説明

変調器、それを用いた高周波送受信器およびレーダ装置ならびにレーダ装置搭載車両およびレーダ装置搭載小型船舶

【課題】 オン/オフ比特性を改善することができる反射型の変調器を提供すること。
【解決手段】 第1〜第3の誘電体線路1〜3が磁性体4にそれぞれ第1〜第3の接続部4a〜4cで接続されたサーキュレータに、第2の接続部4bに一端が接続された第2の誘電体線路2の他端にPINダイオード5が接続されてなる変調器において、第2の誘電体線路2に沿った、第2の接続部4bからPINダイオード5までの距離を、第2の誘電体線路2を通ってPINダイオード5で反射して第3の誘電体線路3に漏洩した高周波信号をWaとし、第1の誘電体線路1からサーキュレータを介して第3の誘電体線路3に漏洩した高周波信号をWbとし、それらの中心周波数における位相差をδとしたときに、δ=(2N+1)・πとなるように設定した変調器である。WaとWbとが丁度逆位相で合波されて効果的に打ち消し合うのでオン/オフ比特性が良好となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミリ波集積回路やミリ波レーダモジュール等に用いられる高周波信号用の変調器に関するものであり、詳細には、サーキュレータの入出力用の伝送線路の1つに半導体素子が接続されている反射型の変調器において、オン/オフ比特性を改善することができる変調器およびそれを用いた高周波送受信器に関するものである。
【0002】
また本発明は、上記高周波送受信器を具備するレーダ装置ならびにそれを搭載したレーダ装置搭載車両およびレーダ装置搭載小型船舶に関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来から、ミリ波集積回路やミリ波レーダモジュール等に組み込まれて使用される高周波信号用の変調器として、図9に示すような反射型の変調器が知られている(例えば特許文献1,2を参照。)。
【0004】
特許文献1,2に開示されているような変調器は、例えば、図9にその例を模式的な平面図で示すように、高周波信号を伝送する第1、第2および第3の伝送線路61,62,63が磁性体64の周縁部に放射状に接続され、一つの接続部から入力された高周波信号を隣接する他の接続部の一方より出力するサーキュレータの一つの接続部64bに一端が接続された第2の伝送線路62の他端にショットキーバリアダイオード65が接続されている変調器において、サーキュレータの接続部64bからショットキーバリアダイオード65までの距離を、(n・λg)/2(nは整数,λgは高周波信号の第2の伝送線路62内での波長)とする構成である。
【0005】
また、このような従来の変調器においては、特許文献1に開示されているように、伝送線路61,62,63として非放射性誘電体線路が好適であることが知られている。
【0006】
この非放射性誘電体線路の基本的な構成は、図8に部分破断斜視図で示すように、所定の間隔aをもって平行配置された平行平板導体51,52の間に、断面形状が長方形等の矩形状の誘電体線路53を配置した構成であり、この間隔aが高周波信号の波長λに対してa≦λ/2であれば、外部から誘電体線路53へのノイズの侵入をなくし、かつ外部への高周波信号の放射をなくして、誘電体線路53中で高周波信号を効率良く伝搬させることができる。なお、高周波信号の波長λは使用周波数における空気中(自由空間)での波長である。
【0007】
このような従来の変調器は、第1の伝送線路61から第2の伝送線路62へ入力した高周波信号を第2の伝送線路62の他端に接続されたショットキーバリアダイオード65で反射させるかまたは吸収させた後、そのうちの反射させた高周波信号を第2の伝送線路62から第3の伝送線路63へ入力して第3の伝送線路63の出力端から変調された高周波信号として出力するといった動作をする。その際、サーキュレータの接続部64bからショットキーバリアダイオード65までの距離を(n・λg)/2とすることにより、インピーダンス整合をとることが容易になるというものである。
【0008】
また、従来の高周波送受信器の例は、例えば、特許文献3に開示されている。
【0009】
また、従来のレーダ装置およびそれを搭載したレーダ装置搭載車両の例は、例えば、特許文献4に開示されている。
【特許文献1】特開2002−232212号公報
【特許文献2】特開2002−261516号公報
【特許文献3】特開2000−258525号公報
【特許文献4】特開2003−35768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1,2に開示されているような従来の変調器では、主にショットキーバリアダイオード65で高周波信号が反射する際に、ショットキーバリアダイオード65の特性により高周波信号の位相の進み方が変化するために、変調器がオフのときにショットキーバリアダイオード65で反射して第3の伝送線路63に漏洩する高周波信号と、第1の伝送線路61から第3の伝送線路63にサーキュレータのアイソレーション不足等により漏洩する高周波信号とが、様々な位相差で干渉し合い、強め合って合波されることがあるので、変調器がオフのときに第3の伝送線路65に漏洩する高周波信号の強度が大きくなってしまってオン/オフ比が悪化することがあるという問題点があった。
【0011】
本発明は従来の技術における以上のような改善が望まれる問題点を解決すべく案出されたものであり、その目的は、サーキュレータの入出力用の伝送線路の1つに半導体素子が接続されている反射型の変調器において、オン/オフ比特性を改善することができる変調器およびそれを用いた高性能な高周波送受信器を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、そのような高性能な高周波送受信器を具備するレーダ装置ならびにそのレーダ装置を備えたレーダ装置搭載車両およびレーダ装置搭載小型船舶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の変調器は、高周波信号を伝送する第1、第2および第3の伝送線路が磁性体の周縁部に放射状にそれぞれ第1、第2および第3の接続部で接続され、一つの接続部から入力された前記高周波信号を隣接する他の接続部の一方より出力するサーキュレータに、前記第2の接続部に一端が接続された前記第2の伝送線路の他端に半導体素子が接続されてなる変調器において、前記第2の伝送線路に沿った、前記第2の接続部から前記半導体素子までの距離を、前記第2の伝送線路を通って前記半導体素子で反射して戻って前記第3の伝送線路に漏洩した一部の高周波信号をWaとし、前記第1の伝送線路から前記サーキュレータを介して前記第3の伝送線路に漏洩した他の一部の高周波信号をWbとし、これらWaとWbとの中心周波数における位相差をδとしたときに、δ=(2N+1)・π(ただし、Nは整数である。)となるように設定したことを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の変調器は、上記構成において、前記半導体素子はショットキーバリアダイオードであることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の変調器は、上記構成において、前記半導体素子はPINダイオードであって、前記第2の伝送線路の延長上に前記PINダイオードを挟むように無反射終端器を設けたことを特徴とするものである。
【0016】
