説明

外傷の治療のための、VIIa因子の使用

【課題】外傷の治療のためのVIIa因子の使用
【解決手段】本発明は、外傷の治療のための薬剤の製造のための、VIIa因子又はVIIa因子等価物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外傷被害者の急性治療のための方法に関し、外傷患者における遅発型合併症の予防、又は重症度の最小化を含む。
【背景技術】
【0002】
止血は、最終的に出血の停止をもたらす複雑な生理学的プロセスである。これは血管(特に内皮裏層)、凝固因子、及び血小板の3つの主要な成分に固有の機能に依存する。一旦、止血性の栓が形成されると、線維素溶解性システムの時を得た活性化が、さらなる不必要な止血の活性化を防ぐために等しく重要である。このシステムの何らかの機能不全(止血性成分の、数の減少又は分子の機能不全のため、或いは、線維素溶解性成分の活性化の上昇のため)は、例えば、重症度が変化する出血性素因のような臨床的な出血をもたらし得る。
【0003】
ほとんどの生理学的な状況において、止血は、傷害の部位でのTFの曝露に続いて、循環している活性化された凝固VII因子(FVIIa)と組織因子(TF)との相互作用によって起こされる。内在性FVIIaは、TFと複合体を形成した後でのみ、タンパク分解的に活性となる。通常、TFは血管壁の深い層において発現され、傷害に続いて曝露される。これは、凝固の高く局在化した活性化を保証し、播種性血液凝固を防ぐ。TFはまた、非活性化形態、いわゆる暗号化(encrypted)TFで存在するようである。暗号化TF対活性TFの制御は、未だに知られていない。
【0004】
近年、TFは、外傷、敗血症、腹腔手術のような種々の状況において、循環血液中に示されている。これらの研究は、TFを測定するために、免疫化学的に基づく方法を用いている(ELISA)。そのような方法は、活性TF及び不活性TFの両方を測定し、並びに、他のいずれのタンパク質との複合体(FVIIa、TFPIなどのような)中にあって、それ故に発見されたTFが活性であるか不活性であるかを示さないTFを測定する。それぞれの被検者は、突発性胸部脊柱側弯症、著しい組織傷害に付随した広範な外科的外傷を受けている。他の研究は、高頻度の手術後の深部静脈血栓症(DVT)が付随すると知られている、大整形外科術(全臀部置換術及び膝置換術)後に、循環中の任意のTFを示すことに失敗している。
【0005】
活性化された組換えヒトVII因子(rFVIIa)は、血友病A又はBの被検者における出血発症の、VIII因子又はIX因子に対する阻害剤による治療のために必要とされている。高い(薬理学的な)用量で与えられた場合、rFVIIaは、TFとは独立して活性化血小板に結合でき、初期の止血性の栓の形成に重要である局所的なトロンビンの産生を惹起する。
【0006】
制御できない出血は一般の外傷被害者における死の主要な原因(39%)である。65%の死が病因への入院の後に生じており、失血は外傷被検者における院内死の15〜40%の原因である。複雑な肝臓傷害を伴う被検者における死亡率は40%を超える。血液産物の輸血と死亡率の間には関連がある。多くの危篤状態の疾患被検者は、傷害の重篤度に関連する深在性の凝固障害を有している。
【0007】
制御されない生命を脅かす出血及び輸血に続発するもの後天性の凝固障害、低体温及びそれらの被検者によって直面される他の関連する原因は、外傷被害者の後での死に著しく寄与する合併症である、肺塞栓症、播種性血管内凝固(DIC)、急性心筋梗塞、脳血栓症、多臓器不全(MOF)、全身性炎症反応症候群(SIRS)、及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む、いわゆる遅発型合併症をさらにもたらし得る。
【0008】
それ故、外傷の急性の治療のための改良された方法及び組成物、並びに、外傷自体及び外傷被害者の治療のために用いられる従来の理学療法の結果として起こる遅発型合併症の予防と減弱が、当該分野で要求されている。
【発明の開示】
【発明の概要】
【0009】
本発明は、外傷の治療のための薬剤の製造のための、VIIa因子又はVIIa因子等価物の使用を提供する。該薬剤を用いられる典型的な患者は、これらに限定されないが、鈍的外傷又は鋭的外傷を受けた患者を含む、凝固傷害的な出血を被っている患者である。
【0010】
また、本発明は、外傷治療のための方法を提供し、これは、前記予防又は減弱に有効な量のVIIa因子又はVIIa因子等価物を患者に投与することによって行われる。典型的な患者は、鈍的外傷又は鋭的外傷を受けている。
【0011】
幾つかの態様において、最初の投与工程は、外傷傷害の発生から5時間以内に行われる。幾つかの態様において、該有効量は、少なくとも約150 μg/kgのVIIa因子又は対応する量のVIIa因子等価物を含む。幾つかの態様において、少なくとも約200 μg/kgのVIIa因子又は対応する量のVIIa因子等価物の第1の量が、治療の開始時に投与され、約 100 μg/kgの VIIa因子又は対応する量の VIIa因子等価物の第2の量が、治療の開始から1時間以上後に該患者に投与される。幾つかの態様において、約100 μg/kgのVIIa因子又は対応するVIIa因子等価物の第3の量が、治療の開始から例えば3時間後のような遅い時間に投与される。
【0012】
幾つかの態様において、該方法はさらに、第2の凝固剤を、前記VIIa因子又はVIIa因子等価物による治療を増大する量で該患者に投与することを含む。好ましくは、第2の凝固剤は、凝固因子(これらに限定されないが、VIII因子、IX因子、V因子、XI因子、XIII因子、及びそれらの任意の組合せを含む)又は抗線維素溶解剤 (これらに限定されないが、PAI-1、アプロチニン、ε-アミノカプロン酸、トラネキサム酸、又はそれらの任意の組合せを含む)である。
【0013】
また、本発明は、大多数の外傷患者における外傷の治療方法を提供し、これは、(i) 前記治療に有効な量のVIIa因子又はVIIa因子等価物を、外傷患者のグループに投与すること;及び、(ii)前記VIIa因子又はVIIa因子等価物を受けた患者のグループの中での外傷における、前記VIIa因子又はVIIa因子等価物を受けていない同様の患者のグループにおいて予期される前記遅発型合併症の発生頻度と比較した減少を観察すること;によって行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、外傷患者を治療するのに有利に用いることができる方法及び組成物を提供する。該方法は、外傷治療に有効な方法で、外傷患者にVIIa因子又はVIIa因子等価物を投与することによって行われる。治療に有効な方法は、所定の量のVIIa因子又はVIIa因子等価物を投与すること、及び/又は、特定の薬容量措置(dosage regimen)、製剤、投与方法、他の治療との組合せなどを用いることを含む。外傷の治療における本発明の方法の有効性は、傷害の即時の結果及び/又は遅発型合併症の従来用いられている一以上のパラメーターを用いて評価することができる(下記参照)。即時の結果は、例えば、血液損失及びショック症状を含む;一方、遅発方合併症は、これらに限定されないが、それらの症候群の一以上によって起こされる死を含む、肺塞栓症 (PE)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、播種性血管内凝固(DIC)、急性心筋梗塞(AMI)、脳血栓症(CT)、全身性炎症反応症候群(SIRS)、感染、多臓器不全(MOF)、及び急性肺傷害(ALI)を含む。
【0015】
患者の選択:
本発明の方法を使用することによって利益を受ける患者は、これらに限定されないが、鈍的外傷(blunt trauma)及び/又は鋭的外傷(penetrating trauma)を受けた患者を含む。鈍的外傷は、鈍的傷害、例えば、交通事故又は転落によって起こったものを含み、これは、肝臓傷害、複数骨折、能挫傷の一以上、並びに、脾臓、肺、又は横隔膜の断裂をもたらす。鈍的外傷は一般に、鋭的外傷と比較してより広範囲の組織損傷を伴い、結果として、より少ない血管出血を伴う。鋭的外傷は、鋭的傷害、例えば、銃創又は刺し傷によって起こったものを含み、これは、下大静脈の貫通、肝臓損傷、肺傷害、前立腺、泌尿器膀胱への傷害、胸郭及び肝臓断裂、及び骨盤又は胸部への創傷をもたらす。
【0016】
外傷は、大血管及び小血管の両方への傷害、及び、続く出血を引き起こし得る。ほとんどの外傷の場合における過剰又は大量の出血は、血管穿刺外科治療(「外科手術上の出血」)及び小血管からの広汎性の制御されない出血(「凝固傷害的出血」)の組合せを呈する。さらにその上、大量の輸血を受けた外傷被検者は、しばしば凝固傷害を被り、外科的な方法、パッキング及び大血管の塞栓形成による処置にもかかわらず、おびただしい出血が継続する。
【0017】
出血は、循環系の任意の構成要素からの血液の血管外遊出を示し、外傷と関連するいずれの出血(これらに限定されないが、過剰の、制御されない出血、即ち、出血(haemorrhaging)を含む)をも包含する。一連の態様において、過剰な出血は鈍的傷害によって起こされる;他において、過剰な出血は鋭的傷害によって起こされる。一連の態様において、傷害は肝臓、脾臓、肺、横隔膜、脳を含む頭部へのものである。他の一連の態様において、傷害は、下大静脈、肝臓損傷、肺傷害、前立腺、泌尿器膀胱への傷害、胸郭及び肝臓断裂、骨盤又は胸部、又は脳を含む頭部へのものである。
【0018】
