説明

変速制御装置および変速制御方法

【課題】多段の変速機構における飛び越し変速を可能にしつつ、変速前後の加減速度変化を一定限度内に抑え、ドライバビリティを向上させ得る変速制御装置を提供する。
【解決手段】変速機がそれぞれ複数段の低速側および高速側の変速段と複数段の中間変速段とを形成可能な車両に搭載される変速制御装置であって、一の変速段PHから他の変速段PLへのダウンシフト方向の多段飛び越し変速が要求されたとき、一の変速段PHが特定の中間変速段PIを複数段上回ることを条件として、一の変速段PHから特定の中間変速段PIまでの飛び越し変速と、特定の中間変速段PIから他の変速段PLまでの順番変速とを含む変速制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行駆動系に設けられる変速機構を制御する変速制御装置および変速制御方法に関し、特に、操作入力に応じて変速機構を多段に変速動作させるとともに選択的に飛び越し変速を実行させることができる変速制御装置および変速制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される自動変速機において、駆動源からの回転動力をアクセル開度や車速に応じて多段に自動変速する自動変速制御と、駆動源からの回転動力を運転者による手動操作入力に応じて多段に変速するマニュアル変速制御とを選択的に実行させる変速制御装置や変速制御方法が知られている。また、バイワイヤ技術の採用により、従前からのシフトレバーのみならず、ステアリング上に設けられたパドルやスイッチの操作によってシーケンシャルな1段毎のシフトアップまたはシフトダウン方向の変速(順番変速)を実行可能にしたものも普及して来ている。
【0003】
この種の変速制御装置としては、例えば順番変速用の操作レバーをすばやく複数回連続して操作したとき、途中で選択された変速段(変速ギヤ段)の伝動経路を成立させることなく、その複数回の操作入力により最終的に選択された変速段の伝動経路を直接的に成立させる飛び越し変速を実行可能とするものがある(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
さらに、シフトダウンスイッチへの複数回連続するシフトダウン操作入力によって最終的に選択された変速段に飛び越し変速すると、内燃機関が駆動輪側から加速方向に駆動される被駆動状態となることが予測される場合、その最終的に選択された変速段およびそれより変速ギヤ比の大きい変速段へのダウンシフトを禁止するようにしたものも知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−235794号公報
【特許文献2】米国特許第5,415,604号明細書
【特許文献3】特開2010−266045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の変速制御装置および変速制御方法にあっては、自動変速モード下での順番変速回数が多いためにドライバの加速要求等に対する応答性が十分でなかった。また、シフト操作入力により、被駆動状態となる変速段への飛び越し変速が要求された場合に、その要求通りに応答することができなかった。さらに、シフト操作入力により、被駆動状態とならない変速段への飛び越し変速が要求された場合であっても、飛び越し変速による車両の加減速度がドライバの意図した加減速度の程度とは相違することがあり、ドライバビリティを十分に向上させることができないという問題があった。
【0007】
すなわち、自動変速機の変速段数が多くなると、自動変速モード下で必要な変速段に順番変速させると、経由するギヤ段数が多くなる。そのため、その経由するギヤ段を順次形成するよう自動変速機内の複数の油圧摩擦係合要素のON/OFF(係合/離脱)が繰り返されることになり、ドライバの加速要求等に対する応答性が十分得られない場合が生じ得ることになる。
【0008】
また、変速段数が多くなると、多段の変速段のギヤステップ(変速ギヤ段間のギヤ比の差(変化幅))の設定によっても、ドライバの期待する減速度とその要求操作とが一致し難くなる。そして、複数回連続するシフト操作入力によりドライバの期待する減速度とその要求操作とのずれが大きくなると、飛び越し変速による車両の加減速度がドライバの意図した加減速度の程度とは相違する場合が生じ易くなる。
【0009】
また、そのように飛び越し変速前後における車両の加減速度がドライバの期待する程度と相違してしまうという問題は、自動変速モード下で加速要求操作に応じたシフト指令によって跳び越し変速を実行する場合にも生じ得ることである。
【0010】
本発明は、上述のような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、多段の変速機構におけるダウンシフト方向の飛び越し変速を可能にしながら、その変速前後の加減速度の変化を一定限度内に抑え、ドライバビリティを向上させることのできる変速制御装置および変速制御方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る変速制御装置は、上記課題の解決のため、(1)エンジンからの回転動力を変速要求に応じ変速して駆動輪側に出力する変速機が多段の変速機構を有する車両に搭載される変速制御装置であって、前記変速要求により、一の変速段から他の変速段へのダウンシフト方向の多段飛び越し変速が要求されるとき、前記一の変速段が特定の中間変速段より複数段高速側の変速段であることを条件として、前記一の変速段から前記特定の中間変速段への飛び越し変速と、前記特定の中間変速段から前記他の変速段への順番変速とを含む変速制御を実行することを特徴とする。
【0012】
この装置では、一の変速段および特定の中間変速段の間の飛び越し変速と、他の変速段および特定の中間変速段の間の順番変速とを併用する変速制御を実行する。したがって、変速段数の多い多段変速機における飛び越し変速を可能にして応答性を確保しながら、順番変速の併用によってその変速前後の車両の加減速度の変化を的確に一定限度内に抑え、ドライバビリティを向上させることができる。
【0013】
本発明の変速制御装置においては、(2)前記一の変速段が前記特定の中間変速段を含む複数段の中間変速段より高速側の変速段であり、前記他の変速段が、前記複数段の中間変速段より低速側の変速段であることを条件に、前記変速制御を実行することが好ましい。この場合、変速段数の多い多段変速機におけるギヤステップ(隣り合う変速段間の変速比の差)の設定の相違等にかかわらず、的確な飛び越し変速による応答性確保が可能になる。
【0014】
本発明の変速制御装置においては、(3)前記車両の加速を要求する操作入力がなされ、前記一の変速段から前記他の変速段への変速要求が生じたことを条件に、該変速要求に応じて、前記変速制御を実行することが望ましい。この場合、ドライバの加速要求に対する応答性を確実に向上させることができる。
【0015】
本発明の変速制御装置においては、(4)前記一の変速段から前記他の変速段への切替えを要求する前記変速要求としての手動操作入力に応じて、前記変速制御を実行することが好ましい。この場合、手動操作入力(シフト要求操作)に応じて変速機の変速段の切替えが要求されるとき、その要求操作量に応じて飛び越し変速と順番変速を含む的確な変速制御が可能となり、ドライバのシフト要求操作に対する応答性を向上させることができる。また、飛び越し変速による車両の加減速度がドライバの意図した加減速度の程度と大きく異なってしまうことを防止することができる。
【0016】