本発明の第1の高周波発振器は、高周波信号を発生する高周波発振器と、この高周波発振器に接続された、前記高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、前記一方の出力端に接続された、この一方の出力端に分岐された高周波信号を変調して送信用高周波信号を出力する上記各構成の本発明のいずれかの変調器と、磁性体の周囲に第1の端子,第2の端子および第3の端子を有し、この順に一つの端子から入力された高周波信号を隣接する次の端子より出力する、前記変調器の出力が前記第1の端子に入力されるサーキュレータと、このサーキュレータの前記第2の端子に接続された送受信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端と前記サーキュレータの前記第3の端子との間に接続された、前記他方の出力端に分岐された高周波信号と前記送受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーとを具備することを特徴とするものである。
【0017】
本発明の第2の高周波発振器は、高周波信号を発生する高周波発振器と、この高周波発振器に接続された、前記高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、前記一方の出力端に接続された、この一方の出力端に分岐された高周波信号を変調して送信用高周波信号を出力する上記各構成の本発明のいずれかの変調器と、この変調器の出力端に一端が接続された、前記一端側から他端側へ前記送信用高周波信号を透過させるアイソレータと、このアイソレータに接続された送信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端側に接続された受信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端と前記受信アンテナとの間に接続された、前記他方の出力端に分岐された高周波信号と前記受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーとを具備することを特徴とするものである。
【0018】
本発明のレーダ装置は、上記各構成の本発明の第1または第2の高周波送受信器と、この高周波送受信器から出力される前記中間周波信号を処理して探知対象物までの距離情報を検出する距離情報検出器とを具備することを特徴とするものである。
【0019】
本発明のレーダ装置搭載車両は、上記構成の本発明のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いることを特徴とするものである。
【0020】
本発明のレーダ装置搭載小型船舶は、上記構成の本発明のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の変調器によれば、高周波信号を伝送する第1、第2および第3の伝送線路が磁性体の周縁部に放射状にそれぞれ第1、第2および第3の接続部で接続され、一つの接続部から入力された前記高周波信号を隣接する他の接続部の一方より出力するサーキュレータに、前記第2の接続部に一端が接続された前記第2の伝送線路の他端に半導体素子が接続されてなる変調器において、前記第2の伝送線路に沿った、前記第2の接続部から前記半導体素子までの距離を、前記第2の伝送線路を通って前記半導体素子で反射して戻って前記第3の伝送線路に漏洩した一部の高周波信号をWaとし、前記第1の伝送線路から前記サーキュレータを介して前記第3の伝送線路に漏洩した他の一部の高周波信号をWbとし、これらWaとWbとの中心周波数における位相差をδとしたときに、δ=(2N+1)・π(ただし、Nは整数である。)となるように設定したことから、WaとWbとの位相差δがδ=(2N+1)・πとなるため、半導体素子で高周波信号が反射する際に高周波信号の位相の進み方が変化するのに対しても、第3の伝送線路に漏洩する上記2つの一部の高周波信号を確実に互いに丁度逆位相にして、効果的に互いが打ち消し合うようにすることができるので、オフのときの減衰を大きくしてオン/オフ比特性を良好にすることができる変調器となる。
【0022】
また、本発明の変調器によれば、前記半導体素子はショットキーバリアダイオードであるときには、ショットキーバリアダイオードはミリ波帯等の高周波信号に対して検波作用があるため、ミリ波帯等の高周波信号を吸収してオフのときに出力端側に漏洩される高周波信号の強度を小さくすることができるので、ミリ波帯等の高周波信号に対しても簡単な構成でオン/オフ比特性が向上する変調器となる。
【0023】
また、本発明の変調器によれば、前記半導体素子はPINダイオードであって、前記第2の伝送線路の延長上に前記PINダイオードを挟むように無反射終端器を設けたときには、無反射終端器がミリ波帯等の高周波信号を吸収するため、オフのときに出力端側に漏洩される高周波信号の強度を小さくすることができるとともに、PINダイオードはミリ波帯の高周波信号に対して検波作用がないため、PINダイオードに入射する高周波信号の強度が変わってもバイアス電流が安定していて反射特性が安定であるという利点を有しているので、ミリ波帯等の高周波信号に対してもオン/オフ比特性が安定する変調器となる。
【0024】
本発明の第1の高周波送受信器によれば、高周波信号を発生する高周波発振器と、この高周波発振器に接続された、前記高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、前記一方の出力端に接続された、この一方の出力端に分岐された高周波信号を変調して送信用高周波信号を出力する上記各構成の本発明のいずれかの変調器と、磁性体の周囲に第1の端子,第2の端子および第3の端子を有し、この順に一つの端子から入力された高周波信号を隣接する次の端子より出力する、前記変調器の出力が前記第1の端子に入力されるサーキュレータと、このサーキュレータの前記第2の端子に接続された送受信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端と前記サーキュレータの前記第3の端子との間に接続された、前記他方の出力端に分岐された高周波信号と前記送受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーとを具備することから、変調器が出力した送信用高周波信号を受信する際に、変調器のオン/オフ比特性が良好であるため、送信用高周波信号から不要な成分を十分に減衰させることができるので、受信側での受信感度を向上させることができる高性能な高周波送受信器となる。
【0025】
本発明の第2の高周波送受信器によれば、高周波信号を発生する高周波発振器と、この高周波発振器に接続された、前記高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、前記一方の出力端に接続された、この一方の出力端に分岐された高周波信号を変調して送信用高周波信号を出力する上記各構成の本発明のいずれかの変調器と、この変調器の出力端に一端が接続された、前記一端側から他端側へ前記送信用高周波信号を透過させるアイソレータと、このアイソレータに接続された送信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端側に接続された受信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端と前記受信アンテナとの間に接続された、前記他方の出力端に分岐された高周波信号と前記受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーとを具備することから、送受別体のアンテナを用いた高周波送受信器においても、変調器が出力した送信用高周波信号を受信する際に、変調器のオン/オフ比特性が良好であるため、送信用高周波信号から不要な成分を十分に減衰させることができるので、受信側での受信感度を向上させることができる高性能な高周波送受信器となる。
