説明

変調波生成装置

【課題】テレテキスト信号の位相歪みを軽減する。
【解決手段】デジタルデータのライジングエッジとフォーリングエッジを、周波数f1(f1=デジタルデータの伝送レート/2)の正弦波の立上り波形と立下り波形で夫々置換することにより変調波を生成する。具体的には、周波数f2(f2>f1)のクロック信号に同期して、Δθ(Δθ=360×f1/f2)を累積加算して第1の位相値を順次算出し、第1の位相値毎に、該第1の位相値に対応するレベルを選択する。選択に際して、第1の位相値が180度の整数倍を超えた時点を波形決定ポイントとして、各波形決定ポイントにおいて、該波形決定ポイントから、次の波形決定ポイントの直前までの間に、HIGHレベル、LOWレベル、上記立上り波形、立下り波形のいずれを選択するかを、デジタルデータの現在のビットと次のビットに応じて決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルデータを伝送するための変調波、特にデジタルLSIの動作クロックが、該デジタルデータの伝送レートの整数倍ではない場合に上記変調波を生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビジョン信号の隙間を利用して文字や単純図形などの情報を放送する文字多重放送(テレテキスト)が行われている。テレテキストでは、ベースバンドのコンポジット信号における垂直ブランキング期間(VBI)にテレテキスト信号が伝送される。このテレテキスト信号により、6.9375Mbit/Secのビットレートで情報データ(テレテキストデータ)を伝送する。
【0003】
テレテキスト信号は、コンポジット信号に多重され、RF変調された後に地上波などにより伝送される。伝送過程において、信号劣化に起因して、S/N比が悪くなると共に、コンポジット信号のDCレベルも大きく変動することがある。そのため、受信側においてテレテキスト信号を正しく認識できないことが懸念される。また、RF変調前にノイズが混入した場合には、受信性能がさらに劣化してしまう恐れがある。
【0004】
特許文献1には、受信側において予め「6.9375/2」MHzのクロック信号を用意し、該クロック信号の位相と、受信したテレテキスト信号のクロック・ラン・イン信号の位相と合わせることにより受信性能を高める手法が開示されている。しかし、受信装置に予め用意された「6.9375/2」MHzのクロック信号がローカルクロック信号であるため、クロック・ラン・イン信号と位相が同期したとしても周波数がずれる可能性がある。また、この手法は、実質的には、テレテキスト信号の1ビット目の位相を用いて、受信装置における「6.9375/2」MHzのローカルクロック信号と同期を行うので、テレテキスト信号の2ビット目以後のビットについて位相歪みがある場合には対応できない。
【0005】
これらの理由から、RF変調前の波形ができるだけ理想波形に近づくようにテレテキスト信号を生成することが望まれている。
【0006】
図7は、「1」と「0」が交互に配列しているテレテキストデータ「1、0、1、0」に対応する理想的なテレテキスト信号C1を示す。テレテキスト信号は、HIGHレベルとLOWレベルにより論理1と論理0を夫々表すため、この場合、テレテキスト信号C1は、「6.9375/2」MHzの正弦波であり、180度毎に立上りと立下りを交互に繰り返す。
【0007】
図7から分かるように、値が「1」である各ビットは、前後のビットが「0」であるため、テレテキスト信号C1は、該ビットに対応する位相範囲の中点から、次の位相範囲の中点まで立ち下がる。一方、値が「0」である各ビットは、前後のビットが「1」であるため、テレテキスト信号C1は、該ビットに対応する位相範囲の中点から次の位相範囲の中点まで立ち上がる。例えば、図7の例において、0度〜180度の位相範囲は、値が「1」であるビットに対応し、90度においてテレテキスト信号C1は立下りを開始する。また、180度〜360度の位相範囲は、値が「0」であるビットに対応し、270度においてテレテキスト信号C1は立上りを開始する。
【0008】
図8は、「0」の後に「1、1、0、1」と続くテレテキストデータに対応する理想的なテレテキスト信号C2を示す。この例においても、0度〜180度の位相範囲に対応するビットが「1」であるが、該ビットの後のビットが「1」であるため、テレテキスト信号C2は、90度において立下りをせず、90度〜270度までHIGHレベルを維持する。
【0009】
一方、180度〜360度の位相範囲に対応するビットが「1」であり、後のビットが「0」であるため、テレテキスト信号C2は、270度において立下りを開始する。
