説明

変調器、発信機および通信システム

【課題】データの全転送速度を向上させられる変調器、発信機および通信システムを提供する。
【解決手段】AWG13は、白色LED11から放射される白色光Lを、それぞれ異なる波長を有する複数の分光La〜Ldに分光する。また、変調器12は複数の変調手段14a〜14dを備える。変調手段14aは、第1電極層141および第2電極層143に電圧を印加することによって、モスアイ構造層142の材料に変化する電界を生じさせ、その屈折率を変化させて分光Laを変調する。変調手段14b〜14dも同様に分光Lb〜Ldを変調する。変調手段14a〜14dは、それぞれ異なる信号に基づいて、分光La〜Ldを変調する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変調器、発信機および通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、窒化物半導体による短波長のLED素子と蛍光体の組み合わせによる白色LEDが実用化され、白色LEDは今後の照明用光源として期待されている。白色LEDは、従来の照明光源である白熱電球や蛍光灯とは異なり、比較的高速での光の変調が可能であり、この特徴を生かした可視光通信への応用が見込まれている。照明装置からの1〜10Mbpsの可視光通信によって、インターネットをはじめとするオフィス、家庭内の情報通信網を構築することを目指した研究プロジェクトが国内外で活発に推進されている。
【0003】
また、この種の可視光通信用装置として、送信データに基づいて生成された駆動電流信号に基づいて青色光励起型白色LEDを駆動し、可視光信号を受信機に対して出力するものが提案されている。特許文献1には、この可視光通信用装置は、送信データの立ち上がり時に立ち上がりパルスを付加するとともに、送信データの立ち下がり時に立ち下がりパルスを付加して、多階調の駆動電流信号を生成する多階調駆動手段を備えると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−103979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、現在の光ファイバーなどによるブロードバンド通信は、1000Mbpsにも達しており、これと比較すると、従来のLEDや白熱電球の光を用いた構成での転送速度は十分とは言い難い。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、データの全転送速度を向上させられる変調器、発信機および通信システムを提供することにある。なお、本明細書において「全転送速度」とは、単一の発信機による転送速度と、複数の発信機を並列的に動作させる容量との双方を考慮した、全体的なデータの転送速度を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の問題点を解決するため、この発明に係る変調器は、複数の波長を含む光を、異なる波長を有する複数の光に分光する分光手段と、複数の変調手段とを備え、変調手段のそれぞれは、表面に凹部または凸部が周期的に形成された材料を含む構造体と、材料に変化する電界を生じさせ、当該材料の屈折率を変化させる電界調整部とを有し、変調手段のそれぞれは、屈折率の変化によって複数の光のうち1つを変調する。
【0008】
このような構成によれば、電界調整部は屈折率を変化させることにより、屈折率の変化と同じ速度で光量を変化させる。また、各変調手段の電界調整部は、それぞれ異なる分光を並列的に変調する。
【0009】
複数の変調手段において、凹部または凸部が形成される周期はそれぞれ異なってもよい。
複数の変調手段のそれぞれにおいて、凹部または凸部が形成される周期は、その変調手段が変調する光の光学波長より大きく、その変調手段が変調する光のコヒーレント長より小さいものであってもよい。
【0010】
また、この発明に係る発信機は、複数の波長を含む光を放射する光源と、上述の変調器とを備える。
また、この発明に係る通信システムは、上述の発信機と、複数の光を検出する光検出手段を有する受信機とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の変調器、発信機および通信システムは、データの転送速度および転送容量を向上させることにより、データの全転送速度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る通信システムの構成の概略を示す模式図である。
【図2】図1の変調手段の構成の概略を示す模式図である。
【図3】異なる屈折率の界面における光の回折作用を示す説明図であり、(a)は界面にて反射する状態を示し、(b)は界面を通過する状態を示す。
【図4】図2のモスアイ構造層に入射する光の回折作用を示す説明図である。
【図5】図1の受信機の構成の概略を示す模式図である。
【図6】実施の形態2における信号の内容の変化を示す図である。