【0026】
本発明のレーダ装置によれば、上記各構成の本発明の第1または第2の高周波送受信器と、この高周波送受信器から出力される前記中間周波信号を処理して探知対象物までの距離情報を検出する距離情報検出器とを具備することから、高周波送受信器の受信性能が高いため、速く確実に探知対象物を探知することができるとともに至近距離や遠方の探知対象物をも確実に探知することができるレーダ装置となる。
【0027】
本発明のレーダ装置搭載車両によれば、上記構成の本発明のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いることから、レーダ装置が速く確実に探知対象物である他の車両や障害物等を探知することができるため、例えばそれらを回避するための急激な挙動を車両に起こさせることなく、車両の適切な制御や運転者への適切な警告をすることができるレーダ装置搭載車両となる。
【0028】
本発明のレーダ装置搭載小型船舶によれば、上記構成の本発明のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いることから、レーダ装置が速く確実に探知対象物である他の小型船舶障害物等を探知することができるため、例えばそれらを回避するための急激な挙動を小型船舶に起こさせることなく、小型船舶の適切な制御や操縦者への適切な警告をすることができるレーダ装置搭載小型船舶となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
初めに、本発明の変調器およびそれを用いた高周波送受信器について、図面を参照しつつ、以下に詳細に説明する。
【0030】
図1は本発明の変調器の実施の形態の一例を示す模式的な平面図である。また図2は図1に示す変調器における半導体素子を実装する基板の例を示す模式的な平面図である。また、また、図3は図1に示す変調器の例におけるオン/オフ比特性の位相差δによる依存性を示す線図である。また、図4は本発明の第1の高周波送受信器の実施の形態の一例を示す模式的なブロック回路図である。また、図5は図4に示す高周波送受信器の模式的な平面図である。また、図6は本発明の第2の高周波送受信器の実施の形態の一例を示す模式的なブロック回路図である。また、図7は図6に示す高周波送受信器の模式的な平面図である。また、図8は非放射性誘電体線路の基本的な構成を示す模式的な部分破断斜視図である。
【0031】
図1および図2において、1,2および3は伝送線路としての誘電体線路であり、それぞれ第1、第2および第3の誘電体線路である。また、4は磁性体としてのフェライト板、4a,4bおよび4cは、それぞれ第1、第2および第3の接続部である。また、5は半導体素子としてのPINダイオード、6はPINダイオード5を実装する基板、7は無反射終端器である。また、8はPINダイオード6にバイアスを供給するチョーク型バイアス供給線路、8aは幅の広い線路、8bは幅の狭い線路、8cは接続用導体である。また、WaおよびWbは、それぞれ第2の誘電体線路2を通ってPINダイオード5で反射して戻って第3の誘電体線路3に漏洩する高周波信号および第1の誘電体線路1からサーキュレータを介して第3の誘電体線路3に漏洩する高周波信号を示している。
【0032】
また、図4〜図7において、11は高周波発振器、12は分岐器、13は変調器、14はサーキュレータ、15は送受信アンテナ、16はミキサー、17はスイッチ、18はアイソレータ、19は送信アンテナ、20は受信アンテナ、21,31は平板導体、22,32は第1の誘電体線路、23,33は第2の誘電体線路、24,34は磁性体としてのフェライト板、25,35は第3の誘電体線路、26,36は第4の誘電体線路、27,37は第5の誘電体線路、28,38a,38bは無反射終端器、39は第6の誘電体線路、40は基板、43は高周波検波用素子、12aは入力端、12bは一方の出力端、12cは他方の出力端、13a,18aは入力端、13b,18bは出力端、14a,24a,34aは第1の端子、14b,24b,34bは第2の端子、14c,24c,34cは第3の端子である。また、図8において、51,52は平板導体、53は誘電体線路である。
【0033】
なお、図1において平板導体は図示していない。また、図5および図7において、上側の平板導体は図示していない。
【0034】
図1に示す本発明の変調器の実施の形態の一例は、高周波信号を伝送する第1、第2および第3の伝送線路としての第1、第2および第3の誘電体線路1,2,3が磁性体4の周縁部に放射状にそれぞれ第1、第2および第3の接続部4a,4b,4cで接続され、一つの接続部から入力された高周波信号を隣接する他の接続部の一方より出力するサーキュレータに、第2の接続部4bに一端が接続された第2の誘電体線路2の他端に半導体素子としてのPINダイオード5が接続されてなる変調器において、第2の誘電体線路2に沿った、第2の接続部4bからPINダイオード5までの距離を、第2の誘電体線路2を通ってPINダイオード5で反射して戻って第3の誘電体線路3に漏洩した一部の高周波信号をWaとし、第1の誘電体線路1からサーキュレータを介して第3の誘電体線路3に漏洩した他の一部の高周波信号をWbとし、これらWaとWbとの中心周波数における位相差をδとしたときに、δ=(2N+1)・π(ただし、Nは整数である。)となるように設定した構成である。また、第2の誘電体線路2の延長上に第2の誘電体線路2との間でPINダイオード5を挟むように無反射終端器7を設けている。
【0035】
この構成において、詳細には、第1の誘電体線路1、第2の誘電体線路2および第3の誘電体線路3は、図8に示す非放射性誘電体線路の構成要素である誘電体線路53に相当するものであり、これら第1、第2および第3の誘電体線路1,2,3は、それぞれ非放射性誘電体線路による第1、第2および第3の伝送線路として機能するものである。
【0036】
この非放射性誘電体線路の基本的な構成は、図8に部分破断斜視図で示すように、所定の間隔aをもって平行に配置された平板導体51,52間に、断面が矩形状の誘電体線路53を、間隔aを高周波信号の波長λに対してa≦λ/2として配置したものである。これにより、外部から誘電体線路53へのノイズの侵入をなくし、かつ外部への高周波信号の放射をなくして、誘電体線路53中により高周波信号をほとんど損失なく伝搬させることができる。なお、波長λは使用周波数における空気中(自由空間)での高周波信号の波長である。
【0037】
図1に平面図で示す本発明の変調器の例は、第1、第2および第3の伝送線路として非放射性誘電体線路を用いた場合の例を示しており、高周波信号の波長の2分の1以下の間隔で平行に配置した平板導体(図1においては図示していない。)間に、第1、第2および第3の誘電体線路1,2,3ならびにフェライト板4、PINダイオード5が実装された基板6および無反射終端器7が挟まれているものである。
