外周変形に基づき、滑らかな外周を持った物体の弾性を評価する方法及び装置

【課題】ヒトの腕など滑らかな形状の外周を持つ物体の弾性を計測し、評価を行なう方法及び装置に関し、計測対象の大きさに依存せず、計測対象の平均的な弾性計測を簡便かつ安定的に計測する手法を提供することを課題とする。計測対象の大きさに依存しない弾性評価手法を提供することが重要な課題である。
【解決手段】弾性を評価する対象である物体に帯を巻き付け、該巻き付けられた帯の端部を引っ張り、前記帯に生じる引張力を計測する手段と、前記帯が計測対象に巻き付いた部分の長さの変化量を計測する手段を備え、計測対象物体に巻きついていた帯の長さの変化量を計測して、被計測物体の弾性を表わすように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑らかな外周を持った物体の弾性又は硬さの評価技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療分野においては皮膚ガンや浮腫(むくみ)など病変によっては皮膚表面の硬さが変化する病気がある。このような病気の診断では皮膚表面硬さの定量的な計測方法の確立が望まれている。また、健康・福祉分野においては筋力の計測というニーズがあり、加齢と共に身体に生じる様々な衰えの中でも特に筋力の低下は高齢者の生活の質(QOL:Quality Of Life)の低下に直結する。筋力と皮膚表面で計測した身体部位の硬さとは関係することが知られており、簡便に皮膚表面の硬さを測ることが望まれている。同様にスポーツ分野においても筋力測定や、筋疲労測定などが硬さを評価することにより行われており、簡便な硬さ計測手法が望まれている。
【0003】
食品やゴム加工品などの産業分野では品質管理を行う際に製品の硬さが品質の指標となる製品が数多くある。例えば、食品分野では、おにぎりを自動で握る自動機械の性能評価指標として消費者が美味として受け入れられるおにぎりの硬さを実現するために硬さの測定が必要となる。本発明はこれらのニーズに適応可能であり、従来用いられている手法よりも簡便かつ安定、さらに平均的な硬さを一度で計測可能という特徴を持つ装置及び計測方法の提供を目的とする。
【0004】
医療分野における上述の目的に対応した弾性又は硬さを計測する従来技術としては、特許文献1に開示された発明があり、物体の表面に空気圧を印加しこのときの変位から弾性、粘性といった変形特性を計測するものである。この技術では1度に計測できる範囲が狭く、物体全体にわたって弾性を計測する場合は多数の点で計測を行なう必要がある。特許文献2には筋肉のような体内組織の硬軟度を定量的に把握する硬軟度測定装置とその解析プログラムが開示されている。対象部位に対してあらかじめ定められた計測位置から振動を与えることによりその周囲に発生する表面波を検出して対象部位の硬さ度合いを測定できる機能を持つ装置であるが、硬軟度の測定範囲は振動を与えた範囲に限定されるので、全体の測定を行なうには何箇所にも振動を加える必要がある。
【0005】
特許文献1に開示された発明では被測定対象物体の1箇所に空気圧を加え、そのレスポンスとして被測定対象物体の変形を計測するものであるが、加えた圧力と対応する変形との関連を一定に保つ必要から計測対象を拘束する作業が必要な場合がある。特に医師の臨床的な使用に供されるものとしては負担の少ない取り扱い簡便なものであることが望ましい。
【0006】
また、上記0002及び0003に述べた弾性計測の用途においては被計測物体の全体の弾性値の平均値を得ることが重要であるが、前記の従来技術のように局所的な弾性を計測する方法においては、計測対象物体の内部の構造の非均質性、非等方性を考慮して多数箇所の計測結果から全体の平均的な弾性値を計算する必要がある。例えば、ヒトの腕の表面からみた腕の弾性を計測したい場合、腕には骨や腱、血管など弾性の異なる組織が様々存在し、局所的な弾性が位置によって変化してしまうので、平均的な弾性を求めるには従来手法では腕の全周を何度も計測する必要がある。このように、従来の技術では物体の弾性を簡便に計測する上で問題があった。
