変速機
【課題】変速機の大型化を招くことなく変速段数の多段化を図る。
【解決手段】変速機10は、入力軸11に連結されるキャリアC1を備える遊星歯車列G1と、出力軸12に連結されるリングギヤR3を備える遊星歯車列G3と、サンギヤS1に連結されるサンギヤS2およびキャリアC3に連結されるリングギヤR2を備える遊星歯車列G2とを有している。また、キャリアC1とサンギヤS3との間にクラッチAが設けられ、リングギヤR1とキャリアC3との間にクラッチBが設けられ、リングギヤR1とリングギヤR3との間にクラッチCが設けられ、サンギヤS1とケース13との間にブレーキDが設けられ、キャリアC2とサンギヤS3との間にクラッチEが設けられ、キャリアC2とケース13との間にブレーキFが設けられる。これにより、変速機10の大型化を招くことなく、変速段数の多段化を図ることが可能となる。
【解決手段】変速機10は、入力軸11に連結されるキャリアC1を備える遊星歯車列G1と、出力軸12に連結されるリングギヤR3を備える遊星歯車列G3と、サンギヤS1に連結されるサンギヤS2およびキャリアC3に連結されるリングギヤR2を備える遊星歯車列G2とを有している。また、キャリアC1とサンギヤS3との間にクラッチAが設けられ、リングギヤR1とキャリアC3との間にクラッチBが設けられ、リングギヤR1とリングギヤR3との間にクラッチCが設けられ、サンギヤS1とケース13との間にブレーキDが設けられ、キャリアC2とサンギヤS3との間にクラッチEが設けられ、キャリアC2とケース13との間にブレーキFが設けられる。これにより、変速機10の大型化を招くことなく、変速段数の多段化を図ることが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の遊星歯車列を備える変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
遊星歯車式の変速機には、入力軸と出力軸との間に遊星歯車列が設けられるとともに、遊星歯車列の各要素を制御するクラッチやブレーキが設けられている。そして、クラッチやブレーキを選択的に締結することにより、遊星歯車列の各要素を、入力要素、出力要素、反力要素として機能させ、入力軸から出力軸に所定のギヤ比で動力を伝達することが可能となっている。
【0003】
このような遊星歯車式の変速機においては、常に燃費効率の良い領域でエンジンを運転するため、変速段数の多段化が求められている。そこで、4つの遊星歯車列を組み付けるとともに、6つのクラッチやブレーキを組み付けることにより、前進8段および後退1段の変速段数を備えた変速機が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−213545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両に求められる燃費性能は益々高くなる傾向にあるため、変速機の変速段数についても更なる多段化が求められている。しかしながら、前進8段よりも変速段数を多く設定するためには、変速歯車列やクラッチ等を増加させる必要があることから、変速機の大型化や高コスト化を招く要因となっていた。
【0005】
また、特許文献1に記載される変速機にあっては、各変速段において4つのクラッチやブレーキが解放されることから、変速機の動力伝達効率を低下させる要因となっていた。すなわち、解放されるクラッチやブレーキには引き摺りトルクが発生することから、引き摺りトルクを軽減して変速機の動力伝達効率を向上させるためには、解放されるクラッチやブレーキを減らすことが重要となっている。
【0006】
本発明の目的は、変速機の大型化を招くことなく、変速段数の多段化を図ることにある。
【0007】
本発明の目的は、解放されるクラッチやブレーキを減らすことにより、変速機の動力伝達効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の変速機は、入力軸と出力軸との間に複数の動力伝達経路を備える変速機であって、前記入力軸に連結されるキャリアを備える第1遊星歯車列と、前記第1遊星歯車列のサンギヤに連結されるサンギヤを備える第2遊星歯車列と、前記出力軸に連結されるリングギヤと、前記第2遊星歯車列のリングギヤに連結されるキャリアとを備える第3遊星歯車列とを有し、前記第1および第3遊星歯車列はシングルピニオン型の遊星歯車列であり、前記第2遊星歯車列はダブルピニオン型の遊星歯車列であることを特徴とする。
【0009】
本発明の変速機は、前記第1遊星歯車列のキャリアと前記第3遊星歯車列のサンギヤとの間に第1摩擦係合要素を設け、前記第1遊星歯車列のリングギヤと前記第3遊星歯車列のキャリアとの間に第2摩擦係合要素を設け、前記第1遊星歯車列のリングギヤと前記第3遊星歯車列のリングギヤとの間に第3摩擦係合要素を設け、前記第2遊星歯車列のキャリアと前記第3遊星歯車列のサンギヤとの間に第4摩擦係合要素を設け、前記第2遊星歯車列のキャリアとケースとの間に第5摩擦係合要素を設けることを特徴とする。
【0010】
本発明の変速機は、前記第1遊星歯車列のサンギヤと前記ケースとの間に第6摩擦係合要素を設けることを特徴とする。
【0011】
本発明の変速機は、前記第2遊星歯車列のサンギヤと前記ケースとの間に第6摩擦係合要素を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、入力軸に連結されるキャリアを備える第1遊星歯車列と、第1遊星歯車列のサンギヤに連結されるサンギヤを備える第2遊星歯車列と、出力軸に連結されるリングギヤと第2遊星歯車列のリングギヤに連結されるキャリアとを備える第3遊星歯車列とを設けるようにしたので、変速機の大型化を招くことなく、変速段数の多段化を図ることが可能となる。しかも、3つの遊星歯車列のうち2つの遊星歯車列がシングルピニオン型の遊星歯車列であるため、変速機の動力伝達効率を向上させることが可能となる。
【0013】
