説明

変速機

【課題】回転運動を直線運動に変換するか、又は直線運動を回転運動に変換する改良された変速機の提供。
【解決手段】変速機1は、ロッド3及び歯車担体10を備えている。ロッド3は噛合い部5を有し、歯車担体10は、噛合い部5と噛み合うように、変速機1の縦軸30に対する径方向に可動な歯40を収容している。ロッド3及び歯車担体10は互いに回転せずに、噛合い部5と歯40の噛合いにより縦軸30方向に互いに変位可能なように装着されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に縦軸周りの回転運動を縦軸方向の直線運動へと変換する変速機及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
回転運動を直線運動に変換する種々の変速機が知られている。そのような変速機は、電気又は油圧モータの様な駆動機構の回転運動を直線運動に変換するのに重要である。直線方向にできるだけ大きな力が生成するように、種々の構造が存在する。
【0003】
回転運動を直線運動に変換する既存の変速機の1つは、ロール・スピンドル変速機がある。そのようなロール・スピンドル変速機の一例は特許文献1に記載されている。ロール・スピンドル変速機においては、中心の1つのスピンドルの周りに配置された複数のロールが、スピンドルに対して回転運動するように設定されている。変速機の中心軸の周りにロールを回転させるか又はスピンドルを回転させることにより、この回転運動が実行される。ロールは雌ネジでも支持されている。スピンドルが駆動されると、スピンドルは雌ネジに対して縦方向に動く。
【0004】
ロール・スピンドル変速機が通常目的としている縦方向に大きな力を伝達することに関しては、直線方向に力を伝達する部材、例えばスピンドルの装着方法が問題である。その理由は、回転運動用の軸受は、直線方向の力を吸収する必要があるからである。このことが装着を複雑にし、直線方向への力の伝達を制限している。
【0005】
ロール・スピンドル変速機は、例えば特許文献2にも開示されている。特許文献2は、駆動スピンドル及び駆動スピンドルのネジ溝と噛合っているロールリングを用いて直線方向への力がどのように伝達されるかを示している。しかしながら、この変速機でも、回転部材、例えば回転しているスピンドルから直線方向の力を取出す基本的な構成となっている。更に、ロールリングは回転可能に装着する必要があるので、ピボット軸受を介して直線方向の力を支える必要となる。このことにより、伝達される力が制限され且つ装着がコスト高で複雑となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第19516199号明細書
【特許文献2】欧州特許第0122596号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、回転運動を直線運動に変換、又は直線運動を回転運動に変換できる改良された変速機を提案することを目的としている。特に、小型で直線方向に大きな力が伝達できる変速機又はピボット軸受による直線方向の前進力を吸収する必要がなくなる変速機を提案することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、下記(1)〜(15)のように構成することにより解決される。
【0009】
(1)変速機の縦軸周りの回転運動を直線運動に変換するか、又は直線運動を回転運動に変換する変速機であって、噛合い部を有するロッド及び前記噛合い部と噛み合うように、径方向に可動な歯を収容する歯車担体を備え、前記ロッド及び前記歯車担体は互いに回転せずに、前記縦軸方向に互いに変位可能なように装着されていることを特徴とする変速機。
【0010】
(2)前記歯を径方向に動かすための駆動装置が備えられていることを特徴とする前記(1)項に記載の変速機。
【0011】
(3)前記歯を径方向に動かすためのカムディスクが前記変速機の縦軸の周りを回転可能に装着されていることを特徴とする前記(1)項に記載の変速機。
【0012】
(4)前記カムディスクの回転により前記歯が前記噛合い部と噛み合うように動かされ、前記ロッドを前記歯車担体に対して直線状に変位させることを特徴とする前記(3)項に記載の変速機。
【0013】
(5)前記ロッドの噛合い部と前記歯車担体内に配置された前記歯との間にピッチが存在することを特徴とする前記(1)ないし(4)のいずれか1項に記載の変速機。
【0014】
