説明

外側膨張ルーメンを備える閉塞用バルーンカテーテル

【課題】 長手方向における十分な強度を有しつつ、可撓性を有するバルーンカテーテルを提供すること。
【解決手段】 本発明は、ルーメンを備える長尺状シャフトと、シャフトの先端領域に配置されたコンプライアントな膨張バルーンと、該バルーンと連通するスリーブを含む外側膨張要素とを備えるバルーンカテーテルに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカテーテルに関し、より詳細には、外部膨張手段を有するバルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
ガイドカテーテル等のカテーテルは、可撓性、強度、最小の外径、最大の内径といった互いに矛盾することが多い多数の性能を必要とする場合がある。具体的には、可撓性と、強度、すなわち長手方向における支持力という2つの特性間でのバランスを求められる場合がある。カテーテルが蛇行する血管系内に到達して通過できるだけの可撓性を備える場合には、例えば続いて治療器具がカテーテル内を進行させられる一方で、カテーテルが所定の位置に留まるだけの長手方向における強度が十分でないことがある。
【0003】
医療処置によっては、治療部位の先端側における血流を妨げる方法が必要とされる場合もあれば、治療部位の基端側の血流を妨げることが有用である場合もある。バルーンカテーテルは、血流を妨げるために使用することができる。しかし、バルーンカテーテルを備えるということは、ガイドカテーテル内に別の膨張ルーメンを備えるか、膨張を行うために使用されるガイドカテーテル内にルーメン空間となるだけの実質的な量の空間があるかのいずれかを必要とする。
【0004】
所望の強度とこれに反する可撓性とを有するガイドカテーテル等のカテーテルが依然必要とされている。また、従来のバルーンカテーテルが必要とされるのでなければ必要な内部ルーメン空間を犠牲にすることなく、血流を妨げることができるガイドカテーテル等のカテーテルが必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、長手方向における十分な強度を有しつつ、可撓性を有するバルーンカテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、器具搬送用の内部ルーメン空間を十分に有しつつ、基端側塞栓具を有するように構成されるバルーンガイドカテーテル等のカテーテルに関する。本発明は、十分な長手方向における支持力を有しつつも、所望のレベルの可撓性を有するガイドカテーテル等のカテーテルに関する。
【0007】
したがって、本発明の一実施例は、先端領域、基端領域、これらの領域の間に延びてルーメンを形成する長尺状シャフト、長尺状シャフトの先端領域に対して連結された膨張可能な望ましくはコンプライアントなバルーン、および外側膨張要素を有するカテーテルである。膨張要素は、バルーンの内部と連通する膨張ルーメンを有する。膨張要素は、長尺状シャフトの外面に沿って長手方向に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施例によるバルーンカテーテルを示す側面図。
【図2】図1のカテーテルシャフトの一部を示す斜視図。
【図3】本発明の他の実施例によるバルーンカテーテルを示す部分断面図。
【図4】本発明の一実施例によるカテーテルの先端部分を示す部分断面図。
【図5】本発明の一実施例によるカテーテルの先端部分を示す部分断面図。
【図6】図3の6−6線における断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に定義する用語については、請求項または本明細書のいずれかの個所に異なる定義がある場合を除き、以下の定義が適用されるものとする。 全ての数値は、本明細書における記載の有無に関わらず、「約」という語により調整されていると見なされる。「約」という語は、一般的に、当業者が記載された値(すなわち、同じ機能や結果を有する)と同等と見なす範囲の数字を指す。多くの場合は、「約」という語は、最も近い有効数字に四捨五入された数字を含む。
【0010】
指標となる数値による範囲指定を行う場合、当該範囲のすべての数値を含むものとする。(例えば、1〜5の場合、1,1.5,2,2.75,3,3.80,4,5を含む。)
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、内容が明らかにそうではないものを示さない限りは、複数形の対象物を含むことに留意すべきである。本明細書および添付の特許請求の範囲に使用される場合において、「または」という語は、内容が明らかにそうではないものを示さない限りは、および/またはという意味で用いられる。
【0011】
