説明

外側継手部材の測定装置および測定方法

【課題】軸方向位置が相違する部位での内部寸法測定を安定して正確に行うことができ、しかも、作業性に優れる外側継手部材の測定装置および測定方法を提供する。
【解決手段】測定すべき外側継手部材の軸線を鉛直軸線に合わせた状態でそのカップ部2の開口部が上方を向くように支持する。カップ部2に、位置決め用治具11を挿入して、カップ部2の内部底面2aから測定すべき位置までの高さ位置を決定する。位置決め用治具11にて決定した高さ位置でのカップ部2の内部寸法を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、等速自在継手における外側継手部材の測定装置および測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
等速自在継手は、自動車や各種産業機械の動力伝達機構に組み込んで用いられるもので、互いの交差角度が変化可能に設けられた駆動側および従動側の二軸を備え、駆動側からの回転トルクを従動側へ等速で伝達できるように連結するものである。この等速自在継手 は、角度変位のみを許容する固定型等速自在継手と、角度変位および軸方向変位を許容する摺動型等速自在継手とに大別され、用途に応じて適宜使い分けられている。
【0003】
例えば、固定型等速自在継手としては、バーフィールド型(BJ)やアンダーカットフリー型(UJ)が知られている。これらの固定型等速自在継手は、軸方向に延びる複数の案内溝を球面状の内径面に形成した外側継手部材と、外側継手部材の案内溝と対をなして軸方向に延びる複数の案内溝を球面状の外径面に形成した内側継手部材と、外側継手部材および内側継手部材の両案内溝が協働して形成するボールトラックに配された複数のトルク伝達ボールと、外側継手部材と内側継手部材との間に配設され、トルク伝達ボールを保持するケージとを備える。
【0004】
摺動型等速自在継手としては、ダブルオフセット型(DOJ)やトリポード型(TJ)が知られている。ダブルオフセット型の摺動型等速自在継手は、軸方向に延びる複数のトラック溝が円筒状内周面に形成された外方部材と、外方部材のトラック溝と対をなして軸方向に延びるトラック溝が球面状外周面に形成された内方部材と、外方部材のトラック溝と内方部材のトラック溝との間に介在してトルクを伝達する複数のボールと、外方部材の円筒状内周面と内方部材の球面状外周面との間に介在してボールを保持するケージとを主要な構成要素として備えている。
【0005】
トリポード型の等速自在継手は、内周面に三本のトラック溝が軸方向に形成され、各トラック溝の両側にそれぞれ軸方向のローラ案内面を有する外側継手部材(外輪)と、半径方向に突出した三本の脚軸を有する内側継手部材(トリポード部材)と、その内側継手部材の脚軸と外側継手部材のローラ案内面との間に回転自在に収容された転動体(ローラ)とを主要な部材として構成される。
【0006】
また、外側継手部材である外輪は、一般的に、トラック溝が形成されるカップ部を備える。このため、等速自在継手の外輪(外側継手部材)のカップ部の外形形状は丸形や花形等多種多様であり、カップ部内部についても形状およびカップ部深さ等が品番毎に異なっている。また、カップ部内部の断面形状は軸方向に沿って一様でない場合があり、内径寸法も種々変化している。したがって、カップ部において、軸方向位置が相違する位置での内部寸法や形状を確認する必要があった。
【0007】
そして、このような外輪の内部寸法を測定する方法としては、シリンダケージを用いる場合がある。しかしながら、シリンダゲージを用いる場合、従来では、一般的に手作業であるため、端子(接触端子)が接触部位に対して斜めになる等正確な位置決めが困難等であり、精度良く測定できない場合が多い。また、ゴシックアーチ形状の溝間寸法を測定する場合、シリンダゲージでは対応することができなかった。
【0008】
また、測定器として、三次元測定器を使用することも可能である。三次元測定器を使用すれば、測定精度が向上するが、測定時間が大幅に掛かることになる。このため、測定結果が出るまでは生産ラインを停止させる必要があり、生産性に劣ることになる。
【0009】
さらに、従来において、等速自在継手の外輪のカップ部の内部測定装置が開示されている(特許文献1、特許文献2、及び特許文献3)。
【0010】