本発明の変速制御装置においては、(5)前記多段の変速機構の現在の変速段が前記特定の中間変速段より低速側である状態で、前記変速要求によって前記現在の変速段からダウンシフト方向への変速要求がなされたとき、該変速要求に応じて、前記現在の変速段から要求された変速段までの順番変速を実行することが望ましい。この場合、現在の変速段が特定の中間変速段より低速側である場合には、飛び越し変速によるダウンシフトがなされることがなく、飛び越し変速による車両の加減速度がドライバの意図した加減速度の程度と大きく異なってしまうことを防止することができる。
【0017】
本発明の変速制御装置においては、(6)前記駆動輪側から前記変速機に前記変速後の出力を加速する動力が入力される被駆動状態となるか否かを判定する被駆動状態判定部を備え、該被駆動状態判定部によって前記被駆動状態となると判定されたことを条件として、前記変速制御を実行するものであるのがよい。この場合、被駆動状態となるような変速段への飛び越し変速が要求された場合であっても、いわゆるオーバーレブ状態となって急減速される事態を有効に回避しつつ、ドライバの要求する変速段までの変速を確実に実行させることができる。なお、被駆動状態となるような変速段への飛び越し変速が要求された場合に、このような複合の変速制御(特定の中間変速段までの飛び越し変速とそれ以降の順番変速)を実行するのは、モード選択スイッチ等により特定の運転モードが選択されているときに限定されてもよい。
【0018】
本発明の変速制御装置においては、(7)前記駆動輪側から前記変速機に前記変速後の出力を加速する動力が入力される被駆動状態となるか否かを判定する被駆動状態判定部を備え、該被駆動状態判定部によって前記被駆動状態となると判定されたことを条件として、前記一の変速段から前記他の変速段への直接の飛び越し変速を禁止する一方、該被駆動状態判定部によって前記被駆動状態とならないと判定されたことを条件として、前記変速制御を実行することが好ましい。この場合、被駆動状態となるような変速段への飛び越し変速ではなく、いわゆるオーバーレブ状態とならないまでも、変速段数が多いとき、比較的急減速される事態を有効に回避しつつ、ドライバの要求する変速段までの変速を確実に実行させることができる。
【0019】
本発明に係る変速制御方法は、上記課題の解決のため、(8)エンジンからの回転動力を変速要求に応じ変速して駆動輪側に出力する変速機が多段の変速機構を有する車両における変速制御方法であって、前記変速要求により、一の変速段から他の変速段へのダウンシフト方向の多段飛び越し変速が要求されるとき、前記一の変速段が特定の中間変速段より複数段高速側の変速段であることを条件として、前記一の変速段から前記特定の中間変速段への飛び越し変速と、前記特定の中間変速段から前記他の変速段への順番変速とを含む変速制御を実行することを特徴とする。
【0020】
この方法では、一の変速段および特定の中間変速段の間の飛び越し変速と、他の変速段および特定の中間変速段の間の順番変速とを併用する変速制御を実行する。したがって、変速段数の多い多段変速機における飛び越し変速を可能にして応答性を確保しながら、順番変速の併用によってその変速前後の車両の加減速度の変化を的確に一定限度内に抑え、ドライバビリティを向上させることができる。
【0021】
本発明の変速制御方法においては、(9)前記車両の加速を要求する操作入力がなされ、前記一の変速段から前記他の変速段への変速要求が生じたことを条件に、前記変速制御を実行可能とすることが好ましい。この場合、加速要求操作に応じて変速機の変速段の切替えが要求されるとき、その要求操作量に応じて飛び越し変速を含む変速制御が実行されることから、順番変速回数が抑えられ、ドライバの加速要求に対する応答性が十分に確保される。
【0022】
また、本発明の変速制御方法においては、(10)前記一の変速段から前記他の変速段への切替えを要求する前記変速要求としての手動操作入力がなされたとき、前記変速制御を実行可能とすることもできる。この場合、高変速段からの飛び越し変速が要求されるようなシフト要求操作がなされると、その要求操作量に応じて飛び越し変速と順番変速を含む変速制御が実行される。したがって、ドライバの加速要求に対する応答性が十分に確保されるだけでなく、飛び越し変速による車両の加減速度がドライバの意図した加減速度の程度と大きく異なってしまうことを防止できる。
【0023】
さらに、本発明の変速制御方法においては、(11)前記駆動輪側から前記変速機に前記変速後の出力を加速する動力が入力される被駆動状態となるか否かを判定し、前記被駆動状態となると判定されたことを条件として、前記変速制御を実行可能とするようにしてもよい。この場合、被駆動状態となるような変速段への飛び越し変速が要求された場合でも、被駆動状態となって車両が急減速されるような事態を回避しつつ、ドライバの要求する変速段までの変速を確実に実行させることができる。
【0024】
本発明の変速制御方法においては、(12)前記駆動輪側から前記変速機に前記変速後の出力を加速する動力が入力される被駆動状態となるか否かを判定し、前記被駆動状態となると判定されたことを条件として、前記一の変速段から前記他の変速段への直接の飛び越し変速を禁止する一方、前記被駆動状態とならないと判定されたことを条件として、前記変速制御を実行するようにしてもよい。この場合、被駆動状態となるような変速段への飛び越し変速ではなく、いわゆるオーバーレブ状態とならないまでも、変速段数が多いとき、比較的急減速される事態を有効に回避しつつ、ドライバの要求する変速段までの変速を確実に実行させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、多段の変速機構における一の変速段から他方側の変速段へのダウンシフト方向の多段飛び越し変速が要求されるとき、一の変速段から特定の中間変速段への飛び越し変速と、特定の中間変速段から他の変速段への間の順番変速とを併用する変速制御を実行できる。したがって、変速段数の多い多段変速機における飛び越し変速を可能にして応答性を確保しながら、順番変速の併用によりその変速前後の加減速度の変化を的確に一定限度内に抑えて、ドライバビリティを向上させることのできる変速制御装置および変速制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態に係る変速制御装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る変速制御装置を備えた車両の変速機の多段変速機構を示すスケルトン図である。
【図3】図2に示した変速機に内蔵される複数の摩擦係合要素の係合状態をその変速機の各シフト位置について表示する係合表である。
【図4】図2に示した変速機の1速ギヤ段から8速ギヤ段までのギヤステップの設定例を示すグラフであり、縦軸は変速ギヤ比、横軸は変速段を示している。
【図5】本発明の第1実施形態に係る変速制御方法を実施する制御プログラムの概略の流れを示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態に係る変速制御方法を実施する制御プログラムの概略の流れを示すフローチャートである。
【図7】本発明の第3実施形態に係る変速制御方法を実施する制御プログラムの概略の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図1ないし図5は、本発明の第1実施形態に係る変速制御装置を示している。
【0029】
本実施形態の変速制御装置は、図1に示すように、車両1の走行駆動装置2を制御する電子制御装置3として構成されている。
【0030】
車両1は、図示しない左右の前輪と、左右の後輪8L,8R(駆動輪)とを有する後輪駆動車であり、走行駆動装置2により後輪8L,8Rが回転駆動されることで、走行できるようになっている。
【0031】
走行駆動装置2は、駆動源であるエンジン4と、そのエンジン4から出力される回転動力をトルクコンバータ5を介して入力するとともに、その回転動力を変速して後輪8L,8R側のディファレンシャル装置7に出力する変速機6と、によって構成されている。