【0038】
また、PINダイオード5は、具体的には、図2に示すように基板6上に形成された幅の広い線路8aと幅の狭い線路8bとがλ/4間隔で繰り返し規則的に接続されて成るチョーク型バイアス供給線路8の途中の途切れた部分に接続された接続用導体8cに接続されることによって基板6上に実装されており、このPINダイオード5が実装された基板6は、図1に示すように第2の誘電体線路2の延長上にPINダイオード5が位置するように配置されている。これによって、第2の誘電体線路2の端部からPINダイオード5に高周波信号が入射するようになり、第2の誘電体線路2とPINダイオード5とが接続された状態となる。なお、PINダイオード5は、第2の誘電体線路2を伝搬する高周波信号の電界の方向になるべく平行に電流が流れるように配置するのが望ましい。このようにすれば、PINダイオード5が高周波信号を反射する際、無反射終端器7側に漏らさずにほとんどの高周波信号を反射することができるようになり、変調器がオンのときの高周波信号の透過損失を小さくすることができるのでよい。
【0039】
なお、本発明の変調器においては、第1、第2および第3の伝送線路として、このような誘電体線路の他に、ストリップ線路,マイクロストリップ線路,コプレーナ線路,グランド付きコプレーナ線路,スロット線路,導波管,誘電体導波管等を用いてもよい。
【0040】
図1に示す本発明の変調器の例では、従来の変調器と同様に、第1の誘電体線路1から第2の誘電体線路2へ入力した高周波信号を第2の誘電体線路2の他端に基板6を介してされたPINダイオード5で反射させるかまたは透過させるとともに無反射終端器7で吸収させた後、そのうちの反射させた高周波信号を第2の誘電体線路2から第3の誘電体線路3へ入力して第3の誘電体線路3の出力端から変調された高周波信号として出力するといった動作をする。しかしながら、第2の誘電体線路2に沿った、第2の接続部4bからPINダイオード5までの距離の設定が従来とは異なり、本発明の変調器においては、この第2の誘電体線路2に沿った、第2の接続部4bからPINダイオード5までの距離を上記のように、δ=(2N+1)・πとなるような設定としたことから、第2の誘電体線路2から第3の誘電体線路3に漏洩する高周波信号と、第1の誘電体線路1から第3の誘電体線路3に漏洩する高周波信号とを、PINダイオード5で高周波信号が反射する際に高周波信号の位相の進み方が変化するのに対しても、確実に丁度逆位相にすることができ、効果的にこれらを弱め合うように干渉させて互いが打ち消し合うようにすることができるので、変調器がオフのときの減衰を大きくしてオン/オフ比特性を良好にすることができる。
【0041】
なお、半導体素子としてのPINダイオード5は、PINダイオードの代わりにショットキーバリアダイオードを用いてもよい。この場合には、無反射終端器7は用いず、上記と同様にショットキーバリアダイオードを基板6上に実装して第2誘電体線路2の延長上に配置するようにすればよい。このようにすれば、ショットキーバリアダイオードはミリ波帯等の高周波信号に対して検波作用があるため、無反射終端器7を用いなくてもミリ波帯等の高周波信号を吸収してオフのときに出力端側に漏洩される高周波信号の強度を小さくすることができるので、ミリ波帯等の高周波信号に対しても簡単な構成でオン/オフ比特性を良好にすることができる利点がある。
【0042】
図3は、図1に示す変調器におけるオン/オフ比特性の位相差δによる依存性を示す線図であり、横軸および縦軸はそれぞれ位相差(単位:ラジアン)およびオン/オフ比の逆数(単位なし)であり、実線の特性曲線がオン/オフ比特性の位相差δによる依存性を示している。ここで、オン/オフ比とは、変調器がオンのときに出力される高周波信号の強度(単位:ワット(W))に対する変調器がオフのときに出力される高周波信号の強度を比で表した量である。図3においてはこのオン/オフ比を逆数で表しており、この逆数で表されたオン/オフ比が小さいほどオン/オフ比特性としては良好である。
【0043】
図1に示す本発明の変調器の例のオン/オフ比特性は、図3に線図で示すように、A・cosδ(Aは比例係数であり、実数である。)に従ってオン/オフ比が変化し、第1の誘電体線路1から第1の接続部4a,フェライト板4および第2の接続部4bを介して第2の誘電体線路2に透過し、第2の誘電体線路2を通ってPINダイオード5で反射して戻って第2の接続部4b,フェライト板4および第3の接続部4cを介して第3の誘電体線路3に漏洩した高周波信号Waと、第1の誘電体線路1から第1の接続部4a,フェライト板4および第3の接続部4cを介して第3の誘電体線路3に漏洩した高周波信号Wbとの中心周波数における位相差δが、±π,±3π,・・・,(2N+1)・π(ただし、Nは整数である。)であるときに、オン/オフ比の逆数が最も小さくなる特性である。
【0044】
ここで、高周波信号が第2の接続部4bから第3の接続部4cに漏洩する際の位相の変化と、高周波信号が第1の接続部4aから第3の接続部4cに漏洩する際の位相の変化とが同じであり、さらに、高周波信号がPINダイオード5で反射するときにその高周波信号の位相が変化しないとすれば、第1の誘電体線路1から第1の接続部4a,フェライト板4および第2の接続部4bを介して第2の誘電体線路2に透過し、第2の誘電体線路2を通ってPINダイオード5で反射して戻って第2の接続部4b,フェライト板4および第3の接続部4cを介して第3の誘電体線路3に漏洩した高周波信号と、第1の誘電体線路1から第1の接続部4a,フェライト板4および第3の接続部4cを介して第3の誘電体線路3に漏洩した高周波信号との位相差は、第2の誘電体線路2に沿った、第2の接続部4bからPINダイオード5までの間を往復する間の高周波信号の位相変化に等しくなり、このときには、第2の誘電体線路2に沿った、第2の接続部4bからPINダイオード5までの距離が、(2n+1)/4・λg(nは整数,λgは高周波信号の第2の誘電体線路2内での波長)であれば、第1の誘電体線路1から第2の誘電体線路2を経て第3の誘電体線路3に漏洩する高周波信号と、第1の誘電体線路1から第1の接続部4a,フェライト板4および第3の接続部4cを介して第3の誘電体線路3に漏洩する高周波信号との位相差を丁度逆位相にすることができる。
【0045】
ところが、実際には、ほとんどの場合に、高周波信号がPINダイオード5で反射するときにその高周波信号の位相は変化する。この理由は、PINダイオード5は、バイアス条件によって様々な反射係数を有するものであるため、反射係数のリアクタンス成分によって、高周波信号が反射するときにその高周波信号の位相を進めたりあるいは遅らせたりするからである。なお、このような高周波信号の位相の変化は、半導体素子としてショットキーバリアダイオードを用いた場合も同様に起こるものである。
【0046】
従って、実際にはこのように異なる2つの経路において第2の誘電体線路2に沿った、第2の接続部4bからPINダイオード5までの距離という物理的な長さ以外の要因によって発生する高周波信号の位相差に対応する長さLを、第2の誘電体線路2に沿った、第2の接続部4bからPINダイオード5までの距離に対して補正すれば、それら異なる2つの経路である第1の誘電体線路1から第1の接続部4a,フェライト板4および第2の接続部4bを介して第2の誘電体線路2に透過し、第2の誘電体線路2を通ってPINダイオード5で反射して戻って第2の接続部4b,フェライト板4および第3の接続部4cを介して第3の誘電体線路3に漏洩した高周波信号と、第1の誘電体線路1から第1の接続部4a,フェライト板4および第3の接続部4cを介して第3の誘電体線路3に漏洩した高周波信号との位相差を丁度逆位相にすることができる。これには、第2の接続部4bからPINダイオード5までの距離を、(2n+1)/4・λgから補正した(2n+1)/4・λg+Lに設定すればよい。