【0010】
図9は、「0」の後に「0、0、1、0」のテレテキストデータに対応する理想なテレテキスト信号C3を示す。この例において、0度〜180度の位相範囲に対応するビットが「0」であり、その前後のビットも「0」であるため、テレテキスト信号C3は、270度までLOWレベルを維持する。一方、180度〜360度の位相範囲に対応するビットが「0」であり、その後のビットが「1」であるため、テレテキスト信号C3は、270度において立上りを開始する。
【0011】
すなわち、理想なテレテキスト信号において、テレテキストデータの1ビットは「n×180度〜(n+1)×180度」(n:0以上の整数)の位相範囲に対応し、該ビットと、該ビットの前のビットの値により、前の位相範囲の中点から、該位相範囲の中点までの波形が決まる。また、該ビットと、該ビットの後のビットの値により、該位相範囲の中点から、後の位相範囲の中点までの波形が決まる。
【0012】
文字多重放送信号の受信性能を高めるために、なるべく図7〜図9に示す波形に近づけるようにテレテキスト信号を生成する必要がある。
【0013】
テレテキスト信号の生成について、下記の手法が考えられる。この手法は、放送系のデバイスに通常提供される動作クロックを利用して6.9375MHzのクロック信号(以下ビットクロックという)を生成する。そして、生成したビットクロックに応じて、テレテキストデータの「1」または「0」に対応する波形の形と垂直位置を決めてテレテキスト信号を生成する。
この手法により生成されたテレテキスト信号の優劣は、ビットクロックの精度に依存する。
【0014】
一般的に、放送系のデバイス内には、27MHzと54MHzの動作クロックが提供されている。いずれの動作クロックの周波数も、ビットクロックの整数倍ではない。既存の動作クロックから1/K(K:1より大きい非整数)のクロック信号を精度良く生成するために、分周器などを備えられたPLL(位相同期回路)を用いることが考えられるが、PLL回路を設けることにより、装置が高価になると共に、回路規模も大きくなるという問題がある。そのため、テレテキスト信号を生成する装置において、通常、カウンタ回路によりビットクロックを生成する。ここで、27MHzの動作クロックを用いる場合を例に説明する。
【0015】
カウンタ回路により、27MHzの動作クロックから6.9375MHzのクロック信号を生成する原理は、下記の式(1)により示される。
27×37/144=6.9375 (1)
【0016】
具体的には、37ずつ加算するカウンタにより加算を行い、加算結果が144を超えるたびにビットクロックを生成し、かつ144で剰余演算を行う。
【0017】
また、特許文献2には、ターゲット波形を量子化して得た波形データをROMテーブルに記憶しておき、発生すべき周波数に応じて当該波形データを読み出して論理信号と重畳することによりデジタルブランキング信号を生成する手法が開示されている。この手法も、テレテキスト信号の生成に適用できると考えられる。
【特許文献1】特開平07−221634号公報
【特許文献2】特開2002−271755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところで、カウンタ回路によりビットクロックを生成し、ビットクロックを用いてテレテキスト信号を生成する手法では、オーバーフローの値が変動するため、ビットクロックの立ち上りのタイミングがずれてしまう。そのため、生成されたビットクロックにはジッタが生じ、ビットクロックを用いて作成したテレテキスト信号には、位相のずれに起因する歪みが生じてしまう。
【0019】
図10は、ジッタが含まれたビットクロックを用いて生成したテレテキスト信号の例を示す。このテレテキスト信号は、「0」であるビットの後に、「1、1、0」が続くテレテキストデータに対応するものである。図10において、点線は理想波形Cbを示し、実線は、実波形Caを示す。また、白丸は、理想波形の立上り開始ポイントと立下り開始ポイントを示し、黒丸は、実波形の立上り開始ポイントと立下り開始ポイントを示す。
【0020】
図10に示すように、この例において、実波形Caの立上り開始ポイントは理想波形Cbの立上り開始ポイントからずれており、実波形Caの立下り開始ポイントも、理想波形Cbの立下り開始ポイントからずれている。そのため、実波形Caには立上り位相歪みと立下り位相歪みが生じている。
【0021】