外傷における凝固傷害は多因子性であり、凝固及び繊維素溶解の全身的な活性化によって起こされる凝固異常性の類似性(resembling)DIC;過剰な線維素溶解(外傷被検者の中には第一日目に明白であることもある);及び、希釈的(dilutional)凝固障害(過剰な流体投与によって起こされる)を包含する。ヒドロキシエチルデンプン(HES)製剤のようないくつかの液体は、直接的に凝固を損なう。大量輸血症候群は、結果として凝固因子の欠乏及び血小板機能の機能障害をもたらす。低体温は、凝固カスケードのより緩徐な酵素活性及び機能障害性血小板の原因となる。アシドーシスのような代謝異常もまた、特に低体温と関係する場合に凝固を損なう。
【0019】
本発明に従った治療を必要とする患者の非限定的な例には、以下の一以上を示す患者が含まれる:
・凝固及び繊維素溶解の全身的な活性によって起こされる、凝固異常性の類似性DIC
・過剰な線維素溶解
・過剰な流体治療によって起こされた希釈性(Dilutional)凝固障害、これらに限定されないが、正常なプールされた血液の血小板数及び血小板活性と比較して、限定された血小板数及び/又は障害された血小板機能を含む
・ヒドロキシエチルスターチ(HES)製剤の受け取り
・低体温、約37℃より低い体温、例えば約36℃より低い、約35℃より低い、又は約34℃より低い体温を有することを含む
・代謝異常の少なくとも一つの徴候、これらに限定されないが、例えば約7.4より低い、約7.3より低い、約7.2より低い、又は約7.1より低いような、約7.5より低い血液pHを有するアシドーシスを含む。
【0020】
本発明の方法は、もし処置されないままであれば、著しい血液の損失、例えば患者の総血液量の10%を超えるような損失(血液の40%以上の損失は、直ちに生命を脅かす)をもたらす、鈍的外傷及び/又は鋭的外傷を受けたいずれの患者に対しても有利に適用することができる。正常な血液量は、成人の理想的な体重の約7%であり、子供の理想的な体重の約8〜9%である。
【0021】
一連の態様において、本発明に従って処置される患者は、それらの外傷傷害の時点とVIIa因子又はVIIa因子等価物の投与の時点の間に、約10ユニットより少ない全血液(WB)、パックされた赤血球(pRBC)、又は新鮮な冷凍血漿(FFP)を受けた患者である。WBのユニットは、典型的には、約450 mlの血液及び63 mlの従来の抗凝固剤/保存剤(36〜44%のヘマトクリットを有する)を含む。pRBCのユニットは、典型的には、200-250 mlの赤血球、血漿、及び、従来の抗凝固剤/保存剤(70-80%のヘマトクリットを有する)を含む。他の態様において、本発明に従って処置される患者は、約8ユニットより少ないWB、pRBC、又はFFPを受けており、例えば約5ユニットより少ないか又は約2ユニットより少なく受けており、或いは、VIIa因子又はVIIa因子等価物の投与の前には何らの血液産物及び/又は容量置換産物(volume replacement products)を受けていない。
【0022】
一連の態様において、本発明に従って処置される患者は、先天性又は後天性のいずれのものであれ、例えば血友病A、B又はCのような出血障害を患っていない。
【0023】
本発明の異なる態様において、患者は、彼らが10ユニット以上のPRBCを受けている場合、例えば15、20、25、30ユニットより多いPRBCを受けている場合、或いは、彼らが先天性の出血障害と診断されている場合、処置から除外されてよい。
【0024】
VIIa因子及びVIIa因子等価物:
本発明の実施において、任意のVIIa因子又はVIIa因子等価物は、外傷の治療に有効であるように用いられ得る。幾つかの態様において、VIIa因子は、例えば米国特許第4,784,950号(野生型VII因子)に開示されているようなヒトVIIa因子である。「VII因子」という用語は、その未切断(チモーゲン)形態のVII因子ポリペプチド、並びに、タンパク分解的に処理されてそれらのそれぞれの生理活性形態(これはVIIa因子と命名される)を産するもの、を含むように意図される。典型的には、VII因子は、残基152と153の間で切断されてVIIa因子を産する。
【0025】
VIIa因子等価物は、これらに限定されないが、ヒトVIIa因子に対して化学的に修飾されたVII因子ポリペプチド、及び/又は、ヒトVIIa因子に対して一以上のアミノ酸配列変化を含むVII因子ポリペプチドを含む。そのような等価物は、ヒトVIIa因子と比較して、安定性、リン脂質結合性、変化した比活性などを含む、異なる性質を示し得る。
【0026】
一連の態様において、VIIa因子等価物は、ヒトVIIa因子の生物学的な比活性の、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約50%、及び最も好ましくは少なくとも約70%を示すポリペプチドを含む。本発明の目的のために、VIIa因子生物活性は、例えば米国特許第5,997,864に開示されているように、VII因子欠損血漿及びトロンボプラスチンを用いて、製剤の血液凝固を促進する能力を測定することによって定量化され得る。このアッセイにおいて、生物活性は、コントロールサンプルに対する凝固時間の減少として表され、1ユニット/mlのVII因子活性を含むプールされたヒト血清標準との比較によって「VII因子ユニット」に変換される。或いは、VIIa因子生物活性は、(i)脂質膜中に包埋されたTF及びX因子を含む系において、VIIa因子又はVIIa因子等価物がXa因子を産生する能力を測定すること (Persson et al., J. Biol. Chem. 272:19919-19924, 1997); (ii) 水系におけるX因子加水分解を測定すること(下記の実施例5を参照); (iii) 表面プラスモン共鳴に基づく装置を用いてVIIa因子又はVIIa因子等価物のTFへの物理的結合を測定すること(Persson, FEBS Letts. 413:359-363, 1997)及び (iv) VIIa因子及び/又は VIIa因子等価物による合成基質の加水分解を測定すること;によって定量化され得る。
【0027】
VII因子等価物の例は、これらに限定されないが、以下のものを含む:野生型VII因子、 L305V-FVII、L305V/M306D/D309S-FVII、L305I-FVII、L305T-FVII、F374P-FVII、 V158T/M298Q-FVII、V158D/E296V/M298Q-FVII、K337A-FVII、M298Q-FVII、V158D/M298Q-FVII、L305V/K337A-FVII、V158D/E296V/M298Q/L305V-FVII、V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、V158D/E296V/M298Q/L305V/K337A-FVII、K157A-FVII、E296V-FVII、E296V/M298Q-FVII、V158D/E296V-FVII、V158D/M298K-FVII、and S336G-FVII、L305V/K337A-FVII、L305V/V158D-FVII、L305V/E296V-FVII、L305V/M298Q-FVII、L305V/V158T-FVII、L305V/K337A/V158T-FVII、L305V/K337A/M298Q-FVII、L305V/K337A/E296V-FVII、L305V/K337A/V158D-FVII、L305V/V158D/M298Q-FVII、L305V/V158D/E296V-FVII、L305V/V158T/M298Q-FVII、L305V/V158T/E296V-FVII、L305V/E296V/M298Q-FVII、L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII、L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII、L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII、L305V/V158T/E296V/K337A-FVII、L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII、L305V/V158D/E296V/K337A-FVII、L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII、S314E/K316H-FVII、S314E/K316Q-FVII、S314E/L305V-FVII、S314E/K337A-FVII、S314E/V158D-FVII、S314E/E296V-FVII、S314E/M298Q-FVII、S314E/V158T-FVII、K316H/L305V-FVII、K316H/K337A-FVII、K316H/V158D-FVII、K316H/E296V-FVII、K316H/M298Q-FVII、K316H/V158T-FVII、K316Q/L305V-FVII、K316Q/K337A-FVII、K316Q/V158D-FVII、K316Q/E296V-FVII、K316Q/M298Q-FVII、K316Q/V158T-FVII、S314E/L305V/K337A-FVII、S314E/L305V/V158D-FVII、S314E/L305V/E296V-FVII、S314E/L305V/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T-FVII、S314E/L305V/K337A/V158T-FVII、S314E/L305V/K337A/M298Q-FVII、S314E/L305V/K337A/E296V-FVII、S314E/L305V/K337A/V158D-FVII、S314E/L305V/V158D/