さを有している。スペーサ要素111aの開口部113は、変換器109の表面を露出する分析チャンバを画定している。分析チャンバ内には、適切な試薬(図示せず)が配置される。
【0046】
補強要素111a、111bは、変換器109と同一の外形および大きさ(長さおよび幅)を有しているが、各補強要素111a、111bの縁部に、変換器109の対応する電極層の表面を露出する小さな切り欠き115a、115cが設けられている。切り欠き115a、115cは、補強要素111a、111bの対応する縁部に沿って設けられていると共に、互いに横方向に離間している。切り欠き115a、115cは、実質的に矩形の形状を有している。
【0047】
スペーサ要素108は、第1補強要素111aと同一の外形および大きさ(長さおよび幅)を有している。また、スペーサ要素108は、第1補強要素111aの切り欠き115aに一致する切り欠き115bを含んでいる。
【0048】
補強要素の切り欠き115a、115cおよびスペーサ要素の切り欠き115bは、変換器109を外部検査器具(図示せず)に電気的に接続するために、変換器109の電極層へのアクセスを可能にしている。
【0049】
変換器組立体が本体103に形成された凹部107に受け入れられた場合、変換器組立体の上面は、本体103の上面と同一平面に位置する。第1補強要素111aおよび変換器組立体の構成要素は、それらの領域にわたって、感圧接着剤により互いに付着される。
【0050】
分析装置101は、本体103に接着剤で付着された上側シール117を更に有している。上側シール117には紙ラベル119が貼り付けられている。当該紙ラベル119には、装置101の製品情報、使用説明または規制データ(regulatory data)が示されていてもよい。紙ラベル119および上側シール117には、分析チャンバ113に一致する窓と、第2補強要素111bに形成された切り欠き115cに一致する切り欠きと、が設けられている。
【0051】
全血の試料および検査で装置101を使用する際、患者の指先端の皮膚に穴が開けられて、流路105の収集端部に血液が提供されて取り出される。その後、血液は、毛細管作用によって流路105に引き入れられる。
【0052】
分析を行うために、収集された血液試料を含む分析装置101は外部検査器具(図示せず)に挿入され、これにより、検査器具の内側に配設された電気接点が、変換器109の電極層の露出された部分に嵌め込まれる。分析装置の特有の構成を理由として、電極層の露出された部分は、補強要素111a、111bによって反対側から支持されている。
【0053】
その後、血液試料は、真空源を本体103に形成されたポートに適用することによって、または、正圧を流路105の収集端部に適用することによって、流路105を通して引き込まれる。血液試料は、分析チャンバ113に受け入れられて、試薬に接するようになる。そして、試薬は、検出可能な色変化を引き起こす、または、変換器の表面への色付きの種の変換器109の移動を引き起こし、生体液試料内での検体の指標を提供する。色変化または移動は、適切な波長の電磁放射線で試薬を照射することによって検出され、これにより、焦電性の変換器109の微小な熱として放射線の吸収を検出する。
【0054】
上述したように、分析装置101の特有の構成と、特に、外部検査器具への変換器109の電気接続が容易になるという方法とは、既知の装置に比べて電気ノイズの著しい低減をもたらす。
【0055】
詳細な実施の形態を参照して本発明について述べてきたが、これらの実施の形態は、本発明の原理および適用を単に例示しただけであることは理解されるべきである。このため、多数の変形が例示的な実施の形態になされてもよく、さらに、他の構成が、添付した特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく考えだされてもよいことは理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査試料内の検体の存在を検出するために、外部検査器具と共に使用するための分析装置において、
第1電極層と第2電極層との間で狭持された焦電性材料の層または圧電性材料の層から形成された変換器であって、前記焦電性材料の層または前記圧電性材料の層の熱または力に応じて前記電極層間に電圧を生じさせるように構成された前記変換器と、
前記変換器のための第1補強要素および第2補強要素であって、当該補強要素の間に狭持された前記変換器を平坦な状態に維持するための平面をそれぞれ画定する前記第1補強要素および前記第2補強要素と、を備え、
前記補強要素の各々は、前記変換器の対応する前記電極層の一部分を露出させて当該変換器を前記外部検査器具に電気的に接続させ、
前記露出された部分は、互いに横方向にずらされて、当該露出された部分が、その全領域にわたって、前記変換器の反対側の面に設けられた前記補強要素によってそれぞれ支持されていることを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記第1電極層および前記第2電極層の前記露出された部分は、対応する前記第1補強要素および前記第2補強要素内に設けられた切り欠きによって画定されていることを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記切り欠きは、横方向に離間し、前記切り欠きの間の前記変換器の領域は、前記第1補強要素および前記第2補強要素の両方によって支持されていることを特徴とする請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記切り欠きは、前記変換器の一の直線縁部に沿って配設されていることを特徴とする請求項2または3に記載の分析装置。