さらに、第1遊星歯車列のキャリアと第3遊星歯車列のサンギヤとの間に第1摩擦係合要素を設け、第1遊星歯車列のリングギヤと第3遊星歯車列のキャリアとの間に第2摩擦係合要素を設け、第1遊星歯車列のリングギヤと第3遊星歯車列のリングギヤとの間に第3摩擦係合要素を設け、第2遊星歯車列のキャリアと第3遊星歯車列のサンギヤとの間に第4摩擦係合要素を設け、第2遊星歯車列のキャリアとケースとの間に第5摩擦係合要素を設けるようにしたので、各変速段において解放される摩擦係合要素を減らすことが可能となる。これにより、変速機の動力伝達効率を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態である変速機10を示すスケルトン図である。図1に示すように、変速機10は遊星歯車式の自動変速機であり、3組の遊星歯車列G1〜G3、4組のクラッチA〜C,E、2組のブレーキD,Fによって構成されている。そして、クラッチA〜C,EやブレーキD,Fを選択的に締結することにより、入力軸11と出力軸12との間の動力伝達径路を切り換えることができ、所定のギヤ比で入力軸11から出力軸12に動力を伝達することが可能となっている。なお、入力軸11には図示しないトルクコンバータを介してエンジンが連結されており、出力軸12には図示しないデファレンシャル機構を介して駆動輪が連結されている。
【0015】
第1遊星歯車列G1は、サンギヤS1と、これの径方向外方に配置されるリングギヤR1とを有している。また、サンギヤS1とリングギヤR1との間には複数のピニオンギヤP1が設けられており、遊星歯車列G1はピニオンギヤP1を回転自在に支持するとともに入力軸11に連結されるキャリアC1を有している。なお、遊星歯車列G1はシングルピニオン型の遊星歯車列であり、サンギヤS1とリングギヤR1とは1種類のピニオンギヤP1を介して噛み合っている。
【0016】
第2遊星歯車列G2は、サンギヤS1に連結されるサンギヤS2と、これの径方向外方に配置されるリングギヤR2とを有している。また、サンギヤS2とリングギヤR2との間には複数のピニオンギヤP2a,P2bが設けられており、遊星歯車列G2はピニオンギヤP2a,P2bを回転自在に支持するキャリアC2を有している。なお、遊星歯車列G2はダブルピニオン型の遊星歯車列であり、サンギヤS2とリングギヤR2とは2種類のピニオンギヤP2a,P2bを介して噛み合っている。
【0017】
第3遊星歯車列G3は、サンギヤS3と、これの径方向外方に配置されるとともに出力軸12に連結されるリングギヤR3とを有している。また、サンギヤS3とリングギヤR3との間には複数のピニオンギヤP3が設けられており、遊星歯車列G3はピニオンギヤP3を回転自在に支持するとともにリングギヤR2に連結されるキャリアC3を有している。なお、遊星歯車列G3はシングルピニオン型の遊星歯車列であり、サンギヤS3とリングギヤR3とは1種類のピニオンギヤP3を介して噛み合っている。
【0018】
ここで、図2は変速機10の各要素の連結状態を示す概略図である。図1および図2に示すように、遊星歯車列G1のキャリアC1と遊星歯車列G3のサンギヤS3との間には、第1摩擦係合要素としてのクラッチAが設けられている。このクラッチAを締結状態に切り換えることにより、キャリアC1とサンギヤS3とを同じ回転数で回転させることが可能となる。また、遊星歯車列G1のリングギヤR1と遊星歯車列G3のキャリアC3との間には、第2摩擦係合要素としてのクラッチBが設けられている。このクラッチBを締結状態に切り換えることにより、リングギヤR1とキャリアC3とを同じ回転数で回転させることが可能となる。
【0019】
また、遊星歯車列G1のリングギヤR1と遊星歯車列G3のリングギヤR3との間には、第3摩擦係合要素としてのクラッチCが設けられている。このクラッチCを締結状態に切り換えることにより、リングギヤR1とリングギヤR3とを同じ回転数で回転させることが可能となる。さらに、遊星歯車列G2のキャリアC2と遊星歯車列G3のサンギヤS3との間には、第4摩擦係合要素としてのクラッチEが設けられている。このクラッチEを締結状態に切り換えることにより、キャリアC2とサンギヤS3とを同じ回転数で回転させることが可能となる。
【0020】
また、遊星歯車列G2のキャリアC2と変速機10のケース13との間には、第5摩擦係合要素としてのブレーキFが設けられている。このブレーキFを締結状態に切り換えることにより、キャリアC2をケース13に対して固定することができ、キャリアC2の回転を制止することが可能となる。さらに、遊星歯車列G1のサンギヤS1とケース13との間には、第6摩擦係合要素としてのブレーキDが設けられている。このブレーキDを締結状態に切り換えることにより、サンギヤS1をケース13に対して固定することができ、サンギヤS1の回転を制止することが可能となる。
【0021】
ここで、図3はクラッチA〜C,EおよびブレーキD,Fの締結状態とこれによって得られる変速段との関係を示す作動表であり、図4〜図14は遊星歯車列G1〜G3の各要素の回転速度を示す速度線図である。また、図3においては、締結状態となるクラッチA〜C,EやブレーキD,Fに対して○印を付している。なお、ZS1はサンギヤS1の歯数であり、ZR1はリングギヤR1の歯数であり、ZS2はサンギヤS2の歯数であり、ZR2はリングギヤR2の歯数であり、ZS3はサンギヤS3の歯数であり、ZR3はリングギヤR3の歯数である。また、ρ1は遊星歯車列G1のギヤ比であり、ρ2は遊星歯車列G2のギヤ比であり、ρ3は遊星歯車列G3のギヤ比である。
【0022】
図3および図4に示すように、変速段を後退段(Rev)に設定する際には、クラッチAおよびブレーキD,Fが締結状態に切り換えられる。クラッチAを締結することにより、キャリアC1とサンギヤS3とを一体に回転させることが可能となる。また、ブレーキDを締結することにより、サンギヤS1,S2を停止させることが可能となる。さらに、ブレーキFを締結することにより、キャリアC2を停止させることが可能となる。これにより、リングギヤR3および出力軸12を後退段のギヤ比で駆動することが可能となっている。続いて、図3および図5に示すように、変速段をニュートラル(N)に設定する際には、クラッチAおよびブレーキFが締結状態に切り換えられる。クラッチAを締結することにより、キャリアC1とサンギヤS3とを一体に回転させることが可能となる。また、ブレーキFを締結することにより、キャリアC2を停止させることが可能となる。これにより、リングギヤR3および出力軸12を停止させることが可能となっている。
【0023】