特許文献1に記載の測定装置は、端部に測定子を設けた2本のアームと、アームを駆動して測定子を相互に接近離間するように揺動させる駆動手段と、両アームの間隔を検出する検出手段とを備えたものである。この場合、外輪を、そのカップ部の開口部が下方を向くように配置した状態で、テーブル上に載置し、カップ部の底部から突設した軸部を割り出し手段で把持している。割り出し手段はクランプ部を備え、このクランプ部にて外輪の軸部を把持しているものである。この際、軸部の端面に設けた凹部にセンタを係合させていた。
【0011】
特許文献2及び特許文献3に記載の測定装置も、前記特許文献1に記載の装置と同様、端部に測定子を設けた2本のアームと、アームを駆動して測定子を相互に接近離間するように揺動させる駆動手段と、両アームの間隔を検出する検出手段とを備えたものである。この場合、外輪を、そのカップ部の開口部が上方を向くように配置した状態で、基台に設けられたワークリフト機構によって支持している。
【特許文献1】特開平9−210605号公報
【特許文献2】特開昭60−27801号公報
【特許文献3】特開昭60−27803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、各特許文献に記載の測定装置では、軸方向に相違する位置での内部寸法を計測するには、シリンダ機構を駆動させる必要があり、装置全体が大掛かりとなるとともに、正確な位置合わせが行えず、しかも位置合わせ時間も大となっていた。
【0013】
また、特許文献1では、軸部の端面に設けた凹部にセンタを係合させるとともに、外輪の軸部を把持するもので、限られた形状及び寸法のものしか対応することができなかった。また、特許文献2及び特許文献3に記載の装置では、カップ部の開口部が上方を向くように配置した状態でカップ状のワーク受けで外輪を受けている。この場合、ワーク受け内に外輪の軸部を嵌入するものである。このため、この特許文献2及び特許文献3に記載の装置であっても、限られた形状及び寸法のものしか対応することができなかった。
【0014】
本発明は、上記課題に鑑みて、軸方向位置が相違する部位での内部寸法測定を安定して正確に行うことができ、しかも、作業性に優れる外側継手部材の測定装置および測定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の外側継手部材の測定装置は、外側継手部材のカップ部の内部寸法を測定する外側継手部材の測定装置であって、測定すべき外側継手部材の軸線を鉛直軸線に合わせた状態でそのカップ部の開口部が上方を向くように支持する支持台と、カップ部の内部底面から測定すべき位置までの高さ位置を決定する位置決め用治具と、前記位置決め用治具にて決定した高さ位置でのカップ部の内部寸法を測定する測定治具とを備えるものである。
【0016】
本発明の外側継手部材の測定装置によれば、支持台にて、測定すべき外側継手部材をそのカップ部の開口部が上方を向く状態で支持できる。この状態では、測定すべき外側継手部材は、その軸線が鉛直軸線に合っている。位置決め用治具にて、カップ部の内部底面から測定すべき位置までの高さを決定することができる。そして、この決定した高さ位置でのカップ部の内部寸法を、測定治具で測定することができる。
【0017】
前記測定治具は、下端にそれぞれ測定端子を有する一対の測定バーと、一方の測定バーに連設されるダイアルゲージとを備え、測定バーの測定端子をそれぞれ対面する測定面に接触させて前記ダイアルゲージにてカップ部の内部寸法を測定するようにできる。
【0018】
このような測定治具では、一対の測定バーの測定端子をそれぞれ対面する測定面に接触させ、この状態でダイアルゲージにてカップ部の内部寸法を測定することができる。
【0019】
前記測定端子は測定バーに対して着脱自在とされ、測定端子は少なくともゴシックアーチ形状に対応して接触するゴシックアーチ対応端子を備え、測定面がゴシックアーチ形状の外側継手部材のときに、このゴシックアーチ対応端子を取付けるようにしてもよい。測定端子はねじ止めにて測定バーに着脱自在に取付られるようにするのが好ましい。
【0020】
カップ部の内部底面から測定すべき位置を変更するスペーサを備えたものであってもよい。スペーサを用いれば、測定すべき位置を変更でき、種々の高さ位置での内部寸法を測定することができる。
【0021】
前記位置決め用治具を複数種類備え、測定すべき位置に対応する位置決め用治具を選択して測定することができる。長さ寸法が相違する複数の測定バーを備え、複数位置でカップ部の内部寸法を測定することができる。