(6)前記歯は、前記縦軸に対する径方向の周りを回転可能に配置されていることを特徴とする前記(1)ないし(5)のいずれか1項に記載の変速機。
【0015】
(7)前記ロッドの噛合い部は、多面状に形成されていることを特徴とする前記(1)ないし(6)のいずれか1項に記載の変速機。
【0016】
(8)歯(40)は、負のクラウニングを有していることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の変速機。
【0017】
(9)前記ロッドは、中空に形成されていることを特徴とする前記(1)ないし(8)のいずれか1項に記載の変速機。
【0018】
(10)前記噛合い部は、前記ロッドの内面に形成されていることを特徴とする前記(9)項に記載の変速機。
【0019】
(11)前記ロッドは、前記歯車担体の内側に配置されていることを特徴とする前記(1)ないし前記(8)のいずれか1項に記載の変速機。
【0020】
(12)前記カムディスクは、内部にカムを有するカムディスクであることを特徴とする前記(11)項に記載の変速機。
【0021】
(13)前記(1)ないし(12)のいずれか1項に記載の変速機(1)を有する駆動装置であって、カムディスク(50、150)を駆動するモータを有していることを特徴とする駆動装置。
【0022】
(14)前記(1)ないし(10)のいずれか1項に記載の変速機により、回転運動を直線運動に変換させることを特徴とする前記変速機の使用方法。
【0023】
(15)歯車担体及びロッドは、それぞれが出力部材又はその支持部材を構成することを特徴とする前記(14)項に記載の変速機の使用方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、回転運動を直線運動に変換、又は直線運動を回転運動に変換できる小型で直線方向に大きな力が伝達でき且つ力の損失の少ない変速機ができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による変速機の第1の実施例の側面図
【図2】図1に示す変速機のC−C断面図
【図3】図1及び2に示す変速機の部分断面詳細図
【図4】図1〜3に示す変速機の歯車の歯の斜視図
【図5】本発明による第2の実施例の変速機のロッドの模式側面図
【図6】本発明による第3の実施例の変速機の部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の変速機は、噛合い部を有するロッド及び該噛合い部と噛み合うように径方向に可動な歯が収容された歯車担体を備えている。ロッド及び歯車担体は互いに回転できないように装着されている。更に、ロッドと歯車担体は互いに直線状に変位可能に装着されている。本発明による変速機は、特に変速機の縦軸周りの回転運動を縦軸方向への直線運動に変換することが可能である。
【0027】
本発明による変速機は、歯を径方向に動かす駆動装置を備えることが好ましい。ここにおける「駆動装置」の用語には、変速機の逆方向の変換である径方向に可動な歯により駆動される駆動装置も含まれる。この場合、「駆動装置」は回転の出力に用いられる。通常の実施例では、駆動装置は少なくとも1つの歯又歯のみを径方向に動かす。その動きは、径方向を内方のみ又は外方のみであることが好ましい。駆動装置が駆動されるや否や、歯が径方向を内方に動かされ、ロッドの噛合い部及び歯車担体に対するロッドの相対的な運動により歯が逆に外方に動かされる。歯が径方向を外方へ動かされても同様のことが起こる。
【0028】
駆動装置は、通常は1〜4又はそれ以上の突出部又はカムを有する少なくとも1つのカムディスクを備えることが好ましい。通常、カムディスクは、変速機の縦軸の周りを回転するように装着されるので、回転運動の出力部材又は駆動部材に相当する。駆動装置又はカムディスクは、歯車担体又はロッドに対して回転可能であるのと対照的に、ロッド及び歯車担体は互いに回転しないように固定されている。ロッド又は歯車担体が回転の自由度を抑えられて装着された実施例は、直線状の力を伝達するのにピボット軸受を必要としないとの利点がある。
【0029】
通常、歯車担体及びロッドは、同心に配置されるので、小型の構造となる。場合によっては、歯車担体は、特に縦軸に沿って断面が楕円の複数の部品で構成されることもある。円周方向に連続な歯車担体は安定性が大きいとの利点がある。歯は、縦軸と交わる径方向に可動となるように歯車担体内に、例えば歯車担体の開口部に差し込まれるように配置することが好ましい。歯車担体は、歯が収容される少なくとも部分的に径方向に整列された開口部を備えることが好ましい。その開口部は、通常、径方向に連続している。従って、歯の頭部は、歯車担体側に向けて突出し、歯の下部は駆動装置と作用し合うように突出してもよい。
