説明

変速機用のシフトないしセレクトレバーのポジションを検知するための装置、並びに自動車の変速機用のシフト装置

【課題】変速機用のシフトないしセレクトレバーのポジションを検知するための装置を、該装置が簡単に実現可能であり且つ簡単に組み立て可能であるように更に開発する。
【解決手段】本発明は、シフトないしセレクトレバー(1)と共に可動である信号発生要素(2.1;2.2)と、測定値センサとして該信号発生要素(2.1;2.2)の信号を検知する少なくとも1つのセンサ要素(3、4)とを備えた、変速機用のシフトないしセレクトレバー(1)のポジションを検知するための装置(100)に関する。前記信号発生要素(2.1;2.2)は前記シフトないしセレクトレバー(1)のためのロック手段(5)に付設されており、前記センサ要素(3、4)は測定値として、符号に依存するアナログ信号(S1、S2)を提供する。更に本発明は、シフトないしセレクトレバー(1)のポジションを検知するための前記装置(100)を備えた、特に自動車において使用するための変速機用のシフト装置(200)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフト及び/又はセレクトレバー(本願において「シフトないしセレクトレバー」と称する)と共に可動である信号発生要素と、測定値センサとして該信号発生要素の信号を検知する少なくとも1つのセンサ要素とを備えた、変速機用のシフトないしセレクトレバーのポジションを検知するための装置に関する。更に本発明は、シフトないしセレクトレバーのポジションを検知するための前記装置を備えた、特に自動車において使用するための変速機用のシフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術とその問題点)
通常、自動車は、その変速機をギヤシフト(ギヤチェンジ)するために、シフト(切替)及び/又はセレクト(選択)レバーを備えたシフト装置(切替装置)を有している。変速機の形式に応じ、シフトないしセレクトレバーは、1つの又は複数のシフトゲート内で移動することができる。例えばシフトないしセレクトレバーは、第1シフトゲート内において、例えば「P」「R」「M」「D」のような自動でシフト可能な様々な走行レンジを選択することができ、またこの第1シフトゲートから第2シフトゲートへと切り替え可能であり、第2シフトゲートでは手動でシフト可能な個々のギヤが選択可能である。そのためにシフトないしセレクトレバーは連結リンク機構(Kulisse)において旋回可能に支承されており、この際、シフトないしセレクトレバーは、1つのシフトゲート内でのシフトのために第1回転軸線の周りで旋回可能であり、一方のシフトゲートから他方のシフトゲートへのシフトゲートへの切り替えのために第2回転軸線の周りで旋回可能である。
【0003】
通常、既知のシフト装置は、例えばノッチ係合手段(Rastmittel)と対向嵌合手段(Gegenrastmittel)による形式のロック装置を有し、それらのノッチ係合手段と対向嵌合手段は、シフトないしセレクトレバーのための予め定められたシフトポジションをマークし、そしてシフトないしセレクトレバーが該当ポジションに移された場合に該シフトないしセレクトレバーを好ましくは形状結合式(ありつぎ結合 formschluessig)で保持する。通常、この種のロック手段は、シフトないしセレクトレバーの下側自由端部に配設されている。
【0004】
シフトないしセレクトレバーの位置に依存した変速機の駆動制御について下記特許文献1から、シフトないしセレクトレバーの角度位置又は回転運動を直接的に検知するための磁気的な回転角度センサ装置を設けることが公知である。この際、該公知のセンサ装置のセンサ要素は、少なくとも1つの調節要素(アクチュエータ)を介して自動車の変速機を駆動制御する電気的な制御ユニットへ信号を提供する。該公知の回転角度センサ装置は、シフトないしセレクトレバーの回転角度(捩れ角度)を検知するためにシフトないしセレクトレバーの1つの旋回軸線の領域に配設されている。該領域においてシフトないしセレクトレバーのポジションの最適な検知を達成するために、センサ装置用の補助構成部材が必要とされている。これらの追加的な補助構成部材は、全ユニットの複雑さを増加させ、その製造と組み立てを比較的費用と手間のかかるものとする。更に各構成部材はある程度の製造誤差を有するものであるので、これらの追加的な補助構成部材は、シフトないしセレクトレバーのポジションの検知時において達成可能な精度に影響を及ぼしている。
【0005】