【0022】
周方向に沿って120度ピッチずれた3箇所において配設される支持部にて外周側から測定すべき外側継手部材を支持するとともに、2箇所においてその支持部の径方向への位置調整が可能であり、残りの1箇所において支持部が弾性的に外側継手部材の外径面を押圧するものであってもよい。
【0023】
また、外側継手部材の外周側に180°反対方向に配設された支持部にて外側継手部材が支持され、一方の支持部の径方向への位置調整が可能であり、他の支持部が弾性的に外側継手部材の外径面を押圧するものであってもよい。
【0024】
また、外側継手部材の外周側に180°反対方向に配設された支持部にて外側継手部材が支持され、一方の支持部が固定され、他の支持部が弾性的に外側継手部材の外径面を押圧するものであってもよい。
【0025】
前記支持部が外側継手部材側に凸状となる球面にて構成してもよい。
【0026】
本発明の外側継手部材の測定方法は、外側継手部材のカップ部の内部寸法を測定する外側継手部材の測定方法であって、測定すべき外側継手部材の軸線を鉛直軸線に合わせた状態でそのカップ部の開口部が上方を向くように支持した後、カップ部に、位置決め用治具を挿入して、カップ部の内部底面から測定すべき位置までの高さを決定し、その後、前記位置決め用治具にて決定した高さ位置でのカップ部の内部寸法を測定するものである。
【0027】
本発明の外側継手部材の測定方法では、測定すべき外側継手部材をそのカップ部の開口部が上方を向く状態で支持でき、この状態で、位置決め用治具にて、カップ部の内部底面から測定すべき位置までの高さ位置を決定することができる。そして、この決定した高さ位置でのカップ部の内部寸法を、測定治具で測定することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、位置決め用治具にて決定した高さ位置でのカップ部の内部寸法を、測定治具で測定することができる。このため、カップ部の内部底面から測定すべき高さ位置での内部寸法を安定して測定できる。
【0029】
一対の測定バーの測定端子をそれぞれ対面する測定面に接触させ、この状態でダイアルゲージにてカップ部の内部寸法を測定することができ、その測定が安定する。
【0030】
測定端子をゴシックアーチ対応端子とすることによって、測定面がゴシックアーチ形状であっても安定して測定することができる。
【0031】
測定端子がねじ止めにて測定バーに着脱自在に取付られるものでは、測定端子の交換が可能となるとともに、交換作業も容易に行うことができる。スペーサを用いれば、測定すべき位置を変更でき、種々の高さ位置での内部寸法を測定することができる。
【0032】
前記位置決め用治具を複数種類備えたものであっても、長さ寸法が相違する複数の測定バーを備えたものであっても、複数位置でカップ部の内部寸法を測定することができ、一つの外側継手部材(外輪)に対して高精度の製品検査を行うことができる。
【0033】
外側継手部材を周方向に沿って120度ピッチずれた3箇所において支持することができ、その支持状態が安定する。この場合、径方向への位置調整が可能な2つの支持部の径方向位置を、測定すべき外側継手部材に合わせて、これらの支持部にて外側継手部材の外径面を押圧する。この際、他の1つの支持部が弾性的に外側継手部材の外径面を押圧する。これによって、外径寸法が種々の大きさの外側継手部材に対応することができる。
【0034】
180°反対方向に配設された2つの支持部でもって外側継手部材を支持できる。しかも、一方の支持部が位置調整可能なものであれば、この一方の支持部の径方向位置を、測定すべき外側継手部材に合わせて、これらの支持部にて外側継手部材の外径面を押圧することができ、他の1つの支持部が弾性的に外側継手部材の外径面を押圧することができる。また、一方の支持部が固定されたものであれば、一方の支持部に外側継手部材の外径面を接触した状態で、他方の支持部を弾性的に外側継手部材の外径面に押圧することによって、測定すべき外側継手部材を支持できる。
【0035】
