説明

変速装置のオイル供給機構

【課題】 差動機構のリングギヤがかき上げたオイルを、差動機構の特に潤滑が必要な部分に効率的に供給できる変速装置のオイル供給機構を提供する。
【解決手段】
変速装置ケース5の内壁の、差動機構6を覆う部分でかつ駆動軸8の上方部分に、オイルを前記駆動軸8のオイルシール16aに向けて導入するオイル導入溝19bを形成し、オイル案内通路19a′により差動機構上方に案内されたオイルを前記オイル導入溝19bに導くオイル導入路19cを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動機構のリングギヤが掻き揚げたオイルを差動機構の被潤滑部に供給するようにした変速装置のオイル供給機構に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のオイル供給機構として、従来、例えば非特許文献1に開示されたものがある。この従来技術では、差動機構のリングギヤによって掻き揚げられたオイルを差動機構の上方に導き、ここから差動機構に滴下させるよう機能するリブを、トランスアクスルケースに設けている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】発明協会公開技報番号2010−505669
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記従来技術では、オイルを単に差動機構の上方に導き、ここから滴下させるようにしているので、オイルが差動機構全体に飛散してしまい、特に潤滑の必要な部分、例えばオイルシールの摺動部にオイルを効率的に供給することができず、この点での改善が要請される。
【0005】
本発明は、前記従来の実情に鑑みてなされたもので、差動機構のリングギヤがかき上げたオイルを、差動機構の特に潤滑が必要な部分に効率的に供給できる変速装置のオイル供給機構を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、エンジン回転を所定の変速段に変速して出力する変速機構と、該変速機構の出力回転を、駆動軸を介して駆動輪に伝達する差動機構と、前記変速機構及び差動機構を収容する変速装置ケースとを備えた変速装置において、前記差動機構のリングギヤの回転により掻き上げられたオイルを差動機構上方に案内するオイル案内通路が、前記変速装置ケースに形成されたオイル供給機構であって、前記変速装置ケースの内壁の、前記差動機構を覆う部分でかつ前記駆動軸の上方部分に、オイルを前記駆動軸のオイルシールに向けて導入するオイル導入口を形成し、前記オイル案内通路により差動機構上方に案内されたオイルを前記オイル導入口に導くオイル導入路を形成したことを特徴としている。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の変速装置のオイル供給機構において、
前記変速機構は、リバースシフトアームを保持するリバースシフトアームブラケットを有し、前記オイル案内通路は、前記変速装置ケースの差動機構上方部分に溝状をなすようにリブを立設することにより構成されており、前記リバースシフトアームブラケットに、前記前記オイル案内通路の開放側を覆うようにカバー部を延長形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明に係る変速装置のオイル供給機構によれば、リングギヤの回転により掻き揚げられたオイルは、オイル案内通路により差動機構上方に案内され、ここからオイル導入路を通ってオイル導入口に導入され、該オイル導入口を通ってオイルシールに導入される。
【0009】
このため、前記オイルを、単に差動機構上方に案内するだけの場合に比較して、特に潤滑の必要なオイルシール部分に効率よく供給できる。従って、オイルの撹拌抵抗を低減するために油面を下げた場合にも、オイルシール部分を十分に潤滑でき、燃費向上を図ることができる。
【0010】
請求項2の発明では、前記オイル案内通路を、変速装置ケースの内壁面にリブを立設することにより構成し、該オイル案内通路の開放側をカバー部で覆ったので、前記掻き揚げられたオイルが前記オイル案内通路から外方に洩れるのを抑制でき、前記オイルをより効率良く前記オイルシール部分に供給できる。
【0011】
また前記カバー部を、既存のリバースシフトアームブラケットに、延長形成したので、部品点数を増加することなく、前記オイル案内通路の開放側を覆うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1による自動車の変速装置の模式図である。
