説明

変電システムおよびその変電システムを設置した変電所または開閉所

【課題】、電力機器から発生する排熱を利用しながら炭酸ガスを固定化することが可能な変電システムを提供する。
【解決手段】変電システムは変電機器5と、排熱回収部2と、葉緑体保有生物培養部3と、炭酸ガス供給部4とを有する。排熱回収部2には、変電機器51に取付けられた熱交換器52と、この熱交換器52に循環ポンプ23を介して接続された熱供給装置24が設けられる。また、葉緑体保有生物培養部3には、生物培養槽31と生物回収装置32が設けられる。さらに、この葉緑体保有生物培養部3に、熱供給装置2から熱が、炭酸ガス供給部4から炭酸ガスが、それぞれ供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力機器から発生する排熱を利用しながら炭酸ガスを固定化することが可能な変電システムに関する。
【0002】
電力流通に使用されている変電機器は使用に伴って常に熱が発生している。そのため、変電機器を支障なく運用するためには、この熱を外部に排出して機器内部を許容温度以下に保つことが必要である。特に変圧器は、内部温度が許容温度以下に保たれるように発生した熱を絶縁油や絶縁ガスなどの冷媒を介して大気中に排熱している場合が一般的である。
【0003】
しかしながら、熱を大気中に排熱すると、この排熱分は電力エネルギーの損出となるのに加え、最近問題となっている地球温暖化の一要因ともなり得ることから、この排熱を回収して有効利用することが望まれている。
【0004】
また、地球温暖化の一要因として炭酸ガスの大気中での濃度増加が推測されていることは周知であり、例えば火力発電所で発生する炭酸ガスの排出量削減策として、炭酸ガスを地中や海底に貯留する方法や、植物プランクトンの光合成により炭酸ガスを有機物に変えて固定化する方法などが考案されている。
【0005】
さらに、最近の電力機器は技術的な進歩によって小型化による設置面積の縮小が進められており、この電力機器の小型化に伴い空いた敷地を利用できるような施策があれば非常に有効である。
【0006】
すなわち、変電機器および、その変電機器を設けた変電所または開閉所に関しては、以下の3項目を満たすものが望まれている。
(1)電力機器で発生した排熱を回収して有効利用できること。
(2)炭酸ガスの大気中への排出量削減に寄与できること。
(3)電力機器の技術的な進歩に伴う小型化により空いた敷地を、有効利用できること。
【0007】
このため、変電機器および、その変電機器を設けた変電所または開閉所に関して様々な提案がなされている。一例として、変圧器の排熱を利用して温水を供給し、給湯や暖房用として有効に利用する方法がある(例えば、特許文献1参照)。この例では、給湯や暖房用として消費されるはずであったエネルギーを削減することにより、炭酸ガスの大気中への排出量削減にも寄与できている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−134519公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1をはじめとする従来技術では、電力機器の排熱利用に非常に有効であるが、さらに下記のような技術的課題が残されている。
(1)電力機器の排熱を給湯や暖房用として利用する場合、温水の供給先が電力機器の近隣にある必要があり、都市部や住宅地に設置された電力機器に限られる。特に基幹系統の電力機器は山間部等に設置される場合があるが、このような山間部等の電力機器には適用しにくい。
(2)上述例は炭酸ガスの排出量削減に一定の寄与をしているが、例えば火力発電所等で発生した炭酸ガスを固定化することは困難である。
【0010】
本発明の実施形態では、変電機器から発生する排熱を利用しながら炭酸ガスを固定化することが可能な変電システムおよび、その変電システムを設けた変電所または開閉所を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態における炭酸ガス固定化変電システムの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態である炭酸ガス固定化が可能な変電システムについて、図を参照して具体的に説明する。
【0013】
(実施形態)
(実施形態の構成)
図1は本実施形態による排熱を利用しながら炭酸ガスを固定化することが可能な炭酸ガス固定化が可能な変電システムの構成を示す概略図である。
【0014】