下記特許文献2は、遠隔操作で自動車変速機を制御するために利用者により操作可能であるセレクトレバーを備えたシフト・バイ・ワイヤ式のシフト装置を開示している。該シフト・バイ・ワイヤ式のシフト装置は、利用者にシフト感覚を提供するために、セレクトレバーの端部をカム表面(プロフィール表面)と接触状態に保持する予付勢装置(プリテンション装置)を有している。それに加え、送信装置と受信装置を含む検知装置が設けられており、この際、送信装置又は受信装置は、カム表面上におけるセレクトレバーの端部のポジションが検知可能であるように、セレクトレバーの端部に装着されている。セレクトレバーの可能な各設定ポジションには、固有のセンサが付設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】DE 10 2008 028 618 B3
【特許文献2】EP 1 752 688 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の基礎となる課題は、冒頭に記載した構成を有するシフトないしセレクトレバーのポジションを検知するための装置を、該装置が簡単に実現可能であり且つ簡単に組み立て可能であるように更に開発することである。同様にシフトないしセレクトレバーのポジションは、高精度で検知可能であるべきである。また自動車の変速機用の対応するシフト装置が提案されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の特徴を有する、シフトないしセレクトレバーのポジションを検知するための装置が提案される。
【0009】
更に、請求項16に記載の特徴を有する、特に自動車において使用するための変速機用のシフト装置が提案される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
有利な展開形態は、下位請求項、並びに以下の説明から読み取ることができる。
【0011】
シフトないしセレクトレバーのポジションを検知するための本発明に従う装置は、特に自動車の変速機又は駆動部の機能を制御するために適している。この際、本発明に従う装置は、手動変速機(manuelles Getriebe)のシフトレバー(切替レバー)又は自動変速機(Automatikgetriebe)のセレクトレバー(選択レバー)と協働することができる。また本発明に従う装置は、自動変速モード(オートマチックモード)と、ギヤの手動シフト(マニュアルシフト)のための追加的な手動シフト機能とを有する、組み合わせ式の変速機におけるシフトないしセレクトレバーと協働することも可能である。
【0012】
シフトないしセレクトレバーのポジションを検知するための本発明に従う装置は、少なくとも1つの信号発生要素を有し、該信号発生要素は、シフトないしセレクトレバーと共に可動である。更に当該装置は、前記信号発生要素の信号を検知する少なくとも1つのセンサ要素を有し、該センサ要素は測定値センサ(Messwertgeber)として用いられる。
【0013】
本発明に従い、信号発生要素がシフトないしセレクトレバーのためのロック手段(Arretiermittel)に付設されていることが考慮されている。
【0014】
この措置により、シフトないしセレクトレバーのポジションは、下記の特定の領域内で直接的に決められる、即ち、例えばシフトゲート内の規定のポジション又は1つのシフトゲートから他のシフトゲートへ移るための規定のポジションにおいてシフトないしセレクトレバーを位置固定するために用いられる手段の領域内で直接的に決められる。それにより、例えばシフト装置の連結リンク機構により規定される選択可能なシフトポジション或いはシフト位置におけるシフトないしセレクトレバーのポジションが高精度で検知可能である。それにより、必要な補助構成部材に基づき起こりうる測定値の誤りの障害原因が回避されているので、シフトないしセレクトレバーのポジションが信頼性をもって検知可能である。従って本発明に従う装置は、本質的に、シフトないしセレクトレバーを用いて自動車の変速機又は駆動部を駆動制御する際の高い機能安全性に寄与している。シフトないしセレクトレバーのポジションを検知するための補助構成部材を回避することができるので、更に本発明に従う装置は、簡単に実現可能である。
【0015】
本発明において、ロック手段(アレスト手段)とは、例えばシフトゲート内の選択可能なシフトポジションにおいてシフトないしセレクトレバーを位置固定するために用いられる手段として理解される。シフトないしセレクトレバーは、ロック(停止)されたポジションにおいて自身の位置に関して確保されており、好ましくは、シフトないしセレクトレバーの利用者が適切なシフト力を施すことにより初めてロック状態から再び解放される。ロック手段は、シフトないしセレクトレバーの一部分とすることができる。組み立てられた状態においてロック手段は、好ましくはシフトないしセレクトレバーに固定されており、特に摺動可能に案内されている。ロック手段としては、ノッチ係合手段(Rastmittel)、又は挟付手段(Klemmmittel)、又は締付手段(Spannmittel)などが考えられる。
