説明

変調方式変換器、中継器、及び変調方式の変換方法

【課題】 簡易な構成で、2相位相変調方式で変調された光信号を4相位相変調方式に基づき変調された光信号に変換できる変調方式変換器を提供する。
【解決手段】 変調方式変換器は、2相位相変調方式で変調された入力光信号を4相位相変調方式で変調された出力光信号に変換する変調方式変換器であって、前記入力光信号を1ビットシフトするビットシフト手段と、前記入力光信号の位相をπ/2回転させる位相シフト手段と、前記入力光信号の最大振幅と、前記入力光信号が前記ビットシフト手段により1ビットシフトされ、前記位相シフト手段により位相をπ/2回転されたシフト信号の最大振幅とをそろえる振幅調整手段と、前記振幅調整手段により最大振幅がそろえられた前記入力光信号及び前記シフト信号を合波し、前記出力光信号を生成する合波手段と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信における変調方式変換器、中継器、及び変調方式の変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光信号を用いた光通信ネットワーク内での通信には、光信号の位相を変調した位相変調が用いられることが多い。位相変調には、「0」又は「1」であらわされる1ビットデータに対して「θ」又は「θ+π」を割り当てて光信号を変調する2相位相変調方式や、「00」、「01」、「10」、または「11」であらわされる2ビットデータに対して、「φ」、「φ+π/2」、「φ+π」、又は「φ−π/2」を割り当てて光信号を変調する4相位相変調方式がある(θ、φは任意の角度)。
【0003】
近年、光通信システムが発達してきており、地域ごとに多くの光通信ネットワークが構築されている。このように多くの光通信ネットワークが構築されると、光信号の位相変調方式の共通化は困難であり、各光通信ネットワークによって光信号の位相変調方式が異なる状態が生じる。位相変調方式が互いに異なる光通信ネットワーク間で光通信を行う場合、位相変調方式を変換する必要がある。例えば、第1光通信ネットワークでは光信号を2相位相変調方式で変調しており、第2光通信ネットワークでは光信号を4相位相変調方式で変調している場合を考える。第1光通信ネットワークに属するユーザから第2光通信ネットワークに属するユーザに光信号を伝送すると、第1光通信ネットワークと第2光通信ネットワークとの間で2相位相変調方式に基づき変調された光信号を4相位相変調方式に基づき変調された光信号に変換する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−7881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
2相位相変調方式に基づき変調された光信号を4相位相変調方式に基づき変調された光信号に変換する方法として、例えば2相位相変調方式に基づき変調された光信号を電気信号に復調し、復調した電気信号をさらに4相位相変調方式で変調することで、4相位相変調方式に基づき変調された光信号を得る方法が考えられる。
【0006】
しかしながら、2相位相変調の光信号を一度電気信号に復調し、4相位相変調の光信号を得る方法では、2相位相変調の光信号を復調する復調器と電気信号を4相位相変調方式で変調する変調器とが必要となり、回路規模が大きくなるという問題がある。
【0007】
本開示は、上述の点を鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、2相位相変調方式で変調された光信号を4相位相変調方式に基づき変調された光信号に変換できる変調方式変換器、中継器、及び変調方式の変換方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る変調方式変換器は、2相位相変調方式で変調された入力光信号を4相位相変調方式で変調された出力光信号に変換する変調方式変換器であって、前記入力光信号を1ビットシフトするビットシフト手段と、前記入力光信号の位相をπ/2回転させる位相シフト手段と、前記入力光信号の最大振幅と、前記入力光信号が前記ビットシフト手段により1ビットシフトされ、前記位相シフト手段により位相をπ/2回転されたシフト信号の最大振幅とをそろえる振幅調整手段と、前記振幅調整手段により最大振幅がそろえられた前記入力光信号及び前記シフト信号を合波し、前記出力光信号を生成する合波手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る中継器