説明

外向フランジ部付金属製部材の製造方法

【課題】素材の容積を厳密に規制しなくても、各工程でバリを生じる事が無く、外周面に静止側フランジ6aを設けた外輪を低コストで造れる様にする。
【解決手段】荒成形工程時に素フランジ34を、一部に欠肉部35を存在させて形成する。仕上成形工程で使用する下側ダイス32aに設けた仕上成形用凹部37の深さ寸法を、前記素フランジ部34及び前記静止側フランジ6aの厚さ寸法よりも大きくする。上側ダイス31aを、前記仕上成形用凹部37の内周面との間に隙間を介在させずに進入させる。この作業を熱間鍛造で行う事により、前記素フランジ部を構成する金属材料を前記仕上成型用押型の押圧部と前記フランジ仕上成形用凹部とにより囲まれる空間に充満させる。そして、前記素フランジ34から前記欠肉部を消滅させ、前記静止側フランジ6aとし、且つ、この静止側フランジ6aの外周縁部にバリを発生させない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する軌道輪部材、即ち、外輪やハブの如く、外周面に外向フランジ部を設けた、外向フランジ部付金属製部材の製造方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車輪を構成するホイール、及び、制動用回転部材であるディスク或いはドラムを懸架装置を構成するナックルに回転自在に支持する為に、車輪支持用転がり軸受ユニットが広く使用されている。図7は、従来から広く知られている、従動輪(FR車及びMR車の前輪、FF車の後輪)用の車輪支持用転がり軸受ユニット1の1例を示している。この車輪支持用転がり軸受ユニット1は、外輪2の内径側にハブ3を、複数の転動体4、4を介して、回転自在に支持している。使用状態では、前記外輪2を前記ナックルに結合固定し、前記ハブ3に車輪及び制動用回転部材を支持固定する。そして、これら車輪及び制動用回転部材を前記ナックルに対し、回転自在に支持する。
【0003】
この為に、前記外輪2の内周面の2個所位置に複列の外輪軌道5、5を、外周面の一部で、軸方向中央部よりも少し軸方向内寄り部分(軸方向に関して内とは、使用状態で車体の幅方向中央側となる側を言い、図7の右側、図1〜6、12〜15の上側、図8、9の左上側、図10、11の右下側。反対に、使用状態で車体の幅方向外側となる、図7の左側、図1〜6、12〜15の下側、図8、9の右下側、図10、11の左上側を、軸方向に関して外と言う。本明細書全体で同じ。)に、特許請求の範囲に記載した外向フランジ部である静止側フランジ6を、それぞれ形成している。一方、前記ハブ3の外周面には、前記外輪2よりも軸方向外方に突出した外端寄り部分に、やはり特許請求の範囲に記載した外向フランジ部であって、車輪及び制動用回転部材を支持固定する為の回転側フランジ7を、軸方向中間部乃至内端寄り部分に複列の内輪軌道8、8を、それぞれ形成している。そして、これら両列の内輪軌道8、8と前記両列の外輪軌道5、5との間に、両列毎に複数個ずつの転動体4、4を配置して、前記外輪2の内径側での前記ハブ3の回転を自在としている。
【0004】
尚、前記ハブ3は、ハブ本体9と、内輪10と、ナット11とから成り、前記内輪軌道8、8は、このハブ本体9の中間部及びこの内輪10の外周面に形成されている。又、この内輪10は、このハブ本体9の軸方向内端寄り部分に形成した小径段部12に外嵌した状態で、前記ナット11により、前記ハブ本体9に対し固定している。尚、このハブ本体9の内端部に形成したかしめ部により、前記内輪10をこのハブ本体9に対し固定する構造も、広く知られている。
【0005】
上述の様な車輪支持用転がり軸受ユニット1を構成する、前記外輪2や前記ハブ本体9等の、外向フランジ部付金属製部材の一種である外向フランジ付の軌道輪部材は、炭素鋼等の金属材料に塑性加工を施す事により造る。この様な塑性加工の方法に就いては、例えば特許文献1〜7に記載される等により、従来から広く知られている。例えば、特許文献2には、上述の様な外輪2やハブ本体9を冷間鍛造により造る方法が記載されている。この特許文献2に記載された様な方法により、前記外輪2やハブ本体9を鍛造加工する場合、前記静止側フランジ6や前記回転側フランジ7に欠肉が生じない様にする為には、これら各フランジ6、7の外周縁部にバリが発生し易い。
【0006】
ところで、ハブ本体9の外周面に設ける、車輪や制動用回転部材を固定する為の回転側フランジ7として従来一般的には、図8に示す様な円板状のものが使用されていた。この様な円板状の回転側フランジ7を形成する場合に発生するバリは、前記回転側フランジ7の外周縁に全周に亙って生じる。この場合のバリの幅は狭く、トリミング時に除去するスクラップの量は少ない為、材料の歩留り悪化は限られる。又、除去すべきバリを生じない様にする、所謂フラッシュレス加工も、比較的容易に行える。
【0007】
