説明

変速機の変速操作機構

【課題】本発明は、変速機の変速操作機構において、変速スイッチを設置するにあたり、できるだけ変速スイッチの設置スペースを、効率的且つコンパクトに構成して、変速機とエンジンが大型化するのを防止できる変速機の変速操作機構を提供することを目的とする。
【解決手段】変速機のニュートラル状態、非ニュートラル状態を検出するニュートラルスイッチ50をカウンターウェイト80とドライブシャフト90との間の側壁部82後方のデッドスペースWに設置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、変速機の変速操作機構に関し、特に、変速機のメインシャフトと車輪に連結されたドライブシャフトとを備え、運転者のチェンジレバーの操作に応じて動作するチェンジロッドと、変速機構を切換えるシフトフォークとを具備する変速機の変速操作機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、手動変速機等の変速機でも、エンジン制御等に用いるため、変速機の変速状態を検出する変速スイッチ(例えば、ニュートラルスイッチ)を設置することが知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1でも、運転者の変速操作を変速機構に伝達する変速操作機構の動きを検出して、変速機の変速状態を検出する変速スイッチを設けている。
【0004】
具体的には、特許文献1の図3に示すように、変速機1の変速操作機構のうち、ガイドプレート205に係合するガイドロッド201の動きを検出するように、該ガイドロッド201に近接したケースに変速スイッチ208を設置している。
【0005】
これにより、運転者の変速操作に伴ってガイドロッド201が軸方向に移動又は軸廻りに回転する動きを変速スイッチで検出して、変速機の変速状態を検出している。
【0006】
【特許文献1】特開2003−14115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、変速機は、近年ドライブフィーリングを向上する目的等のため、多段化されており、例えば、前述の特許文献1の変速機も前進6段、後進1段の変速段を有している。
【0008】
このように、変速機を多段化すると必然的に変速機が大型化してしまい、従前の収容スペースに変速機を収容できなくなるおそれがある。特に、車両前部のエンジンルーム内に収容する場合にあっては、車両衝突の際のクラッシュスペースも確保しなければならないため、また車幅方向のスペースも制限されるため、できるだけ変速機をコンパクトに構成することが要請される。
【0009】
この点、前述の特許文献1の変速機の場合、クラッチハウジングのエンジン側側面に変速スイッチを突出するように設置しているため、変速スイッチ及びこれから外方に延びるハーネス等の存在により、変速機とエンジンとの間に変速スイッチを設置するためのスペースが必要となり、変速機とエンジンをコンパクトに構成できないという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、変速機の変速操作機構において、変速スイッチを設置するにあたり、できるだけ変速スイッチの設置スペースを、効率的且つコンパクトに構成して、変速機とエンジンが大型化するのを防止できる変速機の変速操作機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の変速機の変速操作機構は、車幅方向に延びるように設置した変速機のメインシャフトと、該変速機のメインシャフトと平行に車両後方側斜め下方に設置したドライブシャフトと、該メインシャフトとドライブシャフトとの間に略上下方向に延びるように設置し、運転者のチェンジレバーの操作に応じて動作するチェンジロッドと、該チェンジロッドの動きによりリンクを介して操作される変速機構のシフトフォークとを備える変速機の変速操作機構であって、前記チェンジロッドを、変速機構を収容する変速機ケースの車両後方側の後端側壁部に近接して配置して、前記チェンジロッド上部に、チェンジロッド軸廻りに回動するカウンターウェイトを設置して、前記チェンジロッドの動作を検出して変速機の変速状態を検出する変速スイッチを、前記変速機ケースの後端側壁部であって、前記カウンターウェイトと前記ドライブシャフトとの間に配設したものである。
【0012】
上記構成によれば、変速機ケースの後端側壁部に近接して設置したチェンジロッドの動作が、カウンターウェイトとドライブシャフトとの間の後端側壁部に配設した変速スイッチによって検出され、変速機の変速状態が検出されることになる。
【0013】
このため、変速スイッチは、カウンターウェイトとドライブシャフトとの間の後端側壁部後方のデッドスペース空間を利用して、効率的に設置されることになる。