これでは、テレテキスト信号をコンポジット信号に多重してRF変調して得た放送信号にも位相の歪みが含まれるため、伝送路においてさらに劣化が加わると、受信側でデコードする際には、テレテキスト信号を正しく認識できなくなる。
【0022】
特許文献2は、ターゲット波形の量子化データを用いてテレテキスト信号を生成する手法を開示したものの、具体的なアルゴリズムが不明である。また、テレテキスト信号の位相歪みなどを軽減する工夫も示唆されていない。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の1つの態様は、デジタルデータの論理1と論理0をHIGHレベルとLOWレベルで夫々表すと共に、ライジングエッジとフォーリングエッジを、式(2)に示す周波数f1の正弦波の立上り波形と立下り波形で夫々置換した変調波を生成する変調波生成装置である。
f1=A/2 (2)
但し,A:デジタルデータの伝送レート
【0024】
この変調波生成装置は、位相値算出部と、変調部を備える。
【0025】
位相値算出部は、周波数f2(f2>f1)のクロック信号に同期して、式(3)に従って算出されたΔθを累積加算して第1の位相値を順次算出する。
Δθ=360×f1/f2 (3)
【0026】
変調部は、位相値算出部が算出した第1の位相値毎に、該第1の位相値に対応する変調波のレベルを選択するものであって、第1の位相値が180度の整数倍を超えた時点を波形決定ポイントとして、各波形決定ポイントにおいて、該波形決定ポイントから、次の波形決定ポイントの直前までの間に、HIGHレベルと、LOWレベルと、上記正弦波の立上り波形において第1の位相値に対応するレベルと、上記正弦波の立下り波形において第1の位相値に対応するレベルのいずれを選択するかを、デジタルデータの現在のビットと次のビットに応じて決定する。
【0027】
なお、上記態様の装置を方法や回路、システムなどに置き換えて表現したものも、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0028】
本発明にかかる技術によれば、テレテキスト信号の位相歪みを軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかるテレビ信号生成装置100を示す。テレビ信号生成装置100は、デジタル映像信号と、テレテキストデータから放送信号(アナログテレビ信号)を生成するものであり、テレテキスト信号生成部102と、加算器170と、デジタル/アナログコンバータ(以下D/Aコンバータという)180を有する。
【0030】
テレテキスト信号生成部102は、テレテキスト信号を生成して加算器170に出力する。本実施の形態において、テレテキスト信号の伝送レートが6.9375Mbit/secである。
【0031】
加算器170は、デジタル映像信号と、テレテキスト信号生成部102からのテレテキスト信号とを重畳してD/Aコンバータ180に出力する。
【0032】
D/Aコンバータ180は、加算器170からの出力をD/A変換してアナログテレビ信号を得る。
【0033】
テレテキスト信号生成部102は、位相値算出部110と、サイン波レベル供給部120と、制御部130と、FIFO140と、波形決定部150と、マルチプレクサ(以下MUXという)160を備える。テレテキスト信号生成部102において、位相値算出部110を除いた他の機能ブロックは、変調部を構成する。
【0034】
位相値算出部110は、テレビ信号生成装置100の動作クロック(周波数f2:54MHz)を用いて、テレテキスト信号の伝送レートに対応する周波数f1(「6.9375/2」MHz)の正弦波を生成するための位相γを算出する。本実施の形態において、位相値算出部110は、0度〜180度の位相γを算出するものである。
【0035】
図示のように、位相値算出部110は、加算器112と、剰余演算器114と、レジスタ116を備える。
【0036】
加算器112は、レジスタ116に格納された値と、周波数制御信号に設定された加算値Δθを加算する。なお、Δθは、下記の式(4)に従って算出された23.125である。
Δθ=360×f1/f2=360×(6.9375/2)/54=23.125 (4)
【0037】
剰余演算器114は、加算器112の出力に対して、180で割った余りをとる剰余演算を行って、剰余(すなわち位相γ)をサイン波レベル供給部120、制御部130、レジスタ116に出力する。
【0038】
レジスタ116は、54MHzの動作クロックに同期して動作する。レジスタ116は、初期値が0であり、剰余演算器114から位相γを受信する度に、受信した位相γで格納値を更新する。レジスタ116に格納された位相γは、加算器112に供される。