【0047】
本発明の変調器においては、Lの内訳に対応するそれぞれの位相変化を個々に測定して、それらを合算してLを求めた上で最終的に(2n+1)/4・λg+Lを求める替わりに、より簡便な方法として、位相差δを測定し、この位相差δがδ=(2N+1)・πとなるように第2の接続部4bからPINダイオード5までの距離を設定する。具体的には、第2の接続部4bからPINダイオード5までの距離を設定するには、次のようにすればよい。
【0048】
初めに、第2の接続部4bからPINダイオード5までの距離を、(2n+1)/4・λgになるように第2の誘電体線路2の線路長および基板6の厚さを設定し、第1の誘電体線路1の入力端(他端)と第3の誘電体線路3の出力端(他端)とにそれぞれネットワークアナライザの試験端子を接続し、変調器をオフにした状態で第1の誘電体線路1から第3の誘電体線路3に透過する高周波信号の透過特性を測定する。次に、第2の誘電体線路2の線路長または基板6の厚さを初めに設定した値から変化させた大きさとし、その大きさが異なっているいくつかについて、第1の誘電体線路1から第3の誘電体線路3に透過する高周波信号の透過特性を同じ方法で測定する。そして、縦軸をこの透過特性とし、横軸を第2の接続部4bからPINダイオード5までの距離として、図3に示すような線図上にこの透過特性の測定値をプロットし、このプロット上に重なるように、A・cosθの近似曲線を描き、この曲線の極小値から、位相差δがδ=(2N+1)・πとなる第2の接続部4bからPINダイオード5までの距離(2n+1)/4・λg+Lを読みとればよい。このようにすれば、第1の誘電体線路1から第1の接続部4a,フェライト板4および第2の接続部4bを介して第2の誘電体線路2に透過し、第2の誘電体線路2を通ってPINダイオード5で反射して戻って第2の接続部4b,フェライト板4および第3の接続部4cを介して第3の誘電体線路3に漏洩した高周波信号と、第1の誘電体線路1から第1の接続部4a,フェライト板4および第3の接続部4cを介して第3の誘電体線路3に漏洩した高周波信号との位相差を、確実に、丁度逆位相とすることができる。これにより、オン/オフ比特性を従来よりも良好とすることができる。
【0049】
次に、本発明の変調器の構成要素について詳細に説明する。本発明の変調器において、半導体素子は、PINダイオードおよびショットキーバリアダイオードの他にも、バイポーラトランジスタ,電界効果トランジスタ(FET)またはマイクロ波モノリシック集積回路(MMIC)等の半導体集積回路としてもよい。
【0050】
また、第1、第2および第3の誘電体線路1,2,3の材質には、四フッ化エチレン,ポリスチレン等の樹脂、または低比誘電率のコーディエライト(2MgO・2Al・5SiO)セラミックス,アルミナ(Al)セラミックス,ガラスセラミックス等のセラミックスが好ましく、これらはミリ波帯域において低損失である。
【0051】
また、第1、第2および第3の誘電体線路1,2,3の断面形状は基本的には矩形状であるが、矩形の角部をまるめた形状であってもよく、高周波信号の伝送に使用される種々の断面形状のものを使用することができる。
【0052】
また、フェライト板4の材質には、フェライトの中でも、例えばミリ波信号に対しては、亜鉛・ニッケル・鉄酸化物(ZnNiFe)が好適である。
【0053】
また、フェライト板4の形状は、通常は円板状とされるが、その他、平面形状が正多角形状であってもよい。その場合は、接続される誘電体線路の本数をn本(nは3以上の整数)とすると、その平面形状は正m角形(mは3以上のnより大きい整数)とするのがよい。
【0054】
また、無反射終端器7は、第2の誘電体線路2の他端に対して、両側の側面(図示していない平行平板導体の内面と対向しない面)の上下端部に、膜状の抵抗体または電波吸収体を付着させて構成すればよい。その際、抵抗体の材質としては、ニッケルクロム合金またはカーボンが好適である。また、電波吸収体の材質としては、パーマロイまたはセンダストが好適である。これらの材質を用いれば、効率良く高周波信号を減衰させることができる。また、これら以外の材質で、高周波信号を減衰させることができるものを用いても構わない。
【0055】
また、平板導体の材質には、高い電気伝導度および良好な加工性等の点で、Cu,Al,Fe,Ag,Au,Pt,SUS(ステンレススチール),真鍮(Cu−Zn合金)等の導体板が好適である。あるいは、セラミックス,樹脂等から成る絶縁板の表面にこれらの導体層を形成したものでもよい。
【0056】
次に、本発明の第1の高周波送受信器の実施の形態の一例は、図4にブロック回路図で示すように、高周波信号を発生する高周波発振器11と、この高周波発振器11に接続された、高周波信号を分岐して一方の出力端12bと他方の出力端12cとに出力する分岐器12と、一方の出力端12bに接続された、この一方の出力端12bに分岐された高周波信号を変調して送信用高周波信号を出力する上記各構成の本発明の実施の形態の例のいずれかの変調器13と、磁性体の周囲に第1の端子14a,第2の端子14bおよび第3の端子14cを有し、この順に一つの端子から入力された高周波信号を隣接する次の端子より出力する、変調器13の出力が第1の端子14aに入力されるサーキュレータ14と、このサーキュレータ14の第2の端子14bに接続された送受信アンテナ15と、分岐器12の他方の出力端12cとサーキュレータ14の第3の端子14cとの間に接続された、他方の出力端12cに分岐された高周波信号と送受信アンテナ15で受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサー16とを備えている構成である。
【0057】
また、図4に示す本発明の第1の高周波送受信器は、上記各構成要素間を接続するための高周波用伝送線路として、非放射性誘電体線路を用いている。この非放射性誘電体線路の基本的な構成は、図8に部分破断斜視図で示すものと同様である。
【0058】
すなわち、図4に示す本発明の第1の高周波送受信器は、具体的には、図5に平面図で示すように、高周波信号の波長の2分の1以下の間隔で平行に配置された平板導体21(他方の平板導体は図示していない。)間に、第1の誘電体線路22の一端が接続された、高周波ダイオードから出力された高周波信号を周波数変調するとともに高周波信号として第1の誘電体線路22を伝搬させて出力する高周波発振器11と、第1の誘電体線路22の他端に接続された、その高周波信号をパルス信号に応じて入力端13a側に反射するかまたは出力端13b側に透過させる上記各構成の本発明の実施の形態の例のいずれかの変調器13と、変調器13の出力端13bに一端が接続された第2の誘電体線路23と、平板導体21に平行に配設されたフェライト板24の周縁部に、それぞれ高周波信号の入出力端子とされた第1の端子24a,第2の端子24bおよび第3の端子24cを有し、この順に一つの端子から入力された高周波信号を隣接する次の端子より出力する、第1の端子24aが第2の誘電体線路23の他端に接続されたサーキュレータ14と、サーキュレータ14のフェライト板24の周縁部に放射状に配置され、かつ第2の端子24bおよび第3の端子24cにそれぞれの一端が接続された第3の誘電体線路25および第4の誘電体線路26と、第3の誘電体線路25の他端に接続された送受信アンテナ15と、中途を第1の誘電体線路22の中途に近接もしくは接合させた、第1の誘電体線路22を伝搬する高周波信号の一部を分岐して伝搬させる第5の誘電体線路27と、第5の誘電体線路27の高周波発振器11側の一端に接続された無反射終端器28と、第4の誘電体線路26の他端と第5の誘電体線路27の他端との間に接続された、第5の誘電体線路27から入力される高周波信号と送受信アンテナ15で受信してサーキュレータ14から入力される高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサー16とを備えている構成である。