は、2相位相変調方式で変調された第1光信号を用いて通信を行う第1光ネットワークと、4相位相変調方式で変換された第2光信号を用いて通信を行う第2光ネットワークとの間を中継する中継器であって、前記第1光信号を受信し、入力光信号を生成する受信器と、前記入力信号を4相位相変調方式で変調された出力光信号に変換する変調方式変換器と、前記出力光信号を前記第2光信号として送信する送信器と、を備え、前記変調方式変換器は、前記入力光信号を1ビットシフトするビットシフト手段と、前記入力光信号の位相をπ/2回転させる位相シフト手段と、前記入力光信号の最大振幅と、前記入力光信号が前記ビットシフト手段により1ビットシフトされ、前記位相シフト手段により位相をπ/2回転されたシフト信号の最大振幅とをそろえる振幅調整手段と、前記振幅調整手段により最大振幅がそろえられた前記入力光信号及び前記シフト信号を合波し、前記出力光信号を生成する合波手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る変調方式の変換方法は、2相位相変調方式で変調された入力光信号を4相位相変調方式で変調された出力光信号に変換する変調方式の変換方法であって、前記入力光信号を1ビットシフトするビットシフトステップと、前記入力光信号の位相をπ/2回転させる位相シフトステップと、前記入力光信号の最大振幅と、前記入力光信号が前記ビットシフトステップにより1ビットシフトされ、前記位相シフトステップにより位相をπ/2回転されたシフト信号の最大振幅とをそろえる振幅調整ステップと、前記振幅調整ステップにより最大振幅がそろえられた前記入力光信号及び前記シフト信号を合波し、前記出力光信号を生成する合波ステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡易な構成で、2相位相変調方式で変調された光信号を4相位相変調方式に基づき変調された光信号に変換できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光通信ネットワークを示す図。
【図2】本発明の第1実施形態に係る中継器を示す図。
【図3】本発明の第1実施形態に係る変調方式変換器を示す図。
【図4】本発明の第1実施形態に係る2相光信号を示す図。
【図5】本発明の第1実施形態に係る4相光信号を示す図。
【図6】本発明の第1実施形態に係る変調方式の変換方法を説明する図。
【図7】本発明の第1実施形態に係る調整信号と第2の光信号の位相関係を示す図。
【図8】本発明の第1実施形態に係る4相光信号の一例を示す図。
【図9】本発明の第1実施形態に係る送信信号を示す図。
【図10】本発明の第1実施形態に係る調整信号と第2の光信号の位相関係を示す図。
【図11】本発明の第1実施形態に係る変調方式変換器を示す図。
【図12】本発明の第2実施形態に係る中継器を示す図。
【図13】本発明の第3実施形態に係る中継器を示す図。
【図14】本発明の第3実施形態に係る遅延線干渉計を示す図。
【図15】本発明の第3実施形態に係る遅延線干渉計の伝達関数を示す図。
【図16】本発明の第3実施形態に係る中継器の実験結果を示す図。
【図17】本発明の第1実施形態に係る調整信号と第2の光信号の位相関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る光通信ネットワークを示す図である。本実施形態の光通信ネットワークには、2相位相変調方式で変調された光信号を用いて光通信を行う第1光通信ネットワーク1と、4相位相変調方式で変調された光信号を用いて光通信を行う第2光通信ネットワーク2とが存在し、第1光通信ネットワーク1と第2光通信ネットワーク2との間で中継器100を介して光通信を行う。
【0014】
中継器100は、2相位相変調方式で変調された光信号を、4相位相変調方式で変調された光信号に変調することで、第1光通信ネットワーク1の光信号を第2光通信ネットワーク2に中継する。中継器100は、第1光通信ネットワーク1に属してもよく、また第2光通信ネットワーク2に属してもよい。あるいは第1、第2光通信ネットワーク1,2とは独立して中継器100を設けてもよい。
【0015】
次に、図2を用いて中継器100の詳細を説明する。中継器100は、2相変調方式で変調された光信号を第1光通信ネットワーク1から受信する受信器110と、受信した光信号を4相変調方式で変調された光信号に変換する変調方式変換器120と、4相変調方式で変調された光信号を第2光通信ネットワーク2に送信する送信器130とを有する。
【0016】