【0016】
本発明の第1の実施形態では、信号発生要素がロック手段と固定結合されている。それにより、検知装置の応答と、別のポジションへのシフトないしセレクトレバーの運動との間において起こりうる時間的な遅延が信号発生要素とロック手段の固定結合により回避されているので、シフトないしセレクトレバーの位置の検知が特に確実に行われることが保証されている。
【0017】
本発明の別の一実施形態では、信号発生要素がロック手段内に(内部に)配設されている。それにより、信号発生要素が、シフトないしセレクトレバーに関するロック手段の確保機能を障害なく実行させうることが保証されている。更にそれにより信号発生要素の配置構成は、該信号発生要素が外部からの機械的な干渉から保護されていることを可能にしている。
【0018】
この方向においては、ロック手段がプラスチック部材であり且つ信号発生要素が少なくとも部分的に該ロック手段の材料により包囲されているという、本発明の更なる一実施形態の措置も可能である。プラスチック部材としてロック手段を形成することにより、信号発生要素が更に簡単で且つ低コストでロック手段内へ組み込み可能である。
【0019】
好ましくは、信号発生要素は磁石である。それによりシフトないしセレクトレバーのポジションが特に簡単で且つ低コストで、例えば磁界強度が測定値(Messgroesse)として少なくとも1つのセンサ要素により検知されることにより無接触式で検知可能である。
【0020】
信号発生要素が永久磁石である場合には、信号発生要素が特に低コストで実現可能である。
【0021】
本発明の一実施形態では、信号発生要素が磁石であり、該磁石の両極が、センサ要素に向かう方向で見て、前後配置で配設されている。この実施形態において信号発生要素は、所謂ダイヤメトラルマグネット(反対極磁石 Diametralmagnet)として構成されている。それにより1つのシフトポジションから他のシフトポジションへのシフトシフトないしセレクトレバーのシフト時には、信号発生要素に対するセンサ要素の位置に応じて磁界が反転することになる。この磁界の反転は、センサ要素を用い、検知された磁界強度の符号の変化により検知することができる。従って信号発生要素により発生され且つセンサ要素により検知可能な信号は、符号変化により、評価可能な更なる情報を含んでいる。それによりシフトないしセレクトレバーのポジションの検知が特に確実に且つ正確に実行可能である。
【0022】
或いはまた、当然のことであるが、信号発生要素が磁石であり、該磁石の両極が、該信号発生要素から出発してセンサ要素に向かう方向で見て、並置配置で配設されている磁石であることも可能である。
【0023】
本発明の別の一実施形態では、信号発生要素とセンサ要素との間に、ロック手段と協働する複数の対向ロック手段が配設されている。それによりセンサ要素は、外部からの機械的な作用から保護されて格納されている。それに加え、それにより、信号発生要素とセンサ要素の協働によるポジション検知が損なわれることなく、各々のシフト位置におけるシフトないしセレクトレバーの正しい位置固定或いはロックが保証されている。
【0024】
対向ロック手段は、好ましくはハウジングに固定して配設されている。
【0025】
センサ要素は、プレート(ボード;プリント回路板)又はシート(箔片;プリント回路シート)に配設することができる。それにより、本発明に従う装置内へ手間をかけずに事前組み立てされた状態で組み込むことのできる既に事前組み立て可能なユニットが実現可能である。またそれにより該ユニットの交換も簡単に実行可能である。
【0026】
更に、センサ要素がシートに配設されているのであれば、シートのかさ(aufbauend)が少ないことに基づき特にコンパクトな構成が実現可能である。プレートにセンサ要素を配設することによっては、プレートの方向付けによりセンサ要素の正確な位置決めが可能であり、従ってプレートの取り付けにより、同時にセンサ要素が規定位置へと正確にもたらされている。
【0027】
また、センサ要素は対向ロック手段と固定結合されていることもできる。それにより、例えばプレートのような補助的な構成部材を省略することができる。またそれにより、センサ要素と対向ロック手段を既に事前組み立てステップにおいて互いに固定結合させ、従って事前組み立てされたユニットを形成することにより、センサ要素の簡単な組み立てが可能である。
【0028】
センサ要素と対向ロック手段との特に堅固で且つ安定性のある結合は、センサ要素が対向ロック手段内に埋設成形されている場合に実現される。センサ要素は、例えばプラスチックである対向ロック手段の材料により包囲被覆されることができ、それによりセンサ要素は、外部からの機械的な応力に対して保護された状態で設けられている。従ってこの措置は、本発明に従う装置の高い耐故障性を保証することも目指している。
