説明

外乱を検出する装置

【課題】装置に備えたハードディスクドライブとの共振に起因して装置を構成する各種駆動手段の制御に異常を生じさせる外乱を事前に検知できるようにする。
【解決手段】各種駆動手段と各種駆動手段を制御する制御手段2と少なくともメモリ41とハードディスクドライブ42とを備え制御手段との間で情報のやりとりを行うパーソナルコンピュータ4とパーソナルコンピュータ4に連結したモニタ5とから少なくとも構成された装置において、制御手段2とパーソナルコンピュータ4との間での情報のやりとりを遮断する遮断手段6と、パーソナルコンピュータ4に備えたハードディスクドライブ42とメモリ41との間において一定量の情報を交信させる交信指示手段43とから構成された外乱検出システムを備え、ハードディスクドライブ42とメモリ41との間において交信される情報量がモニタに表示され、交信される情報の量の減少によって外乱を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音や振動などの外乱を検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体装置等の製造に使用される各種加工装置は、被加工物を保持する保持部を駆動する手段、被加工物を加工する加工部を駆動する手段、被加工物を搬送する手段等の各種駆動手段を備えているとともに、これら各駆動手段を制御する制御手段と、制御手段との間で情報のやりとりを行うパーソナルコンピュータとを備えている。そして、装置の動作に必要な情報をパーソナルコンピュータから制御手段に送ったり、パーソナルコンピュータが装置の状態等を示すログデータを制御手段から受け取ったりする処理が行われている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−326458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、各種装置が設置される工場においては、他の装置や設備をはじめとする周囲の環境が発する振動や音からなる外乱によって、装置を構成する各種手段の制御に異常が生じるという問題が発生している。
【0005】
本発明者は、パーソナルコンピュータに備えたハードディスクドライブの固有振動数と外乱の周波数とが近接しているために共振が発生すると、ハードディスクドライブにおいてディスクへの読み書きを行うヘッド部が適正に動作しなくなってヘッド部がディスクの所望の位置に位置づけされなくなり、ディスクからの情報の読み取りができなくなる結果、各種手段の制御に異常が生じることを見いだした。
【0006】
ところが、ハードディスクドライブの固有振動数は、メーカーが社外秘としているため、調べる術がない。自身で調べるには、ハードディスクドライブに対して連続的に広い範囲の周波数帯の音を当てて共振周波数をつきとめるしかなく、また、外乱となる可能性のある対象の周波数を調べる必要もあり、大変な労力を要する。
【0007】
本発明は、このような問題にかんがみなされたもので、共振に起因して装置を構成する各種駆動手段の制御に異常を生じさせる外乱を事前に検知できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、各種駆動手段と、各種駆動手段を制御する制御手段と、少なくともメモリとハードディスクドライブとを備え該制御手段との間で情報のやりとりを行うパーソナルコンピュータと、パーソナルコンピュータに連結したモニタとから少なくとも構成された装置であって、制御手段とパーソナルコンピュータとの間での情報のやりとりを遮断する遮断手段と、パーソナルコンピュータに備えたハードディスクドライブとメモリとの間において一定量の情報を交信させる交信指示手段と、から構成された外乱検出システムを備え、ハードディスクドライブとメモリとの間において交信される情報量がモニタに表示され、交信される情報の量の減少によって外乱を検出する。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、ハードディスクドライブとメモリとの間で一定量の情報を交信させておくことで、外乱発生時に情報の交信量が減少するため、外乱を検出することができる。したがって、各種駆動手段の制御に異常を生じさせる外乱を、異常を生じさせる前に検知することができる。また、ハードディスクドライブの固有振動数や、外乱となる可能性のある対象の周波数を調べる必要がないため、効率的である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】外乱を検出する装置の一例を示す構成図である。
【図2】外乱検出のための検査の結果がモニタに表示された例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示す装置1は、当該装置に必要な機能を実現するための各種駆動手段である第1手段11、第2手段12、第3手段13、・・・、第n手段1nを備えており、これら各駆動手段は、制御手段2によって制御される構成となっている。各駆動手段には、モータを回転させるドライバ、各種の値を監視するセンサ等を備えている。
【0012】
制御手段2は、スイッチ部3を介して装置1に搭載されたパーソナルコンピュータ(PC)4と接続されている。PC4にはモニタ5が接続されている。制御手段2とPC4とが電気的に接続された状態では、制御手段2がPC4から情報の提供を受けて各駆動手段を制御したり、また、PC4が制御手段2から各駆動手段の状態等に関するログ情報の提供を受けて制御を行ったりモニタ5に表示させたりすることができる。スイッチ部3は、トランジスタのオン/オフなどによって電気的に接続を制御することができ、遮断手段6からの指令によって接続状態と非接続状態とを切り替え、情報のやりとりを遮断することができる。PC4は、モニタ5の表示処理、ログ管理、制御手段2に対する指令、外部のオプション機器との通信等を行う。
【0013】
