説明

変異ニューブラスチンのポリマー結合体

【課題】生物学的利用能の増大を示すニューブラスチンの修飾形態を同定することが、本発明の1つの目的である。
【解決手段】ポリマーに結合された変異ニューブラスチンポリペプチドを含んでなるダイマーを開示する。このようなダイマー類は、生物学的利用能の延長、および好ましい実施形態においては、ニューブラスチンの野生型形態に比較して生物学的活性を示す。また、本発明によるダイマーを含む薬学的組成物、核酸(例えば、本発明のダイマーに組み込むためのポリペプチド)をコードするDNA発現ベクター、その核酸によって形質転換された宿主細胞、および哺乳動物における神経障害性疼痛を治療する方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2001年2月1日出願の米国仮特許出願第60/266,071号(放棄)からの優先権を主張し、2002年1月25日出願の国際公開の米国特許出願公開第02/02319号からの優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、タンパク質化学、分子生物学、神経生物学、神経学および疼痛の管理に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
神経栄養因子は、発生時の神経生存を調節し、成人の神経系の可塑性と構造的完全性を調節する天然タンパク質である。神経栄養因子は、神経組織および非神経組織から単離することができる。この20年間に多数の神経栄養因子が発見されている。これらの神経栄養因子は、それらの構造および機能に基づいて、スーパーファミリー、ファミリー、サブファミリーおよび個々の種に分類できる。
【0004】
神経栄養因子スーパーファミリーとしては、線維芽細胞成長因子(FGF)スーパーファミリー、ニューロトロフィンスーパーファミリー、および形質転換成長因子−β(TGF−β)スーパーファミリーが挙げられる。グリア細胞系由来の神経栄養因子(GDNF)−関連リガンドは、TGF−βスーパーファミリー内のタンパク質ファミリーである。GDNF関連リガンドとしては、GDNF、ペルセフィン(PSP)、ニュールチュリン(neurturin)、およびニューブラスチン(neublastin)(NBN;アルテミンまたはエノビンとして知られている)が挙げられる。GDNF関連リガンドファミリーのメンバーは、それらの7つの保存システイン残基によってその他のものと区別される。これらの残基は、分子内および分子間ジスルフィド架橋を形成し、二量化ポリペプチドリガンドの第三次構造および四次構造を生じさせる。また、ファミリーのメンバーは、GFRαファミリーのグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)固定補助レセプター、GDNF関連リガンドサブファミリーおよびRETチロシンキナーゼレセプターからなる多要素レセプター複合体を介して、シグナル伝達を誘導する能力を共通に有している。
【0005】
活性化RETは、少なくとも部分的にGDNF関連リガンドの下流効果の原因となるシグナル伝達カスケードを開始させる。したがって、RETの活性化は、GFRのレセプター経路を介して作用し、下流の細胞プロセスに影響を与える療法の望ましい一態様を示し得る。
【0006】
ニューブラスチンは、7つのシステインモチーフなど、他のGDNFリガンドとの相同領域を共有しているため(例えば、欧州特許出願公開第02/02691号、国際公開の米国特許出願公開第02/02319号および米国特許出願公開第02/06388号に記載されているとおり)、また、GFRα複合体の一部としてのRETレセプターと結合し、それを活性化させる能力があるため、GDNFファミリーの中に分類される。特に、ニューブラスチンは、GFRα3−RETレセプター複合体との結合に関して高選択的である。それに関して、ニューブラスチンは、GDNF関連リガンドの他のメンバーに較べて、アミノ酸配列に独特なサブ領域を含有する。
【0007】
ニューブラスチンは、末梢神経系および中枢神経系において、保護的および再生的な役割を有し得ること、そしてその結果、神経変性疾患の治療薬として有用であることが、現在のデータにより示唆されている。例えば、ニューブラスチンが、背根神経節および三叉神経節からの培養感覚神経ならびに培養黒質ドーパミン作動性神経に対して、生存促進効果を有し得ることが、データにより示唆されている(非特許文献1)。したがって、ニューブラスチンは、感覚神経およびドーパミン作動性神経などの神経集団の生存を促進し得ると考えられる。神経の変性および機能不全は、疾患状態と関連してきたため、このことは重要である。例えば、感覚神経およびドーパミン作動性神経の病変は、各々末梢神経疾患およびパーキンソン病の基礎をなしている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Balohら、Neuron 21:p.1291−1302(1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、例えば、神経の変性および機能不全に関連する疾患の治療に、ニューブラスチンの投与は有用であり得る。しかし、ニューブラスチンは、身体により速やかに排泄され、このことが、治療適用に必要とされるニューブラスチン投与様式に影響を及ぼし得る。このように、生物学的利用能を増大させた修飾ニューブラスチンポリペプチドに対する必要性が存在している。したがって、生物学的利用能の増大を示すニューブラスチンの修飾形態を同定することが、本発明の1つの目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、ポリマーに結合した変異ニューブラスチンダイマーを提供する。各ダイマーは、第1のアミノ末端アミノ酸を含んでなる第1のポリペプチドおよび第2のアミノ末端アミノ酸を含んでなる第2のポリペプチドを含有する。各ポリペプチドは、個々に以下のものを含有する:(a)配列番号1のアミノ酸8〜113と、少なくとも70%、80%、90%または95%の配列同一性があることを特徴とするアミノ酸配列;(b)16位、43位、47位、80位、81位、109位、および111位(配列番号1による番号付け)の各々におけるシステイン残基;(c)以下のアミノ酸残基:16位にC、18位にL、25位にV、28位にL、29位にG、30位にL、31位にG、36位にE、40位にF、41位にR、42位にF、43位にC、45位にG、47位にC、80位にC、81位にC、82位にR、83位にP、91位にF、93位にD、105位にS、106位にA、109位にCおよび111位にC;および(d)LGLGの反復、FRFCモチーフ、QPCCRPモチーフおよびSATAGGCモチーフ。前記ダイマーは、ポリマーが結合する内部ポリマー結合部位を提供する少なくとも1つのアミノ酸置換(配列番号1に関して)を含む。
【0011】
また、本発明は、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含有するポリマー結合変異ニューブラスチンダイマーを提供し、各ペプチドは、各置換基がポリマーの結合するポリマー結合部位を提供する1つから6つのアミノ酸置換を有する90から140、例えば95から120または100から110のアミノ酸を含有する。本発明のポリペプチドの具体的な例としては、NBN113(配列番号2)、NBN140(配列番号6)、NBN116(配列番号7)、NBN112(配列番号8)、NBN111(配列番号9)、NBN110(配列番号10)、NBN109(配列番号11)、NBN108(配列番号12)、NBN107(配列番号13)、NBN106(配列番号14)、NBN105(配列番号15)、NBN104(配列番号16)、NBN103(配列番号17)、NBN102(配列番号18)、NBN101(配列番号19)、NBN100(配列番号20)およびNBN99(配列番号21)が挙げられる。
【0012】
ダイマーにおける2つのアミノ末端アミノ酸のうちの少なくとも1つは、ポリマーに結合していることが好ましい。好ましいアミノ酸置換としては、リジン残基によるアルギニン残基の置換(Raa#K、ここでaa#は、配列番号1に基づくアミノ酸番号)およびリジン残基による、またはアスパルテート残基によるアスパラギン残基の置換(Naa#K)が挙げられる。そのような置換の具体例は、R14K、R39K、R68K、N59D、およびN59K(配列番号1に基づく番号付け)である。特に好ましい置換は、N95Kである。
【0013】
ダイマーにおけるポリマーの分子量を合わせた合計は、20,000Daから40,000Daであることが好ましい。各ポリマーの平均分子量は、好ましくは2,000Da〜100,000Da、より好ましくは5,000Da〜50,000Da、最も好ましくは約10,000Daから20,000Daである。前記ポリマーは、直鎖状であっても分枝状であってもよい。前記ポリマーは、ポリアルキレングリコール部分、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)部分であることが好ましい。幾つかの実施形態において、少なくとも1つのポリペプチドはグリコシル化されている。
【0014】
本発明の幾つかの実施形態において、ポリマー結合ダイマーは、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含有し、ここで、(a)各ポリペプチドは、個々に配列番号1の100から110のアミノ酸を含んでなり、(b)各ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸番号95において、アスパラギンからリジンへの置換を含み、(c)ダイマーは、3つまたは4つのPEG部分を含んでなり、各PEG部分の分子量は、約10,000Daであり、また、各PEG部分は、アミノ末端、またはリジン95において結合している。好ましい実施形態は、3(,4)x10kDa PEG NBN106−N95Kと称されるモノマー対を含有するホモダイマーである。
【0015】
本発明は、本発明によるダイマーを含んでなる薬学的組成物を含む。幾つかの実施形態において、前記組成物は、本発明による2種以上の異なるダイマーを含有する。
【0016】
本発明は、核酸、例えば、本発明のダイマーに組み込むためのポリペプチドをコードするDNA発現ベクターを含む。また、本発明は、前記核酸によって形質転換された宿主細胞を含む。
【0017】
本発明は、哺乳動物における神経障害性疼痛を治療する方法を含む。前記方法は、哺乳動物に本発明のダイマーの治療有効量を投与することを含む。幾つかの実施形態において、治療有効量は、0.1μg/kgから1000μg/kg、1μg/kgから100μg/kgまたは1μg/kgから30μg/kgである。前記ダイマーの投与は、種々の経路、例えば、筋肉内、皮下または静脈内により行うことができる。本発明による幾つかの方法において、前記ダイマーは、1週間につき3回投与される。また、本発明は、哺乳動物におけるPETレセプターを活性化させる方法を提供する。前記方法は、哺乳動物に前記ダイマーの有効量を投与することを含む。
【0018】
本発明の他の特徴と利点は、以下の詳細な説明および請求項から明らかとなろう。
本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
ポリマー結合ダイマーであって、該ポリマー結合ダイマーは、第1のアミノ末端アミノ酸を含む第1のポリペプチドおよび第2のアミノ末端アミノ酸を含む第2のポリペプチドを含み、ここで、各ポリペプチドは、個々に以下:
(a)配列番号1のアミノ酸8〜113と少なくとも70%の配列同一性があることを特徴とするアミノ酸配列;
(b)配列番号1に従ってポリペプチドを番号付けした場合、16位、43位、47位、80位、81位、109位、および111位の各々におけるシステイン残基;
(c)以下のアミノ酸残基:配列番号1に従って各々番号付けした場合、16位にC、18位にL、25位にV、28位にL、29位にG、30位にL、31位にG、36位にE、40位にF、41位にR、42位にF、43位にC、45位にG、47位にC、80位にC、81位にC、82位にR、83位にP、91位にF、93位にD、105位にS、106位にA、109位にCおよび111位にC;ならびに
(d)LGLGの反復、FRFCモチーフ、QPCCRPモチーフおよびSATACGCモチーフ
を含み、ここで、少なくとも該第1のポリペプチドは、配列番号1と比較して、少なくとも1つのアミノ酸の置換、挿入または融合を含み、該置換、挿入または融合は、ポリマーが結合する内部ポリマー結合部位を提供する、ポリマー結合ダイマー。
(項目2)
上記アミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸8〜113と少なくとも95%の配列同一性があることを特徴とする、項目1に記載のダイマー。
(項目3)
第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含むポリマー結合ダイマーであって、各ポリペプチドは個々に、1〜6つのアミノ酸置換を有する配列番号6の90から140のアミノ酸を含み、各置換は、ポリマーが結合するポリマー結合部位を提供する、ポリマー結合ダイマー。
(項目4)
上記第1のポリペプチドが、NBN113、NBN140、NBN116、NBN112、NBN111、NBN110、NBN109、NBN108、NBN107、NBN106、NBN105、NBN104、NBN103、NBN102、NBN101、NBN100およびNBN99(それぞれ、配列番号2、6〜21)からなる群より選択される、項目1に記載のダイマー。
(項目5)
上記第1のアミノ末端アミノ酸または上記第2のアミノ末端アミノ酸が、ポリマーに結合している、項目1または3に記載のダイマー。
(項目6)
上記第1のアミノ末端アミノ酸および上記第2のアミノ末端アミノ酸が、ポリマーに結合している、項目5に記載のダイマー。
(項目7)
少なくとも1つの置換が、以下:
上記第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、または両方のアミノ酸配列における14位にアルギニン以外のアミノ酸;
上記第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、または両方のアミノ酸配列における39位にアルギニン以外のアミノ酸;
上記第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、または両方のアミノ酸配列における68位にアルギニン以外のアミノ酸;および
上記第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、または両方のアミノ酸配列における95位にアスパラギン以外のアミノ酸;
からなる群より選択され、ここで、該アミノ酸の位置は、配列番号1のポリペプチド配列に従って番号付けされる、項目3に記載のダイマー。
(項目8)
上記アミノ酸置換が、アスパラギンではなくリジンである、項目1に記載のダイマー。
(項目9)
上記アミノ酸置換が、アスパラギンではなくリジンである、項目3に記載のダイマー。
(項目10)
上記アミノ酸置換が、アルギニンではなくリジンである、項目1に記載のダイマー。
(項目11)
上記アミノ酸置換が、アルギニンではなくリジンである、項目3に記載のダイマー。
(項目12)
上記アミノ酸置換が、48位、49位または51位においてアルギニンではなく中性アミノ酸または酸性アミノ酸である、項目1に記載のダイマー。
(項目13)
上記中性アミノ酸または酸性アミノ酸が、グルタメートおよびアスパルテートからなる群より選択される、項目12に記載のダイマー。
(項目14)
上記置換が、95位においてである、項目9に記載のダイマー。
(項目15)
上記置換が、95位においてのアスパラギンではなくアスパルテートである、項目1に記載のダイマー。
(項目16)
上記ポリマーの平均分子量が、約2000Da〜約100,000Daである、項目1または2に記載のダイマー。
(項目17)
上記ポリマーの平均分子量が、約5,000Da〜約50,000Daである、項目11に記載のダイマー。
(項目18)
上記ポリマーの平均分子量が、約10,000Da〜約20,000Daである、項目12に記載のダイマー。
(項目19)
上記ポリマーが直鎖状である、項目1または3に記載のダイマー。
(項目20)
上記ポリマーが分枝状である、項目1または3に記載のダイマー。
(項目21)
上記ポリマーが、本質的にポリアルキレングリコール部分からなる、項目1または3に記載のダイマー。
(項目22)
上記ポリアルキレングリコール部分が、PEG部分である、項目16に記載のダイマー。
(項目23)
少なくとも1つのポリペプチドが、グリコシル化されている、項目1または3に記載のダイマー。
(項目24)
第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含むポリマー結合ダイマーであって、ここで、(a)各ポリペプチドが個々に、配列番号1の100から110のアミノ酸を含み、(b)各ポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸番号95においてアスパラギンからリジンへの置換を含み、そして(c)該ダイマーが、3つまたは4つのPEG部分を含み、ここで、各PEG部分の分子量は、約10,000Daであり、各PEG部分が、アミノ末端またはリジン95において結合している、ポリマー結合ダイマー。
(項目25)
組成物であって、以下:
a)約10,000Daの分子量を有する3つのPEGポリマーに結合したNBN106−N95Kのホモダイマー;
b)約10,000Daの分子量を有する4つのPEGポリマーに結合したNBN106−N95Kのホモダイマー;あるいは
c)項目1または3に記載の少なくとも2種の異なるダイマーの混合物
を含む、組成物。
(項目26)
項目1または3に記載の第1のポリペプチドをコードする核酸。
(項目27)
項目21に記載の核酸で形質転換された宿主細胞。
(項目28)
哺乳動物における神経障害性疼痛を治療するための方法であって、該方法は、項目1または3に記載のダイマーの治療有効量を哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目29)
上記治療有効量が、0.01μg/kg〜1000μg/kgである、項目23に記載の方法。
(項目30)
上記治療有効量が、1μg/kg〜100μg/kgである、項目24に記載の方法。
(項目31)
上記治療有効量が、1μg/kg〜30μg/kgである、項目25に記載の方法。
(項目32)
上記治療有効量が、3μg/kgから10μg/kgである、項目26に記載の方法。
(項目33)
上記ダイマーが、筋肉内送達または皮下送達を介して投与される、項目23に記載の方法。
(項目34)
哺乳動物におけるRETレセプターを活性化する方法であって、該方法は、項目1または3に記載のダイマーの有効量を哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
【0019】
[図面の簡単な説明]
[図1]図1は、野生型NBN113と比較した3(,4)X10K PEG化 N
BN106−N95KのKIRA ELISA解析データをまとめている散布プロットである。
[図2]図2は、野生型NBN113と比較した3X10K PEG化 NBN10
6−N95Kおよび4X10K PEG化 NBN106−N95KのKIRA ELISA解析データをまとめている散布プロットである。
[図3]図3は、脊髄神経を結紮したラットにおける十分に確立した触覚異痛症を、
3X10K PEG化 NBN106−N95Kおよび4X10K PEG化 NBN106−N95Kの混合物(すなわち、「3(,4)X10kDa PEG NBN106−N95K」)の10μg/kgにより、ほぼ完全に逆転したことを示している破線プロットである。
[図4]図4は、脊髄神経を結紮したラットにおける十分に確立した熱痛覚過敏を、
10μg/kgの3(,4)X10kDa PEG化 NBN106−N95Kにより、ほぼ完全に逆転したことを示している破線プロットである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
他に言明しない限り、ニューブラスチンのアミノ酸位置番号の言及は、配列番号1に示された番号付けを言う。
【0021】
他に定義しない限り、本明細書に用いられている全ての専門用語および科学用語は、当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと同様な、または同等の方法および材料が、本発明の実践または試験に使用できるが、好適な方法および材料は下記に説明されている。本明細書に挙げられた全ての刊行物、特許出願、特許および引用文献は参照として、それらの全体が組み込まれている。矛盾がある場合は、定義を含む本明細書が規定する。なお、材料、方法および例は、例示目的のみであって限定の意図はない。
【0022】
本明細書に用いられる「野生型ニューブラスチンポリペプチド」とは、天然のニューブラスチンポリペプチド配列を意味する。野生型ニューブラスチンポリペプチドは、ニューブラスチンの供給源、例えば、ヒト、マウスまたはラットのニューブラスチンによってさらに定義できる(例えば、配列番号2、3、または4を参照)。コンセンサスニューブラスチンポリペプチド配列は、配列番号1として提供される。
【0023】
本明細書に用いられる「変異ニューブラスチンポリペプチド」とは、野生型ニューブラスチンポリペプチドに関し、少なくとも指定された最小レベルの配列同一性を含有し、野生型ニューブラスチンポリペプチドに関し少なくとも1つのアミノ酸の置換、挿入または融合を含有し、ニューブラスチン活性を示すポリペプチドを意味する(例えば、国際公開の米国特許出願公開第02/02319号(国際公開第02/060929号)に記載されたもの)。
【0024】
本明細書に用いられる「内部ポリマー結合部位」とは、ポリマー結合に好適な側鎖を提供する、変異ニューブラスチンポリペプチドにおける非末端アミノ酸残基を意味する。
【0025】
本明細書に用いられる「修飾ニューブラスチンポリペプチド」とは、少なくとも1つの結合されているポリマーを含有するポリペプチドを意味する。
【0026】
本明細書に用いられる「融合」とは、同じ読み取り枠内でこれらのタンパク質をコードするポリヌクレオチド分子の遺伝子発現により、対応するペプチド主鎖を介して2つ以上のポリペプチドの共直線性の共有結合を意味する。
【0027】
本明細書に用いられる「同一性」とは、2つのポリペプチド分子間の、または2つの核酸間の配列類似性を言う。2つの比較された配列の両方におけるある位置が、同一の塩基またはアミノ酸モノマーサブ単位によって占められている場合(例えば、2つのDNA分子の各々におけるある位置がアデニンによって占められている、または2つのポリペプチドの各々におけるある位置がリジンによって占められている場合)、各々の分子は、その位置において相同である。2つの配列間の「パーセンテージ同一性」は、2つの配列に共有されている対合位置数を比較された位置数で割ったものx100の関数である。例えば、2つの配列において、10の位置のうち6つが対合していれば、この2つの配列は、60%同一性を有する。例えば、DNA配列のCTGACTとCAGGTTは50%の相同性を有する(合計6つの位置のうち3つが対合している)。一般に、2つの配列が最大の相同性を与えるように配列されている場合に比較がなされる。このような配列は、例えば、Alignプログラム(DNAstar社)などのコンピュータプログラムにより簡便に実施されるNeedlemanら、J.Mol Biol.48:p.443−453(1970)の方法を用いて提供できる。「類似」配列とは、配列された際、同一の、および類似のアミノ酸残基を共有する配列であり、ここで類似残基は、配列された参照配列における対応するアミノ酸残基残基の保存的置換か、または「許容された点変異」である。これに関して、参照配列における残基の「保存的置換」とは、対応する参照残基と物理的または機能的に類似している、例えば、同様のサイズ、形状、電荷、共有結合または水素結合を形成する能力などの化学的性質などを有する残基による置換である。したがって、「保存的置換変異」配列は、1つ以上の保存的置換または許容された点変異が存在する点で、参照配列または野生型配列と異なる配列である。2つの配列間の「正のパーセンテージ」は、2つの配列に共有された対合残基または保存的置換を含有する位置の数を、比較された位置の数で割ったものx100の関数である。例えば、2つの配列において、10の位置のうち6つが対合しており、10の位置のうち2つが保存的置換を含有している場合、この2つの配列は、80%正の相同性を有している。
【0028】
(変異ニューブラスチンポリペプチド類)
本発明の変異ニューブラスチンポリペプチド類は、神経栄養性活性を保持し、野生型ニューブラスチンポリペプチドに比して増強した生物学的利用能を有する。例えば、本発明の変異ニューブラスチン類は、野生型ニューブラスチンがRETを活性化するアッセイにおいて、RET遺伝子産物を活性化する。一般に変異ニューブラスチンポリペプチドは、以下の特徴のうち、少なくとも1つを保持するが、それに加えて内部ポリマー結合部位が生じるような少なくとも1つの変更を含んでなる:
(i)配列番号1〜4により番号付けした16位、43位、47位、80位、81位、109位、および111位における7つの保存システイン残基;
(ii)以下のアミノ酸残基:各々、配列番号1〜4により番号付けした16位にC、18位にL、25位にV、28位にL、29位にG、30位にL、31位にG、36位にE、40位にF、41位にR、42位にF、43位にC、45位にG、47位にC、80位にC、81位にC、82位にR、83位にP、91位にF、93位にD、105位にS、106位にA、109位にCおよび111位にC;
(iii)LGLG反復単位、FRFCモチーフ、QPCCRPモチーフおよびSATAGGCモチーフ。
【0029】
幾つかの実施形態において、本発明は、切断変異ニューブラスチンポリペプチドを提供し、ここで切断ニューブラスチンポリペプチドは、成熟ニューブラスチンポリペプチドの1つ以上のアミノ末端アミノ酸を欠如しているが、内部ポリマー付加を有するように変異している。前記切断変異ニューブラスチンポリペプチドは、二量化した際、RETポリペプチドを活性化することが好ましい。幾つかの実施形態において、変異ニューブラスチンポリペプチドは、RETポリペプチドの二量化を誘導する。当業者には明らかであると思われるが、このような誘導には、さらなるポリペプチドまたは補因子を必要とし得る。
【0030】
ヒトおよびマウスのニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸配列が、国際公開第00/01815号に開示されている。本発明による野生型ニューブラスチンポリペプチドの例は、表1Aに示されている。ニューブラスチンコンセンサス配列(ヒト、マウスおよびラットに関してコンセンサス)は、表1Bに記載されている。
【0031】
【表1A】