【0032】
エンジン4は、公知の多気筒の4サイクルの内燃機関、例えば火花点火式の内燃機関であり、出力軸であるクランク軸41から回転動力を出力することができる。
【0033】
図2に示すように、トルクコンバータ5は、公知のロックアップ機構付のものであり、少なくともその高速回転域でロックアップクラッチ5aを締結させるロックアップ制御を実行し、さらに、低速・中速回転域でも、いわゆるフレックスロックアップ制御を実行することで、滑り損失を抑えることができるようになっている。
【0034】
具体的には、トルクコンバータ5は、シェルカバー51、ポンプインペラ52、タービンランナ53、ステータ54およびワンウェイクラッチ55を有しており、シェルカバー51内には作動油(図示していない)が収容されている。
【0035】
ここで、シェルカバー51は、図示しないドライブプレートを介してエンジン4のクランク軸41に連結されており、このシェルカバー51の内面側にポンプインペラ52が装着されている。タービンランナ53は、ポンプインペラ52に対向するとともに変速機6側(後述する入力軸62)に一体に連結されるタービン軸53aを有している。ステータ54は、ポンプインペラ52およびタービンランナ53の間に位置するよう、ワンウェイクラッチ55を介して変速機6のケース61に一方向に回転可能に支持されている。そして、エンジン4のクランク軸41により駆動される入力側のポンプインペラ52の回転によって、シェルカバー51内の作動油に流れが生じるとき、タービン軸53aがその流れの慣性力を受けて変速機6の入力軸62を回転させるようになっている。また、ステータ54によりタービンランナ53からポンプインペラ52に戻る作動油の流れを整流させることで、ステータ54の反力によるトルク増幅作用を生じさせるようになっている。
【0036】
変速機6は、図2に示すように、同一軸線上に配置された入力軸62および出力軸63と、それら入力軸62および出力軸63の間に介在する複数のプラネタリギヤセットGS1,GS2および複数の回転要素RM1,RM2,RM3,RM4と、複数の油圧摩擦係合要素であるクラッチC1,C2,C3,C4およびブレーキB1,B2と、ワンウェイクラッチF1と、を含んで構成される多段の変速機構となっている。
【0037】
この変速機6は、図3に示すように、複数のクラッチC1−C4およびブレーキB1,B2等(ワンウェイクラッチF1を含む;以下、同様)の係合状態の組合せに応じて、複数の走行レンジ、例えば前進走行可能なD(ドライブ)レンジ、後進走行可能なR(リバース)レンジ、動力伝達経路を切断するN(ニュートラル)レンジ、および、出力軸63をロックするP(パーキング)レンジのいずれかに切替え可能になっている。
【0038】
さらに、変速機6は、入力軸62および出力軸63の間に介在する複数のクラッチC1−C4およびブレーキB1,B2等の係合状態に応じて、入力軸62および出力軸63の間に、変速ギヤ比(入力軸62の単位時間当たりの回転数nt/出力軸63の単位時間当たりの回転数nv)の互いに異なる多種類のギヤトレーンを多段の変速段として、それらのうち任意のギヤトレーンを択一的に形成できるようになっている。
【0039】
より具体的には、変速機6は、複数のクラッチC1−C4およびブレーキB1,B2等の係合状態に応じて、図4に示すように、Dレンジにおいて、入力軸62および出力軸63の間における変速ギヤ比が最も大きくなる1速ギヤ段(図3、図4中の「1st」;相対的に低速でトルクが大きくなる変速段)から、その変速ギヤ比が最も小さくなる8速ギヤ段(図3、図4中の「8th」;相対的に高速でトルクが小さくなる変速段)まで、多段変速可能になっている。
【0040】
また、変速機6には、油圧制御装置16が装着されている。
【0041】
この油圧制御装置16は、詳細な構成を図示しないが、例えば、複数のクラッチC1−C4およびブレーキB1,B2にそれぞれの作動油圧を制御可能に出力する複数のリニアソレノイドバルブ(図示していない)と、ライン圧、車速に応じたスロットル圧、および、ロックアップクラッチ5aの係合油圧を調整する複数のON−OFFソレノイドバルブおよび調圧スプールバルブとを内蔵している。なお、ライン圧は、ポンプインペラ52と共に駆動される公知のオイルポンプ59から供給される供給油圧である。また、スロットル圧は、エンジン4の発生トルクに応じた変速機6のライン油圧が得られるよう、変速機6内のライン油圧制御用の調圧スプールバルブを制御する信号油圧であり、例えばエンジン4のスロットル弁開度に応じてスロットル油圧制御用のソレノイドバルブをデュティー制御することで生成される。
【0042】
油圧制御装置16の複数のリニアソレノイドバルブは、電子制御装置3からの制御信号に応じてそれぞれの出力油圧を変化させることにより、複数のクラッチC1−C4およびブレーキB1,B2の係合状態を、図3中に「○」で示す係合状態と図3中に「×」で示す解放状態とのうち任意の一方の状態に切り替えることができるとともに、その励磁電流制御によって係合または解放時の過渡油圧を制御できるようになっている。また、油圧制御装置16の複数のON−OFFソレノイドバルブは、それぞれON−OFF制御されることで、調圧スプールバルブの調圧状態を制御するようになっている。
【0043】
このように、本実施形態においては、車両1に搭載された変速機6が、1速ギヤ段から3速ギヤ段までの複数段の低速側の変速段1st,2nd,3rdと、6速ギヤ段から8速ギヤ段までの複数段の高速側の変速段6th,7th,8thと、これらの間に存在する5速ギヤ段から6速ギヤ段までの複数段の中間変速段5th,6thとを形成可能な、多段の変速機構を構成している。そして、この変速機6が、エンジン4からの回転動力を変速して駆動輪である後輪8L,8R側に出力する。
【0044】
一方、電子制御装置3は、詳細なハードウェア構成を図示しないが、CPU、RAM、ROMおよび書換え可能な不揮発性メモリ、例えばPROMを備えるとともに、A/D変換器を有する入力インターフェース回路と、ドライバやリレースイッチを有する出力インターフェース回路と、他の車載ECUとの間でデータ通信を行う通信ポートとを含んで構成されている。
【0045】
電子制御装置3のROMには、例えばリアルタイムOSやデバイスドライバ、ミドルウェア等のシステムプログラムが格納されている。また、電子制御装置3のPROMには、例えば各種制御を実行するためのアプリケーションプログラムが格納されるとともに、変速マップMshや、図3に示す係合表に対応するテーブルデータTb等が格納されている。
【0046】
ここで、変速マップMshは、出力軸63の単位時間当たりの回転数nvに対応する車両1の車速V[km/h]とエンジン4のスロットル弁開度θth[%]とに応じて、車両1の走行状態に適した変速機6の変速段を選定するためのものである。この変速マップMshは、詳細を図示しないが、エンジン4のスロットル弁開度θthおよび車両1の車速Vの全可変範囲として把握される車両1の全運転領域を、複数の変速線(変速段の切替えライン)によって変速機6の多段の変速段に対応する複数の適正変速段領域に区画したもので、短周期で繰返し検出される現在のスロットル弁開度θthおよび車速Vの検出値に基づいて、リアルタイムに適正な変速段を選定することができるマップである。なお、そのような変速マップ自体は公知であり、その詳細は説明しないが、複数の変速線および適正変速段領域は、シフトアップ時とシフトダウン時で相違している。
【0047】
電子制御装置3の入力インターフェース回路には、エンジン4に装着されたスロットル開度センサ71、クランク角センサ72、エアフローメータ73、冷却水温センサ74等に加えて、車両1の装備されるアクセルポジションセンサ75、ブレーキペダル踏力センサ76、シフトレバーポジションセンサ77、パドル操作検出スイッチ78a,78bおよび特定走行モード選択スイッチ79等が接続されている。電子制御装置3の入力インターフェース回路には、さらに、変速機6内に設けられた入力軸回転速度センサ66および出力軸回転速度センサ67が接続されている。
