説明

変速機のシフト装置

【課題】 インターロックブロックの大きさと重量を低減可能な変速機のシフト装置を提供する。
【解決手段】 本発明の変速機のシフト装置は、複数のフォーク軸1と、フォークヘッド2と、先端部31にシフト動作の方向に細長くセレクト動作の方向に貫通する長穴32が形成されているインナレバー3と、長穴32内に配設される連結部44と、インナレバー3の先端部31近傍且つセレクト動作方向に対して連結部44の両側に位置し、インナレバー3のセレクト動作でインナレバー3と係合し、インナレバー3が複数のフォーク軸1のうちいずれか1つのフォークヘッド2に係合する際、いずれか1つのフォークヘッド2に隣接するフォークヘッド2が軸線方向に移動するのを規制するロック部42とを備えるインターロックブロック4と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機のシフト装置に関し、特にシフト及びセレクト操作に応じて変速段を選択できる変速機のシフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の変速機には、操作者のシフト操作及びセレクト操作に応じて複数のフォーク軸のうちいずれかが選択され、選択されたフォーク軸が軸線方向に移動することで、操作によって選択された変速段に車両の変速段が変更されるシフト装置を用いた手動式変速機がある。また、この手動式変速機の操作を機械的に自動で行う構成の自動変速機もある。
【0003】
ところで、この種のシフト装置は、複数のフォーク軸の何れか1つを選択し、セレクト動作で選択されたフォーク軸を軸線方向に移動させるシフト動作とを行うためのインナレバーを有する。そして、インナレバーのセレクト動作によって1つのフォーク軸が動く際、インナレバーによって選択されていないフォーク軸が軸線方向に移動しないようにするインターロックブロックを有する。インターロックブロックは、インナレバーのセレクト動作に連動してセレクト動作の方向に移動し、シフト動作には連動せずシフト動作の方向には移動しない。これは、選択した変速段以外が選択されないように、変速段の二重噛み合いを防止するためのものである。
【0004】
インナレバーは、セレクト動作するための回動中心となる軸から拡径方向に突出した形状を有する。突出した先端がフォーク軸のフォークヘッドと係合する。そして、インターロックブロックは、インナレバーをインナレバーの回動中心となる部分から突出した形状部分まで覆う形状である(特許文献1の図1、図5他と特許文献2の図1、図8他)。インターロックブロックは、特許文献1及び2の図からもわかるように、インナレバーを覆うため大きな形状をしており、重量もある。そのため、変速機内の必要空間の増大や、その重量を支える他の構成も頑丈である必要があり、シフト装置全体として重量大となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−180334号公報
【特許文献2】特開2009−121656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、インターロックブロックの大きさと重量を低減可能な変速機のシフト装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に係る発明の構成上の特徴は、それぞれフォークを備え、互いに略平行に配置された複数のフォーク軸と、
前記複数のフォーク軸のそれぞれに、拡径方向において略同方向で軸線方向で離れて2つ突出したフォークヘッドと、
前記フォーク軸の軸線方向に移動するシフト動作及び前記複数のフォークヘッドの間を移動するセレクト動作が行え、先端部に前記シフト動作の方向に細長く前記セレクト動作の方向に貫通する長穴が形成されているインナレバーと、
前記長穴内に配設される連結部と、前記インナレバーの先端部近傍側且つ前記セレクト動作方向に対して前記連結部の両側に位置し、前記インナレバーの前記セレクト動作で前記インナレバーと係合し、前記インナレバーが前記複数のフォーク軸のうちいずれか1つの前記フォークヘッドに係合する際、前記いずれか1つの前記フォークヘッドに隣接する前記フォークヘッドが前記軸線方向に移動するのを規制するロック部とを備え、前記インナレバーの前記シフト動作には連動せず、前記シフト動作の方向には動かず、前記インナレバーの前記セレクト動作に連動して動くインターロックブロックと、