なお、ここでの「変速スイッチ」は、変速機のニュートラル状態を検出するニュートラルスイッチだけでなく、変速機の変速段位を検出する変速段位スイッチや、後退段位を検出をリバーススイッチであってもよい。
【0014】
この発明の一実施態様においては、前記変速スイッチを、変速機ケースに対してケース外部から着脱可能に構成し、前記チェンジロッドの下部を、車載状態でミッションオイルに浸漬するように設定して、前記変速スイッチの設置位置を、車載状態で前記ミッションオイルのオイルレベルよりも上方に設定したものである。
【0015】
上記構成によれば、変速スイッチの設置位置が、車載状態でミッションオイルのオイルレベルよりも上方に設定されているため、変速スイッチを変速機ケースから取り外した状態でも、変速機からミッションオイルが流出することがない。
このため、変速機ケースからミッションオイルを抜くことなく、そのまま変速スイッチを着脱することができる。
よって、変速スイッチの交換やメンテナンス作業の際に、変速機ケースからミッションオイルを抜く必要なく、作業性を向上することができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、前記変速スイッチを、変速機ケースに対してケース外部から着脱可能に構成し、前記変速機構の変速ギアの少なくとも一つを、ミッションオイルの飛散ギアとして設定し、前記変速スイッチの設置位置を、車載状態で前記飛散ギアの下部歯先よりも、上方に設定したものである。
上記構成によれば、変速スイッチの設置位置を、車載状態で飛散ギアの下部歯先よりも上方に設定しているため、変速機内で飛散されるミッションオイルのオイルレベルよりも変速スイッチを高い位置に設置することになる。
これにより、変速スイッチを変速機ケースから取り外した状態でも、変速機からミッションオイルが流出することがない。
このため、変速機ケースからミッションオイルを抜くことなく、そのまま変速スイッチを着脱することができる。
よって、変速スイッチの交換やメンテナンス作業の際に、変速機ケースからミッションオイルを抜く必要なくなるため、作業性を向上することができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、前記ドライブシャフトを変速機に組み付ける際に、ドライブシャフトが前記変速スイッチに干渉するのを防ぐ保護手段を設けたものである。
上記構成によれば、保護手段を設けたことにより、ドライブシャフトの組み付け時に、変速スイッチがドライブシャフトと干渉するおそれを防止することができる。
すなわち、ドライブシャフトに変速機に差し込んで組み付ける際にドライブシャフトの先端が誤って変速スイッチ側に移行しても保護手段で変速スイッチを保護しているため、変速スイッチとドライブシャフトが干渉するのを防ぐことができる。
よって、ドライブシャフトの組付け作業の際に、誤って変速スイッチを損傷させるおそれがなく、組付け作業の作業性を向上することができる。
なお、この保護手段は、ドライブシャフトと変速機との干渉を防ぐものであれば、変速機ケースに一体的に形成した保護リブ等であってもよい。
【0018】
この発明の一実施態様においては、前記保護手段を、前記変速機ケースと別体に形成し、変速スイッチを覆うように設置した保護ブラケットとしたものである。
上記構成によれば、変速機ケースと別体に構成した保護ブラケットによって、保護手段を構成したため、変速機ケースに保護リブ等を形成することなく、簡易な構成で変速スイッチとドライブシャフトとの干渉を防ぐことができる。
よって、変速機ケースに余分な保護リブ等を設けることなく、ドライブシャフトの組付け作業の作業性を向上することができる。
【0019】
この発明の一実施態様においては、前記保護ブラケットに、変速スイッチのハーネスの経路を略水平方向に延びるように規制するハーネス規制手段を設けたものである。
上記構成によれば、保護ブラケットに設けたハーネス規制手段によって、変速スイッチのハーネスの経路が、略水平方向に延びるように規制される。
このため、変速スイッチの上方に位置するカウンターウェイトや、下方に位置するドライブシャフトの移動(回動)軌跡内に、ハーネスが侵出することがなく、ハーネスがカウンターウェイトやドライブシャフトの動きによって損傷するおそれを防止できる。
よって、変速スイッチを、カウンターウェイトとドライブシャフトとの間のデッドスペース空間に設置しつつも、カウンターウェイトやドライブシャフトとの干渉によるハーネスの損傷を防いで、安定してエンジン制御ユニット等に変速信号を送信することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、変速スイッチは、カウンターウェイトとドライブシャフトとの間の後端側壁部後方のデッドスペース空間を利用して、効率的に設置されることになる。