幾つかの実施形態において、表1Aにおいて太字で示されたアルギニン(ArgまたはR)またはアスパラギン(AsnまたはN)残基の少なくとも1つは、異なるアミノ酸残基によって置換されている。好ましい一実施形態において、変異ニューブラスチンポリペプチドは、表1Aに星印で示された95位のアミノ酸において、アスパラギンの代わりにリジン(LysまたはK)残基を有し、NBN−N95Kと称される。一般に、N95K置換は、溶解度の改善を生じる。これは高濃度での処方物に役立つ。
【0032】
【表1B】

本発明は、例えば、配列番号1の8〜113のアミノ酸(やはり表1に示されている)に少なくとも70%同一なアミノ酸配列を含んでなるポリマーに結合した変異ニューブラスチンポリペプチドを含む。一実施形態において、14位。39位、68位のアルギニンまたは95位のアスパラギンのうちの1つ以上が、アルギニンまたはアスパラギン以外のアミノ酸によって置換される。一実施形態において、野生型アミノ酸は、リジンまたはシステインにより置換される。
【0033】
変異ニューブラスチンポリペプチドにおいて置換される残基は、置換されるアミノ酸におけるポリマー、例えば、ポリアルキレングリコールポリマーの結合を助けるために選択できる。有利な変更部位は、ニューブラスチンポリペプチドにおける溶媒受容領域における部位である。そのような部位は、その結晶構造が、Eigenbrotら、Nat.Struct.Biol.4:p.435−38、1997年に記載されているGDNFなどの関連神経栄養因子の結晶構造の検査に基づいて選択できる。また、その結晶化と構造決定が、下記に記載されているニューブラスチンの結晶構造に基づいて部位を選択できる。また、ペルセフィン/ニューブラスチンキメラタンパク質に関して提供された構造−機能情報に基づいて部位を選択できる。これらのキメラは、Balohら、J.Biol.Chem.275:p.3412−20、2000年に記載されている。この方法論により同定された溶媒接触可能な、または表面露出したニューブラスチンアミノ酸の例示的一覧は表2に記載されている。
【0034】
表2は、表面露出していると考えられるヒトニューブラスチンの残基と番号の一覧である。第1列は、A鎖およびB鎖(PDBコード1AGQ)により形成されたラットGDNFの構造を調べることにより、また、残基が、その構造の表面にあるかどうかを決定することによって決定された表面露出残基を表す。次に、この構造を、GDNFの配列アラインメントおよびBalohら、Neuron 21:p.1291−1302、1998年におけるニューブラスチンと比較してニューブラスチンにおける適切な残基を決定した。第2列と第3列は、各々A鎖およびB鎖により形成されたヒトニューブラスチンダイマーの構造を調べることにより決定された表面露出残基を表す。表2における番号付けの概要は、表1に示されたものである。
【0035】
【表2】

nは、その残基がGDNFまたはニューブラスチンの構造内に存在しないことを示す。GDNF(68〜71残基)に関連するニューブラスチンにおける構造デザイン、屈曲性領域または挿入のいずれかによる。
−は、その残基が埋め込まれていて表面にはないか、またはジスルフィド結合に含まれるシステイン残基であることを示す。
+は、66〜75残基を含有するループが、GDNFモノマーの1つ(屈曲性と思われる)だけに見られるが、この残基がGDNF構造において、またはニューブラスチン構造において表面露出していることを示す。
【0036】
幾つかの実施形態において、ニューブラスチンポリペプチドは、GDNFサブファミリーおよびTGF−ベータスーパーファミリーの特徴である7つの保存Cys残基を保持する。
【0037】
ヒトの完全長プレプロNBNポリペプチド(配列番号5)の配列が表3に示されている。ニューブラスチンポリペプチドの3つの成熟形態が同定された。これらの形態としては以下のものが挙げられる:
(i)配列番号6と称されるアミノ酸配列を有する、本明細書においてNBN140と称される140AAポリペプチド;
(ii)配列番号7と称されるアミノ酸配列を有する、本明細書においてNBN116と称される116AAポリペプチド;および
(iii)配列番号2と称されるアミノ酸配列を有する、本明細書においてNBN113と称される113AAポリペプチド。
【0038】
表3は、開示された本発明のプレプロニューブラスチンポリペプチド配列間の関係を示している。ライン1は、配列番号5のポリペプチドを提供しており、ライン2は、配列番号6のポリペプチドを提供しており、ライン3は、配列番号7のポリペプチドを提供しており、ライン4は、配列番号2のポリペプチドを提供している。7つの保存システイン残基は、成熟二量化ニューブラスチンリガンドにおいて形成された分子内(による、#による#、+による+)および分子間(「|」)ジスルフィド架橋を示すために記号(「」、「#」、「+」および「|」)によって示されている。挿入記号(「^」)は、NBN106−N95Kにおいて、アミノ酸95位におけるリジンにより置換されたアスパラギン残基を示している。
【0039】
【表3】

代替の実施形態において、上記に同定されたニューブラスチンポリペプチドの配列は、それらのアミノ末端アミノ酸配列において切断されている。これらの例としては、以下のものが挙げられる:
(iv)ニューブラスチンポリペプチドの112カルボキシ末端アミノ酸、例えば配列番号6(配列番号8)の29〜140のアミノ酸または配列番号1、3または4の2〜113のアミノ酸を有する、本明細書においてNBN112と称される112AAポリペプチド配列。
【0040】
(v)ニューブラスチンポリペプチドの111カルボキシ末端アミノ酸、例えば配列番号6(配列番号9)の30〜140のアミノ酸または配列番号1、3または4の3〜113のアミノ酸を有する、本明細書においてNBN111と称される111AAポリペプチド配列。
【0041】
(vi)ニューブラスチンポリペプチドの110カルボキシ末端アミノ酸、例えば配列番号6(配列番号10)の31〜140のアミノ酸または配列番号1、3または4の4〜113のアミノ酸を有する、本明細書においてNBN110と称される110AAポリペプチド配列。
【0042】
(vii)ニューブラスチンポリペプチドの109カルボキシ末端アミノ酸、例えば配列番号6(配列番号11)の32〜140のアミノ酸または配列番号1、3または4の5〜113のアミノ酸を有する、本明細書においてNBN109と称される109AAポリペプチド配列。
【0043】
(viii)ニューブラスチンポリペプチドの108カルボキシ末端アミノ酸、例えば配列番号6(配列番号12)の33〜140のアミノ酸または配列番号1、3または4の6〜113のアミノ酸を有する、本明細書においてNBN108と称される108AAポリペプチド配列。
【0044】
(ix)ニューブラスチンポリペプチドの107カルボキシ末端アミノ酸、例えば配列番号6(配列番号13)の34〜140のアミノ酸または配列番号1、3または4の7〜113のアミノ酸を有する、本明細書においてNBN107と称される107AAポリペプチド配列。
【0045】
(x)ニューブラスチンポリペプチドの106カルボキシ末端アミノ酸、例えば配列番号6(配列番号14)の35〜140のアミノ酸または配列番号1、3または4の8〜113のアミノ酸を有する、本明細書においてNBN106と称される106AAポリペプチド配列。
【0046】
(xi)ニューブラスチンポリペプチドの105カルボキシ末端アミノ酸、例えば配列番号6(配列番号15)の36〜140のアミノ酸または配列番号1、3または4の9〜113のアミノ酸を有する、本明細書においてNBN105と称される105AAポリペプチド配列。
【0047】
(xii)ニューブラスチンポリペプチドの104カルボキシ末端アミノ酸、例えば配列番号6(配列番号16)の37〜140のアミノ酸または配列番号1、3または4の10〜113のアミノ酸を有する、本明細書においてNBN104と称される104AAポリペプチド配列。
【0048】
(xiii)ニューブラスチンポリペプチドの103カルボキシ末端アミノ酸、例えば配列番号6(配列番号17)の38〜140のアミノ酸または配列番号1、3または4の11〜113のアミノ酸を有する、本明細書においてNBN103と称される103AAポリペプチド配列。
【0049】
(xiv)ニューブラスチンポリペプチドの102カルボキシ末端アミノ酸、例えば配列番号6(配列番号18)の39〜140のアミノ酸または配列番号1、3または4の12〜113のアミノ酸を有する、本明細書においてNBN102と称される102AAポリペプチド配列。
【0050】
(xv)ニューブラスチンポリペプチドの101カルボキシ末端アミノ酸、例えば配列番号6(配列番号19)の40〜140のアミノ酸または配列番号1、3または4の13〜113のアミノ酸を有する、本明細書においてNBN101と称される101AAポリペプチド配列。
【0051】
(xvi)ニューブラスチンポリペプチドの100カルボキシ末端アミノ酸、例えば配列番号6(配列番号20)の41〜140のアミノ酸または配列番号1、3または4の14〜113のアミノ酸を有する、本明細書においてNBN100と称される100AAポリペプチド配列。
【0052】
(xvii)ニューブラスチンポリペプチドの99カルボキシ末端アミノ酸、例えば配列番号6(配列番号21)の42〜140のアミノ酸または配列番号1、3または4の15〜113のアミノ酸を有する、本明細書においてNBN99またはN−14と称される99AAポリペプチド配列。
【0053】
NBN113からNBN99に関するこれらの切断ニューブラスチンポリペプチドのポリペプチド配列は、表4に示されている。ジスルフィド架橋形成は表3に記載されているとおりである。
【0054】
【表4】