一方、近年、バネ下荷重の低減により、乗り心地や走行安定性を初めとする走行性能向上や、材料費の低減によるコスト削減等の為、図9に示す様に、外周面に複数の突出部13、13を放射状に配列した回転側フランジ7aを設けたハブ本体9aを使用する事が考えられている。又、外輪2の外周面に設ける静止側フランジ6にしても、図10に示す様に、この外輪2の本体部分の外周面からの突出量が不同である(外周縁形状が非円形である)、異形のものを、一般的に使用している。この様な、異形の静止側フランジ6を設けた前記外輪2や、上述の様な複数の突出部13、13を放射状に配列した回転側フランジ7aを設けたハブ本体9aを、上述の特許文献2に記載された製造方法により造る場合、フラッシュレス加工が難しく、大きなバリを発生し易くなる。
【0008】
例えば、前記異形の静止側フランジ6を有する前記外輪2を従来から知られている一般的な鍛造加工方法により造ると、図11の(A)に示す様に、前記静止側フランジ6の外周縁部に、全周に亙って大きなバリ14が発生する事が避けられない。この様な大きなバリ14は、トリミングにより除去して、図11の(B)に示した外輪2と(C)に示したスクラップ片15とに分離する。この様なトリミング作業が必要になる事は、前記外輪2の製造作業の効率化を妨げる原因となる。又、スクラップ片15は、集めて再利用するにしても、材料の歩留り悪化によるコスト上昇の要因となる為、大きなスクラップ片が生じる事は好ましくない。
尚、上述の様な問題は、外周面に異形の静止側フランジ6を設けた外輪2を造る場合に限らず、図9に示す様な、放射状の回転側フランジ7aを設けたハブ本体9aを造る場合にも生じる。
【0009】
これに対して、特許文献7には、所謂フローティングダイと呼ばれる可動ダイスを使用する事により、フランジの外周縁にバリが発生するのを抑えられる、外向フランジ部付金属製部材の製造方法に関する発明が記載されている。前記特許文献7には、複数種類の製造方法に就いて記載されているが、このうちの、外周面に異形の静止側フランジを備えた外輪製造方法に就いて、図12〜14により説明する。
【0010】
この従来方法の場合、図12の(A)に示した、中炭素鋼、軸受鋼、浸炭鋼の如き鉄系合金等の、塑性加工後に焼き入れ硬化可能な、金属製で円柱状の素材16に、順次、塑性加工或いは打ち抜き加工を施す。そして、(B)に示した第一中間素材17、(C)に示した第二中間素材18、(D)に示した第三中間素材19を経て、(E)に示した最終中間素材29を得る。更に、この最終中間素材29に、必要とする切削加工及び研削加工を施して、前述の図7に示した車輪支持用転がり軸受ユニット1を構成する外輪2とする。これらの加工は、総て熱間若しくは温間で行う。
【0011】
先ず、据え込み工程で、図12の(A)→(B)に示す様に、前記素材16を軸方向に押し潰しつつ外径を拡げ、この素材16を、径方向中間部が膨らんだビヤ樽型の、前記第一中間素材17とする。
次に、鍛造加工の分野で広く知られた前後方押し出し工程で、前記第一中間素材17よりも、次述する図12の(C)に示す様な第二中間素材18の形状に近付けた、別の中間素材{図13の(A)参照}を得る。そして、この別の中間素材に据え込み加工を施して、図12の(C)に示す様な第二中間素材18とする。この第二の据え込み加工は、例えば図13に示した様な据え込み装置を使用して行う。この据え込み装置は、押圧パンチ20及びカウンターパンチ21と、前記可動ダイスである上側ダイス22と、固定ダイスである下側ダイス23と、押し出しパンチ24とを備える。尚、図12に示した各中間素材の形状と、図13に示した各中間素材の形状とは多少相違するが、前記第二の据え込み加工の基本に関しては同様である。
【0012】
前記各構成部材20〜24のうち、上側ダイス22はプレス加工機のラムの下面に、このラムに対する昇降可能に支持されており、圧縮コイルばね等の大きな弾力を有する弾性部材25、25により、下方に向いた大きな弾力を付与されている。前記ラムに対する前記上側ダイス22の下降量は、これらラムと上側ダイス22との間に設けたストッパ機構により規制している。又、上昇量は、例えば、前記ラムの下面と前記上側ダイス22の上面とが突き当たる事で制限される。従ってこの上側ダイス22は、通常状態では前記ラムと共に昇降するが、上向きの大きな力が加わった場合には、前記各弾性部材25、25の弾力に抗し、前記ラムに対して上昇する。又、前記押圧パンチ20は、前記上側ダイス22の内径側に配置した状態で、前記ラムに対し固定している。従ってこの上側ダイス22は前記押圧パンチ20の周囲に、この押圧パンチ20に対する所定量の軸方向変位(昇降)を可能に支持されている。
【0013】
一方、前記カウンターパンチ21と前記下側ダイス23とは、前記プレス加工機の支持台の上面に、互いに同心に固定されており、互いの間に、下側キャビティ26を設けている。更に、前記押し出しパンチ24は、円筒状であり、その上端面により、前記下側キャビティ26の下端部を仕切っている。この様な前記押し出しパンチ24は、前記プレス加工機の支持台に対し、昇降可能に支持されており、この押し出しパンチ24が下降し切った状態で、前記下側キャビティ26の内面形状が、前記第二中間素材18(前記第三中間素材19)の軸方向外半部の外面形状に見合う形状になる。又、前記下側キャビティ26の上端部の円周方向複数個所(例えば4個所)に、それぞれ径方向外方に突出する成形用凹部27を、前記下側ダイス23の上面から凹む状態で形成している。