【図7】図1の変調手段の変形例を示す模式図である。
【図8】図1の変調手段の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は本発明に係る通信システムの構成の概略を示す模式図である。本発明に係る通信システムは、発信機10および受信機20を備える。発信機10には直流電源30が接続され、この直流電源30が発信機10に電源を供給する。
発信機10は、光源としての白色LED11を備える。白色LED11は、複数の波長を含む光として、たとえば白色光Lを放射する。また、発信機10は変調器12を備える。変調器12は、白色LED11が放射する光を、入力される信号(図2〜図4を参照して後述)に基づいて変調する。
【0014】
変調器12は、分光手段としてのAWG(アレイ導波路格子)13を備える。AWG13は、白色LED11から放射される白色光Lを、それぞれ異なる波長を有する複数の光に分光する。図1の例では、分光La〜Ldの4つに分光されている。この例では、分光の波長は分光Laが最も短く、以下、分光Lb、Lc、Ldの順に長くなるものとする。また、本実施形態では説明の便宜上分光の数を4個としているが、理論的に400個まで分光させることが可能である。
【0015】
また、変調器12は、複数の変調手段14を備える。変調手段14のそれぞれは、分光La〜Ldのいずれか1つに対応してこれを変調する。図1では、波長の短い分光に対応するものから順に変調手段14a〜14dとする。また、分光La〜Ldが変調手段14a〜14dによって変調されたものを、それぞれ信号光La’〜Ld’とする。
【0016】
図2は、変調手段14aの構成の概略を示す模式図である。変調手段14aは、第1電極層141と、構造体としてのモスアイ構造層142と、第2電極層143とを含む。これらの層は、分光Laが入射する側から信号光La’が出射する側に向けて、第2電極層143、モスアイ構造層142、第1電極層141の順に積層されている。
【0017】
また、変調手段14aには信号入力用電源145が接続されている。信号入力用電源145の一方の極は第1電極層141に接続され、他方の極は第2電極層143に接続される。信号入力用電源145は、送信すべき信号に基づいて、第1電極層141および第2電極層143の間に印加される電圧を制御する。
【0018】
第1電極層141は、AlNモル分率が0.2以下のn−AlGaN層からなる。尚、第1電極層141は、モスアイ構造層142よりもシート抵抗が小さい材料であれば、他の材料を用いてもよい。
【0019】
モスアイ構造層142は、第1電極層141上に形成され、第2電極層143側へ突出する凸部144が周期的に形成される。本実施形態においては、各凸部144は、平面視にて、中心が正三角形の頂点の位置となるように、所定の周期で仮想の三角格子の交点に整列して形成される。各凸部144の周期は、分光Laの光学波長より大きく、分光Laのコヒーレント長より小さくなっている。尚、ここでいう周期とは、隣接する凸部144における深さのピーク位置の距離をいう。また、光学波長とは、実際の波長を屈折率で除した値を意味する。さらに、コヒーレント長とは、所定のスペクトル幅のフォトン群の個々の波長の違いによって、波の周期的振動が互いに打ち消され、可干渉性が消失するまでの距離に相当する。コヒーレント長lcは、光の波長をλ、当該光の半値幅をΔλとすると、おおよそlc=(λ/Δλ)の関係にある。ここで、各凸部144の周期は、分光Laの光学波長の2倍より大きいことが好ましい。また、各凸部144の周期は、分光Laのコヒーレント長の半分以下であることが好ましい。
【0020】
本実施形態においては、各凸部144の周期は、500nmである。分光Laの波長をたとえば450nmとすると、III族窒化物半導体層の屈折率が2.4であることから、その光学波長は187.5nmである。また、分光Laの半値幅が63nmであるとすると、そのコヒーレント長は3214nmである。すなわち、各凸部144の周期は、分光Laの光学波長の2倍より大きく、かつ、コヒーレント長の半分以下となっている。
【0021】
また、本実施形態においては、各凸部144は、先端に向けて縮径する円錐状に形成される。具体的に、各凸部144は、基端部の直径が200nmであり、深さは250nmとなっている。なお、各凸部144の先端は、尖った形状(たとえば図3)としてもよく、尖っていない形状(たとえば図4のように平坦な形状)としてもよい。また、モスアイ構造層142の表面は、各凸部144の他は平坦となっている。
【0022】
構造体としてのモスアイ構造層142は、ポッケルス効果の大きい材料が好ましい。具体的には、圧電性を有することが好ましく、等方性結晶であることがより好ましい。モスアイ構造層142は、たとえばSiO、AlN、LiNbO、ZnO、ITO等から形成することができ、本実施形態においてはAlNから形成される。各凸部144の形状は、円錐、多角錐等の形状とすることができる。本実施形態においては、周期的に配置される各凸部144により、光の回折作用を得ることができる。