【0029】
本発明の有利な一実施形態では、センサ要素が測定値としてアナログ信号を提供する。それにより、変速機のシフティングのために重要である評価すべき領域の外側に位置するシフトないしセレクトレバーのポジションも検知することができる。このように検知可能な情報は、シフトないしセレクトレバーが実際に予め選択されたシフトポジションにあるか否かについて、ソフトウェア的な検査を可能にする。センサ要素のアナログ信号が測定値として使用されることにより、特に簡単にシフトないしセレクトレバーの実際のポジションに関するシフト情報を検出することができ、それにより故障や障害に対して特に高い安全性を実現することができる。
【0030】
この方向においては、(各々の)センサ要素が測定値として符号(正負符号)に依存するアナログ信号を提供するという措置も可能である。それにより、1つのセンサから、シフトないしセレクトレバーのポジション或いは運動に関する互いに別個の2つの情報が提供され、これらの情報により、シフトないしセレクトレバーの選択ポジションのエラー検出の危険性が更に減少されている。
【0031】
本発明に従う装置の有利な一実施形態では、(各々の)センサ要素が測定値として、信号であって該信号の符号(正負符号)がシフトないしセレクトレバーの1つの選択可能なポジションから他の選択可能なポジションへの変更時に変わる信号を提供することが考慮されている。このような実施形態は、例えば、隣接したセンサ部分要素が逆方向に位置付けられている及び/又は逆方向に接続されていることにより実現することができる。特に、隣接したセンサ部分要素とは、例えば、直列に接続され且つ逆方向に極性を与えられたコイルとすることができる。
【0032】
当然のことながら、本発明の他の一実施形態では、(各々の)センサ要素が測定値としてデジタル信号を提供することもできる。この際、該デジタル信号は、符号(正負符号)に依存して提供することができる。
【0033】
少なくとも1つのセンサ要素がホールセンサ又はリニアセンサであることが提案されている。それにより該センサ要素は低コストで実現可能である。
【0034】
更に、センサ要素が、シフトゲート内のシフトないしセレクトレバーのポジションを検知するために構成されていることが提案される。該センサ要素は、手動で選択可能なシフト段(ギヤ Gaenge)を有するシフトゲート内におけるシフトないしセレクトレバーのポジションを検知するために構成することができる。
【0035】
代替的に又は補助的に、当然のことであるが、センサ要素が、自動でシフト可能な走行レンジを有するシフトゲート内におけるシフトないしセレクトレバーのポジションを検知するために構成されることもできる。
【0036】
センサ要素が測定値として、符号(正負符号)に依存した特にアナログの信号を提供するか否か、又はセンサ要素が測定値として、シフトないしセレクトレバーの1つの選択可能なポジションから他の選択可能なポジションへの変更時に符号(正負符号)が変わる特にアナログの信号を提供するか否かということから切り離し、本発明の独自の思想により、センサ要素は、有利には少なくとも部分的に、シフトないしセレクトレバーの選択可能な2つのポジションの間に配設することができる。それにより、センサ要素は、シフトないしセレクトレバーが一方の選択可能なシフトポジションへ旋回する場合にも、他方の選択可能なシフトポジションへ旋回する場合にも、そのために2つのセンサ要素を使用する必要なく、十分に強く且つ評価可能な信号を提供することが保証されている。従ってそれにより特に本発明に従う装置の簡素化も達成されるが、その理由は、2つの選択可能なシフトポジションのために1つのセンサ要素だけが必要とされるためである。またそれによりコストの削減も達成されている。
【0037】
本発明の一実施形態では、1つのシフトゲート内のシフトないしセレクトレバーのポジションを検知するために、又は1つのシフトゲート内の1つのポジションから他のシフトゲート内の1つのポジションへのシフトないしセレクトレバーのポジションを検知するために、少なくとも2つのセンサ要素が設けられている。それにより両方のセンサ要素の一方の起こりうる故障が考慮されており、従ってその場合においても、本発明に従う装置はシフトないしセレクトレバーのポジションの更なる検知を保証している。
【0038】