前記支持部が外側継手部材側に凸状となる球面にて構成することによって、外径面が円筒面以外の異形のものであっても対応して、外側継手部材を支持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下本発明の実施の形態を図1〜図16に基づいて説明する。図1と図2とは外側継手部材の測定装置を示し、この測定装置は、等速自在継手の外側継手部材1の内部寸法を測定するものである。ここで、外側継手部材1は、カップ部(マウス部)2と、このカップ部2の底壁から突設される軸部4とを備える。なお、この外側継手部材1はトリポード型等速自在継手の外側継手部材を構成する外輪である。このため、内周面に三本のトラック溝5が軸方向に形成され、各トラック溝の両側にそれぞれ軸方向のローラ案内面6,6を有するものである。
【0037】
この測定装置は、測定すべき外側継手部材(外輪)1を支持する支持台10と、外側継手部材1のカップ部2の内部底面2aから測定すべき位置までの高さ位置を決定する位置決め用治具11(図6等参照)と、位置決め用治具11にて決定した高さ位置でのカップ部2の内部寸法を測定する測定治具12とを備える。
【0038】
支持台10は、基台13と、この基台13に付設される受皿14と、基台13に付設されて、外輪1を支持固定する3つの押え機構15(15A、15B、15C)と、基台13の上面に付設される基準板16とを備える。また、基台13は、基盤19と、この基盤19に立設される支柱17とを備える。
【0039】
受皿14は、基台13の支柱17内に配置され、クッション材(コイルスプリング)18に支持され、上下動が可能となっている。すなわち、受皿14は、その上面に外輪受用平坦面20が設けられ、その下面に前記クッション材18の上端部が嵌合する凹部21が設けられている。また、クッション材18は、支柱17の下部側に配置される受け体22にて受けられている。
【0040】
この際、受皿14は支柱17に装着される固定ねじ24,24にて固定され、受け体22も支柱17に装着される固定ねじ25,25にて固定される。すなわち、受皿14を支柱17に対して任意の高さ位置に固定することができる。
【0041】
押え機構15A、15B、15Cは、図2に示すように、周方向に沿って120°ピッチで配置される。この3つの押え機構15A、15B、15Cのうち二つの押え機構15A、15Bが同一構成であり、他の一つが別の構成である。
【0042】
押え機構15A、15Bは、支柱17に固定される枠体30と、この枠体30に螺合するねじ部材31と、このねじ部材31の螺進退によってその軸心方向に沿って往復動する移動ブロック体32とを備える。
【0043】
枠体30は有底四角筒体からなり、その底壁30aにねじ孔33が設けられ、このねじ孔33にねじ部材31のねじ軸31aが螺合している。ねじ部材31は、前記ねじ軸31aと、鍔状の頭部31bとからなる。また、移動ブロック体32は、軸部32aとこの軸部32aの先端に設けられる支持部32bとからなる。支持部32bは、その先端面35が図2に示すように、中央に向かって外径側へ傾斜する第1テーパ面35aと第2テーパ面35bとからなり、いわゆるV字受けを構成している。このため、この支持部32bの先端面35によって、外輪1の外径面(一つのトラック溝5に対応する部位)を押圧することができる。
【0044】
また、押え機構15Cは、支柱17に固定される枠体36と、この枠体36に付設される弾性体37と、この弾性体37の弾性力によってその軸心方向に沿って押圧する移動ブロック体38とを備える。枠体36は有底四角筒体からなり、その内部に、例えばコイルスプリング等からなる弾性体37が収容されている。移動ブロック体38は、前記移動ブロック体32と同様、軸部38aとこの軸部38aの先端に設けられる支持部38bとからなる。支持部38bは、その先端面40が図2に示すように、中央に向かって外径側へ傾斜する第1テーパ面40aと第2テーパ面40bとからなり、いわゆるV字受けを構成している。このため、この支持部38bの先端面40によって、外輪1の外径面(一つのトラック溝5に対応する部位)を押圧することができる。
【0045】
測定治具12は、ダイアルゲージ50と、このダイアルゲージ50を支持する支柱51と、この支柱51が立設される基盤52と、下端に測定端子53が付設される一対の測定バー55,56とを備える。
【0046】