【0048】
スロットル開度センサ71は、エンジン4の電子スロットル弁81の開度θthを検出し、クランク角センサ72は、エンジン回転数ne[rpm]を算出可能な単位時間毎のクランク軸41の回転角度CAを検出する。エアフローメータ73は、エンジン4の吸入空気量Qaを検出し、冷却水温センサ74は、エンジン4の冷却水温度thwを検出する。また、アクセルポジションセンサ75は、車両1の装備されるアクセルペダル91の踏込み操作量Acc(その踏込み操作量に対応するアクセル開度)を検出し、ブレーキペダル踏力センサ76は、車両1の装備されるブレーキペダルに加えられる踏力Brqを検出するようになっている。
【0049】
シフトレバーポジションセンサ77は、例えば車両1の車室内に装備されるシフトレバー92の操作位置Psh(例えばP,R,N,DおよびS)を検出するとともに、シーケンシャルシフト操作検出用のシフトスイッチとしても機能し得るようになっている。すなわち、シフトレバーポジションセンサ77は、シーケンシャルシフトモード選択位置Sからのシフトレバー92のアップシフト(+)方向への操作位置(S(+))およびシーケンシャルシフトモード選択位置Sからのシフトレバー92のダウンシフト(−)方向への操作位置(S(−))をそれぞれ検出できるようになっている。
【0050】
また、パドル操作検出スイッチ78a,78bは、ステアリングホイール95に装着された左右のシーケンシャルシフト操作用のパドル93a,93bの操作の有無を検出するシーケンシャルシフト操作検出用のシフトスイッチとなっている。そして、左右一方側のパドル操作検出スイッチ78aはダウンシフト(−)方向の切替え要求操作を、左右他方側のパドル操作検出スイッチ78bはアップシフト(+)方向の切替え要求操作を、それぞれ検出できるようになっている。
【0051】
特定走行モード選択スイッチ79は、標準の走行モードに対して、例えば車両1の運動性能やドライバビリティを優先する特定モードへの切替えを要求する操作手段である。
【0052】
入力軸回転速度センサ66は、入力軸62の単位時間当たりの回転数nt[rpm]を検出し、出力軸回転速度センサ67は、出力軸63の単位時間当たりの回転数nv[rpm]を検出することができるようになっている。
【0053】
電子制御装置3の出力インターフェース回路には、電子スロットル弁81の他、エンジン4側の図示しない燃料ポンプ、燃料噴射弁、イグナイタ(点火コイル)、スタータモータ等が接続されるとともに、変速機6側の油圧制御装置16の前記リニアソレノイドバルブおよびON−OFFソレノイドバルブ等が接続されている。
【0054】
そして、電子制御装置3は、ROMやPROM内に予め格納された制御プログラムに従って、エンジン4の出力制御および変速機6の変速制御等を実行するようになっている。すなわち、電子制御装置3は、エンジン制御用のECU(電子制御ユニット)の機能と、変速機6を制御する変速制御用のECUの機能とを併有している。
【0055】
エンジン制御用のECUとしての電子制御装置3は、例えばアクセルポジションセンサ75の検出情報であるアクセル開度Accに応じて目標スロットル弁開度を算出し、電子スロットル弁81の開度θthをその目標スロットル弁開度に制御する。また、クランク角センサ72で検出されるクランク角度CAに応じて、気筒毎の好ましい燃料噴射時期および点火時期に気筒毎の燃料噴射弁および点火コイルを駆動して、エンジン4の燃料噴射時期および噴射量や点火時期を制御するようになっている。また、電子制御装置3は、エンジン4の始動時には図示しないスタータモータによってエンジン4をクランキングさせることができるようになっている。エンジン4に対するこれらの制御を実行させるため、電子制御装置3は、エンジン4に各種の制御信号ECSを出力する。
【0056】
また、変速制御用のECUとしての電子制御装置3は、例えば現在のアクセル開度Accおよび車速Vに基づき、変速マップMshにより変速機6の目標変速段を決定し、その目標変速段を成立させるよう、各種の制御信号TCSをシフト指令として油圧制御装置16に出力して、複数のクラッチC1−C4およびブレーキB1,B2等の係合状態を目標変速段の組合せに制御する。
【0057】
具体的には、電子制御装置3は、変速機6の現在のシフト位置(変速段)が目標変速段と一致するときには、クラッチC1−C4およびブレーキB1,B2等の係合状態を現在のまま維持させる。一方、電子制御装置3は、変速機6の現在のシフト位置(変速段)が目標変速段と相違するときには、現在の変速段から目標変速段に移行させるためダウンシフト指令またはアップシフト指令を出力し、クラッチC1−C4およびブレーキB1,B2等の係合状態を目標変速段に対応する係合状態の組合せに切り替える。
【0058】
さらに、電子制御装置3は、車両1に装備された特定走行モード選択スイッチ79が選択操作されないときには、変速機6の変速制御の条件を燃費優先モードとして予め設定された条件にする一方、特定走行モード選択スイッチ79が選択操作されたときには、燃費より車両1の運動性能やドライバビリティを優先する特定モード、例えばマニュアルシフトモードやスポーツ走行モードとして予め設定された条件に切り替えることができるようになっている。
【0059】
ここで、少なくとも出力軸回転速度センサ67およびスロットル開度センサ71は、車両1の走行状態(少なくとも車速とエンジン出力)を検出する走行状態検出部70を構成している。なお、走行状態検出部70は、入力軸回転速度センサ66、クランク角センサ72、エアフローメータ73および冷却水温センサ74のいずれかをさらに含んで構成されてもよいし、図示しない加速度センサや勾配センサ等を含んで構成されてもよい。
【0060】
ここで、アクセルポジションセンサ75は、変速機6の変速段の切替えを間接的に要求する(変速要求を発生させる)操作入力を検出する操作入力検出部80を構成している。すなわち、操作入力検出部80は、車両1の加速を要求する加速要求操作量を検出する加速要求操作量検出器としてのアクセルポジションセンサ75を有しており、そのアクセルポジションセンサ75が、アクセルペダル91の踏込み操作量(その踏込み操作量に対応するアクセル開度)を検出するセンサとなっている。
【0061】
勿論、この操作入力検出部80は、変速機6の変速段の切替えを直接的に要求する操作入力を検出するシフトレバーポジションセンサ77またはパドル操作検出スイッチ78a,78bのいずれかを含んで構成されてもよいし、特定走行モード選択スイッチ79を含んで構成されてよい。その場合、操作入力検出部80は、変速機6の変速段の切替えを要求するシフトレバー92やパドル93a,93bのシフト要求操作量を検出するシフト要求操作量検出器を併有するものとなり、変速機6の変速段の順番変速による切替え要求を検出可能なシフトスイッチを有するものとなる。
【0062】
電子制御装置3は、走行状態検出部70によって検出される車両1の走行状態および操作入力検出部80により検出される手動操作入力に応じて、変速機6の変速段を切替え制御する切替え制御部となっている。
【0063】
そして、この電子制御装置3は、走行状態検出部70によって検出される走行状態および操作入力検出部80により検出される操作入力に応じて、変速制御を実行するようになっている。具体的には、電子制御装置3は、ダウンシフト方向への多段飛び越し変速要求(3段以上の飛び越し変速要求)を発生させるような操作入力、例えば車両1の加速を要求する所定アクセル開度以上のアクセルペダル91の踏込み操作入力に応じて、図4に示すように、多段のうち高速側の一の変速段PH(例えば8速または7速ギヤ段)から低速側の他の変速段PL(例えば4速または3速ギヤ段)に向かって飛び越し変速させるダウンシフト方向の変速制御を実行するようになっている。
