説明

変速機用潤滑油組成物

【課題】 低粘度であっても疲労寿命が長い変速機用潤滑油組成物、特に自動変速機、無段変速機、手動変速機、終減速機等の変速機に好適な変速機用潤滑油組成物を提供すること。
【解決手段】 (A)100℃における動粘度が1.5〜4.5mm/sに調整してなる潤滑油基油に、(B)炭素数16以上の側鎖を有する(メタ)アクリレートを構造単位として有するポリ(メタ)アクリレート系添加剤を含み、組成物の100℃における動粘度が3〜8mm/s、かつ粘度指数が95〜200であることを特徴とする変速機用潤滑油組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変速機用潤滑油組成物に関し、詳しくは低粘度であっても疲労寿命が長い、自動車用の自動変速機、手動変速機、無段変速機に好適な変速機用潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、炭酸ガス排出量の削減など、環境問題への対応から自動車、建設機械、農業機械等の省エネルギー化、すなわち、省燃費化が急務となっており、エンジンや変速機、終減速機、圧縮機、油圧装置等の装置には省エネルギーへの寄与が強く求められている。そのため、これらに使用される潤滑油には、従来に比べより攪拌抵抗や摩擦抵抗を減少することが求められている。
【0003】
変速機および終減速機の省燃費化手段のひとつとして、潤滑油の低粘度化が挙げられる。例えば、変速機の中でも自動車用自動変速機や無段変速機はトルクコンバータ、湿式クラッチ、歯車軸受機構、オイルポンプ、油圧制御機構などを有し、また、手動変速機や終減速機は歯車軸受機構を有しており、これらに使用される潤滑油をより低粘度化することにより、トルクコンバータ、湿式クラッチ、歯車軸受機構およびオイルポンプ等の攪拌抵抗および摩擦抵抗が低減され、動力の伝達効率が向上することで自動車の燃費の向上が可能となる。
【0004】
しかしながら、これらに使用される潤滑油を低粘度化すると疲労寿命が大幅に低下し、焼付きなどが生じて変速機等に不具合が生じることがある。特に低粘度油の極圧性を向上させるためにリン系極圧剤を配合した場合には、疲労寿命が著しく悪化してしまうため低粘度化することは一般に困難である。また、硫黄系極圧剤は、潤滑油の疲労寿命を改善できるが、一般に低潤滑の条件下においては、添加剤よりも基油粘度の影響が大きいことが知られている。
【0005】
従来の自動車用変速機油としては、変速特性等の各種性能を長期間維持できるものとして、合成油及び/又は鉱油系の潤滑油基油、摩耗防止剤、極圧剤、金属系清浄剤、無灰分散剤、摩擦調整剤、粘度指数向上剤等を最適化して配合したものが報告されている(例えば、特許文献1〜4参照。)。しかしながら、これらの組成物はいずれも燃費向上を目的としたものではないためその動粘度は高く、潤滑油を低粘度化した場合の疲労寿命への影響については全く検討されておらず、従ってそのような課題を解決しうる組成物についてはこれまでに十分検討されていない。
【特許文献1】特開平3−39399号公報
【特許文献2】特開平7−268375号公報
【特許文献3】特開2000−63869号公報
【特許文献4】特開2001−262176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みなされたものであり、その目的は、低粘度であっても疲労寿命が長い、変速機用潤滑油組成物、特に自動車用の自動変速機、手動変速機、無段変速機等に好適な、省燃費性能と歯車や軸受け等の十分な耐久性を兼ね備えた潤滑油組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために、潤滑油基油とポリマーに着目し、検討した結果、特定の基油と特定のポリ(メタ)クリレート系添加剤を選択して低粘度にした変速機用潤滑油組成物が、上記課題を解決できる事を見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(A)100℃における動粘度が1.5〜4.5mm/sに調整してなる潤滑油基油に、(B)下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリ(メタ)アクリレート系添加剤を含有し、組成物の100℃における動粘度が3〜8mm/s、かつ粘度指数が95〜200であることを特徴とする変速機用潤滑油組成物にある。
【化2】

(一般式(1)において、Rは水素又はメチル基、Rは炭素数16〜30の直鎖又は分枝状の炭化水素基を示す。)
【0009】
また本発明は、前記一般式(1)におけるRが炭素数20以上の分枝状炭化水素基であることを特徴とする前記記載の変速機用潤滑油組成物にある。
また本発明は、前記(A)成分が、100℃における動粘度が7〜50mm/sの潤滑油基油を基油全量基準で3〜30質量%含む潤滑油基油であることを特徴とする前記記載の変速機用潤滑油組成物にある。
【0010】
以下、本発明を説明する。
本発明における(A)潤滑油基油は、100℃における動粘度が1.5〜4.5mm/sに調整してなる潤滑油基油であり、鉱油系潤滑油基油、合成系潤滑油基油及びこれらの混合物を用いることができる。
【0011】