【図2】前記変速装置の一部断面平面展開図である。
【図3】前記変速装置のオイル供給機構を示す正面図(図2のIII-III矢視図)である。
【図4】前記変速装置のオイル供給機構を示す斜視図である。
【図5】前記オイル供給機構のオイル導入路部分の拡大図である。
【図6】前記オイル供給機構のオイル導入路及びオイル貯留部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1ないし図6は、本発明の実施例1による変速装置のオイル供給機構を説明するための図である。
【0015】
図において、1は自動車に搭載されるエンジンユニットを示している。このエンジンユニット1は、エンジン本体2と、該エンジン本体2に一体的に接続されたマニュアル式の変速装置3とを備えている。
【0016】
前記変速装置3は、エンジン回転を前進5段,後進1段の何れかの変速段に切り換えて出力する変速機構4と、該変速機構4からの出力回転を左,右の駆動輪9,9に伝達する差動機構6と、前記変速機構4及び差動機構6を収容する変速装置ケース5とを有する。
【0017】
前記変速装置ケース5は、前記変速機構4を収容するミッションケース5aと、該ミッションケース5aに接続形成され、前記差動機構6を収容するデフケース5bとを有し、これらのケース5a,5bは、合面5′により後述するクラッチハウジング11及び差動枠6bを囲む部分(以下、差動枠側部分5b′と記す)と、変速機構4を囲む部分5a′とに二分割されている。
【0018】
前記クラッチハウジング11内には、前記変速機構4へのエンジン回転を接続又は遮断するクラッチ機構10が収容されており、このクラッチ機構10には、前記エンジン本体2のクランク軸2aが連結されている。
【0019】
前記変速機構4は、前記クラッチ機構10を介してエンジン回転が伝達されるインプット軸12と、該インプット軸12と平行に配置されたアウトプット軸13と、該アウトプット軸13及び前記インプット軸12に配置され、該インプット軸12の回転を所定の変速回転数でもって前記アウトプット軸13に伝達する前進5段,後進1段の変速ギヤ列とを有する。
【0020】
前記アウトプット軸13の前記差動機構6側の端部には、出力ギヤ13gが形成され、該出力ギヤ13gには、前記差動機構6のリングギヤ6aが噛合している。
【0021】
前記インプット軸12には、クラッチ機構10側から順に、1速ドライブギヤ12a,リバースドライブギヤ12b及び2速ドライブギヤ12cが形成され、さらに3速ドライブギヤ12d,4速ドライブギヤ12e及び5速ドライブギヤ12fがそれぞれ回転自在に装着されている。
【0022】
一方、前記アウトプット軸13には、前記1速ドライブギヤ12aに噛合する1速ギヤ13a,前記リバースドライブギヤ12bにリバース中間ギヤ14aを介して噛合するリバースギヤ13b,前記2速ドライブギヤ12cに噛合する2速ギヤ13cがそれぞれ回転自在に装着され、さらに前記3速ドライブギヤ12dに噛合する3速ギヤ13d,4速ドライブギヤ12eに噛合する4速ギヤ13e及び前記5速ドライブギヤ12fに噛合する5速ギヤ13fがそれぞれスプライン結合されている。なお、前記リバース中間ギヤ14aは中間軸14に軸方向にスライド可能に支持されている。
【0023】
前記変速機構4は、前記インプット軸12,アウトプット軸13,中間軸14の上方に、かつこれと平行に、さらに軸方向にスライド可能に配置されたインプットシフト軸23,アウトプットシフト軸24,リバースシフト軸25を有する。そして前記インプットシフト軸23にはインプットシフトフォーク23aが、アウトプットシフト軸24にはアウトプットシフトフォーク24aが、リバースシフト軸25にはリバースシフトフォーク25aがそれぞれ固定されている。
【0024】
ここで、前記リバースシフトフォーク25aの先端部25bは、リバースシフトアーム26に装着された連結ピン26aの頭部26a′に係合している。このリバースシフトアーム26は、支持ピン26bによりリバースシフトアームブラケット21の、前記インプット軸12の軸心方向に折り曲げ形成された連結部21aに回動可能に支持されている。前記リバースシフトアーム26の先端部26cは、前記リバース中間ギヤ14aのシフト溝に摺動可能に係合している。
【0025】