【特許文献1】特開2004−069668号公報
【特許文献2】特開2005−040474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
滑らかな形状の外周を持つ物体の弾性を計測し、評価を行なう方法及び装置に関し、計測対象の大きさに影響されず、計測対象の平均的な弾性評価を簡便かつ安定的に行なう手法を提供することを課題とする。すなわち材料固有の硬さが同じで大きさの異なる計測対象を単純に力と変形量だけで評価すると、対象の弾性を正確に評価することができない。大きい物体は弾性が見かけ上軟らかくなり、小さい物体ではその逆となる。このことは、ヒトの腕など個体差がある計測対象においては問題となるため、計測対象の大きさに影響されない弾性評価手法を提供することが重要な課題である。なお、上記で滑らかな形状の外周を持つ物体とは、評価対象物体の断面の外周の形状が鋭い凸部や小さい角度の稜等を有するものでないことを意味する。例えば断面が3角柱、4角柱は対象としないが、それ以上の多角柱については本発明における滑らかな形状とみなすことができる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
滑らかな外周を持った物体の弾性を評価する装置又は評価方法であって、弾性を評価する対象である物体に帯を巻き付け、該巻き付けられた帯の端部を引っ張ることにより引張力を加える手段に接続し、該引張力を加える手段によって前記帯に生じる引張力を計測する手段と、前記帯が弾性評価対象に巻き付いた部分の長さの変化量を取得する手段を備える構成である。前記構成において、引張力を加える手段により前記帯に引張力を与え、該引張力が所定の張力に達したことを前記張力計測手段が検知した時点と、引張力を加え続けて前記帯が弾性評価対象に巻き付いた部分の長さに変化が生じなくなる状態に達した時点の間における前記評価対象物体に巻き付いている帯の長さの変化量を計測し、該帯の長さの変化量と引張力計測値により被評価物体の弾性を評価することを特徴とする。すなわち、弾性評価対象物体に巻き付けた帯を引っ張って被評価部に圧縮力を加えることにより生ずる被評価部の断面外周の長さの減少度合いが、該部分の硬さ、又は弾性に対応するという現象を利用し、前記被評価物体に巻いた帯の端部の位置の計測データにより、前記断面外周長さの減少度合いを演算し、該演算した値と引張力計測値の比により硬さ又は弾性評価を行なうよう構成したことを特徴とする。なお、弾性評価対象物体に巻く帯を引っ張ることによる帯の端部の位置が変化するが、該端部位置の計測値を「帯の引張距離」、「帯の端部位置」と呼ぶことにする。
【0009】
図1は本発明の基本的構成とその作用を示す図である。図1において、1は弾性を計測評価する対象の物体の断面である。典型的な被計測対象物体としてはヒトの腕であり、皮膚ガンや浮腫(むくみ)など病変によっては皮膚表面の硬さが変化しているかどうかを診断するために皮膚表面硬さを定量的に計測、評価する場合である。図1において2は弾性評価用の帯であって、紐状又はテープ状の形状を有し、被評価物体に巻き付けることのできる柔軟性を持った材質であり、かつ帯2に加えられた引張力により、弾性評価に影響を与えるような伸びを生じないものであることを必要とする。また、帯は被測定対象の表面に局部的に過大な面圧を生じさせないよう充分な幅を有することを必要とする。以下の記載及び特許請求範囲の記載において「帯」とは以上の要件を満たす紐、テープ状の物を意味するものとする。
【0010】