【0030】
カムディスクは、ロッド又は歯車担体と同心に配置することが好ましく、それにより小型に構成できる。歯車担体に差し込まれる歯は、円の周りに配置されることが好ましい。この円は縦軸に垂直な面内に在ることが好ましい。別の実施例では、あるピッチを有する歯が、歯車担体に配置されている。
【0031】
通常の実施例では、歯車担体内に配置された複数の環状歯列を備えている。これにより、搬送能力が増大する。複数の環状歯列は、縦軸に沿って互いに平行に配置されることが好ましい。1つの環状歯列は、少なくとも4つ、好ましくは8又は12の歯が互いに隣接して円周方向に配置されている。これらの歯は、通常、均一に円周状に配置されている。これにより、理想的な力の配分が得られ、死点が無くなる。多数の歯を備えた複数の環状歯列は、1つ以上のカムディスクにより動かされる。カムディスクを有する駆動装置により、簡単な構造の変速機となる。複数のカムディスクを有する駆動装置は、噛み合いをずらして、例えば変速機の剛性を増大させることができる。好適な実施例では、少なくとも2つのカムディスクを備えることが好ましい。複数のカムディスクの大部分は、歯車担体の周りに均一に分配することが好ましい。大部分のカムディスクは、隣接したカムディスクと互いに少なくとも30°回転させて配置することが好ましい。実施例によっては、回転角度を5〜90°の範囲で変えてもよい。
【0032】
駆動装置が歯と噛み合い、駆動装置の回転又は駆動装置としてのカムディスクを回転させることにより、歯及び歯車担体に対してロッドが直線状に変位するように、ロッドの噛合い部を設計する。ロッドの歯車担体に対する縦軸方向の変位は駆動装置の回転運動に変化する、逆の操作も可能である。歯は、ロッド又は歯車担体に対する周方向に固定、すなわち変速機の縦軸の周りに回転しないように装着されることが好ましい。通常の実施例では、歯は、歯自体の縦軸の周りを回転されるように、歯車担体内に配置される。歯自体の回転量は、少ないことが好ましく、多くても10°、好ましくは多くても5°又は多くても3°である。歯自体の縦軸は、変速機の縦軸又は変速機に対する径方向に整列させることが好ましい。歯自体の縦軸の周りの回転を制限するように歯を装着することにより、歯のフランクとロッドの噛合い部との摩擦を少なくできる。実施例によっては、少なくとも2つの歯が装着される支持部材を備えている。2つの歯は変速機の縦軸方向に前後に配置されている。このように、簡単な手段を用いて固定した装着を達成することができる。カムディスクによる駆動は、支持部材を介して行うことが好ましい。
【0033】
通常の実施例では、ロッドの噛合い部と歯車担体に装着された歯との間にピッチが存在する。このようなピッチは、ロッドの噛合い部がピッチを有するように構成される。べつの実施例では、歯が、円周方向にピッチを有するように歯車担体内に装着されている。従って、歯車担体内の歯が縦軸に対して「持ち上げられる」。ピッチが無いか、又は実質的にピッチの無い噛合い部を有するロッドを備えた実施例もある。この場合には、構造が簡単になるとの利点がある。歯は、歯車担体内にピッチ無しで装着されることが好ましい。ロッドの噛合い部がピッチを有することが好ましい。ピッチは、駆動装置のカムディスクの突出部の数に相当することが好ましい。
【0034】
ロッドの噛合い部がピッチを有する実施例においては、ロッドはネジ付き棒として設計される。ネジ付き棒の形状のロッドを有する実施例においては、ロッドの噛合い部は、多面状か、負又は正のクラウニングを有する歯として実施される。内部にカム形状を有する外部カムディスクを有する変速機では、歯は負のクラウニングを有するようにすることが好ましい。負のクラウニングとは、歯がそのフランクの少なくとも一部が凹状であることを意味する。
【0035】
歯は、歯車担体内に配置されて、歯のフランク又は頭部が少なくとも部分的に縦軸に対して垂直に配列されることが好ましい。通常の実施例では、歯のフランク又は頭部は、縦軸周りの円周にたいして大きくても45°、好ましくは20°、大きくても10°又は5°であることが更に好ましい。歯は、ロッドの噛合い部のピッチの角度に相当し、傾いた頭部又はフランクを有して、縦軸周りを回転されることが好ましい。別の実施例では、ロッドの外周に螺旋階段状のピッチを有した複数の歯を備えたロッドの噛合い部が配置されている。複数の歯は、ロッドの軸に沿って前後に整列されている。操作の際には、径方向に可動な歯のそれぞれは、ロッドに沿って、正に噛合い部の1つの歯列だけ移動する。このようなロッドは、ラックに相当した形状である点が特徴である。ロッドが、1つ又はそれ以上の歯列を備えた実施例もある。個々の歯列は、歯車担体の凹状のクラウニングを有する歯と噛み合うことが好ましい。ロッドは複数の部品から構成してもよい。ロッドの歯が内向きの場合には、この構成が好ましい。この場合、多数の外部歯付きラックがロッドを形成している。