よって、変速機の変速操作機構において、変速スイッチを設置するにあたり、変速スイッチの設置スペースを、効率的且つコンパクトに構成して、変速機及びエンジンが大型化するのを可及的に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
まず、図1〜図10により、第一実施形態について説明する。図1は本発明の変速操作機構が採用された変速機の縦断断面図、図2はその変速機を後面から透視した変速操作機構周辺の要部後面図、図3はニュートラルスイッチの作動状態を説明する図2のA−A線矢視断面図、図4は図2のB−B線矢視断面図、図5は図4のC−C線矢視断面図、図6はニュートラルスイッチの取り付け状態を示した斜視図、図7はニュートラルスイッチの保護ブラケットを示した詳細単品図、図8はカウンターウェイトの作動状態を説明する平面図、図9はカウンターウェイトとドライブシャフトの作動範囲を説明する側面図、図10は、車両に搭載した変速機のオイルレベルを示す透過側面図である。
【0022】
なお、以下の説明では、変速機のエンジン締結側を変速機前方、エンジン反締結側を変速機後方として説明する。
【0023】
本実施形態の変速機1は、図1に示すように、変速機前方側に位置してエンジンのシリンダブロックEに締結固定されるクラッチハウジング2と、中央に位置してクラッチハウジング2に締結固定されるミッションケース3と、変速機後方側に位置してミッションケース3に締結固定されるエンドカバー4との三つのケース収容体2,3,4によって構成される変速機ケーシング10を、備えている。
【0024】
前述のクラッチハウジング2は、その内部に、エンジンの出力軸に固定されたフライホイールFと断接してエンジン出力を伝達するクラッチ装置5を収容する略コーン形状のクラッチ収容部21と、ドライブシャフト軸D上に配置された差動装置6を収容するデフ収容部22とを形成し、それぞれの収容部21,22でクラッチ装置5と差動装置6を収容している。
【0025】
前述のミッションケース3は、略円筒形状に形成され、内部に、プライマリーシャフト7、セカンダリーシャフト8、及びリバースアイドルシャフトRI(図2参照)をそれぞれ軸支して収容し、各シャフト上に設置された複数の変速ギア、同期装置等(具体的には図示せず)も収容している。
【0026】
前述のエンドカバー4は、略有底円筒形状に形成され、内部に、プライマリーシャフト7、セカンダリーシャフト8の後端部を軸支して収容し、比較的高速段(例えば、5速段や6速段)の変速ギア、同期装置等を収容している。
【0027】
また、各シャフト7,8類等は、それぞれ変速機1の前方から後方に向って並列に配置され、軸受ベアリングを介して各ケース収容体2,3,4に回動自在に軸支されている。
まず、プライマリーシャフト7は、前部をクラッチハウジング2に設置した軸受ベアリング11に軸支され、中央部をミッションケース3に設置した軸受ベアリング12、後端部をエンドカバー4に設置した軸受ベアリング13によって、それぞれ軸支されている。
【0028】
また、セカンダリーシャフト8も、前部をクラッチハウジング2に設置した軸受ベアリング14、中央部をミッションケース3に設置した軸受ベアリング15、後端部をエンドカバー4に設置した軸受ベアリング16によって、それぞれ軸支されている。
【0029】
一方、差動装置6は、その前端部をクラッチハウジング2に設置した軸受ベアリング17で軸支され、後端部をミッションケース3に設置した軸受ベアリング18で軸支されている。
【0030】
本実施形態の変速操作機構30は、図2に示すように、運転者によって操作されるチェンジ操作レバー(図示せず)の動きが伝達されるセレクトレバー31及びシフトレバー32と、変速機ケーシング10内に配設されるチェンジロッド33とセカンドチェンジロッド34と、前記プライマリーシャフト7と並列に配置されるコントロールロッド35と、同期装置(図示せず)を移動させる複数のシフトフォーク36,37,38(図5参照)とを備える。
【0031】
前述のセレクトレバー31は、変速機ケーシング10の外側に設置したブラケット39に回動自在に支持されており、セレクトレバー31の一端部にはセレクトケーブル31aの一端が取付けられ、セレクトケーブル31aの他端にはチェンジ操作レバー(図示せず)が連結されている。また、セレクトレバー31の他端部には前述のシフトレバー32が連結されている。
【0032】
このシフトレバー32は、変速機ケーシング10外部に突出した前述のチェンジロッド33の上端にピンで固定されている。また、このシフトレバー32には、チェンジロッド33位置から外側に延びる腕部32bに、シフトフィーリングを高めるカウンターウェイト80を設けている。