本発明による変異ニューブラスチンポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸8〜113と、例えば少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一であり得る。幾つかの実施形態において、変異ニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸配列は、変異ニューブラスチンポリペプチドの1〜94および96〜113のアミノ酸において、天然のラット、ヒトまたはマウスのニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸配列を含み、例えば、前記ポリペプチドは、これらの位置に配列番号2、3または4のアミノ酸配列を有する。
【0055】
配列番号1〜4に開示されている配列と異なった配列の変異ニューブラスチンポリペプチドは、1つ以上の保存的アミノ酸置換を含み得る。あるいは、またはそれに加えて、変異ニューブラスチンポリペプチドは、1つ以上の非保存的アミノ酸置換により、または欠失または挿入により、異なり得る。前記の置換、挿入または欠失によって単離されたタンパク質の生物的活性が損なわれないことが好ましい。
【0056】
保存的置換は、1つのアミノ酸と同様な特徴を有する他のアミノ酸との置換である。保存的置換としては、以下の群内の置換が挙げられる:バリン、アラニンとグリシン;ロイシン、バリンとイソロイシン;アスパラギン酸とグルタミン酸;アスパラギンとグルタミン;セリン、システインとトレオニン;リジンとアルギニン;ならびにフェニルアラニンとチロシン。非極性疎水性アミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンが挙げられる。極性中性アミノ酸としては、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンが挙げられる。正電荷(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、リジンおよびヒスチジンが挙げられる。負電荷(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。上記の極性基、塩基性基または酸性基の1メンバーの、同じ群の他のメンバーによるいずれの置換も保存的置換と考えることができる。
【0057】
他の置換は、通常の当業者により容易に同定できる。例えば、アミノ酸、アラニンに対しては、D−アラニン、グリシン、ベータ−アラニン、システインおよびD−システインのうち、任意のものを採用できる。リジンに対しては、D−リジン、アルギニン、D−アルギニン、ホモ−アルギニン、メチオニン、D−メチオニン、オルニチンまたはD−オルニチンのうち、任意のものの置換ができる。一般に、単離ポリペプチドの性質の変化を誘導すると考えることのできる、機能的に重要な領域における置換は、以下の置換である:(i)極性残基、例えば、セリンまたはトレオニンと疎水性残基、例えば、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニンまたはアラニンとの置換;(ii)システイン残基と他の任意の残基との置換;(iii)正電荷側鎖を有する残基、例えば、リジン、アルギニンまたはヒスチジンと、負電荷側鎖を有する残基、例えば、グルタミン酸、またはアスパラギン酸との置換;または(iv)かさ高い側鎖を有する残基、例えば、フェニルアラニンと、そのような側鎖を有さない残基、例えばグリシンとの置換。前述の非保存的置換の1つが、タンパク質の機能特性を変化させる可能性は、そのタンパク質の機能的に重要な領域に関する置換の位置にも関連している。したがって、幾つかの非保存的置換は、生物学的性質に殆ど影響を及ぼさないか、全く影響を及ぼさない。
【0058】
多くの場合、ポリマー結合変異ニューブラスチンポリペプチドは、ポリマー不在下における野生型ポリペプチドまたは変異ポリペプチドの血清半減期に較べて、より長い血清半減期を有している。幾つかの実施形態において、ポリマー結合変異ニューブラスチンポリペプチドは、ポリマー不在下におけるポリペプチドまたはグリコシル化ポリペプチドの効力に較べて、著しく増強したインビボ効力を有している。
【0059】
ポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドは、少なくとも1種のポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドを含むダイマーとして提供し得る。幾つかの実施形態において、前記ダイマーは、ポリマー結合変異ニューブラスチンポリペプチドのホモダイマーである。他の実施形態において、前記ダイマーは、ポリマー結合変異切断ニューブラスチンポリペプチドのホモダイマーである。他の実施形態において、前記ダイマーは、1種のポリマー結合変異ニューブラスチンポリペプチドおよび1種の野生型ニューブラスチンポリペプチドを含むヘテロダイマーである。他の実施形態において、前記ダイマーは、ポリマー結合がアミノ末端にあり、ポリペプチドが切断されていても、いなくてもよい1種のポリマー結合変異ニューブラスチンポリペプチドおよび1種のポリマー結合野生型ニューブラスチンポリペプチドを含むヘテロダイマーである。他のダイマーとしては、切断されていても、いなくてもよいポリマー結合変異ニューブラスチンポリペプチド体のヘテロダイマーまたはホモダイマーが挙げられる。
【0060】
本発明において、配列番号5で提供され、本明細書においてNBN#(#は、参照ニューブラスチンに残っているカルボキシ末端残基の数を表す)と称されるようなプレプロNBNポリペプチドのカルボキシ最末端アミノ酸残基を含む成熟および切断変異ポリペプチド配列が提供される。生物活性ニューブラスチンダイマーに存在するポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドは、プロテアーゼ開裂反応または化学的開裂反応の生成物であり得るか、または組替えDNA構築体から発現できるか、または合成できる。ニューブラスチンポリペプチドの例としては、例えば、NBN140、NBN116、およびNBN113が挙げられる。本発明の他のニューブラスチンポリペプチドとしては、NBN112、NBN111、NBN110、NBN109、NBN108、NBN107、NBN106、NBN105、NBN104、NBN103、NBN102、NBN101、NBN100およびNBN99(配列番号8〜21)が挙げられる。
【0061】
好ましいポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドは、3つの10kDa PEG部分(「3x10kDa PEG NBN106−N95K」)または4つの10kDa PEG部分(「4x10kDa PEG NBN106−N95K」)のいずれかに結合したNBN 106−N95Kのホモダイマーである。また、3つの10kDa PEG部分または4つの10kDa PEG部分のいずれかに結合した、本明細書において「3(,4)x10kDa PEG NBN106−N95K」と称されるNBN106−N95Kホモダイマーの混合集団もまた好ましい。また、2つのアミノ末端アミノ酸がPEG部分に共有結合しており、3番目および/または4番目のPEG部分が置換N95K残基(1つまたは複数)の1つまたは両方と共有結合している3(,4)x10kDa PEG NBN106−N95Kもまた好ましい。
【0062】
幾つかの実施形態において、ポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドは、配列番号1のコンセンサス配列に基づいている。一定の実施形態において、ポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドは、アミノ酸8〜113に加えて、配列番号1のアミノ酸1〜7を含む。
【0063】
幾つかの実施形態において、ポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドが二量化した場合、GFRα3と結合する。幾つかの実施形態において、ポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドが二量化した場合、それ自体で、またはGFRα3と結合した場合に、RETポリペプチドのチロシンリン酸化を刺激する。
【0064】
幾つかの実施形態において、ポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドが二量化した場合、ニューロンの生存率を高める。例えば、感覚ニューロンの生存率を高める。
【0065】
幾つかの実施形態において、ポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドが二量化した場合、感覚ニューロンなどのニューロンの病理学的変化を減少または逆転させる。
【0066】
幾つかの実施形態において、ポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドが二量化した場合、ニューロン、例えば、自律神経ニューロンまたはドーパミン作動性ニューロンの生存率を高める。
【0067】
幾つかの実施形態において、ポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドは、そのポリマー結合ポリペプチドのアミノ酸配列の14位におけるアルギニン以外のアミノ酸、そのポリマー結合ポリペプチドのアミノ酸配列の39位におけるアルギニン以外のアミノ酸、そのポリマー結合ポリペプチドのアミノ酸配列の68位におけるアルギニン以外のアミノ酸、およびそのポリマー結合ポリペプチドのアミノ酸配列の95位におけるアスパラギン以外のアミノ酸からなる群から選択される1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む。幾つかの実施形態において、14位、39位、68位および95位におけるアミノ酸の1つ以上のアミノ酸におけるアミノ酸はリジンである。ポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドの8〜94のアミノ酸および96〜113のアミノ酸は、配列番号1の8〜94のアミノ酸および96〜113のアミノ酸に少なくとも90%同一であることが好ましい。前記アミノ酸配列は、それに少なくとも95%同一であることがより好ましい。ポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸配列は、ポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドの8〜94のアミノ酸および96〜113のアミノ酸に天然のヒト、マウスまたはラットのニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸配列を含むことが最も好ましい。例えば、ポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドの8〜94のアミノ酸および96〜113のアミノ酸は、配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号4の8〜94のアミノ酸および96〜113のアミノ酸のアミノ酸配列を含み得る。上記実施形態において、95位のアミノ酸における好ましい残基は、リジンまたはシステインである。
【0068】
本発明は、ポリマー結合ニューブラスチン融合タンパク質、例えば、配列番号36で提供されるポリヒスチジン(His)−タグ化ニューブラスチンまたは融合部分が、免疫グロブリン(Ig)ポリペプチド、血清アルブミンポリペプチドまたはレプリカーゼ誘導ポリペプチドであるニューブラスチン融合タンパク質を含有するヘテロダイマーまたはホモダイマーである構築体を含む。ニューブラスチン融合タンパク質は、インビボで増強された薬物動態学的特性と生物学的利用能特性を有し得る。
【0069】
本発明は、変異ポリペプチド配列を有する、成熟または切断ニューブラスチンポリペプチドをコードする核酸分子を提供する。提供されたニューブラスチンポリペプチドをコードする核酸分子は、ベクター、例えば、発現ベクターにおいて提供されることが好ましい。変異ニューブラスチン核酸分子またはそれを含むベクターは、細胞において提供され得る。前記細胞は、例えば、哺乳動物細胞、真菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞または細菌細胞であり得る。好ましい哺乳動物細胞は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(「CHO細胞」)である。
【0070】
また、本発明は、ニューブラスチンポリペプチドをコードする核酸を含有する細胞を、ニューブラスチンポリペプチドの発現を可能にする条件下で培養することにより、ポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドを作製する方法も提供する。幾つかの実施形態において、ニューブラスチンは天然部分に結合する。特定の実施形態において、天然部分は、グリコシル部分である。一定の実施形態において、グリコシル化ニューブラスチンは、例えば、CHO細胞内に発現する。本発明は、細胞内に発現したニューブラスチンポリペプチドをさらに含む。同様の核酸類、ベクター類、宿主細胞類およびポリペプチド製造法は、本発明の融合タンパク質(ニューブラスチン−血清アルブミン融合タンパク質など)に関して、本明細書に開示されている。
【0071】
幾つかの実施形態において、細胞内に発現するニューブラスチンポリペプチドを回収し、ポリマーと結合させる。幾つかの実施形態において、前記ポリマーは、ポリアルキレングリコール部分である。特定の実施形態において、前記ポリマーはPEG部分である。
【0072】
本発明により、非天然ポリマーに結合した変異ニューブラスチンポリペプチドを含む組成物が、特に提供される。前記ポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドが、そのポリマー結合ポリペプチドのアミノ酸配列の14位におけるアルギニン以外のアミノ酸、そのポリマー結合ポリペプチドのアミノ酸配列の39位におけるアルギニン以外のアミノ酸、そのポリマー結合ポリペプチドのアミノ酸配列の68位におけるアルギニン以外のアミノ酸、およびそのポリマー結合ポリペプチドのアミノ酸配列の95位におけるアスパラギン以外のアミノ酸からなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含むという条件で、前記組成物中のニューブラスチンポリペプチドは、配列番号1の8〜113のアミノ酸に、少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含むことが好ましく、アミノ酸の位置は、配列番号1のポリペプチド配列によって番号付けされている。
【0073】
本発明は、PEG部分に結合したニューブラスチンポリペプチドまたは変異ニューブラスチンポリペプチドを含む安定な水溶性結合ニューブラスチンポリペプチドまたは変異ニューブラスチンポリペプチドの複合体を含み、前記ニューブラスチンポリペプチドまたは変異ニューブラスチンポリペプチドは、不安定な結合によってPEG部分に結合している。幾つかの実施形態において、前記不安定結合は、生物学的加水分解、タンパク質加水分解、またはスルフヒドリル開裂によって開裂可能である。幾つかの実施形態において、不安定結合は、インビボ条件下で開裂可能である。
【0074】
また、本発明により、野生型ニューブラスチンに較べて、延長化した血清半減期を有する修飾ニューブラスチンポリペプチドの作製法が提供される。この方法は、ニューブラスチンポリペプチドまたは変異ニューブラスチンポリペプチドを提供し、そのポリペプチドまたは変異ニューブラスチンポリペプチドを、非天然ポリマー部分に結合させることによって、ポリマー結合ニューブラスチンポリペプチド構成物を形成することを含んだ。
【0075】
本発明のポリマー結合変異ニューブラスチンポリペプチドは、例えば、そのポリマー結合ポリペプチドのアミノ酸配列の14位にアルギニン以外のアミノ酸が生じるか、またはそのポリマー結合ポリペプチドのアミノ酸配列の39位にアルギニン以外のアミノ酸が生じるか、またはそのポリマー結合ポリペプチドのアミノ酸配列の68位にアルギニン以外のアミノ酸が生じるか、またはそのポリマー結合ポリペプチドのアミノ酸配列の95位にアスパラギン以外のアミノ酸が生じる、1つ以上のアミノ酸置換を含み、アミノ酸の位置は、配列番号1のポリペプチド配列によって番号付けされている。
【0076】
(野生型ニューブラスチンポリペプチドおよび変異ニューブラスチンポリペプチドの合成と単離)
ニューブラスチンポリペプチドは、当該分野で公知の方法を用いて単離することができる。天然ニューブラスチンポリペプチドは、標準的なタンパク質精製法を用いて適切な精製方式により、細胞または組織源から単離できる。あるいは、変異ニューブラスチンポリペプチドは、標準的ペプチド合成法を用いて化学的に合成できる。短いアミノ酸配列の合成は、ペプチド業界で十分に確立されている。Stewartら、Solid Phase Peptide Synthesis(第2版、1984年)を参照されたい。
【0077】
幾つかの実施形態において、変異ニューブラスチンポリペプチドは、組替えDNA法によって製造される。例えば、変異ニューブラスチンポリペプチドをコードする核酸分子を、ベクター、例えば、発現ベクターに挿入でき、この核酸を細胞内に導入することができる。好適な細胞としては、例えば、哺乳動物細胞(ヒト細胞またはCHO細胞など)、真菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞または細菌細胞が挙げられる。組替え細胞内で発現させる場合は、前記細胞を、変異ニューブラスチンポリペプチドの発現を可能にする条件下で培養することが好ましい。所望の場合は、変異ニューブラスチンポリペプチドを細胞懸濁液から回収できる。本明細書に用いられる「回収される」とは、回収処理前に変異ポリペプチドが存在している細胞の成分または培地から変異ニューブラスチンポリペプチドが取り出
されることを意味する。前記回収処理は、1つ以上のリフォールディングステップまたは精製ステップを含み得る。
【0078】
変異ニューブラスチンポリペプチドは、当該分野で公知の幾つかの方法のうちの任意のものを用いて構築できる。そのような方法の1つは、部位特異的変異誘発であり、コードされたニューブラスチンポリペプチドにおける単一アミノ酸(または所望の場合、少数の予め決められたアミノ酸残基)を変化させるために特定のヌクレオチド(または所望の場合、少数の特定ヌクレオチド)を変化させる。部位特異的変異誘発は、ルーチンで広く用いられている方法であることは、当業者により認識されている。事実、多くの部位特異的変異誘発キットが商品として入手できる。そのようなキットの1つは、Clontech
Laboratories(カリフォルニア州パロアルト所在)により販売されている「Transformer Site Directed Mutagenesis Kit」である。
【0079】
本発明の実施には、他に指示しない限り、当該分野の範囲内にある細胞生物学、細胞培養、分子生物学、微生物学、組替えDNA、タンパク質化学および免疫学の慣例的技法が用いられる。このような技法は文献に記載されている。例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(Sambrook、FritschおよびManiatis編集)、Cold Spring Harbour Laboratory Press、1989年;DNA Cloning、I巻およびII巻(D.N.Glover編集)、1985年;Oligonucleotide Synthesis、(M.J.Gait編集)、1984年;米国特許第4,683,195号(Mullisら);Nucleic Acid Hybridization(B.D.HainesおよびS.J.Higgins編集)、1984年;Transcription and Translation(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編集)、1984年;Culture of Animal Cells (R.I.Freshney編集)Alan R.Liss社、1987年;Immobilized cells and Enzymes、IRL Press、1986年;A Practical Guide to Molecular Cloning(13.Perbal)、1984年;Methods in Enzymology、154巻および155巻(Wuら編集)、Academic Press、ニューヨーク所在;Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.H.MillerおよびM.P.Calos編集)、1987年、Cold Spring Harbour Laboratory;Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology(MayerおよびWalker編集)、Academic Press、ロンドン所在、1987年;Handbook of Experiment Immunology、I〜IV巻(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編集)、1986年;Manipulating the Nouse Embryo、Cold Spring Harbour Laboratory Press、1986年、を参照されたい。
【0080】
(ニューブラスチンポリペプチドのポリマー結合)
化学的に修飾されたニューブラスチンポリペプチドは、本開示に基づいて、当業者により調製できる。ニューブラスチンポリペプチドへの結合に好ましい化学的部分は、水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーは、それが結合しているタンパク質が生理的環境などの水性環境に沈殿しないため有利である。前記ポリマーは、治療用製品または組成物の調製にとって製薬上許容できることが好ましい。
【0081】
所望の場合、ニューブラスチンポリペプチドとの結合に単一のポリマー分子を使用できるが、1つ以上のポリマー分子を同様に結合できる。本発明の結合ニューブラスチン組成物は、インビボならびに非インビボ適用に使用できる。また、前記結合ポリマーは、最終使用適用にとって適切な他の任意の基、部分または他の結合種を使用できることが認識されるであろう。例えば、幾つかの適用においては、耐UV分解性、または抗酸化、もしくは他の性質または特徴を前記ポリマーに与える機能的部分を、前記ポリマーに共有結合させることが有用であり得る。さらなる一例として、幾つかの適用において、結合物質全体の種々の性質または特徴を高める上で相応しい反応性または架橋結合性を前記ポリマーに与えるために、このポリマーを機能化することが有利であり得る。したがって、前記ポリマーは、その意図された目的に関して、前記結合ニューブラスチン組成物の有効性を妨げない任意の官能基、反復基、結合または他の構成要素の構造体を含有できる。
【0082】
前記ポリマー/タンパク質結合体が治療に用いられるかどうか、また、もしそうならば、所望の投与量、循環時間、タンパク質分解性に対する耐性および他の考慮事項などの考慮に基づいて、当業者は、所望のポリマーを選択できるであろう。誘導体化の有効性は、所望の形態で(例えば、浸透圧ポンプ、またはより好ましくは、注射または注入により、または経口、経肺または他の送達経路のためにさらに処方物化して)、誘導体を投与し、その有効性を測定することによって確認できる。
【0083】
好適な水溶性ポリマーとしては、限定はしないが、PEG、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー類、カルボキシメチレンセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸類(ホモポリマー類またはランダムコポリマー類)、およびデキストランまたはポリ(n−ビニルピロリドン)PEG、プロピレングリコールホモポリマー類、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー類、ポリオキシエチル化ポリオール類(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコールおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0084】
前記ポリマーは、任意の好適な分子量でよく、また分枝状でも非分枝状でもよい。
【0085】
PEGに関して、好適な平均分子量は、約2kDaと約100kDaとの間である。このことにより、扱い易さと製造し易さが得られる。PEGの調製において、ある分子は述べられた分子量より大きく、ある分子は少なくなることを当業者は認識するであろう。したがって、分子量は代表的には、「平均分子量」として記される。所望の治療プロフィル(例えば、所望の持続放出時間;効果が存在する場合は生物活性に及ぼす効果;扱い易さ;抗原性欠如の程度および治療用タンパク質に及ぼすPEGの他の知られた効果)に依存して他の分子量(サイズ)を使用し得る。種々の実施例において、分子量は、約2kDa、約5kDa、約10kDa、約15kDa、約20kDa、約25kDa、約30kDa、約40kDaまたは約100kDaである。一定の好ましい実施例において、各PEG鎖の平均分子量は、約20kDaである。一定の好ましい実施例において、平均分子量は、約10kDaである。
【0086】
このように結合したポリマー分子の数は変化し得、当業者は機能に及ぼすその効果を確認できるであろう。モノ誘導化ができるか、または同一の、もしくは異なった化学的部分を有するジ、トリ、テトラ誘導体または誘導体の何らかの組合せ(例えば、異なる重量のPEG類などのポリマー)を与え得る。ポリマー分子対タンパク質(またはポリペプチド)分子の比率は変化し、反応混合物におけるそれらの濃度も変化する。一般に、最適比率(過剰の未反応タンパク質またはポリマーが存在しない反応の効率に関して)は、誘導体化の所望の程度(例えば、モノ、ジ、トリなど)、選択されたポリマーの分子量、ポリマーが分枝状か、非分枝状か、および反応条件などの因子によって決定されるであろう。
【0087】
タンパク質の機能的ドメインまたは抗原性ドメインに及ぼす効果を考慮して、PEG分子(または他の化学的部分)をタンパク質に結合させる必要がある。当業者に利用できる多数の結合方法がある。例えば、欧州特許出願公開第0401384号(G−CSFに対するPEGの結合);Malikら、Exp.Hematol.20:p.1028−1035、1992年(塩化トレシルを用いるGM−CSFのPEG化を報告している)を参照されたい。
【0088】
例えば、PEGは、遊離アミノ基またはカルボキシル基などの反応性基を介してアミノ酸残基により共有結合し得る(PEG化)。遊離アミノ基を有するアミノ酸残基としては、リジン残基およびアミノ末端アミノ酸残基が挙げられる。遊離カルボキシルを有するものとしては、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基およびC末端アミノ酸残基が挙げられる。PEG分子(単数または複数)を結合させるための反応性基として、スルフヒドリル基もまた使用できる。治療目的には、結合はアミノ基、例えば、リジン基のN末端においてできる。アミノ末端化学修飾タンパク質を特に望むことができる。
【0089】
当該組成物の例示としてPEGを用い、種々のPEG分子(分子量、分枝などによる)、反応混合物におけるPEG分子対タンパク質(またはペプチド)分子の比率、実施されるPEG化反応タイプおよび選択されたアミノ末端PEG化タンパク質の獲得法から選択できる。アミノ末端PEG化調製物の獲得法(すなわち、必要ならば、この部分を他のモノPEG化部分から分離する)は、PEG化タンパク質分子の集団からのアミノ末端PEG化物質の生成によるものであり得る。選択的アミノ末端化学修飾は、特定のタンパク質における誘導体化に利用できる種々のタイプの第1級アミノ基の反応性基の差異(リジン対アミノ末端)を利用する還元的アルキル化によって達成できる。適切な反応条件下で、ポリマーを含むカルボニル基を有するアミノ末端におけるタンパク質の実質的に選択的誘導体化が達成される。例えば、タンパク質のリジン残基のイプシロン(ε)−アミノ基と、アミノ末端残基のアルファ(α)−アミノ基のpKaの違いを利用できるpHで反応を実施することにより、タンパク質のアミノ末端を選択的にPEG化できる。そのような選択的誘導体化により、タンパク質に対する水溶性ポリマーの結合が制御される。すなわち、タンパク質のアミノ末端において、ポリマーとの結合が優先的に生じ、リジンの側鎖アミノ基などの他の反応性基の修飾はあまり生じない。
【0090】
還元的アルキル化を用いる水溶性ポリマーは、上記のタイプのものであり得、タンパク質に結合するための単一の反応性アルデヒドを有する必要がある。単一の反応性アルデヒドを含有するPEGプロピオンアルデヒドを使用できる。
【0091】
本発明は、原核生物または真核生物において発現された、または合成的に作製された変異ニューブラスチンポリペプチドを含む。幾つかの実施形態において、ニューブラスチンはグリコシル化される。幾つかの特定の実施形態において、ニューブラスチンダイマーは、各アミノ末端においてポリマー結合し、各内部Asn95残基においてグリコシル化される。他の実施形態において、変異ニューブラスチンダイマーは、各アミノ末端においてポリマー結合し、内部Lys95残基の1つまたは両方においてポリマー結合する。
【0092】
PEG化は、任意の好適なPEG化反応によって実施できる。種々のPEG化化学は、当該分野に公知である。例えば、Focus on Growth Factors、3(2):p.4−10、1992年;欧州特許出願公開第0 154 316号;欧州特許出願公開第0 401 384号および本明細書に引用されているPEG化に関する他の刊行物を参照されたい。PEG化は、反応性PEG分子(または、類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応により実施できる。
【0093】
アシル化によるPEG化は、一般にPEGの活性エステル誘導体を反応させることを伴う。PEG化を実施するために、任意の公知の、またはその後に発見された反応性PEG分子が使用できる。好ましい活性エステルは、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)にエステル化されたPEGである。本明細書に用いられる「アシル化」としては、限定はしないが、治療用タンパク質とPEGなどの水溶性ポリマーとの間の以下のタイプの結合が挙げられる:アミド、カルバメート、ウレタンなど。Bioconjugate Chem.5:p.133−140、1994年を参照されたい。反応条件は、PEG化業界で公知の任意のもの、または、その後に開発されたものから選択できるが、修飾されるニューブラスチンタンパク質またはポリペプチドを不活化させると考えられる温度、溶媒およびpHなどの条件は避ける必要がある。
【0094】
アシル化によるPEG化は一般に、ポリPEG化ニューブラスチンタンパク質を生じる。接続する結合はアミドであることが好ましい。また、生じる生成物は、実質的にモノ、ジ、またはトリPEG化のみ(例えば、>95%)であることが好ましい。しかし、より高い程度のPEG化を有する幾つかの種が、使用される特定の反応条件に依存した量で形成され得る。所望の場合、より精製されたPEG化種が、標準的な精製法、その中でも透析、塩析、限外ろ過、イオン交換クロマトグラフィ、ゲルろ過クロマトグラフィおよび電気泳動などにより、混合物、特に未反応種から分離できる。