【0036】
実施例によっては、ロッドは中空に形成されている。この構成により、例えば、別の用途のシャフトを通すことができる。この実施例では、ロッドの歯は内部に形成される。この場合、ロッド内に歯車担体を配置し、駆動装置又はカムディスクは歯車担体の内側に配置される。例えば、ドライブシャフトへ取付けることにより、極めて簡単な内部駆動装置が可能となる。歯車担体内に装着された歯は、駆動装置により内部から外部へと動かされる。
【0037】
ロッドが歯車担体の内側に配置される実施例もある。駆動装置は、歯車担体の外側に、歯車担体の周りに同心に配置することが好ましい。好適な実施例では、内部にカムを有する少なくとも1つの外部カムディスクを備えている。外部カムディスクは、環状に歯車担体の周りに配置することが好ましい。歯は、外部カムディスクにより内方へと動かされる。ローラベアリング、針状ローラベアリング又は単なる軸受をカムディスクと歯との間に配置することにより、回転しないように固定された歯に対して、カムディスクが回転されて、カムディスクと歯との間に径方向に力が伝達される。更に、歯を収容して支持する支持部材が、歯とカムディスクの間に配置される。特に、内部にカムを有する外部カムディスクを備えた実施例では、歯の大きな力を径方向に伝達することができるように、駆動装置と歯との間に十分な空間があるとの利点がある。
【0038】
更に、上記実施例では、駆動装置を駆動するモータを備えていることも本発明の特徴である。
【0039】
上記実施例に記載の変速機を用いて、回転運動を直線運動に変換又はその逆の変換をすることも本発明の特徴の1つである。上記実施例の変速機の使用する場合、歯車担体及びロッドのそれぞれは、直線状の出力部材又はその支持部材を形成する。本発明は、ロッドから歯への力の伝達距離は短く、径方向の力又は直線状の力の伝達にピボット軸受を必要としないことが大きな特徴である。
【0040】
以下、図面を用いて本発明による実施例の特徴及び長所を説明する。
【実施例1】
【0041】
図1は回転運動を直線運動への変換又は逆の変換を行う変速機1の側面図である。変速機1は、中間部分に噛合い部5を備えたロッド3を含んで構成される。図1に示されるロッド3の噛合い部5は、ネジ棒のネジと同じであるが、ロッド3の噛合い部5は、ネジとしては使用されない。ロッド3は、その回転方向の自由度を抑えられ、回転できないように装着されている。
【0042】
図1に示す実施例の変速機は、更に、ロッド3と同心に配置された歯車担体10を備えている。歯車担体10は、同じくロッド3と同心に配置された駆動カラー20に囲まれている。駆動カラー20は回転可能に装着されているが、それに対して、歯車担体10は、回転の自由度が抑えられ、ロッド3に対して回転しないように装着されている。駆動カラー20を回転させると、ロッド3が、変速機1の縦軸30方向に歯車担体10に対して直線状に変位する。歯車担体10を固定して、駆動カラー20を回転させて、ロッド3の直線状の動き又は前進の動きを取出すことが可能である。直線運動する類似の変速機と比べて、本願は歯車担体10及びロッド3を回転可能に装着する必要がないので、小型で強い前進力及び高剛性の変速機1が得られることが大きな特徴である。
【0043】
図2には、図1のC−C断面を示す。以後、同一部品には同一の符号を用いた場合には、同一部品の詳細な説明は省略した。
【0044】
噛合い部5を有するロッド3は、変速機1の内部に配置されている。明瞭に図示するために、図3では開口部44に収容されている歯車の歯40は2つしか示していない。通常は、歯車担体10に円環状に配置された16の全ての開口部44は、歯40に占められている。しかしながら、特に歯40が駆動機構に単に装着されている場合には、歯40が全ての開口部44を占めない構成も可能である。例えば、ニードルベアリング介して簡単に装着されるように、全ての開口部44が歯40で占められることが好ましい。
【0045】