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158D/E296V-FVII、S314E/L305V/V158T/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T/E296V-FVII、S314E/L305V/E296V/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII、S314E/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII、S314E/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、S314E/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII、K316H/L305V/K337A-FVII、K316H/L305V/V158D-FVII、K316H/L305V/E296V-FVII、K316H/L305V/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T-FVII、K316H/L305V/K337A/V158T-FVII、K316H/L305V/K337A/M298Q-FVII、K316H/L305V/K337A/E296V-FVII、K316H/L305V/K337A/V158D-FVII、K316H/L305V/V158D/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158D/E296V-FVII、K316H/L305V/V158T/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T/E296V-FVII、K316H/L305V/E296V/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII、K316H/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII、K316H/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、K316H/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII、K316Q/L305V/K337A-FVII、K316Q/L305V/V158D-FVII、K316Q/L305V/E296V-FVII、K316Q/L305V/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T-FVII、K316Q/L305V/K337A/V158T-FVII、K316Q/L305V/K337A/M298Q-FVII、K316Q/L305V/K337A/E296V-FVII、K316Q/L305V/K337A/V158D-FVII、K316Q/L305V/V158D/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158D/E296V-FVII、K316Q/L305V/V158T/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T/E296V-FVII、K316Q/L305V/E296V/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII、K316Q/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII、K316Q/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、及びK316Q/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII。
【0028】
幾つかの態様において、VII因子等価物はV158D/E296V/M298Q-FVIIである。
【0029】
製剤(preparation)及び剤形(formulation):
本発明は、VIIa因子又はVIIa因子等価物の治療的投与を含み、これは、VIIa因子製剤を含む剤形を用いて達成される。ここで用いるように、「VII因子製剤(preparatio)」とは、起源細胞又はVIIa因子又はVIIa因子等価物を合成するようプログラムされた組換え細胞のいずれにせよ、それらが合成された細胞から分離された、変異体及び化学的修飾形態を含む、複数のVIIa因子ポリペプチド又はVIIa因子等価物ポリペプチドを称する。
【0030】
それらの起源細胞からのポリペプチドの分離は、これらに限定されないが、接着細胞培養物からの所望の産物を含む細胞培養培地の除去;非接着細胞の除去のための遠心分離又は濾過などを含む、当該分野で既知の任意の方法によって達成され得る。
【0031】
任意に、VII因子ポリペプチドは、さらに精製されてもよい。精製は、これらに限定されないが、例えば抗-VII因子抗体カラム(例えばWakabayashi et al., J. Biol. Chem. 261:11097, 1986;及び Thim et al., Biochem. 27:7785, 1988を参照)での親和性クロマトグラフィー;疎水性相互作用クロマトグラフィー;イオン交換クロマトグラフィー;サイズ排除クロマトグラフィー;電気泳動方法(例えば、調製用等電点電気泳動(IEF), 示差溶解度(例えば、硫酸アンモニウム沈殿)、又は抽出などを含む当該分野で既知の任意の方法を用いて達成され得る。一般的には、「Scopes, Protein Purification, Springer-Verlag, New York, 1982」;及び「Protein Purification, J.-C. Janson and Lars Ryden, editors, VCH Publishers, New York, 1989」を参照されたい。精製後、製剤は、好ましくは、約10重量%より少なく、より好ましくは約5%より少なく、及び最も好ましくは約1%より少ない、宿主細胞由来の非-VII因子タンパク質を含む。
【0032】
VII因子及びVII因子-関連ポリペプチドは、XIIa因子又は例えばIXa因子、カリクレイン、Xa因子、及びトロンビンのような、トリプシン様特異性を有する他のプロテアーゼを用いて、タンパク分解性切断によって活性化され得る。例えば、「Osterud et al., Biochem. 11:2853 (1972)」;Thomasの米国特許第4,456,591号;及び 「Hedner et al., J. Clin. Invest. 71:1836 (1983)」を参照されたい。或いは、VII因子は、Mono Q(登録商標)(Pharmacia)などのイオン交換クロマトグラフィーカラムを通すことによって活性化されることができる。得られた活性化VII因子は、次いで、以下に記載するように処方され投与されることができる。
【0033】
本発明における使用のための薬学的組成物又は剤形は、VIIa因子製剤を、薬学的に許容される担体、好ましくは水溶性担体又は希釈剤と併せて含み、好ましくはそれに溶解されて含む。種々の水溶性担体を用いることができ、例えば水、緩衝水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシンなどを用いることができる。本発明の製剤は、傷害の部位に輸送するため又は傷害の部位を標的にするための、リポソーム製剤中に処方されることもできる。リポソーム製剤は、例えば米国特許第4,837,028号、4,501,728号、及び4,975,282に一般的に記載されている。該組成物は、従来の、周知の滅菌技術によって滅菌されることができる。得られた水溶液は、使用のためにパックされ、或いは無菌的な条件下で濾過及び凍結乾燥され、該凍結乾燥された製剤は、投与の前に滅菌水溶液と組み合わされる。
【0034】
該組成物は、これらに限定されないが、pH調整剤及び緩衝剤及び/又は張度調整剤、例えば酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩基カリウム、塩化カルシウム等を含む、薬学的に許容される補助的な物質又はアジュバンドを含んでもよい。
【0035】
治療措置(Treatment regimen):
本発明の実施において、VIIa因子又はVIIa因子等価物は、外傷を治療するための単回投与有効量を含む単回投与として患者に投与され得るか、又は、外傷の治療に有効な量を合わせて含む段階的な投与系列(staged series)で患者に投与されてもよい。VIIa因子又はVIIa因子等価物の有効量(下記参照)とは、単回投与又は複数投与の集合で投与されたとき、又は、任意の他のタイプの定義された治療処置の一部として投与されたとき、外傷に付随する臨床的パラメーターの少なくとも一つにおいて測定可能な改善を生じるVIIa因子又は等価物の量を指す(下記参照)。VIIa因子等価物が投与された場合、有効量は、VIIa因子等価物の凝固活性をVIIa因子のものと比較し、投与されるべき量をVIIa因子の所定の有効投与量に比例して調整することによって決定される。
【0036】
本発明に従ったVIIa因子又はVIIa因子等価物の投与は、好ましくは、外傷傷害の発生後約6時間以内に開始され、例えば約4時間以内、約2時間以内、又は約1時間以内に開始される。
【0037】