図1において、変電システム1は基幹系統の電力機器5を含んだ変電所または開閉所に設置される。変電システム1が設置される変電所や閉開所の場所は、一定の敷地面積があれば、都市部や住宅地に限らず基幹系統の変電所や閉開所が設置される山間部であってもよい。
【0015】
この変電システム1は、電力機器5と、排熱回収部2と、葉緑体保有生物培養部3と、炭酸ガス供給部4とから構成されている。
【0016】
電力機器5は機器本体51及び放熱装置52から構成される。機器本体51は、基幹系統の変電所に設置される変圧器や変換器や開閉所の開閉装置である。この機器本体51は、使用時に熱が発生する機器や、内部を許容温度以下に保つことが必要である機器であって良い。また、変電所や閉開所などに設置される変圧器だけでなく、大型ビルの変電室に設置される変圧器や変換器にも適応できる。さらに、機器本体51は、内部の絶縁媒体として絶縁ガスを利用しているものでも良い。この絶縁ガスとしては、特に炭酸ガス(CO)を使用することが好適である。
【0017】
放熱装置52は、機器本体51と接続され機器本体51から発せられる熱を排出するものである。この放熱装置52は、機器本体51に最初から備え付けられた放熱装置でも、機器本体51に対して取り付け可能なものでも良い。例えば、機器本体51を冷却媒体を封入したハウジング(図示せず)に収納し、このハウジングにハウジング内部の冷却媒体が循環する放熱装置52を取り付ける構成としても良い。冷媒はCFC−12やCFC−11などの通常の冷媒が使用できる。
【0018】
排熱回収部2は、電力機器5で発生した熱を葉緑体保有生物培養部3に伝達するものである。この排熱回収部2は、熱交換器21、配管22、循環ポンプ23、熱供給装置24から構成されている。熱交換機21は、放熱装置52の熱が伝達されるように放熱装置52と接続される。この熱交換機21の内部には、冷却媒介を循環させる配管22が導通し、熱交換器21の熱を配管22の内部の冷却媒介を加熱する。この熱交換機21は、電力機器5の放熱装置52の外部に簡易に取り付け可能である。例えば、熱交換器21と放熱装置52とをボルトなどで固定することで簡易な取り付けを可能とすることができる。
【0019】
循環ポンプ23は、配管22を介して連通されている熱交換器21と熱供給装置24の間で冷却媒介を循環(図中矢印A)させるものである。すなわち、熱交換器21で加熱された冷却媒体を熱供給装置24へ循環させることにより熱供給装置24を加熱させる。
【0020】
葉緑体保有生物培養部3は、生物培養槽31及び生物回収装置32とを有する。生物培養槽31は、熱交換器21と接続され、冷却媒体により加熱された熱交換器21の熱により、生物培養槽31の温度を調節することができる培養槽である。この生物培養槽31では、細胞内に葉緑体を保持して光合成により炭酸ガスを固定化する能力を備えている葉緑体保有生物33を培養する。例えば、最近炭酸ガス固定化能力の高さで注目されているユーグレナ等のプランクトンや、クロレラ等の緑藻類などを利用することが可能である。また、培養槽31を設置する敷地しては、電力機器の小型化に伴い空いたスペースを利用することができる。
【0021】
生物回収装置32は、培養された葉緑体保有生物33を回収する回収装置である。この生物回収装置32で回収された葉緑体保有生物33は、バイオエネルギーや飼料、食用等に活用することができる。
【0022】
炭酸ガス供給部4は、炭酸ガス貯蔵庫41及び混合調整器42とを有する。炭酸ガス貯蔵庫41は、炭酸ガス(CO)を貯蔵する貯蔵庫である。ここで、炭酸ガス供給部4から供給される炭酸ガスは、例えば火力発電所で発生した炭酸ガスの一部や、機器本体51内部の絶縁ガスの一部を利用してもよい。
【0023】
この炭酸ガス貯蔵庫41は、混合調整器42と連結される。混合調整器42は、培養液に対して炭酸ガス(CO)を適切な濃度で溶解または気泡として含ませる調整器である。
この混合調整器42で炭酸ガス(CO)を含ませた培養液を培養槽31に供給する。
【0024】
(実施形態の作用)
このように構成された本実施の形態における、変電システム1の作用を説明する。
【0025】
まず変電システム1全体の作用は、電力機器5からの排熱は、放熱装置52から排熱回収部2の熱供給装置24を介して葉緑体保有生物培養部3に供給される。また、炭酸ガス供給部4からは炭酸ガスが葉緑体保有生物培養部3に供給される。この排熱と炭酸ガスとが、培養槽31内の葉緑体保有生物33の培養に有効利用される。葉緑体保有生物33は、光合成によって炭酸ガスを固定化する。
【0026】