センサ要素が測定値として、符号(正負符号)に依存した特にアナログの信号を提供するか否か、又はセンサ要素が測定値として、シフトないしセレクトレバーの1つの選択可能なポジションから他の選択可能なポジションへの変更時に符号(正負符号)が変わる特にアナログの信号を提供するか否かということから切り離し、本発明の更なる独自の思想により、少なくとも2つのセンサ要素を設けることができ、これらのセンサ要素のうち少なくとも1つのセンサ要素は少なくとも部分的に、シフトないしセレクトレバーの選択可能な隣接したポジションの間に位置している。それにより高い耐故障性が達成されているのみならず、本発明による装置は、シフトないしセレクトレバーの複数のポジションを検知するために簡単で且つ低コストで実現されている。その理由は、例えばシフトないしセレクトレバーの3つのシフトポジションを検知するために2つのセンサ要素だけが必要とされるためである。
【0039】
好ましくは、複数のセンサ要素が、実質的にシフトゲートに沿って分配されて位置すべきである。それによりこれらのセンサ要素は、ロック手段が付設の信号発生要素と共にシフトないしセレクトレバーの適宜選択可能なポジションへもたらされている場合には、該信号発生要素に対して直接的に空間的に割り当てられていることになる。それによりセンサ要素は、比較的強く、従って良好に評価可能な信号を提供する。
【0040】
本発明の更なる思想により、シフトないしセレクトレバーのポジションを検知するための本発明に従う装置が、特に自動車における使用に適した変速機用のシフト装置の一部分であることが考慮されている。
【0041】
以下、実施例について説明する。
【0042】
本発明の更なる目的、特徴、並びに有利な適用可能性は、後続段落に記載の、図面に基づく複数の実施例の説明から読み取ることができる。この際、本明細書の全記載事項及び/又は本図面の全記載事項は、それら自体で又はそれらの有意義な任意の組み合わせとして、特許請求項又はその従属関係におけるそれらの統合に依存せずとも、本発明の対象を構成するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】シフトないしセレクトレバーと、該シフトないしセレクトレバーのポジションを検知するための本発明に従う装置の可能な一実施形態とを備えた変速機用の一シフト装置を示す断面図である。
【図2】図1に従うシフト装置の一部分を示す図であり、該一部分は、シフトないしセレクトレバーのポジションを検知するための本発明に従う装置を示している。
【図3】図1に従うシフト装置の一部分を示す図であり、該一部分は、他の一実施形態によるシフトないしセレクトレバーのポジションを検知するための本発明に従う装置を示している。
【図4】図1に従うシフト装置を上方から見た平面図である。
【図5】図2及び図3に従う実施形態のために図示された、シフトないしセレクトレバーのポジションを検知するための本発明に従う装置のセンサ要素の信号経過の様子を描写した、図4に従う平面図である。
【実施例】
【0044】
図1、2、4は、模式図として、補助的な手動シフト機能を有する自動変速機用のシフト装置200の可能な一実施形態を示している。シフト装置200を用い、自動車の変速機及び/又は直接的にその駆動部が制御される。シフト装置200は、シフトないしセレクトレバー1を有し、該シフトないしセレクトレバー1は利用者により様々なポジションにもたらすことができる。そのためにシフトないしセレクトレバー1は可動であり、即ち、第1シフトゲート8において例えば「P」「R」「N」「D」「S」のような自動でシフト可能な様々な走行レンジが選択可能であり、第2シフトゲート9において手動でシフト可能な個々のギヤが選択可能であり、そして第1シフトゲート8の予め定められた走行レンジと、第2シフトゲート9のニュートラルポジション「M」との切り替えが左右方向シフトゲート(横方向シフトゲート)を介して可能とされているようにである。第2シフトゲート9では、ニュートラルポジション「M」から出発して「M+」ポジション及び「M−」ポジションへのセレクトレバー1の旋回により、手動ギヤのシフトアップ或いはシフトダウンが行われる。第1シフトゲート8或いは第2シフトゲート9内で走行レンジを選択するためにシフトないしセレクトレバー1は、第1回転軸線10の周りで回転可能に支承されている。それに加え、第1シフトゲート8から第2シフトゲート9或いは第2シフトゲート9から第1シフトゲート8へとシフトないしセレクトレバー1を切り替えるためにシフトないしセレクトレバー1は、特に図4から見てとれるように、第2回転軸線11の周りで回転可能に支承されている。この際、第1回転軸線10と第2回転軸線11は、好ましくは実質的に90°の角度をもって互いにずらされて配設されている。
【0045】
特に図1から見てとれるように、シフト装置200はロック手段5を有し、該ロック手段5はシフトないしセレクトレバー1に付設されており、複数の対向ロック手段6と協働する。対向ロック手段6は、ハウジング固定式で配設されており、好ましくは着脱可能にシフト装置200のハウジング12と結合されているか、又はハウジング12と結合された中間部材と着脱可能に結合されている。ロック手段5と、該ロック手段5と協働する対向ロック手段6とは、少なくとも、シフトないしセレクトレバー1の利用者が該シフトないしセレクトレバー1を該当するシフトポジションへ移し終えた場合に抵抗感を感じるように、該シフトないしセレクトレバー1を選択可能なシフトポジションにおいてロック(停止)させるために用いられる。