図3および図6に示すように、変速段を第1速(1st)に設定する際は、クラッチA,BおよびブレーキFが締結状態に切り換えられる。クラッチAを締結することにより、キャリアC1とサンギヤS3とを一体に回転させることが可能となる。また、クラッチBを締結することにより、リングギヤR1とキャリアC3とを一体に回転させることが可能となる。さらに、ブレーキFを締結することにより、キャリアC2を停止させることが可能となる。これにより、リングギヤR3および出力軸12を第1速のギヤ比で駆動することが可能となっている。続いて、図3および図7に示すように、変速段を第2速(2nd)に設定する際は、クラッチA,CおよびブレーキFが締結状態に切り換えられる。クラッチAを締結することにより、キャリアC1とサンギヤS3とを一体に回転させることが可能となる。また、クラッチCを締結することにより、リングギヤR1とリングギヤR3とを一体に回転させることが可能となる。さらに、ブレーキFを締結することにより、キャリアC2を停止させることが可能となる。これにより、第1速よりもリングギヤR3を増速させることができ、リングギヤR3および出力軸12を第2速のギヤ比で駆動することが可能となっている。
【0024】
図3および図8に示すように、変速段を第3速(3rd)に設定する際は、クラッチB,CおよびブレーキFが締結状態に切り換えられる。クラッチBを締結することにより、リングギヤR1とキャリアC3とを一体に回転させることが可能となる。また、クラッチCを締結することにより、リングギヤR1とリングギヤR3とを一体に回転させることが可能となる。さらに、ブレーキFを締結することにより、キャリアC2を停止させることが可能となる。これにより、第2速よりもリングギヤR3を増速させることができ、リングギヤR3および出力軸12を第3速のギヤ比で駆動することが可能となっている。続いて、図3および図9に示すように、変速段を第4速(4th)に設定する際は、クラッチC,EおよびブレーキFが締結状態に切り換えられる。クラッチCを締結することにより、リングギヤR1とリングギヤR3とを一体に回転させることが可能となる。また、クラッチEを締結することにより、キャリアC2とサンギヤS3とを一体に回転させることが可能となる。さらに、ブレーキFを締結することにより、キャリアC2を停止させることが可能となる。これにより、第3速よりもリングギヤR3を増速させることができ、リングギヤR3および出力軸12を第4速のギヤ比で駆動することが可能となっている。
【0025】
図3および図10に示すように、変速段を第5速(5th)に設定する際は、クラッチB,EおよびブレーキFが締結状態に切り換えられる。クラッチBを締結することにより、リングギヤR1とキャリアC3とを一体に回転させることが可能となる。また、クラッチEを締結することにより、キャリアC2とサンギヤS3とを一体に回転させることが可能となる。さらに、ブレーキFを締結することにより、キャリアC2を停止させることが可能となる。これにより、第4速よりもリングギヤR3を増速させることができ、リングギヤR3および出力軸12を第5速のギヤ比で駆動することが可能となっている。続いて、図3および図11に示すように、変速段を第6速(6th)に設定する際は、クラッチB,C,Eが締結状態に切り換えられる。クラッチBを締結することにより、リングギヤR1とキャリアC3とを一体に回転させることが可能となる。また、クラッチCを締結することにより、リングギヤR1とリングギヤR3とを一体に回転させることが可能となる。さらに、クラッチEを締結することにより、キャリアC2とサンギヤS3とを一体に回転させることが可能となる。これにより、第5速よりもリングギヤR3を増速させることができ、リングギヤR3および出力軸12を第6速のギヤ比で駆動することが可能となっている。
【0026】
図3および図12に示すように、変速段を第7速(7th)に設定する際は、クラッチB,EおよびブレーキDが締結状態に切り換えられる。クラッチBを締結することにより、リングギヤR1とキャリアC3とを一体に回転させることが可能となる。また、クラッチEを締結することにより、キャリアC2とサンギヤS3とを一体に回転させることが可能となる。さらに、ブレーキDを締結することにより、サンギヤS1,S2を停止させることが可能となる。これにより、第6速よりもリングギヤR3を増速させることができ、リングギヤR3および出力軸12を第7速のギヤ比で駆動することが可能となっている。続いて、図3および図13に示すように、変速段を第8速(8th)に設定する際は、クラッチB,CおよびブレーキDが締結状態に切り換えられる。クラッチBを締結することにより、リングギヤR1とキャリアC3とを一体に回転させることが可能となる。また、クラッチCを締結することにより、リングギヤR1とリングギヤR3とを一体に回転させることが可能となる。さらに、ブレーキDを締結することにより、サンギヤS1,S2を停止させることが可能となる。これにより、第7速よりもリングギヤR3を増速させることができ、リングギヤR3および出力軸12を第8速のギヤ比で駆動することが可能となっている。
【0027】
図3および図14に示すように、変速段を第9速(9th)に設定する際は、クラッチA,BおよびブレーキDが締結状態に切り換えられる。クラッチAを締結することにより、キャリアC1とサンギヤS3とを一体に回転させることが可能となる。また、クラッチBを締結することにより、リングギヤR1とキャリアC3とを一体に回転させることが可能となる。さらに、ブレーキDを締結することにより、サンギヤS1,S2を停止させることが可能となる。これにより、第8速よりもリングギヤR3を増速させることができ、リングギヤR3および出力軸12を第9速のギヤ比で駆動することが可能となっている。ここで、図15は変速段毎に遊星歯車列G3の各要素の回転速度を示す速度線図である。前述したように図3の作動表に応じてクラッチA〜C,EやブレーキD,Fを締結することにより、図15に示すように遊星歯車列G3の作動状態を制御することができ、第1速から第9速にかけてリングギヤR3を徐々に増速させることが可能となっている。
【0028】
これまで説明したように、本発明の変速機10は、入力軸11に連結されるキャリアC1を備える遊星歯車列G1と、出力軸12に連結されるリングギヤR3を備える遊星歯車列G3と、サンギヤS1に連結されるサンギヤS2およびキャリアC3に連結されるリングギヤR2を備える遊星歯車列G1とを有している。また、キャリアC1とサンギヤS3との間にクラッチAを設け、リングギヤR1とキャリアC3との間にクラッチBを設け、リングギヤR1とリングギヤR3との間にクラッチCを設け、サンギヤS1とケース13との間にブレーキDを設け、キャリアC2とサンギヤS3との間にクラッチEを設け、キャリアC2とケース13との間にブレーキFを設けるようにしている。これにより、3組の遊星歯車列G1〜G3および6組の摩擦係合要素A〜Fを増加させることなく、すなわち変速機10の大型化および高コスト化を招くことなく、前進9段および後退1段の変速段数を設定することが可能となる。しかも、3組の遊星歯車列G1〜G3のうち、2組の遊星歯車列G1,G3は動力伝達効率の高いシングルピニオン型の遊星歯車列であるため、変速機10の動力伝達効率を向上させることが可能となる。