【0014】
上述の様な構成を有する、前記据え込み装置を使用し、前記別の中間素材に前記据え込み工程を施して、前記第二中間素材18とするには、この別の中間素材の径方向中央部分を、図13の(A)→(C)に示す様に、前記押圧パンチ20と前記カウンターパンチ21との間で押し潰す。この様に径方向中央部分を押し潰す事で押し出された金属材料は、前記下側キャビティ26内に入り込んで当該部分を円筒形に形成すると共に、一部は、前記成型用凹部27と前記上側ダイス22とにより囲まれたフランジ成形用キャビティ内に進入して、外向フランジ部である静止側フランジ6を形成する。
【0015】
前記第二中間素材18を形成した状態で、この静止側フランジ6に欠肉が生じない様にすべく、前記第一中間素材17の容積を、前記第二中間素材18の容積よりも多目にした場合には、前記静止側フランジ6の外周縁部に、僅かながらバリ14aが生じる。即ち、この場合には、前記フランジ成形用キャビティ内に金属材料が充満した後、更に、前記押圧パンチ20が、図13(C)に示す様に、十分に下降し、前記フランジ成形用キャビティ内に十分量の金属材料が押し込まれると、前記第一中間素材17から造られた前記別の中間素材の金属材料が余分である分、前記フランジ成形用キャビティ内の圧力が上昇し、前記上側ダイス22を上方に押圧する力が大きくなる。そして、この力が、前記各弾性部材25、25の弾力よりも大きくなると、前記上側ダイス22が上昇する。そして、前記フランジ成形用キャビティ内に入り込んでいた金属材料の一部が、前記両ダイス22、23同士の間に生じた隙間内に入り込み、前記バリ14aを形成する。但し、前記第一中間素材17の容積が前記第二中間素材18の容積以下であった場合には、上述の様なバリ14aが形成される事はない。
【0016】
何れにしても、前記第二中間素材18は、前記押圧パンチ20及び前記上側ダイス22を上昇させてから、前記押し出しパンチ24を上昇させる事で、前記据え込み装置から取り出す。そして、前記バリ14aが形成された場合にはこのバリ14aを除去してから、次の仕上成形工程に送り、図12の(D)に示す様な第三中間素材19とする。次いで、図12の(D)→(E)に示す様に、この第三中間素材19の隔壁部28を打ち抜き除去し、最終中間素材29とする。この最終中間素材29は、完成後の外輪2(図7参照)よりも厚肉である。そこで、この最終中間素材29に、所定の切削(旋削)加工及び研削加工を施して、前記外輪2として完成する。
【0017】
上述の様な特許文献7に記載された従来技術によれば、従前の周知技術に比べて、バリ14aを小さなものに抑えられる。この為、材料の歩留り向上と、このバリ14aを除去する作業の容易化とにより、前記静止側フランジ6を備えた外輪2の加工コストの低減を図れる。特に、前記第一中間素材17の容積と前記第二中間素材18の容積とを厳密に一致させれば、前記静止側フランジ6に欠肉を生じる事なく、しかもこの静止側フランジ6の外周縁にバリが生じる事を防止して、前記外輪2の加工コストをより一層低減できる。但し、前記第一中間素材17の容積と前記第二中間素材18の容積とを厳密に一致させる事は難しい為、前記加工コスト低減の為の現実的な手法とは言えない。
【0018】
これに対して、前記特許文献7に記載された従来技術に若干の改良を加える事により、前記第二中間素材18の段階で、前記バリ14aの発生を無くせる可能性はある。この様な改良技術に就いて、図14により説明する。この改良技術の場合には、前記素材16{図12の(A)}の容積を、前述した図13に示す様にして行う荒成形加工時に、前記各パンチ20、21、24と前記両ダイス22、23とにより画成されるキャビティの容積よりも少しだけ小さくしておく。この為、前記荒整形加工が完了した状態では、図14の(A)に示す様に、静止側フランジ6の外周縁部に欠肉部30が生じる。この欠肉部30は、図14の(B)に示す様に、仕上成型用押型である上側ダイス31と、仕上成型用受型である下側ダイス32との間で前記第二中間素材18を押圧し、この第二中間素材18を第三中間素材19とする仕上成形加工時に、前記静止側フランジ6の内径寄り部分に存在する金属材料を移動させる事により埋める。
【0019】