を有し、
前記長穴の前記シフト動作の方向の長さは、前記インナレバーが前記シフト動作した際、前記フォークヘッドが前記軸線方向に移動して前記ロック部と前記ロック部との間に入ることができ、前記フォーク軸のシフトストロークに影響がない長さで、
前記連結部が配設される前記セレクト動作の方向の前記ロック部と前記ロック部との間の長さは、前記インナレバーの前記セレクト動作方向の長さ以上且つ前記インナレバーが前記複数のフォーク軸のうちいずれか1つの前記フォークヘッドに係合する際に前記隣接するフォークヘッド間の前記セレクト動作方向の長さ以下であることである。
【0008】
また請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、前記インターロックブロックが、ケース又はケースに固定された部材に保持されるピンが挿入される、一方のロック部の端から前記セレクト動作の方向に窪んだ形状のシフト動作規制部を有することである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明においては、インナレバーのシフト動作に連動せずセレクト動作に連動して動くインターロックブロックがインナレバーの先端部近傍に位置する。インナレバーのセレクト動作によって選択された複数のフォーク軸のうちいずれか1つ以外のフォーク軸のシフト動作(軸線方向移動)を規制するインターロックブロックのロック部は、インナレバーの先端部に形成されている長穴に配設される連結部によって連結されている。よって、インターロックブロックは、インナレバーの全体を覆うような従来の形状ではない。ロック部は各フォーク軸のフォークヘッドとインナレバーのシフト動作によって、他のフォークヘッドと係合することができる大きさでよく、ロック部は連結部で連結されていれば良い。そして、連結部はインナレバーの先端部の長穴に配設されるため、インターロックブロック自体の大きさ及び重量が低減できる。
【0010】
請求項2に係る発明においては、インターロックブロックがセレクト動作の方向に窪んだシフト動作規制部を有し、当該シフト動作規制部にケースなどの固定された箇所からピンが挿入されるため、インターロックブロックは、セレクト動作の方向への移動が可能で、シフト動作の方向への移動が規制される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の変速機のシフト装置の構成を示す説明図である。
【図2】本実施形態の変速機のシフト装置で用いられるインナレバーとシフトセレクト軸の構成を示す説明図である。
【図3】本実施形態の変速機のシフト装置で用いられるインターロックブロックの構成を示す説明図である。
【図4】本実施形態の変速機のシフト装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の代表的な実施形態を図1〜図4を参照して説明する。本実施形態に係る変速機のシフト装置は、車両に搭載される。
【0013】
(実施形態)
本実施形態の変速機のシフト装置は、図1に示されるように、フォーク軸1と、フォークヘッド2と、インナレバー3と、インターロックブロック4とを有する。
【0014】
フォーク軸1は、それぞれにフォーク(図示略)を備え、互いに略平行に配置されている棒状の部材で、軸線方向に移動可能である。
【0015】
フォークヘッド2は、各フォーク軸1に1つ固定される。拡径方向で略同方向に2つ突出している。1つのフォークヘッド2は、突出した2つの間に後述するインナレバー3又はインターロックブロック4が係合可能である。各フォークヘッド2は、一定間隔で並んで配置されている。この間隔は、フォーク軸1同士の間隔とは異なる場合がある。なお、図1に示されるフォークヘッド2は、フォーク軸1と別体であるが、フォーク軸1に一体のものでも良い。
【0016】