【0023】
第2電極層143は、モスアイ構造層142の表面に沿って形成される。本実施形態においては、第2電極層143は、AlNモル分率が0.2以下のn−AIGaN層からなる。尚、第2電極層143は、モスアイ構造層142よりもシート抵抗が小さい材料であれば、他の材料を用いてもよい。
【0024】
ここで、図3(a)に示すように、ブラッグの回折条件から、モスアイ構造層142の界面にて光が反射する場合において、入射角θinに対して反射角θrefが満たすべき条件は、
d・n1・(sinθin−sinθref)=m・λ・・・(1)
である。ここで、n1は入射側の媒質の屈折率、λは入射する光の波長、mは整数である。本実施形態では、n1は、空気の屈折率となる。
【0025】
一方、図3(b)に示すように、ブラッグの回折条件から、モスアイ構造層142の界面にて光が透過する場合において、入射角θinに対して透過角θoutが満たすべき条件は、
d・(n1・sinθin−n2・sinθout)=m’・λ・・・(2)
である。ここで、n2は出射側の媒質の屈折率であり、m’は整数である。本実施形態では、n2は、モスアイ構造層142の屈折率となる。すなわち、モスアイ構造層142の屈折率が変化すると、光の透過条件が変化する。
【0026】
上記(1)式及び(2)式の回折条件を満たす反射角θref及び透過角θoutが存在するためには、各凸部144の周期は、素子内部の光学波長である(λ/n1)や(λ/n2)よりも大きくなければならない。一般的に知られているモスアイ構造は、周期が(λ/n1)や(λ/n2)よりも小さく設定されており、回折光は存在しない。そして、各凸部144の周期は、光が波としての性質を維持できるコヒーレント長より小さくなければならず、コヒーレント長の半分以下とすることが好ましい。コヒーレント長の半分以下とすることにより、回折による反射光及び透過光の強度を確保することができる。
【0027】
図4に示すように、モスアイ構造層142へ入射角θinで入射する光は、上記(1)式を満たす反射角θrefで反射するとともに、上記(2)式を満たす透過角θoutで透過する。ここで、全反射臨界角以上の入射角θinでは、強い反射光強度となる。
なお図3および図4ではθout>θinとなっているが、これらの大小関係は上記(2)式から明らかなように屈折率n1およびn2に応じて変動する。
【0028】
そして、第1電極層141および第2電極層143に電圧を印可して、モスアイ構造層142に電界を生じさせると、モスアイ構造層142の材料の屈折率が変化する。本実施形態においては、モスアイ構造層142は、圧電性を有することから、ポッケルス効果を利用して効率よく屈折率を変化させることができる。モスアイ構造層142の屈折率が変化すると、上記(2)式のn2が変化して回折の透過条件が変化する。これにより、第1電極層141の電位を変化させて、信号光La’の光量を変化させることができる。
すなわち、第1電極層141は屈折率変調用電極として機能する。また、第1電極層141および第2電極層143は、モスアイ構造層142の材料の屈折率を変化させる電界調整部として機能する。
【0029】
従って、モスアイ構造層142にて生じる電界に応じて光を変調させることができ、白色LED11による発光のオン/オフを制御して変調する従来の方式よりも、格段に変調速度を向上させることができる。
【0030】
また、モスアイ構造層142を、モスアイ構造層142よりもシート抵抗の小さな一対の層で挟むようにしたので、モスアイ構造層142に確実に電界を生じさせることができる。
【0031】
図2〜図4では変調手段14aの構成のみを示すが、変調手段14b〜14bの構成も同様である。ただし、上述のように変調手段14a〜14dはそれぞれ異なる波長を有する分光La〜Ldを変調するので、構成のうち波長に依存する寸法はそれぞれ異なる。当業者は、上述の変調手段14aの構成に関する説明に基づき、変調すべき光の波長に応じて必要な変更を施して、他の変調手段14b〜14dを設計することができる。たとえば、変調手段14bにおけるモスアイ構造層の凸部が形成される周期は、変調手段14aのように500nmではなく、分光Lbの光学波長やコヒーレント長等に基づいて最適な値に決定される。たとえば図1に概略的に示すように、モスアイ構造層の凸部が形成される周期は変調手段ごとに異なり、変調手段14aが最も小さく、以下、変調手段14b、14c、14dの順に大きくなる。
このように、変調手段14a〜14dは、それぞれに含まれるモスアイ構造層の材料の屈折率を変化させることにより、複数の分光La〜Lbのうち対応する1つを変調する。
【0032】
変調手段14a〜14dは、それぞれ異なる信号に基づいて、対応する分光を変調する。すなわち、光の各波長にそれぞれ異なる情報を持たせることができる。変調手段14a〜14dは同時に動作することが可能なので、4種類の信号に基づいて分光La〜Ldを並列的に変調し送信することができ、信号の転送容量を増加させることができる。