【0064】
なお、本実施形態においては、電子制御装置3は、後輪8L,8R側から変速機6に変速後の出力を所定加速度以上に加速する動力が入力されるような被駆動状態となることが予測される場合には、一の変速段PHから他の変速段PLへの直接的なダウンシフト方向の飛び越し変速を禁止する(前述の特許文献3に記載される制御と同様の制御となる)。したがって、電子制御装置3は、車両1が、後輪8L,8R側から変速機6に変速後の出力を所定加速度以上に加速する動力が入力される被駆動状態となるか否かを判定するプログラムをRROM内に有し、被駆動状態判定部として機能するようになっている。
【0065】
また、電子制御装置3は、一の変速段PHから他の変速段PLに向かってダウンシフト方向の飛び越し変速制御を実行する際に、変速前の一の変速段PHが予め設定された特定の中間変速段PIを上回るとともに、変速要求段である他の変速段PLが特定の中間変速段PIを下回ることを条件として、一の変速段PHから特定の中間変速段PIまでの間の飛び越し変速と、特定の中間変速段PIから他の変速段PLまでの間の順番変速とを含む複合変速制御を実行するようになっている。
【0066】
電子制御装置3は、あるいは、特定走行モードにおいて、一の変速段PHから他の変速段PLに向かって直接に飛び越し変速を実行すると車両1が前記被駆動状態となると判定された場合に、一の変速段PHから特定の中間変速段PIまでの間の飛び越し変速と、特定の中間変速段PIから他の変速段PLまでの間の順番変速とを含む複合変速制御を実行するようになっていてもよい。
【0067】
ここにいう一の変速段PHとは、多段の変速機6における複数段の高速側の変速段のうちいずれか1つであり、他の変速段PLとは、多段の変速機6における複数段の低速側の変速段のうちいずれか1つである。
【0068】
図4に示すように、例えば6速ギヤ段(図4中の6th)から8速ギヤ段(図4中の8th)までの複数段の高速側の変速段の間においては、隣り合う変速段との間の変速ギヤ比の差(ギヤステップ)は小さく、これら高速側の変速段の範囲内におけるギヤステップの平均変化率α1は、小さいものとなる。一方、例えば1速ギヤ段(図4中の1st)から3速ギヤ段(図4中の3rd)までの複数段の低速側の変速段の間においては、ギヤステップは高速側の変速段の範囲内のギヤステップに比べて大きくなり、これら低速側の変速段の範囲内におけるギヤステップの平均変化率α2は、相対的に大きいものとなる。そして、複数段の高速側の変速段の範囲内における変速ギヤ比は、ギヤステップの平均変化率α1の傾きを有する直線La1に近い値となり、複数段の低速側の変速段の範囲内における変速ギヤ比は、ギヤステップの平均変化率α2の傾きを有する直線La2に近い値となる。
【0069】
特定の中間変速段PIとは、これら高速側の変速段の範囲(例えば6速ないし8速ギヤ段の範囲)と、低速側の変速段の範囲(例えば1速ないし3速ギヤ段の範囲)との間の複数の中間変速段(例えば4速ないし5速ギヤ段)のうち、ギヤステップの差が小さい高速側の変速段の範囲に近い方の中間変速段(例えば5速ギヤ段)である。なお、複数段の高速側の変速段の範囲、複数段の低速側の変速段の範囲および複数段の中間変速段の範囲が、ギヤステップの設定や変速機6の総変速段数によって変化し得ることはいうまでもなく、特定の中間変速段PIは、5速ギヤ段に限定されるものではない。
【0070】
電子制御装置3は、より具体的には、例えば一の変速段PHである8速ギヤ段から他の変速段PLである4速ギヤ段に向かって飛び越し変速制御を実行する際に、変速前の8速ギヤ段が特定の中間変速段PIである5速ギヤ段を複数段上回るとともに、変速要求段である4速ギヤ段が特定の中間変速段PIである5速ギヤ段を下回ることを条件として、8速ギヤ段から5速ギヤ段までの間の3段の飛び越し変速と、5速ギヤ段から4速ギヤ段までの間の順番変速とを含む変速制御(以下、複合変速制御という)を実行する。あるいは、電子制御装置3は、一の変速段PHである7速ギヤ段から他の変速段PLである4速、3速または2速ギヤ段に向かって飛び越し変速制御を実行する際に、変速前の7速ギヤ段が特定の中間変速段PIである5速ギヤ段を上回るとともに、変速要求段である4速、3速または2速ギヤ段が特定の中間変速段PIである5速ギヤ段を下回ることを条件として、7速ギヤ段から5速ギヤ段までの間の2段の飛び越し変速と、5速ギヤ段から4速、3速または2速ギヤ段までの間の順番変速とを含む複合変速制御を実行するようになっている。
【0071】
なお、電子制御装置3は、6速ギヤ段から3速または2速ギヤ段に向かって飛び越し変速制御を実行するような場合には、変速前の6速ギヤ段が特定の中間変速段PIである5速ギヤ段を上回るとともに、変速要求段である4速または3速ギヤ段が5速ギヤ段を下回るので、5速ギヤ段までの飛び越し変速が許容される条件が成立する。しかし、6速ギヤ段から5速ギヤ段までの間は1段のダウンシフトとなるので、この場合、6速ギヤ段から5速ギヤ段までの変速と、5速ギヤ段から4速または3速ギヤ段までの間の変速とを含む変速制御が、順番変速だけを実行させるものとなる。したがって、本実施形態では、実質的に、変速前の変速段が特定の中間変速段PIである5速ギヤ段を複数段上回ることを条件に、5速ギヤ段までの飛び越し変速が許容される条件が成立することになる。
【0072】
次に、本実施形態の変速制御装置の作用を説明するとともに、本実施形態の変速制御装置を用いて実施される本発明の第1実施形態の変速制御方法について説明する。
【0073】
上述のように構成された本実施形態の変速制御装置では、車両1の標準モードでの走行中において、現在のアクセル開度Accおよび車速Vに基づいて、変速マップMshにより変速機6の目標変速段が決定され、その目標変速段を成立させる制御信号TCSが、電子制御装置3から油圧制御装置16にシフト指令として出力される。
【0074】
例えば、変速機6の現在のシフト位置(変速段)が目標変速段と一致していれば、クラッチC1−C4およびブレーキB1,B2等の係合状態は現在のまま維持されるが、変速機6の現在のシフト位置が目標変速段と相違していれば、現在の変速段から目標変速段に移行させるためダウンシフト指令またはアップシフト指令が出力される。そして、クラッチC1−C4およびブレーキB1,B2等の係合状態が、目標変速段に対応する係合状態の組合せに切り替えられる。
【0075】
今、例えば車両1を登坂走行させるために、アクセルペダル91が所定アクセル開度以上に踏み込まれ、高速側の一の変速段PHから低速側の他の変速段PLに向かってダウンシフトさせる条件が成立したとすると、電子制御装置3によってダウンシフト指令が生成されるとともに、複合変速制御のプログラムが開始される。
【0076】
図5に、電子制御装置3によって実行されるそのような複合変速制御プログラムの概略の流れを示している。
【0077】
同図に示すように、本実施形態では、アクセルペダル91による加速要求操作入力に応じて電子制御装置3でダウンシフト指令が発生すると(ステップS11)、現在のギヤ段(変速段)が特定の中間変速段PIである5速ギヤ段以下であるか否かが判別される(ステップS12)。そして、その判別結果が「yes」であれば(ステップS12でyesの場合)、現在の変速ギヤ段から要求されるギヤ段への順番変速が指示・実行される(ステップS15)。この場合、例えば、現在の4速ギヤ段から要求ギヤ段である2速ギヤ段に順番変速でダウンシフトされるよう、電子制御装置3から油圧制御装置16に制御信号TCSが出力される。したがって、変速機6内のクラッチC1−C4およびブレーキB1,B2等の係合状態が、4速ギヤ段の係合状態の組合せから3速ギヤ段の係合状態の組合せに、次いで、3速ギヤ段の係合状態の組合せから2速ギヤ段の係合状態の組合せに、順次切り替えられることになる。