【0095】
アルキル化によるPEG化は一般に、PEGの末端アルデヒド誘導体を、還元剤の存在下、ニューブラスチンと反応させることを伴う。また、アルキル化によるPEG化は、ポリPEG化ニューブラスチンタンパク質生成物も生じさせ得る。さらに、実質的にニューブラスチンのアミノ末端のα−アミノ基のみのPEG化に有利に働くように、反応条件を操作することができる。モノPEG化またはポリPEG化のいずれの場合においても、PEG基は、−CH−NH−基を介して、タンパク質に結合させることが好ましい。特に−CH−基との関連で、このタイプの結合は、本明細書において、「アルキル」結合と称される。
【0096】
還元的アルキル化によりモノPEG化生成物を生成させる誘導体化は、誘導体化に利用できる種々のタイプの第一級アミノ基の異なる反応性(リジン対アミノ末端)を利用する。前記反応は、タンパク質のリジン残基のε−アミノ基とアミノ末端残基のα−アミノ基のpKaの差を利用することを可能にするpHにおいて実施される。そのような選択的誘導体化により、タンパク質に対するアルデヒドなどの反応性基を含有する水溶性ポリマーの結合が制御される。すなわち、タンパク質のアミノ末端において、ポリマーとの結合が優先的に生じ、リジンの側鎖アミノ基などの他の反応性基の修飾はあまり生じない。
【0097】
アシル化法およびアルキル化法の両方に使用されるポリマー分子は、上記の水溶性ポリマーの中から選択できる。好ましくは、重合化度が、本法において提供されるように制御できるように、選択されたポリマーは、アシル化には活性エステル、またはアルキル化にはアルデヒドなどの1つの反応性基を有するように修飾される必要がある。反応性PEGアルデヒドの一例は、水に安定なPEGプロピオンアルデヒドまたはそのモノC1〜C10アルコキシもしくはアリールオキシ誘導体である(米国特許第5,252,714号)。前記ポリマーは、分枝状であっても非分枝状であってもよい。アシル化反応のためには、選択されたポリマー(単数または複数)は1つの反応性エステル基を有する必要がある。当該還元的アルキル化のためには、選択されたポリマー(単数または複数)は1つの反応性アルデヒド基を有する必要がある。一般に、水溶性ポリマーは、通常、哺乳動物の組替え発現システムによって、より便利になるため、これらは天然のグリコシル残基からは選択されない。前記ポリマーは、任意の分子量のものでよく、また、分枝状であっても非分枝状であってもよい。
【0098】
本明細書に使用される水溶性ポリマーの一例は、PEGである。本明細書に用いられるポリエチレングリコールは、限定はしないが、他のタンパク質を誘導化するために用いられた、例えば、モノ−(C1〜C10)アルコキシ−またはアリールオキシ−PEGなどの任意の形態のPEGを含む。
【0099】
一般に、化学的誘導体化は、生物学的活性物質を活性化ポリマー分子と反応させるために用いられる任意の好適な条件下で実施できる。PEG化ニューブラスチンの調製法は、一般に(a)ニューブラスチンタンパク質またはポリペプチドをこの分子が、1つ以上のPEG基と結合する条件下でPEG(PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体)と反応させるステップと、(b)反応生成物(単数または複数)を得るステップと、を含む。一般に、アシル化反応のための最適反応条件は、公知のパラメータおよび所望の結果に基づいて、ケースバイケースで決定される。例えば、PEG:タンパク質の比率が高いほど、ポリ−PEG化生成物のパーセンテージは高くなる。
【0100】
実質的に均質なモノポリマー/ニューブラスチン集団を生成させる還元的アルキル化は、一般に(a)還元的アルキル化の条件下、ニューブラスチンのアミノ末端におけるα−アミノ基の選択的修飾を可能にする上で好適なpHで、ニューブラスチンタンパク質またはペプチドを、反応性PEGと反応させるステップと、(b)反応生成物(単数または複数)を得るステップと、を含む。
【0101】
実質的に均質なモノポリマー/ニューブラスチン集団のための還元的アルキル化反応の条件は、ニューブラスチンのアミノ末端に対する水溶性ポリマー部分の選択的結合を可能にするものである。このような反応条件は、一般にリジンアミノ基とアミノ末端におけるα−アミノ基のpKaの差を提供する(このpKaは、アミノ基の50%がプロトン化し、50%がプロトン化しないpHである)。また前記pHは、ポリマー対使用されるタンパク質の比率にも影響を及ぼす。一般に、pHが低いほどタンパク質に対してより過剰のポリマーが望まれることになる(すなわち、アミノ末端αアミノ基の反応性が低いほど、最適条件を達成するために、より多くのポリマーが必要となる)。pHが高い場合は、ポリマー:タンパク質の比率はそれほど高くする必要はない(すなわち、より反応性の高い基が利用できるほど必要とされるポリマー分子は少ない)。本発明の目的のためのpHは一般に、3〜9の範囲、好ましくは3〜6の範囲に入る。
【0102】
もう1つの重要な考慮すべきことは、ポリマーの分子量である。一般に、ポリマーの分子量が大きいほど、タンパク質に結合できるポリマー分子は少なくなる。同様に、これらのパラメータを最適化する際には、ポリマーの分枝を考慮する必要がある。一般に、分子量が大きいほど(または分枝が多いほど)、ポリマー:タンパク質の比率は高くなる。一般に、本明細書に含まれるPEG化反応に関して好ましい平均分子量は、約2kDaから約100kDaである。好ましい平均分子量は、約5kDaから約50kDaであり、約10kDaから約20kDaが特に好ましい。好ましい合計分子量は、約10kDaから約40kDaである。
【0103】
幾つかの実施形態において、ニューブラスチンポリペプチドは、ポリペプチド上の末端反応性基を介して前記ポリマーと結合する。あるいは、またはそれに加えて、ニューブラスチンポリペプチドは、内部リジン残基、例えば、天然ニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸配列に導入されたリジン残基の側鎖アミノ基を介して結合され得る。したがって、結合体は、非末端反応性基からも分枝できる。反応性基(単数または複数)を有するポリマーは、本明細書において「活性化ポリマー」と称される。反応性基は、タンパク質上の反応性基、例えば、遊離アミノと選択的に反応する。
【0104】
結合は、活性化ポリマーにおいて、リジン残基またはニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸配列内に導入された残基のアルファアミノ基またはイプシロンアミノ基などの任
意の利用できるニューブラスチンアミノ基において生じ得る。ニューブラスチンの遊離カルボキシル基、好適に活性化されたカルボニル基、ヒドロキシル基、グアニジル基、イミダゾール基、酸化炭化水素部分およびメルカプト基(利用できる場合は)も結合部位として使用できる。
【0105】
一般に、タンパク質1モル当たり約1.0モルから約10モルの活性化ポリマーが、タンパク質濃度に依存して使用される。最終的な量は、反応の程度を最大化しつつ生成物の非特異的修飾を最少化し、同時に最適の活性を維持しつつ、同時に可能ならば、タンパク質の半減期を最適化する化学的性質を規定することとのバランスである。タンパク質の生物学的活性の少なくとも約50%が保持されることが好ましく、ほぼ100%保持されることが最も好ましい。
【0106】
前記ポリマーは、当該分野に公知の方法を用いて、ニューブラスチンポリペプチドに結合できる。例えば、一実施形態において、ポリアルキレングリコール部分が、変異ニューブラスチンポリペプチドのリジン基に結合される。リジン基への結合は、PEGスクシンイミジルスクシネート(SS−PEG)およびスクシンイミジルプロピオネート(SPA−PEG)などのN−ヒドロキシルスクシンイミド(NHS)活性エステルによって実施できる。好適なポリアルキレングリコール部分としては、例えば、カルボキシメチル−NHS、ノルロイシン−NHS、SC−PEG、トレシレート、アルデヒド、エポキシド、カルボニルイミダゾール、およびPNPカルボネートが挙げられる。
【0107】
スクシンイミジル部分を、さらにアミン反応性PEGリンカー類に置換できる。これらとしては、例えば、イソチオシアネート類、ニトロフェニルカーボネート類、エポキシド類、およびベンゾトリアゾールカーボネート類が挙げられる。条件は、選択性および程度または反応を最大化するように選択されることが好ましい。
【0108】
所望の場合、ポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドは、タグ、例えば、後でタンパク質加水分解により遊離できるタグを含有できる。したがって、リジン部分は、先ず、リジンとアミノ末端の両方と反応するトラウト試薬(Pierce)などの低分子量のリンカーによって修飾されたHis−タグを反応させ、次にhisを遊離することによって選択的に修飾できる。次に前記ポリペプチドは、マレイミド基、ビニルスルホン基、ハロアセテート基または遊離もしくは保護SHを含有するPEGにより選択的に修飾できる遊離SH基を含有することになる。
【0109】
トラウト試薬は、PEG結合のための特異的部位を設定する任意のリンカーと置換することができる。例えば、トラウト試薬は、SPDP、SMPT、SATAまたはSATP(全てPiercekara入手できる)によって置換し得る。同様に、前記タンパク質をマレイミド基(例えば、SMCC、AMAS、BMPS、MBS、EMCS、SMPB、SMPH、KMUS、またはGMBS)、ハロアセテート基(SBAP、SIA、SIAB)またはビニルスルホン基を挿入するアミン反応性リンカーと反応させ、生じた生成物を、遊離SHを含有するPEGと反応させ得る。使用されるリンカーのサイズに対する唯一の制限は、それが引き続いてのアミノ末端タグの除去を妨害し得ないということである。
【0110】
したがって、他の実施形態において、ポリアルキレングリコール部分を変異ニューブラスチンポリペプチドのシステイン基と結合させる。結合は、例えば、マレイミド基、ビニルスルホン基、ハロアセテート基およびチオ基を用いて達成できる。
【0111】
好ましい実施形態において、前記組成物中のポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドは、前記ポリマー不在下のニューブラスチンポリペプチドの血清半減期に較べて、より
長い血清半減期を有する。あるいは、またはそれに加えて、前記組成物中のポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドダイマーは、GFRαと結合し、RETを活性化し、ニューロンの病変を正常化し、ニューロンの生存率を高め、または神経障害性疼痛を寛解し、またはこれらの生理学的機能の組合せを行う。ポリペプチドが、ニューロンの生存率を高めているかどうか、またはニューロンの病変を正常化しているかどうかを決定するためのアッセイは、例えば、国際公開第00/01815号に記載されている。前記ニューロンは、感覚ニューロン、自律ニューロンまたはドーパミン作動性ニューロンであることが好ましい。
【0112】
好ましい実施形態において、前記組成物は、PEG部分に結合したニューブラスチンポリペプチドまたは変異ニューブラスチンポリペプチドを含む安定な水溶性結合ニューブラスチンポリペプチド複合体として提供される。所望の場合、ニューブラスチンポリペプチドまたは変異ニューブラスチンポリペプチドは、不安定な結合によって、PEG部分に結合してもよい。前記不安定な結合は、例えば、生化学的加水分解、タンパク質加水分解、またはスルフヒドリル開裂において開裂できる。例えば、前記結合は、インビボ(生理学的)条件下で開裂できる。
【0113】
溶媒、反応時間、温度などの他の反応パラメータおよび生成物の精製手段は、水溶性ポリマーによるタンパク質の誘導体化に関する出版された情報に基づきケーバイケースで決定できる。
【0114】
所望の場合、結合にはニューブラスチンポリペプチド1つ当たり1つのポリマー分子を使用することができる。あるいは、1つ以上のポリマー分子を結合できる。本発明の結合ニューブラスチン組成物は、インビボならびに非インビボ適用の両方に利用できる。さらに、ポリマーの結合には、最終使用適用に適切な他の任意の基、部分または他の結合種が利用できることを認識されるであろう。例えば、幾つかの適用においては、耐UV分解性または抗酸化または他の性質もしくは特徴を前記ポリマーに与える機能的部分を、前記ポリマーに共有結合させることが有用であり得る。さらなる例として、幾つかの適用においては、結合物質全体の種々の性質もしくは特徴を増強させるために、前記ポリマーを相応しい反応性に、または架橋結合性にする目的で前記ポリマーを機能化することが有利であり得る。したがって、前記ポリマーは、結合ニューブラスチン変異タンパク質組成物の意図された目的に関する有効性を妨げない任意の官能基、反復基、結合または他の構成要素構造体を含有し得る。
【0115】
これらの望ましい特性を得るために、有用に用いることのできる実例となるポリマーは、本明細書中、下記の代表的な反応図式に記載されている。共有結合ペプチドの適用において、前記ポリマーは機能化してから前記ペプチド(単数または複数)の遊離アミノ酸(単数または複数)に結合させて不安定結合を形成できる。
【0116】
前記反応は、生物活性物質を、不活性ポリマーと反応させるために用いられる任意の好適な方法により、反応性基がアミノ末端のアルファ基上にある場合は、好ましくはpH約5〜8、例えば、pH5、6、7または8において生じ得る。一般に前記方法は、活性化ポリマーを調製し、その後、前記タンパク質を活性化ポリマーと反応させて、処方物に好適な溶解性タンパク質を生成することを含む。上記の修飾反応は、1つ以上のステップを含み得る幾つかの方法によって実施できる。
【0117】
PEGの直鎖状および分枝状形態ならびに他のアルキル形態が使用できる。PEGの長さは変化し得る。最も一般的な形態は、2K〜100kDaのサイズで変化する。本例では、アミノ末端における標的化PEG化が薬物動態学的性質に影響を及ぼさないことを報告しているが、前記物質が生理学的機能を保持した事実は、本明細書に開示された単数または複数の部位における修飾が有害ではないことを示している。その結果、リジン残基の挿入によってさらなる結合部位を提供し得るニューブラスチンの変異体の生成において、これらの形態がリジンとアミノ末端両方においてPEG化される可能性が大きいと考えられる結果が本発明に含まれる。
【0118】
ニューブラスチンポリペプチド上の1つ以上の部位がポリマーと結合できる。例えば、1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのPEG部分がポリペプチドに結合できる。幾つかの実施形態において、ニューブラスチンポリペプチドのアミノ末端および/または表1および配列番号1に示されたとおり番号付けされたアミノ酸14、39、68および95において、PEG部分が結合する。
【0119】
有利な実施形態において、前記組成物中のポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドは、前記ポリマー不在下のニューブラスチン野生型または変異ポリペプチドの血清半減期に較べて、より長い血清半減期を有する。あるいは、またはそれに加えて、前記組成物中のポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドは、GFRα3と結合し、RETを活性化し、ニューロンの病変を正常化し、ニューロンの生存率を高め、または神経障害性疼痛を寛解し、またはこれらの生理学的機能の組合せを行う。
【0120】
幾つかの実施形態において、複合体中の変異ニューブラスチンポリペプチドまたはポリマー結合体は、ニューロン生存を増強するか、または神経障害性疼痛を寛解する、GFRα3結合、RET活性化、ニューロン病変の正常化からなる群より選択される生理活性を有する。
【0121】
また、本発明により、ポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドを含む多量体ポリペプチドが提供される。多量体ポリペプチドは、精製された多量体ポリペプチドとして提供されることが好ましい。多量体複合体の例としては、例えば、二量体複合体が挙げられる。多量体複合体は、ヘテロマー複合体またはホモマー複合体として提供できる。したがって、多量体複合体は、1つの変異ニューブラスチンポリペプチドと1つの非変異ニューブラスチンを含むヘテロダイマーポリマー結合ポリペプチド複合体であるか、または2つ以上の変異ニューブラスチンポリペプチドを含むヘテロダイマーポリマー結合ポリペプチド複合体であり得る。
【0122】
幾つかの実施形態において、ポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドは、GFRα3と結合する。ポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドの結合は、RETポリペプチドのリン酸化を誘導することが好ましい。ポリペプチドがGFRα3と結合しているかどうかを決定するために、国際公開第00/01815号に記載されているとおりアッセイを実施できる。例えば、Sanicolaら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1997年、94:p.6238)によって記載された三元複合体アッセイの変型を用いてCHO細胞系上澄み液媒体中のニューブラスチンの存在を表すことができる。このアッセイにおいて、GDNF様分子の能力は、RETの細胞外ドメインと種々の補助レセプター、GFRα1、GFRα2およびGFRα3との間の結合を媒介するそれらの能力に関して評価することができる。RETと補助レセプターの溶解性形態は、融合タンパク質として生成される。ラットRETの細胞外ドメインと胎盤のアルカリホスファターゼとの間の融合タンパク質(RET−AP)およびラットGFRα1の細胞外ドメイン(1997年11月27日、公開出願の国際公開第9744356号に開示されている)とヒトIgG1との間の融合タンパク質(rGFR(α1−Ig)が記載されている(Sanicolaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1997年、94:p.6238)。
【0123】
本発明のポリマーは、ポリアルキレングリコール部分であることが好ましく、PEG部分であることがより好ましい。幾つかの実施形態において、ポリマー部分は、約100Daから約25,000Da;約1000Daから約20,000Da;または約5000Daから約20,000Daの平均分子量を有する。幾つかの実施形態において、少なくとも1つのポリマー部分が、約5000Daの平均分子量;約10,000Daの平均分子量;または約20,000Daの平均分子量を有する。
【0124】
ポリアルキレングリコール部分上の官能基は、例えば、カルボキシメチル−NHS、ノルロイシン−NHS、SC−PEG、トレシレート、アルデヒド、エポキシド、カルボニルイミダゾール、またはPNPカルボネートであり得る。結合は、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)活性エステルを介して生じ得る。前記活性エステルは、例えば、PEGスクシンイミジルスクシネート(SS−PEG)、スクシンイミジルブチレート(SPB−PEG)、またはスクシンイミジルプロピオネート(SPA−PEG)であり得る。幾つかの実施形態において、ポリアルキレングリコール部分は、ニューブラスチンポリペプチドまたは変異ニューブラスチンポリペプチドのシステイン基に結合する。例えば、結合は、マレイミド基、ビニルスルホン基、ハロアセテート基およびチオール基を介して生じ得る。種々の実施形態において、ニューブラスチンポリペプチドまたは変異ニューブラスチンポリペプチドは、1つ、2つ、3つ、または4つのPEG部分を含む。
【0125】
幾つかの実施形態において、前記ポリマーは、N末端であるニューブラスチン上の部位におけるポリペプチドに結合する。幾つかの実施形態において、前記ポリマーは、ニューブラスチンポリペプチドまたは変異ニューブラスチンポリペプチドの非末端アミノ酸の部位におけるポリペプチドと結合する。幾つかの実施形態において、前記ポリマーは、ニューブラスチンポリペプチドまたは変異ニューブラスチンポリペプチドの溶媒曝露アミノ酸に結合する。
【0126】
幾つかの実施形態において、前記ポリマーは、ポリマー結合ポリペプチドのアミノ末端アミノ酸、ニューブラスチンポリペプチドまたは変異ニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸配列の14位、ニューブラスチンポリペプチドまたは変異ニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸配列の39位、ニューブラスチンポリペプチドまたは変異ニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸配列の68位、およびニューブラスチンポリペプチドまたは変異ポリペプチドのアミノ酸配列の95位からなる群から選択された残基において、ニューブラスチンポリペプチドまたは変異ニューブラスチンポリペプチドと結合する。
【0127】
(ポリマー結合ニューブラスチン融合タンパク質)
所望の場合、ポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドは、融合タンパク質として提供できる。また、本発明のタンパク質の融合ポリペプチド誘導体は、生物学的活性を保持する主要タンパク質の種々の構造形態を含む。
【0128】
ポリマー結合ニューブラスチン−血清アルブミン融合体が当該分野で公知の方法を用いて構築できる。ニューブラスチンを血清アルブミンに結合するために、対応するアミノ反応性基およびチオール反応性基を含有する多数の架橋剤のうちのいずれかを用いることができる。好適なリンカーの例としては、チオール反応性−マレイミドを挿入するアミン反応性架橋剤が挙げられる。これには、例えば、SMCC、AMAS、BMPS、MBS、EMCS、SMPB、SMPH、KMUS、またはGMBSが挙げられる。他の好適なリンカーは、チオール反応性−ハロアセテート基を挿入する。これらには、例えば、SBAP、SIA、SIABが挙げられ、また、スルフヒドリル基により反応に保護または非保護チオールを提供し、還元性結合を生じさせるものは、SPDP、SMPT、SATA、またはSATPであり、これら全ては商品として入手可能である(例えば、Pierce
Chemicals)。当業者は同様に、ニューブラスチンのアミノ末端に血清アルブミンを結合する代替法を予想することができる。
【0129】
また、当業者は、ニューブラスチンのアミノ末端または血清アルブミンのチオール部分に標的化されていない、血清アルブミンに対する結合体を生成させることができることも予想される。所望の場合、遺伝子工学の方法を用いてニューブラスチンが、そのアミノ末端、カルボキシ末端または両端において、血清アルブミン遺伝子に融合されているニューブラスチン−血清アルブミン融合体を生成させることができる。
【0130】
同様の方法を用いて、例えば、インビボで、または特に動物(ヒトを含む)において、半減期の延長した生成物をもたらす任意のニューブラスチン結合体を生成させることができる。インビボで半減期の延長した生成物を生じるニューブラスチン結合体の他の例は、融合相手がIgであるニューブラスチン融合タンパク質である。
【0131】
ポリマー結合ニューブラスチンの他の誘導体としては、さらなるアミノ末端またはカルボキシ末端として組替え培養における合成などによる、変異ニューブラスチンまたはその断片と他のタンパク質またはポリペプチドとの共有結合体または凝集結合体が挙げられる。例えば、結合ペプチドは、タンパク質のアミノ末端領域におけるシグナル(またはリーダー)ポリペプチド配列であり得、これは、そのタンパク質の合成位置から細胞膜または細胞壁の内側または外側のその機能位置へのタンパク質移動を、翻訳時に、または翻訳後に指示する(例えば、酵母アルファ因子リーダー)。ニューブラスチンレセプタータンパク質は、ニューブラスチンの精製または同定を助けるために加えられたペプチドを含んでなり得る(例えば、ヒスチジン/ニューブラスチン融合体)。また、ニューブラスチンのアミノ酸配列を、ペプチドAsp−Tyr−Lys−Asp−Asp−Asp−Asp−Lys(DYKDDDDK)(配列番号22)と結合させることもできる(Hoppら、Biotechnology 6:p.1204(1988))。後者の配列は、抗原性が高く、特定のモノクローナル抗体と可逆的に結合したエピトープを提供し、発現組替えタンパク質の迅速なアッセイと容易な精製を可能にする。
【0132】
また、この配列は、Asp−Lys対の直ぐ後の残基において、ウシ粘膜エンテロキナーゼにより特異的に開裂される。
【0133】
(生物活性ポリペプチド類)
本発明のポリペプチド類は、プレプロタンパク質、プロタンパク質、成熟タンパク質、グリコシル化タンパク質、非グリコシル化タンパク質、リン酸化タンパク質、非リン酸化タンパク質、切断体または任意の他の翻訳後修飾タンパク質の形態など、任意の生物活性形態において提供できる。生物活性ニューブラスチンポリペプチドとしては、例えば、単独でまたは補助因子(GFRα3またはRETなど)の存在下で二量化した場合、RETに結合し、RETの二量化およびRETの自己リン酸化を誘導するポリペプチドが挙げられる。
【0134】
本発明のポリペプチド類は、特にN−グリコシル化ポリペプチドであり得、このポリペプチドは、配列表に示されたN残基においてグリコシル化されていることが好ましい。
【0135】
幾つかの実施形態において、本発明のポリペプチドは、122位にグリコシル化アスパラギン残基を有する配列番号6で示されたアミノ酸配列;または95位にグリコシル化アスパラギン残基を有する配列番号14で示されたアミノ酸配列、または、例えば、ClustalWコンピュータソフトウェアにより配列させた任意の変異ニューブラスチンポリペプチドにおける類似位置を有する。
【0136】
幾つかの実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号2の95位にアスパラギン残基の代わりにリジン残基を含有する、本明細書においてNBN113−N95Kと称される配列番号23に示されたアミノ酸配列;または本明細書において、NBN106−N95Kと称される配列番号24に示されたアミノ酸配列、または、例えば、ClustalWコンピュータソフトウェアにより配列させた任意の変異ニューブラスチンポリペプチドにおける類似位置を有する。
【0137】
また、本発明は、例えば、米国特許第5,434,131号に記載されたようなIg融合体または血清アルブミン融合体などの変異ニューブラスチン融合タンパク質を含む。
【0138】
幾つかの実施形態において、本発明は、1つの置換を除いて配列番号1に示されたアミノ酸配列または配列番号1に示された配列に、少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約98%、最も好ましくは少なくとも約99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを提供する。
【0139】
他の実施形態において、本発明は、1つの置換を除いて配列番号2に示されたアミノ酸配列または配列番号2に示された配列に、少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約98%、最も好ましくは少なくとも約99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを提供する。
【0140】
幾つかの実施形態において、本発明は、1つの置換を除いて配列番号3に示されたアミノ酸配列または配列番号3に示された配列に、少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約98%、最も好ましくは少なくとも約99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを提供する。
【0141】
幾つかの実施形態において、本発明は、1つの置換を除いて配列番号4に示されたアミノ酸配列または配列番号4に示された配列に、少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約98%、最も好ましくは少なくとも約99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを提供する。
【0142】
幾つかの実施形態において、本発明は、1つの置換を除いて配列番号5に示されたアミノ酸配列または配列番号5に示された配列に、少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約98%、最も好ましくは少なくとも約99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを提供する。
【0143】
幾つかの実施形態において、本発明は、1つの置換を除いて配列番号6に示されたアミノ酸配列または配列番号6に示された配列に、少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約98%、最も好ましくは少なくとも約99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを提供する。
【0144】
幾つかの実施形態において、本発明は、1つの置換を除いて配列番号7に示されたアミノ酸配列または配列番号7に示された配列に、少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約98%、最も好ましくは少なくとも約99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを提供する。
【0145】
幾つかの実施形態において、本発明は、1つの置換を除いて配列番号8〜21に示されたアミノ酸配列または配列番号8〜21に示された配列に、少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約98%、最も好ましくは少なくとも約99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを提供する。
【0146】
幾つかの実施形態において、本発明は、1つの置換を除いて配列番号36に示されたアミノ酸配列または配列番号36に示された配列に、少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約98%、最も好ましくは少なくとも約99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを提供する。
【0147】
さらなる実施形態において、本発明は、1つの置換を除いて配列番号1〜21および36に示されたアミノ酸配列または配列番号1〜21および36に示された配列に、少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約98%、最も好ましくは少なくとも約99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを提供する。
【0148】
他の実施形態において、本発明の変異ポリペプチドは、GDNFサブファミリーのフィンガープリント、すなわち、表3および表4に示された保存システインアミノ酸残基を有する。
【0149】