以下の記載は、図面を参照して読まれるべきであり、複数の図面における同様の符号は同様の要素を示している。詳細な説明および図面は、特許請求の範囲に記載された発明の実施例を説明するものである。
【0012】
図1は、本発明の一実施例におけるカテーテル10の平面図を示す。カテーテル10は、様々なカテーテルのうちの1つであってもよいが、血管内カテーテルが望ましい。血管内カテーテルの例には、バルーンカテーテル、アテローム切除術カテーテル、薬剤搬送カテーテル、診断用カテーテル、ガイドカテーテルが含まれる。図1はガイドカテーテルを示しているが、本発明はガイドカテーテルに限定されるものではない。本明細書に明記する場合を除いて、血管内カテーテル10は従来技術や材料を使用して製造可能である。
【0013】
血管内カテーテル10は、その意図される用途に応じて寸法を設定できる。カテーテル10は、約50cm〜110cmの長さ、および約4F(フレンチ)(約1.3mm)〜9F(約3mm)の径を有することも可能である。
【0014】
図示される実施例において、血管内カテーテル10は、基端領域14、先端領域16、および先端部18を有する長尺状シャフト12を備える。シャフト12は、基端領域14から延びて先端部18に達する作業ルーメン32を形成する。ハブおよび張力緩和アセンブリ20は、長尺状シャフト12の基端領域14に接続されていてもよい。ハブおよび張力緩和アセンブリ20は、従来設計によるものであってもよく、従来技術を用いて連結されてもよい。
【0015】
一実施例において、ハブおよび張力緩和アセンブリ20は、ハブ本体部分22、保持性を向上させるように設計された1対のフランジ24、張力緩和部26を備える。張力緩和部26は、シャフト12の基端領域14とハブ22とを連結して、その間においてシャフト12のねじれる傾向を抑制する。ハブ22はクリア(clear)なポリカーボネートから形成され、張力緩和部26はポリエーテル−エステルから形成されてもよい。ハブ22は、紫外線(UV)硬化型接着剤を用いてシャフト12の基端領域14および張力緩和部26に対して固定されてもよい。
【0016】
カテーテル10は、先端部分42、中間部分46、および基端部分44を有するバルーン40を備える。バルーン40は、先端部18の基端側のシャフト12の先端領域16の周囲に配置される。好適な実施例において、バルーン40は、弾性を備える膨張可能なコンプライアントメンブレンからなる。バルーン40は、ウレタンポリマーや、カーディテックインターナショナル社(Carditech International, Inc.)から販売されているChronoprene(商標)等の熱可塑性ラバーエラストマーから形成可能である。バルーン40は、収縮形状と膨張形状との間で拡張可能である。膨張すると、バルーン40は、カテーテル10が配置される血管等の体内管の内部の形状に適合する。収縮形状(図示せず)においては、バルーン40は、シャフト12の先端部とほぼ同径を有する。このことによりカテーテル10は、従来技術による一定寸法を有する折り畳みバルーンを備えるカテーテルよりも、容易に操作でき、かつ、より細い血管内への挿入が可能である。
【0017】
バルーン40は、長尺状シャフト12上に取り付けられ、また、使用される特定の血管系をほぼまたは完全に閉塞するように寸法が設定されてもよい。幾つかの実施例において、バルーン40は、約0.5cm〜2cmの長さを有することも可能である。バルーン40は、約0.065インチ(約0.1651cm)〜0.13インチ(約0.3302cm)の第1径(収縮形状)、および約1mm〜1.5cmの第2径(拡張形状)を有することも可能である。
【0018】
コンプライアントな膨張バルーン40は、その中に注入される膨張流体の量によって異なる径に膨張できる。このことにより、単一寸法のカテーテル10を様々な異なる寸法の体内管において使用することができる。容易に所望のバルーン径に膨張させ、かつ、過度の膨張を回避するために、様々なバルーンの径と各径に達するために通常必要とされる膨張流体の量を一覧表にして表すことも可能である。
【0019】
コンプライアントなバルーン40は、少なくとも先端領域16に沿ってシャフト12に近接して配置された外側膨張要素50を介して膨張させられる。図1および2に示すように、外側膨張要素50は、シャフト12の外面28に沿って長手方向に延びる。外側膨張要素50は、膨張ルーメン58を形成し、バルーン40の内部と連通する先端部52および封止部材56を備える基端部54を有する。
【0020】
バルーン40の先端部分42は、シャフト12の先端領域16に対して連結され、バルーン40の基端部分44は、シャフト12および外側膨張要素50の先端部52の基端側に連結されるため、膨張要素50の膨張ルーメン58がバルーン40の内部と連通する。膨張流体が外側膨張要素50からバルーン40へ注入されると、図1に示すように、バルーン40の少なくとも中間部分46は径方向外向きに移動する。一実施例において、シャフト12の先端部18はバルーン40の先端側へ延びる。