【0039】
サイン波レベル供給部120は、LUT(ルックアップテーブル)122と、レベル算出部124を備え、「6.9375/2」MHzの正弦波の立上り波形と立下り波形の量子化データをMUX160に供給可能である。
【0040】
図2の右側は、サイン波レベル供給部120により、それらの量子化データを供給可能な立上り波形S1と立下り波形S2を示す。図示のように、立上り波形S1は、0度〜180度の位相範囲内にレベルがLOWからHIGHまで立ち上がり、立下り波形S2は、0度〜180度の位相範囲内にレベルがHIGHからLOWまで立ち下る。
【0041】
図2の左側は、LUT122に量子化データが記憶された波形を示す。本実施の形態において、LUT122は、上記立上り波形S1の量子化データのみを記憶している。
【0042】
LUT122は、位相値算出部110から出力した位相γに対応する、立上り波形S1におけるレベル値をレベル算出部124に出力する。
【0043】
レベル算出部124は、波形決定部150からの第2の波形制御信号Ctr4に応じて、立上り波形S1または立下り波形S2における、位相γに対応するレベル値をMUX160に出力する。具体的には、第2の波形制御信号Ctr4が「立上り波形」を示すときに、LUT122が出力したレベル値をそのままMUX160に出力する。一方、第2の波形制御信号Ctr4が「立下り波形」を示すときに、LUT122が出力したレベル値から、該レベル値に対応する、立下り波形S2におけるレベル値を算出してMUX160に出力する。
【0044】
以下、説明上の便宜のため、立上り波形S1と立下り波形S2におけるレベル値を夫々「立上りサイン波レベル」と「立下りサイン波レベル」といい、符号についてもS1とS2を夫々用いる。
【0045】
制御部130は、剰余演算器114が出力した位相γと、レジスタ116に格納された位相(剰余演算器114が出力した位相γの1つ前の位相)に応じて、FIFO140にシフトさせるFIFO制御信号Ctr1と、波形決定部150に波形を決定させる波形決定タイミング信号Ctr2をFIFO140と波形決定部150に夫々出力する。FIFO制御信号Ctr1の出力タイミングは、レジスタ116に格納された位相がΔθ(ここでは23.125)より大きく、かつ、剰余演算器114からの位相γと180度との差が23.125以下になった時点である。波形決定タイミング信号Ctr2を出力するタイミングは、FIFO制御信号Ctr1を出力したときの位相γの次の位相γを受信した時点である。このタイミングは、剰余演算器114が出力した位相γがレジスタ116に格納された位相より小さくなった時点でもある。
【0046】
すなわち、制御部130は、加算器112の出力が180度を超える直前の時点にFIFO140にFIFO制御信号Ctr1を出力し、加算器112の出力が180度を超えた直後に波形決定部150に波形決定タイミング信号Ctr2を出力する。
【0047】
FIFO140は、FIFO(First In First Out)バッファであり、入力されたテレテキストデータを一時的に格納する。FIFO140は、制御部130からCtr1が入力される度に、格納されたデータを1ビットシフトする。
【0048】
波形決定部150は、波形決定タイミング信号Ctr2を受信すると、その時点のFIFO140の先頭2ビットに応じて、下記のように、MUX160の選択を制御する第1の波形制御信号Ctr3と、レベル算出部124を制御する第2の波形制御信号Ctr4を生成して、次の波形決定タイミング信号Ctr2を受信するまでMUX160とレベル算出部124に出力する。
【0049】
<FIFO140の先頭2ビット:「11」>
この場合、波形決定部150は、HIGHレベルの選択を指示する第1の波形制御信号Ctr3をMUX160に出力する。この場合、レベル算出部124からMUX160に出力されるレベル値が選択されないので、第2の波形制御信号Ctr4としては、「立上り波形」と「立下り波形」のいずれを示すものであってもよい。本実施の形態において、この場合の第2の波形制御信号Ctr4は、「立上り波形」を示すものである。
【0050】
<FIFO140の先頭2ビット:「00」>
この場合、波形決定部150は、LOWレベルの選択を指示する第1の波形制御信号Ctr3をMUX160出力する。この場合も、レベル算出部124からMUX160に出力されるレベル値が選択されないので、第2の波形制御信号Ctr4としては、「立上り波形」と「立下り波形」のいずれを示すものであってもよい。本実施の形態において、この場合の第2の波形制御信号Ctr4も、「立上り波形」を示すものである。