幾つかの実施形態において、本発明は、配列番号1のポリペプチド、その相補鎖またはそれらのサブ配列をコードするポリヌクレオチド配列により高緊縮条件下、ハイブリダイゼーションできるポリヌクレオチド配列によってコードされる変異ポリペプチドを提供する。幾つかの実施形態において、本発明の変異ポリペプチドは、配列番号1のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列に対し少なくとも70%の同一性を有するポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0150】
幾つかの実施形態において、本発明は、配列番号2のポリペプチド、その相補鎖またはそれらのサブ配列をコードするポリヌクレオチド配列により高緊縮条件下、ハイブリダイゼーションできるポリヌクレオチド配列によってコードされる新規ポリペプチドを提供する。幾つかの実施形態において、本発明の変異ポリペプチドは、配列番号2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列に対し少なくとも70%の同一性を有するポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0151】
幾つかの実施形態において、本発明は、配列番号8〜21のポリペプチド、その相補鎖またはそれらのサブ配列をコードするポリヌクレオチド配列により高緊縮条件下、ハイブリダイゼーションできるポリヌクレオチド配列によってコードされる変異ポリペプチドを提供する。他の実施形態において、本発明の変異ポリペプチドは、配列番号8〜21のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列に対し少なくとも70%の同一性を有するポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0152】
幾つかの実施形態において、本発明は、配列番号36のポリペプチド、その相補鎖またはそれらのサブ配列をコードするポリヌクレオチド配列により高緊縮条件下、ハイブリダイゼーションできるポリヌクレオチド配列によってコードされる新規ポリペプチドを提供する。幾つかの実施形態において、本発明の変異ポリペプチドは、配列番号36のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列に対し少なくとも70%の同一性を有するポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0153】
(生物学的起源)
非結合ニューブラスチンポリペプチドダイマーを単離し、次いで1種以上のポリマーに結合させて、本発明のポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドダイマーを得ることができる。ニューブラスチンポリペプチドダイマーは、哺乳動物細胞から、好ましくはヒト細胞から、またはチャイニーズハムスター卵巣を出所として単離できる。
【0154】
(神経栄養活性)
切断ニューブラスチンポリペプチドを含む本発明の修飾ニューブラスチンポリペプチドは、神経またはニューロン細胞の代謝、増殖、分化または生存の調節に有用である。特に、修飾ニューブラスチンポリペプチドは、その障害または疾患が神経栄養剤の活性に応答性を有する生存動物、例えば、ヒトの障害または疾患を治療または軽減するために使用される。このような治療および方法は、下記でさらに詳細に記載されている。
【0155】
(ニューブラスチン−ポリマー結合体を含む薬学的組成物)
本発明の修飾ニューブラスチンポリペプチドダイマーを含んでなる薬学的組成物もまた提供される。
【0156】
本発明のポリマー−ニューブラスチン結合体は、それ自体で、ならびにそれらの製薬上許容できるエステル、塩および他の生理学的に機能的な誘導体の形態で投与され得る。そのような製薬および医薬処方物においてポリマー結合ニューブラスチンは、1種以上の製薬上許容できるキャリアおよび任意に他の治療用成分と一緒に利用されることが好ましい。
【0157】
前記キャリア(単数または複数)は、前記処方物の他の成分に適合性であり、そのレシピエントに対して、過度に有害ではないという意味で、製薬上許容されるものでなければならない。前記ポリマー結合ニューブラスチンは、本明細書に記載されたような所望の薬理学的効果または医療上有益な効果を達成するための有効量で、また、所望の生物利用可能なインビボ投与量または濃度を達成するために適切な量で提供される。
【0158】
前記処方物には、非経口ならびに経口投与に好適なものが含まれ、具体的な投与様式としては、経口投与、経直腸投与、舌下投与、局所投与、経鼻投与、経眼投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、経皮投与、髄腔内投与、関節内投与、動脈内投与、くも膜下投与、経気管支投与、経リンパ投与、経膣投与および子宮内投与が挙げられる。局所的、全身的の両方でエアゾール投与および非経口投与に好適な処方物が好ましい。
【0159】
前記ポリマー結合ニューブラスチンが、液体溶液を含んでなる処方物において利用される場合、その処方物は、経口、経気管支、または非経口で投与できることが有利である。前記ポリマー結合ニューブラスチンが、液体懸濁液処方物において、または生体適合性キャリアの処方物における散剤として使用される場合、その処方物は、経口、経直腸または経気管支で投与できることが有利である。あるいは、それは、キャリアガス中、散剤の噴霧化によって、経鼻または経気管支投与でき、好適なネブライザー装置を含んでなる呼気サーキットから患者によって吸入される散剤のガス状分散を形成する。
【0160】
本発明のタンパク質を含んでなる処方物は、単位用量形態で簡便に提供でき、製薬業界に周知の任意の方法によって調製できる。このような方法は、一般に有効成分を、1種以上の補助成分を構成するキャリアと組み合わせるステップを含む。
【0161】
代表的に前記処方物は、有効成分(単数または複数)を液体キャリア、微細分割固体キャリアまたは両方と均一に、また均質に組合せ、次いで必要ならば、その生成物を所望の処方物の用量形態へと形状化することによって調製される。
【0162】
経口投与に好適な本発明の処方物は、各々が粉末または顆粒として、有効成分の予め決められた量を含んでなるカプセル剤、カシェ剤、錠剤または舐剤などの個別単位として;またはシロップ剤、エリキシル剤、乳剤またはドラフト剤などの、水性液体または非水性液体中懸濁液として提供できる。
【0163】
非経口投与に好適な処方物は、好ましくは、レシピエントの血液と等張な(例えば、生理食塩水)有効結合体滅菌水性調製液を含んでなることが便利である。このような処方物は、懸濁化剤および増粘剤または前記化合物を、血液成分または1つ以上の器官へ標的化するためにデザインされる他のミクロ微粒子系を含んでもよい。前記処方物は、単位用量形態または多用量形態において提供できる。
【0164】
経鼻スプレー処方物は、防腐剤および等張化剤と共に有効結合体の精製水溶液を含んでなる。このような処方物は、鼻粘膜に適合性のpHおよび等浸透圧状態に調整されることが好ましい。
【0165】
直腸投与用処方物は、カカオバター、水素化脂肪、または水素化脂肪カルボン酸などの好適なキャリアと共に坐剤として提供できる。点眼剤などの眼科処方物は、pHおよび等張性因子が眼のpHおよび等張性因子に調整されることが好ましいこと以外は、鼻用スプレーに対するものと同様な方法によって調製される。
【0166】
局所用処方物は、鉱油、石油、ポリヒドロキシアルコール類または局所用製薬処方物に使用される他の塩基などの1種以上の媒体中に溶解または懸濁させた本発明の結合体を含んでなる。
【0167】
前述の成分に加えて、本発明の処方物は、希釈剤、緩衝剤、芳香剤、崩壊剤、表面活性剤、増粘剤、潤滑剤、防腐剤(抗酸化剤を含む)などから選択された1種以上の補助成分をさらに含んでもよい。前述の考慮事項は、本発明のニューブラスチン融合タンパク質(例えば、ニューブラスチン−ヒト血清アルブミン融合タンパク質)にも適用される。
【0168】
したがって、本発明は、本発明の好ましい例示的適用として、溶液中のポリマー結合ニューブラスチン結合体のインビトロ安定化のために好適な融合タンパク質の供給を含む。融合タンパク質は、例えば、ポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドの酵素的分解に対する耐性を増大させるために使用でき、使用期限の改善、室温安定性などの手段を提供する。前述の考慮事項は、本発明のニューブラスチン−血清アルブミン融合タンパク質(ヒトニューブラスチン−ヒト血清アルブミン融合タンパク質など)にも適用されることが認識される。
【0169】
(処置方法)
本発明の組成物は、哺乳動物、例えば、ヒトを含む霊長類における神経栄養剤の活性に応答性である障害または疾患を治療または軽減するために使用できる。
【0170】
本発明の組成物は、ニューブラスチンポリペプチドに応答性である病理学的過程を治療するために、例えば、注射、注入または摂取された薬学的組成物によって、直接使用できる。前記組成物は、ヒトを含む生存動物の身体の神経栄養剤の活性に応答性である障害または疾患を軽減するために使用できる。前記障害または疾患は、特に外傷、外科手術、虚血、感染、代謝性疾患、栄養欠乏、悪性剤または毒性剤および遺伝的または特発性過程によって生じた神経系の損傷であり得る。
【0171】
前記損傷は、特に感覚ニューロンまたは後根神経節におけるニューロンなどの網膜神経節細胞または以下の組織のいずれかにおいて生じたものであり得る:膝神経節、錐体神経節および下神経節;第8脳神経の前庭聴覚複合体;三叉神経節の上下顎葉の腹外側極;および三叉神経中脳路核。
【0172】
本発明の方法の幾つかの実施形態において、前記疾患または障害は、末梢神経延髄および/または脊髄の外傷性損傷、脳虚血ニューロン損傷、神経障害および特に末梢神経障害、末梢神経外傷または傷害、虚血発作、急性脳傷害、急性脊髄傷害、神経系腫瘍、多発性硬化、神経毒への曝露、糖尿病または腎機能不全などの代謝性疾患および感染物質による損傷、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、パーキンソンプラス症候群、進行性核上不随(スチール−リチャードソン−オルゼウスキー症候群)、オリーブ橋小脳萎縮(OPCA)、シャイ−ドレーガー症候群(多系萎縮)、グアマニアンパーキンソン症候群認知症複合体、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、または任意の他の先天性または神経変性疾患および認知症に関連した記憶障害などの損傷ニューロンおよび外傷ニューロンを含む神経変性疾患である。
【0173】
幾つかの実施形態において、感覚系および/または自律系ニューロンを治療することができる。特に侵害受容性および機械受容性ニューロンを治療でき、より具体的には、A−デルタ線維、C−線維およびA−ベータ線維ニューロンを治療できる。さらに、自律系の交感および副交感ニューロンを治療できる。
【0174】
幾つかの実施形態において、筋萎縮性側索硬化症(「ALS」)および脊髄筋萎縮症を治療できる。他の実施形態において、本発明のニューブラスチン分子は、外傷性傷害後の神経回復を高めるために使用できる。あるいは、またはそれに加えて、ポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドまたは変異ニューブラスチンポリペプチドの融合体または結合体を含有するマトリックスを有する神経誘導チャネルが、本明細書に記載された方法において使用できる。そのような神経誘導チャネルは、例えば、米国特許第5,834,029号に開示されている。
【0175】
幾つかの実施形態において、本明細書に開示された組成物(および同じものを含んでなる薬学的組成物)は、末梢神経障害の治療に使用される。本発明の分子による治療に含まれる末梢神経障害の中でも、外傷誘導神経障害、例えば、物理的傷害または疾患状態、脳に対する物理的損傷、脊髄に対する物理的損傷、脳損傷に関連した脳卒中および神経変性に関連した神経系疾患により生じた神経障害がある。また、本明細書には、感染、毒素曝露および薬物曝露に副次的な神経障害が含まれる。さらに本明細書には、全身性または代謝性疾患に副次的な神経障害が含まれる。例えば、本明細書に開示された組成物は、化学療法誘導神経障害(化学療法剤、例えばタキソールまたはシスプラチンの送達により生じたもの);毒素誘導神経障害、薬物誘導神経障害;ビタミン欠乏神経障害;特発性神経障害;糖尿病性神経障害;およびヘルペス後坐骨神経痛を治療するためにも使用できる。例えば、米国特許第5,496,804号および米国特許第5,916,555号を参照されたい。
【0176】
本発明により治療することのできるさらなる病態は、軸索神経障害および脱髄性神経障害などの単神経障害、単一多発性神経障害および多発性神経障害である。
【0177】
幾つかの実施形態において、本発明の組成物(および同じものを含んでなる薬学的組成物)は、黄班変性、網膜色素変性、緑内障、および同様の疾患の罹患患者の網膜における光レセプター喪失など、眼の種々の障害の治療に使用される。
【0178】
(方法および薬学的組成物)
本発明は、神経障害性疼痛を治療し、触覚異痛症を治療し、神経障害を伴う痛感度の喪失を減少させる方法を提供する。本法では、生物活性完全長ニューブラスチンポリペプチド類または生物活性切断ニューブラスチンポリペプチド類を含む、ポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドダイマー類を使用する。さらに、本発明は、製薬上許容できるキャリア中に懸濁、溶解、または分散されたポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドダイマーを提供する。
【0179】
(1.神経障害性疼痛の治療)
一実施形態において、本発明は、ポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドダイマーの有効量を対象に投与することを含んでなる対象における神経障害性疼痛を処置する方法を含む。幾つかの実施形態において、本発明は、例えば、配列番号1、2、6〜21および36のいずれか1つまたはその変異体を含む、野生型、切断または変異ニューブラスチンポリペプチドを含んでなるポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドダイマーの有効量を、単独で対象に投与することを含んでなるか、またはオピオイド、抗不整脈薬、局所鎮痛薬、局所麻酔薬、抗痙攣薬、抗うつ薬、コルチコステロイドおよび非ステロイド抗炎症薬(NSAIDS)からなる群より選択される鎮痛誘導化合物の有効量もまた対象に投与することにより、対象における神経障害性疼痛を治療する方法を含む。好ましい実施形態において、鎮痛誘導化合物は、抗痙攣薬である。他の好ましい実施形態において、鎮痛誘導化合物は、ガバペンチン((1−アミノメチル)シクロヘキサン酢酸)またはプレガバリン(S−(+)−4−アミノ−3−(2−メチルプロピル)ブタン酸)である。
【0180】
本発明のニューブラスチンポリペプチド類および核酸類(および本明細書に記載されたポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドダイマーを含んでなる薬学的組成物)は、末梢神経障害に伴う疼痛の処置に使用される。本発明により治療できる末梢神経障害の中では、外傷誘導性神経障害、例えば、物理的傷害または疾患状態、脳に対する物理的損傷、脊髄に対する物理的損傷、脳損傷に伴う脳卒中、および神経変性に関連する神経系障害により生ずるものがある。
【0181】
本発明はまた、化学療法誘導神経障害(化学療法剤、例えば、タキソールまたはシスプラチンの送達により生ずるものなど);毒素誘導神経障害、薬物誘導神経障害、病原体誘導神経障害(例えば、ウィルス誘導)、ビタミン欠乏誘導神経障害、特発性神経障害;および糖尿病性神経障害の治療を提供する。各々が参照として本明細書に組み込まれている、例えば、米国特許第5,496,804号および米国特許第5,916,555号を参照されたい。本発明はさらにまた、本発明のニューブラスチンヌクレオチド類およびポリペプチド類を用いて、軸索神経障害および脱髄性神経障害などの単神経障害、単一多発性単神経障害、および多発性神経障害の治療に使用できる。
【0182】
神経障害性疼痛は、(a)外傷誘導性神経障害、(b)化学療法誘導神経障害,(c)毒素誘導神経障害(限定はしないが、アルコール中毒症、ビタミンB6中毒、六炭素中毒、アミオダロン、クロラムフェニコール、ジスルフィラム、イソニアジド、金、リチウム、メトロニダゾール、ミソニダゾール、ニトロフラントインにより誘導された神経障害など)、(d)治療薬誘導神経障害などの薬物誘導神経障害(抗癌剤、特にタキソール、タキソテール、シスプラチン、ノコダゾール、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビンブラスチンにより生ずるものなど;および抗ウィルス剤、特にddI、DDC、d4T、ホスカルネット、ダプソン、メトロニダゾール、およびイソニアジドのからなる群より選択される抗ウィルス剤により生ずるものなど)、(e)ビタミン欠乏誘導神経障害(限定はしないが、ビタミンB12欠乏症、ビタミンB6欠乏症、ビタミンB12欠乏症、およびビタミンE欠乏症など)、(f)特発性神経障害、(g)糖尿病性神経障害、(h)病原体誘導神経損傷、(i)炎症誘導神経損傷、(j)神経変性、(k)遺伝性神経障害(限定はしないが、フリートライヒ運動失調、家族性アミロイド多発性神経障害、タンジアー病、ファブリー病など)、(l)代謝障害(限定はしないが、腎不全および甲状腺機能不全など)、(m)感染性およびウィルス性神経障害(限定はしないが、ハンセン病、ライム病に伴う神経障害性疼痛、ウィルス、特にヘルペスウィルス(例えば、ヘルペス後神経痛に導き得る帯状ヘルペス)、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)、およびパピローマウィルスからなる群より選択されるウィルス感染に伴う神経障害性疼痛など)、(n)自己免疫神経障害(限定はしないが、ギヤン−バレー症候群、慢性炎症性脱髄性神経障害、未決定の重要な単一クローン性免疫グロブリン症および多発性単神経障害)、(o)三叉神経痛およびエントラップメント症候群(限定はしないが、心皮トンネルなど)、および(p)外傷後神経痛、幻肢痛、多発性硬化症痛、複合領域痛症候群(限定はしないが、灼熱痛、カウザルギー)、腫瘍形成関連痛、血管炎症/血管障害の神経障害、および坐骨神経痛などの他の神経障害性疼痛症候群、などの多数の末梢神経障害と関連し得る。神経障害性疼痛は、異痛症、痛覚過敏症、自発痛または幻肢痛として現れる。
【0183】
(2.触覚異痛症の治療)
用語の「触覚異痛症」とは、疼痛が、通常は無害性である皮膚の刺激(例えば、接触)により誘発される対象における状態を代表的に言う。本発明は、対象における触覚異痛症を治療する方法を含む。
【0184】
幾つかの実施形態において、触覚異痛症は、ポリマー結合変異ニューブラスチンポリペプチドダイマー単独の治療有効量を対象に投与することによって治療される。
【0185】
ある関連実施形態において、本発明は、例えば配列番号1、2、6〜21および36の少なくとも1つまたはその変異体を含む、切断野生型または変異ニューブラスチンポリペプチドを含むポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドダイマーの有効量を、対象に投与するか、またはオピオイド、抗不整脈薬、局所鎮痛薬、局所麻酔薬、抗痙攣薬、抗うつ薬、コルチコステロイドおよびNSAIDSからなる群より選択される鎮痛誘導化合物の有効量と共にニューブラスチンポリペプチドダイマーの有効量を対象に投与することにより、対象における触覚異痛症を治療する方法を含む。他の好ましい実施形態において、鎮痛誘導化合物は、ガバペンチン((1−アミノメチル)シクロヘキサン酢酸)またはプレガバリン(S−(+)−4−アミノ−3−(2−メチルプロピル)ブタン酸)である。
【0186】
幾つかの実施形態において、ポリマー結合変異ニューブラスチンポリペプチドダイマーは、限定はしないが、抗癌剤または抗ウィルス剤などの治療剤と組み合わせて投与される。抗癌剤としては、限定はしないが、タキソール、タキソテール、シスプラチン、ノコダゾール、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビンブラスチンが挙げられる。抗ウィルス剤としては、限定はしないが、ddI、DDC、d4T、ホスカルネット、ダプソン、メトロニダゾール、およびイソニアジドが挙げられる。
【0187】
(3.痛感度喪失を減少させる処置)
他の実施形態において、本発明は、神経障害を患っている対象において痛感度の喪失を減少させるため方法を含む。好ましい実施形態において、神経障害は、糖尿病性神経障害である。好ましい実施形態において、痛感度の喪失は、熱的痛感度の喪失である。本発明は、予防的処置および治療的処置の両方を考慮している。
【0188】
予防的処置において、ポリマー結合変異ニューブラスチンポリペプチドダイマーを、痛感度の喪失を発現する危険性のある対象に投与するが;このような対象は、早期の神経障害対象であることが予想されるであろう。このような状況下でのニューブラスチンによる処置は、危険性のある患者を予防的に処置するために役立つであろう。
【0189】
治療的処置において、ポリマー結合変異ニューブラスチンポリペプチドダイマーを、神経障害罹患の結果、痛感度の喪失を経験している対象に投与するが;このような対象は、後期の神経障害対象であることが予想されるであろう。このような状況下でのポリマー結合変異ニューブラスチンポリペプチドダイマーによる処置は、対象において適切な痛感度を救うために役立つであろう。
【0190】
(4.ウィルス感染およびウィルス関連神経障害の処置)
感染性およびウィルス神経障害の予防処置が考慮されている。予防処置は、ウィルス感染の決定後でかつ神経障害性疼痛の発生前に適用される。処置時に、ポリマー結合変異ニューブラスチンポリペプチドダイマーを、限定はしないが、ハンセン病、ライム病に伴う神経障害性疼痛、ウィルス、特にヘルペスウィルス(より具体的には、ヘルペス後神経痛に至り得る帯状ヘルペスウィルス)、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)、およびパピローマウィルスからなる群より選択されるウィルスによる感染に伴う神経障害性疼痛などの神経障害性疼痛の発現を防止するために投与する。代わりの実施形態において、ポリマー結合変異ニューブラスチンポリペプチドダイマーを、発現するはずの重度の神経障害性疼痛を軽減するために投与する。
【0191】
急性ウィルス感染の症状としては、発疹の発現が挙げられる。他の症状としては、例えば、帯状ヘルペス感染の一般的な合併症(帯状疱疹)である、身体の患部における持続性痛の発生が挙げられる。ヘルペス後の神経痛は、1ヵ月以上続き、何らかの発疹様症状の消失数ヵ月後に発現し得る。
【0192】
(5.有痛性の糖尿病性神経障害の処置)
有痛性の糖尿病性神経障害の予防処置が考慮されている。糖尿病性神経障害の予防処置は、糖尿病または糖尿病関連症状の最初の診断決定後で、かつ神経障害性疼痛前に開始することになろう。有痛性の糖尿病性神経障害の予防処置はまた、対象が、糖尿病または糖尿病関連症状を発現する危険性があると決定した際に開始し得る。処置時に、ポリマー結合変異ニューブラスチンポリペプチドダイマーを、神経障害性疼痛の発現を防止するために投与する。代わりの実施形態において、ポリマー結合変異ニューブラスチンポリペプチドダイマーを、既に発現した重度の神経障害性疼痛を軽減するために投与する。
【0193】
(6.神経系障害)
さらなる態様において、本発明は、ポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドの治療有効量を、それを必要とする対象に投与することにより、対象(ヒトを含む)における神経系障害を治療するか、または防止する方法を提供し、組成物は、ニューブラスチンポリペプチドまたはポリマーに結合した変異ニューブラスチンポリペプチド、または安定な水溶性結合ニューブラスチンポリペプチドを含む複合体、またはニューブラスチンポリペプチド、または、例えば、PEGなどのポリアルキレン部分に結合した変異ニューブラスチンポリペプチドを含んでなる変異ニューブラスチンポリペプチド複合体を含有する。
【0194】
神経系障害は、末梢神経障害または神経障害性疼痛症候群などの末梢神経系障害であり得る。治療に関しては、ヒトが好ましい対象である。
【0195】
本発明のポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドダイマーは、限定はしないが損傷ニューロンおよび外傷ニューロンなど、ニューロンにおける欠陥を処置するために有用である。外傷を経験した末梢神経としては、限定はしないが、延髄または脊髄の神経が挙げられる。本発明のポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドダイマーは、神経変性疾患、例えば脳虚血ニューロン損傷;神経障害、例えば末梢神経障害、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療に有用である。このようなニューブラスチンポリペプチドダイマーは、記憶障害、例えば認知症関連の記憶障害の治療に使用できる。
【0196】
病態または疾患のさらなる例は、末梢神経系、延髄、または脊髄の疾患、ならびに外傷誘導神経障害、化学療法誘導神経障害、毒素誘導神経障害、薬物誘導神経障害、ビタミン欠乏誘導神経障害;特発性神経障害;および糖尿病性神経障害、毒素誘導神経損傷に伴う神経障害性疼痛、病原体誘導神経損傷、炎症誘導神経損傷、または神経変性である。本発明のニューブラスチンポリペプチドダイマーは、神経障害性疼痛の処置、触覚異痛症の処置および神経障害に伴う痛感度の喪失を減少させる処置にさらに有用である。
【0197】
(7.投与量)
先の方法では、切断されていても、いなくてもよいポリマー結合変異ニューブラスチンポリペプチドダイマーを含んでなる処方物を対象に、一用量当たり0.01μg/kg対象体重から1000μg/kg対象体重の投与量で、好ましくは全身的に投与することが考慮されている。この投与量は、一用量当たり1μg/kg対象体重から100μg/kg対象体重であることが好ましい。この投与量は、一用量当たり1μg/kg対象体重から30μg/kg対象体重、例えば、一用量当たり3μg/kg対象体重から10μg/kg対象体重であることがより好ましい。本発明の処方物の治療有効量は、過度の実験なしで、当業者により確認可能な投与計画でそれを必要とする対象に投与できる。
【0198】
(8.送達)
先の方法で用いられるポリペプチドダイマーは、任意の好適な送達システム、好ましくは、静脈内送達、筋肉内送達、肺内送達、皮下送達、および腹腔内送達により、最も好ましくは、筋肉内送達、静脈内送達、または皮下送達により投与できる。先の方法で用いられるニューブラスチンポリペプチドは、くも膜下腔内送達により投与することもできる。
【0199】
ポリマー結合ニューブラスチンポリペプチドダイマーの投与は、例えば、全身的または局所的であり得る。処方物には、非経口投与並びに経口投与に好適なものが含まれ、具体的な投与様式としては、経口投与、経直腸投与、舌下投与、局所投与、経鼻投与、経眼投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、経皮投与、髄腔内投与、関節内投与、動脈内投与、くも膜下投与、気管支投与、経リンパ管投与、経膣投与、および子宮内投与が挙げられる。局所的および全身的の両方でエアゾール投与および非経口投与に好適な処方物が含まれる。好ましい処方物は、皮下投与、筋肉内投与、または静脈内投与に好適である。
【0200】
(8.投与計画)
幾つかの実施形態において、本発明のポリペプチドダイマーに関する投与回数は、処方物を1週3回、2週間対象への投与を提供する。治療有効性を最適化するために、ポリマー結合変異ニューブラスチンポリペプチドダイマーを、先ず異なる投与計画で投与する。単位投与量および投与計画は、例えば、免疫化哺乳動物種、その免疫状態、哺乳動物の体重などの因子に依存する。代表的には、組織内のタンパク質レベルが、例えば、所与の処置投与計画の有効性を決定するために、臨床試験法の一部として適切なスクリーニングアッセイを用いてモニターされる。
【0201】
本発明のポリマー結合変異ニューブラスチンポリペプチドダイマーに関する投与回数は、当業者および医師の臨床判定の範囲内にある。代表的には、投与計画は、最適な投与パラメータを確立し得る臨床試験により確立される。しかしながら、開業医は、対象の年齢、健康状態、体重、性別および医療状態によってこのような投与計画を変えてもよい。投与回数はまた、神経障害に関する急性処置および慢性処置の間で変わり得る。さらに、投与回数は、この処置が予防的か、または治療的であるかによって変わり得る。
【0202】
本発明を、以下の非限定的実施例においてさらに説明する。
【実施例】
【0203】
(実施例1:アミノ末端PEG化ニューブラスチンの生物学的利用能)
CHO細胞−と大腸菌誘導組替えニューブラスチン類は、ラットにおいて静脈内に投与された場合、循環から急速に除去されることが認められた。タンパク質は、皮下投与後の血清中に検出の閾値以下であった。ニューブラスチンの生物学的利用能を増加させるために、変異ニューブラスチンのPEG化形態を構築した。
【0204】
リジンは、ニューブラスチン配列に生じないので、アミン特異的PEG化化学により、野生型ニューブラスチンポリペプチドのPEG化がその末端にもたらされる。したがって、各ニューブラスチンダイマーに関して、2つのPEG部分が結合するはずである。したがって、PEG形態は、アミン特異的化学により先ずアミノ末端に対して直接標的化された。驚くべきことに、大腸菌発現野生型ニューブラスチンのPEG化は、2つの20kDa PEGを結合しても、半減期に対して殆ど利益を有さず、ベースクリアランス経路に基づく機構が、PEG化により達成されると予想された半減期の増大を打ち消していることが示された。
【0205】
(実施例2:PEG化変異ニューブラスチン(N95K)の構築)
次に、内部アミノ酸残基においてPEG化された変異ニューブラスチン形態の生物学的利用能を調べた。配列番号1に示されるとおり番号付けされた場合、14位、39位、68位、および95位の天然残基を置き換える一連の4種の変異体は、配列内の選択部位にリジンを挿入するようにデザインされた。これらのリジンは、PEG結合のための代わりの部位を提供とすると思われる。これらの部位は、表面残基を同定するために骨組みとしてGDNF(Nat.Struct.Biol.4:p.435−8、1997年)の結晶構造を用いて選択された。回避すべき構造の機能的に重要な領域を同定するためにペルセフィン/ニューブラスチンキメラ変異誘発性試験(J.Biol.Chem.275:p.3412−20、2000年)が用いられた。
【0206】
大腸菌における野生型ニューブラスチン遺伝子を発現させるために、同質遺伝子を、より低いGC含量と好ましい大腸菌コドンにより構築した。これらの同質遺伝子は、2つのベクター、pET19bおよびpET19bの誘導体であるpMJB164にクローン化された。pET19bにおいて、ニューブラスチン(NBN113)の成熟ドメインをコードする配列を、開始メチオニンに直接融合される。pMJB164において、ニューブラスチンの成熟ドメインを、ヒスチジンタグ(すなわち、10のヒスチジン)に融合し、エンテロキナーゼ開裂部位(配列番号35および36)によりヒスチジンタグから分離する。開始メチオニンは、ヒスチジンタグに先行する。
【0207】
(表5.Hisタグ化野生型ニューブラスチンヌクレオチドおよびポリペプチド配列)
【0208】
【表5】