但し、上述の様な改良技術に関しても、前記欠肉部30を完全に解消する事を考慮した場合には、前記第二中間素材18(を造る為の前記素材16)の容積が、前記第三中間素材19の容積未満にならない様にする必要がある。前記第二中間素材18の容積と前記第三中間素材19の容積とを厳密に一致させる事は、前記第一中間素材17の容積と前記第二中間素材18の容積とを厳密に一致させる事と同様に難しい。この為、前記欠肉部30を完全に解消する事を考慮した場合には、前記第二中間素材18(を造る為の前記素材16)の容積を前記第三中間素材19の容積よりも僅かとは言え、多目にする必要がある。そして、多目にした場合には、図15に示す様に、前記第三中間素材19の外周面に、バリ14bが形成される。要するに、前記改良技術にしても、バリが発生するタイミングが荒成形工程から仕上工程に移るだけで、前記加工コスト低減の為の現実的な手法とは言えない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、素材の容積を厳密に規制しなくても、各工程でバリを生じる事が無く、外向フランジ部付金属製部材を低コストで造れる製造方法を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の外向フランジ部付金属製部材の製造方法は、例えば前述した特許文献7に記載される等により従来から知られている外向フランジ部付金属製部材の製造方法と同様に、それぞれが塑性加工である、据え込み工程と、荒成形工程と、仕上成形工程とを備える。
このうちの据え込み工程では、金属製で円柱状の素材を軸方向に押し潰して、この素材よりも小さな軸方向寸法とこの素材よりも大きな外径寸法とを有する第一中間素材とする。
又、前記荒成形工程では、この第一中間素材を、荒成形用押型と荒成形用受型との間で更に押し潰す事により、外周縁形状が非円形である素フランジ部を外周面に有する、第二中間素材とする。
更に、前記仕上成形工程では、前記第二中間素材のうちの少なくともこの素フランジ部(好ましくはこの第二中間素材全体)を、仕上成形用押型と仕上成形用受型との間で更に押し潰す事により、このフランジ部の形状を整える。
【0022】
特に、本発明の外向フランジ部付金属製部材の製造方法に於いては、前記荒成形工程時に前記素フランジを、一部(好ましくは外径側端部)に欠肉部を存在させる状態で形成する。
又、前記仕上成形工程で使用する前記仕上成形用受型に設けた、前記素フランジ部を受け入れてこの素フランジ部を前記フランジ部に仕上げる為のフランジ仕上成形用凹部の深さ寸法を、これら素フランジ部及びフランジ部の厚さ寸法よりも大きくする。
又、前記仕上成型用押型のうちで前記素フランジ部を前記フランジ部に仕上げる為の押圧部を、前記フランジ部の外周縁と同形の外周縁を有し、前記フランジ仕上成形用凹部内に、このフランジ仕上成形用凹部の内周面との間に金属材料の侵入を許容する程の隙間を介在させずに進入するものとする。
更に、前記素フランジ部から前記フランジ部への仕上加工を、このフランジ部を形成する為の空間から連続する部分に、前記金属材料の侵入を許容する隙間を存在させない状態で行う。
そして、前記素フランジ部を構成する金属材料を前記仕上成型用押型の押圧部と前記フランジ仕上成形用凹部とにより囲まれる空間に充満させ、前記仕上加工工程終了後の状態で、前記フランジから前記欠肉部を消滅させ、且つ、前記フランジの外周縁部にバリを発生させない。
この様な仕上加工は、プレス加工機の容量を特に大きくする事なく、形状精度及び寸法精度を確保すると共に、被加工物に亀裂等の損傷を発生させない様にする面から、熱間鍛造により行う事が好ましい。但し、前記仕上加工により得られた最終中間素材に関しても、その後、切削加工や研削加工等、形状精度及び寸法精度を向上させる為の加工を施す。従って、前記損傷を生じない条件を確保でき、且つ、プレス加工機として十分な容量を有するものを使用できる限り、仕上加工を温間鍛造により行っても良い。更に、条件さえ満たせば、冷間鍛造により行う事も妨げない。
【0023】
上述の様な本発明の外向フランジ付金属製部材の製造方法を実施する場合、具体的には、請求項2に記載した発明の様に、前記仕上成形用受型に、前記フランジ仕上成形用凹部を含む仕上成形用凹部を設ける。そして、前記第二中間素材をこの仕上成形用凹部に内嵌し、更にこの第二中間素材の残りの部分(この仕上成形用凹部の内面により覆われない部分)に前記仕上成形用押型を突き当てた状態で、前記第二中間素材の表面全体を、金属材料の侵入を許容する隙間を存在させない状態で拘束する。そして、この状態で、前記第二中間素材を前記仕上成形用受型と前記仕上成形用押型との間で押圧する、熱間鍛造(或は、温間鍛造又は冷間鍛造)を施す。
【0024】
この様な請求項2に記載した発明を実施する場合、例えば請求項3に記載した発明の様に、前記フランジ部を、円周方向の一部から径方向外方に大きく突出し、円周方向の残部は、径方向外方への突出量が前記円周方向の一部の突出量よりも小さいものとする。そして、前記荒成形工程で、前記円周方向の残部の厚さ寸法を、仕上成形工程後の厚さ寸法と同じとする。これに対して、前記円周方向一部を、径方向外方に向かうに従って厚さ寸法が漸次大きくなる様に形成する。そして、前記仕上成形工程で、前記円周方向一部の径方向外方部分を押し潰して、所定の厚さ寸法を有するフランジ部とする。
【0025】