鉱油系潤滑油基油としては、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理を単独又は二つ以上適宜組み合わせて精製したパラフィン系、ナフテン系等の鉱油系潤滑油基油や、ノルマルパラフィン、イソパラフィン等が挙げられる。なお、これらの基油は単独でも、2種以上任意の割合で組み合わせて使用してもよい。
【0012】
好ましい鉱油系潤滑油基油としては以下の基油を挙げることができる。
(1) パラフィン基系原油および/または混合基系原油の常圧蒸留による留出油;
(2) パラフィン基系原油および/または混合基系原油の常圧蒸留残渣油の減圧蒸留留出油(WVGO);
(3) 潤滑油脱ろう工程により得られるワックスおよび/またはGTLプロセス等により製造されるフィッシャートロプシュワックス;
(4) (1)〜(3)の中から選ばれる1種または2種以上の混合油のマイルドハイドロクラッキング処理油(MHC);
(5) (1)〜(4)の中から選ばれる2種以上の油の混合油;
(6) (1)、(2)、(3)、(4)または(5)の脱れき油(DAO);
(7) (6)のマイルドハイドロクラッキング処理油(MHC);
(8) (1)〜(7)の中から選ばれる2種以上の油の混合油などを原料油とし、この原料油および/またはこの原料油から回収された潤滑油留分を、通常の精製方法によって精製し、潤滑油留分を回収することによって得られる潤滑油
【0013】
ここでいう通常の精製方法とは特に制限されるものではなく、潤滑油基油製造の際に用いられる精製方法を任意に採用することができる。通常の精製方法としては、例えば、(ア)水素化分解、水素化仕上げなどの水素化精製、(イ)フルフラール溶剤抽出などの溶剤精製、(ウ)溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう、(エ)酸性白土や活性白土などによる白土精製、(オ)硫酸洗浄、苛性ソーダ洗浄などの薬品(酸またはアルカリ)精製などが挙げられる。本発明ではこれらの1つまたは2つ以上を任意の組み合わせおよび任意の順序で採用することができる。
【0014】
本発明で用いる鉱油系潤滑油基油としては、上記(1)〜(8)から選ばれる基油をさらに以下の処理を行って得られる基油が特に好ましい。
すなわち、上記(1)〜(8)から選ばれる基油をそのまま、またはこの基油から回収された潤滑油留分を、水素化分解あるいはワックス異性化し、当該生成物をそのまま、もしくはこれから潤滑油留分を回収し、次に溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行い、その後、溶剤精製処理するか、または、溶剤精製処理した後、溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行って製造される水素化分解鉱油及び/又はワックス異性化イソパラフィン系基油が好ましく用いられる。この水素化分解鉱油及び/又はワックス異性化イソパラフィン系基油は、基油全量基準で好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、特に好ましくは70質量%以上使用することが望ましい。
【0015】
また、合成系潤滑油基油を例示すれば、ポリα−オレフィン又はその水素化物、イソブテンオリゴマー又はその水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(例えば、ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等)、ポリオールエステル(例えば、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル等が挙げられる。
【0016】
好ましい合成系潤滑油基油としてはポリα−オレフィンが挙げられる。ポリα−オレフィンとしては、典型的には、炭素数2〜32、好ましくは6〜16のα−オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー(例えば、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンコオリゴマー等)及びその水素化物が挙げられる。
【0017】
ポリα−オレフィンの製法については特に制限はないが、例えば、三塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素または三フッ化ホウ素と水、アルコール(例えば、エタノール、プロパノールまたはブタノール)、カルボン酸、またはエステル(例えば、酢酸エチルまたはプロピオン酸エチル)との錯体を含むフリーデル・クラフツ触媒のような重合触媒の存在下でのα−オレフィンの重合等が挙げられる。
【0018】
本発明における(A)潤滑油基油は、上記のような2種類以上の鉱油系基油同志あるいは合成油系基油同志の混合物であっても差し支えなく、鉱油系基油と合成油系基油との混合物であっても差し支えない。そして、上記混合物における2種類以上の基油の混合比は、任意に選ぶことができる。
【0019】
本発明の変速機用潤滑油組成物における(A)潤滑油基油は、100℃における動粘度が1.5〜4.5mm/sに調整してなる潤滑油基油であり、好ましくは下記(A1)成分、又は(A1)成分と(A2)成分から構成される。