歯40は、径方向に変位可能に歯車担体10の開口部に装着されている。歯車担体10の開口部44は、径方向に連続している。歯40は、カムディスク50により径方向を内方へと動かされる。カムディスク50は外部カムディスクとして設計され、その内周に1つの突出部を有しているので、カムディスク50が1回転すると、各歯40は正に1度だけ径方向を内方に動かされる。
【0046】
ロッド3の噛合い部5は1つのピッチを有しているので、カムディスク50回転させると、歯40は噛合い部5のピッチに応じて径方向を内方に連続的に動かされて、ロッド3が直線状に動かされる。歯40は、円形の開口部44に収容されているので、歯40の縦軸の周りを回転できる。歯40の縦軸は、変速機1の縦軸30に対する径方向に相当する。歯40の頭部はロッド3の噛合い部5のピッチ応じて整列されるので、歯のそれぞれの頭部は、ロッド3又は変速機1の周辺方向に対して僅かに回転される。その回転は10°未満である。
【0047】
図2には全ての歯40を図示されているのではなく、また歯40のカムディスク50への装着も図示されていない。しかしながら、図2から、カムディスク50の同心状の内曲面により、歯40が径方向を内方に動かされて、ロッド3の噛合い部5が直線状に前進することにより内曲面には空間が残ることが図2から認識できる。特定の歯40によってロッド3が動かされていない場合、すなわち、歯40がカムディスク50によって径方向を内方に動かされていない場合には、ロッド3の噛合い部5は、カムディスク50の内径が再度減少するまで、歯40を径方向に沿って外方に戻るように動かす。このようにして歯40は内方へと動かされる。歯40が外方と内方の間を動く間に、歯40は死点を通過するが、歯40が多数あることを考慮すると問題ない。
【0048】
変速機1の駆動は、カムディスク50に回転可能に連結された駆動カラー20により実行される。カムディスク50と駆動カラー20は共に回転するように装着されている。
【0049】
図3には、図1に示された変速機の縦軸に沿った部分断面図が図示されている。図1と同一部材には、同一の符号を用いているので、詳細な説明は再度繰り返すことは省略した。
【0050】
歯車担体10には、4列の円周状に配置された開口部44が備えら、開口部44には歯40が収容されている。歯40は、ロッド3の噛合い部5と噛み合っている。ロッド3の噛合い部5、並びに歯40は図の切断面に対してやや傾いて配置されているので、歯40及び噛合い部5のフランクの一部が見える。図3に示された歯40は完全に外方へ動かされて、歯40の頭部が噛合い部5の頭部に位置している。この状態において、歯40は死点に位置している。歯車担体10の円周状の別の点に配置された歯40は完全には外方に動かされてはおらず、別の位置、例えば、噛合い部5の基部に完全に引っ込んだ位置(下死点)、又はフランクと噛み合った状態にある。
【0051】
歯40の径方向の移動は、カムディスク50を有する駆動カラーにより行われる。図2において説明したように、カムディスク50内径は、内周の位置により変化している。縦軸30に沿って2つずつの歯40がパケットとして組み立てられ、隣り合った2つの歯40は1つの支持部材54に装着されている。支持部材54は、針状ロール56を介してカムディスク50に装着されている。1つのカムディスク50は、それぞれに2列の歯40を備えた2組の回転する支持部材54を駆動する。1つの支持部材54に2つの歯40を装着することにより、支持部材は回転しないように固定され、歯40は変速機1の径方向に回転しないように所定の位置に固定される。このため、支持部材54は、歯40の脚部(図4の平坦部74)と嵌合する凹部を有していることが一般的である。
【0052】
カムディスク50は、ボールベアリング60を介して駆動カラー20と共に歯車担体10に装着されている。歯車担体10は、ネジによって所定の位置に固定できるように孔62を備えている。歯車担体10が所定の位置に固定されているのに対して、ロッド3は回転が抑えられ2つの軸受ブッシュ64を介して縦軸方向にのみ変位可能なように保持されている。しかしながら、円周方向に配置された歯40の列が複数備えられていることによっても、ロッド3が保持されている。駆動カラー20による変速機1の駆動及びそれに伴ってカムディスク50が回転すると、カムディスク50及び対象とする歯40の位置に応じて、歯40はカムディスク50により径方向を内方に動かされるか又は噛合い部5により径方向を外方に動かされ、その結果、ロッド3が歯車担体10に対して直線状に動かされる。
【0053】