又、本発明を実施する場合に好ましくは、請求項4に記載した発明の様に、前記荒成形工程に使用する前記荒成形用受型を、プレス装置の支持台に固定された固定ダイスとする。同じく前記荒成形用押型を、このプレス装置のラムに支持されてこのラムと共に昇降するパンチと、このパンチの周囲に、前記固定ダイスに向かう方向の弾力を付与された状態で設けられた可動ダイスとから成るものとする。そして、この可動ダイスの先端面と前記固定ダイスの先端面とを突き合わせた状態で、温間又は熱間(更に条件さえ許せば冷間)で、前記パンチにより前記素材を軸方向に押し潰し、この素材を構成する金属材料の一部を前記両ダイスと前記パンチとにより囲まれた部分に存在するキャビティ内に充満させる事により、前記第二中間素材を形成する。
【発明の効果】
【0026】
上述の様に構成する本発明によれば、素材の容積を厳密に規制しなくても、各工程でバリを生じる事が無く、外向フランジ部付金属製部材を低コストで造れる。この為、車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する外輪やハブ等、外向フランジ部付金属製部材の製造作業を大幅に効率化する事ができて、この様な外向フランジ部付金属製部材の加工コストを大幅に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態の1例を示す、車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する外輪の製造方法を工程順に示す断面図。
【図2】第一中間素材(から加工した別の中間素材)を前記第二中間素材に加工する荒成形工程の実施状況を示す断面図。
【図3】第二中間素材を第三中間素材に加工する仕上成形工程の実施状況を、工程完了後の状態で示す断面図。
【図4】前記仕上成形工程に使用する仕上成形用受型と仕上成型用押型とを斜め上方から見た状態で示す斜視図。
【図5】このうちの仕上成型用押型を斜め下方から見た状態で示す斜視図。
【図6】仕上成形工程の実施状況を加工の進行順に示す断面図。
【図7】本発明の製造方法の対象となる外輪及びハブ本体を備えた車輪支持用転がり軸受ユニットの断面図。
【図8】従前の回転側フランジを備えたハブ本体の斜視図。
【図9】改良された回転側フランジを備えたハブ本体の斜視図。
【図10】静止側フランジを備えた外輪の斜視図。
【図11】従来から知られている鍛造による製造方法により得られたばかりの中間素材(A)と、バリを除去した後の外輪(B)と、除去されたバリであるスクラップ(C)とを示す斜視図。
【図12】従来から知られている、鍛造による外輪の加工方法を、工程順に示す断面図。
【図13】従来から知られている加工方法で、第一中間素材から造られた別の中間素材を第二中間素材に加工する荒加工工程の実施状況の1例を、加工の進行順に示す断面図。
【図14】この従来から知られている加工方法を改良した方法での、荒成形工程の実施状況(A)と仕上成形工程の実施状況(B)とを示す部分断面図。
【図15】この改良した方法で、第三中間素材の外周面にバリが発生する状況を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1〜6は、本発明の実施の形態の1例を示している。本例の製造方法は、基本的には、前述の図12により説明した、例えば特許文献7に記載されて従来から知られている製造方法と同様である。即ち、図1に示す様に、図1の(A)に示した、中炭素鋼、軸受鋼、浸炭鋼の如き鉄系合金等の、塑性加工後に焼き入れ硬化可能な、金属製で円柱状の素材16に、順次、塑性加工或いは打ち抜き加工を施す。そして、(B)に示した第一中間素材17、(C)に示した第二中間素材18a、(D)に示した第三中間素材19aを経て、(E)に示した最終中間素材29aを得る。更に、この最終中間素材29aに、必要とする切削加工及び研削加工を施して、前述の図7に示した車輪支持用転がり軸受ユニット1を構成する外輪2とする。これらの加工のうち、前記第二中間素材18aを前記第三中間素材19aとする仕上成形加工は熱間により、この第三中間素材19aを前記最終中間素材29aとするのはプレスによる打ち抜きにより、残りの加工は熱間若しくは温間により、それぞれ行う事が好ましい。
【0029】
図1の(A)に示した素材16を(B)に示した第一中間素材17とする加工工程が、特許請求の範囲に記載した据え込み工程であり、この第一中間素材17を(C)に示した第二中間素材18aとする加工工程が、特許請求の範囲に記載した荒成形工程であり、この第二中間素材18aを(D)に示した第三中間素材19aとする加工工程が、特許請求の範囲に記載した仕上成形工程である。
このうちの据え込み工程では、金属の塑性加工の分野で周知の様に、前記素材16を軸方向に押し潰して、この素材16よりも小さな軸方向寸法とこの素材16よりも大きな外径寸法とを有する、ビヤ樽型の前記第一中間素材17とする。
【0030】