【0051】
<FIFO140の先頭2ビット:「01」>
この場合、波形決定部150は、MUX160には、レベル算出部124からのサイン波レベルSの選択を指示する第1の波形制御信号Ctr3を出力し、レベル算出部124には、「立上り波形」を示す第2の波形制御信号Ctr4を出力する。
この場合、レベル算出部124からのサイン波レベルSは、立上り波形レベルS1となる。
【0052】
<FIFO140の先頭2ビット:「10」>
この場合、波形決定部150は、MUX160には、レベル算出部124からのサイン波レベルSの選択を指示する第1の波形制御信号Ctr3を出力し、レベル算出部124には、「立下り波形」を示す第2の波形制御信号Ctr4を出力する。
この場合、レベル算出部124からのサイン波レベルSは、立下り波形レベルS2となる。
【0053】
レベル算出部124は、前述したように、第2の波形制御信号Ctr4が「立上り波形」を示すときに、LUT122が出力したレベル値(立上り波形レベルS1)をそのままMUX160に出力する。一方、第2の波形制御信号Ctr4が「立下り波形」を示すときに、LUT122が出力したレベル値から、該レベル値に対応する立下り波形レベルS2を算出してMUX160に出力する。
MUX160は、第1の波形制御信号Ctr3に従って、HIGHレベル、ゼロレベル(LOWレベル)、レベル算出部124からのサイン波レベルSのうちから1つを選択することによってテレテキスト信号を生成する。
【0054】
図3は、テレテキストデータが「1011001110・・・」である場合に、MUX160から出力されるテレテキスト信号と、FIFO140がシフトするタイミング(FIFOシフトポイント)と、波形決定ポイントを示す。この場合、FIFO140において、上記テキストデータは、「0111001101・・・」の配置順になる。なお、波形決定ポイントは、波形決定部150が制御部130から波形決定タイミング信号Ctr2を受信した時点であり、この時点において、波形決定部150は、次の波形決定タイミング信号Ctr2を受信するまでの第1の波形制御信号Ctr3と第2の波形制御信号Ctr4を決定する。また、図3において、白丸と黒丸がFIFOシフトポイントと波形決定ポイントをそれぞれ示す。
【0055】
FIFO140は、制御部130からのFIFO制御信号Ctr1に従ってテレテキストデータを1ビットずつシフトする。例として、FIFO140の先頭2ビットが初期値の「00」であり、3ビット目がテレテキストデータの1ビット目「1」になった時点をt1として、t1において位相値算出部110が算出した位相γが161.875であるとする。
【0056】
このとき、位相γと180の差が18.125であり、23.125より小さいため、制御部130は、FIFO制御信号Ctr1をFIFO140に出力する。これに応じて、FIFO140は、テレテキストデータを1ビットシフトする。シフトする前は、前述のように、FIFO140には、先頭の2ビットの初期値「00」の後に、テレテキストデータが続く。
【0057】
t2において、剰余演算器114から次の位相γ(5)が出力される。それに同期して制御部130は波形決定タイミング信号Ctr2を波形決定部150に出力する。図示のように、t2において、t1で行われたシフトにより、FIFO140の1ビット目は初期値の「0」であり、2ビット目は、テレテキストの1ビット目の「1」になっている。
【0058】
波形決定部150は、波形決定タイミング信号Ctr2を受信すると、FIFO140の先頭2ビットを参照して、次の波形決定タイミング信号Ctr2を受信するまでの第1の波形制御信号Ctr3と第2の波形制御信号Ctr4を決定する。FIFO140の先頭2ビットが「01」であるため、波形決定部150は、レベル算出部124からのサイン波レベルSの選択を指示する第1の波形制御信号Ctr3をMUX160に出力すると共に、「立上り波形」を示す第2の波形制御信号Ctr4をレベル算出部124に出力する。
【0059】
これにより、次の波形決定ポイント(図中t4)の前のt3まで、レベル算出部124は、LUT122からの立上り波形レベルS1をMUX160に出力し、MUX160は、レベル算出部124からのサイン波レベルS(ここでは立上り波形レベルS1)を選択し続ける。
【0060】
t3において、剰余演算器114からの位相γが166.875(180度との差が13.125)であり、レジスタ116に格納された位相が143.75(23.125より大きい)であるため、制御部130は、FIFO制御信号Ctr1をFIFO140に出力する。また、t3の次の時点(波形決定ポイントt4)において、波形決定タイミング信号Ctr2を波形決定部150に出力する。