【0029】
また、図3に示すように、変速段を切り換える際には3つの摩擦係合要素A〜Fを選択して締結状態に切り換えている。このように、多くの摩擦係合要素A〜Fを締結状態に切り換えることにより、解放される摩擦係合要素A〜Fを削減することができ、摩擦係合要素A〜Fの引き摺りトルクを抑制することが可能となる。これにより、変速機10の動力伝達効率を向上させることが可能となる。また、変速段を切り換える際には3つの摩擦係合要素A〜Fを選択して締結状態に切り換えているが、隣り合う変速段に切り換える際や1段ずつ飛ばして変速段を切り換える際には、締結する摩擦係合要素A〜Fの2つが共通となっている。すなわち、2つの摩擦係合要素A〜Fの締結状態を保持したまま、残る1つの摩擦係合要素A〜Fを掛け替えることにより、変速段を切り換えることができるため、俊敏かつ滑らかな変速品質を得ることが可能となる。
【0030】
また、前述した変速機10においては、遊星歯車列G1のサンギヤS1とケース13との間にブレーキDを設けているが、他の要素に対して第6摩擦係合要素としてのブレーキを設けるようにしても良い。ここで、図16は本発明の他の実施の形態である変速機20を示すスケルトン図である。なお、図16において、図1に示す部材と同一の部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。図16に示すように、遊星歯車列G2のサンギヤS2とケース13との間には、第6摩擦係合要素としてのブレーキD2が設けられている。このように、ブレーキD2を配置した場合であっても、ブレーキD2を前述したブレーキDと同様に図3の作動表に従って締結することにより、前進9段および後退1段の変速段数を得ることが可能となっている。このように、サンギヤS2に対してブレーキD2を設けるようにした変速機20においても、3組の遊星歯車列G1〜G3および6組の摩擦係合要素A〜C,D2,E,Fを増加させることなく、前進9段および後退1段の変速段数を設定することが可能となっている。また、前述した変速機10と同様に、図3の作動表に従って変速段を切り換えることができるため、俊敏かつ滑らかな変速品質を得ることができるとともに、変速機20の動力伝達効率を向上させることが可能となっている。
【0031】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。たとえば、図3には変速段毎にギヤ比(入力軸回転数/出力軸回転数)やステップ比(当変速段ギヤ比/前変速段ギヤ比)の数値を示しているが、これらの数値に限られることはなく、エンジン特性等に応じてギヤ比やステップ比を変更しても良いことはいうまでもない。
【0032】
また、図示する場合には、入力軸11側に遊星歯車列G2が配置され、出力軸12側に遊星歯車列G3が配置され、遊星歯車列G2と遊星歯車列G3との間に遊星歯車列G1が配置されているが、この位置関係に限られることはなく、入力軸11側に遊星歯車列G1,G3を配置しても良く、出力軸12側に遊星歯車列G1,G2を配置しても良い。さらに、摩擦係合要素としてクラッチA〜C,EやブレーキD,Fを設けているが、これらのクラッチA〜C,EやブレーキD,Fは、乾式や湿式のクラッチやブレーキであっても良く、単板式や多板式のクラッチやブレーキであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施の形態である変速機を示すスケルトン図である。
【図2】変速機の各要素の連結状態を示す概略図である。
【図3】クラッチおよびブレーキの締結状態とこれによって得られる変速段との関係を示す作動表である。
【図4】遊星歯車列の各要素の回転速度を示す速度線図である。
【図5】遊星歯車列の各要素の回転速度を示す速度線図である。
【図6】遊星歯車列の各要素の回転速度を示す速度線図である。
【図7】遊星歯車列の各要素の回転速度を示す速度線図である。
【図8】遊星歯車列の各要素の回転速度を示す速度線図である。
【図9】遊星歯車列の各要素の回転速度を示す速度線図である。
【図10】遊星歯車列の各要素の回転速度を示す速度線図である。
【図11】遊星歯車列の各要素の回転速度を示す速度線図である。
【図12】遊星歯車列の各要素の回転速度を示す速度線図である。
【図13】遊星歯車列の各要素の回転速度を示す速度線図である。
【図14】遊星歯車列の各要素の回転速度を示す速度線図である。
【図15】変速段毎に遊星歯車列の各要素の回転速度を示す速度線図である。
【図16】本発明の他の実施の形態である変速機を示すスケルトン図である。
【符号の説明】
【0034】
10 変速機
11 入力軸
12 出力軸
13 ケース
20 変速機
G1 第1遊星歯車列
G2 第2遊星歯車列
G3 第3遊星歯車列
S1〜S3 サンギヤ
R1〜R3 リングギヤ
C1〜C3 キャリア
A クラッチ(第1摩擦係合要素)
B クラッチ(第2摩擦係合要素)
C クラッチ(第3摩擦係合要素)
D ブレーキ(第6摩擦係合要素)
E クラッチ(第4摩擦係合要素)
F ブレーキ(第5摩擦係合要素)
D2 ブレーキ(第6摩擦係合要素)
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の遊星歯車列を備える変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
遊星歯車式の変速機には、入力軸と出力軸との間に遊星歯車列が設けられるとともに、遊星歯車列の各要素を制御するクラッチやブレーキが設けられている。そして、クラッチやブレーキを選択的に締結することにより、遊星歯車列の各要素を、入力要素、出力要素、反力要素として機能させ、入力軸から出力軸に所定のギヤ比で動力を伝達することが可能となっている。
【0003】