続く、図1の(B)→(C)の加工を行う、前記荒成形工程では、図2に示す様に、前記第一中間素材17に図示しない加工{特許文献7の図3の(B)→(C)参照}を施す事により、この第一中間素材17よりも前記第二中間素材18aの形状に近付けた、別の中間素材{図13の(A)参照}に、前記荒整形工程として第二の据え込み加工を施す。従って本例の場合には、この別の中間素材が、特許請求の範囲に記載した第一中間素材に対応する。但し、プレス加工装置の容量が十分であれば、前記第一中間素材17を、(前記別の中間素材を経ずに)直接前記第二中間素材18aに加工する事もできる。何れにしても、前記第二の据え込み加工は、図2に示す様に、前記別の中間素材(又は前記第一中間素材17)を、荒成形用押型である上側ダイス22aと、荒成形用受型である下側ダイス23aとの間で更に押し潰す事により行う。図示の例では、これら上側ダイス22aと下側ダイス23aとを一体構造としているが、前述の図13に示した従来装置と同様、図2に鎖線で示す様に、各パンチ20、21、24と両ダイス22、23とを組み合わせたものとしても良い。
【0031】
但し、本例に使用する加工装置の場合には、前記両ダイス22a、23aとを突き合わせた(或は、前記各パンチ20、21、24及び前記両ダイス22、23を最も近付け合あった)状態で、前記第二中間素材18aを加工すべき空間として形成されるキャビティ33の容積が、前記第一中間素材17(から加工された前記別の中間素材)の容積よりも、少しだけ大きい。又、前記第二中間素材18aの外周面に素フランジ部34を形成すべく、前記下側ダイス23aに設けた下側キャビティ26aの上端部の円周方向複数個所から径方向外方に突出する状態で形成された成型用凹部27aを、径方向外側に向かうに従って漸次深くしている。
【0032】
本例の場合、前記第一中間素材17(から加工された前記別の中間素材)を、上述の様な前記両ダイス22a、23a(或は、前記各パンチ20、21、24及び前記両ダイス22、23)により囲まれるキャビティ33内で塑性変形させる為、前記荒成形工程の完了時に得られる前記素フランジ34は、図2の右端部に示す様に、その外径側端部に欠肉部35が存在する状態で形成される。又、前記素フランジ34の厚さは、この欠肉部35部分を除いて、径方向外側程漸次大きくなる。この素フランジ34の厚さは、径方向内端部で、前記第三中間素材19aを形成した後の静止側フランジ6aの厚さ寸法とほぼ等しく、径方向外端部で、この静止側フランジ6aの厚さ寸法よりも少し大きい。
【0033】
本例の場合には、上述した荒成形工程で、前記静止側フランジ6aとなるべき、前記第二、第三中間素材18a、19aの外周面から径方向外方に大きく突出している部分の厚さ寸法を、上述の様に径方向外側に向かう程漸増させる。この理由は、後述する仕上加工工程時に、前記欠肉部35部分に、金属材料を効果的に(効率良く)供給できる様にする為である。これに対して、前記径方向外方に大きく突出している部分と同一円周上に位置し、この部分から円周方向に外れた部分には、径方向外方への突出量が前記円周方向の一部の突出量よりも小さい、土手状の突出部36が存在するが、この突出部36の寸法(軸方向に関する厚さ寸法、及び、径方向に関する幅寸法)は、完成後の寸法と等しくする。この理由は、後述する仕上加工時に、金型のうちで前記突出部36に突き当たる部分に加わる応力を低く抑えて、この金型の耐久性を確保する為である。
【0034】
図2に示す様にして、外径側端部に前記欠肉部35が存在する前記素フランジ部34を備えた、前記第二中間素材18aを得たならば、この第二中間素材18aに仕上加工を施して、前記第三中間素材19aとする。この仕上加工は、図3、6に示す様に、仕上成型用押型である上側ダイス31aと、仕上成型用受型である下側ダイス32aとの間で前記第二中間素材18aを押圧する事により行う。前記上側ダイス31aの下端面は、図3、5、6に示す様に、前記第三中間素材19aの軸方向内面の形状に見合う(凹凸が逆で同じ形状及び寸法を有する)形状としている。又、前記下側ダイス32aの上面に開口した仕上成形用凹部37の内面形状は、図3、4、6に示す様に、前記第三中間素材19aの軸方向外面及び外周面の形状に見合う(凹凸が逆で同じ形状及び寸法を有する)形状としている。又、前記仕上成形用凹部37の上端部は、上端縁に設けたガイド用の面取り38部分を除き(この面取り38よりも少し下側部分を)、軸方向に関して断面積が変化しないストレート部39としている。前記上側ダイス31aは、少なくともその下部外周面を、このストレート部39内に(金属材料が侵入するほどの)隙間なく挿入可能な、軸方向に関して断面積が変化しないストレート形状としている。
【0035】