(A1)成分としては、具体的には以下の(A1a)〜(A1c)から選ばれる1種又は2種以上を混合して用いることが好ましい。
(A1a)100℃における動粘度が1.5〜3.5mm/s未満、好ましくは1.9〜3.2mm/sの鉱油系基油
(A1b)100℃における動粘度が3.5〜7mm/s未満、好ましくは3.8〜4.5mm/sの鉱油系基油
(A1c)100℃における動粘度が1.5〜7mm/s未満、好ましくは3.8〜4.5mm/sのポリα−オレフィン系基油
【0020】
ここで、(A1a)〜(A1c)の潤滑油基油の%Cとしては、特に制限はないが、3以下であることが好ましく、2以下であることがさらに好ましく、1以下であることが特に好ましい。(A)潤滑油基油の%Cを3以下とすることでより酸化安定性に優れた組成物を得ることができる。
なお、本発明において%Cとは、ASTM D 3238−85に準拠した方法により求められる芳香族炭素数の全炭素数に対する百分率を示す。
【0021】
また、(A1a)〜(A1c)の潤滑油基油は、その粘度指数に格別の限定はないが、粘度指数は80以上が好ましく、より好ましくは90以上、特に好ましくは110以上であり、通常200以下、好ましくは160以下であることが望ましい。粘度指数を80以上とすることによって、低温から高温にわたり良好な粘度特性を示す組成物を得ることができ、粘度指数が高すぎると疲労寿命に対して効果が小さい。
【0022】
また、本発明における(A1a)〜(A1c)の潤滑油基油は、その硫黄含有量に格別の限定はないが、0.05質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以下であることがさらに好ましく、0.005質量%以下であることが特に好ましい。(A)成分の硫黄含有量を低減することで組成物の酸化安定性により優れた組成物を得ることができる。
【0023】
本発明においては、上記(A1a)〜(A1c)をそれぞれ単独でも使用することができるが、任意に混合使用することができる。中でも、(A1a)と、(A1b)及び/又は(A1c)を併用することが好ましい。なお、(A1a)成分及び/又は(A1b)成分と(A1c)成分を併用する場合の(A1c)成分の含有量は、基油全量基準で、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは3〜20質量%、さらに好ましくは3〜10質量%である。特に、下記(A2)成分と併用する場合に、(A1c)成分を3〜8質量%程度配合することで、安価かつ効果的に、疲労寿命、低温特性、酸化安定性に優れた効果を発現することができる。
【0024】
本発明の変速機用潤滑油組成物における(A)潤滑油基油としては、疲労寿命を向上させるために、上記(A1)に、さらに(A2)100℃における動粘度が7〜50mm/sの潤滑油基油を用いることが好ましい。
(A2)成分としては、具体的には以下の(A2a)〜(A2c)から選ばれる1種又は2種以上を混合して用いることが好ましい。
(A2a)100℃における動粘度が7〜15mm/s未満、好ましくは8〜12mm/sの鉱油系及び/又は合成系基油、好ましくは鉱油系基油
(A2b)100℃における動粘度が15〜25mm/s未満、好ましくは17〜23mm/sの鉱油系及び/又は合成系基油、好ましくは鉱油系基油
(A2c)100℃における動粘度が25〜50mm/s、好ましくは28〜40mm/sの鉱油系及び/又は合成系基油、好ましくは鉱油系基油
【0025】
ここで、(A2a)〜(A2c)の潤滑油基油の%Cとしては、通常0〜40であり、特に制限はないが、2以上であることが好ましく、5以上であることがさらに好ましく、8以上であることが特に好ましく、また15以下であることが好ましく、より好ましくは10以下であることが、疲労寿命と酸化安定性を両立できる点で望ましい。
【0026】
また、(A2a)〜(A2c)の潤滑油基油は、その粘度指数に格別の限定はないが、粘度指数は80以上が好ましく、より好ましくは90以上、特に好ましくは95以上であり、通常200以下、好ましくは120以下、より好ましくは110以下、特に好ましくは100以下であることが望ましい。粘度指数を80以上とすることによって、低温から高温にわたり良好な粘度特性を示す組成物を得ることができ、粘度指数が高すぎると疲労寿命に対して効果が小さい。
【0027】
また、本発明における(A2a)〜(A2c)の潤滑油基油は、その硫黄含有量に格別の限定はないが、通常0〜2質量%であり、好ましくは0.05〜1.5質量%、より好ましくは0.3〜1.2質量%、さらに好ましくは0.5〜1質量%、特に好ましくは0.7〜1質量%であることが望ましい。(A2)成分として硫黄分含有量が比較的高いものを使用することで、疲労寿命を高めることができ、好ましくは1質量%以下のものを使用することで組成物の酸化安定性により優れた組成物を得ることができる。
【0028】
本発明において(A2)成分を使用する場合、(A2b)又は(A2c)を用いることが疲労寿命向上の点で好ましく、特に(A2b)を用いることが疲労寿命と酸化安定性を両立できる点から好ましい。また、(A1)成分として、(A1c)を用いることで、疲労寿命と酸化安定性及び低温粘度特性に優れた組成物を得ることができる。