【0021】
外側膨張要素50は、膨張源と接続するためのハブアセンブリ60を有することも可能である。ハブアセンブリ60は、本体部分62、保持性を向上するように設計された1対のフランジ64、および膨張源を外側膨張要素50の膨張ルーメン58に接続するための接続部材66を備えてもよい。一実施例において、ハブアセンブリ60は皮下注射針(hypodermic needle)であってもよく、針は接続部材66として封止部材56から膨張ルーメン58内へ挿入される。封止部材56は、バルブ、ネジ式コネクタ、圧縮取り付け具(compression fitting)を含む、接続部材66の周囲で膨張要素50を封止する任意の手段であってもよい。
【0022】
図2は、長尺状シャフト12と外側膨張要素50との関係を示すカテーテル10の斜視図である。外側膨張要素50は、作業ルーメン32および膨張ルーメン58がほぼ平行をなすようにシャフト12に取り付けられている。シャフト12および外側膨張要素50上にポリマー材料からなる薄壁を収縮させることにより、外側膨張要素50をシャフト12に取り付けることも可能である。好適なポリマーの例は、PEBAX(登録商標)等のポリエーテル ブロック コ−ポリアミド ポリマーである。他の実施例において、外側膨張要素50は、加熱融合や紫外線硬化型接着剤等の接着剤によりシャフト12に取り付けられてもよい。
【0023】
外側膨張要素50は、金属、合金、ポリマー、金属−ポリマー複合材料、あるいは他の好適な材料等から形成されてもよい。好適な材料の例には、ステンレス鋼(例えば、304vステンレス鋼)、ニッケル−チタン合金(例えば、超弾性または線形弾性ニチノール等のニチノール)、ニッケル−クロム合金、ニッケル−クロム−鉄合金、コバルト合金、ニッケル、チタン、プラチナ、またはこれらに代えて、高性能ポリマー等のポリマー材料や他の好適な材料等が含まれる。
【0024】
幾つかの実施例において、外側膨張要素50は、ニッケル−チタン合金等の形状記憶材料から形成されてもよい。ニチノールは代表的な形状記憶材料である。販売されるニチノール合金ファミリーには、化学的には従来の形状記憶性および超弾性の変種に類似するものの、独特の有用な機械的特性を示す、「線形弾性」と称されるカテゴリーのものがある。高度な冷間加工、指向性のある圧力を加える加工、および熱加工を行うことにより、応力/歪み曲線において実質的な「超弾性安定域(superelastic plateau)」または「フラグ(flag)領域」を示さないように管状体が製造される。あるいは、回復可能な歪みが増大するにつれて、応力は塑性変形が始まるまではほぼ直線状に増大し続ける。幾つかの実施例において、線形弾性ニッケル−チタン合金は、DSCおよびDMTA分析によって検出可能なマルテンサイト/オーステナイト相変化を広い温度範囲にわたって示さない合金である。
【0025】
例えば、幾つかの実施例においては、DSCおよびDMTA分析によって検出可能なマルテンサイト/オーステナイト相変化が約−60℃〜120℃の範囲において見られない。したがって、このような材料の機械的曲げ特性は、この非常に広い温度範囲にわたって温度の影響をほぼ受けない。幾つかの実施例において、合金の常温または室温における機械的特性は、体温における機械的特性とほぼ同じである。
【0026】
幾つかの実施例において、線形弾性ニッケル−チタン合金は、約50〜60重量%のニッケルとその他をほぼチタンが占める合金である。幾つかの特定の実施形態においては、組成に約54〜57重量%のニッケルを含む。好適なニッケル−チタン合金の一例として、神奈川県に所在する株式会社古河テクノマテリアルより販売されるFHP−NT合金が挙げられる。ニッケル−チタン合金の例には、米国特許第5,238,004号明細書および同第6,508,803号明細書に開示されるものが含まれる。なお、これら特許文献は、その内容が本明細書において開示されたものとする。
【0027】
外側膨張要素50を形成するポリマーの例には、ポリエーテル ブロック コ−ポリアミド ポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン(PE)、カテーテルの製造に使用される他の従来型のポリマーが含まれる。外側膨張要素50の基端部54、先端部52、および中央部分は、様々な剛性を備える異なるポリマーおよび/または金属から形成されてもよい。膨張要素50は、ハイポチューブからなってもよい。一実施例において、膨張要素50は、先端部にポリマーチューブを有するニチノール製のハイポチューブからなる。この構成により、より高い強度と可撓性が付与される。他の実施例において、膨張要素50は、金属ブレード、コイル、リボン体により補強されたポリマーチューブからなる。金属補強部分は、プラチナ、ステンレス鋼、ニチノール、または他の好適な金属であってもよい。