【0078】
現在のギヤ段(変速段)が5速ギヤ段以下でなく、ステップS12での判別結果が「no」となった場合には、次いで、5速ギヤ段未満へのダウンシフトが要求されているか否かが判別される(ステップS13)。そして、その判別結果が「yes」であれば(ステップS13でyesの場合)、現在の変速ギヤ段から5速ギヤ段への跳び越し変速が許可されて5速ギヤ段までの変速が指示・実行され(ステップS16)、次いで、5速ギヤ段から要求ギヤ段までの順番変速が指示・実行される(ステップS15)。この場合、最初に、例えば現在の7速ギヤ段から5速ギヤ段への2段の跳び越し変速がなされるよう、電子制御装置3から油圧制御装置16に制御信号TCSが出力される。したがって、変速機6内のクラッチC1−C4およびブレーキB1,B2等の係合状態が、7速ギヤ段の係合状態の組合せから5速ギヤ段の係合状態の組合せに、直接的に切り替えられる。次いで、5速ギヤ段から3速ギヤ段への順番変速がなされるよう、電子制御装置3から油圧制御装置16に制御信号TCSが出力される。したがって、変速機6内のクラッチC1−C4およびブレーキB1,B2等の係合状態が、5速ギヤ段の係合状態の組合せから4速ギヤ段の係合状態の組合せに、次いで、4速ギヤ段の係合状態の組合せから3速ギヤ段の係合状態の組合せに、順次切り替えられることになる。
【0079】
5速ギヤ段未満へのダウンシフトが要求されておらず、ステップS13での判別結果が「no」となった場合には、次いで、現在の変速ギヤ段から要求ギヤ段までの変速が実行される(ステップS14)。この場合、現在の変速ギヤ段から要求ギヤ段までの複数段の変速が要求されていれば、飛び越し変速が実行され得る。例えば、現在の8速または7速ギヤ段から7速または6速ギヤ段への順番変速が、あるいは、現在の8速または7速ギヤ段から6速または5速ギヤ段への2段の跳び越し変速が実行される。
【0080】
このように、本実施形態においては、アクセルペダル91の所定アクセル開度以上の踏込みによって変速機6のダウンシフトが必要となる走行状態への移行が要求され、その要求操作がアクセルポジションセンサ75によって検出されると、走行状態検出部70で検出される走行状態および操作入力検出部80で検出される操作入力に応じて、ダウンシフト方向の変速制御、例えば多段飛び越し変速制御を実行する。
【0081】
そして、変速機6の多段の変速段のうち順番変速の順番では複数段相違する高速側の一の変速段PHから他の変速段PLに向かって飛び越し変速させる飛び越し変速制御を実行する際に、一の変速段PHが特定の中間変速段PIを上回るとともに、他の変速段PLが特定の中間変速段PIを下回ることを条件として、一の変速段PHおよび特定の中間変速段PIの間の飛び越し変速と、他の変速段PLおよび特定の中間変速段PIの間の順番変速とを含む複合変速制御を実行するという変速制御方法が採用されている。
【0082】
ところで、ダウンシフト方向の飛び越し変速が要求される場合に、変速前の高速側の一の変速段PHと特定の中間変速段PIとの間では、隣り合う変速段間のギヤステップが相対的に小さくなり、飛び越し変速を行っても車両1の加減速度が急に大きくなる可能性が低い。一方、要求される低速側の他の変速段PLと特定の中間変速段PIとの間では、隣り合う変速段間のギヤステップが相対的に大きくなり、ダウンシフト方向の飛び越し変速を行うと車両1の加減速度が急に大きくなる可能性が高い。
【0083】
本実施形態の変速制御装置および方法では、一の変速段PHが特定の中間変速段PIを上回るとともに、他の変速段PLが特定の中間変速段PIを下回ることを条件に、一の変速段PHおよび特定の中間変速段PIの間の飛び越し変速と、他の変速段PLおよび特定の中間変速段PIの間の順番変速とを併用する複合変速制御を実行する。したがって、変速段数の多い多段変速機6におけるギヤステップの設定の相違にかかわらず、飛び越し変速を可能にして所要の応答性を確保しながら、順番変速の併用によりその変速前後における車両1の加減速度の変化を的確に一定限度内に抑え、ドライバビリティを向上させることができる。
【0084】
また、本実施形態においては、アクセルポジションセンサ75によって検出される所定アクセル開度以上の加速要求操作量に応じて変速機6の変速段の多段(3段以上)の切替えが要求されるとき、その要求操作量に応じて飛び越し変速を含む的確な変速制御が可能となる。したがって、自動変速モード下での順番変速回数が多いためにドライバの加速要求等に対する応答性が十分でないという問題を解消することができる。しかも、アクセルペダル91の踏込み操作量が検出されるので、ドライバの加速要求に対する応答性を確実に向上させることができる。
【0085】
以上のように、本実施形態によれば、特定の中間変速段PIを上回る一の変速段PHから特定の中間変速段PIを下回る他方側の変速段への変速が要求されるとき、一の変速段PHおよび特定の中間変速段PIの間の飛び越し変速と、他の変速段PLおよび特定の中間変速段PIの間の順番変速とを併用する複合変速制御を実行する。したがって、変速段数の多い多段変速機6におけるギヤステップの設定の相違にかかわらず、ダウンシフト方向の飛び越し変速を可能にしながら、その変速前後の加減速度の変化を的確に一定限度内に抑えて、ドライバビリティを向上させることのできる変速制御装置および変速制御方法を提供することができる。
【0086】
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態に係る変速制御方法を実施する制御プログラムの概略の流れを示している。なお、以下に説明する各実施形態は、変速制御装置の構成が上述の第1実施形態と略同様のものであり、その図示を省略するが、第1実施形態と同様の構成については図1〜図5に示した構成要素と同一の符号を用いて説明する。
【0087】
本実施形態においては、操作入力検出部80は、シフトレバーポジションセンサ77、パドル操作検出スイッチ78a,78bおよび特定走行モード選択スイッチ79を含んで構成されている。これらシフトレバーポジションセンサ77およびパドル操作検出スイッチ78a,78bは、それぞれ変速機6の変速段の順番変速による切替え要求を検出可能な複数のシフトスイッチを含んで構成されている。また、シフトレバーポジションセンサ77およびパドル操作検出スイッチ78a,78bは、多段の変速機6の変速段の切替えを要求するシフトレバー92のシフト要求操作量や、左右のシーケンシャルシフト操作用のパドル93a,93bの操作の有無および操作時における連続操作回数を検出できるシフト要求操作量検出器となっている。
【0088】
そして、電子制御装置3は、例えばシフトレバーポジションセンサ77およびパドル操作検出スイッチ78a,78bのいずれかが、多段の変速機6の所定切替え段数以上のシフト要求操作量を検出すると、そのシフト要求操作入力と走行状態検出部70によって検出される車両走行状態とに応じて、多段のうち高速側の一の変速段PHから低速側の他の変速段PLに向かって飛び越し変速させるダウンシフト方向の飛び越し変速制御を実行させ得るようになっている。
【0089】
図6に示すように、本実施形態では、まず、操作入力検出部80によってダウンシフト操作入力が検出されると(ステップS21)、現在のギヤ段(変速段)が特定の中間変速段PIである5速ギヤ段以下であるか否かが判別される(ステップS22)。そして、その判別結果が「yes」であれば(ステップS22でyesの場合)、現在の変速ギヤ段から要求されるギヤ段への順番変速が実行される(ステップS25)。例えば、現在の4速ギヤ段から要求ギヤ段である2速ギヤ段に順番変速でダウンシフトされる。
【0090】