単回投与の投与は、VIIa因子又はVIIa因子等価物の全投与を、約5分より少ない期間で大量瞬時投与(bolus)として投与することを示す。幾つかの態様において、該投与は、約2.5分より少ない期間で、特に、約1分より少ない期間で生じる。典型的には、単回投与有効量は、少なくとも約40 μg/kgのヒトVIIa因子又は対応する量のVIIa因子等価物を含み、少なくとも約50 μg/kg、75 μg/kg、又は90 μg/kg、又は少なくとも150 μg/kgのようなVIIa因子を含む。
【0038】
幾つかの態様において、本発明の単回投与のVIIa因子又はVIIa因子等価物の投与に続いて、患者は、少なくとも約15分の間隔ではさらなるVIIa因子又はVIIa因子等価物を受けない。幾つかの態様において、投与後の間隔は、少なくとも約30分であり、例えば、少なくとも約45分、少なくとも約1時間、少なくとも約1.5時間、又は少なくとも約2時間である。
【0039】
他の態様において、患者は、VIIa因子又はVIIa因子等価物を以下の措置に従って受ける:(i) 患者は、少なくとも約40 μg/kgを含むVIIa因子又はVIIa因子等価物の第1の量を受ける; (ii) 少なくとも約30分の期間の後、VIIa因子又はVIIa因子等価物の第2の量を投与される、該量は少なくとも約40 μg/kgを含む;及び (iii) 第2の投与量の投与から少なくとも約30分の期間の後、VIIa因子又はVIIa因子等価物の第3の量を投与される、該量は少なくとも約40 μg/kgを含む。第3の量の投与から少なくとも約30分の期間の後、該患者は、少なくとも約40 μg/kgを含む、VIIa因子又はVIIa因子等価物のさらなる(第4の)量を受けてもよい。
【0040】
他の態様において、第1の量のVIIa因子又はVIIa因子等価物は、少なくとも約100 μg/kg、例えば少なくとも約150 μg/kg又は 少なくとも約200 μg/kgを含む;他の態様において、第2の量のVIIa因子又はVIIa因子等価物は、少なくとも約75 μg/kg、例えば少なくとも約90 μg/kgを含む;他の態様において、第3(及び任意の第4の)量のVIIa因子又はVIIa因子等価物は、少なくとも約75 μg/kg、例えば少なくとも約90 μg/kgを含む。
【0041】
一つの態様において、該第1の投与量は、約200 μg/kgを含み、第2の投与量は約 100 μg/kgを含み、第3の(及び任意に第4の)量は約100 μg/kgを含む。
【0042】
他の態様において、該患者は、第1の投与から、少なくとも約1時間、少なくとも約1.5時間、少なくとも約2時間、少なくとも約2.5時間、又は少なくとも約3時間後のような、少なくとも約45分の後に、第2の量のVIIa因子又はVIIa因子等価物を受ける。
【0043】
他の態様において、該患者は、先の投与から少なくとも約45分の後、例えば少なくとも約1時間、少なくとも約1.5時間、少なくとも約2時間、少なくとも約2.5時間、又は少なくとも約3時間後に、第3の(及び任意に第4の)量のVIIa因子又はVIIa因子等価物を受ける。
【0044】
一つの態様において、該患者は、約200 μg/kgを含む第1の投与量を受ける;約1時間後、該患者は、約100 μg/kgを含む第2の投与量を受け、及び、第1の投与量から約3時間後、該患者は約100 μg/kgを含む第3の投与量を受ける。
【0045】
以下の表は、本発明の異なる非限定的な態様を示す:
【表1−1】

【表1−2】

【0046】
VIIa因子又はVIIa因子等価物の有効量、並びに、全体的な投薬措置は、例えば、循環している凝固因子の相対レベル;血液損失量;出血速度;ヘマトクリットなどを含む、一以上の臨床的パラメーター中に結果として反映される、患者の止血の状態に従って変動し得ることが理解されるであろう。さらに、値のマトリックスを作成し、該マトリックスの異なる点で試験することによる日常的な実験によって、該有効量が当該分野の技術者には決定できることが理解されるであろう。
【0047】
例えば、一連の態様において、本発明は、(i) 第1の投与量のVIIa因子又はVIIa因子等価物を投与すること;(ii) 所定の時間後の該患者の凝固状態を評価すること;及び (iii) 該評価に基づいて、必要であれば、さらなる投与量のVIIa因子又はVIIa因子等価物を投与すること;を含む。工程(ii)及び(iii)は、満足な止血が達成されるまで繰り返される。
【0048】
本発明に従って、VIIa因子又はVIIa因子等価物は、これらに限定されないが、静脈内、筋肉内、皮下、粘膜、及び肺の投与経路を含む任意の有効な経路で投与されてよい。好ましくは、投与は、静脈内経路によって行われる。
【0049】
組合せ治療:
本発明は、VIIa因子又はVIIa因子等価物と協力するさらなる薬剤の混合性投与を包含する。幾つかの態様において、該さらなる薬剤は、これらに限定されないが、例えばVIII因子、IX因子、V因子、XI因子、又はXIII因子のような凝固因子;又は、例えば、PAI-1、アプロチニン、ε-アミノカプロン酸又はトラネキサム酸のような、線維素溶解性の系の阻害剤を含む凝固剤を含む。
【0050】
VIIa因子と他の薬剤の組合せの投与を含む態様において、VIIa因子又はVIIa因子等価物の投与量は、それ自身が含む有効量であってよく、追加の薬剤は該患者に対して治療上の利点をさらに増大し得ることが、理解されるであろう。或いは、VIIa因子又は等価物及び第2の薬剤の組み合わせは、外傷治療のための有効量を併せて含んでもよい。有効量は、例えば、投与の時間と数、投与様式、剤形などを含む特定の治療措置の関係において決定され得るということも理解されるであろう。
【0051】
治療結果:
本発明は、外傷を治療するための方法及び組成物を提供する。治療は、外傷の程度を示す任意のパラメーターの任意の測定可能な改善又は寛解を含む。そのようなパラメーターの非限定的な例は、以下を含む:
・凝固状態、例えば、異常性類似性DIC;過剰な繊維素溶解;これらに限定されないが、正常なプールされた血液の血小板数及び血小板活性と比較して限定された血小板数及び/又は傷害性の血小板機能を含む希釈性凝固傷害、を反映するような凝固状態
・低体温、約37℃以下の体温を有することを含み、例えば約36℃以下、約35℃以下、又は約34℃以下の体温を有することを含む
・代謝異常の指標、これらに限定されないが、約7.5以下、例えば、約7.4以下、約7.3以下、約7.2以下、又は約7.1以下の血液pHを有するアシドーシスを含む
・血液損失。
【0052】
外傷治療における本発明の方法の効果は、これらに限定されないが、それらの症候群の一以上によって起こされる死を含む、肺塞栓症 (PE)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、播種性血管内凝固(DIC)、急性心筋梗塞(AMI)、脳血栓症(CT)、全身性炎症反応症候群(SIRS)、感染、多臓器不全(MOF)、及び急性肺傷害(ALI)を含む遅発型合併症における統計学的減少を評価することによっても測定することができる。
【0053】
本発明の実施において、遅発型合併症は、例えば、表1〜5に記載したスコアのような従来の方法を用いて評価され得る。評価は、本発明に従った治療の開始から少なくとも約20日間行われ、例えば、治療の開始から少なくとも約30日間、少なくとも約35日間、又は少なくとも約40日間行われる。
【0054】
臓器損傷又は臓器不全は、これらに限定されないが、構造への損傷及び/又は腎臓、肺、副腎、肝臓、腸、心臓血管系、及び/又は止血系における臓器の機能への損傷を含む。臓器損傷の例は、これらに限定されないが、形態学的/構造的損傷及び/又は臓器機能への損傷、例えば、肺のクリアランス機能障害に起因するタンパク質(例えば界面活性物質)又は液体の蓄積、或いは肺交換メカニズムへの損傷又は歯槽-毛細血管膜損傷を含む。「臓器傷害」、「臓器損傷」及び「臓器不全」という語は、交換可能に用いられる。通常、臓器損傷は、臓器不全をもたらす。臓器不全とは、正常で健康な人間の対応する臓器の平均的で正常な機能と比較した、臓器機能における減少を意味する。臓器不全は、機能の微量な減少であり(例えば正常の80-90%)、又は、機能の大きな減少であり(例えば正常の10-20%);該減少は、臓器機能の完全な不全でもある。臓器不全は、これらに限定されないが、例えば組織壊死に起因する生物学的機能(例えば、尿排出量)の減少、糸球体の損失(腎臓)、フィブリン堆積、出血、浮腫、又は炎症を含む。臓器損傷は、これらに限定されないが、組織壊死、糸球体の損失(腎臓)、フィブリン堆積、出血、浮腫、又は炎症を含む。
【0055】
肺損傷は、これらに限定されないが、形態学的/構造的損傷及び/又は肺の機能への損傷、例えば、肺のクリアランスの機能障害に起因するタンパク質(例えば界面活性剤)又は液体の蓄積、又は、肺交換機能への損傷、又は歯槽-毛細血管膜損傷を含む。「肺傷害」、「肺損傷」及び「肺不全」という語は、交換可能に用いられ得る。
【0056】
臓器の機能及び能率の試験のための方法、及びそのような試験のために適切な生化学的又は臨床的パラメーターは、臨床医には周知である。
【0057】
そのようなマーカー、又は臓器機能の生化学的パラメーターは、例えば:
呼吸: PaO2/FiO2速度
凝固: 血小板
肝臓: ビリルビン
循環器: 血圧及び血管収縮治療の必要性
腎臓: クレアチニン及び尿排出量
である。
【0058】
他の臨床的評価は、人工呼吸器をしていない日数、臓器不全のない日数、血管収縮治療をしていない日数、SOFAスコア及び肺傷害スコア評価並びに生命徴候を含む。
【0059】
凝固障害又は炎症のための試験方法もまた、臨床医には周知である。そのような凝固傷害又は炎症状態のマーカーは、例えば、PTT、フィブリノーゲン欠乏、TAT複合体の上昇、ATIII活性、IL-6、IL-8、又はTNFR-1である。