受信器110は、図示しないが例えば第1光通信ネットワーク1から送信された光信号を受信する受光部や、受信した光信号を増幅する増幅部、受信した光信号の帯域外信号を遮断するバンドパスフィルタなどを備えている。受信器110は、受信した光信号に、増幅やフィルタ処理等の信号処理を施し、変調方式変換器120に信号処理を施した光信号を渡す。
【0017】
変調方式変換器120は、受信器110から受け取った2相位相変調方式で変調された光信号(以下、2相光信号と称する。)を、4相位相変調方式で変調された光信号(以下、4相光信号と称する。)に変換する。変調方式変換器120の詳細については後述する。
【0018】
送信器130は、図示しないが例えば、変調方式変換器120が変換した4相光信号の帯域外信号を遮断するバンドパスフィルタや、4相光信号を増幅する増幅部等を備えている。送信器130は、4相光信号にフィルタ処理や増幅等の信号処理を施し、第2光通信ネットワーク2に信号処理を施した4相光信号を送信する。
【0019】
続いて変調方式変換器120の詳細について説明する。変調方式変換器120は、2相光信号を4相光信号に変換する。変調方式変換器120は、2相光信号と、この2相光信号の1ビット後の光信号の位相を−π/2回転させた光信号とを合波することで、4相光信号を得る。
【0020】
図3に示すように、変調方式変換器120は、2相光信号を2つに分波する分波器121と、分波した光信号の一方を位相やビットをシフトするシフト器122と、分波した光信号のうちシフト器122を通過した光信号と通過していない光信号とを合波する合波器123と、合波器123が合波した信号から2相光信号が有するビット情報と同じ情報を有する信号を抽出する信号抽出器127を備える。
【0021】
分波器121は、2相光信号を2つに分波し、第1の光信号と、第2の光信号とを生成する。分波器121は、第1の光信号をシフト器122に、第2の光信号を合波器123に渡す。
【0022】
シフト器122は、第1の光信号の位相をシフトする位相シフト器124と、第1の光信号を1ビットシフトするビットシフト器125と、第1の光信号の振幅を調整する振幅調整器126とを備える。
位相シフト器124は、第1の光信号の位相を−π/2回転させる。ビットシフト器125は、第1の光信号を1ビットに相当する期間(以下、1ビット周期と称する。)だけ遅延させることで、第1の光信号を1ビットシフトさせる。振幅調整器126は、第1の光信号の最大振幅が第2の光信号の最大振幅と略同じになるよう、第1の光信号の最大振幅を調整する。
シフト器122は、位相シフト、ビットシフト、及び振幅調整をした第1の光信号を合波器123に渡す。
【0023】
合波器123は、シフト器122から受け取った第1の光信号と、分波器121から受け取った第2の光信号とを合波することで4相光信号を生成する。信号抽出器127は、2相光信号が有するビット情報と同じ情報を有する信号を4相光信号から抽出し、送信光信号を生成する。
【0024】
図4を用いて、変調方式変換器120によって2相光信号を4相光信号に変換する原理について説明する。
変調方式変換器120に入力される2相光信号は、図4(a)に示すように、一定の1ビット周期毎に搬送波に「0」又は「1」の1ビット情報を割り当てた信号である。具体的には、図4(b)に示すように、「0」の情報を送る場合は搬送波の位相を「0」に、「1」の情報を送る場合は「π」に変調することで、搬送波に「0」、「1」の情報を重畳する。
【0025】
図4(a)の例では、先頭の1ビット目から順に「0,1,0,0,・・・」の信号を2相位相変調方式で変調すること得られる2相光信号の位相は、1ビット周期毎に「0,π,0,0,・・・」となる。
【0026】
変調方式変換器120によって変換される4相光信号は、図5(a)に示すように、第2光信号と同じ1ビット周期毎に搬送波に「00」、「01」、「10」又は「11」の2ビット情報を割り当てた信号である。具体的には、図5(b)に示すように、「00」の情報を送る場合は搬送波の位相を「−π/4」に、「01」の情報を送る場合は「π/4」に、「11」の情報を送る場合は「3π/4」に、「10」の情報を送る場合は「−3π/4」に変調することで、搬送波に1ビット周期毎に2ビットの情報を重畳する。
【0027】
図5(a)の例では、先頭の1ビット目から順に「01,10,01,00,・・・」の信号を4相位相変調方式で変調することで得られる4相光信号の位相は、1ビット周期毎に「π/4,−3π/4,π/4,−π/4,・・・」となる。
【0028】