図6(A)に示す様に、前記第二中間素材18aを前記下側ダイス32aの上面に開口した仕上成形用凹部37内にセットし、前記上側ダイス31aの下部をこの仕上成形用凹部37内に押し込むと、前記第二中間素材18aがこれら上側ダイス31aの下端面と仕上成形用凹部37の内面とで画成されるキャビティ40内で塑性変形され、図6(B)に示す様な、前記第三中間素材19aとなる。この際、前記素フランジ部34が、その外径寄り部分を押し潰されて、所望寸法の静止側フランジ6aになると同時に、前記欠肉部35が埋められる。前記上側ダイス31aの下部は前記仕上成形用凹部37内に、金属材料の進入を許容するほどの隙間を介在させる事なく押し込まれる為、前記欠肉部35が完全に埋められた瞬間に、前記上側ダイス31aを下降させる為に要する力が急増する。そこで、この力の急増を検知して(或は、前記欠肉部35が完全に埋められた後の状態では前記上側ダイス31aをそれ以上は下降させられない程度の力でこの上側ダイス31aを固定したラムを下降させる事により)、この上側ダイス31aの下降を停止する。或は、前記第二中間素材18aから前記第三中間素材19aへの加工量に応じて、前記ラムを下降させる量(ストローク)を予め決めておき、このラムがこのストローク分下降した状態で、前記上側ダイス31aの下降を停止させる事もできる。何れにしても、この上側ダイス31aの下降を停止させた状態で、所望の形状及び寸法を有し、何れの部分にもバリが存在しない、前記第三中間素材18aを得られる。そこで、前記上側ダイス31aを上昇させ、前記仕上成形用凹部37からこの第三中間素材19aを取り出して、次の工程(隔壁部28の打ち抜き工程)に送る。
【0036】
尚、上述の様にして行う、前記ラムの下降停止は、このラムを下降させる為の油圧シリンダに導入する油圧を検知又は制御する事により、或はプレス加工機の制御器によりこのラムの下降ストロークを規制する事により、容易に行える。又、上述の様な仕上加工時に、前記上側ダイス31aのうちで、前記突出部36の軸方向内側面に突き当たる部分は、径方向に関する厚さ寸法が小さい板状部41となる。この様な板状部41により、前記突出部36の寸法を変化させる加工をすると、この板状部41が早期に破損する可能性がある。これに対して本例の場合には、前記突出部36の寸法は、前記第二中間素材18aの段階で、前記第三中間素材19aと同じとしている。従って、前記仕上加工時に、前記板状部41が前記突出部36に加工を施す必要はない。又、前記素フランジ部34を前記静止側フランジ部7aに加工する過程では、この素フランジ部34のうちで厚さ寸法が大きい外径寄り部分を押し潰す事が主となり、前記板状部41に加わる力は、その内外両周面と相手面との摩擦力程度に止まる。この為、この板状部41の耐久性は、十分に確保できる。
【0037】
上述の様に構成する本発明によれば、素材の容積を厳密に規制しなくても、各工程でバリを生じる事が無く、外周面に静止側フランジ6aを設けた前記外輪2を低コストで造れる。又、加工用の金型(上側、下側両ダイス31a、32a)の耐久性も十分に確保できる。この為、この外輪2の製造作業を大幅に効率化する事ができると共に、設備のメンテナンス費用を低く抑えられて、前記外輪2の加工コストを大幅に低減できる。尚、本例の場合、前記素材16の容積のばらつきは、前記静止側フランジ6aの厚さ寸法のばらつきとなる。但し、この素材16の容積のばらつきは僅少であり、この素材16の容積のばらつきに基づく、前記静止側フランジ6aの厚さ寸法のばらつきは、数μm乃至数十μm程度の、極く小さな値となる。この静止側フランジ6aの厚さ寸法がこの程度ばらついても、実用上全く問題とはならない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
図示の実施の形態には、本発明を、車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する外輪を造るのに適用した場合を示した。これに対して本発明は、この車輪支持用転がり軸受ユニットを構成するハブ本体を造るのに適用する事もできる。又、本発明を実施する場合に、荒成形工程及び仕上成形工程は、何れも、熱間加工(金属材料が炭素鋼である場合、900℃よりも高い温度で行う加工)により行なう事が、金型の負担を軽減すると共に、製品に亀裂等の損傷が生じにくくし、製品の加工精度を確保する為には好ましい。但し、造るべき外向フランジ部付金属製部材の形状及び大きさによっては、前記荒成形工程を温間加工(同じく、600〜900℃で行う加工)で、更には冷間(常温で行なう加工)で行っても良い。
【符号の説明】
【0039】
1 車輪支持用転がり軸受ユニット
2 外輪
3 ハブ
4 転動体
5 外輪軌道
6、6a 静止側フランジ
7、7a 回転側フランジ
8 内輪軌道
9、9a ハブ本体
10 内輪
11 ナット
12 小径段部
13 突出部
14、14a、14b バリ
15 スクラップ片
16 素材
17 第一中間素材
18、18a 第二中間素材
19、19a 第三中間素材
20 押圧パンチ
21 カウンターパンチ
22、22a 上側ダイス
23、23a 下側ダイス
24 押し出しパンチ
25 弾性部材
26、26a 下側キャビティ
27、27a 成形用凹部
28 隔壁部
29、29a 最終中間素材