【0060】
慢性的な臓器損傷は、これらに限定されないが、ARDSの結果起こる長期間損傷を含む。この残留機能障害は、特に肺機能において、これらに限定されないが、緩やかな制限、閉塞、一酸化炭素の拡散能力の機能障害、又は運動に伴うガス交換異常、持続性低酸素血症を伴う線維化肺炎、肺胞死腔(alveolar dead space)の増加、及び肺胞又は肺のコンプライアンスにおけるさらなる減少を含む。肺の毛細血管床の閉塞のための肺の高血圧は、重症であり、右心室の不全をもたらし得る。
【0061】
この状況において、予防は、これらに限定されないが、外傷に付随する遅発型合併症に付随する、一以上の症状又は状態の減弱、排除、最小化、緩和又は寛解を含み、これらに限定されないが、すでにある程度の臓器不全及び/又は損傷を受けている臓器のさらなる損傷及び/又は不全の予防、並びに、不全及び/又は損傷をまだ受けていない臓器のさらなる臓器の損傷及び/又は不全の予防を含む。そのような症状又は状態の例には、これらに限定されないが、形態学的/構造的な損傷及び/又は例えばこれらに限定されないが、肺、腎臓、副腎、肝臓、腸、心臓血管系、及び/又は止血系のような臓器の機能への損傷が含まれる。そのような症状又は状態の例には、これらに限定されないが、形態学的/構造的な損傷及び/又は、例えば、肺のクリアランスの機能障害に起因するタンパク質(例えば界面活性剤)又は液体の蓄積、或いは肺の交換機能への損傷又は歯槽毛細血管膜への損傷、尿排出量の減少(腎臓)、組織壊死、糸球体の損失(腎臓)、フィブリン体積、出血、又は炎症のような臓器の機能に対する損傷が含まれる。
【0062】
臓器不全又は損傷の減弱は、前記臓器の機能の少なくとも一つの周知のマーカー(表1〜4を参照)を、本発明に従った治療を受けていない外傷患者において検出された対応する値と比較して測定したときの臓器機能におけるいずれの改善をも含む。
【0063】
また、予防は、急性肺傷害(ALI)のARDSへの発展の予防を含む。ALIは次の判定基準 (Bernard et al., Am.J.Respir.Crit.Care Med 149: 818-24, 1994):急性の発症;胸部X線撮影での両側性浸潤;≦18 mm Hgの肺の-動脈閉塞(wedge)圧或いは左心房の高血圧の臨床的な証拠の欠如;及び ≦300のPaO2:FiO2によって定義される。ARDSは、次の判定基準(Bernard et al., Am.J.Respir.Crit.Care Med 149: 818-24, 1994):急性の発症;胸部X線撮影での両側性浸潤;≦18 mm Hgの肺の-動脈閉塞(wedge)圧或いは左心房の高血圧の臨床的な証拠の欠如;及び≦200のPaO2:FiO2 によって定義される。(PaO2は、動脈性酸素の分圧、及び吸気酸素のFiO2画分を示す)。
【0064】
遅発型合併症の測定:
以下は、外傷の遅発型合併症の発生率と重症度を評価する方法の非限定的な例である。
【0065】
1.グラスゴー・コマ・スコア(Glasgow Coma Score)は以下のように測定される:
【表2】

【0066】
2.多臓器不全(MOF)スコアは以下のように測定される:
【表3】

【0067】
3.ARDSスコアは以下のように測定される:
【表4】

【0068】
4.SIRSスコアは以下のように決定される:
【表5】

【0069】
5.DICは以下のように測定される:
【表6】

【0070】
一連の態様において、本発明の実施は、以下の臨床的な結果の一以上をもたらす:
・血液損失の減少、血液損失の完全な停止を含む
・例えば低体温及び血液pHを含む、ショックの一以上のパラメーターにおける改善。
【0071】
一連の態様において、本発明の実施は、以下の臨床的な結果の一以上をもたらす:
・治療の開始から20日後に測定されたとき、約9より大きいグラスゴー・コマ・スコア;
・治療の開始から30日後に測定されたとき、約11より大きいグラスゴー・コマ・スコア;
・治療の開始から40日後に測定されたとき、約13より多きいグラスゴー・コマ・スコア;
・治療の開始から20日後に測定されたとき、約4より小さいMOFスコア;
・治療の開始から30日後に測定されたとき、約3より小さいMOFスコア;
・治療の開始から40日後に測定されたとき、約2より小さいMOFスコア;
・治療の開始から20日後に測定されたとき、約8より小さいARDSスコア;
・治療の開始から30日後に測定されたとき、約6より小さいARDSスコア;
・治療の開始から40日後に測定されたとき、約4より小さいARDSスコア;
・治療の開始から20日後に測定されたとき、約3より小さいSIRSスコア;
・治療の開始から30日後に測定されたとき、約2より小さいSIRSスコア;
・治療の開始から40日後に測定されたとき、約1より小さいSIRSスコア;
・上記のグラスコー・コマ・スコア、MOFスコア、ARDSスコア、及び/又はSIRスコアの何れかの任意の組合せ。
【0072】
治療の他の指標:
本発明の方法の効力は、これらに限定されないが、本発明に従ったVIIa因子又はVIIa因子等価物を投与されていない同様の患者と比較して、以下のパラメーターの任意の一以上における減少を含む他の臨床的パラメーターを用いて評価されることもできる:血液、血漿、赤血球、濃縮赤血球、又は投与されることが必要な容量置換産物(volume replacement products)のユニットにおける減少;患者が集中治療室(ICU)で過ごす日数の減少、及び、ある処置(例えば、人工呼吸器のような)が必要な日数の減少を含む、外傷後の入院日数の減少。結果の非限定的な例は、(i) 投与されることが必要な血液、血漿、赤血球、濃縮赤血球、又は容量置換産物のユニットの、少なくとも約2ユニット、4ユニット、又は6ユニットでの減少;(ii)ICU日数の1日、2日、又は4日での減少;(iii)人工呼吸器をする日数の1日、2日、又は4日での減少;(iv)入院の総日数の2日、4日、又は8日での減少;を含む。
【0073】
以下の例は、本発明の非限定的な説明である。
【0074】
例1:外傷被害者へのVIIa因子投与
以下の調査は、重篤な外傷における出血の制御のための補助的療法としての、組換え活性化凝固因子VII(rFVIIa、NovoSeven(登録商標))の効力及び安全性を評価するために行った。
【0075】
方法
多施設、無作為、二重盲検での治験でrFVIIaをプラセボと比較した。調査産物は、8ユニットの赤血球(RBC)の輸血から0、1及び3時間後に、3静脈注射(200、100及び100 μg/kg)で投与した。患者は、投与から48時間観察され、30日に経過観察された。標準的な局所的病院治療をその間ずっと与えられた。鈍的グループ及び鋭的グループは別々に分析した。
【0076】
結果
総合して、143の鈍的患者及び134の鋭的患者が分析された。鈍的外傷の患者(傷害重篤度スコア 平均±SD: 33±13)において、48時間以内に死亡した患者のために合わせたとき、プラセボに対してrFVIIaグループでの投与の48時間(第一の終了点)以内のRBC輸血が減少する傾向があった(p=0.07)。死亡した患者を除外すると、RBCの減少は著しかった(p=0.02)。特に、大量の輸血(>20 RBCユニット)を受けた患者はrFVIIaグループにはほとんどいなかった。鈍的外傷でrFVIIaを受けた患者で、定義された重大な合併症が観察された患者はほとんどいなかった(表)。鋭的外傷を有する患者にたいしても輸血結果は同様であったが、しかし統計的に有意ではなかった。血栓塞栓性の事象数は、治療グループの間で同様であった。
【0077】
結論
rFVIIaは、このリスクの高い外傷集団における良好な安全プロフィールを示した。RBC所要量は、鈍的外傷でrFVIIaによって著しく減少した。合併症の減少傾向は、さらなる調査を保証する。
【表7】

【0078】
鈍的外傷の結果は、NovoSeven(登録商標)で処置された患者がほとんど合併症を有さず、従来の治療を受けた患者よりも集中治療室で過ごす時間が少ないことを示し、また、全体的な死亡率が、NovoSevenで治療されたグループにおいてより低いことを示した。
【0079】
例2:外傷の治療における標準的な治療と組合せたVIIa因子の効力
治験設計:
多施設、無作為、二重盲検、対応する(parallel)グループ、プラセボ-制御治験を、重篤な鈍的外傷傷害及び/又は鋭的外傷傷害を有する被検者において行った。被検者は、外傷施設(trauma centre)に入院の上でスクリーニングのために漸加された。治験産物と組み合わせて、彼らは、傷害及び出血のための標準的な治療並びに同等の外傷チームを担当する医師によって必要と思われる他の任意の方法を受けた。該治験は、二つの治療アーム(arms)で構成されている。4時間以内に6ユニットのPRBCを受けた適格な被検者は、以下のアームの一つに等しく割り当てられる:
・3時間のプラセボ投与の3つの単回投与(200 μg/kg + 100 μg/kg + 100 μg/kgに等しい容量)と組合された標準的な治療。
・3時間のrFVIIa投与の3つの単回投与(200 μg/kg + 100 μg/kg + 100 μg/kg)と組合された標準的な治療。
【0080】
rFVIIa又はプラセボ(治験産物)の第1の投与量は、PRBCの8ユニットを受けた被検者に一度投与され、1時間後、第2の投与量が投与され、さらに2時間後、治験産物の第3の最後の投与量が投与された。治験薬物は、所属外科医の意見では、PRBCの8ユニットより多くの輸血を必要とする被検者に与えられた。第1の投与量の投与の開始から48時間の観察期間の間、並びに、30日の経過観察評価が行われた。治験産物は、緩徐な大量瞬時投与のように静脈内に投与した。物理的な試験、研究室評価及び有害事象評価を、治験の間を通して行った。被検者は、PRBCユニット所要量、有害事象、生存、及び凝固関連パラメーターの変化を含む数値の、幾つかの終了点の調査を終止観察した。