【0033】
そして、このチェンジロッド33は、その軸方向の移動と軸廻りの回動が自在に行えるように変速機ケーシング10に支持されている。これにより、チェンジロッド33はシフトレバー32と一体的に動作するようになっている。さらに、このシフトレバー32には、シフトケーブル32aの一端が連結されていると共に、このシフトケーブル32aの他端には、チェンジ操作レバー(図示せず)が連結されている。
【0034】
このように構成されていることにより、運転者がチェンジ操作レバー(図示せず)をセレクト操作すると、セレクトケーブル31aを介してセレクトレバー31がS1−S1′方向に揺動し、その揺動により前記チェンジロッド33がシフトレバー32を介してその軸方向、即ちS2−S2′方向に移動することになる。また、運転者がチェンジ操作レバーをシフト操作すると、シフトケーブル32aに連結されたシフトレバー32がT1−T1′方向に回動するともにカウンターウェイト80も回動し、チェンジロッド33がその軸廻りであるT2−T2′方向に回動することになる。
【0035】
そして、チェンジロッド33の中間部には、ニュートラルスイッチ50に当接するカム部材81をピンで固定している。また、このカム部材81に対向する上下方向に延びるミッションケース3の側壁部82には、カム部材81の動作を検出するニュートラルスイッチ50を設置している。
【0036】
このカム部材81とニュートラルスイッチ50との関係は、図3に示すように、まず、カム部材81に、側壁部82側に延びる凸状突出部81aを形成し、この凸状突出部81aの先端面にニュートラルスイッチ50のセンシング部51を当接させている。
一方、ニュートラルスイッチ50には、前述の出没自在の凸状のセンシング部51と、その周囲に側壁部の開口孔に着脱自在に締結されるオネジ部52と、その後方位置に六角部53と、さらにその後端部にハーネス取付け部54とを備えている。
【0037】
このニュートラルスイッチ50は、前述のようにチェンジロッド33がシフトレバー32(図2参照)の回動に伴いT2−T2′方向に回動した場合に、チェンジロッド33のカム部材81の動作をセンシング部51で検出することで、変速機1のニュートラル状態、非ニュートラル状態を検出する。
【0038】
すなわち、図3で実線で示すカ凸状突出部81aの位置では、センシング部51が没入してニュートラル状態を検出して、破線で示す凸状突出部81aの位置では、センシング部51が突出して、非ニュートラル状態を検出するようになっている。
【0039】
また、図2、図4に示すように、チェンジロッド33の下部には、曲がりながらセカンドチェンジロッド34方向に延びると共に二股状の先端部にピン40が設けられた第一レバー41が固定されている。この第一レバー41は、チェンジロッド33が軸方向へ移動又は軸廻りに回動した際には、一体的に移動又は回動するようになっている。
【0040】
前述のセカンドチェンジロッド34は、変速機ケーシング10に下端がピンで固定されている。また、このセカンドチェンジロッド34は、第一レバー41方向に延びて第一レバー41のピン40に回動自在に係合する二股状の先端部を有する第二レバー42を、軸方向の移動又は軸廻りの回動が可能となるように支持している。
【0041】
このため、第一レバー41がチェンジロッド33を中心としてT2−T2′方向に揺動した際には、第二レバー42がセカンドチェンジロッド34を中心としてT3−T3′方向に揺動すると共に、第一レバー41が軸方向、即ちS2−S2′方向に移動した際には、第二レバー42がセカンドチェンジロッド34の軸方向、即ちS3−S3′方向に移動することになる。
【0042】
また、第二レバー42の突設部42aに設けた凹部43には、上記コントロールロッド35上にピンで固定した係合部材44の球状突設部44aが摺動自在に係合している。
【0043】
このため、第二レバー42が軸方向(S3−S3′方向)に移動したときには、コントロールロッド35は軸廻り、即ちS4−S4′方向に回動し、第二レバー42が軸廻り(T3−T3′方向)に回動したときには、コントロールロッド35は軸方向、即ちT4−T4′方向に移動することとなる。
【0044】
また、このコントロールロッド35上には、図5に示すように、セレクト操作(S4−S4′方向の回動)により、シフトフォーク36,37,38のゲート部36a、37a、38aのいずれかに係合し、シフト操作(T4−T4′方向の移動)により、そのシフトフォーク36,37,38のいずれかを択一的に軸方向に移動させるゲート機構45を設けている。
【0045】