変調方式変換器120に入力された2相光信号は、図3の分波器121によって第1の光信号と第2の光信号とに分波される。図6に分波器121によって分波された第1の光信号S10と第2の光信号S20とを示す。図6(a)は、第1の光信号S10を示す図であり、図6(b)は、第2の光信号S20を示す図である。分波した第1の光信号S10と第2の光信号S20は、分波前の2相光信号と最大振幅が異なるが、それ以外の位相や1ビット周期等は2相光信号と同じ信号となる。
【0029】
第1の光信号S10は、分波器121からシフト器122へと入力される。シフト器122に入力された第1の光信号S10は、まず位相シフト器124に入力される。図6(d)に示すように、位相シフト器124は、第1の光信号S10の位相を−π/2回転し、図6(c)に示す位相回転信号S21を生成する。図6(d)に示すように、位相シフト器124は、第1の光信号S10の位相が「0」の場合、この位相「0」を−π/2回転し、位相が「−π/2」の位相回転信号S11を生成する。位相シフト器124は、第1の光信号S10の位相が「π」の場合、この位相「π」を−π/2回転し、位相が「π/2」の位相回転信号S11を生成する。
【0030】
図6(a)に示すように、第1の光信号S10の位相が1ビット目から順に「0,π,0,0,・・・」の場合、位相シフト器124は、第1の光信号S10の位相を回転し、1ビット目から順に「−π/2,π/2,−π/2,−π/2,・・・」の位相を有する位相回転信号S11を生成する。
【0031】
位相回転信号S11は、位相シフト器124から1ビットシフト器125へと入力される。1ビットシフト器125は、例えば1ビット周期だけ位相回転信号S11を遅延させる遅延器である。1ビットシフト器125は、位相回転信号S11を1ビット遅延させ遅延信号S12を生成する。図6(e)に示す例では、1ビットシフト器125は、図6(c)に示す位相回転信号S11を1ビットシフトし、1ビット目が振幅、位相ともにゼロであり、2ビット目から順に「−π/2,π/2,−π/2,−π/2,・・・」の位相を有する遅延信号(シフト信号)S12を生成する。遅延信号S12は、振幅調整器126へと入力される。
【0032】
振幅調整器126は、遅延信号S12の最大振幅を調整し、調整信号S13を生成する。振幅調整器126は、遅延信号S12の最大振幅と第2の光信号S20の最大振幅とが略等しくなるように、遅延信号S12の振幅を調整する。
【0033】
このように、シフト器122は、第1の光信号S10から調整信号S13を生成する。
調整信号S13及び第2の光信号S20は、合波器123にそれぞれ入力され、合波されて4相光信号となる。以下、調整信号S13及び第2の光信号S20を合波すると4相光信号となる原理について説明する。
【0034】
図7は、調整信号S13の位相と第2の光信号S20の位相をI−Q平面にマッピングした図である。図7の点線で示すように、第2の光信号S20は、I−Q平面のI軸上にマッピングされた2相位相変調方式で変調された信号である。調整信号S13は、位相シフト器124で第1の光信号S10の位相を−π/2回転した信号であるため、図7の一点鎖線で示すように、I−Q平面のQ軸上にマッピングされた2相位相変調方式で変調された信号である。また、振幅調整器126で第2の光信号S20の最大振幅と、調整信号S13の最大振幅が略等しくなるよう調整しているため、原点から各マッピングされる点までの距離も略等しくなる。従って、合波器123で第2の光信号S20と調整信号S13とを合波することで、図5に示すように4相位相変調方式で変調された信号である4相光信号が得られる。
【0035】
具体的に、図8に、図6(b)に示す第2の光信号S20と、図6(e)に示す調整信号S13とを合波した4相光信号S30を示す。第2の光信号S20は、1ビット目から順に「0,1,0,0,1,・・・」の情報を有する、すなわち、信号の位相が1ビット目から順に「0,π,0,0,π,・・・」となっている。調整信号S13は、1ビット目から順に「0,1,0,0,1,・・・」の情報を有する第1の光信号の位相等を調整したもので、信号の位相が2ビット目から順に「−π/2,π/2,−π/2,−π/2,・・・」となっている。また、第2の光信号S20及び調整信号S13の最大振幅をAとする。
【0036】