【0081】
出血のための死亡率を評価するために、治療された20人の被検者の全てのセットの経時的な分析を、最初の100人の被検者の死亡率データが入手可能になったときに開始した。安全性が観察され、治験の間に報告されたような全てのSAEが連続的に考慮に入れられた。
【0082】
治験産物:
活性化組換えヒトFVII (rFVIIa)及びプラセボは、2.4 mgの単回使用バイアル中に凍結乾燥粉末として供給され、Ph.Eur.注射のために、滅菌水で再構成される。
【0083】
治験集団:
約280の被検者(各治療につき140)、16歳以上、重篤な鈍的外傷及び/又は鋭的外傷傷害が登録された。
【0084】
算入基準(Inclusion Criteria)
治験に入る被検者は、以下の算入基準を満たす:
1.鈍的外傷又は鋭的外傷による傷害。
【0085】
2.外傷施設に入院した後4時間以内にPRBC6ユニットを受ける。
【0086】
3.治験薬物の投与においてPRBCの8ユニットを受ける。
【0087】
4.既知年齢≧16又は地域の法律に従う法律上の年齢、及び≦65。
【0088】
排除基準:
以下の基準を満たす被検者は、調査から除外した:
1.入院前心停止
2.ER又はORにおける心停止
3.心臓への銃創
4.グラスコー・コマ・スケール<8
5.基礎欠乏>15 mEq/l又は重篤なアシドーシス(pH<7.0)
6.外傷施設に到着する前のPRBCの8ユニット以上の輸血
7.既知の先天的な出血障害
8.他の調査薬物の治験に現在関与しているか、又はここ30日以内に関与していた
9.既知の妊娠又は妊娠試験陽性と登録
10.以前のこの治験に参加
11.治験薬物が与えられる前に、ビタミンKアンタゴニスト、低投与量ヘパリンによる既知の治療
12.無作為化の前12時間以上の傷害持続
13.130kgを超える推定重量。
【0089】
評価:
治療効果は、SOTから48時間の間の以下の変数の評価に基づく:
・出血及び他の全ての原因による死亡のタイミングと数。
・以下の血液産物投与に続く、輸血ユニットのタイミングと数:
PRBC (タイミング)
FFP
血小板
クリオプレシピテート(cryoprecipitate)
・被検者が出血のために手術を受ける回数
・調査薬物の第1の投与量から、凝固PT、正常温度、及び酸塩基状態が正常な領域に達するまでの時間間隔
・薬物動態学的評価及び集団薬物動態学的評価
・30日での全体的な生存
・SOTから30日までに発生する、MOF、ARDS、及び感染を含む合併症のタイミングと数
・集中治療室(ICU)での日数、ベッドへの拘束日数及び/又はSOTから30日までの期間における人工呼吸器をした日数を含む入院日数。
【0090】
治療の開示前(治療期間0)
血液サンプリングを行った:
FVII:C (下記参照)
凝固関連パラメーター及び血液学(下記参照)
PT(下記参照)
血液化学(下記参照)
【0091】
第1の治験産物投与後及びその後の24時間
以下のことが記録及び/又は調査された:
死亡率及び死の時間。
30分、1、2、4、6、8、12、18及び24時間での生命徴候(下記参照)。グラスコー・コマ・スコアは24時間でのみ。
輸血産物ユニット所要数(下記参照)。
組成物、例えばコロイド、クリスタロイド(下記参照)を含むI.V.流体。
被検者が手術を受ける回数と手術の理由(下記参照)。
有害事象。
ARDS、感染、MOF。
【0092】
血液サンプリングを行った:
1、4、8、12、及び24時間での凝固関連パラメーター(下記参照)。
1、4、8、12及び24時間での血液学(Haematology)(下記参照)。
FVII:C 2〜4サンプル、以降の時間間隔につき一つ: 0-1時間、1-3時間、3-8時間、及び8-12時間(下記参照)。
頻繁なサンプリング:FVII:C 30分、1、2、3、4、6、8、及び12時間で(下記参照)。
PT、1、4、8、12、及び24時間で(下記参照)。
頻繁なサンプリング:30分及び1、2、3、4、6、8、12、18、及び24時間(下記参照)。
血液化学、24時間で(下記参照)。
【0093】
24〜48時間
死亡率及び死亡時間。
6時間毎の生命徴候。
輸血産物ユニット所要数。
組成物、例えば、コロイド、クリスタロイドを含むI.V.流体容量
ベースラインからの物理的な検査変化。
被検者が手術を受ける回数及び手術の理由。
ECG、48時間で。
ARDS、感染、MOF
有害事象。
【0094】
血液サンプリングは、以下のために36及び48時間において行う:
凝固関連パラメーター
血液学
PT
血液化学−48時間でのみ。
【0095】
経過観察来診−30日
死亡率及び死亡の日時
集中治療室及びベッド拘束の日数を含む入院の日数
人工呼吸器をした日数
深刻な有害事象
ARDS、感染、MOF。
【0096】
分析
凝固関連パラメーター及び血液学
以下の分析のために、血液を以下の時点で抜き取った:最初の治療の直前及び最初の治療から1、4、8、12、24、36、48時間後:
凝固関連パラメーター
APTT、フィブリノーゲン、D-ダイマー、抗トロンビン-III、F1+2、TAT
血液学
血小板、ヘマトクリット、ヘモグロビン及び白血球細胞
血液化学。
【0097】
以下の分析のために、血液を以下の時点で抜き取った:最初の治療の前及び最初の治療から24、48時間後:
S-ビリルビン、S-アルブミン、S-クレアチニン、S-カリウム、S-ナトリウム、S-アラニン アミノトランスフェラーゼ。
FVII:C (薬物動態)
【0098】
FVII:C分析のために、50の被検者は頻繁にFVII:Cのために試料採取され、血液を以下の時点で抜き取られた:最初の治療の直前及び30分、1、2、3、4、6、8、及び12時間。
【0099】
全ての他の被検者は、2〜4回、以下の時間間隔の2〜4に一つのサンプルで、血液を抜き取られた:0〜1時間(最初の投与の直後及び次の投与の前に与えられる)、1〜3時間(第2の投与量の直後及び次の投与の前に与えられる)、3〜8時間(第3の投与量の直後)、及び8〜12時間。サンプルは、時間間隔の任意の時間に取ることができる。サンプリングの正確な時間が記録された。
【0100】
プロトロンビン時間
プロトロンビン時間(PT)の分析のために、頻繁な FVII:Cサンプリングを有する50の被検者について、血液を以下の時点で抜き取った:最初の治療の直前及び30分、1、2、3、4、6、8、12、18、24、36及び48時間。
全ての他の被検者は、以下の時点で血液を抜き取られた:最初の治療の直前及び1、4、8、12、24、36、及び48時間。
【0101】
生命兆候
生命兆候を、治療の直前、及び調査薬物の第1の投与量の投与における第1の投与量から30分、1、2、4、6、8、12、16、18及び6時間毎に48時間まで記録した(その他の点では被検者が要求した条件のとおり)。
以下を記録した:
体温(C [直腸、経口又は耳])
血圧(mm Hg) (収縮期 / 弛緩期)がさらに、入院前段階の現場で記録される。
脈拍(拍動/分)をさらに、入院前段階の現場で記録される。
pH
呼吸速度(人工呼吸器をしていない場合のみ)がさらに入院前段階の現場で記録される。
呼吸性Pa02/Fi02、PaCO2
正末端(positive end)の呼気性圧力(cm H20)
グラスコー・コマ・スコア(本願明細書を参照)が外傷施設で入院前段階の現場で記録した:治療の前、調査薬物の第1の投与量から24及び48時間。患者が人工呼吸器をつけている場合、GCSは記録しなかった。
【0102】
例3:組換えVIIa因子の効果における、コロイド血液希釈、アシドーシス、及び低体温の影響のインビトロでの評価
以下の実験は、外傷において臨床的に関連する生理学的な条件下、即ち、低pH(アシドーシス)、低体温(hypothermia)、及びコロイド血液希釈の条件下で、VIIa因子の血餅形成における影響を評価するために行った。
【0103】
1.方法
血液収集:WBを6人の健康なボランティアから21ゲージの針を用いて得た。サンプルを、クエン酸を含むチューブに引き、クエン酸1部と血液9部を混合した。各参加者から集めた血液の第1のチューブを捨てた。血液サンプルを室温で30分静置した後、下記に概要を述べるように、模擬の一つの具体的臨床的状況に処置した。
【0104】
アシドーシスを刺激するために、WB(2 ml)に140 μLのN-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N'-2-エタンスルホン酸(HEPES) 1 Mバッファーを添加して酸性(pH7)にし、pH7に調整した。低体温を刺激するために、血液サンプルの温度を32℃に低下させた。血液希釈を刺激するために、全ての溶液をクエン酸(10% v/v)と混合し、血液希釈WBの充分な抗凝固を保証した。次いで、WBを、3つの異なるコロイド溶液:ヒト血清アルブミン5%、MW = 68 000;ヘタスターチ(Hetastarch)6% (Hespan(登録商標), duPont Merck, Wilmington, Del, USA)、MW = 450 000;又はヒドロキシエチルスターチ(HES) 130/0.4 (Voluven(登録商標), Fresenius Kabi, Bad Homburg, Germany)、MW = 130 000:の一つで、20%、40%、及び60% (V/V)に希釈した。
【0105】