【0059】
なお、この構成において、第1の誘電体線路22と第5の誘電体線路27とを近接もしくは接合させた部分が分岐器12を構成している。また、ミキサー16は、中途を電磁結合するように近接もしくは接合させた第4の誘電体線路26および第5の誘電体線路27のそれぞれの他端に、高周波検波用素子としてのショットキーバリアダイオード43を実装した基板40を、ショットキーバリアダイオード43に高周波信号が入射するように配置して構成している。なお、基板40は基板6と同様のものを用いればよい。
【0060】
なお、図5において、第1の端子24a,第2の端子24b,第3の端子24cは、それぞれ図4における第1の端子14a,第2の端子14b,第3の端子14cに対応している。
【0061】
以上のように構成された図4および図5に示す本発明の第1の高周波送受信器は、従来の高周波送受信器と同様に動作する。しかしながら、その際、変調器13として本発明の変調器を備えているため、変調器13が出力した送信用高周波信号を受信する際に、変調器13のオン/オフ比特性が良好であるため、送信用高周波信号から不要な成分を十分に減衰させることができるので、受信側での受信感度を向上させることができる高性能なものとなる。
【0062】
次に、本発明の第2の高周波送受信器の実施の形態の一例は、図6にブロック回路図で示すように、高周波信号を発生する高周波発振器11と、この高周波発振器11に接続された、高周波信号を分岐して一方の出力端12bと他方の出力端12cとに出力する分岐器12と、一方の出力端12bに接続された、この一方の出力端12bに分岐された高周波信号を変調して送信用高周波信号を出力する上記各構成の本発明の実施の形態の例のいずれかの変調器13と、この変調器13の出力端13bに一端18aが接続された、一端18a側から他端18b側へ送信用高周波信号を透過させるアイソレータ18と、このアイソレータ18に接続された送信アンテナ19と、分岐器12の他方の出力端12c側に接続された受信アンテナ20と、分岐器12の他方の出力端12cと受信アンテナ20とに2つの入力端16a,16bのそれぞれが接続された、他方の出力端12cに分岐された高周波信号と受信アンテナ20で受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサー16とを備えている構成である。
【0063】
また、図6に示す本発明の第2の高周波送受信器は、上記各構成要素間を接続するための高周波用伝送線路として、非放射性誘電体線路を用いている。この非放射性誘電体線路の基本的な構成は、図8に部分破断斜視図で示すものと同様である。
【0064】
すなわち、図6に示す本発明の第2の高周波送受信器は、具体的には、図7に平面図で示すように、高周波信号の波長の2分の1以下の間隔で平行に配置された平板導体31(他方の平板導体は図示していない。)間に、第1の誘電体線路32の一端が接続された、高周波ダイオードから出力された高周波信号を周波数変調するとともに第1の誘電体線路32を伝搬させて出力する高周波発振器11と、第1の誘電体線路32の他端に接続された、その高周波信号をパルス信号に応じて入力端13a側に反射するかまたは出力端13b側に透過させる上記各構成の本発明の実施の形態の例のいずれかの変調器13と、変調器13の出力端13bに一端が接続された第2の誘電体線路33と、平板導体31に平行に配設されたフェライト板34の周縁部に、それぞれ高周波信号の入出力端子とされた第1の端子34a,第2の端子34bおよび第3の端子34cを有し、この順に一つの端子から入力された高周波信号を隣接する次の端子より出力する、第1の端子34aが第2の誘電体線路33の他端に接続されたサーキュレータ14と、サーキュレータ14のフェライト板34の周縁部に放射状に配置され、かつ第2の端子34bおよび第3の端子34cにそれぞれの一端が接続された第3の誘電体線路35および第4の誘電体線路36と、第3の誘電体線路35の他端に接続された送信アンテナ19と、中途を第1の誘電体線路32の中途に近接もしくは接合させた、第1の誘電体線路32を伝搬する高周波信号の一部を分岐して伝搬させる第5の誘電体線路37と、第4の誘電体線路36の他端に接続された無反射終端器38aと、第5の誘電体線路37の高周波発振器11側の一端に接続された無反射終端器38bと、一端が受信アンテナ20に接続された第6の誘電体線路39と、第5の誘電体線路37の他端と第6の誘電体線路39の他端との間に接続された、第5の誘電体線路37から入力される高周波信号と受信アンテナ20で受信して第6の誘電体線路39から入力される高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサー16とを備えている構成である。
【0065】
なお、第1の誘電体線路32および第5の誘電体線路37は、それらの近接部もしくは接合部において分岐器12を構成している。また、ミキサー16は、中途を電磁結合するように近接もしくは接合させた第5の誘電体線路37および第6の誘電体線路39のそれぞれの他端に、高周波検波用素子としてのショットキーバリアダイオード43を実装した基板40を、ショットキーバリアダイオード43に高周波信号が入射するように配置して構成している。なお、基板40は基板6と同様のものを用いればよい。
【0066】
なお、図7において、第1の端子34a,第2の端子34b,第3の端子34cは、それぞれ図6における第1の端子14a,第2の端子14b,第3の端子14cに対応している。
【0067】
以上のように構成された図6および図7に示す本発明の第2の高周波送受信器は、従来の高周波送受信器と同様に動作する。しかしながら、その際、変調器13として本発明の変調器を備えているため、変調器13が出力した送信用高周波信号を受信する際に、変調器13のオン/オフ比特性が良好であるため、送信用高周波信号から不要な成分を十分に減衰させることができるので、受信側での受信感度を向上させることができる高性能なものとなる。
【0068】
また、上記各構成の本発明の第1および第2の高周波信号において、図4および図6に示すようにミキサー16の出力端に外部からの制御信号に応じて中間周波信号を遮断するCMOS等の半導体素子で構成されるスイッチ17を接続してもよい。この場合には、スイッチ17が、サーキュレータ14の第1の端子aおよび第3の端子14cの間または送信アンテナ19および受信アンテナ20の間を透過し、ミキサー16に漏洩して入力された高周波信号に対応する不要な中間周波信号を遮断するように動作するため、受信すべき中間周波信号に不要なノイズが混入しないようにすることができるので受信性能を高くすることができる。