【0061】
t4において、t3で行われたシフトにより、FIFO140の1ビット目は、テレテキストの1ビット目の「1」になっている。
【0062】
波形決定部150は、波形決定タイミング信号Ctr2を受信すると、FIFO140の先頭2ビットを参照して、次の波形決定タイミング信号Ctr2を受信するまでの第1の波形制御信号Ctr3と第2の波形制御信号Ctr4を決定する。FIFO140の先頭2ビットが「01」であるため、波形決定部150は、レベル算出部124からのサイン波レベルSの選択を指示する第1の波形制御信号Ctr3をMUX160に出力すると共に、「立下り波形」を示す第2の波形制御信号Ctr4をレベル算出部124に出力する。
【0063】
これにより、MUX160は、次の波形決定ポイント(図中t6)の前のt5まで、レベル算出部124は、LUT122からの立上り波形レベルS1に対応する立下り波形レベルS2を算出してMUX160に出力し、MUX160は、レベル算出部124からのサイン波レベルS(ここでは立下り波形レベルS2)を選択し続ける。
【0064】
同様に、制御部130は、シフトポイントt5においてFIFO制御信号Ctr1をFIFO140に出力し、波形決定ポイントt6において波形決定タイミング信号Ctr2を波形決定部150に出力する。これにより、波形決定ポイントt6において、FIFO140に格納されたデータが「・・・011100110」になるため、t7まで、レベル算出部124は、LUT122からの立上り波形レベルS1をMUX160に出力し、MUX160は、レベル算出部124からのサイン波レベルS(ここでは立上り波形レベルS1)を選択し続ける。
【0065】
t7において、剰余演算器114からの位相γが176.875(180度との差が13.125)であり、レジスタ116に格納された位相が153.75(23.125より大きい)であるため、制御部130は、FIFO制御信号Ctr1をFIFO140に出力する。また、t7の次の時点(波形決定ポイントt8)において、波形決定タイミング信号Ctr2を波形決定部150に出力する。
【0066】
t8において、t7で行われたシフトにより、FIFO140の先頭2ビットは「11」になっている。
【0067】
波形決定部150は、波形決定タイミング信号Ctr2を受信すると、FIFO140の先頭2ビットを参照して、次の波形決定タイミング信号Ctr2を受信するまでの第1の波形制御信号Ctr3と第2の波形制御信号Ctr4を決定する。この時、FIFO140の先頭2ビットが「11」であるため、波形決定部150は、HIGHレベルの選択を指示する第1の波形制御信号Ctr3をMUX160に出力すると共に、「立上り波形」を示す第2の波形制御信号Ctr4をレベル算出部124に出力する。
【0068】
これにより、MUX160は、次の波形決定ポイント(図中t10)の前のt9まで、HIGHレベルを選択し続ける。
【0069】
t9において、剰余演算器114からの位相γが158.75(180度との差が21.25)であり、レジスタ116に格納された位相が135.625(23.125より大きい)であるため、制御部130は、FIFO制御信号Ctr1をFIFO140に出力する。また、t9の次の時点(波形決定ポイントt10)において、波形決定タイミング信号Ctr2を波形決定部150に出力する。
【0070】
t10において、t9で行われたシフトにより、FIFO140の先頭2ビットは「01」になっている。波形決定部150は、波形決定タイミング信号Ctr2を受信すると、FIFO140の先頭2ビットを参照して、次の波形決定タイミング信号Ctr2を受信するまでの第1の波形制御信号Ctr3と第2の波形制御信号Ctr4を決定する。この時、FIFO140の先頭2ビットが「01」であるため、波形決定部150は、レベル算出部124からのサイン波レベルSの選択を指示する第1の波形制御信号Ctr3をMUX160に出力すると共に、「立下り波形」を示す第2の波形制御信号Ctr4をレベル算出部124に出力する。
【0071】
これにより、次の波形決定ポイント(図中t12)の前のt11まで、レベル算出部124は、LUT122からの立上り波形レベルS1に対応する立下り波形レベルS2を算出してMUX160に出力し、MUX160は、レベル算出部124からのサイン波レベルS(ここでは立下り波形レベルS2)を選択し続ける。
【0072】