一方の測定バー(第1測定バー)55は、その上下方向中間部が支柱51に設けられた支点部57に揺動可能に枢着され、その上端部58の変位量が前記ダイアルゲージ50のスピンドル50aが接触して測定される。また、第1測定バー55の下端部位が基盤52の孔部52a及び基準板16の孔部16aを介して、支持台10に支持されている外輪1のカップ部2に突入される。他方の測定バー(第2測定バー)56は、前記支柱51から基盤52の孔部52a及び基準板16の孔部16aを介して垂下されて、支持台10に支持されている外輪1のカップ部2に突入される。測定バー55、56の測定端子53、53は、180°相反する方向に配置され、それぞれ外側に向くように設定され、しかも、同一高さ位置とされる。
【0047】
位置決め用治具11は、図5に示すように、軸部11aと、この軸部11aの上端縁に連設される鍔部11bとからなる。軸部11aの下端部(先端部)は先細テーパ部60とされている。この場合、軸部11aの長さ寸法Aは所定長さに設定され、軸部11aの径寸法Bは、測定すべき外輪1に挿入可能なように十分小さく設定される。また、鍔部11bの外径寸法Cは、基準板16の孔部16aの内径寸法Eよりも大きく設定される。このため、図6に示すように、この治具11の軸部11aを基準板16を介してこの支持台10内に挿入すれば、鍔部11bが基準板16の孔部16aの外周縁部に係止する。
【0048】
次に前記のように構成された測定装置を用いた内部寸法測定方法を説明する。まず、図4に示すように、測定治具12のダイアルゲージ50を模範値に合わせる。この場合、測定模範60を備えた模範ガイド61に測定治具12を載置する。そして、測定端子53、53を、所定基準の内径寸法Kに設定されている測定模範60の内径面に接触させる。これによって、この寸法Kをこのダイアルゲージ50の模範値とする。
【0049】
次に、図6に示すように、測定すべき外輪1の軸部4の端面4aを受皿14上に載置する。その後、治具11の軸部11aを、測定すべき外輪1に挿入する。この際、受皿14がクッション材18を介して浮き上がった状態であり、この状態で、治具11を下降させて、その鍔部11bを基準板16に接触させて、固定ねじ24,24を締め付ける。これによって、受皿14を固定する。なお、この状態では、受け体22も固定ねじ25、25によって支柱17に所定高さに維持された状態で固定されている。治具11の軸部11aの長さ寸法Aが所定値に設定されているので、この軸部11aの端面4aと接触状態にある外輪1のカップ部2に内部底面2aの高さ位置が所定の位置に維持される。
【0050】
そして、押え機構15A、15Bのねじ部材31を締め付けることによって、周方向に沿って120°ピッチで配設される3つの支持部32b、32b、38bにて外輪1を支持する状態とする。この際、押え機構15A、15Bのねじ部材31の締め付け量を調整して、外輪1の軸心Lと、支持台10の軸心とを一致させることになり、しかも、他の押え機構15Cの支持部38bは外輪1の外径面を弾性的に押圧する。したがって、この外輪1は、周方向に沿って120°ピッチで配置された支持部32b、32b、38bにて支持される。
【0051】
その後、治具11を支持台10から取り出し、図1に示すように、測定治具12をこの支持台10にセットする。この際、基盤52から測定バー55、56の測定端子53、53までの寸法は一定である。このため、外輪1のカップ部2に内部底面2aから測定端子53、53まで寸法S1を決定できる。すなわち、図3に示すように、内部底面2aから寸法S1だけ離れたラインL1上の内部寸法を測ることができる。
【0052】
この場合、第1測定バー55がその上下方向中間部が支点部57を中心に揺動することができるので、測定端子53、53間の寸法を調整することができ、各測定端子53、53を測定面(トラック溝の対向する案内面6,6)に接触(当接)させることができる。このように当接した状態において、模範値に合わせたダイアルゲージ50のスピンドル50aが、その対向する測定面間寸法に応じて変動し、この測定面間寸法をこのダイアルゲージ50で測定することができる。
【0053】
このラインL1上の内部寸法のみの測定であれば、これで終了するが、図3に示すように、内部底面2aから寸法S2だけ離れたラインL2上の内部寸法を測定したい場合には、図7に示すようなスペーサ65Aを使用する。
【0054】
スペーサ65Aは一対の測定バー55,56が挿通可能な孔部66を有する平板体からなり、その厚さ寸法TAがS2−S1とされる。そして、スペーサ65Aは支持台10の基準板16上に載置され、このスペーサ65A上に測定治具12に設置する。これによって、測定バー55,56の測定端子53、53位置が内部底面2aから寸法S2だけ離れたラインL2上に対応し、このラインL2上での内部寸法の測定が可能となる。