【0069】
次に、本発明の高周波送受信器において、第1〜第6の誘電体線路22,23,25〜27,32,33,35〜37,39の材質には、四フッ化エチレン,ポリスチレン等の樹脂、または低比誘電率のコーディエライト(2MgO・2Al・5SiO)セラミックス,アルミナ(Al)セラミックス,ガラスセラミックス等のセラミックスが好ましく、これらはミリ波帯域の高周波信号において低損失である。
【0070】
また、第1〜第6の誘電体線路22,23,25〜27,32,33,35〜37,39の断面形状は基本的には矩形状であるが、矩形の角部をまるめた形状であってもよく、高周波信号の伝送に使用される種々の断面形状のものを使用することができる。
【0071】
また、フェライト板24,34の材質には、フェライトの中でも、例えば高周波信号に対しては、亜鉛・ニッケル・鉄酸化物(ZnNiFe)が好適である。
【0072】
また、フェライト板24,34の形状は、通常は円板状とされるが、その他、平面形状が正多角形状であってもよい。その場合は、接続される誘電体線路の本数をn本(nは3以上の整数)とすると、その平面形状は正m角形(mは3以上のnより大きい整数)とするのがよい。
【0073】
また、平板導体21,31および図示していない他方の平板導体の材質には、高い電気伝導度および良好な加工性等の点で、Cu,Al,Fe,Ag,Au,Pt,SUS(ステンレススチール),真鍮(Cu−Zn合金)等の導体板が好適である。あるいは、セラミックス,樹脂等から成る絶縁板の表面にこれらの導体層を形成したものでもよい。
【0074】
また、無反射終端器28,38a,38bは、例えば図12に示すような誘電体線路53に対して、誘電体線路53の内部の平板導体51,52に平行な面に、膜状の抵抗体または電波吸収体を付着させて構成すればよい。その際、抵抗体の材質としては、ニッケルクロム合金またはカーボンが好適である。また、電波吸収体の材質としては、パーマロイまたはセンダストが好適である。これらの材質を用いれば、効率良くミリ波信号を減衰させることができる。また、これら以外の材質で、ミリ波信号を減衰させることができるものを用いても構わない。
【0075】
また、基板40は、四フッ化エチレン,ポリスチレン,ガラスセラミックス,ガラスエポキシ樹脂,エポキシ樹脂、いわゆる液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂等から成る板状の基体の一主面に、アルミニウム(Al),金(Au),銅(Cu)等から成るストリップ導体等によるチョーク型バイアス供給線路を形成したものが使用される。
【0076】
なお、本発明の高周波送受信器においては、本発明の変調器を備えている構成が重要であり、各回路要素間を接続する高周波用伝送線路としては、非放射性誘電体線路の他にも、導波管,誘電体導波管,ストリップ線路,マイクロストリップ線路,コプレーナ線路,スロット線路,同軸線路,またはこれらを変形した高周波用伝送線路を、使用する周波数帯域や用途に応じて選択して用いても構わない。また、使用する周波数帯域は、ミリ波帯の他にも、マイクロ波帯またはそれ以下の周波数帯にも有効である。
【0077】
また、サーキュレータ14の代わりに、デュプレクサ,スイッチ,ハイブリッド回路等を用いても構わない。また、高周波発振器,変調器およびミキサーには、ダイオードの代わりにバイポーラトランジスタ,電界効果トランジスタ(FET)またはこれらを集積化した集積回路(CMOS,MMIC等)を用いても構わない。
【0078】
次に、本発明のレーダ装置ならびにそれを搭載したレーダ装置搭載車両およびレーダ装置搭載小型船舶について説明する。
【0079】
本発明のレーダ装置は、上記本発明の第1または第2の高周波送受信器と、この高周波送受信器から出力される中間周波信号を処理して探知対象物までの距離情報を検出する距離情報検出器とを具備している構成である。
【0080】
本発明のレーダ装置は、上記構成としたことから、高周波送受信器の受信性能が高いため、速く確実に探知対象物を探知することができるとともに至近距離や遠方の探知対象物をも確実に探知することができるレーダ装置を提供することができる。
【0081】
また、本発明のレーダ装置搭載車両は、上記本発明のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いる構成である。
【0082】
本発明のレーダ装置搭載車両は、このような構成としたことから、従来のレーダ装置搭載車両と同様に、レーダ装置で検出された距離情報に基づいて車両の挙動を制御したり、運転者に例えば路上の障害物や他の車両等を探知したことを音,光もしくは振動で警告したりすることができるが、本発明のレーダ装置搭載車両においては、探知対象物である路上の障害物や他の車両等をレーダ装置が早く確実に探知するため、急激な挙動を車両に起こさせることなく、車両の適切な制御や運転者への適切な警告をすることができる。
【0083】
なお、本発明のレーダ装置搭載車両は、具体的には、汽車,電車,自動車等旅客や貨物を輸送するための車はもちろんのこと、自転車,原動機付き自転車,遊園地の乗り物,ゴルフ場のカート等にも用いることができる。
【0084】
また、本発明のレーダ装置搭載小型船舶は、上記本発明のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いる構成である。
【0085】
本発明のレーダ装置搭載小型船舶は、このような構成としたことから、従来のレーダ装置搭載車両と同様に、小型船舶において、レーダ装置で検出された距離情報に基づいて小型船舶の挙動を制御したり、操縦者に例えば暗礁等の障害物,他の船舶もしくは他の小型船舶等を探知したことを音,光もしくは振動で警告したりするように動作するが、本発明のレーダ装置搭載小型船舶においては、探知対象物である暗礁等の障害物,他の船舶もしくは他の小型船舶等をレーダ装置が早く確実に探知するため、急激な挙動を小型船舶に起こさせることなく、小型船舶の適切な制御や操縦者への適切な警告をすることができる。
【0086】
なお、本発明のレーダ装置搭載小型船舶は、具体的には、小型船舶の免許もしくは免許なしで操縦することができる船舶であって、総トン数20トン未満の船舶である手漕ぎボート,ディンギー,水上オートバイ,船外機搭載の小型バスボート,船外機搭載のインフレータブルボート(ゴムボート),漁船,遊漁船,作業船,屋形船,トーイングボート,スポーツボート,フィッシングボート,ヨット,外洋ヨット,クルーザーまたは総トン数20トン以上のプレジャーボートに用いることができる。
【0087】
かくして、本発明によれば、サーキュレータの入出力用の伝送線路の1つに半導体素子が接続されている反射型の変調器において、オン/オフ比特性を改善することができる変調器およびそれを用いた高性能な高周波送受信器を提供することができるものとなる。
【0088】
また、本発明によれば、そのような高性能な高周波送受信器を具備するレーダ装置ならびにそのレーダ装置を搭載したレーダ装置搭載車両およびレーダ装置搭載小型船舶を提供することができるものとなる。
【0089】