2種の変異体(R39およびR68)は、表面上の正電荷の分布に基づいて、ヘパリン結合となり得る領域に標的化された。この部位は、タンパク質の急速なクリアランスに寄与している可能性が高い。第3の部位は、野生型ニューブラスチンにおけるN95の天然グリコシル化部位において標的にされた。この部位は複雑な炭水化物構造により自然に修飾される。したがって、この部位においてPEGによる修飾が、機能に影響を与えることは予想されなかった。第4の部位(R14)は、他のいずれの修飾によっても覆われなかった領域において選択された。95位のアスパラギン残基がリジン(「N95K変異体」)で置換された変異体は、本明細書に開示された試験用に選択された。
【0209】
ラットニューブラスチンポリペプチドの野生型配列において1つ以上の変更を含んでなる4種の変異ラットニューブラスチンを構築した。これらの変異ニューブラスチンは、1つのアミノ酸置換:R14K;R68K;R39K;またはN95Kを含んだ。表1Aは、これらの代表的点変異を太字で識別している。「X」の命名において、Xは、野生型ニューブラスチンポリペプチドアミノ酸を表し、Nは、配列番号1に従って番号付けされる配列におけるXアミノ酸の位置数字を表し、Xは、示されたNの位置数字における野生型アミノ酸の代わりに置換されたアミノ酸を表す。
【0210】
ラットN95Kニューブラスチン変異を構築するために、部位特異的変異誘発を、野生型ラットニューブラスチンをコードするプラスミドであるpCMB020上で実施した。この野生型ラットニューブラスチン核酸およびそれによってコードされたポリペプチドのアミノ酸配列は、下記に示している:
(表6.野生型ラットNBN配列)
【0211】
【表6】