排熱回収部2は、循環ポンプ23によって配管22内部の冷媒が適切な流量に制御されて循環する。この冷媒の循環により、変圧器51の排熱を放熱装置52から熱供給装置24へと供給し、培養槽31内部を加温する。また葉緑体保有生物33の種類に併せて、混合調整器42からは、炭酸ガスを適切な濃度で溶解または気泡として含む培養液が、生物培養槽31に供給される。
【0027】
葉緑体保有生物培養部3の生物回収装置32は、培養された葉緑体保有生物33を回収する。回収された葉緑体保有生物33は、バイオエネルギーや飼料、食用等に活用することができる。なお、「食用等として葉緑体保有生物33を消費すると結局は炭酸ガスが排出されてしまう」という誤論に対しては、食糧等の生産に必要とされるエネルギー消費分を考慮することで、本実施形態の効果を主張することができる。
【0028】
また、培養槽31を設置するには十分な面積の敷地が必要であるが、本実施形態においては電力機器の技術的な進歩に伴う小型化により空いた隣接の敷地を、有効に利用することができる。
【0029】
(実施形態の効果)
本実施形態によれば、電力機器で発生した熱を回収して有効利用することが可能な変電システムを設けた変電所または閉開所を提供することができる。しかも、市街地以外に電力機器が設置されている場合には、電力機器の熱を利用する場所が近いため、適応性が高くなる。
【0030】
本実施の形態においては、以下の3項目を満たすことにより、電力機器から発生する排熱を利用しながら炭酸ガスを固定化することが可能な変電システム、および、その変電システムを設けた変電所または開閉所を提供することが可能である。
(1)電力機器で発生した排熱を回収して有効利用することが可能で、しかも市街地以外に電力機器が設置されている場合でも適用性が高い。
(2)排熱の利用による炭酸ガス排出量削減に加え、例えば火力発電所等で発生する炭酸ガスを固定化することにより大気中への炭酸ガス排出量を削減できる。
(3)さらに、電力機器の技術的な進歩に伴う小型化により空いた敷地を、有効利用できる。
【0031】
(その他の実施形態)
本実施形態は、システム内の各要素の配置や要素間の接続構造は様々な応用例が考えられ、その配置や接続構造について特に限定するものではない。
【0032】
以上のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0033】
1‥変電システム
2‥排熱回収部
21‥熱交換器
22‥配管
23‥循環ポンプ
24‥熱供給装置
3‥葉緑体保有生物培養部
31‥生物培養槽
32‥生物回収装置
33‥葉緑体保有生物
4‥炭酸ガス供給部
41‥炭酸ガス貯蔵庫
42‥混合調整器
5‥電力機器
51‥機器本体
52‥放熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力機器と、排熱回収部と、葉緑体保有生物培養部と、炭酸ガス供給部とを備え、
前記排熱回収部には、前記電力機器に取付けられた熱交換器と、この熱交換器に循環ポンプを介して接続された熱供給装置が設けられ、
前記葉緑体保有生物培養部には、生物培養槽と生物回収装置が設けられ、
この葉緑体保有生物培養部に、前記熱供給装置から熱が、前記炭酸ガス供給部から炭酸ガスが、それぞれ供給されるように構成したことを特徴とする変電システム。
【請求項2】
電力機器と、排熱回収部と、葉緑体保有生物培養部と、を備え、
前記排熱回収部には、前記電力機器に取付けられた熱交換器と、この熱交換器に循環ポンプを介して接続された熱供給装置が設けられ、
前記葉緑体保有生物培養部には、生物培養槽と生物回収装置が設けられ、
この葉緑体保有生物培養部に、前記熱供給装置から熱が供給されるように構成したことを特徴とする変電システム。
【請求項3】
前記電力機器が、炭酸ガスを絶縁媒体として用いた、炭酸ガス絶縁電力機器であることを特徴とする請求項1に記載の変電システム。
【請求項4】
前記熱交換器が、既存の電力機器に対して取付け可能な構成であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の変電システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項の変電システムを設置したことを特徴とする変電所または開閉所。


【図1】
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【公開番号】特開2013−4757(P2013−4757A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134717(P2011−134717)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】