通常の実施例においては、軸受ブッシュとも言われる単なる軸受ブッシュを介して軸方向に変位可能に装着されることが好ましい。軸受ブッシュは歯の頭部上又はロッドの噛合い部の先端部上のみを滑る。これにより、構成が簡単になる。別の実施例では、ロッドは少なくとも一端が固定して装着されている。この場合、十分な空間を確保できるようにロッドは長くなるが、高い安定度が保証される。
【0054】
図4は、単一の歯40の斜視図である。歯40は、それぞれが凹形の2つのフランク72に隣接した頭部70を備えている。フランク72を凹形とすることにより、歯40とロッド3の噛合い部5との噛み合いが最適となる。歯40が径方向に動いて、ロッド3の凸形の噛合い部5とで完全な操作ができるように、歯40には凹形のフランク72を備えることが好ましい。歯40の頭部70が変速機1の円周方向に対して10°以下好ましくは5°以下傾けて歯40が装着される。頭部70の円周方向に対する傾け角度は、ロッド3の噛合い部5のピッチに基づいて決められる。歯40の頭部70の反対側の端部に、歯40を支持部材54に収容できるように平坦部74が形成されている(図3参照)。
【実施例2】
【0055】
図5は、本実施例の変速機のロッドの模式側面図である。ロッド3の噛合い部5は多面状に形成されている。噛合い部5が多面状であることにより、直線状のフランクを有する歯が使用でき、図4のような凹状のクラウニングは有していない。凹状のクラウニングは、凸状のフランクに対応している。
【0056】
多面状の噛合い部5を用いると、ロッド3の縦軸方向の個々の歯列はロッド3に沿うことになる。例えば、歯の1つの列は双方向矢印80で示される。図3に示す実施例と同様に、歯車担体10に縦方向に順次収容されている4つの歯(図3参照)は、双方向矢印80に沿って移動する。歯車担体10に円周方向に隣接して収容された歯は、ロッド3の隣接した歯の列に沿って動く。
【0057】
歯車担体に収容された歯は、常にロッド3の特定された縦方向に沿って動くか、ロッド3が動くので、個々に分離された他の歯列もロッド3上に備えることができる。更に、個々のロッド3が1つ以上の歯列を有した複数ロッド3も別の実施例として考えられる。
【実施例3】
【0058】
図1〜3、図5のロッド3は、中心に位置し、内側にカムを有して外側に装着されたカムディスクにより歯が径方向を内方に動かされる実施例であった。これとは別に、歯が外方に動かされる、内部カムディスクを備えた実施例も考えられる。この場合、ロッドは中空に形成され内部に歯を有する構成となる。
【0059】
本実施例の変速機の部分断面図である図6には、変速機1の縦軸30を中心として上半分の断面が図示されている。
【0060】
図6の変速機1は、回転運動を直線運動に変換することが可能である。この図の変速機1は、シャフトと一体的に形成された内部カムディスク150を備えている。カムディスク150はボールベアリング60により回転可能に装着されている。歯車担体10は、回転も変位もできないように固定して装着されている。カムディスク150は、ボールベアリング60を介して回転可能に装着されている。
【0061】
カムディスク150は、歯40を径方向に沿って外方に動かすために用いられる。歯40は、縦軸30から外方に動かされると、中空に形成されたロッド103の中空部内面に形成されている噛合い部5と噛み合う。変速機1が操作されると、内面に噛合い部5を有するロッド103は歯車担体10に対して直線状に変位する。すなわち、一体的に形成されたシャフトを有するカムディスク150の回転方向に応じて図6において右又は左へと変位する。本実施例による歯40は、凸状に形成され、中空のロッド103の噛合い部5のフランクは凹状に形成されている。
【0062】
本実施例では、フランジを介してカムディスク150にモータを簡単に取り付けできることが特徴の1つである。このようにして、小型の変速機が提供できる。本実施例でも、2つの歯40が1つの支持部材54に装着されている。支持部材54は、針状ロール56を介してカムディスク150に装着されている。その他の点においては、本実施例は図1〜3の実施例と同様である。
【0063】
1つの支持部材に縦軸方向に配列された2つよりも多い歯を備えた実施例も考えられる。更に、歯を対としてではなく、個別に装着する実施例も考えられる。通常の実施例では、それぞれの支持部材に2つの歯が備えられている。回転するカムディスクに取付けできるように、十分に柔軟な回転支持部材を備えてもよい。このような回転支持部材は、内部カムディスク並びに外部カムディスク(内側にカム形状を有するカムディスク)に対しても可能である。通常の実施例では、支持部材は針状ロールに装着されている。支持部材を装着するのに摺動を備える実施例も考えられる。更に、直接に歯を装着してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 変速機