【0029】
本発明の(A)成分において上記(A1)及び(A2)成分を併用する場合の配合量は、特に制限はないが、潤滑油基油全量基準で、(A1)成分を好ましくは70〜97質量%、より好ましくは85〜95質量%であり、(A2)成分を好ましくは3〜30質量%、より好ましくは5〜15質量%である。
【0030】
本発明における(A)潤滑油基油は上記のように(A1)成分、又は(A1)成分及び(A2)成分からなる潤滑油基油であるが、その100℃における動粘度は1.5〜4.5mm/sであり、好ましくは2.8〜4.0mm/s、特に好ましくは3.6〜3.9mm/sである。100℃における動粘度を4.5mm/s以下とすることによって、流体抵抗が小さくなるため潤滑箇所での摩擦抵抗がより小さい潤滑油組成物を得ることが可能となり、低温粘度に優れた組成物(例えば、−40℃におけるブルックフィールド粘度が2万mPa・s以下)とすることができる。また、100℃における動粘度を1.5mm/s以上とすることによって、油膜形成が十分となり、潤滑性により優れ、また、高温条件下での基油の蒸発損失がより小さい潤滑油組成物を得ることが可能となる。
【0031】
また、本発明における(A)潤滑油基油の%Cとしては、特に制限はないが、3以下であることが好ましく、2以下であることがさらに好ましく、1以下であることが特に好ましい。(A)潤滑油基油の%Cを3以下とすることでより酸化安定性に優れた組成物を得ることができる。
【0032】
また、本発明における(A)潤滑油基油は、その粘度指数に格別の限定はないが、粘度指数は80以上が好ましく、より好ましくは90以上、特に好ましくは110以上であることが望ましい。粘度指数を80以上とすることによって、低温から高温にわたり良好な粘度特性を示す組成物を得ることができる。
【0033】
また、本発明における(A)潤滑油基油は、その硫黄含有量に格別の限定はないが、好ましくは0〜0.3質量%、より好ましくは0.03〜0.2質量%、特に好ましくは0.06〜0.1質量%である。(A)成分の硫黄含有量を上記範囲、特に0.03〜0.2質量%とすることで、疲労寿命と酸化安定性を両立することができる。
【0034】
本発明の変速機用潤滑油組成物における(B)成分は、下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリ(メタ)アクリレート系添加剤であり、極性基を有しない非分散型ポリ(メタ)クリレート系添加剤であっても、極性基を有する分散型ポリ(メタ)クリレート系添加剤であってもよい。
【0035】
【化3】

【0036】
一般式(1)において、Rは水素又はメチル基、好ましくはメチル基を示し、Rは炭素数16〜30の直鎖又は分枝状の炭化水素基、好ましくは炭素数20以上の分枝状炭化水素基を示す。
【0037】
ここで、炭素数16〜30の直鎖又は分枝状の炭化水素基としては、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、ペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、オクタコセニル基、ノナコセニル基、トリアコンテニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でもよく、また二重結合の位置も任意である);等及びこれらにが例示できる。
【0038】
本発明の(B)成分を構成する一般式(1)で表される構造単位を有するポリ(メタ)アクリレートとしては、下記一般式(1’)で示されるモノマーの1種または2種以上を重合または共重合して得られるポリ(メタ)アクリレートであっても、一般式(1’)で表されるモノマーの1種又は2種以上のモノマーと、一般式(1’)で表されるモノマー以外のモノマーとの共重合体であっても良い。
CH=CH(R)−C(=O)−OR(1’)
(一般式(1’)中におけるRおよびRは、一般式(1)のRおよびRと同じである。)
【0039】
一般式(1’)で示されるモノマーとしては、下記(B1)及び(B2)から選ばれる1種又は2種以上のモノマーであることが好ましい。
(B1)炭素数16〜30の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレート:
(B1)成分としては、好ましくは炭素数16〜20の直鎖アルキル基、より好ましくは炭素数16又は18の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートであり、具体的には、n−ヘキサデシル(メタ)アクリレート、n−オクタデシル(メタ)アクリレート、n−イコシル(メタ)アクリレート、n−ドコシル(メタ)アクリレート、n−テトラコシル(メタ)アクリレート、n−ヘキサコシル(メタ)アクリレート、n−オクタコシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、特にn−ヘキサデシル(メタ)アクリレート、n−オクタデシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0040】
(B2)炭素数16〜30の分枝状アルキル基を有する(メタ)アクリレート:
(B2)成分としては、例えば、分枝ヘキサデシル(メタ)アクリレート、分枝オクタデシル(メタ)アクリレート、分枝イコシル(メタ)アクリレート、分枝ドコシル(メタ)アクリレート、分枝テトラコシル(メタ)アクリレート、分枝ヘキサコシル(メタ)アクリレート、分枝オクタコシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、好ましくは−C−C(R)Rで表されるような、炭素数16〜30、好ましくは炭素数20〜28、より好ましくは炭素数22〜26の分枝アルキル基を有する(メタ)アクリレートが挙げられ、ここで、R及びRは、Rの炭素数が16〜30となる限りにおいて何ら制限はないが、Rとしては、好ましくは炭素数6〜12、より好ましくは炭素数10〜12の直鎖アルキル基、Rとしては、好ましくは炭素数10〜16、より好ましくは炭素数14〜16の直鎖アルキル基である。
(B2)成分としては、より具体的には、2−デシル−テトラデシル(メタ)アクリレート、2−ドデシル−ヘキサデシル(メタ)アクリレート、2−デシル−テトラデシルオキシエチル(メタ)アクリレート等の炭素数20〜30の分枝状アルキル基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0041】
(B)成分のポリ(メタ)アクリレートが、一般式(1’)で表されるモノマーの1種又は2種以上のモノマーと一般式(1’)で表されるモノマー以外のモノマーとの共重合体である場合の一般式(1’)で表されるモノマー以外のモノマーとしては、例えば、下記(Ba)〜(Bc)に示すものが挙げられる。
【0042】
(Ba)炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリレート:
(Ba)成分としては、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−又はi−プロピル(メタ)アクリレート、n−、i−又はsec−ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、メチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0043】
(Bb)炭素数5〜15のアルキル基又はアルケニル基を有する(メタ)アクリレート:
(Bb)成分としては、具体的には、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート(これらは直鎖でも分枝状であってもよい);オクテニル(メタ)アクリレート、ノネニル(メタ)アクリレート、デセニル(メタ)アクリレート、ウンデセニル(メタ)アクリレート、ドデセニル(メタ)アクリレート、トリデセニル(メタ)アクリレート、テトラデセニル(メタ)アクリレート、ペンタデセニル(メタ)アクリレート(これらは直鎖でも分枝状であってもよい)等が挙げられ、炭素数12〜15の直鎖アルキル基を主成分として有する(メタ)アクリレートが好ましい。
【0044】
(Bc)極性基含有モノマー;
(Bc)成分としては、アミド基含有ビニルモノマー、ニトロ基含有モノマー、1〜3級アミノ基含有ビニルモノマー、含窒素複素環含有ビニルモノマーおよびこれらの塩酸塩、硫酸塩、燐酸塩、低級アルキル(炭素数1〜8)モノカルボン酸塩、第4級アンモニウム塩基含有ビニルモノマー、酸素及び窒素を含有する両性ビニルモノマー、ニトリル基含有モノマー、脂肪族炭化水素系ビニルモノマー、脂環式炭化水素系ビニルモノマー、芳香族炭化水素系ビニルモノマー、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン類、エポキシ基含有ビニルモノマー、ハロゲン元素含有ビニルモノマー、不飽和ポリカルボン酸のエステル、ヒドロキシル基含有ビニルモノマー、ポリオキシアルキレン鎖含有ビニルモノマー、アニオン性基、燐酸基、スルホン酸基、又は硫酸エステル基含有イオン性基含有ビニルモノマー及びこれらの1価金属塩、2価金属塩、アミン塩若しくはアンモニウム塩等が挙げられる。
【0045】
(Bc)成分としては、具体的には、これらのうち、4−ジフェニルアミン(メタ)アクリルアミド、2−ジフェニルアミン(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、およびジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の窒素含有モノマーが好ましい例として挙げられる。
【0046】
本発明における(B)成分において、一般式(1)で表される構造単位の構成比は、5モル%以上であることが好ましく、より好ましくは15モル%以上であり、特に好ましくは30モル%以上である。また、低温粘度特性の観点から、好ましくは80モル%以下であり、より好ましくは60モル%以下、特に好ましくは50モル%以下である。より具体的には、上記(B1)、(B2)、(Ba)、(Bb)及び(Bc)成分の構成比は、ポリ(メタ)アクリレートを構成するモノマー全量基準で、以下の通りであることが好ましい。
【0047】
(B1)成分:好ましくは5〜60モル%、より好ましくは10〜40モル%、特に好ましくは20〜40モル%