この場合、調整信号S13の1ビット目が振幅、位相共にゼロの信号のため、4相光信号S30の1ビット目は、第2の光信号S20の1ビット目と同じ信号、すなわち振幅がAで位相が「0」の信号となる。第2の光信号S20の2ビット目は、振幅A、位相「π」の信号であり、調整信号S13の2ビット目は、振幅A、位相「−π/2」の信号であるため、4相光信号の2ビット目は、振幅が「√2A」、位相が「−3π/4」の信号となる。4相光信号の3ビット目以降は、振幅が「√2A」、位相が順に、「π/4,−π/4,−3π/4,・・・」となる。この信号は、2ビット目から順に「10,00,01,10,・・・」の情報を有する信号を図5(b)に示す4相位相変調方式で変調した信号と等しくなる。
【0037】
このように、第1の光信号S10を1ビットシフトし、位相を回転した調整信号S13と、第2の光信号S20とを合波器123で合波することで、4相光信号S30が得られる。図8に示すように、この4相光信号の2ビット目には、第1の光信号S10の2ビット目の情報と第2の光信号S20の1ビット目の情報が重畳されている。また、4相光信号の3ビット目には、第1の光信号S10の3ビット目の情報と第2の光信号S20の2ビット目の情報が重畳されている。第1の光信号S10と第2の光信号S20に重畳されている情報は同じ情報であるため、4相光信号の2ビット目と3ビット目には、同じ情報(第1の光信号S10、第2の光信号S20の2ビット目の情報)が重複して重畳されていることになる。
【0038】
信号抽出器127は、4相光信号S30から重複している信号の一部を抽出し、送信信号を生成する。具体的には、4相光信号S30の偶数ビット目の信号を抽出することで、図9に示すように、同じ情報が重複してない送信信号S40を生成する。
【0039】
シフト器122に入力される2相光信号と、シフト器122から出力される4相光信号との関係を以下に説明する。
2相光信号をEin_m(mは、2相光信号の先頭からのビット数)、4相光信号S30をEout_m(mは、4相光信号の先頭からのビット数)とすると、シフト器122の伝達関数はEout_m=Ein_m−i×Ein_m+1となる。なおiは、虚数単位である。また、2相光信号の位相と4相光信号の位相との関係を図10に示す。このように、mビット目の2相光信号Ein_mに、m+1ビット目の2相光信号Ein_m+1を−π/2回転させた信号(−i×Ein_m+1)を合波することで、4相光信号Eout_mが得られる。
【0040】
なお、単純に2相光信号Ein_mに、m+1ビット目の2相光信号Ein_m+1を−π/2回転させた信号(−i×Ein_m+1)を合波すると、4相光信号Eout_mの振幅は2相光信号Ein_m−iの√2倍となってしまう。4相光信号の振幅を2相光信号の振幅と同じにするためには、シフト器122に減衰器等を設けて4相光信号の振幅を(1/√2)倍に減衰させてもよい。あるいは、分波器121で2相光信号を分波する場合に、第2の光信号の振幅が2相光信号の振幅の(1/√2)倍となるように分波し、第1の光信号の振幅を振幅調整器126で2相光信号の振幅の(1/√2)倍、すなわち第2の光信号と同じになるように調整してもよい。
【0041】
上述した中継器100では、第1の光信号に対して位相、振幅の調整及びビットシフトを行うようにしているが、2相光信号に、この2相光信号に対して1ビット遅延、かつ位相が90度ずれた信号を合波すればよく、第2の光信号に対して位相、振幅の調整及びビットシフトを行うようにしてもよい。
【0042】
例えば、図11に示す変調方式変換器120aのように、第1の光信号及び第2の光信号の最大振幅が略等しくなるように、振幅調整器126aによって第2の光信号の振幅を調整するようにしてもよい。
【0043】
以上のように、本実施形態に係る中継器100は、位相シフト器やビットシフト器等の簡易な構成で2相光信号を4相光信号に変換することができる。位相シフト器やビットシフト器等、変調方式変換器120の各構成は、非線形光学効果を用いずに単純な光回路構成のみで構成することが可能である。
【0044】
(第2実施形態)
次に、図12を用いて信号抽出器の一例を説明する。図12は、第2実施形態に係る中継器200を示す図である。中継器200は、同期検出器240を有しており、中継器200の変調方式変換器220は、信号抽出器227を有している。それ以外の構成及び動作は、図2に示す中継器100と同じであるため、同一符号を付し説明を省略する。
【0045】
同期検出器240は、例えば中継器200に入力される2相光信号に含まれる同期信号を、パターンマッチング等により検出することで、2相光信号の同期検出を行う。同期検出器240は、2相光信号に含まれるビット列の先頭ビットと、1ビット周期を検出し、検出結果を信号抽出器227に渡す。
【0046】