【0046】
好ましくはロック手段5は、好ましくはバネ要素13の押圧力に対して摺動可能にシフトないしセレクトレバー1に配設(特に案内)されているノッチ係合要素(Rastelement)として形成されている。更にロック手段5は、好ましくはシフトないしセレクトレバー1の自由端部に配設されており、該自由端部は、シフト装置200のハウジング12内にあり、好ましくは、第1回転軸線10に関して、利用者による掴みのためのシフトないしセレクトレバー1の(非図示の)ハンドグリップの反対側に位置している。ロック手段5或いはノッチ係合要素は、対向ロック手段6側の端部において、好ましくは丸く(凸状で)特に球形状で形成されている(いわばボールノッチ係合機構を構成する)。
【0047】
好ましくは対向嵌合手段として形成されている対向ロック手段6は、ノッチ係合要素5を嵌合状態にもたらすことのできる少なくとも1つの受容部(凹部)14を有する。ノッチ係合要素5が対向嵌合手段6の受容部14内へもたらされている場合にはシフトないしセレクトレバー1が該当シフトポジションにおいて保持される。このシフトポジションは、シフトないしセレクトレバー1を押すことで再び空状態にされ(外され)、それによりノッチ係合要素5がバネ要素13の押圧力に対してそのロックポジション(停止ポジション)から引き出される。
【0048】
対向ロック手段6或いは対向嵌合手段は、好ましくは面として、特には共通の面にとして、もしくは予張力ないし応力(Vorspannung)をもって構成されており、ロック手段5或いはノッチ係合要素のための複数の受容部14を有する。それによりノッチ係合要素5は、シフトないしセレクトレバー1の複数のシフトポジションにおいて対向嵌合手段6に対して嵌合(ロック)することができる。また、一方のシフトゲート8内においても他方のシフトゲート9内においても、対向嵌合手段6に対するノッチ係合要素5の嵌合(ロック)が可能である。同様に一方のシフトゲート8から他方のシフトゲート9へのシフトないしセレクトレバー1のロックされたシフトポジションの達成が実現可能である。
【0049】
特に図1が示しているように、シフト装置200には、シフトないしセレクトレバー1のポジションを検知するための装置100が付設されている。該装置100を用い、シフトないしセレクトレバー1の運動、特にシフトないしセレクトレバー1のポジションがセンサ機構を用いて検知され、そして(非図示の)評価装置における評価の後に(非図示の)調節要素(アクチュエータ)を用いて車両(自動車)の変速機或いは駆動部が制御される。そのために該装置100は、1つの信号発生要素2.1と、該信号発生要素2.1の信号を検知する少なくとも1つの、好ましくは2つのセンサ要素3、4とを有する。好ましくは、信号発生要素は磁界発生要素2.1として構成されており、例えば永久磁石の形式である。好ましくは、信号発生要素2.1の磁界を検知するセンサ要素3、4はホールセンサとして構成されている。
【0050】
信号発生要素2.1は、好ましくはロック手段或いはノッチ係合要素5に付設されており、特に、対向嵌合手段6との嵌合ポジション(ロックポジション)にもたらすことのできるノッチ係合要素5の端部の領域に配設されている。この際、好ましくは信号発生要素2.1は、好ましくはプラスチックからなるノッチ係合要素5により包囲されており、特に包囲被覆されている。
【0051】
センサ要素3、4は、好ましくはプレート(ボード;プリント回路板)7に固定配設されており、この際、プレート7は、対向嵌合手段6の下側に配設されており、それによりプレート7とノッチ係合要素5との間に対向嵌合手段6が位置している。プレート7は、センサ要素3、4と共に、好ましくは着脱可能に対向嵌合手段6及び/又はシフト装置200のハウジング12に取り付けられている。
【0052】
センサ要素3、4は、好ましくは、プレート7において互いに間隔をおいて配設されている。好ましくはセンサ要素3、4は、実質的に、シフトポジションの検知されるべきシフトゲート9の方向に沿って位置している。
【0053】
特に図2から見てとれるように、図2に図示されている本発明に従う装置200の実施形態は、所謂ティプトロニック(Tiptronic)のシフトポジション「M+」と「M−」及び場合によりニュートラルポジション「M」が検知されるようなセンサ要素3、4の配置構成に関している。その際にシフトないしセレクトレバー1はシフトゲート9内にある。センサ要素3、4は、少なくとも部分的に、シフトないしセレクトレバー1により選択可能な隣接するポジションM+とM、或いはMとM−の間に配設されている。