3、103 ロッド
5 噛合い部
10 歯車担体
20 駆動カラー
30 縦軸
40 歯
44 開口部
50、150 カムディスク
54 支持部材
56 針状ロール
60 バールベアリング
62 (取付け用の)孔
64 軸受ブッシュ
70 頭部
72 フランク
74 平坦部
80 双方向矢印(歯の移動方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機(1)の縦軸(30)周りの回転運動を直線運動に変換するか、又は直線運動を回転運動に変換する変速機(1)であって、
噛合い部(5)を有するロッド(3、103)及び
噛合い部(5)と噛み合うように、径方向に可動な歯(40)を収容する歯車担体(10)を備え、
ロッド(3、103)及び歯車担体(10)は互いに回転せずに、縦軸(30)方向に互いに変位可能なように装着されていることを特徴とする変速機。
【請求項2】
歯(40)を径方向に動かすための駆動装置(50、150)が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の変速機。
【請求項3】
歯(40)を径方向に動かすためのカムディスク(50、150)が変速機の縦軸(30)の周りを回転可能に装着されていることを特徴とする請求項1に記載の変速機。
【請求項4】
カムディスク(50、150)の回転により歯(40)が噛合い部(5)と噛み合うように動かされ、ロッド(3、103)を歯車担体(10)に対して直線状に変位させることを特徴とする請求項3に記載の変速機。
【請求項5】
ロッド(3)の噛合い部(5)と歯車担体(10)内に配置された歯(40)との間にピッチが存在することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の変速機。
【請求項6】
歯(40)は、縦軸(30)に対する径方向の周りを回転可能に配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の変速機。
【請求項7】
ロッド(3、103)の噛合い部(5)は、多面状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の変速機。
【請求項8】
歯(40)は、負のクラウニングを有していることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の変速機。
【請求項9】
ロッド(103)は、中空に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の変速機。
【請求項10】
噛合い部(5)は、ロッド(103)の内面に形成されていることを特徴とする請求項9に記載の変速機。
【請求項11】
ロッド(3)は、歯車担体(10)の内側に配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の変速機。
【請求項12】
カムディスク(50)は、内部にカムを有するカムディスクであることを特徴とする請求項11に記載の変速機。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の変速機(1)を有する駆動装置であって、カムディスク(50、150)を駆動するモータを有していることを特徴とする駆動装置。
【請求項14】
請求項1ないし10のいずれかに記載の変速機(1)により、回転運動を直線運動に変換させることを特徴とする変速機の使用方法。
【請求項15】
歯車担体(10)及びロッド(3、103)は、それぞれが出力部材又はその支持部材を構成することを特徴とする請求項14に記載の変速機の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−15218(P2013−15218A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−144916(P2012−144916)
【出願日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【出願人】(500542240)ヴィッテンシュタイン アーゲー (19)
【Fターム(参考)】