オリゴヌクレオチドKD3−210およびKD3−211を用いるpCM020の変異誘発により、プラスミドpCMB027の形成がもたらされた:
【0212】
【表6A】

pCMB027において、95位にアスパラギンをコードするコドンは、リジンをコードするコドンにより置き換えられた。
【0213】
R14K変異ニューブラスチンは、pCMB020の配列をコードするニューブラスチンにおいて、リジンをコードするコドンによる14位におけるアルギニンをコードするコドンの置換によって形成された。pCMB020の部位特異的変異誘発は、オリゴヌクレオチドKD3−254およびKD3−255を用いて実施された:
【0214】
【表6B】

生じた構築体は、pCMB029と命名された。
【0215】
R68K変異ニューブラスチンは、pCMB020の配列をコードするニューブラスチンにおいて、リジンをコードするコドンによる68位におけるアルギニンをコードするコドンの置換によって形成された。部位特異的変異誘発は、オリゴヌクレオチドKD3−258およびKD3−259を用いてpCMB020に実施された:
【0216】
【表6C】

生じた構築体は、pCMB030と命名された。
【0217】
R39K変異ニューブラスチンは、pCMB020の配列をコードするニューブラスチンにおいて、リジンによるアミノ酸39におけるアルギニンの置換によって形成された。pCMB020の部位特異的変異誘発は、オリゴヌクレオチドKD3−256およびKD3−257を用いて実施された:
【0218】
【表6D】

(大腸菌における変異ニューブラスチンの発現および特性決定)
発現および精製に関して、ラットニューブラスチンN95Kポリペプチドをコードするプラスミドは、成熟113アミノ酸ニューブラスチン配列の開始に直接隣接したエンテロキナーゼ開裂部位によりHis−タグ化融合タンパク質として大腸菌に発現された。大腸菌は、500L発酵槽中で増殖され、凍結細胞ペーストが提供された。大腸菌細胞を、APV Gaulin Press中、溶菌し、ラットニューブラスチンN95Kを、不溶性洗浄ペレットフラクションから回収した。
【0219】
N95K変異ニューブラスチンは、塩酸グアニジンにより前記ペレットから抽出され、リフォールディングされ、エンテロキナーゼによりHis−タグを除去された(実施例5を参照)。次に産生物を、Ni NTAアガロース(Qiagen)上およびBakerbond WP CBXカチオン交換樹脂上のクロマトグラフィに供した。
【0220】
Hisタグ化産生物のエンテロキナーゼ処理により、成熟配列においてアルギニン7におけるタンパク質の異常開裂が生じた。生じた1〜7のニューブラスチン産生物(NBN106〜N95K)は、KIRA ELISAにおいて十分に活性であり、グアニン誘導変性に対するその感受性において成熟形態と構造的に識別不能であり、したがって、その後の研究に用いられた。
【0221】
ラット変性ニューブラスチンNBN106−N95Kは、反応物として10,000Daの分子質量を有するメトキシポリ(エチレングリコール)−スクシンイミジルプロピオネート(SPA−PEG)を用いて、ニューブラスチン1分子当たり平均3.3PEG部分でPEG化された。生じたPEG化生成物は、SDS−PAGEによる分析、ゲルろ過クロマトグラフィ(SEC)、逆相HPLC、マトリックスアシストレーザー脱離/イオン化質量分析(MALD/IMS)、ペプチドマッピング、KIRA ELISAにおける活性評価、およびエンドトキシン含量の決定など、広範囲の特性決定に供された。SDS−PAGEおよびSECにより測定されたPEG化前のニューブラスチンN95K産生物の純度は、95%超であった。ダイマーとして非還元条件下で移動したニューブラスチンN95K産生物は、その予想構造と一致した。PEG化後、生じた生成物は、生成物の5%である1分子当たり2つのPEG、生成物の60%である1分子当たり3つのPEG、生成物の30%である1分子当たり4つのPEG、およびより高質量の幾つかの微量体を含んでなる一連の修飾付加体から構成された。PEG化サンプルにおいて、凝集物の証拠はなかった。生成物における未修飾ニューブラスチンの残存濃度は、定量化限界以下であった。材料のうちのエンドトキシン含量は、規定どおりに1EU/mg未満である。KIRA ELISAにおけるPEG化ニューブラスチンの比活性は、10nMである。PEG化生成物を、PBS pH6.5中、1.1mg/mLで処方物化した。野生型ニューブラスチン(NBN113)と効力が同様であるこの物質は、−70℃で保存される凍結液体として供給できる。
【0222】
R14K、R39K、R68K変異ニューブラスチンポリペプチド類は、大腸菌において発現され、精製、PEG化およびNBN106−N95Kニューブラスチンに関する上記の機能評価と同一の方法に供することができる。
【0223】
(PEG化変異ニューブラスチンNBN106−N95Kの調製)
大腸菌で産生され、5mMリン酸ナトリウムpH6.5、100mM NaCl中、4℃で保存された230mLのリフォールディングされたラットN95K変異ニューブラスチン(2.6mg/mL)を、77mLの水、14.4mLの1M HEPES pH7.5、および2.8g(最終10mg/mL)のPEG SPA 10,000Da(Shearwater Polymers社)で希釈した。このサンプルを、暗所での室温で4時間温置してから、5mMイミダゾール(最終)で処理し、ろ過し、4℃で一晩保存した。2つのバッチで生成物を生じさせ、1つは130mLのN95Kバルクを含有し、他は、100mLの前記バルクを含有した。PEG化ニューブラスチンを、Fractogel EMD SO(M)(EM産業)上で反応混合物から精製した。カラムは室温で操作した。緩衝液の全てはパイロジェンなしで調製した。塩化ナトリウムは、87mMの最終濃度で反応混合物に加え、サンプルを45mLFractogelカラム(5cm内径)上に充填した。
【0224】
カラムを、5mMリン酸ナトリウムpH6.5、80mM NaClの1本のカラム容量で洗浄し、次いで50mM NaClを含有する5mMリン酸ナトリウムの1本のカラム容量一定分割量で3回洗浄した。前記樹脂を、2.5cm直径のカラムに移し、PEG化ニューブラスチンを、5mMリン酸ナトリウムpH6.5、400mM NaClを含有する10mLを6段階で、500mM NaClを含有する3段階で、600mM NaClを含有する6段階でカラムから溶出させた。溶出フラクションを、280nmにおける吸光度によりタンパク質含量を分析し、次いでSDS−PAGEによる修飾の程度を分析した。選択されたフラクションを集め、0.2μmフィルタを通してろ過し、水で希釈して1.1mgPEG化ラットニューブラスチン/mLとした。個々のバッチ中のエンドトキシン濃度を評価した後、それらを集め、0.2μm膜を通して再ろ過した。最終物質を一定分割し、−70℃で保存した。
【0225】
(精製PEG化変異ニューブラスチンNBN106−N95KのUVスペクトル)
PEG化NBN N95KのUVスペクトル(240〜340nm)をニートサンプルで取った。このサンプルを三通り分析した。PEG化サンプルは、最大吸光度を275〜277nmに、最小吸光度を247〜249nmにおいて示した。この結果は、バルク中間体に観測されるものと一致する。PEG化生成物のタンパク質濃度は、Σ2800.1%=0.50の吸光係数を用いてスペクトルから推定した。PEG化ニューブラスチンバルクのタンパク質濃度は、1.1mg/mLである。320nmにおける吸光度の欠如により明らかなように証拠から濁りは存在しなかった。
【0226】
(SDS−PAGEによりPEG化変異ニューブラスチンNBN106−N95Kの特性決定)
生成物の3μg、1.5μg、0.75μg、および0.3μgを含有するPEG化ニューブラスチンの一定分割量を、4〜20%勾配ゲル(Owl)SDS−PAGEに供した。ゲルをCoomassie明青色R−250で染色した。分子量マーカー(GIBCO−BRL)を平行に作動させた。
【0227】
非還元条件下でPEG化変異ニューブラスチンNBN106−N95KのSDS−PAGE分析により、1分子当たり2つ、3つ、4つ、および4つ以上のPEGによる修飾に相当する一連のバンドを明らかにした。98kDaの明確な質量を有する主要バンドは、1分子当たり3つのPEGを含有する。2つ、3つ、および4つのPEGを結合した生成物の混合物の存在は、MALDI質量分光分析により証明された。2つ、3つ、および4つのPEGを含有する生成物の比率は、デンシトメトリーにより決定され、それぞれ、全量の7パーセント、62パーセント、および30パーセントであることが決定された。
【0228】
(ゲルろ過クロマトグラフィによるPEG化変異ニューブラスチンNBN106−N95Kの特性決定)
PEG化変異ニューブラスチンNBN106−N95Kを、移動相として5mM MES pH6.5、300mM NaClを用いて分析用Superose 6HR10/30FPLCカラム上でゲルろ過クロマトグラフィに供した。カラムを20mL/時間で操作した。溶出液を280nmにおける吸光度でモニターした。PEG化変異ニューブラスチンは、PEGの流体力学的大容量と一致する約200kDaの明白な分子量を有する単一ピークとして溶出した。凝集物の証拠は見られなかった。約30kDaの明白な分子量で溶出する遊離のニューブラスチンは、調製物中に検出されなかった。
【0229】
(逆相HPLCによるPEG化変異ニューブラスチンNBN106−N95Kの分析)
PEG化変異ニューブラスチンNBN106−N95Kを、Vydac C(5μm、1x250mm)カラム上の逆相HPLCに供した。カラムを、40%から60%B(緩衝液A:0.1%TFA、緩衝液B:75%アセトニトリル/0.085%TFA)の勾配で60mmを用いて展開した。カラム溶出液を、214nmにおける吸光度に関してモニターし、その後の分析のためにフラクションを採取した。PEG化NBN106−N95Kを、Cカラム上の逆相HPLCによりその種々のジ(60.5mm)、トリ(63.3mm)、およびテトラ(67.8mm)PEG化成分に分画した。ピークの相対強度は、成分比率が、それぞれ5.4%、60.5%、および30.1%であることを示唆している。ピークの正体は、MALDI−MSにより証明された。生成物において非PEG化NBN106−N95K(5〜15mmでの溶出液)の証拠はなかった。
【0230】
(質量分析によるPEG化変異ニューブラスチンNBN106−N95Kの分析)
PEG化変異ニューブラスチンNBN106−N95Kは、CZip Tip上で脱塩し、マトリックスとしてシナピン酸を用いて、Voyager−DE(商標)STR(PerSeptive Biosystems)マトリックスアシストレーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析計(MALDI−TOF)上の質量分析により分析した。0.5μLの精製タンパク質を、標的プレート上で0.5μLのマトリックスと混合した。PEG化変異ニューブラスチンNBN106−N95Kの質量分析により、これらの付加物の単一および二重荷電形態を明らかにした。43803Da、54046Da、64438Daの観測質量は、1分子当たり2つ、3つ、および4つのPEGの修飾体と一致している。
【0231】
(ペプチドマッピングによるPEG化変異ニューブラスチンNBN106−N95Kの分析)
PEG化反応の特異性は、ペプチドマッピングにより評価された。PEG化ニューブラスチンを、ジ、トリ、およびテトラPEG化成分に分離し、次にこれらを、還元し、アルキル化し、さらにCカラム上のHPLCにより、これらの1本鎖成分に分離した。これらの成分および対照として還元的アルキル化非PEG化NBN106−N95Kを、Asp−Nプロテイナーゼで消化し、生じた開裂生成物を、0%から60%B(緩衝液A:0.1%TFA、緩衝液B:75%アセトニトリル/0.085%TFA)の勾配で60mmを用いて、Vydac C(5μm、1x250mm)カラム上の逆相HPLCカラムにより分画した。カラム溶出液を、214nmの吸光度においてモニターした。
【0232】
ラットニューブラスチン配列は、5つの内部アスパラギン酸を含有し、したがって、エンドプロテイナーゼAsp−Nで消化すると、単純開裂プロフィルを生ずることが予想された。ラットN95KのAsp−N消化物からのピークは全て、質量分析および/またはEdmanアミノ末端配列決定により同定されており、したがってペプチドマップは、ピークの有無により修飾部位を探るための簡単な手段として使用できる。種々のピークの同定は、下記の表7に要約されている。
【0233】
(表7)
【0234】
【表7】