このように、FIFO140のシフトとMUX160の選択が繰り返され、テレテキスト信号が生成され、加算器170に出力される。
【0073】
図4は、テレテキスト信号生成部102が生成したテレテキスト信号と、6.9375/2」MHzの正弦波を比較する図である。図示のように、テレテキスト信号生成部102により、テレテキストデータは、ライジングエッジとフォーリングエッジが6.9375/2」MHzの正弦波の立上り波形と立下り波形に夫々置換された、ビットレートが6.9375Mbit/Secのテレテキスト信号に変換されており、理想の位相が得られる。
【0074】
図5と図6は、カウンタ回路によりビットクロックを生成し、ビットクロックを用いてテレテキスト信号を生成する従来の手法により得られたテレビ信号の例と、本発明の手法を適用したテレビ信号生成装置100により生成したテレビ信号の例を夫々示す。図5に示すように、従来の手法では、立上りや立下りとで独立にジッタが生じ、結果的にはエッジが揺れるだけではなく波形の幅も広くなったり狭くなったりしている。一方、図6に示すように、本発明にかかる技術によれば、従来の手法より、位相歪みが大幅に軽減されている。
【0075】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。実施の形態は例示であり、本発明の主旨から逸脱しない限り、上述した各実施の形態に対して、さまざまな変更、増減、組合せを行ってもよい。これらの変更、増減、組合せが行われた変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0076】
例えば、本実施の形態において、LUT122は立上り波形の量子化データのみを格納し、レベル算出部124により立下り波形の量子化データを算出している。LUT122が立下り波形の量子化データを格納し、レベル算出部124により立上り波形の量子化データを算出するようにしてもよい。このように、立上り波形と立下り波形のいずれか一方の量子化データのみをLUT122に格納することにより、ルックアップテーブルのサイズを抑制することができる。
【0077】
LUT122の容量をさらに抑制するために、立上り波形または立下り波形の半分の量子化データ(例えば0度〜90度の位相範囲内の量子化データ)のみを格納し、他の量子化データについてはレベル算出部124により算出するようにしてもよい。
【0078】
勿論、立上り波形と立下り波形の両方の量子化データをLUT122に格納して選択的にMUX160に出力するようにしてもよい。この場合、レベル算出部124による演算が不要になる。
【0079】
また、本実施の形態において、波形決定ポイントの直前の時点でFIFO140のシフトをするようにして制御の簡単化を図っているが、今回の波形決定ポイントに到達するまでにFIFO140のシフトが完了していればよいため、前回の波形決定ポイントの後から、今回の波形決定ポイントの直前までの任意の時点でFIFO140のシフトを行うようにしてもよい。
【0080】
また、本実施の形態において、テレテキスト信号の位相の精度を高めるために、54MHzの動作クロックを用いたが、27MHzの動作クロックを用いてもよい。この場合、Δθとしては、46.25を用いればよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施の形態にかかるテレビ信号生成装置を示す図である。
【図2】図1に示すテレビ信号生成装置におけるサイン波レベル供給部120を説明するための図である。
【図3】図1に示すテレビ信号生成装置におけるテレテキスト信号生成部によるテレテキスト信号の生成動作を説明するための図である。
【図4】図1に示すテレビ信号生成装置におけるテレテキスト信号生成部により生成したテレテキスト信号の位相を説明するための図である。
【図5】従来の手法により生成したテレビ信号の例を示す図である。
【図6】図1に示すテレビ信号生成装置により生成したテレビ信号の例を示す図である。
【図7】理想なテレテキスト信号の例を示す図である(その1)。
【図8】理想なテレテキスト信号の例を示す図である(その2)。
【図9】理想なテレテキスト信号の例を示す図である(その3)。
【図10】従来の手法の問題点を説明するための図である。
【符号の説明】
【0082】
100 テレビ信号生成装置
102 テレテキスト信号生成部
110 位相値算出部
112 加算器
114 剰余演算器
116 レジスタ
120 サイン波レベル供給部
122 LUT
124 レベル算出部
130 制御部
140 FIFO
150 波形決定部
160 マルチプレクサ