【請求項5】
前記変換器および前記補強要素の少なくとも一方は、矩形形状であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の分析装置。
【請求項6】
前記変換器の全領域は、前記補強要素の少なくとも一方によって支持されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の分析装置。
【請求項7】
前記変換器の前記焦電性材料の層または前記圧電性材料の層は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の分析装置。
【請求項8】
前記変換器の前記第1電極層および前記第2電極層のうちの少なくとも一方は、前記焦電性材料の層または前記圧電性材料の層の領域の少なくとも90%を覆っていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の分析装置。
【請求項9】
前記第1電極層および前記第2電極層は、インジウム錫酸化物(ITO)から形成されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の分析装置。
【請求項10】
前記変換器に近接して配設された少なくとも1つの試薬を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の分析装置。
【請求項11】
前記変換器と前記第1補強要素との間に配設されたスペーサ要素を更に備え、
前記スペーサ要素に、前記少なくとも一つの試薬が提供される分析チャンバを画定する少なくとも一つの開口部が設けられていることを特徴とする請求項10に記載の分析装置。
【請求項12】
前記スペーサ要素は、前記第1補強要素および前記第2補強要素のいずれか一方よりも薄いことを特徴とする請求項11に記載の分析装置。
【請求項13】
前記第1補強要素および前記第2補強要素のうちの少なくとも一方は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)から形成されていることを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の分析装置。
【請求項14】
前記第1補強要素は本体の一部であり、前記本体は凹部を画定し、前記変換器および前記第2補強要素は前記凹部内に配設されて、前記変換器の前記第1電極層および前記第2電極層の前記露出された部分は、露出されたままであることを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の分析装置。
【請求項15】
前記本体は、前記検査試料を受け入れるための流路を画定していることを特徴とする請求項14に記載の分析装置。
【請求項16】
前記第1補強要素および前記第2補強要素は前記変換器に接着されていることを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載の分析装置。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれかに記載の分析装置を備えたことを特徴とする生化学分析装置。
【請求項18】
請求項17に記載の生化学分析装置と、
前記変換器の前記第1電極層および前記第2電極層の前記露出された部分に電気的に接続され、前記第1電極層および前記第2電極層から受け取った電気信号を処理するマイクロプロセッサを有する検査器具と、を備えたことを特徴とする生化学分析システム。
【請求項19】
検査試料内の検体の存在を検出するために、外部検査器具と共に使用するための分析装置を製造する方法において、
焦電性材料の層または圧電性材料の層の両側の表面上に第1電極層および第2電極層を形成することにより変換器を形成する工程であって、前記焦電性材料の層または前記圧電性材料の層の熱または力に応じて前記電極層間に電圧を生じさせるように構成される前記変換器を形成する工程と、
前記変換器の対応する前記電極層上に第1補強要素および第2補強要素を設ける工程であって、前記変換器を平坦な状態に維持するための平面をそれぞれ画定する前記第1補強要素および前記第2補強要素を設ける工程と、を備え、
前記補強要素は、各々が前記変換器の対応する前記電極層の一部分を露出させて当該変換器を前記外部検査器具に電気的に接続させるように構成され、
前記露出される部分は、互いに横方向にずらされて、当該露出される部分が、その全領域にわたって、前記変換器の反対側に設けられる前記補強要素によってそれぞれ支持されることを特徴とする方法。
【請求項20】
前記変換器を形成する工程は、前記電極層を形成する前に、前記焦電性材料の層または前記圧電性材料の層をポーリングする工程を含んでいることを特徴とする請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−504056(P2013−504056A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527389(P2012−527389)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【国際出願番号】PCT/GB2010/051436
【国際公開番号】WO2011/027148
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(507251192)ビバクタ、リミテッド (13)
【氏名又は名称原語表記】VIVACTA LIMITED
【Fターム(参考)】