信号抽出器227は、同期検出器240から受け取った先頭ビット及び1ビット周期の情報に基づき、4相光信号から情報が重複している信号の一部を抽出する。本実施形態でも、第1実施形態と同様に4相光信号から偶数ビット目の信号を抽出するものとする。この場合、信号抽出器227は、同期検出器240が検出した先頭ビットから1ビット周期間の信号をカットする。同様に信号抽出器227は、先頭ビットから1ビット周期×k(kは偶数)経過後の4相光信号を1ビット周期間だけカットする。信号抽出器227は、カット後の4相光信号を送信器130に渡す。
【0047】
以上のように、本実施形態に係る中継器200は、同期検出器240が検出した先頭ビット及び1ビット周期の情報に基づき、信号抽出器227が4相光信号から情報が重複する信号をカットする。これにより、フィルタ等を用いて信号抽出を行う場合に比べ、精度良く信号抽出を行うことができる。
【0048】
(第3実施形態)
次に、図13を用いて第3実施形態に係る中継器300を説明する。本実施形態に係る中継器300の変調方式変換器320は、第1実施形態の分波器121、シフト器122及び合波器123の機能を遅延線干渉計(delay line interferometer:DLI)321で実現している点で第1実施形態と異なる。それ以外の構成及び動作は第1実施形態に係る中継器100と同じである。
【0049】
一般に遅延線干渉計321は、差動2相位相変調方式で変調された光信号を復調する復調器の一部として利用される。ここでは、まず、遅延線干渉計321を復調器の一部として利用する場合の例について説明する。
【0050】
差動2相位相変調方式は、1ビット前に送信する光信号の位相を基準に、次に送信する光信号の位相を決定する変調方式である。1ビット前の光信号の位相を基準とすることで、基準信号を用いなくとも光信号の位相を識別できる。具体的には、1ビット前の送信信号と、送信するデータとの排他的論理和を算出し、算出結果に基づき搬送波の位相を変調することで、送信するデータを差動2相位相変調方式で変調し、差動2相光信号を生成する。
【0051】
遅延線干渉計321を用いた復調器は、この差動2相光信号を復調し、データを得る。
図14に遅延線干渉計321の一例を示す。図14に示す遅延線干渉計321は、1つの入力端子I1と2つの出力端子O1、O2とを有する。入力端子I1には、2相光信号Ein(t)が入力される。遅延線干渉計321は、出力端子O1から、第1の出力信号Eout1(t)=Ein(t)+Ein(t+T)を出力する。Tは、2相光信号Ein(t)の1ビット周期である。また遅延線干渉計321は、出力端子O2から、第2の出力信号Eout2(t)=Ein(t)−Ein(t+T)を出力する。
【0052】
従って、入力信号Ein(t)と1ビット遅延した入力信号Ein(t+T)との位相差がゼロ、すなわち、連続するビットの位相が同じ場合、出力端子O1からは、入力信号Ein(t)とEin(t+T)との加算信号が第1の出力信号として出力される。出力端子O2からは、入力信号Ein(t)と入力信号Ein(t+T)とが相殺され、信号が出力されない。
【0053】
一方、入力信号Ein(t)と1ビット遅延した入力信号Ein(t+T)との位相差がπ、すなわち、連続するビットの位相が逆位相の場合、出力端子O1からは、入力信号Ein(t)と入力信号Ein(t+T)とが相殺され、信号が出力されない。出力端子O2からは、入力信号Ein(t)と入力信号Ein(t+T)との加算信号が第2の出力信号として出力される。
【0054】
復調器は、遅延線干渉計321の後段に、例えば出力信号の強度を検出する強度検出器を設け、第1の出力信号Eout1と第2の出力信号Eout2との間の信号強度の差分を検出することで、連続する入力信号Ein(t)、Ein(t+T)との間の位相の変化の有無を検出し、入力信号Ein(t)を復調する。
【0055】
図15に示すように、入力端子I1から各出力端子O1,O2への伝達関数は、1ビット遅延した入力信号Ein(t+T)の影響で、正弦波応答となる。図15の直線は、出力端子O1への伝達関数を、破線は出力端子O2への伝達関数を示している。この正弦波応答の周期は、1ビット周期Tの逆数(1/T)に等しく、自由スペクトル領域(Free Spectral Range:FSR)と呼ばれる。
【0056】