トロンボエラストグラフィー(Thromboelastography)全血凝固分析:凝固は、組織因子1:50 000 (Innovin(登録商標), Dade Behring, Deerfield, Ill, USA)をWBに添加することによって開始され、15 mMの塩化カルシウム(遊離CaCl2 〜 2-3 mM)でカルシウム再添加(recalcifying)された。WB中の組織因子の最終濃度は0.12 pMに相当した。実験は、25 nMのrFVIIa (25 nM ≒ 90 μg/kg)の存在下又は非存在下で行った。止血過程を、TEG凝固アナライザー(5000 series TEG analyzer, Haemoscope Corporation)を用いて記録した。血餅形成速度(CFR)は、TEG α-アングル(図)として記録した;より大きなCFR値はより頑強な血餅形成を示している。
【0106】
統計学的分析:薬力学的なパラメーターは、平均及び標準偏差(SD)として要約される。学生のt-試験は、平均日数、0.05での2-側面αセットで行った。
【0107】
2.結果
アシドーシス:pHの7.0への低下は、CFRを著しく減少させた。rFVIIaの添加は、CFRの著しい上昇をもたらした。
【0108】
低体温:WB温度の32℃への低下は、CFRの適度な減少へ向かう傾向をもたらした。25 nMのrFVIIaの添加は、CFRを著しく増大させた。
【0109】
血液希釈:
アルブミン:アルブミンによる血液希釈は、血餅形成の機能障害を付随していなかった(表)。20%及び40%の希釈でrFVIIaの添加はCFRを著しく増加させたが、60%の希釈では増加させなかった。
・ヘタスターチ(Hetastarch):ヘタスターチによる血液希釈は、40%及び60%のみで血餅形成の機能障害を付随した(表)。20%希釈では、rFVIIaの添加はCFRを著しく増加させたが、40%及び60%の希釈では増加させなかった。60%希釈では、rFVIIaの添加後のCFRは、通常のWB中のCFRと比較して、著しく減少したままであった。
【0110】
HES:WBのHESによる希釈は全て、通常のWBと比較して減少したCFRを付随した(表)。rFVIIaの添加は、20% 希釈レベルでのみCFRを改善した。40%及び60%希釈では、rFVIIaの添加後のCFRは、通常のWB中のCFRと比較して著しく減少したままだった。rFVIIa濃度の200 nM (720 μg/kgの投与後の血漿濃度に相当)への上昇は、40%希釈でのCFRを著しく改善するが(48±3)、60%希釈のCFRの改善には失敗し、通常のWB中のCFRと比較して著しく減少したままであったことに注目されたい。
【0111】
3.結論
・rFVIIaのインビトロでの血餅促進効果は、アシドーシス、低体温、又は40%以下の血液希釈によっては不利に影響されなかった。しかしながら、6%のヘタスターチ及びHES130/0.4による、より過酷な程度のコロイド血液希釈は、インビトロでTEGによって測定したとき、血餅形成におけるrFVIIaの効果を損なった。
【表8】

【0112】
例4:外傷の治療において、標準的な治療と組み合わされて与えられたVIIa因子の効力
以下の調査は、重篤な外傷における出血制御のための補助的療法としての、組換え活性化凝固因子VII(rFVIIa, NovoSeven(登録商標))の効力と安全性を評価するために行った。
【0113】
1.方法
重篤な鈍的外傷傷害及び/又は鋭的外傷傷害によって激しく出血している患者を、標準的な治療に加えるrFVIIa (200 + 100 + 100 μg/kg)又はプラセボのために無作為化した。RBC (赤血球)8ユニットに続いて第1の投与量、1及び3時間後にさらなる投与量が投与された。
【0114】
患者は、治験産物の第1の投与量後48時間の間、厳密に観察された。これは、輸血及び注入の所要量、有害事象及び手術方法を記録することを含んだ。凝固及び血液生化学パラメーターにおける変化を評価するために、血液を頻繁な間隔で抜き取った。死亡率、人工呼吸器をした時間、入院データ、及び治験サイトによって報告されたような予め定義された重大な合併症(MOF及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS))を含む重篤な有害事象を30日まで記録した。
【0115】
終了点
止血性効果を評価するための、第1の終了点は、治験産物の第1の投与量後48時間に輸血されたRBC数(同種間RBC、自己RBC及び全血)であった。治療の結果はさらに、他の輸血産物の所要量、死亡率、人工呼吸器をした日数、及び入院日数を通して評価された。安全性の結果は、有害事象の頻度及びタイミング、及び凝固関連検査変量(laboratory variables)(活性化された部分的トロンボプラスチン時間(aPTT)、血小板、フィブリノーゲン、D-ダイマー、抗トロンビンIII、プロトロンビン断片1+2、及びトロンビン-抗トロンビン複合体)の変化を含む。死亡率が、外傷集団において鋭敏な変数ではないために、我々は、死亡、MOF、及びARDSを含む複合性の終了点を調査した。MOF及びARDSについての安全性の報告は、この調査プロトコールにおいて提供された、予め特定された定義に基づく。
【0116】
統計学的分析
我々は、重篤な鈍的外傷患者集団14における、遡及的な調査の輸血データに従って、サンプルサイズを算出した。初期GCS ≧ 8の患者において、12.4 (SD: 6.2)ユニットの0-48時間のRBC輸血所要量が見出された。各治療グループにおいて70の患者が、80%パワー及び5% 1型エラーで、8ユニットの前投与に加えて4.4ユニットから1.8ユニットへの0-48時間RBC所要量における60%の減少を検出することを要求していることが推定された。二つの外傷集団と、二つの治療グループに関する治験として、280人の患者の合計サンプルサイズが計画された。鈍的外傷及び鋭的外傷の集団は、別々に分析された。結果は、同意し治験薬物を受けた無作為化患者の全てに属した。1型エラーは、5%に設定した。全ての分析は、他に言及しない限り、演繹的に(a priori)定義した。
【0117】
治験産物処置から48時間(第1の終了点)以内に輸血されたRBCユニットの総数を、一側面のウィルコクソン-マン-ホイットニーランク テストの使用によって治療グループ間で比較した。一側面試験(one-sided test)は、rFVIIaの投与が輸血所要量を増加させることが期待されないように選択された。48時間以内に死亡した患者が排除されるか又は最悪の結果に割り当てられるかのいずれかの場合で、分析は別々に行った。
【0118】
48時間以内に死亡した患者を排除した場合の分析が、1)それらの患者の大きな割合で、ケアが無益であること、2)48時間輸血所要量が、わずか数時間だけ生きている患者のためには客観的に評価できない、という理由から優先される。ホッジ-レーマン(Hodges-Lehman)評価を、RBC輸血における相違を評価するために用いた。総RBCは、各成分をRBCの標準ユニットに規格化した、自己のRBC、同種間RBC及び全血の合計として算出した(全てのサイトにわたる平均として、63%のヘマトクリットの295 mLの容量と等しい)。
【0119】
フィッシャーの正確な試験は、大量輸血を必要とする患者の数(8ユニットの前投与を含む、RBCの>20ユニットとしてhoc後を定義した)と、30日以内にMOF、ARDS、及び/又は死を経験する患者の数を比較するために用いた。大量減少の相対的リスク減少及びその95%信頼区間(CI)を算出した。48時間死亡率における影響は、カイ二乗検定を用いて分析した。
【0120】
2.結果
無作為化された301人の患者において、143人の鈍的外傷患者及び134人の鋭的外傷患者が分析に適格だった。治療グループは、各外傷集団内でのベースライン特徴に関してよくマッチした(表1)。患者は、主に若い男性で、凝固傷害、アシドーシス及び低体温であることで特徴づけられた。鋭的外傷の原因は主に銃創(68%)及び刺し傷(30%)であり、一方鈍的外傷の75%は交通関連傷害によるものだった。
【0121】
出血制御
第1の終了点、治験産物の第1の投与量後48時間の観察期間の間のRBC所要量が、図1に、48時間で生存の患者について示されている。鈍的外傷の患者において、rFVIIaはプラセボと比較して、2.6ユニットだけ、48時間RBC所要量を著しく減少させた(p=0.02)。大量輸血の必要性は、プラセボグループの患者20/61 (33%)からrFVIIaグループの患者8/56 (14%)に減少し、これは、56%の相対リスク減少を表す(95% CI: [9%; 79%]; p=0.03) (図2)。鋭的外傷の患者において、1.0ユニット(p=0.10)のRBC減少を伴う48-時間RBC所要量に関するrFVIIaの著しい効果は観察されなかった。鋭的外傷における大量輸血の必要性は、プラセボ患者における10/54 (19%)からrFVIIaグループにおける4/58 (7%)に減少し、これは、63%の相対リスク減少を表す(95% CI: [-12%; 88%]; p= 0.08) (図2)。最悪の結果が死亡した患者に割り当てられた場合、いずれの外傷集団でも統計学的な有意に達しなかった(表2)。
【0122】
治療グループ間の著しい相違は、新鮮な凍結血漿、血小板、クリオプレシピテート、クリスタロイド又はコロイドの投与に関して、いずれの外傷患者においても観察されなかった(データは示さず)。
【0123】
臨床的結果及び安全性
有害事象、死亡率、人工呼吸器をしない日数及びICUにいない日数の結果を表3にまとめた。rFVIIaを支持するポジティブな傾向は、これらの終了点で観察され、特に、重大な合併症(ARDS、MOF及び/又は死)に関して観察された。生存曲線は、図3に示した。
【0124】