(B2)成分:好ましくは5〜60モル%、より好ましくは10〜40モル%、特に好ましくは10〜30モル%
(Ba)成分:好ましくは0〜90モル%、より好ましくは20〜80モル%、特に好ましくは30〜70モル%
(Bb)成分:好ましくは0〜60モル%、より好ましくは5〜30モル%、特に好ましくは10〜20モル%
(Bc)成分:好ましくは0〜20モル%、より好ましくは0〜10モル%、特に好ましくは1〜5モル%
【0048】
本発明における(B)成分の重量平均分子量は、特に制限はなく、通常5千〜15万であるが、疲労寿命向上効果により優れる点で、好ましくは1万〜6万、より好ましくは1.5万〜3万、特に好ましくは1.5万〜2.4万である。
なお、ここでいう重量平均分子量は、ウォーターズ社製150−C ALC/GPC装置に東ソー社製のGMHHR−M(7.8mmID×30cm)のカラムを2本直列に使用し、溶媒としてはテトラヒドロフラン、温度23℃、流速1mL/分、試料濃度1質量%、試料注入量75μL、検出器示差屈折率計(RI)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
【0049】
本発明の変速機用潤滑油組成物における(B)ポリ(メタ)アクリレート系添加剤の配合量は、組成物の100℃における動粘度が3〜8mm/s、好ましくは4.5〜6mm/s、かつ、組成物の粘度指数が95〜200、好ましくは120〜190、より好ましくは150〜180となるような量であり、より具体的には、その配合量は、組成物全量基準で、希釈剤込みの配合量として、0.1〜15質量%、好ましくは2〜12質量%、特に好ましくは3〜8質量%である。(B)成分の配合量が上記範囲を超える場合、配合量に見合う疲労寿命向上効果が期待できないだけでなく、せん断安定性に劣り、初期の極圧性を長期間維持しにくいため好ましくない。
【0050】
本発明の変速機用潤滑油組成物には、その性能をさらに向上させる目的で、又は変速機用潤滑油に必要な性能を付与するために、必要に応じて、粘度指数向上剤、極圧剤、分散剤、金属系清浄剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤、消泡剤、着色剤等の各種添加剤を単独で又は数種類組み合わせて配合しても良い。
【0051】
粘度指数向上剤としては、公知の非分散型又は分散型ポリメタクリレート類((B)成分を除く)、非分散型又は分散型エチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物、ポリイソブチレン又はその水素化物、スチレン−ジエン水素化共重合体、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体及びポリアルキルスチレン等が挙げられる。
本発明の変速機用潤滑油組成物に粘度指数向上剤((B)成分を除く)を配合する場合、その配合量は、組成物の100℃における動粘度及び粘度指数の規定を満たす限り制限はなく、通常、組成物全量基準で0.1〜15質量%、好ましくは0.5〜5質量%である。
【0052】
極圧剤としては、亜リン酸、亜リン酸モノエステル類、亜リン酸ジエステル類、亜リン酸トリエステル類、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1種のリン系極圧剤、硫化油脂類、硫化オレフィン類、ジヒドロカルビルポリスルフィド類、ジチオカーバメート類、チアジアゾール類、及びベンゾチアゾール類から選ばれる少なくとも1種の硫黄系極圧剤、及び/又は、チオ亜リン酸、チオ亜リン酸モノエステル類、チオ亜リン酸ジエステル類、チオ亜リン酸トリエステル類、ジチオ亜リン酸、ジチオ亜リン酸モノエステル類、ジチオ亜リン酸ジエステル類、ジチオ亜リン酸トリエステル類、トリチオ亜リン酸、トリチオ亜リン酸モノエステル類、トリチオ亜リン酸ジエステル類、トリチオ亜リン酸トリエステル類、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1種のリン−硫黄系極圧剤からなる極圧剤を配合するのが好ましい。
【0053】
分散剤としては、炭素数40〜400の炭化水素基を有する、コハク酸イミド、ベンジルアミン、ポリアミン、及び/又はそのホウ素化合物誘導体等の無灰分散剤を配合することができる。
本発明においては、上記分散剤の中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で含有させることができるが、通常、その含有量は、組成物全量基準で0.01〜15質量%、好ましくは0.1〜8質量%である。
【0054】
金属系清浄剤としては、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート、アルカリ土類金属サリシレート等の金属系清浄剤が挙げられる。
本発明においては、上記金属系清浄剤の中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で含有させることができるが、通常、その含有量は、組成物全量基準で0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0055】