図1では被評価物体1の弾性評価対象部位の周囲に巻き付けられた帯2に引張力を加える手段として、帯2を評価対象部位に巻き付け後、その一端を固定点6に接続し、他端を駆動装置により直線的に移動するアクチュエータ3aを有する移動機構(以後リニアスライダーと呼ぶ)から成る引張手段3に接続した例を示す。引張手段3のアクチュエータ3aは図1の右方向に帯2の端部を引っ張り、引張力を加えることができる。またアクチュエータ3aと帯2の接続点には引張力計測手段4(例えばストレンゲージ、ロードセル等の力センサ)を組み込んで帯2に加わる引張力計測を可能にする。引張手段3にはアクチュエータ3aの位置計測手段5a(例えば磁気距離センサ、エンコーダ等位置又は距離センサ)が組み込まれ引張距離計測を行なう。すなわち引張手段であるリニアスライダのアクチュエータ3aの移動距離を前記位置計測手段5aで計測することにより、帯2の端部の移動距離を計測し、同帯2の引張距離とする。なお図1において、被評価部位1の周囲に巻付けた帯2の両端がAにおいて交差するように見える箇所は、帯2の両端部を図1の裏表方向にずらして相互の接触を避けるか、図1に示すA−A矢視図のように帯2の一方の端部に口型または他の適当形状の環13を接続し、帯2他の端部を同環に通すように配置して相互の接触を避ける等の配慮を払う。
【0011】
図4において制御装置14は、前記リニアスライダを適用した引張手段3を駆動する信号を出力すると共に、前記の引張力計測手段4及びアクチュエータ3aの位置計測手段5aの信号を入力して弾性評価演算を行なう。先ず帯2を被弾性評価物体に巻き付け、リニアスライダ駆動制御部14aからアクチュエータ3aに、帯2を引っ張る方向に駆動する信号を出力する。弾性評価部14bは、引張力計測値とアクチュエータ3aの位置をモニターし、引張力計測手段4の計測値があらかじめ設定した引張力f1に達した時のアクチュエータ3aの位置を記憶し(記憶した位置をL1とする)、その後もアクチュエータ3aの位置変化を監視して同位置の変化量が所定の値以内になった時のアクチュエータ3aの位置を計測、記憶する(記憶した位置をL2とする)。ここで|L1−L2|の値(Δxとする)は帯2に加わった引張力が設定値(f1)に達した時点、すなわち弾性被評価対象に巻き付けた帯2に引張力が加わったとみなされる時点から、帯2を巻き付けた被評価対象物体が帯2に加わる引張力によって締め付けられてその半径が減少する結果アクチュエータ3aに生じていた位置変化が止まる時点までの間の、アクチュエータ3a(すなわち帯2の端部)の移動距離であって帯2の引張距離に相当する。また、Δx=|L1−L2|の値は、帯2の引張力がf1である時点における帯2を巻いた被評価対象の部分の断面外周長さと、その後さらに帯2に引張力を加えるによって減少した後の前記外周長さの差に比例する。さらに、弾性評価部14bは、アクチュエータ3aの位置がL2になった時点に帯2に加わる引張力(f2とする)を記憶する。図4に示すように、制御装置14には最大引張力(fm)を設定できるようになっており、引張力がfmに達すると引張手段3(図4の場合はリニアスライダ)の駆動を停止する。ここで制御手段14は単一の装置であることを必要とせず、上記の機能を有する装置やユニットの集合体とすることもできる。
【0012】
上記のようにして計測した帯2を巻き付けた被評価対象部分の断面外周長さの変化に比例する量(Δx=|L1−L2|)と引張力の変化(f2−f1)の比((f2−f1)/Δxによって対象物体の弾性係数を評価することが可能である。
【0013】
前記の比((f2−f1)/Δx)は評価対象物体の大きさに依存した値であって、被評価対象の大きさによる補正を必要とする。以下にその補正の方法を説明する。なお、式(1)〜(6)に使用する変数及び係数の意味は特許請求範囲の記載においても同様の意味で使用されるものとする。図1において被評価対象物体1の部分の体積であって、該部分に巻き付いた帯2に被覆された部分の体積をVとし、帯2により同部分に加わる圧縮圧力の変化dpにより同部分の体積にdV変化の変化が生じるものとする。帯2により外側から圧縮を受ける評価対象物体の体積弾性係数をKとすると、体積の変化量dVと圧縮圧力の変化dpとの関係は式(1)のように表される。
【0014】
【数1】
【0015】
弾性評価対象の断面を近似的に円とみなした時の半径をr、帯の幅をB、drを圧縮圧力の変化dpに対応する半径rの変化、fを帯に加わる引張力とすると、式(1)から式(6)の方程式を得る。