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を施すことは何等差し支えない。例えば、第1の誘電体線路1から第1の接続部4a,フェライト板4および第2の接続部4bを介して第2の誘電体線路2に透過し、第2の誘電体線路2を通ってPINダイオード5で反射して戻って第2の接続部4b,フェライト板4および第3の接続部4cを介して第3の誘電体線路3に漏洩した高周波信号Waの強度と、第1の誘電体線路1から第1の接続部4a,フェライト板4および第3の接続部4cを介して第3の誘電体線路3に漏洩した高周波信号Wbの強度とが同程度となるように、変調器がオフのときのPINダイオード5の反射係数を調整してもよい。この場合には、第3の誘電体線路3に漏洩する互いに逆位相である2つの高周波信号Wa,Wbが互いに同じ強さとなり、より効果的に互いを打ち消し合うので、さらにオン/オフ比特性が良好なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の変調器の実施の形態の一例を示す模式的な平面図である。
【図2】図1に示す変調器における半導体素子を実装する基板の例を示す模式的な平面図である。
【図3】図1に示す変調器の例におけるオン/オフ比特性の位相差δによる依存性を示す線図である。
【図4】本発明の第1の高周波送受信器の実施の形態の一例を示す模式的なブロック回路図である。
【図5】図4に示す高周波送受信器の模式的な平面図である。
【図6】本発明の第2の高周波送受信器の実施の形態の一例を示す模式的なブロック回路図である。
【図7】図6に示す高周波送受信器の模式的な平面図である。
【図8】非放射性誘電体線路の基本的な構成を示す模式的な部分破断斜視図である。
【図9】従来の変調器の例を示す模式的な平面図である。
【符号の説明】
【0091】
1:第1の誘電体線路
2:第2の誘電体線路
3:第3の誘電体線路
4:フェライト板
4a:第1の接続部
4b:第2の接続部
4c:第3の接続部
5:PINダイオード(半導体素子)
6:基板
7:無反射終端器
8:チョーク型バイアス供給線路
8a:幅の広い線路
8b:幅の狭い線路
8c:接続用導体
11:高周波発振器
12:分岐器
12a:入力端
12b:一方の出力端
12c:他方の出力端
13:変調器
13a,18a:入力端
13b,18b:出力端
14:サーキュレータ
14a,24a,34a:第1の端子
14b,24b,34b:第2の端子
14c,24c,34c:第3の端子
15:送受信アンテナ
16:ミキサー
17:スイッチ
18:アイソレータ
19:送信アンテナ
20:受信アンテナ
21,31:平板導体
22,32:第1の誘電体線路
23,33:第2の誘電体線路
24,34:フェライト板
25,35:第3の誘電体線路
26,36:第4の誘電体線路
27,37:第5の誘電体線路
28,38a,38b:無反射終端器
39:第6の誘電体線路
40:基板
43:高周波検波用素子(ショットキーバリアダイオード)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号を伝送する第1、第2および第3の伝送線路が磁性体の周縁部に放射状にそれぞれ第1、第2および第3の接続部で接続され、一つの接続部から入力された前記高周波信号を隣接する他の接続部の一方より出力するサーキュレータに、前記第2の接続部に一端が接続された前記第2の伝送線路の他端に半導体素子が接続されてなる変調器において、前記第2の伝送線路に沿った、前記第2の接続部から前記半導体素子までの距離を、前記第2の伝送線路を通って前記半導体素子で反射して戻って前記第3の伝送線路に漏洩した一部の高周波信号をWaとし、前記第1の伝送線路から前記サーキュレータを介して前記第3の伝送線路に漏洩した他の一部の高周波信号をWbとし、これらWaとWbとの中心周波数における位相差をδとしたときに、δ=(2N+1)・π(ただし、Nは整数である。)となるように設定したことを特徴とする変調器。
【請求項2】
前記半導体素子はショットキーバリアダイオードであることを特徴とする請求項1記載の変調器。
【請求項3】
前記半導体素子はPINダイオードであって、前記第2の伝送線路の延長上に前記PINダイオードを挟むように無反射終端器を設けたことを特徴とする請求項1記載の変調器。
【請求項4】
高周波信号を発生する高周波発振器と、この高周波発振器に接続された、前記高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、前記一方の出力端に接続された、この一方の出力端に分岐された高周波信号を変調して送信用高周波信号を出力する請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の変調器と、磁性体の周囲に第1の端子,第2の端子および第3の端子を有し、この順に一つの端子から入力された高周波信号を隣接する次の端子より出力する、前記変調器の出力が前記第1の端子に入力されるサーキュレータと、このサーキュレータの前記第2の端子に接続された送受信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端と前記サーキュレータの前記第3の端子との間に接続された、前記他方の出力端に分岐された高周波信号と前記送受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーとを具備することを特徴とする高周波送受信器。
【請求項5】
高周波信号を発生する高周波発振器と、この高周波発振器に接続された、前記高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、前記一方の出力端に接続された、この一方の出力端に分岐された高周波信号を変調して送信用高周波信号を出力する請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の変調器と、この変調器の出力端に一端が接続された、前記一端側から他端側へ前記送信用高周波信号を透過させるアイソレータと、このアイソレータに接続された送信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端側に接続された受信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端と前記受信アンテナとの間に接続された、前記他方の出力端に分岐された高周波信号と前記受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーとを具備することを特徴とする高周波送受信器。
【請求項6】
請求項4または請求項5記載の高周波送受信器と、この高周波送受信器から出力される前記中間周波信号を処理して探知対象物までの距離情報を検出する距離情報検出器とを具備することを特徴とするレーダ装置。
【請求項7】
請求項6記載のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いることを特徴とするレーダ装置搭載車両。
【請求項8】
請求項6記載のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いることを特徴とするレーダ装置搭載小型船舶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−64401(P2006−64401A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−243902(P2004−243902)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】