摩擦調整剤としては、潤滑油用の摩擦調整剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であるが、炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基、特に炭素数6〜30の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、アミン化合物、イミド化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩等が好ましく用いられる。
本発明においては、上記摩擦調整剤の中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で含有させることができるが、通常、その含有量は、組成物全量基準で0.01〜5.0質量%、好ましくは0.03〜3.0質量%である。
【0056】
酸化防止剤としては、フェノール系化合物やアミン系化合物等、潤滑油に一般的に使用されているものであれば使用可能である。
具体的には、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等のアルキルフェノール類、メチレン−4,4−ビスフェノール(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)等のビスフェノール類、フェニル−α−ナフチルアミン等のナフチルアミン類、ジアルキルジフェニルアミン類、ジ−2−エチルヘキシルジチオリン酸亜鉛等のジアルキルジチオリン酸亜鉛類、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)脂肪酸(プロピオン酸等)あるいは(3−メチル−5−tertブチル−4−ヒドロキシフェニル)脂肪酸(プロピオン酸等)と1価又は多価アルコール、例えばメタノール、オクタノール、オクタデカノール、1,6−ヘキサジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリスリトール等とのエステル等が挙げられる。
これらの中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物は、任意の量を含有させることができるが、通常、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%であるのが望ましい。
【0057】
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、及びイミダゾール系化合物等が挙げられる。
【0058】
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、及び多価アルコールエステル等が挙げられる。
【0059】
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0060】
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、及びβ−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
【0061】
流動点降下剤としては、潤滑油基油に応じて公知の流動点降下剤を任意に選択することができるが、重量平均分子量が好ましくは20,000〜500,000、より好ましくは50,000〜300,000、特に好ましくは80,000〜200,000のポリメタクリレートが好ましい。
【0062】
消泡剤としては、潤滑油用の消泡剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、例えば、ジメチルシリコーン、フルオロシリコーン等のシリコーン類が挙げられる。これらの中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で配合することができる。
【0063】
シール膨潤剤としては、潤滑油用のシール膨潤剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、例えば、エステル系、硫黄系、芳香族系等のシール膨潤剤が挙げられる。
【0064】
着色剤としては、通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、また任意の量を配合することができるが、通常その配合量は、組成物全量基準で0.001〜1.0質量%である。
【0065】
これらの添加剤を本発明の変速機用潤滑油組成物に含有させる場合には、その含有量は組成物全量基準で、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤ではそれぞれ0.005〜5質量%、流動点降下剤、金属不活性化剤では0.005〜2質量%、シール膨潤剤では0.01〜5質量%、消泡剤では0.0005〜1質量%の範囲で通常選ばれる。
【0066】