図15の縦軸は電力伝達率、横軸はEin(t+T)の位相調整量をあらわしている。図14に示すように、遅延線干渉計321には、位相調整器325が設けられている。位相調整器325は、1ビット遅延した入力信号Ein(t+T)の位相を回転する。図15の横軸は、この回転量、すなわち位相調整量を示している。例えば、入力信号Ein(t+T)の位相を回転しない場合(図15の動作点2)、出力端子O1の電力伝達率は1、出力端子O2の電力伝達率はゼロとなる。この場合、連続するビットの位相が同位相であれば第1の出力端子O1から第1の出力信号が出力され、第2の出力端子O2からは出力信号が出力されない。連続するビットの位相が逆位相であれば第1の出力端子O1から出力信号が出力されず、第2の出力端子O2から第2の出力信号が出力される。つまり、1ビット遅延した入力信号Ein(t+T)の位相を回転しないこと(図15の動作点2)で、遅延線干渉計321を復調器の一部として動作させることができる。
【0057】
本実施形態では、遅延線干渉計321を復調器ではなく、変調方式変換器320の一部として動作させる。このため、本実施形態では、遅延線干渉計321の入力端子I1を、受信器110と接続し、第1の出力端子O1を、信号抽出器127と接続する。第2の出力端子O2は開放端とし、位相調整器325で1ビット遅延した入力信号Ein(t+T)の位相を−π/2回転させる(図15の動作点1で動作させる)ようにする。この場合、第1,第2の出力端子O1、O2ともに電力伝達率は0.5となる。連続するビットとの位相が同位相であっても逆位相であっても、第1,第2の出力端子O1、O2からそれぞれ第1,第2の出力信号が出力される。
【0058】
位相調整器325で1ビット遅延した入力信号Ein(t+T)の位相を−π/2回転させた場合、第1の出力端子O1から出力される第1の出力信号Eout1は、入力信号Ein(t)と、位相を−π/2回転した入力信号Ein(t+T)を加算した信号となる。この第1の出力信号Eout1は、第1の実施形態の4相光信号と同じ信号である。
【0059】
このように、遅延線干渉計321を変調方式変換器320の一部として用いても、2相位相変調方式で変調された光信号を4相位相変調方式で変調された光信号に変換することができる。
【0060】
次に図16を用いて本実施形態の実験結果を説明する。ここでは、遅延線干渉計321のFSRを12GHzとしている。図16(a)は、受信器110に入力される入力信号Ein(t)を示している。図16(a)に示す入力信号Ein(t)は、2相位相変調方式で変調された光信号であり、12Gbaud(12Gbit)/sである光信号である。
【0061】
図16(b)は、送信器130から送信される送信信号を示している。図16(b)に示す送信信号は、変調方式変換器320によって4相光信号に変換された信号であり、12Gbaud(24Gbit)/sである信号である。図16(c)は、図16(b)に示す4相位相変調方式に変換した送信信号を復調した差動検波電気信号である。図16(c)より、変調方式変換器320によって4相光信号に変換された送信信号は、波形歪みが少ない良好な波形を有する信号であることがわかる。
【0062】
位相調整器325を図15の動作点1で動作させる、すなわち図15に示すように第1、第2の出力端子O1,O2の電力伝達率が等しくなるように調整することで、図16に示すように、遅延線干渉計321を変調方式変換器320の一部として利用することができる。
【0063】
以上のように、本実施形態に係る中継器300は、第1実施形態と同様の効果が得られるとともに、既存の遅延線干渉計321を用いて変調方式変換器320を構成することができ、容易に変調方式変換器320、中継器300を設計することができる。
【0064】
なお、上述した第1〜第3実施形態では、中継器100〜300への入力信号を2相光信号としたが、差動2相光信号としてもよい。入力信号が差動2相光信号であっても、中継器100〜300は、入力信号を4相変調方式で変換された差動4相光信号に変換することができる。
【0065】
また、上述した第1〜第3実施形態では、位相シフト器124が第1の光信号の位相を−π/2回転するとしたが、π/2回転するとしてもよい。つまり、上述した第1〜第3実施形態では第1の光信号の位相をI−Q平面で時計回りにπ/2回転させたが、反時計回りにπ/2回転させても2相光信号を4相光信号に変換することができる。従って、π/2回転させるとは、±π/2回転させることを含むものとする。
【0066】
図17に、2相光信号の位相をI−Q平面で反時計回りにπ/2回転させた場合の2相光信号の位相と4相光信号の位相との関係を示す。このように、mビット目の2相光信号Ein_mに、m+1ビット目の2相光信号Ein_m+1をπ/2回転させた信号(i×Ein_m+1)を合波することで、4相光信号Eout_mが得られる。
【0067】