現在のギヤ段(変速段)が5速ギヤ段以下でなく、ステップS22での判別結果が「no」となった場合には、次いで、5速ギヤ段未満へのダウンシフトが要求されているかが判別される(ステップS23)。そして、その判別結果が「yes」であれば(ステップS23でyesの場合)、現在の変速ギヤ段から5速ギヤ段への跳び越し変速が許可されて5速ギヤ段までの変速が実行され(ステップS26)、次いで、5速ギヤ段から要求ギヤ段までの順番変速が実行される(ステップS25)。例えば、現在の7速ギヤ段から5速ギヤ段への2段の跳び越し変速が実行された後、5速ギヤ段から要求ギヤ段である3速ギヤ段までの順番変速が実行されることになる。
【0091】
5速ギヤ段未満へのダウンシフトが要求されておらず、ステップS23での判別結果が「no」となった場合には、次いで、現在の変速ギヤ段から要求ギヤ段までの変速が実行される(ステップS24)。この場合、現在の変速ギヤ段から要求ギヤ段までの複数段の変速が要求されていれば、飛び越し変速が実行され得る。例えば、現在の8速または7速ギヤ段から7速または6速ギヤ段への順番変速が、あるいは、現在の8速または7速ギヤ段から6速または5速ギヤ段への2段の跳び越し変速が実行される。
【0092】
このように、本実施形態の変速制御装置および方法では、操作入力検出部80が、多段変速機6の変速段の切替えを要求する所定段数以上のシフト要求操作量に応じて変速機6の変速段の切替えが要求されるとき、その要求操作量に応じて飛び越し変速と順番変速を含む的確な変速制御が可能となる。したがって、飛び越し変速による所要の応答性を確保しながら、順番変則を併用することで、ダウンシフト方向の飛び越し変速による車両1の加減速度がドライバの意図した加減速度の程度と大きく異なってしまうことを防止することができる。
【0093】
また、本実施形態においては、シフトレバーポジションセンサ77およびパドル操作検出スイッチ78a,78bが、変速機6の変速段の順番変速による切替え要求を検出可能なシフトスイッチを含んで構成されているので、ドライバのシフト要求操作に対する応答性を確実に向上させることができる。
【0094】
また、本実施形態では、シフトレバーポジションセンサ77およびパドル操作検出スイッチ78a,78bが変速機6の変速段の切替えを要求するシフト要求操作量を検出した場合であって、そのシフト要求操作量と車両1の走行状態とに応じて飛び越し変速制御を実行する際に、複合変速制御を実行可能としている。したがって、特定の中間変速段PIより高速側からの飛び越し変速が要求されるようなダウンシフト要求操作入力がなされたとき、その要求操作量に応じて飛び越し変速を含む複合変速制御が実行される。その結果、順番変速回数が抑えられ、ドライバの加速要求に対する応答性が十分に確保され、しかも、飛び越し変速による車両の加減速度がドライバの意図した加減速度の程度と大きく異なってしまうことを防止できる。
【0095】
(第3実施形態)
図7は、本発明の第3実施形態に係る変速制御方法を実施する制御プログラムの概略の流れを示している。
【0096】
本実施形態においては、電子制御装置3は、第1実施形態の場合と同様に、後輪8L,8R側から変速機6に変速後の出力を所定加速度以上に加速する動力が入力される被駆動状態となるか否かを判定する被駆動状態判定部として機能するだけでなく、被駆動状態となると判定した場合に複合変速制御を実行可能とする機能を併有している。
【0097】
また、電子制御装置3は、特定走行モード選択スイッチ79により特定の運転モードが選択されている場合であって、被駆動状態となるような変速段への飛び越し変速が要求されるときに、複合変速制御を実行可能とするようになっている。
【0098】
なお、ここでの被駆動状態となる場合とは、例えば変速機6の高速側変速段からのダウンシフト方向の所定段数以上の多段飛び越し変速が要求されるようなシフト要求操作量がシフトレバーポジションセンサ77およびパドル操作検出スイッチ78a,78bによって検出されたときである。
【0099】
より具体的には、本実施形態の電子制御装置3は、高速側の一の変速段PHから低速側の他の変速段PLへの被駆動状態となるような飛び越し変速が要求された場合に、図7に概略の流れを示すような複合変速制御プログラムを実行する。
【0100】
図7に示すように、本実施形態では、まず、操作入力検出部80によってダウンシフト操作入力が検出されると(ステップS31)、後輪8L,8R側から変速機6に変速後の出力を所定加速度以上に加速する動力が入力される被駆動状態となるか否かが被駆動状態判定部としての電子制御装置3によって判定される(ステップS32)。そして、その判定結果がnoであり、被駆動状態とならない場合には、現在の変速ギヤ段から要求されるギヤ段への順番変速が実行される(ステップS36)。例えば、現在の4速ギヤ段から要求ギヤ段である2速ギヤ段に順番変速でダウンシフトされる。
【0101】
一方、被駆動状態となる場合(ステップS32でyesの場合)、次いで、現在のギヤ段(変速段)が特定の中間変速段PI、例えば5速ギヤ段以下であるか否かが判別される(ステップS33)。そして、その判別結果が「yes」であれば(ステップS33でyesの場合)、現在の変速ギヤ段から要求されるギヤ段への順番変速が実行される(ステップS36)。
【0102】
現在のギヤ段(変速段)が5速ギヤ段以下でなく、ステップS33での判別結果が「no」となった場合には、次いで、5速ギヤ段未満へのダウンシフトが要求されているかが判別される(ステップS34)。そして、その判別結果が「yes」であれば(ステップS34でyesの場合)、現在の変速ギヤ段から5速ギヤ段への跳び越し変速が許可されて5速ギヤ段までの変速が実行され(ステップS37)、次いで、5速ギヤ段から要求ギヤ段までの順番変速が実行される(ステップS36)。例えば、現在の7速ギヤ段から5速ギヤ段への2段の跳び越し変速が実行された後、5速ギヤ段から要求ギヤ段である2速ギヤ段までの順番変速が実行されることになる。
【0103】
5速ギヤ段未満へのダウンシフトが要求されておらず、ステップS23での判別結果が「no」となった場合(ステップS34でnoの場合)には、次いで、現在の変速ギヤ段から要求ギヤ段までの変速が実行される(ステップS35)。この場合、現在の変速ギヤ段から要求ギヤ段までの複数段の変速が要求されていれば、飛び越し変速が実行され得ることになる。
【0104】
本実施形態においても、特定の中間変速段PIより高速側からの多段の飛び越し変速が要求されるような操作入力がなされたとき、その要求操作量に応じて飛び越し変速を含む複合変速制御が実行される。その結果、順番変速回数が抑えられ、ドライバの加速要求に対する応答性が十分に確保され、しかも、順番変速を併用することで、飛び越し変速による車両の加減速度がドライバの意図した加減速度の程度と大きく異なってしまうことを防止できる。
【0105】
しかも、本実施形態では、被駆動状態、すなわち、エンジン4がいわゆるオーバーレブ状態となって車両1が急減速されるような事態を有効に回避しつつ、ドライバの要求する低速側の変速段までのダウンシフト方向の変速を確実に実行させることができる。
【0106】
なお、上述の各実施形態においては、変速機6を複数のプラネタリギヤセットGS1,GS2および複数の回転要素RM1,RM2,RM3,RM4と、複数の油圧摩擦係合要素であるクラッチC1,C2,C3,C4およびブレーキB1,B2等を備えたトルクコンバータ付の多段変速機としたが、本発明にいう変速機は、複数の油圧摩擦係合要素を用いることなく、他の電動アクチュエータ等によって変速切替えを行う変速機であってもよい。また、変速機6は、ギヤ機構でない変速機構を有するものであってもよいし、トルクコンバータは必ずしも必要でない。エンジン4は、内燃機関としたが、電動機を併用するハイブリッドエンジンであってもよいし、他の回転動力源であってもよい。
【0107】