前記変速機構4は、図示しない運転席のシフトレバーのシフト操作により、前記各シフト軸23,24及び各シフトフォーク23a,24aを介して前進5段の何れかの変速段に切り換えられる。また、前記シフトレバーのシフト操作により、リバースシフト軸25を軸方向に移動させると、リバースシフトフォーク25aがリバースシフトアーム26を回動させ、これにより前記リバース中間ギヤ14aが軸方向に移動して前記リバースドライブギヤ12bに噛合し、その結果、前記変速機構4は、後退段に切り換えられる。
【0026】
前記変速機構4は、前記各シフト軸23〜25の軸方向移動を規制することで二重シフトロックを阻止する二重シフトロック防止機構28を備えている。この二重シフトロック防止機構28は、前記変速装置ケース5の差動枠側部分5b′の合面5′の内側部分に、シフト軸の軸心と直角方向に延びるように凹設されたスライド溝28a内にスライドカム28bをスライド可能に配設した概略構造のものであり、前記スライドカム28bのスライド位置によりこれの係止片28c〜28eの何れか2つが、前記シフト軸23〜25の何れか2つに係合し、残りの1つのシフト軸のみの軸方向移動を許容するように構成されている。
【0027】
図3に示す状態では、係止片28c,28dがアウトプットシフト軸24,インプットシフト軸23に係合しており、係止片28eはリバースシフト軸25には係合していないので、リバースシフト軸25のみの軸方向移動が可能となっている。
【0028】
前記リバースシフトアームブラケット21は、前記連結部21aから前記インプット軸12等の軸心に直交する方向に延びる平板状の本体部21bを有し、該本体部21bのエンジン側の面は、前記合面5′と同一面をなしている。
【0029】
そして、前記本体部21bは、前記連結部21aに続く固定部21cと、該固定部21cに続くカムカバー部21dと、該カムカバー部21dに続く通路カバー部21eとを有する。
【0030】
前記固定部21cは、前記変速装置ケース5の差動枠側部分5b′の合面5′のインプット軸12を囲むボス部12fに複数のボルト27aにより固定されている。前記カムカバー部21dは前記固定部21cから前記各シフト軸23〜25側に延びて、前記二重シフトロック防止機構28のスライド溝28aを覆っており、これによりスライドカム28bが軸方向に移動するのを防止している。また前記通路カバー部21eは、前記カムカバー部21dから前記差動機構6側に延びて後述するオイル案内通路19a,19a′を覆っている。
【0031】
前記差動機構6は、前記出力ギヤ13gに噛合するリングギヤ6aと、該リングギヤ6aが固定され、該リングギヤ6aと共に回転する差動枠6bと、該差動枠6bに軸6eを介して固定された一対のピニオンギヤ6c,6cと、該ピニオンギヤ6c,6cに噛合するサイドギヤ6d,6dとを有し、該サイドギヤ6d,6dは前記差動枠6bに支持され、前記駆動軸8,8に接続されている。この左,右の駆動軸8,8は、左,右の車軸9a,9aを介して左右の駆動輪9,9に連結されている。
【0032】
前記差動枠6bは、一対の軸受15a,15bを介して前記デフケース5bにより軸支されている。また前記駆動軸8,8の、前記軸受15a,15bより軸方向外側部分と前記デフケース5bとの間にはオイルシール16a,16bが配設されている。前記オイルシール16a,16bは、前記デフケース5bに嵌合する基部16dと、該基部16dに支持され、前記駆動軸8の外周面に摺接するリップ部16cとを有する。
【0033】
また、前記変速装置3は、前記ミッションケース5a及びデフケース5b内に充填されたオイルを前記差動機構6の各ギヤの噛合部,軸受部,オイルシール部等,及び前記変速機構4の各変速ギヤの歯合部,軸受部,シンクロナイザ部等の被潤滑部に供給するオイル供給機構7を備えている。
【0034】
前記オイル供給機構7は、前記掻き揚げられたオイルを貯留することによりミッションケース5a,デフケース5b内のオイルレベルを低下させるオイルレシーバ(貯留部材)30と、該オイルレシーバ30に貯留されたオイルの一部を前記変速機構4の各変速ギヤの噛合部,軸受部等に供給する変速機構潤滑部18と、前記掻き揚げられたオイルの一部を前記差動機構6の各ギヤの噛合部,軸受15a,15bやオイルシール16a,16bに供給する差動機構潤滑部19とを備えている。
【0035】
前記オイルレシーバ30は、樹脂製であり、底壁30aの外周縁に側壁30bを起立形成した大略皿形状をなしており、前記インプット軸12,アウトプット軸13の上方に、かつ前記各変速ギヤ12a〜12f,13a〜13fを大略覆うように配置されている。
【0036】