PC4の内部には、少なくともCPU40、メモリ41及びハードディスクドライブ(HDD)42を備えている。HDD42は、データが記録されたディスク420と、ディスク420に対する情報の書き込み及びディスク420からの情報の読み出しを行うヘッド部421とを備えている。CPU40、メモリ41及びヘッド部421は、内部バスによって相互に接続され、データ転送可能となっている。
【0014】
PC4には、メモリ41とHDD42との間で一定量の情報を交信させる交信指示手段43を備えている。メモリ41とHDD42との間では、通常は何らかの情報のやりとりが常時行われているが、交信指示手段43は、かかる通常の情報のやりとりを停止させ、通常の情報とは別に、強制的に一定量の情報のみをメモリ41からHDD42に、またはHDD42からメモリ41に転送する。交信指示手段43による制御の下でメモリ41とHDD42との間でデータ転送が行われている間は、CPU40がデータ転送量を監視し、モニタ5に表示させることができる。交信指示手段43は、例えばPC4に備えたキーボードやマウス等の入力手段の操作によって起動することができる。
【0015】
例えば、装置1の工場への導入時や、装置1の据付環境に変化があった時には、装置1を正常に動作させるために、外乱の発生の確認及び発生箇所の特定を行うことにより、装置1にトラブルが生じるのを未然に防止する。具体的には、PC4のHDD42が正常に機能しているかどうかを検査する。
【0016】
(1)機能停止ステップ
PC4の通常の稼働中は、常にHDD42に対するアクセスが行われるため、例えば、最初に、装置1を構成するPC4をスリープモードにするとともに、装置1の各駆動手段をすべて停止させ、PC4のみに電源を供給する。
【0017】
(2)書き込みステップ
交信指示手段43を起動し、メモリ41とHDD42のディスク420との間での情報の交信を開始する。情報は、一方から他方へ転送する片方向の通信のみでもよいし、双方向の通信でもよい。この交信指示手段43は、CPU40において擬似書き込みプログラムを実行することにより、メモリ41とHDD42との間での単位時間当たりのデータ転送量を一定とする。なお、交信指示手段43を起動する前に、遮断手段6を作動させ、スイッチ部3をオフ、すなわち制御手段2とPC4とが電気的に接続されていない状態としておく。
【0018】
(3)モニタ開始ステップ
メモリ41とHDD42との間でのデータ転送量を監視するためのモニタリングプログラムをCPU40において実行する。例えばPC4のオペレーティングシステムがWindows(登録商標)である場合は、Windows(登録商標)に標準装備しているパフォーマンスモニタという機能を起動することにより、データ転送量を確認できる状態とする。
【0019】
(4)外乱発生ステップ
次に、装置1が設置された工場等の他の装置や設備を稼働させることにより、実際に外乱を発生させる。外乱としては、周りの装置や設備におけるバルブの開閉音やブザー等、音や振動等を発生させるものがあり、これらを1つずつ発生させる。
【0020】
(5)確認ステップ
メモリ41とHDD42との間のデータ転送量は、図2に示すように、横軸を時間、縦軸を転送情報量とするグラフによってCPU40において解析され、モニタ5に表示される。交信指示手段43による指示によってデータ量が一定に保たれているため、外乱とHDD42との共振がなければ、グラフは横軸と平行に延びた状態となる。
【0021】
一方、外乱とHDD42とが共振すると、図2のグラフの中央部に示すように、転送情報量が低下する。したがって、そのときに生じている外乱は、HDD42のディスク420またはヘッド部421と共振し、HDD42の動作に悪影響を与える外乱であると判断することができる。なお、すべての外乱についてテストし、転送情報量に変化が生じなかった場合は、その環境下では共振が生じず、問題なくPC4を含む装置1が正常に稼働すると判断することができる。
【0022】
このようにしてヘッド部421の動作に悪影響を与える外乱が検出された時は、遮断手段6によって制御手段2とPC4とが電気的に遮断された状態となっているため、HDD42の異常が各種駆動手段に影響を与えることはなく、各種駆動手段に異常が生じるのを回避することができる。また、装置1が設置された工場の他の装置や設備を全部稼働させて外乱の影響を検査し、外乱の影響があった場合に、音や振動等を1つずつ発生させて検査するようにしてもよい。
【0023】
以上のように、遮断手段6と交信指示手段43とが外乱検出システムとして機能し、HDD42との間で共振を生じさせる外乱が何であるかが確認されるため、装置1の運転中にその外乱が生じないようにすれば、外乱に起因する異常が装置1に生じることはない。
【符号の説明】
【0024】
1:装置
11,12,13,・・・,1n:各種駆動手段
2:制御手段 3:スイッチ部
4:パーソナルコンピュータ(PC)
40:CPU 41:メモリ
42:ハードディスクドライブ(HDD) 420:ディスク 421:ヘッド部
43:交信指示手段
5:モニタ 6:遮断手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種駆動手段と、該各種駆動手段を制御する制御手段と、少なくともメモリとハードディスクドライブとを備え該制御手段との間で情報のやりとりを行うパーソナルコンピュータと、該パーソナルコンピュータに連結したモニタとから少なくとも構成された装置であって、
該制御手段と該パーソナルコンピュータとの間での情報のやりとりを遮断する遮断手段と、該パーソナルコンピュータに備えたハードディスクドライブとメモリとの間において一定量の情報を交信させる交信指示手段と、から構成された外乱検出システムを備え、
該ハードディスクドライブと該メモリとの間において交信される情報量が該モニタに表示され、交信される情報の量の低下によって外乱を検出する装置。

【図1】
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【図2】
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