このような遊星歯車式の変速機においては、常に燃費効率の良い領域でエンジンを運転するため、変速段数の多段化が求められている。そこで、4つの遊星歯車列を組み付けるとともに、6つのクラッチやブレーキを組み付けることにより、前進8段および後退1段の変速段数を備えた変速機が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−213545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両に求められる燃費性能は益々高くなる傾向にあるため、変速機の変速段数についても更なる多段化が求められている。しかしながら、前進8段よりも変速段数を多く設定するためには、変速歯車列やクラッチ等を増加させる必要があることから、変速機の大型化や高コスト化を招く要因となっていた。
【0005】
また、特許文献1に記載される変速機にあっては、各変速段において4つのクラッチやブレーキが解放されることから、変速機の動力伝達効率を低下させる要因となっていた。すなわち、解放されるクラッチやブレーキには引き摺りトルクが発生することから、引き摺りトルクを軽減して変速機の動力伝達効率を向上させるためには、解放されるクラッチやブレーキを減らすことが重要となっている。
【0006】
本発明の目的は、変速機の大型化を招くことなく、変速段数の多段化を図ることにある。
【0007】
本発明の目的は、解放されるクラッチやブレーキを減らすことにより、変速機の動力伝達効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の変速機は、入力軸と出力軸との間に複数の動力伝達経路を備える変速機であって、前記入力軸に連結されるキャリアを備える第1遊星歯車列と、前記第1遊星歯車列のサンギヤに連結されるサンギヤを備える第2遊星歯車列と、前記出力軸に連結されるリングギヤと、前記第2遊星歯車列のリングギヤに連結されるキャリアとを備える第3遊星歯車列とを有し、前記第1および第3遊星歯車列はシングルピニオン型の遊星歯車列であり、前記第2遊星歯車列はダブルピニオン型の遊星歯車列であることを特徴とする。
【0009】
本発明の変速機は、前記第1遊星歯車列のキャリアと前記第3遊星歯車列のサンギヤとの間に第1摩擦係合要素を設け、前記第1遊星歯車列のリングギヤと前記第3遊星歯車列のキャリアとの間に第2摩擦係合要素を設け、前記第1遊星歯車列のリングギヤと前記第3遊星歯車列のリングギヤとの間に第3摩擦係合要素を設け、前記第2遊星歯車列のキャリアと前記第3遊星歯車列のサンギヤとの間に第4摩擦係合要素を設け、前記第2遊星歯車列のキャリアとケースとの間に第5摩擦係合要素を設けることを特徴とする。
【0010】
本発明の変速機は、前記第1遊星歯車列のサンギヤと前記ケースとの間に第6摩擦係合要素を設けることを特徴とする。
【0011】
本発明の変速機は、前記第2遊星歯車列のサンギヤと前記ケースとの間に第6摩擦係合要素を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、入力軸に連結されるキャリアを備える第1遊星歯車列と、第1遊星歯車列のサンギヤに連結されるサンギヤを備える第2遊星歯車列と、出力軸に連結されるリングギヤと第2遊星歯車列のリングギヤに連結されるキャリアとを備える第3遊星歯車列とを設けるようにしたので、変速機の大型化を招くことなく、変速段数の多段化を図ることが可能となる。しかも、3つの遊星歯車列のうち2つの遊星歯車列がシングルピニオン型の遊星歯車列であるため、変速機の動力伝達効率を向上させることが可能となる。
【0013】
さらに、第1遊星歯車列のキャリアと第3遊星歯車列のサンギヤとの間に第1摩擦係合要素を設け、第1遊星歯車列のリングギヤと第3遊星歯車列のキャリアとの間に第2摩擦係合要素を設け、第1遊星歯車列のリングギヤと第3遊星歯車列のリングギヤとの間に第3摩擦係合要素を設け、第2遊星歯車列のキャリアと第3遊星歯車列のサンギヤとの間に第4摩擦係合要素を設け、第2遊星歯車列のキャリアとケースとの間に第5摩擦係合要素を設けるようにしたので、各変速段において解放される摩擦係合要素を減らすことが可能となる。これにより、変速機の動力伝達効率を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態である変速機10を示すスケルトン図である。図1に示すように、変速機10は遊星歯車式の自動変速機であり、3組の遊星歯車列G1〜G3、4組のクラッチA〜C,E、2組のブレーキD,Fによって構成されている。そして、クラッチA〜C,EやブレーキD,Fを選択的に締結することにより、入力軸11と出力軸12との間の動力伝達径路を切り換えることができ、所定のギヤ比で入力軸11から出力軸12に動力を伝達することが可能となっている。なお、入力軸11には図示しないトルクコンバータを介してエンジンが連結されており、出力軸12には図示しないデファレンシャル機構を介して駆動輪が連結されている。
【0015】
第1遊星歯車列G1は、サンギヤS1と、これの径方向外方に配置されるリングギヤR1とを有している。また、サンギヤS1とリングギヤR1との間には複数のピニオンギヤP1が設けられており、遊星歯車列G1はピニオンギヤP1を回転自在に支持するとともに入力軸11に連結されるキャリアC1を有している。なお、遊星歯車列G1はシングルピニオン型の遊星歯車列であり、サンギヤS1とリングギヤR1とは1種類のピニオンギヤP1を介して噛み合っている。
【0016】
第2遊星歯車列G2は、サンギヤS1に連結されるサンギヤS2と、これの径方向外方に配置されるリングギヤR2とを有している。また、サンギヤS2とリングギヤR2との間には複数のピニオンギヤP2a,P2bが設けられており、遊星歯車列G2はピニオンギヤP2a,P2bを回転自在に支持するキャリアC2を有している。なお、遊星歯車列G2はダブルピニオン型の遊星歯車列であり、サンギヤS2とリングギヤR2とは2種類のピニオンギヤP2a,P2bを介して噛み合っている。
【0017】
第3遊星歯車列G3は、サンギヤS3と、これの径方向外方に配置されるとともに出力軸12に連結されるリングギヤR3とを有している。また、サンギヤS3とリングギヤR3との間には複数のピニオンギヤP3が設けられており、遊星歯車列G3はピニオンギヤP3を回転自在に支持するとともにリングギヤR2に連結されるキャリアC3を有している。なお、遊星歯車列G3はシングルピニオン型の遊星歯車列であり、サンギヤS3とリングギヤR3とは1種類のピニオンギヤP3を介して噛み合っている。
【0018】