(M):モノロストピック(monolostopic)質量
:MALDI上のペプチドを含有するメチオニンの酸化による。
【0235】
ニューブラスチンは、ホモダイマーとして天然に存在するので、ラット変異ニューブラスチンNBN106−N95K生成物は、PEG化のために4つの潜在的部位、すなわち鎖の各々からの2つのアミノ末端アミンおよび構築体に工学的に入れられている2つのN95K部位を含有する。ジ−PEG化鎖のペプチドマップにおいて、N95K変異のペプチドを含有するピ−クだけが、PEG修飾により変更された。他のピークは、PEG修飾により影響を受けなかった。したがって、パッピングデータは、PEG部分が、このペプチドに特異的に結合し、スクリーンされた他のペプチドのいずれにも結合しないことを示している。結合の第2の潜在部位であるアミノ末端は、3つだけのアミノ酸長であり、ペプチドマップに検出されないペプチド上にある。さらなるPEG結合は、この部位にあることが推測される。この考えと一致して、小さなパーセンテージのラット変異ニューブラスチンN95Kは、切断されず、成熟Ala−1配列を含有する。このペプチドは、30μmで溶出し、非PEG化消化物のペプチドマップにおいて認識できるが、PEG化変異ニューブラスチンNBN106−N95K消化物のものに存在しない。
【0236】
(実施例3:キナーゼレセプター活性化(KIRA)ELISAにおける内部PEG化変異ニューブラスチンNBN106−N95Kの効力評価)
PEG化変異ラットニューブラスチンの効力は、リン酸化RETの存在に特異的であるELISAにおいてニューブラスチン活性に係るレポーターとしてのc−Retのニューブラスチン依存活性/リン酸化を用いて測定した。RetおよびGFRα3を発現する接着性マウス神経芽細胞腫細胞系であるNB41A3−mRL3細胞を、10%ウシ胎仔血清で補足されたDulbecco修飾イーグル培地(DMEM)中、24ウェルプレート内に1ウェル当たり2x10細胞を入れ、5%CO中の37℃で18時間培養した。
【0237】
細胞をPBSで洗浄し、0.25mLのDMEM中、ニューブラスチンの連続希釈により5%CO中の37℃で10分間処理した。各サンプルを、二通り分析した。細胞を1mLのPBSで洗浄し、プレートを緩やかに振りながら、0.3mLの10mMトリスHCl、pH8.0、0.5%Nonidet P40、0.2%デオキシコール酸ナトリウム、50mM NaF、0.1mM NaVO、1mMフッ化フェニルメチルスルホニルにより4℃で1時間溶菌した。溶菌液を反復ピペット操作によりさらに攪拌し、0.25mLのサンプルを、50mM炭酸緩衝液、pH9.6中、5μg/mLの抗Ret
mAb(AA.GE7.3)により、4℃で18時間被覆させた96ウェルELISAプレートに移し、ブロック緩衝液(20mMトリスHCl pH7.5、150mMNaCl、1%正常マウス血清および3%ウシ血清アルブミンを含有する0.1%ツイーン−20(TBST))により室温で1時間ブロックした。
【0238】
室温で2時間温置後、ウェルをTBSTで6回洗浄した。リン酸化Retは、ブロック緩衝液中、2μg/mLの西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)−結合抗ホスホチロシン4G10抗体と共にウェルを室温で2時間温置し、TBSTで6回洗浄し、比色検出試剤により450nmでのHRP活性を測定することにより検出した。溶菌液または溶菌緩衝液で処理されたウェルからの吸光度値を測定し、バックグラウンド補正シグナルを、活性混合物に存在するニューブラスチンの濃度関数としてプロットした。KIRA ELISA中のPEG化変異ニューブラスチン(3(,4)X10kDa PEG NBN106−N95K)の効力は、野生型NBN113物質のものと区別できなかった(図1および表8)。効力に関して2つの凍結−解凍サイクルの影響はなく、この処理後、サンプルの濁りにおいて有意な増加はなく、前記サンプルは、試験のために安全に解凍できることを示した。別個に、1分子当たり3つおよび4つの10kDaPEGの生成物活性を評価する独立した試験において、3つのPEGとの付加体は、十分に活性であるが、一方、4つのPEG生成物は、効力が減少したことが測定された(図2および表8)。これらのデータは、3(,4)X10kDa PEG NBN106−N95K(図1)および3X10kDa PEG NBN106−N95K(図2)が、非変異(野生型)ニューブラスチン、NBN113と同様の程度に、また同一の用量依存性でRetを活性化することを証明している。しかしながら、4X10kDa PEG NBN106−N95K(図2)は、非変異(野生型)ニューブラスチン、NBN113と同様の程度でRetを活性化するが、4X10kDa PEG NBN106−N95K(図2)は、Retの活性化において非変異(野生型)ニューブラスチン、NBN113よりもほぼ10倍効力が低い。推定EC50は、表8に提供している。
【0239】
(実施例4:ラットおよびマウスにおける内部PEG化変異ラットニューブラスチンNBN106−N95Kの薬物動態試験)
ラットおよびマウスモデルにおける種々のPEG化および非PEG化変異ニューブラスチン生成物の薬物動態特性を調べた(結果の要約に関しては表8を参照)。
【0240】
データは、3.3の10000Da PEGを有するラット変異ニューブラスチンNBN106−N95KのPEG化が、ニューブラスチンの半減期および生物学的利用能に有意な効果をもたらしたことを明らかにした。Sprague Dawleyラットにおける1mg/kgIV投与後、3000ng/mLのPEG化変異ニューブラスチンのピークレベルは、7分後に検出され、700ng/mLのレベルは24時間後、200ng/mLのレベルは48時間後、100ng/mLのレベルは72時間後に検出された。非PEG化変異ニューブラスチンN59Kに関する対照において、1mg/kgIV投与後、1500ng/mLのレベルは、7分後に検出されたが、その後、このレベルは、3時間後、70ng/mLに急速に低下し、7時間後には検出できなかった。PEG化の効果は、皮下投与によるPEG化ニューブラスチンで処置された動物においてさらにより明白である。
【0241】
1mg/kg皮下投与後、PEG化ニューブラスチンの循環レベルは、24時間後に最大200ng/mLに達し、3日間の試験期間中このレベルにとどまった。対照としての非PEG化変異ニューブラスチンの投与後では、どの時点においても検出可能なニューブラスチンは認められなかった。
【0242】
PEG化N95Kサンプルの分析は、各々が異なるPKプロフィルを示す1分子当たり2つ、4つおよび4つのPEGを含んでなる付加体の存在により複雑になる。初期のPK試験においては、種々の候補物および投与経路によるスクリーニングを促進するためにマウスが用いられた。このマウス試験により、候補物の生物学的利用能において劇的な相違が明らかとなった。しかしながら、3.3の10kDa PEG付加体が、ラットで評価された場合、ラットではマウスよりも生物学的利用能が低いことが分かった。生物学的利用能におけるこの相違は、腹腔内投与後に特に明白である。マウスにおけるレベルは、7時間後に1600ng/mLに達し、24時間後には400ng/mLにとどまった。対照的に、ラットのレベルは、4〜48時間において100ng/mLの一定であった。
【0243】
2つの驚くべきかつ予想外の結果は、表8に要約されたPK試験から明らかとなった:1)非グリコシル化ニューブラスチンのアミノ末端アミノ酸のPEG化は、血清曝露を実質的に増加させるには十分ではなかった;また、2)アミノ酸95の修飾(例えば、PEG化またはグリコシル化)と共にニューブラスチンのアミノ末端アミノ酸(単数または複数)のPEG化をすると、血清曝露を実質的に増加させる上で十分であった。例えば、グリコシル化NBN104(CHO)は、皮下投与後には検出可能な曝露を得なかったが;グリコシル化1X20kDa PEG NBN104(CHO)は、皮下投与後に高血清曝露を得た。同様に、2X20kDa PEG NBN113は、皮下投与後に低血清曝露から中等度血清曝露を得たが;グリコシル化2X20kDa PEG NBN104(CHO)は、皮下投与後に高血清曝露を得た。これらの結果は、内部アミノ酸(例えば、95位における)のポリマー結合または内部アミノ酸(例えば、95位における)のグリコシル化のいずれかと共にニューブラスチンのアミノ末端アミノ酸(単数または複数)のポリマー結合することが、全身投与後の血清曝露を実質的に増加させることを示した。
【0244】
野生型ラットニューブラスチンおよび変異ニューブラスチンN95Kの両方をリフォールディングし、STZ糖尿病ラット神経障害モデルにおける効力試験用に95%超に精製した。野生型ニューブラスチンは、直接動物試験を行うために処方物化し、一方、N95Kは、10kDa PEG−SPAとのPEG化のために調製された。リフォールディングおよび精製目標を成就するために、大量かつ高濃度で大腸菌封入体からニューブラスチンの復元を可能にさせるゲルろ過クロマトグラフィ(SEC)を利用するリフォールディング法が開発された。SECに加えて、Ni−NTAおよびCMシリカカラムクロマトグラフィ両方のステップを、最終タンパク質精製を増加させるために使用した。このタンパク質を、SDS−PAGEによる分析、ゲルろ過クロマトグラフィ、ESMS、KIRA
ELISAによる活性評価、およびエンドトキシン含量の決定など、広範囲の特性決定に供した。最終タンパク質精製物のSDS−PAGEおよびSECは、95%超の純度を示した。各生成物のエンドトキシンレベルは、<0.2EU/mgであった。KIRA ELISAにおける両タンパク質の比活性は、ほぼ10nMである。野生型ニューブラスチンは、1.0mg/mlで処方物化し、N95Kは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH6.5中、2.6mg/mlで処方物化した。野生型ニューブラスチンは、15mlチューブに一定分割し、−70℃で凍結保存し、一方、N95Kは、PEG化に供してから、一定分割し、凍結した。
【0245】
(実施例5:野生型ニューブラスチンおよび変異N95Kニューブラスチンのリフォールディングおよび精製)
両ニューブラスチン体は、成熟113アミノ酸配列の開始に直接隣接したエンテロキナーゼ開裂部位によりHis−タグ化融合タンパク質として大腸菌に発現された。野生型(1.8kgペレット)またはN95K(2.5kgペレット)のいずれかを発現する細菌を、APV Gaulin Pressを用いて2リットルのPBS中、溶菌に供した。封入体ペレットへと遠心分離(10,000rpm)した後、各調製物からの上澄み液を捨てた。封入体ペレットを、洗浄用緩衝液(0.02MトリスHCl pH8.5、0.5mM EDTA)で2回洗浄してから、トリトンX−100(2%、v/v)を含有する同じ緩衝液で2回洗浄し、次いで界面活性剤なしの緩衝液でさらに2回洗浄した。両ペレットを、6M塩酸グアニジン、0.1MトリスpH8.5、0.1M DTT、および1mM EDTAを用いて溶解させた。溶解過程を促進させるために、各ペレットを、ポリトロンホモジナイザを用いる均質化に供し、次いで室温で一晩攪拌した。溶解したタンパク質を、遠心分離により透明にしてから、1分につき20mlでSuperdex200(2Mグアニジン−HClと共に0.05Mグリシン/HPO pH3.0で平衡化された5.5リットルカラム)を通すクロマトグラフィで変性させた。
【0246】
変性ニューブラスチンは、SDS−PAGEにより確認された。野生型ニューブラスチンおよびN95Kのいずれかを含有するフラクションを集め、Amicon2.5リットル攪拌セル濃縮器を用いて凡そ250mLに濃縮した。沈殿物を除くためにろ過後、濃縮タンパク質を、0.1Mトリス−HCl pH7.8、0.5Mグアニジン−HCl、8.8mM還元グルタチオンおよび0.22mM酸化グルタチオンで平衡化されたSuperdex200を通す復元サイジングクロマトグラフィに供した。前記カラムを、1分につき20mlで0.5Mグアニジン−HClを用いて展開した。復元野生型ニューブラスチンまたはN95Kニューブラスチンを含有するフラクションをSDS−PAGEにより確認し、集めて、Hisタグ除去が必要になるまで4℃に保存した。
【0247】
(希釈により野生型ニューブラスチンおよび変異N95Kニューブラスチンをリフォールディングする別の方法)
希釈によりニューブラスチンをリフォールディングするために、溶解タンパク質を、0.1mg/mlの最終濃度でリフォールディング用緩衝液(0.5Mグアニジン−HCl、0.35M L−アルギニン、50nMリン酸カリウム(pH7.8)、0.2mM還元グルタチオンおよび1mM酸化グルタチオン、および0.1%ツイーン−80)で迅速に希釈し、攪拌せずに室温で48時間温置した。次にリフォールディングされたニューブラスチンを25倍に濃縮し、40mMイミダゾールに加え、Ni−NTAアガロースを含有するクロマトグラフィカラムに適用して、生成物をさらに濃縮し、宿主細胞タンパク質を除去した。カラムを洗浄用緩衝液(40mMイミダゾール、0.5Mグアニジン−HCl)のカラム容量で10回洗浄した。次いでニューブラスチンを、0.2Mイミダゾールおよび0.5Mグアニジン−HClを有する樹脂から溶出させた。
【0248】
(Ni−NTAクロマトグラフィによるカラム−リフォールディングされたニューブラスチンの濃縮)
カラム復元ニューブラスチンを4℃で少なくとも24時間保存してから、ニューブラスチンモノマー間でジスルフィド形成を促進するために精製を続行した。この時期に形成された沈殿を、0.2μポリエーテルスルホン(PES)フィルタ単位を通すろ過により除去した。非特異的結合を減少させるために、タンパク質溶液を20mMイミダゾールに加えてから、カラム緩衝液(0.5Mグアニジンおよび20mMイミダゾール)で平衡化された100mlNi−NTA(Qiagen)カラム上に1分当たり50mlで充填した。タンパク質適用後、カラムを、同じ緩衝液を用いてベースラインまで洗浄した。ニューブラスチンを、0.5Mグアニジン−HClおよび0.4Mイミダゾールを含有する凡そ300mLの溶出緩衝液を用いて樹脂から溶出した。溶出後、ニューブラスチンを、10倍容量の5mM HClに対して室温で(10kDa透析チューブを用いて)一晩透析した。透析により、汚染物質の加水分解が促進され、グアニジン−HClおよびイミダゾール濃度は、それぞれ0.05Mおよび0.04Mに減少する。
【0249】
(リシルエンドペプチダーゼまたはエンテロキナーゼによるHisタグの開裂)
翌日、透析時に形成されたいずれの沈殿物もろ過により除去した。次の精製ステップを、カラムおよび希釈リフォールディングされたニューブラスチン生成物の両方に適用する。タンパク質サンプルは、凡そ150mMの残留グアニジン−HClを含む最終塩濃度のため、5MストックからNaClの添加により0.1M NaClに作製された。この濃度は、導電率計を用いて確認された。さらに、1M HEPES pH7.8を、25mMの最終濃度のために加えた。Hisタグを開裂させるために、リシルエンドペプチダーゼを、野生型ニューブラスチンに、エンテロキナーゼを、N95K変異ニューブラスチンに、両方ともニューブラスチンに対するプロテアーゼが凡そ1:300の比率で加えた。Lys95における変異タンパク質のさらなるプロテアーゼ開裂部位のため、N95K変異ニューブラスチンには、リシルエンドペプチダーゼの代わりにエンテロキナーゼが用いられた。サンプルを、室温で2時間攪拌し、消化はSDS−PAGEによりモニターされた。
【0250】
(Ni−NTAクロマトグラフィによるHisタグの除去)
プロテアーゼ処理ニューブラスチンを、0.5Mグアニジンおよび20mMイミダゾールで平衡化された100mlNi−NTAカラム上に1分当たり50mlで適用した。カラムを、同じ緩衝液を用いてベースラインまで洗浄した。カラム洗浄のタンパク質を、Hisタグなしのニューブラスチンを含有する流液タンパク質により集めた。
【0251】
(CMシリカクロマトグラフィ)
Ni−NTAクロマトグラフィ後、タンパク質を直ちにCMシリカ樹脂を通すさらなる精製に供した。充填用緩衝液(5mMリン酸pH6.5、150mM NaCl)で平衡化された20mL CMシリカカラムを、1分当たり20mLでニューブラスチンを充填した。カラムを、洗浄用緩衝液(5mMリン酸塩pH6.5、400mMNaCl)の20倍カラム容量で洗浄し、タンパク質ステップを、5mMリン酸塩pH6.5であるが1M NaClを含有する溶出緩衝液で溶出した。溶出タンパク質をリン酸塩単独に対して透析し、N95Kに関しては100mMまで、野生型ニューブラスチンに関しては150mMまで塩濃度を下げた。両サンプルを、0.2μPESフィルタ単位を通してろ過し、SDS−PAGEにより分析し、さらなる特性決定および/またはPEG化が必要になるまで4℃で保存した。
【0252】
野生型およびN95K変異ニューブラスチンタンパク質調製物を、280での吸光度を評価するためにUVスペクトル分析に供した。ミクロ石英セルを用いて、また緩衝液単独に対するブランキングにより、100μlの野生型またはN95K変異ニューブラスチンを、Beckman分光光度計を用いて230nmから330nmで連続的に走査した。この分析に基づいて、野生型ニューブラスチンは、1.1mg/mlの濃度であり、N95K変異ニューブラスチンは,2.6mg/mlの濃度(各タンパク質に関してA280nm−E0.1%=0.5が用いられた)であることが決定された。1%未満の沈殿物質は、330nmでの吸光度に基づいて確認された。
【0253】
両タンパク質調製物の純度を評価するために、各サンプル(0.5mg)を、16/30 Superdex 75カラムを通すゲルろ過クロマトグラフィに供した。カラムを、400mM NaClを含有する5mMリン酸塩pH6.5で平衡化し、1分当たり1.5mLの流速で展開した。280nmでの吸光度に基づいて、野生型およびN95K変異ニューブラスチン調製物の両方は、予想分子量(23〜24kDa)での単一ピークとして移動し、有意なタンパク質混入物を含有しなかった。
【0254】
野生型およびN95K変異ニューブラスチンタンパク質の両方を、2.5Mグアニジン−HCl、60mMトリスpH8.0および16mM DTT中で還元した。短Cカラム上で脱塩し、三重四極機器を用いるESMSによりオンライン分析した。ESMS生データは、MaxEntプログラムにより逆応答させ、質量スペクトルを生成した。この手法は、複数荷電シグナルが、キロドルトン(kDa)での分子量に直接対応する1本のピークに崩壊することを可能にする。野生型に関する逆応答質量スペクトルは、主要種が、タンパク質の113アミノ酸体に対する予測分子量の12046.7Daに一致する12046Daであることを示した。少量成分もまた認められ、(12063Da)酸化生成物の存在を示唆した。3本のピークが、N95K変異ニューブラスチンタンパク質サンプルにおいて同定された。主要成分は、タンパク質の106アミノ酸体に対する予測質量に一致して11345Daの明白な分子質量を立証した。他の2本のピークは、11362Daおよび12061Daの質量を有し、それぞれN95K酸化体および113アミノ酸体の存在を示唆した。
【0255】
N95K変異ニューブラスチンタンパク質調製物における106および113アミノ酸体の存在は、エンテロキナーゼによる消化に帰することができる。Biozymeからのこのプロテアーゼは、ウシ腸管粘膜から精製された天然の酵素調製物であり、僅かなトリプシン混入物(1μgエンテロキナーゼ当たり0.25ng)を含有していることが報告されている。したがって、Arg7のカルボキシ末端側のN95K変異ニューブラスチンタンパク質に作用し、主として106アミノ酸体を生成し得る。一方、野生型ニューブラスチンを開裂するために用いられるリシルエンドペプチダーゼは、Hisタグ内に含まれるリジン残基のカルボキシ末端側に作用する単一のプロテアーゼ活性であって、成熟113アミノ酸ニューブラスチン体を生成する。ニューブラスチンの106および113アミノ酸体の両方は、試験された全てのアッセイにおいて活性が等しく、グアニジン−HCl安定性試験において同様に挙動する。
【0256】
ニューブラスチン活性は、実施例3に記載されたKIRA ELISAを用い、NB41A3−mRL3細胞においてc−Retリン酸化を刺激する能力により決定された。リン酸化Retは、捕捉レセプターをHRP−結合ホスホチロシン抗体(4G10;1ウェル当たり0.2μg)と共に温置する(2時間)ことにより検出された。温置後、ウェルをTBSTで6回洗浄し、HRP活性を比色アッセイにより450nmで検出した。溶菌液または溶菌緩衝液単独で処理されたウェルの吸光度値を測定し、バックグラウンドを補正し、データを、活性混合物に存在するニューブラスチンの濃度関数としてプロットした。このデータにより、精製ニューブラスチンポリペプチド類は、リン酸化RETの発現をもたらすことが立証され、精製ニューブラスチンはこのアッセイで活性であることが示された。
【0257】
(実施例6:血清アルブミン−ニューブラスチン結合体の調製)
PBS中1mg/mlの濃度での野生型ラットニューブラスチンを、1mMスルホ−SMCC(Pierce)で処理し、過剰の交差リンカーを除去するために脱塩した。野生型ニューブラスチンタンパク質は、そのアミン末端に単一アミンのみを含有し、遊離スルフヒドリル基が無いことから、SMCCとの反応は、ニューブラスチンとそのアミノ末端に結合されたSMCCとの部位特異的修飾を生じることが予想された。
【0258】
次に、60μgのニューブラスチン−SMCC結合体を、120μgのウシ血清アルブミンと温置し、SDS−PAGEによる架橋の程度を分析した。BSAは、単一遊離SH基を含有し、その結果、ニューブラスチン−SMCC結合体との反応は、SMCC上のマレイミドを介してこの部位での修飾を生じることが予想される。これらの条件下で、高分子量のさらに2本のバンドが観測され、各ニューブラスチン分子が、反応を受けることができる2つのアミノ末端を含有することから、2本のバンドは、単一BSA部分および2つのBSA分子とによるニューブラスチンの修飾による質量と一致し、その結果、この考えに一致する。これらのバンドの形成と同時に、ニューブラスチン−SMCCバンドとBSAバンドの強度が減少した。残存するニューブラスチンバンドの強度に基づいて、この反応は、70〜80%完了していると思われた。
【0259】
モノ置換生成物を、上記に検討されたPEG化試験に本質的に記載されたカチオン交換クロマトグラフィおよびSuperdex200カラム(Pharmacia)上のゲルろ過クロマトグラフィに物質を供することにより、反応混合物から精製した。ゲルろ過操作からのカラムフラクションを、SDS−PAGEにより分析し、モノ置換生成物を含有するものは、280nmでの吸光度によりタンパク質含量を分析した。BSAの質量が、ニューブラスチンの凡そ2倍であることから、明白な濃度を、3の因子で割ってニューブラスチン等価物を得た。このフラクションを、KIRA ELISAにおける機能解析に供した。wt結合ニューブラスチンおよびBSA結合ニューブラスチン両方に関するIC50値は、3〜6nMであり、BSAに対する結合により、機能を損なわれなかったことを示した。
【0260】
これらの予備的試験は、BSAにより生じたが、ラットおよびヒトからの対応する血清アルブミンタンパク質もまた遊離のSHを含有する。その結果、同様のアプローチを、ラットにおけるPKおよび効力試験を実施するためには、ラット血清アルブミン−ラットニューブラスチン結合体、ならびに臨床試験を実施するためには、ヒト血清アルブミン−ヒトニューブラスチンを生成するために適用できる。同様にSMCCは、一端にアミノ反応性基および他端にチオール反応性基を含有する任意の数の交差リンカーと置換できる。チオール反応性マレイミドを挿入するアミン反応性交差リンカーの例は、AMAS、BMPS、MBS、EMCS、SMPB、SMPH、KMUS、またはGMBSであり、チオール反応性ハロアセテート基を挿入するアミン反応性交差リンカーの例は、SBAP、SIA、SIABであり、還元性結合を生成するためのスルフヒドリル基との反応のため保護または非保護チオールを提供するアミン反応性交差リンカーの例は、SPDP、SMPT、SATA、またはSATPであり、これら全ては、Pierceから入手できる。このような交差リンカーは、単に代表的なものであり、ニューブラスチンのアミノ末端を血清アルブミンと結合させるための多くの代替法が予想される。当業技術者はまた、ニューブラスチンのアミノ末端に、または血清アルブミン上のチオール部分に標的化されない血清アルブミンに対する結合体を生成させ得るであろう。ニューブラスチンが、アミノ末端、カルボキシ末端、または両端に血清アルブミン遺伝子に融合された、遺伝子工学を用いて創製されたニューブラスチン−血清アルブミン融合体もまた機能性であると予想される。
【0261】
この方法は、動物およびその結果、ヒトにおける半減期が延長された生成物をもたらすと思われる任意のニューブラスチン−血清アルブミン結合体に、ルーチン適合により拡張できる。
【0262】
(実施例7:ヒトニューブラスチンの結晶化および構造決定)
セレノメチオニン標識ニューブラスチンを、メチオニン生合成を阻害する標準法を用いて発現した(Van Duyneら、1991年、Science 252、p.839−842)。野生型ニューブラスチンおよびセレノメチオニン取り込みニューブラスチンの両方を、0.8Mアルギニン中、17mg/mlに濃縮した。結晶は、1.25M硫酸マグネシウム、0.1M MES pH6.5から20℃で懸滴蒸気拡散法(Jancarik、J.&Kim,S.H.、1991年、J.Appl.Crystallogr.24、p.409−411)により増殖させた。結晶は、最終濃度1.25M硫酸マグネシウム、0.1M MES pH6.5、および30%(v/v)エチレングリコールまで、60秒毎に5%エチレングリコールの添加により凍結保護してから、液体窒素に素早く移すことにより凍結させた。
【0263】
各側に凡そ100ミクロンの結晶を、National Synchrotron Light Source(ニューヨーク州アップトン所在)のビームラインX4Aにおける1.6Aに回折した。HKLプログラムパッケージによるデータ処理(Otwinowski(1993)のProceeding of the CCP4 Study Weekend:Data Collection and Processing(Sawerら編集)p.56−62、Daresbury Laboratory、Warrington)により、結晶が、1非対称単位当たり1共有結合ダイマーを有するC2スペースグループに属し、セル寸法は、凡そa=115Å、b=33Å、c=55Åであり、α=γ=90°、β=99°である。
【0264】
結晶構造は、多重同型置換法により解決した。天然ニューブラスチンの結晶を、1mM
PtClに4時間、10mM IrClに72時間、および10mM IrClに18時間浸漬し、データを採取し、HKLの一組(Otwinowskiら、上記)により処理した。2つのセレノメチオニン部位が、同型および異常相違パターソンの検定により位置決めされた。残りの部位は、SOLVE(4)を用いて位置決めされた。相は、RESOLVE(Terwilligerら、1999年、Acta Crystallogr.D.55、p.849−861)により、0.56の最小感度に改善し、生じたマップは、ニューブラスチンモデルを追跡する上で十分に良質であった。O2Dによるモデル構築の交互サイクル(5G J Kleywegt & T A Jones、「O2D−the manual」、ソフトウェアマニュアル、Uppsala、1994年)およびmlhl標的を用いるCNXによる改良およびセレノメチオニンデータに対する改良により、第1のアミノ末端13のアミノ酸ならびに89の水分子および6つの硫酸アニオンを除いては、ニューブラスチンタンパク質の完全モデルをもたらした。最終のRフリーは、28.5%であり、R−因子は、良好な立体化学を有して24.7%から2.0Åである。
【0265】
(実施例8:硫酸ヘパリンの硫酸結合部位およびモデル構築)
ニューブラスチン表面の前ヘリックス領域にほぼ正三角形の頂点に3つの硫酸クラスターが配置され、硫酸ヘパリンに対する結合部位となり得る。これらの硫酸との重要な相互作用を有すると思われる3つのアルギニン残基がある。アルギニン残基R48は、3つの硫酸全て(#2、#6、および#3)と一緒に結合している。主鎖アミドは、#2硫酸と相互作用するが、一方、その側鎖のグアニジウム基は、#6硫酸および#3硫酸と二又水素結合を形成している。第2のアルギニン残基(R49)は、#2硫酸と水素結合を形成し、第3のアルギニン残基(R51)は、#6硫酸に長い水素結合を形成している。
【0266】
これらの硫酸は、硫酸ヘパリンに対する結合ポケットとなることができ、非正電荷残基に変異した場合、硫酸ヘパリン結合を減じ得ると考えられ、また、インビボ投与の際にニューブラスチン分子のクリアランスを減少させるか、および/または遅延させる可能性がある。ニューブラスチンに結合した硫酸ヘパリンのモデルは、グリコサミノグリカンの硫酸をニューブラスチン結晶構造の既存の硫酸と重ね合わせることにより構築できる。硫酸ヘパリンに複合化されたFGF−1の結晶構造から硫酸ヘパリンにおけるnおよびn+2糖類結合硫酸は、凡そ8.5Å分離している(Pellegriniら、(2000)Nature 407、p.1029−1034)。この測定値は、ニューブラスチン構造における3−硫酸クラスターの硫酸間の距離と密接に一致する:#3硫酸および#6硫酸は、8.8Å分離しており、#3硫酸および#2硫酸は、8.1Å分離している。この距離測定値の一致は、このR48/R49/R51モチーフが、ヘパリン結合部位の一部であることを示すことができた。このことにより、グルタメートまたはアスパルテート、または任意の他の非正電荷アミノ酸に対するR48、R49またはR51の単一部位変異が、ニューブラスチンのレセプター結合活性を減じることなく硫酸ヘパリン結合親和性を減じ得、それによって動物、その結果、ヒトにおける半減期の延長した生物活性生成物をもたらすことを示唆している。この可能性を試験するために、我々は、グルタミン酸に変異した1つ以上のアルギニンを含有する一連の構築体を生成している。変異ニューブラスチン生成物は、大腸菌に発現され、精製およびリフォールディングされ、機能性に関して試験される。最後に前記生成物を、ヘパリンを結合する能力および動物における薬物動態および薬力学に関して試験する。
【0267】
1つ以上のこれらの部位はまた、RをKまたはCに置き換えて、上記の方法を適用することによって達成できるPEG化に関する他の部位を提供し得ると考えられる。
【0268】
(実施例9:神経障害性疼痛の神経結紮動物モデルにおける触覚および熱痛覚過敏症の反転に対するPeg化変異ニューブラスチンNBN106−N95Kの用量決定)
1週につき3回皮下投与された1mg/kg野生型ニューブラスチンは、ラットにおける脊髄神経結紮により誘導された神経障害性疼痛挙動(触覚異痛症および熱痛覚過敏症)のほぼ完全な反転および正常化をもたらしたが、一方、1週につき3回皮下投与された0.03mg/kg野生型ニューブラスチンは、この動物モデルにおいて効果がなく、1週につき3回皮下投与された0.1mg/kgおよび0.6mg/kg野生型ニューブラスチンは、中間の効果があることを我々は先に示した。
【0269】
ここに我々は、Chung L5/L6脊髄神経結紮(「SNL」)モデルにおける触覚異痛症および熱痛覚過敏症に対するpeg化N95Kニューブラスチンの反転効果を扱う試験を記載する。Sprague−Dawleyオスラット(230〜280g)を2群に分けた。ラット全ては脊髄神経結紮を受けた。ラットの1群(n=6)に、皮下注射により媒体を投与した。ラットの第2群(1群当たりn=6)に、10μg/kgで皮下注射によりpeg化N95Kニューブラスチン(3,(4)X10kDa PEG NBN106−N95K)を投与した。3,(4)X10kDa PEG NBN106−N95Kは、大腸菌由来であり、95位にAsnからLysへのアミノ酸置換を含有するニューブラスチンタンパク質を含んでなり、次に切断(7つのアミノ酸のアミノ末端切断;NBN106)し、最後に反応物として10,000Daの分子質量を有するメトキシルポリ(エチレングリコール)−スクシンイミジルプロピオネート(SPA−PEG)を用いて、peg化した。媒体は、pH6.5の5mMリン酸および150mM塩化ナトリウムから構成された。皮下注射は、術後(SNL後)3日目、5日目、7日目、10日目、12日目および14日目に投与した。Von Frey(Chaplanら、(1994)、J.Neurosci.Mrth.53:p.55−63)およびHargreave(Hargreavesら、(1988)、Pain.32:p.77−88)の挙動試験が、それぞれ触覚および熱応答性をモニターするために用いられた。これらの疼痛応答性は、ベースライン応答性を確立するために脊髄神経結紮前にモニターし、触覚および熱痛覚過敏症の存在を確認するためにSNL後2日目に、次いでSNL後3日目、5日目、7日目、10日目、12日目および14日目にモニターした。媒体処置に比して薬物処置の統計的有意性を評価するために、一方向分散解析(一方向ANOVA)を実施して、ポスト−hoc Student Neuman Keuls(SNK)検定を行った。
【0270】
この結果は、平均±平均標準誤差として図3〜4に示している。両タイプの神経障害性疼痛挙動(図3に示された触覚異痛症、および図4に示された熱痛覚過敏症)は、予想どおりSNL後2日目に完全に発現した。10μg/kgの3,(4)X10kDa PEG N95K−NBN106の皮下投与(図3および図4の下向き矢印により示される)により、脊髄神経結紮ラットにおける両タイプの神経障害性疼痛(図3に触覚および図4に熱)の実質的および統計的に有意な反転に至った。脊髄神経結紮ラットにおいて、熱過敏性および触覚異痛症に対する10μg/kgの3,(4)X10kDa PEG NBN106−N95Kの効果は、peg化N95Kニューブラスチンの投与開始後4日目に初めて統計的に有意となった。熱過敏性および触覚異痛症に対する10μg/kgの3,(4)X10kDa PEG NBN106−N95Kの効果は、peg化N95Kニューブラスチンの投与開始後4日目にほぼプラトーに達した。3,(4)X10kDa PEG NBN106−N95Kの効果は、投与間の2日から3日の休止期間で減少しなかった。実際、5日目および7日目におけるpeg化N95Kニューブラスチンの投与の間に疼痛挙動の実質的な正常化があった。他の実験(データは示さず)において、3日目、5日目、7日目、10日目、12日目および14日目に3μg/kgの3,(4)X10kDa PEG NBN106−N95Kの皮下投与により、効果の発現はいくらか遅かったが、SNLモデルにおける疼痛挙動(触覚および熱痛覚過敏症)の有意な正常化に至った。
【0271】
これらの結果は、3,(4)X10kDa PEG NBN106−N95Kが、SNLモデルにおける触覚異痛症および熱痛覚過敏症疼痛挙動に対して非変異非グリコシル化ニューブラスチンよりも少なくとも100倍から333倍の効力増加を有していることを証明した。非変異非グリコシル化ニューブラスチンと比較して3,(4)X10kDa PEG N95K NBN106の薬物動態特性の増強により、全身投与のニューブラスチンの効力が、ニューブラスチンの血清レベルに相関していることが示された。これらの結果により、変異ニューブラスチンのポリマー結合体は、非結合ニューブラスチンと比較して生物学的利用の増強のため、用量を大幅に減少させ、また可能性として投与回数を減少させて患者の神経障害性疼痛を治療するために使用できることが立証された。
【0272】
(表8.PEG化NBNの生物学的特性決定)
【0273】
【表8】

注:ndは、検出できないことを示し、+は、低暴露から中等度曝露を示し、++は、高曝露を示す
注:他に指定されない限り、全てNBN113である
注:CHOが示されない限り、全て大腸菌由来である
【0274】
【表8A】

(他の実施形態)
具体的な実施形態を、本明細書において詳細に開示したが、これは、説明目的の例としてのみ行われており、以下にある添付の請求項の範囲に関して限定する意図はない。特に、種々の置換、変更、および修飾は、請求項により定義されている本発明の精神と範囲から逸脱することなく本発明になされ得ることが、発明者により考慮されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【公開番号】特開2011−78434(P2011−78434A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−7339(P2011−7339)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【分割の表示】特願2006−503213(P2006−503213)の分割
【原出願日】平成16年2月2日(2004.2.2)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】