【0028】
幾つかの実施例において、シャフト12の長さの大部分は、補強ブレードやリボン体からなる層を含むことによりねじれ抵抗等の特定の性質を増加させる。シャフト12は個別の管状層からなってもよい。一実施例において、シャフト12の内面30は潤滑性を有する層であり、外面28はポリマー層である。ブレード、コイル、リボン体等の金属製の補強層は、内面30と外面28との間に配置されてもよい。潤滑性を有する内面は、プレハブ式のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の管材から形成されてもよい。
【0029】
他の実施例(図示せず)においては、外面28は、シャフト12の基端領域14から先端部18にかけて可撓性が増加する複数の異なる軸方向部分を含んでいてもよい。異なる部分の数は、2個、3個、4個、5個以上であってもよい。一実施例において、外面28は5個の部分を有する。潤滑性を有する内面は、外側部分1から4および外側部分5の大部分を貫通して延びる。同様に、補強層は、外側管状部分1から4および外側管状部分5の一部を貫通して延びる。一実施例において、外側管状部分1から5の外管部分は、それぞれ約86.0cm、約21.5cm、約0.5〜2.0cm、約1.0〜6.8cm、約0.36cmの長さを有する。5番目の外側管状部分は、潤滑性を有する面やブレードされた補強層を備えていない約0.13cmの長さを有するチップ部分を備えることも可能である。幾つかの実施例において、長尺状シャフト12は、より軟質の可撓性の高いポリマーから形成される先端チップ部分を備えていてもよい。
【0030】
例えば、長尺状シャフト12が、基端部分、中間部分、先端部分の3個の部分を有している場合、各部分はそれぞれ、同様の内面30と、長尺状シャフト12の先端部18に近接するにしたがって可撓性が増加する外面28とを備えることも可能である。例えば、基端部分は硬度72D(デュロメータ)を有するポリマーから形成される外面を有し、中間部分は硬度68Dを有するポリマーから形成される外面を有し、先端部分は硬度46Dを有するポリマーから形成されてもよい。
【0031】
長尺状シャフト12が3つの部分を有している場合、各部分は、最終的に得られるカテーテル10の意図される機能に応じた寸法を有することができる。例えば、基端部分は約35インチ(約88.9cm)の長さを、中間部分は約2インチ(約5.08cm)〜3インチ(約7.62cm)の長さを、先端部分は約1インチ(約2.54cm)〜1.25インチ(約3.175cm)の長さをそれぞれ有することができる。
【0032】
内面30は、材料を均一に含んでいてもよく、長尺状シャフト12の全長にわたって延びるとともにハブアセンブリ20を貫通して延びるルーメン(図示せず)と連通する作業ルーメン32を形成してもよい。内面30により形成される作業ルーメン32は、様々な医療器具のための通路となることができ、よって内面30は作業ルーメン32内の摩擦を低減するために潤滑材料で形成したり、または潤滑材料でコーティングすることができる。材料の例としては、TEFLON(登録商標)としてよく知られるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。内面30は、意図される用途が可能となるだけの適切な内径を有する作業ルーメン32を形成するように寸法を設定することができる。幾つかの実施例においては、内面30は、約0.058インチ(約1.473mm)の径を有する作業ルーメン32を形成することができるとともに、約0.001インチ(約0.025mm)の壁厚を有することができる。
【0033】
外面28は、所望の強度や可撓性、または他の所望の特性を提供する任意の好適なポリマーから形成されてもよい。低デュロメータすなわち低い硬度を有するポリマーは可撓性を増加させ、高デュロメータすなわち高い硬度を有するポリマーは、剛性を増加させる。幾つかの実施例において、使用されるポリマー材料は熱可塑性ポリマー材料である。幾つかの好適な材料の例には、ポリウレタン、弾性ポリアミド、ブロックポリアミド/エーテル(PEBAX(登録商標)等)、シリコーン、コポリマーが含まれる。外面28は、単一ポリマー、多層、またはポリマーのブレンドからなってもよい。材料および加工技術を入念に選択することにより、これらの材料の熱可塑性、溶剤可溶性、熱硬化性の変種を用いて、所望の結果を得ることができる。
【0034】