前記オイルレシーバ30は、前記1速ギヤ13a,2速ギヤ13c,リバースギヤ13bが回転することにより掻き揚げられたオイルを貯留する第1貯留部Aと、該第1貯留部Aとは独立して設けられ、前記差動機構6のリングギヤ6aが回転することにより掻き揚げられたオイルの一部を貯留する第2貯留部Bとを有する。また前記第1貯留部A,第2貯留部Bのオイルを前記インプット軸12のオイル通路12gに供給する大略樋状のオイル供給路C,Dを有する。
【0037】
前記オイルレシーバ30の前記リングギヤ6aに臨む部分には、該リングギヤ6aによる掻き揚げオイルの一部を第2貯留部Bに導入するオイル開口30eが前記側壁30bの一部を切り欠くことにより形成されている。
【0038】
また、前記オイルレシーバ30の底壁30aには、前記アウトプット軸13の1速ギヤ13a,リバースギヤ13b及び2速ギヤ13cが回転することにより掻き揚げたオイルを前記第1貯留部Aに導入する第1,第2開口30m.30nが形成されている。
【0039】
なお、30gは、前記掻き揚げられたオイルを前記インプット軸12及びアウトプット軸13の各ギヤ,シンクロナイザリング等に滴下する複数のオイル孔である。
【0040】
そして前記差動機構潤滑部19は、前記差動機構6のリングギヤ6aの回転により掻き上げられ、オイル案内通路19aを介して前記オイルレシーバ30側に案内されるオイルの一部を差動機構6の上方に案内するオイル案内通路19a′と、オイルを前記駆動軸8のオイルシール16aに向けて導入するオイル導入溝(オイル導入口)19bと、前記オイル案内通路19a′により差動機構6の上方に案内されたオイルを前記オイル導入溝19bに導くオイル導入路19cとを有する。
【0041】
ここで、前記オイル案内通路19a,19a′及びオイル導入路19cは、前記デフケース5bの前記差動枠側部分5b′の内壁面にリブを立設することにより形成されている。
【0042】
詳細には、図3〜図5に示すように、前記差動枠側部分5b′の前記差動枠6bを囲む底壁Eの前記リングギヤ6aより上方部分に、2条の案内リブ20a,20bが間隔を空けて溝状をなすように、かつ前記リングギヤ6aの大略接線方向に延びるように形成されている。この案内リブ20aと前記差動枠6bを囲む周壁E′と前記底壁Eとで囲まれた部分が前記オイル案内通路19aとなっている。また前記2つの案内リブ20a,20bと前記底壁Eとで囲まれた部分が前記オイル案内通路19a′となっている。
【0043】
前記案内リブ20bの上端部20eは前記オイル案内通路19aの中程まで突出している。この上端部20eは、前記掻き揚げられたオイルの一部を前記オイル案内通路19a′に反転滴下させ、残りが前記オイルレシーバ30側に導入されるのを許容するように機能する。
【0044】
また前記差動枠側部分5b′の、前記軸受15a,オイルシール16aを囲むボス部15cに、オイルを前記オイルシール16aのリップ部16cの摺動部に向けて導入するオイル導入溝19bが凹設されている。このオイル導入溝19bは、前記軸受15aを支持するボス部15cの一部を径方向に延びる溝状に切り欠くことにより形成されている。
【0045】
また、前記差動枠側部分5b′の前記差動枠6bを囲む部分の前記駆動軸8より上方部分には、2条の導入リブ20c,20dが間隔を空けて溝状をなすように、かつ差動機構6の大略径方向に延びるように形成されている。これにより前記オイル案内通路19a′により前記差動機構6の上方に案内されたオイルを前記オイル導入通溝19bに導入するオイル導入路19cが形成されている。
【0046】
ここで前記オイル導入溝19bは、図5に示すように、前記オイルシール16a側ほど軸心に近づく傾斜面をなすように形成されている。これにより、前記オイル導入路19cからのオイルが矢印aで示すように、前記傾斜面を伝わって前記オイルシール16a側に流下する。
【0047】
そして前記オイル案内通路19aの開放側の大部分及び前記オイル案内通路19a′の開放側の略全ての部分は、前記リバースシフトアームブラケット21の通路カバー部21eにより覆われている。
【0048】
本実施例変速機では、1速ギヤ13a,2速ギヤ13cはインプット軸12が回転している間は常時回転しており、1速,2速にシフトするとそれぞれ1速ギヤ13a,2速ギヤ13cの回転がアウトプット軸13に伝達され、差動機構6を介して駆動輪9が駆動される。
【0049】
低速走行時には、主として、1速ギヤ13a,リバースギヤ13b及び2速ギヤ13cの回転に伴って掻き揚げられたオイルの一部が、第1,第2開口30m,30nを通って第1貯留部Aに貯留され、その一部は供給路C,Dからインプット軸12のオイル通路内に供給され、ここから各軸受部,摺動部に供給され、これらの部分を潤滑する。