インナレバー3は、図2に示されるように、シフトセレクト軸5と一体的で、シフトセレクト軸5から拡径方向に突出している。なお、インナレバー3は、シフトセレクト軸5と別体でもよい。インナレバー3は、シフトセレクト軸5を回動中心に回動するセレクト動作と、フォーク軸1の軸線方向に移動するシフト動作とを行う。インナレバー3の先端部31には、シフト動作方向(シフト動作の方向)に細長く開口し、セレクト動作方向(セレクト動作の方向)に貫通する長穴32が形成されている。図1に戻って、インナレバー3はセレクト動作で、その先端部31が複数のフォーク軸1のフォークヘッド2の間を回動し、いずれか1つのフォーク軸1のフォークヘッド2と係合する。そして、シフト動作で、係合したフォーク軸1を軸線方向に移動させる。長穴32には、後述するインターロックブロック4の連結部44が配設されている。
【0017】
インターロックブロック4は、図1及び図3に示されるように、連結部44とロック部42とを有し、インナレバー3の先端部31近傍に位置する。連結部44は、先端部31に形成されている長穴32にセレクト動作方向に貫通するように配設されており、セレクト動作方向に分割されたロック部42を連結する。ロック部42は、インナレバー3の先端部31をセレクト動作方向の両側から挟むように分割して配置されている。フォーク軸1からインナレバー3の先端31部方向に相当する長さ(厚さ)は、フォークヘッド2の突出した長さより短い。ロック部42の厚みをフォークヘッド3の突出した長さより長く形成したものでも良い。しかし、その分インターロックブロック4が大きくなり且つ重くなるため、インナレバー3のセレクト動作でインナレバー2と充分に係合し、且つシフト動作の際、フォークヘッド2と係合できるだけの長さがあれば、短いほうがより小さく軽量化できるため、望ましい。また、インターロックブロック4全体としては、フォーク軸1側がセレクト動作方向に丸みを帯びたように若干曲線であるため、連結部44側よりもセレクト動作方向の端部の方が厚みが若干薄い。これはシフトセレクト軸5を中心に回動するインナレバー3のセレクト動作に連動してインターロックブロック4がセレクト動作する際、セレクト動作方向の両端に向けて厚みを狭める形状とすることで、セレクト動作がスムーズに行えるようにするためである。
【0018】
連結部44は、セレクト動作方向に細長い部材である。連結部44は、インナレバー3の長穴32にセレクト動作方向に貫通するように配設され、インナレバー3を挟んで配置されるロック部42が両端に結合している。ロック部42が両端に結合した状態の一方のロック部42から他方のロック部42へのセレクト動作方向の長さbは、図4に示されるように、インナレバー3の先端部31が挿入される長さである。そして、1つのフォークヘッド2がシフト動作によって係合している際に、隣接する他のフォークヘッド2が進入できない幅である。
【0019】
そして、図2に戻って、インナレバーの長穴32のシフト動作方向の長さaは、インナレバー3がシフト動作する際、インターロックブロック4をシフト動作方向に移動させないように、連結部44をシフト動作方向に押圧しない程度であり、連結部44のシフト動作方向の長さも考慮する必要がある。
【0020】
インターロックブロック4には、図3及び図4に示されるように、更にシフト動作規制部43が一方のロック部42に形成されている。シフト動作規制部43には、ケース9(あるいはケース9に固定されたブラケットなど)に固定されるピン8がセレクト動作方向で挿入され、シフト動作規制部43とピン8とが係合する。シフト動作規制部43のシフト動作方向の幅は、ピン8のセレクト動作方向とほぼ同じ幅である。シフト動作規制部43とピン8のセレクト動作方向における長さの関係は、インターロックブロック2がセレクト動作方向に移動する際、係合が外れず且つセレクト動作の邪魔をしない長さである。
【0021】
図4において、1つのフォークヘッド2に対応する変速段が2つ、シフト動作方向に並んで配置される。例えば、1stと2ndが1つのフォークヘッド2(2)に対応する。そして、本実施形態の変速機のシフト装置では、その組み合わせが、セレクト動作方向に4つ配置されている。3thと4thがフォークヘッド2(3)、5thと6thがフォークヘッド2(4)に対応する。なお、リバース(Rev)には対応する変速段がないため、図示されていない。
【0022】