【0055】
また、底面2aから寸法S3だけ離れたラインL3上の内部寸法を測定したい場合には、前記スペーサ65Aに加え、図8に示すように、さらに別のスペーサ65Bを使用することになる。スペーサ65Bは、前記スペーサ65Bと同様、一対の測定バー55,56が挿通可能な孔部66を有する平板体からなり、その厚さ寸法TBがS3−S2とされる。
【0056】
スペーサ65Bはスペーサ65A上に載置され、このスペーサ65B上に測定治具12に設置する。これによって、測定バー55,56の測定端子53、53位置が内部底面2aから寸法S3だけ離れたラインL3上に対応し、このラインL3上での内部寸法の測定が可能となる。
【0057】
本発明によれば、位置決め用治具11にて決定した高さ位置でのカップ部2の内部寸法を、測定治具12で測定することができる。このため、カップ部2の内部底面2aから測定すべき高さ位置での内部寸法を安定して測定できる。
【0058】
一対の測定バー55、56の測定端子53、53をそれぞれ対面する測定面に接触させ、この状態でダイアルゲージ50にてカップ部2の内部寸法を測定することができ、その測定が安定する。
【0059】
一対の測定バー55,56の測定端子53、53を図9に示すように、ねじ止めしたものであってもよい。すなわち、測定バー55,56の下端部にねじ孔を設ける。そして、測定端子53、53を、端子本体70と、この端子本体70の基端側に連設されるねじ軸71とから構成する。これによって、各測定端子53,53のねじ部71,71を測定バー55,56のねじ孔に螺着することになる。
【0060】
この場合の端子本体70は、図11に示すように、いわゆる弾丸形状とされ、その先端円弧部70が、測定面であるトラック溝5のローラ案内面6に接触することになる。すなわち、内部寸法測定時には、図10に示すように、一対の各測定端子53,53が、一つのトラック溝5の相対面するローラ案内面(測定面)6,6に接触して、このローラ案内面6,6間寸法を測定することになる。
【0061】
図12と図13に示すように、ローラ案内面6がゴシックアーチ形状である場合には、各測定端子53,53を、このゴシックアーチ形状に対応するゴシックアーチ対応端子53Aとするのが好ましい。ここで、ゴシックアーチ形状とは、半径Rの2個の円弧の中心位置Oが所定距離だけ互いにずれて形成された形状である。
【0062】
ゴシックアーチ対応端子53Aも、本体部77と、この本体部77の基端側に連設される図示省略のねじ軸部とからなり、ねじ軸部が測定バー55,56の下端部にねじ孔も螺合される。そして、本体部77の外面がゴシックアーチ形状の2つの円弧面73,74に接触する円弧面75とされる。
【0063】
このように、測定端子53をゴシックアーチ対応端子53Aとすることによって、測定面が従来において困難であったゴシックアーチ形状であっても、安定して測定することができる。
【0064】
図14に示すように、180°反対方向に配設された2つの支持部32a,38bで外輪1を支持できる。すなわち、押え機構15A(15B)と押え機構15(15C)とを180°反対位置に配置するようにすればよい。この場合の外輪1としては、外径面が円筒形であり、トラック溝80が周方向に沿って45°ピッチで8個配設されて、内径面形状が軸心に関して点対称となっている。
【0065】
この場合、押え機構15A(15B)の支持部32aに径方向位置を調整して、外輪1の軸心Lを支持台10の軸心に合わせるようにすればよい。このようなものであっても、外輪1を安定して支持できる。
【0066】
また、押え機構15(15D)として、図15に示すように、支持部82bが固定されたものであってもよい。すなわち、押え機構15Dは、支持台10に固定される軸部82aと、この軸部82aに連設される支持部82bとからなる。この支持部82bは、その先端面83が図2に示すように、中央に向かって外径側へ傾斜する第1テーパ面83aと第2テーパ面83bとからなり、いわゆるV字受けを構成している。
【0067】
このようなものであっても、外輪1がトリポード型等速自在継手のものである場合に支持できる。すなわち、押え機構15Dにてトラック溝間対応部を支持し、外径面に弾性的に接触する押え機構15Cにて、トラック溝間対応部に対して180°反対側のトラック溝非対応部を支持することになる。
【0068】