【0050】
一方、高速走行時には、主として、差動機構6のリングギヤ6aの回転に伴って掻き揚げられたオイルは、オイル案内通路19aを通り、その一部は案内リブ20bの上端部20eに当たって、あるいは当たる前にオイル案内通路19a′に滴下し、ここからオイル導入路19cを通ってオイル導入溝19bに導入され、オイルシール16a,軸受15aに供給される。
【0051】
このように、本実施例では、前記リングギヤ6aによって掻き揚げられたオイルを、オイル案内通路19a,19a′,オイル導入路19c,オイル導入溝19bを介してオイルシール16a,軸受15aに積極的に導くように構成したので、オイルを単に差動機構上方に案内するだけの場合に比較して、特に潤滑の必要なオイルシール16a,軸受15a部分にオイルを効率よく供給できる。従って、オイルの撹拌抵抗を低減するために油面を下げた場合にも、オイルシール16a及び軸受15a部分を十分に潤滑でき、燃費向上を図ることができる。
【0052】
また、案内リブ20bの上端部20eをオイル案内通路19a内に突出するように設ける構成としたので、この上端部20eの突出量をチューニングすることにより、前記掻き揚げられたオイルのうちの所望量をオイルシール16a,軸受15a側に導くことができる。
【0053】
また前記オイル導入溝19bを、オイルシール16a側ほど軸心に近づく傾斜面により構成したので、前記オイル導入路19cからのオイルをオイルシール16a側に効率よく流下させることができる。
【0054】
さらにまた、前記オイル案内通路19a,19a′を、変速装置ケース5の内壁面に案内リブ20a,20bを立設することにより構成し、該オイル案内通路19a,19a′の開放側を通路カバー部21eで覆ったので、前記掻き揚げられたオイルが前記オイル案内通路19a,19a′から洩れるのを抑制でき、前記オイルをより一層効率良く前記オイルシール16a,軸受15aに供給できる。
【0055】
また前記通路カバー部21eを、既存のリバースシフトアームブラケット21に、延長形成したので、部品点数を増加することなく、前記オイル案内通路19a,19a′の開放側を覆うことができる。
【符号の説明】
【0056】
3 変速装置
4 変速機構
5 変速装置ケース
6 差動機構
6a リングギヤ
7 オイル供給機構
8 駆動軸
9 駆動輪
16a オイルシール
19a′オイル案内通路
19b オイル導入溝(オイル導入口)
19c オイル導入路
20a,20b 案内リブ(リブ)
21 リバースシフトアームブラケット
21e 通路カバー部(カバー部)
25a リバースシフトアーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン回転を所定の変速段に変速して出力する変速機構と、該変速機構の出力回転を、駆動軸を介して駆動輪に伝達する差動機構と、前記変速機構及び差動機構を収容する変速装置ケースとを備えた変速装置において、前記差動機構のリングギヤの回転により掻き上げられたオイルを差動機構上方に案内するオイル案内通路を、前記変速装置ケースに形成したオイル供給機構であって、
前記変速装置ケースの内壁の、前記差動機構を覆う部分でかつ前記駆動軸より上方部分に、オイルを前記駆動軸のオイルシールに向けて導入するオイル導入口を形成し、
前記オイル案内通路により差動機構上方に案内されたオイルを前記オイル導入口に導くオイル導入路を形成した
ことを特徴とする変速装置のオイル供給機構。
【請求項2】
請求項1に記載の変速装置のオイル供給機構において、
前記変速機構は、リバースシフトアームを保持するリバースシフトアームブラケットを有し、
前記オイル案内通路は、前記変速装置ケースの差動機構上方部分に溝状をなすようにリブを立設することにより構成されており、前記リバースシフトアームブラケットに、前記前記オイル案内通路の開放側を覆うようにカバー部を延長形成した
ことを特徴とする変速装置のオイル供給機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−113352(P2013−113352A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258760(P2011−258760)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】