つまり、この変速操作機構30の動作についてまとめると、運転者がチェンジ操作レバー(図示せず)をセレクト操作したときに、コントロールロッド35が軸廻り(S4−S4′方向)に回動して、シフトフォーク36,37,38のいずれかが選択され、チェンジ操作レバーをシフト操作したときに、コントロールロッド35が軸方向(T4−T4′方向)に移動して、この選択されたシフトフォークが択一的に軸方向に移動し、これにより、シフトフォークに係合する同期装置が作動して、変速ギア列が非伝動状態から、伝動状態に移行することになる。こうして、変速機1の変速操作が行われることになる。
【0046】
次に、前述したニュートラルスイッチ50の設置構造について、より詳細に説明する。
【0047】
一般に、変速機のニュートラルスイッチは、変速機ケーシングに外部から取り付けられることから、変速機ケーシングの表面から外方に大きく突出してしまう。このため、ニュートラルスイッチの設置位置を何ら考慮することなく変速ケーシングに設置してしまうと、ニュートラルスイッチの設置スペースを確保するために、変速機及びエンジンが大型化せざるを得ない。
【0048】
そこで、本実施形態では、図2に示すように、ニュートラルスイッチ50をカウンターウェイト80とドライブシャフト90との間の側壁部82後方のデッドスペースWに設置している。具体的には、図6に示すように、カウンターウェイト80とドライブシャフト90との間のデッドスペースW空間を利用して、変速機1から突出せざるを得ないニュートラルスイッチ50を効率的に配置している。
【0049】
これにより、ニュートラルスイッチ50の設置スペースによって、変速機1やエンジンが大型化してしまうことが防止され、限られた車両前部のエンジンルームER(図10参照)等の収容スペースに、変速機1やエンジンをコンパクトに搭載することができる。
【0050】
また、このニュートラルスイッチ50の側方には、ニュートラルスイッチ50を保護する保護ブラケット100を設置している。
【0051】
この保護ブラケット100の詳細構造について、図7に示す。(a)が保護ブラケットの側面図、(b)が保護ブラケットの正面図、(c)が保護ブラケットの底面図である。
【0052】
保護ブラケット100は、ニュートラルスイッチ50の側方に位置する側面部101と、下方に位置する下面部102と、ハーネス55を保持する保持面部103と、固定ボルト110で固定される固定部104と、保護ブラケット100の固定位置を規定する係止片部105とで構成している。
【0053】
側面部101と下面部102は、ニュートラルスイッチ50の側方及び下方に位置して、ニュートラルスイッチ50を全面で覆うように位置して、ドライブシャフト90との干渉を防いでいる。
すなわち、側面部101においては、ドライブシャフト90の組付け時に変速機の後方側から差し込まれるドライブシャフト90の先端が、誤ってニュートラルスイッチ50側に移行したとしても、その側面部101が存在することでニュートラルスイッチ50との干渉を防いでいる。また、下面部102においては、車両走行時の車輪H(図10参照)のバンプによって、上方に移動するドライブシャフト90との干渉を防いでいる。
【0054】
また、保持面部103は、ハーネス55の位置を保持することで、後述するように回動するカウンターウェイト80やドライブシャフト90との干渉を防いで、ハーネス55の損傷やニュートラルスイッチ50の脱落等を防止している。
【0055】
さらに、固定部104と係止片部105は、こうした保護ブラケット100が確実にニュートラルスイッチ50の側方位置に固定されるよう、側壁部82の突出段部82aに係止片部105を係止して(回り止めして)、固定部104に挿通した固定ボルト110によって締結固定されている。
【0056】
この保護ブラケット100の機能について、図8、図9により説明する。
【0057】
前述したように、カウンターウェイト80は、図8に示すように、チェンジ操作レバー(図示せず)のシフト方向の動きによって回動するシフトレバー32に設置され、このシフトレバー32がシフトケーブル32aの操作によって回動した際に、逆方向に回動することで、シフトレバー32に慣性力を与え、シフト操作時のゴツゴツ感を緩和している。それぞれ一点鎖線で示した位置がシフト時のカウンターウェイト80の回動位置である。
【0058】
このように、カウンターウェイト80は、シフト操作によって回動するため、図9に示すラインPより上方が、カウンターウェイト80との干渉領域(斜線ハッチング領域)となる。
【0059】
このため、保護ブラケット100の保持面部103で、ハーネス55を水平方向に延びるように規制することで、ハーネス55がこの干渉領域に侵入しないようにしている。
【0060】