特定の実施形態においては、コ−ポリエステル熱可塑性エラストマー(例えばARNITEL(登録商標)という名称で販売されるもの)等の熱可塑性ポリマーを用いることができる。外面28は、内面30の外径とほぼ等しい内径を有することができる。
【0035】
カテーテル10の寸法に応じて、外面28は約0.0600インチ(約0.1524cm)〜0.0990インチ(約0.2514cm)の内径を有することも可能である。例えば、6F(フレンチ)、7F、8F、および9Fの寸法からなるシャフトは、それぞれ0.064インチ(約0.1626cm)、0.073インチ(約0.1854cm)、0.086インチ(約0.2184cm)、0.099インチ(約0.2514cm)の内径を有することが可能である。外径は、約0.0675インチ(約0.1715cm)〜0.118インチ(約0.2997cm)であってもよく、約0.0675インチ(約0.1715cm)、約0.079インチ(約0.2007cm)、約0.092インチ(約0.2337cm)、約0.105インチ(約0.2667cm)、約0.118インチ(約0.2997cm)の外径は、それぞれ6F、7F、8F、および9Fの寸法に対応する。外面28の一部または全体は、外面28の放射線不透過性を高めるために添加された50%の次炭酸ビスマス等の材料を含んでいてもよい。
【0036】
図3に示す実施例においては、カテーテル100は長尺状シャフト112を備え、シャフト12は作業ルーメン132およびシャフト112の先端領域116に連結されたコンプライアントな膨張バルーン140を有する。カテーテルは、シャフト112の基端領域114から延びて先端部118の基端側に達する外側膨張要素150を有する。バルーン140の先端部142は、先端部118の基端方向のシャフト112の外面128に取り付けられ、バルーン140の基端部144は、外側膨張要素150の先端部152に取り付けられる。
【0037】
外側膨張要素150は、シャフト112の外面128に沿って配置されたスリーブからなる。シャフト112の外径が外側膨張要素150の内径よりもわずかに小径であるため、環状の膨張ルーメン158が形成される。膨張ルーメン158の先端部は、バルーン140の内部に対して連通している。膨張ルーメン158の基端部は膨張源に連通する。図3に示す実施例において、外側膨張要素150の基端部154は、膨張流体の注入や除去を調節するためのハブすなわちバルブシステム等の接続部材160を有する。
【0038】
カテーテル100の先端領域はテーパ状をなしていてもよい。図4に示すような一実施例において、シャフト112および膨張ルーメン158の径は、シャフト112の長さ全体にわたって一定しているが、外側膨張要素150の外壁はその先端に向かってテーパ状をなしている。図5は他の実施例を示しており、シャフト112はテーパ状をなしているが、膨張ルーメン158および外側膨張要素150の外壁は一定している。これらの実施例において、カテーテル100全体の径はその先端に向かってテーパ状をなしているが、膨張ルーメン158の径は一定している。図4に示す実施例においては、作業ルーメンは一定の径を有しており、外壁の厚さが減少したことにより先端部において可撓性を増加させることができる。図5に示す実施例においては、外壁の厚さが一定であるため、先端部にて強度を高めることができる。
【0039】
例えば、図3の6−6線における断面を示す図6において、膨張要素150は、その内部を通過して長尺状シャフト112の外面128を収容できるように寸法が設定された膨張ルーメン158を有する単一層であってもよい。幾つかの実施例において、膨張要素150は、約0.065インチ約(約0.1651cm)〜0.13インチ(約0.3302cm)の外径、および約0.050インチ(約0.127cm)〜0.12インチ(約0.3048cm)の内径を有することも可能である。膨張要素150の全長は、約50cm〜150cmであってもよい。
【0040】
単一層からなる膨張要素150は、外面および内面151を有する。膨張要素150は、ポリマー材料等の任意の好適な材料から形成されてもよい。低デュロメータすなわち低い硬度のポリマーにより可撓性を増加し、高デュロメータすなわち高い硬度のポリマーにより剛性を増加することが可能である。幾つかの実施例において、膨張要素150は、長尺状シャフト112上に配置されるとシャフト112に対して長手方向における強度を付与するような有用な特徴を膨張要素150に提供する材料から形成されてもよい。
【0041】
幾つかの実施例において、使用されるポリマー材料は熱可塑性ポリマー材料である。好適な材料の例には、長尺状シャフト112の外面28について前述した材料が含まれる。材料および加工技術を入念に選択することにより、これら材料の熱可塑性、溶剤可溶性、熱硬化性の変種を用いて所望の結果を得ることができる。
【0042】