【0033】
図5は、受信機20の構成の概略を示す模式図である。受信機20は、複数の光学フィルタ21および複数の光検出手段22を備える。光学フィルタ21および光検出手段22は信号光La’〜Ld’に対応して設けられる。たとえば、光学フィルタ21aは、信号光La’に対応する波長の光を透過させ、光検出手段22aは、信号光La’に対応する波長の光を検出する。
【0034】
光検出手段22a〜22dは、変調手段14の変調速度に対応できる動作速度を持つフォトトランジスタ、フォトダイオード、フォトIC、等によって構成することができる。たとえば、CCDカメラにおいて、受光素子ごと(または受光素子のグループごと)に異なる波長に対応する光学フィルタを設ければよい。なお、光学フィルタ21a〜21dはそれぞれ光検出手段22a〜22dと同一のチップ内に配置されてもよく、またチップ外に配置されてもよい。
【0035】
このように、受信機20は、それぞれ異なる波長を有する信号光La’〜Ld’を波長に基づいて分光し検出するので、信号光La’〜Ld’が空間的に重なる場合であってもこれらを区別して受信することができる。すなわち、発信機10と受信機20との距離が大きく、受信機20の解像度(空間分解能)では各変調手段14を個別に認識できない場合であっても、信号光La’〜Ld’をスペクトル上で分解し、これらを区別して受信することができる。
【0036】
以上説明するように、本実施形態に係る発信機10および受信機20によれば、モスアイ構造層142に生じる電界を用いて高速な変調を行うことができるので、データの転送速度を向上させることができる。また、複数の波長を用いて並列的に信号を変調し送信するので、データの転送容量を向上させることができる。したがって、転送速度および転送容量の向上により、可視光通信における全転送速度を向上させることができる。
【0037】
また、白色LED11を光源として用いるので、室内照明用の光源を情報転送用にも転用または兼用することができる。
【0038】
実施の形態2.
実施の形態2は、実施の形態1において、信号光La’〜Ld’のうち一部をダミーとするとともに、実信号に対応する信号光を時間とともに変更するものである。このような実施形態は、たとえば暗号通信において有用である。
【0039】
図6は、実施の形態2に係る通信システムにおける信号の内容の変化を示す。
期間1において、変調手段14aおよび14bは送信すべき実信号に基づいて変調を行い、変調手段14cおよび14dは実信号と関連のないダミー信号に基づいて変調を行う。すなわち、信号光La’およびLb’が実信号を表し、信号光Lc’およびLd’がダミー信号を表すことになる。図6では実信号を実線で表し、ダミー信号を破線で表している。
【0040】
次に、時間が経過して期間1が終了したとする。期間が切り替わると(この例では期間2が開始されると)、実信号を用いる変調手段と、ダミー信号を用いる変調手段の一部または全部が入れ替わる。図6の期間2の例では、期間1とは異なり、信号光La’およびLd’が実信号を表し、信号光Lb’およびLc’がダミー信号を表すことになる。
同様に、期間2が終了すると、続く期間3において、信号光Lb’およびLc’が実信号を表し、信号光La’およびLd’がダミー信号を表す。
【0041】
なお、図示しないが、実施の形態2においては、各波長のうちいずれが実信号を表し、いずれがダミー信号を表すかという情報は、受信側の機器(たとえば受信機または復調器)になんらかの方法で伝達され、またはあらかじめ記憶されている。したがって、受信側では各波長のうち実信号を表すもののみを選択し、これらを用いて元の信号を復元することができる。
【0042】
このように、実施の形態2に係る通信システムによれば、実信号を表す信号光の周波数が時間とともに変動する。このため、信号光La’〜Ld’が傍受または盗聴されたとしても、これらのうちいずれが実信号でいずれがダミー信号かについて秘匿されていれば、元の信号を復元するのは困難である。したがって、通信の秘匿性を高めることができる。なお、図6では変調手段は4個であるが、実際には上述のように400個の変調手段を設けることが可能であり、秘匿性の高い通信方式を実現することができる。
【0043】
上述の実施の形態2において、実信号とダミー信号との切り替え方式は、周知の暗号通信用プロトコルを用いて適宜設計することができる。実施の形態2では各期間において実信号に対応する変調手段は2個であるが、これは異なる数であってもよく、また、すべての変調手段が実信号を送信する期間があってもよく、すべての変調手段がダミー信号を送信する期間があってもよい。
【0044】
また、上述の実施の形態1および2においては、モスアイ構造層142をAlNから形成したものを示したが、たとえば図7に示すように、n型GaN層142bとAlN層142aを交互に積層して形成してもよい。この場合、各AlN層142aに生じる電界が強くなるため、モスアイ構造層142の屈折率変化を大きくすることができる。尚、光の変調には、ポッケルス効果を利用してモスアイ構造層142の屈折率を変えることが好ましいが、ポッケルス効果より屈折率の変化量は小さいものの、カー効果を利用して屈折率を変えることもできる。