また、ニュートラルスイッチ50の下方に位置するドライブシャフト90も、車両走行時には、車輪H(図10参照)のバンプやリバウンドで上下方向に揺動して、大きなバンプがあった場合には、ドライブシャフト90、具体的にはドライブシャフトブーツ91(図6参照)が上方に移行する(図9の一点鎖線参照)。このため、ニュートラルスイッチ50やハーネス55がドライブシャフトブーツ91と干渉するおそれが生じる。
【0061】
そこで、保護ブラケット100の下面部102によって、ドライブシャフトブーツ91の移行を抑え、ニュートラルスイッチ50との干渉を防いでいる。
【0062】
また、前述の保持面部103で、ハーネス55の位置を規制しているため、ハーネス55が下方に落ち込むことなく、ドライブシャフトブーツ91とハーネス55との干渉を防いでいる。
【0063】
次に、変速機1内のミッションオイルのオイルレベルとニュートラルスイッチの関係について、図10により説明する。
【0064】
変速機1を、車両前方側のエンジンルームER内に横置きに設置(プライマリーシャフト7等を車幅方向に延びるように設置)すると、チェンジロッド33は、車両前方側に設置したプライマリーシャフト7と車両後方側斜め下方に設置したドライブシャフト90との間で略上下方向延びるように設置され、そして、このチェンジロッド33の下部が、ミッションオイルOに浸漬することになる。
【0065】
このミッションオイルOは、変速機1内の変速ギアや同期装置の潤滑や冷却のため、変速機ケーシング10内に貯留されており、図10に示すように、変速機内のセカンダリーシャフト8下部位置にオイルレベルOL(ミッションオイルOの上面ライン)を設定している。そして、セカンダリーシャフト8の変速ギアのうち大径ギア120(5速段や6速段の変速ギア)の掻き揚げによって、変速機1内の上方に飛散されるように、このオイルレベルOLを設定している。
【0066】
一方、ニュートラルスイッチ50は、前述のように、ミッションケース3の側壁部82(車両搭載時には、車両後方側の後部側壁部)に設置しており、前述のオイルレベルOLよりも上方位置、具体的には、ミッションオイルOを掻き揚げる大径ギア120の下部歯先120aよりも上方位置の側壁部82に設定している。
【0067】
このように、ニュートラルスイッチ50の設置位置をオイルレベルOLよりも上方に設定していることで、ニュートラルスイッチ50をメンテナンスや交換の際に取り外したとしても、変速機1からミッションオイルOが流出することはない。
このため、ミッションオイルOを変速機1から抜くことなく、ニュートラルスイッチ50を取り外すことができる。
よって、変速機1のニュートラルスイッチ50の交換作業等のサービス性を高めることができる。
【0068】
次に、このように構成された本実施形態の作用効果について説明する。
この実施形態においては、チェンジロッド33を、変速機構を収容するミッションケース3の車両後方側の側壁部82に近接して配置して、チェンジロッド33上部に、チェンジロッド33軸廻りに回動するカウンターウェイト80を設置して、チェンジロッド33の動作を検出して変速機1の変速状態を検出するニュートラルスイッチ50を、ミッションケース3の側壁部82であって、カウンターウェイト80とドライブシャフト90との間に配設している。
【0069】
これによれば、ミッションケース3の側壁部82に近接して設置したチェンジロッド33の動作が、カウンターウェイト80とドライブシャフト90との間の側壁部82に配設したニュートラルスイッチ50によって検出され、変速機1のニュートラル状態が検出されることになる。
【0070】
このため、ニュートラルスイッチ50は、カウンターウェイト80とドライブシャフト90との間の側壁部82後方のデッドスペースW空間を利用して、効率的に設置されることになる。
よって、変速機1の変速操作機構において、ニュートラルスイッチ50を設置するにあたり、ニュートラルスイッチ50の設置スペースを、効率的且つコンパクトに構成して、変速機1及びエンジンが大型化するのを可及的に防止できる。
【0071】
なお、この実施形態のニュートラルスイッチ50の代わりに、変速機1の変速段位を検出する変速段位スイッチや、後退段位を検出をリバーススイッチを設置してもよい。
【0072】
また、この実施形態においては、ニュートラルスイッチ50を、ミッションケース3に対してケース外部から着脱可能に構成して、チェンジロッド33の下部を、車載状態でミッションオイルOに浸漬するように設定して、ニュートラルスイッチ50の設置位置を、車載状態でミッションオイルOのオイルレベルOLよりも上方に設定している。
【0073】
これによれば、ニュートラルスイッチ50の設置位置が、車載状態でミッションオイルOのオイルレベルOLよりも上方に設定されているため、ニュートラルスイッチ50を変速機ケーシング10から取り外した状態でも、変速機1からミッションオイルOが流出することがない。