さらに、本発明は、変速機6を実質的に無段変速可能な変速機とし、その変速機6をマニュアルシフト操作に応じて多段段変させるような場合にも適用可能である。
【0108】
車両1の駆動輪が後輪8L,8Rでなく、前輪であってもよいことはいうまでもない。また、標準の走行モードや、燃費優先の走行モード、車両運動性能の優先モード等の相違に応じて、特定の中間変速段PIを可変設定することも考えられる。
【0109】
以上説明したように、本発明に係る変速制御装置は、特定の中間変速段PIを上回る一の変速段PHから特定の中間変速段PIを下回る他方側の変速段への変速が要求されるとき、一の変速段PHから特定の中間変速段PIへの飛び越し変速と、特定の中間変速段PIから他の変速段PLへの順番変速とを併用する複合変速制御を実行できる。したがって、変速段数の多い多段変速機における隣接段間の変速比の差の設定の相違にかかわらず、飛び越し変速を可能にして応答性を確保しながら、順番変速の併用によってその変速前後の加減速度の変化を的確に一定限度内に抑えることができる。その結果、ドライバビリティを向上させることのできる変速制御装置および変速制御方法を提供することができる。このような本発明は、操作入力に応じて変速機構を多段に変速動作させるとともに選択的に飛び越し変速を実行させる変速制御装置および変速制御方法全般に有用である。
【符号の説明】
【0110】
1 車両
2 走行駆動装置
3 電子制御装置(切替え制御部、複合変速制御部、被駆動状態判定部)
4 エンジン
5 トルクコンバータ
6 変速機(多段変速機、多段の変速機構)
8L,8R 後輪(駆動輪)
16 油圧制御装置
41 クランク軸
61 ケース(変速機ケース)
62 入力軸
63 出力軸
66 入力軸回転速度センサ
67 出力軸回転速度センサ
70 走行状態検出部
71 スロットル開度センサ
72 クランク角センサ
75 アクセルポジションセンサ(加速要求操作量検出器、アクセル開度センサ)
77 シフトレバーポジションセンサ(シフト要求操作量検出器、シフトスイッチ)
78a,78b パドル操作検出スイッチ(シフト要求操作量検出器、シフトスイッチ)
79 特定走行モード選択スイッチ
80 操作入力検出部
81 電子スロットル弁
91 アクセルペダル
92 シフトレバー
93a,93b パドル
95 ステアリングホイール
θth スロットル弁開度(開度)
nt 入力軸回転速度(入力軸の単位時間当たりの回転数)
nv 出力軸回転速度(出力軸の単位時間当たりの回転数)
B1,B2 ブレーキ
C1,C2,C3,C4 クラッチ
GS1,GS2 プラネタリギヤセット(多段の変速機構)
RM1,RM2,RM3,RM4 回転要素(多段の変速機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの回転動力を変速要求に応じ変速して駆動輪側に出力する変速機が多段の変速機構を有する車両に搭載される変速制御装置であって、
前記変速要求により、一の変速段から他の変速段へのダウンシフト方向の多段飛び越し変速が要求されるとき、前記一の変速段が特定の中間変速段より複数段高速側の変速段であることを条件として、前記一の変速段から前記特定の中間変速段への飛び越し変速と、前記特定の中間変速段から前記他の変速段への順番変速とを含む変速制御を実行することを特徴とする変速制御装置。
【請求項2】
前記一の変速段が前記特定の中間変速段を含む複数段の中間変速段より高速側の変速段であり、前記他の変速段が、前記複数段の中間変速段より低速側の変速段であることを条件に、前記変速制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の変速制御装置。
【請求項3】
前記車両の加速を要求する操作入力がなされ、前記一の変速段から前記他の変速段への変速要求が生じたことを条件に、該変速要求に応じて、前記変速制御を実行することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の変速制御装置。
【請求項4】
前記一の変速段から前記他の変速段への切替えを要求する前記変速要求としての手動操作入力に応じて、前記変速制御を実行することを特徴とする請求項1ないし請求項3のうちいずれか1の請求項に記載の変速制御装置。
【請求項5】
前記多段の変速機構の現在の変速段が前記特定の中間変速段より低速側である状態で、前記変速要求によって前記現在の変速段からダウンシフト方向への変速要求がなされたとき、該変速要求に応じて、前記現在の変速段から要求された変速段までの順番変速を実行することを特徴とする請求項1ないし請求項4のうちいずれか1の請求項に記載の変速制御装置。
【請求項6】
前記駆動輪側から前記変速機に前記変速後の出力を加速する動力が入力される被駆動状態となるか否かを判定する被駆動状態判定部を備え、該被駆動状態判定部によって前記被駆動状態となると判定されたことを条件として、前記変速制御を実行することを特徴とする請求項1ないし請求項5のうちいずれか1の請求項に記載の変速制御装置。
【請求項7】
前記駆動輪側から前記変速機に前記変速後の出力を加速する動力が入力される被駆動状態となるか否かを判定する被駆動状態判定部を備え、該被駆動状態判定部によって前記被駆動状態となると判定されたことを条件として、前記一の変速段から前記他の変速段への直接の飛び越し変速を禁止する一方、該被駆動状態判定部によって前記被駆動状態とならないと判定されたことを条件として、前記変速制御を実行することを特徴とする請求項1ないし請求項5のうちいずれか1の請求項に記載の変速制御装置。
【請求項8】
エンジンからの回転動力を変速要求に応じ変速して駆動輪側に出力する変速機が多段の変速機構を有する車両における変速制御方法であって、
前記変速要求により、一の変速段から他の変速段へのダウンシフト方向の多段飛び越し変速が要求されるとき、前記一の変速段が特定の中間変速段より複数段高速側の変速段であることを条件として、前記一の変速段から前記特定の中間変速段への飛び越し変速と、前記特定の中間変速段から前記他の変速段への順番変速とを含む変速制御を実行することを特徴とする変速制御方法。
【請求項9】
前記車両の加速を要求する操作入力がなされ、前記一の変速段から前記他の変速段への変速要求が生じたことを条件に、前記変速制御を実行可能とすることを特徴とする請求項8に記載の変速制御方法。
【請求項10】
前記一の変速段から前記他の変速段への切替えを要求する前記変速要求としての手動操作入力がなされたとき、前記変速制御を実行可能とすることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の変速制御方法。
【請求項11】
前記駆動輪側から前記変速機に前記変速後の出力を加速する動力が入力される被駆動状態となるか否かを判定し、前記被駆動状態となると判定されたことを条件として、前記変速制御を実行可能とすることを特徴とする請求項8ないし請求項10のうちいずれか1の請求項に記載の変速制御方法。
【請求項12】
前記駆動輪側から前記変速機に前記変速後の出力を加速する動力が入力される被駆動状態となるか否かを判定し、前記被駆動状態となると判定されたことを条件として、前記一の変速段から前記他の変速段への直接の飛び越し変速を禁止する一方、前記被駆動状態とならないと判定されたことを条件として、前記変速制御を実行することを特徴とする請求項8ないし請求項10のうちいずれか1の請求項に記載の変速制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−96444(P2013−96444A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237372(P2011−237372)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】