最後に、上述した各実施形態の説明は本開示の一例であり、本開示は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本開示に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0068】
110 受信器
120,220,320 変調方式変換器
130 送信器
121 分波器
122 シフト器
123 合波器
124 位相シフト器
125 ビットシフト器
126 振幅調整器
127,227 信号抽出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2相位相変調方式で変調された入力光信号を4相位相変調方式で変調された出力光信号に変換する変調方式変換器であって、
前記入力光信号を1ビットシフトするビットシフト手段と、
前記入力光信号の位相をπ/2回転させる位相シフト手段と、
前記入力光信号の最大振幅と、前記入力光信号が前記ビットシフト手段により1ビットシフトされ、前記位相シフト手段により位相をπ/2回転されたシフト信号の最大振幅とをそろえる振幅調整手段と、
前記振幅調整手段により最大振幅がそろえられた前記入力光信号及び前記シフト信号を合波し、前記出力光信号を生成する合波手段と、
を備えることを特徴とする変調方式変換器。
【請求項2】
前記合波手段は、合波した信号から重複したビットを抽出することで前記出力光信号を生成する抽出手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の変調方式変換器。
【請求項3】
前記入力光信号から、先頭ビットのタイミング及び1ビットの周期を検出する検出手段をさらに備え、
前記抽出手段は、前記合波した信号から前記検出手段が検出した先頭ビットのタイミングから1ビット間隔で信号を抽出することで前記出力光信号を生成する
ことを特徴とする請求項2に記載の変調方式変換器。
【請求項4】
2相位相変調方式で変調された入力光信号を4相位相変調方式で変調された出力光信号に変換する変調方式変換器であって、
前記入力光信号に含まれる連続する2ビットのうち、一方のビットの位相をπ/2回転させ前記2つのビットの振幅をそろえる調整手段と、
前記2つのビットを合波する合波手段と、
を備えることを特徴とする変調方式変換器。
【請求項5】
2相位相変調方式で変調された第1光信号を用いて通信を行う第1光ネットワークと、4相位相変調方式で変換された第2光信号を用いて通信を行う第2光ネットワークとの間を中継する中継器であって、
前記第1光信号を受信し、入力光信号を生成する受信器と、
前記入力信号を4相位相変調方式で変調された出力光信号に変換する変調方式変換器と、
前記出力光信号を前記第2光信号として送信する送信器と、
を備え、
前記変調方式変換器は、
前記入力光信号を1ビットシフトするビットシフト手段と、
前記入力光信号の位相をπ/2回転させる位相シフト手段と、
前記入力光信号の最大振幅と、前記入力光信号が前記ビットシフト手段により1ビットシフトされ、前記位相シフト手段により位相をπ/2回転されたシフト信号の最大振幅とをそろえる振幅調整手段と、
前記振幅調整手段により最大振幅がそろえられた前記入力光信号及び前記シフト信号を合波し、前記出力光信号を生成する合波手段と、
を備えることを特徴とする中継器。
【請求項6】
2相位相変調方式で変調された入力光信号を4相位相変調方式で変調された出力光信号に変換する変調方式の変換方法であって、
前記入力光信号を1ビットシフトするビットシフトステップと、
前記入力光信号の位相をπ/2回転させる位相シフトステップと、
前記入力光信号の最大振幅と、前記入力光信号が前記ビットシフトステップにより1ビットシフトされ、前記位相シフトステップにより位相をπ/2回転されたシフト信号の最大振幅とをそろえる振幅調整ステップと、
前記振幅調整ステップにより最大振幅がそろえられた前記入力光信号及び前記シフト信号を合波し、前記出力光信号を生成する合波ステップと、
を備えることを特徴とする変調方式の変換方法。

【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−30869(P2013−30869A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163998(P2011−163998)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(304020292)国立大学法人徳島大学 (307)
【Fターム(参考)】