膨張要素150が単一層である実施例において、その内面151は、長尺状シャフト112の外面128との間の摩擦を軽減するために潤滑性材料でコーティングされていてもよい。材料の例としては、TEFLON(登録商標)としてよく知られるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。長尺状シャフト112の内面130もまた、ルーメン132を通過する器具との間の摩擦を軽減するために潤滑性材料でコーティングされていてもよい。
【0043】
幾つかの実施例(図示せず)においては、膨張要素150は2層以上の層を有するように形成することも可能である。このような実施形態においては、膨張要素150はTEFLON(登録商標)を含む、またはTEFLONでコーティングした、またはTEFLONから形成された内層を有することができる。外層は、長尺状シャフト112の外層128について述べたような任意の好適なポリマーで形成されてもよい。また、シャフトは、ポリマーや、補強ブレード、コイル、リボン体を含む2層以上の層から形成することも可能である。
【0044】
前述したように、カテーテルアセンブリ100は、膨張要素150およびバルーン140を貫通して延びる長尺状シャフト112を備える。図3に示すように、カテーテルアセンブリ100は、長尺状シャフト112を容易に挿入できるように形成されたハブ本体122を有する基端ハブ120を備えることも可能である。また、カテーテルアセンブリ100は、膨張要素150の基端部154に配置されたハブアセンブリ160を備えていてもよい。ハブアセンブリ160により、膨張流体の注入や除去を行うための手段を接続することができる。
【0045】
使用時には、カテーテル10,100は、バルーン40,140が治療部位の基端側すなわち上流に配置されるまで、血管等の体内管へ挿入される。膨張流体は、外側膨張要素50,150を通ってバルーン40,140内へ注入される。バルーン40,140の膨張により血管が閉塞されるため、医師は血液を血管内に流すことなく先端側の治療部位において必要な治療を行うことができる。このように血流を止めることは、血流圧により異物すなわち血栓が先端方向へ移動する危険を冒すことなく、そのような物質の回収を可能にするため特に重要である。バルーン40,140の拡張に先立ち長尺状シャフト12,112の先端部18,118を越えて先端側に延びる治療器具を配置することにより、血流がせき止められる時間を最小限にすることができる。
【0046】
幾つかの実施例において、カテーテルアセンブリ10,100の一部は、放射線不透過性材料で形成されるか、ドープされるか、放射線不透過性材料からなる層を含むか、その他の方法で放射線不透過性材料を含むことができる。放射線不透過性材料とは、医療処置中に、透視スクリーンまたは他の画像化技術にて比較的明るい像を生成することのできる材料である。この比較的明るい像により、カテーテルアセンブリ10,100の使用者は、それらの位置を判定しやすくなる。放射線不透過性材料の例としては、金、プラチナ、パラジウム、タンタル、タングステン合金、放射線不透過性充填剤を充填したプラスチック材料等が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
幾つかの実施例においてはある程度のMRI適合性を付与してもよい。例えば、磁気共鳴画像(MRI)装置に対する適合性を高めるために、ある程度のMRI適合性を付与するように金属部分を形成することが望ましい場合がある。例えば、ブレード、コイル、リボン体等の金属補強構造がカテーテルに含まれている場合は、画像をほぼ歪めず、かつ実質的なアーチファクト(アーチファクトとは、実際とは異なる像)をほぼ形成しない材料でその補強構造を形成することができる。例えば、特定の強磁性材料は、MRI画像においてアーチファクトを形成する可能性があるため好適でない場合がある。また、MRI装置が画像化できる材料で金属補強構造を形成してもよい。これらの特徴を示す材料の例としては、例えばタングステン、Elgiloy(登録商標)、MP35N(登録商標)、ニチノール等が挙げられる。
【0048】
幾つかの実施例において、カテーテルアセンブリ10,100の一部または全体が潤滑コーティングを含んでいてもよい。潤滑コーティングは、操縦性(steerablitity)を向上させることができるとともに、病変部を通過する能力を高めることができる。好適な潤滑性ポリマーの例には、ポリアリーレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシアルキルセルロース誘導体、アルギン、サッカライド、カプロラクトン等の親水性ポリマーや、これらの混合物および組み合わせが含まれる。親水性ポリマーは、他の親水性ポリマーとブレンドするか、調合量の水不溶性化合物(一部のポリマーを含む)とブレンドして、好適な潤滑性、結合性、溶解性を備えたコーティングを生成してもよい。幾つかの実施例において、カテーテルの先端部を親水性ポリマーでコーティングし、より基端側の部分をフルオロポリマーでコーティングしてもよい。