170 加算器
180 D/Aコンバータ
Ctr1 FIFO制御信号
Ctr2 波形決定タイミング信号
Ctr3 第1の波形制御信号
Ctr4 第2の波形制御信号
S1 立上り波形レベル
S2 立下り波形レベル
S レベル算出部124からのサイン波レベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルデータの論理1と論理0をHIGHレベルとLOWレベルで夫々表すと共に、ライジングエッジとフォーリングエッジを、式(1)に示す周波数f1の正弦波の立上り波形と立下り波形で夫々置換した変調波を生成する変調波生成装置であって、
周波数f2(f2>f1)のクロック信号に同期して、式(2)に従って算出されたΔθを累積加算して第1の位相値を順次算出する位相値算出部と、
該位相値算出部が算出した第1の位相値毎に、該第1の位相値に対応する前記変調波のレベルを選択するものであって、前記第1の位相値が180度の整数倍を超えた時点を波形決定ポイントとして、各波形決定ポイントにおいて、該波形決定ポイントから、次の波形決定ポイントの直前までの間に、HIGHレベルと、LOWレベルと、前記正弦波の立上り波形において前記第1の位相値に対応するレベルと、前記正弦波の立下り波形において前記第1の位相値に対応するレベルのいずれを選択するかを、前記デジタルデータの現在のビットと次のビットに応じて決定する変調部と、
を備えることを特徴とする変調波生成装置。
f1=A/2 (1)
但し,A:デジタルデータの伝送レート
Δθ=360×f1/f2 (2)
【請求項2】
前記変調部は、前記現在のビットと次のビットが共に「1」であるときにHIGHレベルを選択し、
前記現在のビットと次のビットが共に「0」であるときにLOWレベルを選択し、
前記現在のビットと次のビットが「1、0」であるときに、前記正弦波の立下り波形において前記第1の位相値に対応するレベルを選択し、
前記現在のビットと次のビットが「0、1」であるときに、前記正弦波の立上り波形において前記第1の位相値に対応するレベルを選択するように決定することを特徴とする請求項1に記載の変調波生成装置。
【請求項3】
前記変調波は、テレテキスト信号であることを特徴とする請求項1または2に記載の変調波生成装置。
【請求項4】
前記変調部は、
前記立上り波形と立下り波形の量子化データを記憶する正弦波量子化データ記憶部を備え、
HIGHレベルと、LOWレベルと、前記正弦波量子化データ記憶部に記憶された量子化データとから、前記第1の位相値に対応する前記変調波のレベルを選択することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の変調波生成装置。
【請求項5】
前記正弦波量子化データ記憶部は、前記立上り波形と立下り波形のいずれか片方の波形の量子化データのみを記憶しており、
前記変調部は、前記片方の波形の量子化データから、他方の波形の量子化データを算出可能なレベル算出部をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の変調波生成装置。
【請求項6】
前記正弦波量子化データ記憶部は、前記片方の波形の半分の量子化データのみを記憶しており、
前記レベル算出部は、前記一部の量子化データから、該片方の波形の他の部分の量子化データと、他方の波形の量子化データを算出可能であることを特徴とする請求項5に記載の変調波生成装置。
【請求項7】
前記立上り波形の量子化データは、0度から180度までの位相範囲内にLOWレベルからHIGHレベルまで立ち上がる前記正弦波の量子化データであり、前記立下り波形の量子化データは、0度から180度の位相範囲内にHIGHレベルからLOWレベルまで立ち下がる前記正弦波の量子化データであり、
前記位相値算出部は、前記第1の位相値を180で除算して得た剰余を第2の位相値として得るものであり、
前記変調部は、現在の第2の位相値が1つ前の第2の位相値より小さくなった時点を前記波形ポイントとすることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の変調波生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−103901(P2010−103901A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275423(P2008−275423)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】