【0045】
また、実施の形態1および2では、図2に示すようにモスアイ構造層142の凸部144は入射側に凸となる向きであるが、これは逆向きに形成されてもよい。このような構成の例を図8に示す。図8の変調手段24は、第1電極層241と、構造体としてのモスアイ構造層242と、第2電極層243とを含む。これらの層は、分光L2が入射する側から信号光L2’が出射する側に向けて、第1電極層241、モスアイ構造層242、第2電極層243の順に積層されている。ここで、モスアイ構造層242の凸部244は、信号光L2’が出射する側に凸となる向きに形成される。また、変調手段24には信号入力用電源245が接続されている。
【0046】
また、実施の形態1および2では、モスアイ構造層142に周期的に凸部144が形成されたものを示したが、周期的に凹部を形成してもよい。また、たとえば、凸部又は凹部を角柱状とし、所定の周期で仮想の正方格子の交点に整列して形成してもよい。さらに、凸部又は凹部を三角錐状、四角錐状のような先端に向けて縮径する多角錐状としてもよく、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【0047】
また、実施の形態1および2では変調手段14a〜14dがそれぞれ異なる情報に基づいて変調を行うが、複数の変調手段が同じ情報に基づいて変調を行ってもよい。この場合は送信される情報の冗長度を向上させ、伝送エラーを抑制することができる。
【0048】
また、実施の形態1および2では光源として白色LED11を用いたが、光源は複数の波長を含む光を放射するものであれば他の構成を用いてもよい。たとえば、分光可能な程度のスペクトル幅を持つ単色のLEDを用いてもよい。また、白熱電球や蛍光灯を用いてもよい。これらは室内照明用のものを光源として転用または兼用してもよい。
【0049】
また、実施の形態1および2では、モスアイ構造層142の凸部144に噛み合う媒質は空気であるが、これは空気でなくとも良く、他の媒質の層が設けられても良い。たとえば白色LEDを構成するLEDチップをエポキシ樹脂でドーム状に封止してもよい。この場合には、図3における入射側の媒質の屈折率n1はエポキシ樹脂の屈折率となる。
【符号の説明】
【0050】
10 発信機、12 変調器、11 白色LED(光源)、14(14a〜14d),24 変調手段、20 受信機、21(21a〜21d) 光学フィルタ、22(22a〜22d) 光検出手段、30 直流電源、141,241 第1電極層(電界調整部)、142,242 モスアイ構造層(構造体)、142b n型GaN層、142a AlN層、143,243 第2電極層(電界調整部)、144,244 凸部、145,245 信号入力用電源、
L 白色光(複数の波長を含む光)、La〜Ld,L2 分光(異なる波長を有する複数の光)、La’〜Ld’,L2’ 信号光、 θin 入射角、θout 透過角、θref 反射角。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の波長を含む光を、異なる波長を有する複数の光に分光する分光手段と、
複数の変調手段と
を備え、
前記変調手段のそれぞれは、
表面に凹部または凸部が周期的に形成された材料を含む構造体と、
前記材料に変化する電界を生じさせ、当該材料の屈折率を変化させる電界調整部と
を有し、
前記変調手段のそれぞれは、前記屈折率の変化によって前記複数の光のうち1つを変調する
変調器。
【請求項2】
前記複数の変調手段において、前記凹部または凸部が形成される周期はそれぞれ異なる、請求項1に記載の変調器。
【請求項3】
前記複数の変調手段のそれぞれにおいて、前記凹部または凸部が形成される周期は、その変調手段が変調する光の光学波長より大きく、その変調手段が変調する光のコヒーレント長より小さい、請求項1または2に記載の変調器。
【請求項4】
複数の波長を含む前記光を放射する光源と、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の変調器と
を備える、発信機。
【請求項5】
請求項4に記載の発信機と、
前記複数の光を検出する光検出手段を有する受信機と
を備える通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−137541(P2012−137541A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288391(P2010−288391)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(599002043)学校法人 名城大学 (142)
【Fターム(参考)】