【0054】
更に図2は、図1に従うシフトないしセレクトレバー1のポジションを検知するための本発明に従う装置100の実施形態を詳細に示している。信号発生要素2.1は磁石により形成されている。この磁石のN極とS極は、信号発生要素2.1から出発してセンサ要素3、4に向かう方向で見て、並列配置で配設されている。図3は、代替的な実施形態としてシフトないしセレクトレバー1のポジションを検知するための装置100’の信号発生要素2.2のN極とS極の配置構成を示している。この際、信号発生要素2.2は、センサ要素3、4に向かう方向で見て(両磁極が)前後配置で配設されている。
【0055】
信号発生要素2.1或いは2.2のN極とS極の異なる配置構成から得られるセンサ要素3、4の信号が図5に図示されている。この際、センサ要素3、4は、これらのセンサ要素3、4が測定値としてアナログ信号を提供するように構成されている。図5のグラフAは、図2に従う信号発生要素2.1の実施形態のためのシフトないしセレクトレバー1の各々のポジションSに依存したアナログ信号の経過の様子を示している。この際、センサ要素3が信号S1を提供し、センサ要素4が信号S2を提供し、これらの信号S1及びS2は、好ましくは電圧信号である。
【0056】
例えばシフト位置「M+」からシフト位置「M−」への1つのシフト位置から他のシフト位置へのセレクトレバー1の運動により、アナログ信号S1もアナログ信号S2も実質的に線形(直線状)に変化する。
【0057】
好ましくは、シフトないしセレクトレバー1のシフトポジション「M」「M+」或いは「M−」において存在する信号は(非図示)の評価装置のための校正値(キャリブレーションバリュー)として用いられる。この際、所謂ティプトロニックのシフトないしセレクトレバー1のためのニュートラルポジションを形成するシフトポジション「M」は、好ましくは、ノッチ係合要素5が対向嵌合手段6の受容部14の1つの受容部内へ嵌合されている嵌合ポジション(ロックポジション)である。シフト位置「M+」と「M−」は所謂タップ可能な(軽く押すことのできる)シフトポジションであり、好ましくは、ノッチ係合要素5は、これらのシフトポジションにおいては、対向嵌合手段6の受容部14の1つの受容部内へは嵌合しない。
【0058】
図5のグラフBは、図3に従う信号発生要素2.2の実施形態におけるセンサ要素3、4の信号経過の様子を示している。この実施形態で設けられているダイヤメトラルな永久磁石は、センサ要素3、4により出力される測定値が、図5のグラフBにおいてセンサ信号S1とS2の経過の様子に基づいて表されているように符号(正負符号)に関して逆転することをもたらす。それにより、アナログ信号としてのアナログ信号値の他に、補助的に符号(正負符号)により、別の評価可能な情報が提供されており、それにより、特に高い耐故障性が達成され、シフト装置200の可能な障害の発生時にも最善のエラー認識が可能とされる。
【符号の説明】
【0059】
1 シフトないしセレクトレバー
2.1 信号発生要素
2.2 信号発生要素
3 センサ要素
4 センサ要素
5 ロック手段、ノッチ係合要素
6 対向ロック手段、対向嵌合手段
7 プレート(ボード;プリント回路板)
8 第1シフトゲート
9 第2シフトゲート
10 第1回転軸線
11 第2回転軸線
12 ハウジング
13 バネ要素
14 受容部(凹部)

100 検知装置
100’ 検知装置
200 シフト装置

M+ 手動シフト可能なギヤのためのシフトゲート9のシフトポジション
M− 手動シフト可能なギヤのためのシフトゲート9のシフトポジション
M 手動シフト可能なギヤのためのシフトゲート9のニュートラルポジション
S1 アナログ信号
S2 アナログ信号
N 信号発生要素の極
S 信号発生要素の極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シフトないしセレクトレバー(1)と共に可動である信号発生要素(2.1;2.2)と、測定値センサとして該信号発生要素(2.1;2.2)の信号を検知する少なくとも1つのセンサ要素(3、4)とを備えており、該信号発生要素(2.1;2.2)は前記シフトないしセレクトレバー(1)のためのロック手段(5)に付設されている、変速機用のシフトないしセレクトレバー(1)のポジションを検知するための装置(100、100’)であって、
前記センサ要素(3、4)は、測定値として、符号に依存するアナログ信号(S1、S2)を提供すること、及び/又は、
前記センサ要素(3、4)は、測定値として、信号であって該信号の符号が前記シフトないしセレクトレバー(1)の1つの選択可能なポジション(M+, M;M, M−)から他の選択可能なポジション(M+, M;M, M−)への変更時に変わる特にアナログの信号を提供すること