また、支持部32b、38bとして、図16に示すように、外輪側(先端)が凸状となる球面85にて構成したものであってもよい。すなわち、支持部32b、38bを、移動ブロック体32の軸部32aの先端に設けられる凸球面にて構成する。
【0069】
このように、支持部32b、38bを凸状となる球面85にて構成すれば、外径面が円筒面以外の異形のものであっても対応して、外側継手部材を支持できる。なお、図1に示す押え機構15A、15B、15C、図14に示す押え機構15A、15C、図15に示す押え機構15C、15D等であっても、支持部32b、38b、82bが球面85を備えたものであってもよい。
【0070】
治具11として、軸部11aの長さ寸法が相違する複数種のものを揃えるようにしてもよい。このように、複数種のものを揃えるようにすれば、治具11を代えることによって、複数位置でカップ部2の内部寸法を測定することができる。また、長さ寸法が相違する複数の測定バー55,56を備え、複数位置でカップ部2の内部寸法を測定するようにしてもよい。
【0071】
ところで、図14等に示す外輪1であれば、内部寸法の測定は、相対面するトラック溝80間であったり、相対面する内径面間であったりする。
【0072】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、測定すべき外側継手部材(外輪)として、バーフィールド型(BJ)やアンダーカットフリー型(UJ)等の固定型等速自在継手であっても、ダブルオフセット型(DOJ)やトリポード型(TJ)等の摺動型等速自在継手であってもよい。
【0073】
また、外側継手部材を支持する押え機構15としても、周方向に沿って120ピッチ又は180°ピッチに配置したものに限らず、90°ピッチで4個配置したり、60°ピッチで6個配設したりすることができる。さらに、前記実施形態では、一つの押え機構15に、支持部が弾性的に外輪の外径面を押圧するものであったが、このような押え機構15に代えて、支持部が径方向に変位可能なものであってもよい。
【0074】
使用するスペーサ65としては、1枚や2枚に限るものではなく、測定位置やその測定位置数に応じて任意に増加させることができ、また、各スペーサ65の厚さも測定位置やその測定位置数に応じて種々変更できる。使用する治具11としても、図5等に示す形状のもの限るものではなく、例えば、軸部11aを円柱体とすることなく、円筒体としたり、角柱体や角筒体等したりしてもよく、鍔部11bを円盤体とすることなく、楕円盤体や角形平板体等としたり、周方向に沿って所定ピッチで複数配設される突起片等としたりできる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施形態を示す外側継手部材の測定装置の簡略正面図である。
【図2】前記測定装置の簡略平面図である。
【図3】測定すべき外側継手部材の断面図である。
【図4】前記測定装置の測定治具を用いた模範合わせ状態を示す簡略図である。
【図5】前記測定装置の位置決め用治具の断面図である。
【図6】前記位置決め用治具を用いた位置決め状態を示す簡略図である。
【図7】1個のスペーサを用いた内部寸法測定状態を示す簡略図である。
【図8】2個のスペーサを用いた内部寸法測定状態を示す簡略図である。
【図9】測定端子の第1変形例を示す簡略図である。
【図10】前記図9に示す測定端子を用いた内部寸法測定状態を示す外輪の断面図である。
【図11】前記図9に示す測定端子を用いた内部寸法測定状態を示す外輪の要部拡大断面図である。
【図12】第2変形例の測定端子を用いた内部寸法測定状態を示す外輪の断面図である。
【図13】前記図12に示す測定端子を用いた内部寸法測定状態を示す外輪の要部拡大断面図である。
【図14】押え機構を180°反対位置に配置される測定装置の簡略平面図である。
【図15】押え機構を180°反対位置に配置される他の測定装置の簡略平面図である。
【図16】押え機構を周方向に沿って120°ピッチで配置される他の測定装置の簡略平面図である。
【符号の説明】
【0076】
2 カップ部
2a 内部底面
3A ゴシックアーチ対応端子
10 支持台
11 位置決め用治具
12 測定治具
32a 支持部
38b 支持部
50 ダイアルゲージ
53 測定端子
53A ゴシックアーチ対応端子
55,56 測定バー
65A スペーサ