有害事象は、治療グループ間で類似した頻度及び重篤度で生じた。全体的に、有害事象プロファイルは、rFVIIa-処置及びプラセボ-処置の患者の間で類似し、報告された有害事象のタイプにおいて、明らかな治療依存的パターンはなかった。この重篤な傷害患者集団において期待できるように、3つの最も頻度の高い報告された重篤な有害事象はARDS、MOF、及び敗血症であった。
【0125】
総計12の血栓塞栓性の有害事象が、治験期間の間の調査で報告された;rFVIIa-投与された患者で6、プラセボ-投与された患者で6であった。鈍的外傷の患者において、肺の塞栓症及び鎖骨下(中心線後)の静脈血栓症の二つの発生率がプラセボグループで記録され、一方、一つの頚静脈血栓症(中心線後)及び一つの動脈肢血栓症がrFVIIa-処置患者で記録された。鋭的外傷の患者において、一つの大脳梗塞及び一つのDVTが、各治療グループで記録された。加えて、腸間膜静脈血栓症がプラセボグループで記録され、腸の梗塞(手術部位で)及び静脈血栓症の現象がrFVIIaグループで記録された。全12の血栓塞栓性の事象が、重篤な有害事象として報告された。
【0126】
3.結論
rFVIIaは、重篤な鈍的外傷における出血の制御を補助し、RBC輸血の著しい減少をもたらした。同様の傾向は、鋭的外傷でも観察された。rFVIIaの安全性は、調査された投与量範囲内で、この外傷集団において証明された。
【表9】

【0127】
【表10】

【0128】
【表11】

【0129】
本明細書において言及された全ての特許、特許出願、及び参考文献は、それらの全てが参考として援用される。
本発明の多くの変異形が、上記記載を考慮に入れて当業者によって提案されるであろう。そのような明らかな変異形は、従属請求項の完全に意図する範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】図1は、治験産物の第1投与量後48時間の観察期間内の、RBC所要量の分布を示す。
【図2】図2は、第1投与量の48時間以内に>12ユニットのRBCを受けた、48時間での生存患者の割合、これは、8ユニットの前投与を含む>20ユニットのRBCに相当する。
【図3】図3は、鈍的外傷及び鋭的外傷の集団の生存曲線を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外傷を治療するための薬剤の製造のための、VIIa因子又はVIIa因子等価物の使用。
【請求項2】
前記患者が鈍的外傷を受けていることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記患者が鋭的外傷を受けていることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記薬剤が、少なくとも約150 μg/kgのVIIa因子又は対応する量のVIIa因子等価物を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記薬剤が、少なくとも約150、好ましくは200 ug/kgのVIIa因子又は対応する量のVIIa因子等価物を含む第1の投与量、続いて、治療の開始から1時間後に投与される約100 ug/kgのVIIa因子又は対応する量のVIIa因子等価物を含む第2の投与量で投与されるためのものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
さらに、約100 ug/kgのVIIa因子又は対応する量のVIIa因子等価物を含む第3の投与量が治療の開始から3時間後に投与される、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記薬剤が、外傷傷害の時点からVIIa因子又はVIIa因子等価物の投与の時点の間に、約10ユニットより少ない、例えば、約8ユニット、5ユニットより少ない、又は約2ユニットより少ないような、全血(WB)、パックされた赤血球(pRBC)、又は新鮮な凍結血漿(FFP)を受けた患者の治療のため、あるいは、VIIa因子又はVIIa因子等価物の投与の前にいかなる血液産物及び/又は容量置換産物をも受けていない患者の治療のためのものである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記薬剤がさらに、第2の血液凝固剤を、前記VIIa因子又はVIIa因子等価物による前記予防又は減弱を増大する量で含むことを特徴とする、請求項1〜7の何れか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記第2の血液凝固剤が、凝固因子及び抗線維素溶解剤から成る群から選択される、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記凝固因子が、VIII因子、IX因子、V因子、XI因子、XIII因子、及びそれらの任意の組合せから成る群から選択され;並びに、前記抗線維素溶解剤がPAI-1、アプロチニン、ε-アミノカプロン酸、及びトラネキサム酸から成る群から選択される、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
外傷の治療のためのパーツのキットであって、
(i)VIIa因子又はVIIa因子等価物を含む薬剤;及び
(ii)以下が記述された使用のための説明書:
a.少なくとも約150、好ましくは少なくとも約200 μg/kgのVIIa因子又は対応する量のVIIa因子等価物を含む第1の投与量が、治療の開始時点で投与されるべきである;
b.約100 μg/kgのVIIa因子又は対応する量のVIIa因子等価物を含む第2の投与量が、治療の開始から1時間後に投与されるべきである:
を含むキット。
【請求項12】
前記使用のための説明書が、約100 μg/kgのVIIa因子又は対応する量のVIIa因子等価物を含む任意の第3の投与量が、前記患者に治療の開始から3時間後に投与されてよいことをさらに記述している、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
外傷の治療方法であって、前記治療を必要とする患者に、該治療に有効な量のVIIa因子又はVIIa因子等価物を投与することを含む方法。
【請求項14】
前記患者が鈍的外傷を受けていることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記患者が鋭的外傷を受けていることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記有効量が、少なくとも約150 μg/kgのVIIa因子又は対応する量のVIIa因子等価物を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも約200 ug/kgのVIIa因子又は対応する量のVIIa因子等価物の第1の量が治療の開始時に投与され、約100 μg/kgのVIIa因子又は対応する量のVIIa因子等価物の第2の量が治療の開始から1時間後に前記患者に投与されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
約100 μg/kgのVIIa因子又は対応するVIIa因子等価物の第3の量を、治療の開始から3時間後に前記患者に投与することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
さらに、第2の凝固剤を、前記VIIa因子又はVIIa因子等価物による前記治療を増強する量で前記患者に投与することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の凝固剤が、凝固因子及び抗線維素溶解剤から成る群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記凝固因子が、VIII因子、IX因子、V因子、XI因子、XIII因子、及びそれらの任意の組合せから成る群から選択され;並びに、前記抗線維素溶解剤がPAI-1、アプロチニン、ε-アミノカプロン酸、及びトラネキサム酸から成る群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
外傷を予防治療する方法であって、該方法は、前記治療を必要としている患者に、前記治療に有効な量のVIIa因子又はVIIa因子等価物を、外傷を治療する目的で意図的に投与することを含む方法。
【請求項23】
外傷患者の大部分における外傷を治療するための方法であって、前記方法は、(i) 前記治療に有効な量のVIIa因子又はVIIa因子等価物を、外傷患者のグループに投与すること;及び、(ii) 前記患者のグループの中での外傷の一以上の臨床的パラメーターにおいて、前記VIIa因子又はVIIa因子等価物を受けていない同じグループの患者において期待される前記臨床的パラメーターのレベルと比較した減少を観察すること;
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−520531(P2007−520531A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551859(P2006−551859)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2005/050487
【国際公開番号】WO2005/074975
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(501497563)ノボ ノルディスク ヘルス ケア アクチェンゲゼルシャフト (58)
【Fターム(参考)】