インナレバー3は、フォークヘッド2(1)〜2(4)の間をセレクト動作する。3thか4thの変速段が選択される場合、インナレバー3はセレクト動作方向で、フォークヘッド2(3)に位置し、3thか4thのどちらかにシフト動作する。インナレバー3はフォークヘッド2(3)とシフト動作方向で係合し、フォーク軸1をシフト動作方向に移動させ、フォーク軸1がシフトストロークする。その際、インターロックブロック4は、インナレバー3のセレクト動作に連動してセレクト動作方向に移動し、インナレバー3のシフト動作には連動しない。ロック部42は、セレクト動作方向でインナレバー3が位置していない隣接するフォークヘッド2(2)とフォークヘッド2(4)に当接することでシフト動作方向の移動ができない。これにより、変速段の二重噛み合いが防止される。
【0023】
本実施形態の変速機のシフト装置は、インターロックブロック4がインナレバー3の先端部31近傍のみに位置するが、従来の技術と同様に、インナレバー3はセレクト動作でき、インナレバー3のセレクト動作によって選択されたフォークヘッド2はシシフト動作方向に移動し、インナレバー3のセレクト動作によって選択されていないフォークヘッドのシフト動作方向の移動は規制できる。本実施形態の変速機のシフト装置よれば、インターロックブロック4の大きさと重量が低減されるため、変速機内部に配置するスペースも減少でき、シフト装置自体の重量も軽量化できる。
【0024】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、インターロックブロック4の連結部44は、棒形状に限られず、断面矩形の細長い部材でも良い。また、各フォークヘッド2に対応する変速段は、図4以外の組み合わせ及び配置でも良い。
【符号の説明】
【0025】
1:フォーク軸、
2:フォークヘッド、
3:インナレバー、 31:先端部、 32:長穴、
4:インターロックブロック、 42:ロック部、 43:シフト動作規制部、
44:連結部、
8:ピン、
9:ケース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれフォークを備え、互いに略平行に配置された複数のフォーク軸と、
前記複数のフォーク軸のそれぞれに、拡径方向において略同方向で軸線方向で離れて2つ突出したフォークヘッドと、
前記フォーク軸の軸線方向に移動するシフト動作及び前記複数のフォークヘッドの間を移動するセレクト動作が行え、先端部に前記シフト動作の方向に細長く前記セレクト動作の方向に貫通する長穴が形成されているインナレバーと、
前記長穴内に配設される連結部と、前記インナレバーの先端部近傍側且つ前記セレクト動作方向に対して前記連結部の両側に位置し、前記インナレバーの前記セレクト動作で前記インナレバーと係合し、前記インナレバーが前記複数のフォーク軸のうちいずれか1つの前記フォークヘッドに係合する際、前記いずれか1つの前記フォークヘッドに隣接する前記フォークヘッドが前記軸線方向に移動するのを規制するロック部とを備え、前記インナレバーの前記シフト動作には連動せず、前記シフト動作の方向には動かず、前記インナレバーの前記セレクト動作に連動して動くインターロックブロックと、
を有し、
前記長穴の前記シフト動作の方向の長さは、前記インナレバーが前記シフト動作した際、前記フォークヘッドが前記軸線方向に移動して前記ロック部と前記ロック部との間に入ることができ、前記フォーク軸のシフトストロークに影響がない長さで、
前記連結部が配設される前記セレクト動作の方向の前記ロック部と前記ロック部との間の長さは、前記インナレバーの前記セレクト動作方向の長さ以上且つ前記インナレバーが前記複数のフォーク軸のうちいずれか1つの前記フォークヘッドに係合する際に前記隣接するフォークヘッド間の前記セレクト動作方向の長さ以下であることを特徴とする変速機のシフト装置。
【請求項2】
前記インターロックブロックは、ケース又はケースに固定された部材に保持されるピンが挿入される、一方のロック部の端から前記セレクト動作の方向に窪んだ形状のシフト動作規制部を有する請求項1に記載の変速機のシフト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−87813(P2013−87813A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226689(P2011−226689)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(592058315)アイシン・エーアイ株式会社 (490)
【Fターム(参考)】