また、本発明の変速機用潤滑油組成物は、上記構成とすることで疲労寿命に優れた性能を付与することができるが、従来の自動変速機用、無段変速機用、手動変速機用潤滑油組成物に比べ攪拌抵抗低減による省燃費性能をより高めるために、組成物の100℃における動粘度を8mm/s以下、好ましくは7mm/s以下、より好ましくは6.5mm/s以下、特に好ましくは6mm/s以下とすることが望ましい。また、40℃における動粘度は、好ましくは40mm/s以下、より好ましくは35mm/s以下、特に好ましくは30mm/s以下とすることが望ましい。また、自動変速機用、無段変速機用、手動変速機用潤滑油組成物としての極圧性をより高めるために、組成物の100℃における動粘度を3mm/s以上とすること好ましく、4mm/s以上とすることがより好ましく、5mm/s以上とすることが特に好ましく、組成物の40℃における動粘度を好ましくは15mm/s以上、より好ましくは20mm/s以上、特に好ましくは25mm/s以上とすることが望ましい。
【0067】
本発明の変速機用潤滑油組成物は、従来品を低粘度化しても疲労寿命に優れ、潤滑油起因の攪拌抵抗を低減できるため、例えば自動車用変速機用、特に自動変速機用、無段変速機用又は手動変速機用あるいは自動車用終減速機用、として使用することで自動車の燃費の向上に寄与することが可能となる。
【発明の効果】
【0068】
本発明の変速機用潤滑油組成物は、低粘度であっても疲労寿命が長く、特に自動車用の自動変速機、手動変速機、無段変速機等歯車や軸受け等の十分な耐久性を兼ね備え、自動車の省燃費化を達成しうる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明の内容を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0070】
(実施例1〜7、比較例1〜3)
表1に示す組成に従い、本発明に係る変速機用潤滑油組成物(実施例1〜7)を調製した。これらの組成物につき、以下に示す性能評価試験を行い、その結果も表1に示した。
また、表1に示す組成に従い、比較のための変速機用潤滑油組成物(比較例1〜3)を調製し、これらの組成物についても同様の性能評価試験を行い、その結果も表1に示した。
【0071】
[疲労寿命試験]
IP300/82「Rolling Contact Fatigue Test For Fluid in a Modified Four-Ball Machine」に準拠した「Four-Ball Extreme-Pressure Lubricant Testing Machine」を用い、「7.Procedure B」の試験条件を以下に変更して疲労寿命を測定した。
(試験条件)
回転数 : 3000rpm
油温 : 120℃
面圧 : 3.9GPa
(判断基準)
試験鋼球にピッチングが発生するまでの時間を疲労寿命とし、3回の試験の結果からL50(平均値)を計算した。
【0072】
[低温粘度測定]
JPI−5S−26−85に規定する「ギヤ油の低温粘度試験方法」に準拠し、液浴低温槽にて変速機用潤滑油組成物の−40℃における低温粘度を測定した。本発明においては、20,000mPa・s以下であることが好ましく、疲労寿命に優れる点で10,000mPa・s以上であることが望ましい。
【0073】
表1に示したとおり、本発明における(B)成分を使用した本発明にかかる変速機用潤滑油組成物(実施例1〜7)は、低粘度であっても疲労寿命に優れることがわかる。特に(B)成分として重量平均分子量が1.5〜2.4万のポリメタアクリレート系添加剤を配合した場合に疲労寿命により優れ(実施例1と実施例6、実施例4と実施例7の比較)、さらに、(A2)成分として(A2b)成分を併用した場合に特に疲労寿命が向上することがわかる(実施例4と実施例1〜3及び5、実施例7と実施例6との比較)。
一方、本発明における(B)成分の代わりに、炭素数16以上のメタアクリレートを構造単位として実質的に含まないポリメタアクリレート系添加剤を使用した場合(比較例1〜3)、いずれも疲労寿命に劣ることがわかる(実施例1、実施例6との比較)。
【0074】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)100℃における動粘度が1.5〜4.5mm/sに調整してなる潤滑油基油に、(B)下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリ(メタ)アクリレート系添加剤を含有し、組成物の100℃における動粘度が3〜8mm/s、かつ粘度指数が95〜200であることを特徴とする変速機用潤滑油組成物。
【化1】

(一般式(1)において、Rは水素又はメチル基、Rは炭素数16〜30の直鎖又は分枝状の炭化水素基を示す。)
【請求項2】
前記一般式(1)におけるRが炭素数20以上の分枝状炭化水素基であることを特徴とする請求項1に記載の変速機用潤滑油組成物。
【請求項3】
前記(A)成分が、100℃における動粘度が7〜50mm/sの潤滑油基油を基油全量基準で3〜30質量%含む潤滑油基油であることを特徴とする請求項1又は2に記載の変速機用潤滑油組成物。

【公開番号】特開2006−117851(P2006−117851A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−308828(P2004−308828)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】