ここで、図2は変速機10の各要素の連結状態を示す概略図である。図1および図2に示すように、遊星歯車列G1のキャリアC1と遊星歯車列G3のサンギヤS3との間には、第1摩擦係合要素としてのクラッチAが設けられている。このクラッチAを締結状態に切り換えることにより、キャリアC1とサンギヤS3とを同じ回転数で回転させることが可能となる。また、遊星歯車列G1のリングギヤR1と遊星歯車列G3のキャリアC3との間には、第2摩擦係合要素としてのクラッチBが設けられている。このクラッチBを締結状態に切り換えることにより、リングギヤR1とキャリアC3とを同じ回転数で回転させることが可能となる。
【0019】
また、遊星歯車列G1のリングギヤR1と遊星歯車列G3のリングギヤR3との間には、第3摩擦係合要素としてのクラッチCが設けられている。このクラッチCを締結状態に切り換えることにより、リングギヤR1とリングギヤR3とを同じ回転数で回転させることが可能となる。さらに、遊星歯車列G2のキャリアC2と遊星歯車列G3のサンギヤS3との間には、第4摩擦係合要素としてのクラッチEが設けられている。このクラッチEを締結状態に切り換えることにより、キャリアC2とサンギヤS3とを同じ回転数で回転させることが可能となる。
【0020】
また、遊星歯車列G2のキャリアC2と変速機10のケース13との間には、第5摩擦係合要素としてのブレーキFが設けられている。このブレーキFを締結状態に切り換えることにより、キャリアC2をケース13に対して固定することができ、キャリアC2の回転を制止することが可能となる。さらに、遊星歯車列G1のサンギヤS1とケース13との間には、第6摩擦係合要素としてのブレーキDが設けられている。このブレーキDを締結状態に切り換えることにより、サンギヤS1をケース13に対して固定することができ、サンギヤS1の回転を制止することが可能となる。
【0021】
ここで、図3はクラッチA〜C,EおよびブレーキD,Fの締結状態とこれによって得られる変速段との関係を示す作動表であり、図4〜図14は遊星歯車列G1〜G3の各要素の回転速度を示す速度線図である。また、図3においては、締結状態となるクラッチA〜C,EやブレーキD,Fに対して○印を付している。なお、ZS1はサンギヤS1の歯数であり、ZR1はリングギヤR1の歯数であり、ZS2はサンギヤS2の歯数であり、ZR2はリングギヤR2の歯数であり、ZS3はサンギヤS3の歯数であり、ZR3はリングギヤR3の歯数である。また、ρ1は遊星歯車列G1のギヤ比であり、ρ2は遊星歯車列G2のギヤ比であり、ρ3は遊星歯車列G3のギヤ比である。
【0022】
図3および図4に示すように、変速段を後退段(Rev)に設定する際には、クラッチAおよびブレーキD,Fが締結状態に切り換えられる。クラッチAを締結することにより、キャリアC1とサンギヤS3とを一体に回転させることが可能となる。また、ブレーキDを締結することにより、サンギヤS1,S2を停止させることが可能となる。さらに、ブレーキFを締結することにより、キャリアC2を停止させることが可能となる。これにより、リングギヤR3および出力軸12を後退段のギヤ比で駆動することが可能となっている。続いて、図3および図5に示すように、変速段をニュートラル(N)に設定する際には、クラッチAおよびブレーキFが締結状態に切り換えられる。クラッチAを締結することにより、キャリアC1とサンギヤS3とを一体に回転させることが可能となる。また、ブレーキFを締結することにより、キャリアC2を停止させることが可能となる。これにより、リングギヤR3および出力軸12を停止させることが可能となっている。
【0023】
図3および図6に示すように、変速段を第1速(1st)に設定する際は、クラッチA,BおよびブレーキFが締結状態に切り換えられる。クラッチAを締結することにより、キャリアC1とサンギヤS3とを一体に回転させることが可能となる。また、クラッチBを締結することにより、リングギヤR1とキャリアC3とを一体に回転させることが可能となる。さらに、ブレーキFを締結することにより、キャリアC2を停止させることが可能となる。これにより、リングギヤR3および出力軸12を第1速のギヤ比で駆動することが可能となっている。続いて、図3および図7に示すように、変速段を第2速(2nd)に設定する際は、クラッチA,CおよびブレーキFが締結状態に切り換えられる。クラッチAを締結することにより、キャリアC1とサンギヤS3とを一体に回転させることが可能となる。また、クラッチCを締結することにより、リングギヤR1とリングギヤR3とを一体に回転させることが可能となる。さらに、ブレーキFを締結することにより、キャリアC2を停止させることが可能となる。これにより、第1速よりもリングギヤR3を増速させることができ、リングギヤR3および出力軸12を第2速のギヤ比で駆動することが可能となっている。
【0024】
図3および図8に示すように、変速段を第3速(3rd)に設定する際は、クラッチB,CおよびブレーキFが締結状態に切り換えられる。クラッチBを締結することにより、リングギヤR1とキャリアC3とを一体に回転させることが可能となる。また、クラッチCを締結することにより、リングギヤR1とリングギヤR3とを一体に回転させることが可能となる。さらに、ブレーキFを締結することにより、キャリアC2を停止させることが可能となる。これにより、第2速よりもリングギヤR3を増速させることができ、リングギヤR3および出力軸12を第3速のギヤ比で駆動することが可能となっている。続いて、図3および図9に示すように、変速段を第4速(4th)に設定する際は、クラッチC,EおよびブレーキFが締結状態に切り換えられる。クラッチCを締結することにより、リングギヤR1とリングギヤR3とを一体に回転させることが可能となる。また、クラッチEを締結することにより、キャリアC2とサンギヤS3とを一体に回転させることが可能となる。さらに、ブレーキFを締結することにより、キャリアC2を停止させることが可能となる。これにより、第3速よりもリングギヤR3を増速させることができ、リングギヤR3および出力軸12を第4速のギヤ比で駆動することが可能となっている。
【0025】