30 欠肉部
31、31a 上側ダイス
32、32a 下側ダイス
33 キャビティ
34 素フランジ部
35 欠肉部
36 突出部
37 仕上成形用凹部
38 面取り
39 ストレート部
40 キャビティ
41 板状部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0040】
【特許文献1】特開2005−83513号公報
【特許文献2】特開2006−111070号公報
【特許文献3】特開2008−37272号公報
【特許文献4】特開2008−173661号公報
【特許文献5】特開2008−196662号公報
【特許文献6】特開2008−212991号公報
【特許文献7】国際公開 WO2009/096434A1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製で円柱状の素材に、それぞれが塑性加工である、この素材を軸方向に押し潰して、この素材よりも小さな軸方向寸法とこの素材よりも大きな外径寸法とを有する第一中間素材とする据え込み工程と、この第一中間素材を、荒成形用押型と荒成形用受型との間で更に押し潰す事により、外周縁形状が非円形である素フランジ部を外周面に有する第二中間素材とする荒成形工程と、この第二中間素材のうちの少なくともこの素フランジ部を、仕上成形用押型と仕上成形用受型との間で更に押し潰す事により、このフランジ部の形状を整える仕上成形工程とを備えた外向フランジ部付金属製部材の製造方法に於いて、前記荒成形工程時に前記素フランジが、一部に欠肉部を存在させる状態で形成されたものであり、前記仕上成形工程で使用する前記仕上成形用受型に設けた、前記素フランジ部を受け入れてこの素フランジ部を前記フランジ部に仕上げる為のフランジ仕上成形用凹部の深さ寸法が、これら素フランジ部及びフランジ部の厚さ寸法よりも大きく、前記仕上成型用押型のうちで前記素フランジ部を前記フランジ部に仕上げる為の押圧部は、前記フランジ部の外周縁と同形の外周縁を有し、前記フランジ仕上成形用凹部内に、このフランジ仕上成形用凹部の内周面との間に金属材料の侵入を許容する程の隙間を介在させずに進入するものであって、前記素フランジ部から前記フランジ部への仕上加工は、このフランジ部を形成する為の空間から連続する部分に、前記金属材料の侵入を許容する隙間を存在させない状態で行う事により、前記素フランジ部を構成する金属材料を前記仕上成型用押型の押圧部と前記フランジ仕上成形用凹部とにより囲まれる空間に充満させ、前記仕上加工工程終了後の状態で、前記フランジから前記欠肉部を消滅させ、且つ、このフランジの外周縁部にバリを発生させない事を特徴とする外向フランジ部付金属製部材の製造方法。
【請求項2】
仕上成形用受型に、フランジ仕上成形用凹部を含む仕上成形用凹部を設けており、第二中間素材をこの仕上成形用凹部に内嵌し、更にこの第二中間素材の残りの部分に仕上成形用押型を突き当てた状態で、前記第二中間素材の表面全体を、金属材料の侵入を許容する隙間を存在させない状態で拘束し、この状態で前記第二中間素材を前記仕上成形用受型と前記仕上成形用押型との間で押圧する、請求項1に記載した外向フランジ付き金属製部材の製造方法。
【請求項3】
フランジ部が、円周方向の一部から径方向外方に大きく突出し、円周方向の残部は、径方向外方への突出量が前記円周方向の一部の突出量よりも小さいものであり、荒成形工程で、前記円周方向の残部の厚さ寸法を、仕上成形工程後の厚さ寸法と同じとし、前記円周方向一部は、径方向外方に向かうに従って厚さ寸法が漸次大きくなる様に形成し、仕上成形工程で、前記円周方向一部の径方向外方部分を押し潰して、所定の厚さ寸法を有するフランジ部とする、請求項2に記載した外向フランジ付き金属製部材の製造方法。
【請求項4】
荒成形工程に使用する荒成形用受型がプレス装置の支持台に固定された固定ダイスであり、同じく荒成形用押型が、このプレス装置のラムに支持されてこのラムと共に昇降するパンチと、このパンチの周囲に、前記固定ダイスに向かう方向の弾力を付与された状態で設けられた可動ダイスとから成るものであり、この可動ダイスの先端面と前記固定ダイスの先端面とを突き合わせた状態で、前記パンチにより素材を軸方向に押し潰し、この素材を構成する金属材料の一部を前記両ダイスと前記パンチとにより囲まれた部分に存在するキャビティ内に充満させる事により第二中間素材を形成する、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載した外向フランジ部付金属製部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−147974(P2011−147974A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11749(P2010−11749)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】