このため、変速機ケーシング10からミッションオイルOを抜くことなく、そのままニュートラルスイッチ50を着脱することができる。
よって、ニュートラルスイッチ50の交換やメンテナンス作業の際に、変速機1からミッションオイルOを抜く必要なく、作業性を向上することができる。
【0074】
また、この実施形態においては、ニュートラルスイッチ50を、ミッションケース3に対してケース外部から着脱可能に構成し、変速機構の変速ギアの少なくとも一つの大径ギア120を、ミッションオイルOを飛散させるギアとして設定し、ニュートラルスイッチ50の設置位置を、車載状態でその大径ギア120の下部歯先120aよりも、上方に設定している。
これによれば、車載状態で、ニュートラルスイッチ50の設置位置を、ミッションオイルOを飛散させる大径ギア120の下部歯先120aよりも上方に設定しているため、変速機ケーシング10内で飛散されるミッションオイルOのオイルレベルOLよりもニュートラルスイッチ50を高い位置に設置することになる。
これにより、ニュートラルスイッチ50を変速機ケーシング10から取り外した状態でも、変速機1からミッションオイルOが流出することがない。
このため、変速機1からミッションオイルOを抜くことなく、そのままニュートラルスイッチ50を着脱することができる。
よって、ニュートラルスイッチ50の交換やメンテナンス作業の際の作業性を向上することができる。
【0075】
また、この実施形態においては、ドライブシャフト90を変速機1に組み付ける際に、ドライブシャフト90がニュートラルスイッチ50に干渉するのを防ぐ保護手段たる保護ブラケット100を設けている。
これによれば、ドライブシャフト90の組み付け時に、ニュートラルスイッチ50がドライブシャフト90と干渉するおそれを防止することができる。
よって、ドライブシャフト90の組付け作業の際に、誤ってニュートラルスイッチ50を損傷させるおそれがなく、組付け作業の作業性を向上することができる。
【0076】
また、この実施形態においては、保護手段たる保護ブラケット100を、変速機ケーシング10と別体に形成し、ニュートラルスイッチ50を覆うように設置している。
これによれば、保護ブラケット100を変速機ケーシング10と別体に形成したため、変速機ケーシング10に保護リブ等を形成することなく、簡易な構成でニュートラルスイッチ50とドライブシャフト90との干渉を防ぐことができる。
よって、変速機ケーシング10に余分な保護リブ等を設けることなく、ドライブシャフト90の組付け作業の作業性を向上することができる。
【0077】
また、この実施形態においては、保護ブラケット100に、ニュートラルスイッチ50のハーネス55の経路を略水平方向に延びるように規制する保持面部103を設けている。
これによれば、保護ブラケット100に設けた保持面部103によって、ハーネス55の経路が、略水平方向に延びるように規制されるため、ニュートラルスイッチ50の上方に位置するカウンターウェイト80や、下方に位置するドライブシャフト90の移動(回動)軌跡内に、ハーネス55が侵出することがなく、ハーネス55がカウンターウェイト80やドライブシャフト90の動きによって損傷するおそれを防止できる。
【0078】
よって、ニュートラルスイッチ50を、カウンターウェイト80とドライブシャフト90との間のデッドスペースW空間に設置しつつも、カウンターウェイト80やドライブシャフト90との干渉によるハーネス55の損傷を防いで、安定してエンジン制御ユニット(図示せず)等に変速信号を送信することができる。
【0079】
なお、この保持面部103の代わりに、クリップ等を設けて、ハーネス55の位置を規制して、カウンターウェイト80やドライブシャフト90との干渉を防ぐようにしてもよい。
【0080】
次に、他の実施形態について図11により説明する。この図11は、前述の実施形態の図6に対応する斜視図である。
【0081】
この実施形態は、保護ブラケット100の代わりにミッションケース3の外表面に、外方に突出する保護リブ200を設け、この保護リブ200でニュートラルスイッチ50を保護するものである。その他、前述の実施形態と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0082】
この実施形態の保護リブ200は、ニュートラルスイッチ50の側方に位置して、少なくとも、ドライブシャフト90の組付け時に、差し込まれるドライブシャフト90の先端がニュートラルスイッチ50と干渉するのを防いでいる。
【0083】
このように、ミッションケース3の外表面に保護リブ200を設けることにより、金属製のドライブシャフト90の先端が保護リブ200に当接したとしても、容易に保護リブ200が変形等することがないため、より確実にニュートラルスイッチ50を保護することができる。また、別体に構成した場合のように、組み忘れ等の問題も生じないため、組み忘れによる、ニュートラルスイッチ50の損傷という問題も生じることはない。