図3および図10に示すように、変速段を第5速(5th)に設定する際は、クラッチB,EおよびブレーキFが締結状態に切り換えられる。クラッチBを締結することにより、リングギヤR1とキャリアC3とを一体に回転させることが可能となる。また、クラッチEを締結することにより、キャリアC2とサンギヤS3とを一体に回転させることが可能となる。さらに、ブレーキFを締結することにより、キャリアC2を停止させることが可能となる。これにより、第4速よりもリングギヤR3を増速させることができ、リングギヤR3および出力軸12を第5速のギヤ比で駆動することが可能となっている。続いて、図3および図11に示すように、変速段を第6速(6th)に設定する際は、クラッチB,C,Eが締結状態に切り換えられる。クラッチBを締結することにより、リングギヤR1とキャリアC3とを一体に回転させることが可能となる。また、クラッチCを締結することにより、リングギヤR1とリングギヤR3とを一体に回転させることが可能となる。さらに、クラッチEを締結することにより、キャリアC2とサンギヤS3とを一体に回転させることが可能となる。これにより、第5速よりもリングギヤR3を増速させることができ、リングギヤR3および出力軸12を第6速のギヤ比で駆動することが可能となっている。
【0026】
図3および図12に示すように、変速段を第7速(7th)に設定する際は、クラッチB,EおよびブレーキDが締結状態に切り換えられる。クラッチBを締結することにより、リングギヤR1とキャリアC3とを一体に回転させることが可能となる。また、クラッチEを締結することにより、キャリアC2とサンギヤS3とを一体に回転させることが可能となる。さらに、ブレーキDを締結することにより、サンギヤS1,S2を停止させることが可能となる。これにより、第6速よりもリングギヤR3を増速させることができ、リングギヤR3および出力軸12を第7速のギヤ比で駆動することが可能となっている。続いて、図3および図13に示すように、変速段を第8速(8th)に設定する際は、クラッチB,CおよびブレーキDが締結状態に切り換えられる。クラッチBを締結することにより、リングギヤR1とキャリアC3とを一体に回転させることが可能となる。また、クラッチCを締結することにより、リングギヤR1とリングギヤR3とを一体に回転させることが可能となる。さらに、ブレーキDを締結することにより、サンギヤS1,S2を停止させることが可能となる。これにより、第7速よりもリングギヤR3を増速させることができ、リングギヤR3および出力軸12を第8速のギヤ比で駆動することが可能となっている。
【0027】
図3および図14に示すように、変速段を第9速(9th)に設定する際は、クラッチA,BおよびブレーキDが締結状態に切り換えられる。クラッチAを締結することにより、キャリアC1とサンギヤS3とを一体に回転させることが可能となる。また、クラッチBを締結することにより、リングギヤR1とキャリアC3とを一体に回転させることが可能となる。さらに、ブレーキDを締結することにより、サンギヤS1,S2を停止させることが可能となる。これにより、第8速よりもリングギヤR3を増速させることができ、リングギヤR3および出力軸12を第9速のギヤ比で駆動することが可能となっている。ここで、図15は変速段毎に遊星歯車列G3の各要素の回転速度を示す速度線図である。前述したように図3の作動表に応じてクラッチA〜C,EやブレーキD,Fを締結することにより、図15に示すように遊星歯車列G3の作動状態を制御することができ、第1速から第9速にかけてリングギヤR3を徐々に増速させることが可能となっている。
【0028】
これまで説明したように、本発明の変速機10は、入力軸11に連結されるキャリアC1を備える遊星歯車列G1と、出力軸12に連結されるリングギヤR3を備える遊星歯車列G3と、サンギヤS1に連結されるサンギヤS2およびキャリアC3に連結されるリングギヤR2を備える遊星歯車列G1とを有している。また、キャリアC1とサンギヤS3との間にクラッチAを設け、リングギヤR1とキャリアC3との間にクラッチBを設け、リングギヤR1とリングギヤR3との間にクラッチCを設け、サンギヤS1とケース13との間にブレーキDを設け、キャリアC2とサンギヤS3との間にクラッチEを設け、キャリアC2とケース13との間にブレーキFを設けるようにしている。これにより、3組の遊星歯車列G1〜G3および6組の摩擦係合要素A〜Fを増加させることなく、すなわち変速機10の大型化および高コスト化を招くことなく、前進9段および後退1段の変速段数を設定することが可能となる。しかも、3組の遊星歯車列G1〜G3のうち、2組の遊星歯車列G1,G3は動力伝達効率の高いシングルピニオン型の遊星歯車列であるため、変速機10の動力伝達効率を向上させることが可能となる。
【0029】
また、図3に示すように、変速段を切り換える際には3つの摩擦係合要素A〜Fを選択して締結状態に切り換えている。このように、多くの摩擦係合要素A〜Fを締結状態に切り換えることにより、解放される摩擦係合要素A〜Fを削減することができ、摩擦係合要素A〜Fの引き摺りトルクを抑制することが可能となる。これにより、変速機10の動力伝達効率を向上させることが可能となる。また、変速段を切り換える際には3つの摩擦係合要素A〜Fを選択して締結状態に切り換えているが、隣り合う変速段に切り換える際や1段ずつ飛ばして変速段を切り換える際には、締結する摩擦係合要素A〜Fの2つが共通となっている。すなわち、2つの摩擦係合要素A〜Fの締結状態を保持したまま、残る1つの摩擦係合要素A〜Fを掛け替えることにより、変速段を切り換えることができるため、俊敏かつ滑らかな変速品質を得ることが可能となる。
【0030】
また、前述した変速機10においては、遊星歯車列G1のサンギヤS1とケース13との間にブレーキDを設けているが、他の要素に対して第6摩擦係合要素としてのブレーキを設けるようにしても良い。ここで、図16は本発明の他の実施の形態である変速機20を示すスケルトン図である。なお、図16において、図1に示す部材と同一の部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。図16に示すように、遊星歯車列G2のサンギヤS2とケース13との間には、第6摩擦係合要素としてのブレーキD2が設けられている。このように、ブレーキD2を配置した場合であっても、ブレーキD2を前述したブレーキDと同様に図3の作動表に従って締結することにより、前進9段および後退1段の変速段数を得ることが可能となっている。このように、サンギヤS2に対してブレーキD2を設けるようにした変速機20においても、3組の遊星歯車列G1〜G3および6組の摩擦係合要素A〜C,D2,E,Fを増加させることなく、前進9段および後退1段の変速段数を設定することが可能となっている。また、前述した変速機10と同様に、図3の作動表に従って変速段を切り換えることができるため、俊敏かつ滑らかな変速品質を得ることができるとともに、変速機20の動力伝達効率を向上させることが可能となっている。