82b 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側継手部材のカップ部の内部寸法を測定する外側継手部材の測定装置であって、
測定すべき外側継手部材の軸線を鉛直軸線に合わせた状態でそのカップ部の開口部が上方を向くように支持する支持台と、カップ部の内部底面から測定すべき位置までの高さ位置を決定する位置決め用治具と、前記位置決め用治具にて決定した高さ位置でのカップ部の内部寸法を測定する測定治具とを備えることを特徴とする外側継手部材の測定装置。
【請求項2】
前記測定治具は、下端にそれぞれ測定端子を有する一対の測定バーと、一方の測定バーに連設されるダイアルゲージとを備え、測定バーの測定端子をそれぞれ対面する測定面に接触させて前記ダイアルゲージにてカップ部の内部寸法を測定することを特徴とする請求項1に記載の外側継手部材の測定装置。
【請求項3】
前記測定端子は測定バーに対して着脱自在とされ、測定端子は少なくともゴシックアーチ形状に対応して接触するゴシックアーチ対応端子を備え、測定面がゴシックアーチ形状の外側継手部材のときに、このゴシックアーチ対応端子を取付けることを特徴とする請求項2に記載の外側継手部材の測定装置。
【請求項4】
測定端子はねじ止めにて測定バーに着脱自在に取付られることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の外側継手部材の測定装置。
【請求項5】
カップ部の内部底面から測定すべき位置を変更するスペーサを備えたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の外側継手部材の測定装置。
【請求項6】
前記位置決め用治具を複数種類備え、測定すべき位置に対応する位置決め用治具を選択して用いることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の外側継手部材の測定装置。
【請求項7】
長さ寸法が相違する複数の測定バーを備え、複数位置でカップ部の内部寸法を測定することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の外側継手部材の測定装置。
【請求項8】
周方向に沿って120度ピッチずれた3箇所において配設される支持部にて外周側から測定すべき外側継手部材を支持するとともに、2箇所においてその支持部の径方向への位置調整が可能であり、残りの1箇所において支持部が弾性的に外側継手部材の外径面を押圧することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の外側継手部材の測定装置。
【請求項9】
外側継手部材の外周側に180°反対方向に配設された支持部にて外側継手部材が支持され、一方の支持部の径方向への位置調整が可能であり、他の支持部が弾性的に外側継手部材の外径面を押圧することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の外側継手部材の測定装置。
【請求項10】
外側継手部材の外周側に180°反対方向に配設された支持部にて外側継手部材が支持され、一方の支持部が固定され、他の支持部が弾性的に外側継手部材の外径面を押圧することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の外側継手部材の測定装置。
【請求項11】
前記支持部が外側継手部材側に凸状となる球面にて構成することを特徴とする請求項8〜請求項10のいずれか1項に記載の外側継手部材の測定装置。
【請求項12】
外側継手部材のカップ部の内部寸法を測定する外側継手部材の測定方法であって、
測定すべき外側継手部材の軸線を鉛直軸線に合わせた状態でそのカップ部の開口部が上方を向くように支持した後、カップ部に、位置決め用治具を挿入して、カップ部の内部底面から測定すべき位置までの高さを決定し、その後、前記位置決め用治具にて決定した高さ位置でのカップ部の内部寸法を測定することを特徴とする外側継手部材の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−107303(P2010−107303A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278471(P2008−278471)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】