よって、前述の実施形態のものに比較して、より確実にドライブシャフト90の組付け時のニュートラルスイッチ50との干渉を防止することができる。
その他の作用効果については、前述の実施形態と同様である。
【0084】
以上、この発明の構成と、前述の実施形態との対応において、
この発明の変速スイッチは、ニュートラルスイッチ50に対応し、
以下、同様に、
変速機ケースは、ミッションケース3に対応し、
後端側側壁部は、側壁部82に対応し、
保護手段は、保護ブラケット100,保護リブ200に対応し
ハーネス規制手段は、保持面部103に対応するも、
この発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、あらゆる変速機の変速操作機構に適用する実施形態を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の変速操作機構が採用された変速機の縦断断面図。
【図2】その変速機を後面から透視した変速操作機構周辺の要部後面図。
【図3】ニュートラルスイッチの作動状態を説明する図2のA−A線矢視断面図。
【図4】図2のB−B線矢視断面図。
【図5】図4のC−C線矢視断面図。
【図6】ニュートラルスイッチの取り付け状態を示した斜視図。
【図7】ニュートラルスイッチの保護ブラケットを示した詳細単品図。
【図8】カウンターウェイトの作動状態を説明する平面図。
【図9】カウンターウェイトとドライブシャフトの作動範囲を説明する側面図。
【図10】車両に搭載した変速機のオイルレベルを示す透過側面図。
【図11】図6に対応する他の実施形態の斜視図。
【符号の説明】
【0086】
1…変速機
3…ミッションケース
7…メインシャフト
33…チェンジロッド
50…ニュートラルスイッチ
82…側壁部
80…カウンターウェイト
90…ドライブシャフト
100…保護ブラケット
103…保持面部
200…保護リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延びるように設置した変速機のメインシャフトと、該変速機のメインシャフトと平行に車両後方側斜め下方に設置したドライブシャフトと、該メインシャフトとドライブシャフトとの間に略上下方向に延びるように設置し、運転者のチェンジレバーの操作に応じて動作するチェンジロッドと、該チェンジロッドの動きによりリンクを介して操作される変速機構のシフトフォークとを備える変速機の変速操作機構であって、
前記チェンジロッドを、変速機構を収容する変速機ケースの車両後方側の後端側壁部に近接して配置して、
前記チェンジロッド上部に、チェンジロッド軸廻りに回動するカウンターウェイトを設置して、
前記チェンジロッドの動作を検出して変速機の変速状態を検出する変速スイッチを、前記変速機ケースの後端側壁部であって、前記カウンターウェイトと前記ドライブシャフトとの間に配設した
変速機の変速操作機構。
【請求項2】
前記変速スイッチを、変速機ケースに対してケース外部から着脱可能に構成し、
前記チェンジロッドの下部を、車載状態でミッションオイルに浸漬するように設定して、
前記変速スイッチの設置位置を、車載状態で前記ミッションオイルのオイルレベルよりも上方に設定した
請求項1記載の変速機の変速操作機構。
【請求項3】
前記変速スイッチを、変速機ケースに対してケース外部から着脱可能に構成し、
前記変速機構の変速ギアの少なくとも一つを、ミッションオイルの飛散ギアとして設定し、
前記変速スイッチの設置位置を、前記飛散ギアの下部歯先よりも、車載状態で上方に設定した
請求項1記載の変速機の変速操作機構。
【請求項4】
前記ドライブシャフトを変速機に組み付ける際に、ドライブシャフトが前記変速スイッチに干渉するのを防ぐ保護手段を設けた
請求項1〜3いずれか記載の変速機の変速操作機構。
【請求項5】
前記保護手段を、前記変速機ケースと別体に形成し、変速スイッチを覆うように設置した保護ブラケットとした
請求項4記載の変速機の変速操作機構。
【請求項6】
前記保護ブラケットに、変速スイッチのハーネスの経路を略水平方向に延びるように規制するハーネス規制手段を設けた
請求項5記載の変速機の変速操作機構。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−198455(P2007−198455A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−16005(P2006−16005)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】