【0031】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。たとえば、図3には変速段毎にギヤ比(入力軸回転数/出力軸回転数)やステップ比(当変速段ギヤ比/前変速段ギヤ比)の数値を示しているが、これらの数値に限られることはなく、エンジン特性等に応じてギヤ比やステップ比を変更しても良いことはいうまでもない。
【0032】
また、図示する場合には、入力軸11側に遊星歯車列G2が配置され、出力軸12側に遊星歯車列G3が配置され、遊星歯車列G2と遊星歯車列G3との間に遊星歯車列G1が配置されているが、この位置関係に限られることはなく、入力軸11側に遊星歯車列G1,G3を配置しても良く、出力軸12側に遊星歯車列G1,G2を配置しても良い。さらに、摩擦係合要素としてクラッチA〜C,EやブレーキD,Fを設けているが、これらのクラッチA〜C,EやブレーキD,Fは、乾式や湿式のクラッチやブレーキであっても良く、単板式や多板式のクラッチやブレーキであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施の形態である変速機を示すスケルトン図である。
【図2】変速機の各要素の連結状態を示す概略図である。
【図3】クラッチおよびブレーキの締結状態とこれによって得られる変速段との関係を示す作動表である。
【図4】遊星歯車列の各要素の回転速度を示す速度線図である。
【図5】遊星歯車列の各要素の回転速度を示す速度線図である。
【図6】遊星歯車列の各要素の回転速度を示す速度線図である。
【図7】遊星歯車列の各要素の回転速度を示す速度線図である。
【図8】遊星歯車列の各要素の回転速度を示す速度線図である。
【図9】遊星歯車列の各要素の回転速度を示す速度線図である。
【図10】遊星歯車列の各要素の回転速度を示す速度線図である。
【図11】遊星歯車列の各要素の回転速度を示す速度線図である。
【図12】遊星歯車列の各要素の回転速度を示す速度線図である。
【図13】遊星歯車列の各要素の回転速度を示す速度線図である。
【図14】遊星歯車列の各要素の回転速度を示す速度線図である。
【図15】変速段毎に遊星歯車列の各要素の回転速度を示す速度線図である。
【図16】本発明の他の実施の形態である変速機を示すスケルトン図である。
【符号の説明】
【0034】
10 変速機
11 入力軸
12 出力軸
13 ケース
20 変速機
G1 第1遊星歯車列
G2 第2遊星歯車列
G3 第3遊星歯車列
S1〜S3 サンギヤ
R1〜R3 リングギヤ
C1〜C3 キャリア
A クラッチ(第1摩擦係合要素)
B クラッチ(第2摩擦係合要素)
C クラッチ(第3摩擦係合要素)
D ブレーキ(第6摩擦係合要素)
E クラッチ(第4摩擦係合要素)
F ブレーキ(第5摩擦係合要素)
D2 ブレーキ(第6摩擦係合要素)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸と出力軸との間に複数の動力伝達経路を備える変速機であって、
前記入力軸に連結されるキャリアを備える第1遊星歯車列と、
前記第1遊星歯車列のサンギヤに連結されるサンギヤを備える第2遊星歯車列と、
前記出力軸に連結されるリングギヤと、前記第2遊星歯車列のリングギヤに連結されるキャリアとを備える第3遊星歯車列とを有し、
前記第1および第3遊星歯車列はシングルピニオン型の遊星歯車列であり、前記第2遊星歯車列はダブルピニオン型の遊星歯車列であることを特徴とする変速機。
【請求項2】
請求項1記載の変速機において、
前記第1遊星歯車列のキャリアと前記第3遊星歯車列のサンギヤとの間に第1摩擦係合要素を設け、
前記第1遊星歯車列のリングギヤと前記第3遊星歯車列のキャリアとの間に第2摩擦係合要素を設け、
前記第1遊星歯車列のリングギヤと前記第3遊星歯車列のリングギヤとの間に第3摩擦係合要素を設け、
前記第2遊星歯車列のキャリアと前記第3遊星歯車列のサンギヤとの間に第4摩擦係合要素を設け、
前記第2遊星歯車列のキャリアとケースとの間に第5摩擦係合要素を設けることを特徴とする変速機。
【請求項3】
請求項2記載の変速機において、
前記第1遊星歯車列のサンギヤと前記ケースとの間に第6摩擦係合要素を設けることを特徴とする変速機。
【請求項4】
請求項2記載の変速機において、
前記第2遊星歯車列のサンギヤと前記ケースとの間に第6摩擦係合要素を設けることを特徴とする変速機。
【請求項1】
入力軸と出力軸との間に複数の動力伝達経路を備える変速機であって、
前記入力軸に連結されるキャリアを備える第1遊星歯車列と、
前記第1遊星歯車列のサンギヤに連結されるサンギヤを備える第2遊星歯車列と、
前記出力軸に連結されるリングギヤと、前記第2遊星歯車列のリングギヤに連結されるキャリアとを備える第3遊星歯車列とを有し、
前記第1および第3遊星歯車列はシングルピニオン型の遊星歯車列であり、前記第2遊星歯車列はダブルピニオン型の遊星歯車列であることを特徴とする変速機。
【請求項2】
請求項1記載の変速機において、
前記第1遊星歯車列のキャリアと前記第3遊星歯車列のサンギヤとの間に第1摩擦係合要素を設け、
前記第1遊星歯車列のリングギヤと前記第3遊星歯車列のキャリアとの間に第2摩擦係合要素を設け、
前記第1遊星歯車列のリングギヤと前記第3遊星歯車列のリングギヤとの間に第3摩擦係合要素を設け、
前記第2遊星歯車列のキャリアと前記第3遊星歯車列のサンギヤとの間に第4摩擦係合要素を設け、
前記第2遊星歯車列のキャリアとケースとの間に第5摩擦係合要素を設けることを特徴とする変速機。
【請求項3】
請求項2記載の変速機において、
前記第1遊星歯車列のサンギヤと前記ケースとの間に第6摩擦係合要素を設けることを特徴とする変速機。
【請求項4】
請求項2記載の変速機において、
前記第2遊星歯車列のサンギヤと前記ケースとの間に第6摩擦係合要素を設けることを特徴とする変速機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−116942(P2010−116942A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288804(P2008−288804)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
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