を特徴とする装置。
【請求項2】
前記信号発生要素(2.1;2.2)は前記ロック手段(5)と固定結合されていること
を特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記信号発生要素(2.1;2.2)は前記ロック手段内に配設されていること
を特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記ロック手段(5)はプラスチック部材であり、前記信号発生要素(2.1;2.2)は少なくとも部分的に該ロック手段(5)の材料により包囲されていること
を特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記信号発生要素(2.1;2.2)は磁石であり、特に永久磁石であること
を特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記信号発生要素(2.2)は磁石であり、該磁石の極(N、S)は、前記センサ要素(3、4)に向かう方向で見て、前後配置で配設されていること
を特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記信号発生要素(2.1)は磁石であり、該磁石の極(N、S)は、前記センサ要素(3、4)に向かう方向で見て、並置配置で配設されていること
を特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記信号発生要素(2.1;2.2)と前記センサ要素(3、4)との間に、前記ロック手段(5)と協働する複数の対向ロック手段(6)が配設されていること
を特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記センサ要素(3、4)は、プレート(7)又はシートに配設されていること
を特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記センサ要素は、前記対向ロック手段と固定結合されており、特に前記対向ロック手段内へ埋設成形されていること
を特徴とする、請求項8又は9に記載の装置。
【請求項11】
前記センサ要素(3、4)は、少なくとも部分的に、前記シフトないしセレクトレバー(1)の選択可能な2つのポジション(M+, M;M, M−)の間に配設されていること
を特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つのセンサ要素(3、4)はホールセンサ又はリニアセンサであること
を特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記センサ要素(3、4)は、好ましくは手動で選択可能なシフト段を有するシフトゲート(9)である、シフトゲート(9)内のシフトないしセレクトレバー(1)のポジションを検知するために構成されていること
を特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
少なくとも2つのセンサ要素(3、4)が設けられており、これらのセンサ要素のうち少なくとも1つのセンサ要素(3、4)は、少なくとも部分的に、前記シフトないしセレクトレバー(1)の選択可能な隣接したポジション(M+, M;M, M−)の間に位置していること
を特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記センサ要素(3、4)は、実質的にシフトゲート(9)に沿って分配されて位置していること
を特徴とする、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の、シフトないしセレクトレバー(1)のポジションを検知するための装置(100、100’)を備えた、特に自動車における使用のための、変速機用のシフト装置(200)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−511421(P2013−511421A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539316(P2012−539316)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067679
【国際公開番号】WO2011/061223
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(510028523)イーシーエス エンジニアード コントロール システムズ アクチエンゲゼルシャフト (5)
【Fターム(参考)】