【0049】
本開示は、多くの点において単に例示的なものにすぎない。本発明の範囲を逸脱することなく詳細、特に、形状、寸法、工程の順序を変更することが可能である。本発明の範囲は、当然ながら添付の特許請求の範囲の文言によって定義される。
【0050】
本発明は、添付の図面に関して以下の様々な実施形態についての詳細な説明を鑑みてより深く理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端領域および基端領域を有するバルーンカテーテルであって、
前記先端領域から延びて基端領域へ達し、かつ、それらの領域の間に作業ルーメンを形成する長尺状シャフトと、長尺状シャフトは先端部、内面および外面を有することと、
長尺状シャフトの外面の先端部の一部に沿って配置されるコンプライアントな膨張バルーンと、長尺状シャフトは該バルーンを貫通して延びることと、
内面および外面を有する環状壁を有するスリーブを含む外側膨張要素と、を備え、スリーブの内面と外面との間の径方向距離は環状壁の厚さを画定することと、
スリーブは、長尺状シャフトの基端領域から先端部付近まで延びる長尺状シャフトの外面に沿って長手方向に配置され、スリーブの内面は長尺状シャフトの外面から離間して、前記バルーンと連通する環状の膨張ルーメンを形成することと、
スリーブの環状壁の厚さは、長尺状シャフトの全長にわたってその先端部に向かってテーパ状をなすが、長尺状シャフトの外面とスリーブの内面との間の径方向距離は、長尺状シャフトの全長にわたって一定であり、長尺状シャフトの全長において環状壁の厚さがテーパ状をなすことによって、テーパ状をなす先端領域を有するカテーテルが形成されることとを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項2】
前記バルーンの先端部は長尺状シャフトの先端部に取り付けられ、該バルーンの基端部は前記スリーブの先端部に取り付けられる請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記スリーブは単一のポリマー層からなるとともに、その基端部において膨張ハブに対して連結される請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記環状の膨張ルーメンは前記スリーブの先端部において0.002インチ(0.00508cm)の径を有する請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記環状の膨張ルーメンは前記スリーブの基端部において0.004インチ(0.01016cm)の径を有する請求項1に記載のカテーテル。
【請求項6】
先端領域および基端領域を有するバルーンカテーテルであって、
前記先端領域から延びて基端領域へ達し、かつ、それらの領域の間に作業ルーメンを形成する長尺状シャフトと、長尺状シャフトは先端部、内面および外面を有することと、
長尺状シャフトの外面の先端部の一部に沿って配置されるコンプライアントな膨張バルーンと、長尺状シャフトは該バルーンを貫通して延びることと、
内面および外面を有する環状壁を有するスリーブを含む外側膨張要素と、を備え、スリーブの内面と外面との間の径方向距離は環状壁の厚さを画定することと、
スリーブは、長尺状シャフトの基端領域から先端部付近まで延びる長尺状シャフトの外面に沿って長手方向に配置され、スリーブの内面は長尺状シャフトの外面から離間して、前記バルーンと連通する環状の膨張ルーメンを形成することと、
スリーブの外面および長尺状シャフトの外面は、長尺状シャフトの全長にわたってその先端部に向かってテーパ状をなすが、長尺状シャフトの外面とスリーブの内面との間の径方向距離は、長尺状シャフトの全長にわたって一定であり、長尺状シャフトの全長においてスリーブの外面および長尺状シャフトの外面がテーパ状をなすことによって、テーパ状をなす先端領域を有するカテーテルが形成されることとを特徴とするバルーンカテーテル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−205932(P2012−205932A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−167156(P2012−167156)
【出願日】平成24年7月27日(2012.7.27)
【分割の表示】特願2007−501944(P2007−501944)の分割
【原出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】