【0016】
【数2】
【0017】
被評価対象物体の初期(帯2に引張力f1が加わった瞬時の状態)における半径をr0とし、その時の帯2に加わる引張力f1は小さい値でありf1=0と近似して方程式(6)の積分を行い、式(7)を得る。さらにσとεを式(8)及び式(9)のように表すと、被評価物体の大きさに関わり無い体積弾性係数の評価値Kを式(10)のように計算できる。σは応力、εは張力を表す。
【0018】
【数3】
【0019】
式(10)によって求められた体積弾性係数を用いることで、物体の大きさに関係なく計測対象の弾性を評価することができる。式(10)によって弾性係数Kを得るために用いるfは、f=f2−f1であるが、f1、f2は帯2に加わる引張力として前記0011に記載したように計測される(ただし式(6)を導く過程においては簡単化のためf1=0と近似)される値である。また式(7)〜(9)における半径r0およびrは図5の状態1に示めすように帯2を弾性評価対象物体に巻き付けない状態(帯2が全体として直線になっている状態)におけるアクチュエータ3aの位置をLbとし、被弾性評価物体に巻いた帯2を引張り、引張力が前記0011に記載のf1に達した時点(状態2)のアクチュエータの位置L1を使って計算式r0=(Lb−L1)/2πで求められる。またr=r0―(L2−L1)/2πにより計算できる。
【0020】
図4の弾性係数演算部14cにおいて上記に示した計算、ならびに上記0016に記載したr0、およびrの値の計算を行なう演算手段を持たせて、前記Lb、L1、L2、f1、及びf2を使用して弾性係数の評価値Kを演算、出力するよう構成することができる。
【0021】
帯2を引張る手段としてはリニアスライダの他に、図2の(a)に示すようにサーボモータ20で駆動するドラム21に帯2の端部を巻き、ドラムを回転させて帯2の引張力を加えることも可能である。帯2の被評価対象物体1への巻き付け長さの変化、すなわち対象物体の半径は、ドラムに付加し回転エンコーダ22により、また引張力は帯2の一部に挿入した引張力計測手段23例えばストレンゲージ、ロードセル等で計測するように配置してもよい。
【0022】
帯2の端部は図2の(a)のように、一端又はそれを延長した部分を固定点6に接続し、他の端部又はそれを延長した部分を引張手段3、例えばリニアスライダに接続し、あるいはドラム21に巻き付ける構成とすることも可能である。他の構成としては、図2の(b)に示すように、帯2の両端を引張力を加える装置に接続することも可能である。図2の(a)の場合は帯2の一方の端に設けた引張手段により引張られた帯2の端部の移動量を前記のL1、L2とするが、図2の(b)の場合は帯2の両端の移動量であって、帯2に張力が掛かって緊張した時点で計測した値各端部移動量(各々の移動量をΔxa、Δxbとする)の合計(Δxa+Δxb)を前記のL1に対応させ、両端が共に移動を生じなくなった時点の移動量合計(Δxa+Δxb)をL2に対応させる。また両端に加わった引張り力の平均値をもってf1、f2とする。すなわち、図2の(b)の引張手段10a、10bにより帯2を引張り、帯2の各々の端部に所定の引張り力(f1)が生じた時点に対応する各々の引張力計測手段(4a、4b)が検出した各々の引張力をf1a、f1b、各々の引張手段(10a、10b)の移動が止まった時点またはそれ以後の間において引張力計測手段(4a、4b)が検出した引張力をf2a、f2bとしf1=(f1a+f1b)/2、f2=(f2a+f2b)/2として得ることが可能である。
【0023】
引張手段3によって帯2を引張る場合、帯2と弾性被評価物体の間に大きい摩擦力が作用すると評価値に誤差を生ずる。このような誤差を防止する手段として引張手段3が帯2を引く速度、または引張り力を短時間に変化させることにより、摩擦の影響を防止する。例えば、図4において、リニアスライダの駆動制御部14aに振動信号14dを重畳し、リニアスライダ移動駆動速度信号を平均速度設定に対して遅束の変化を付けることにより、帯2に加わる引張力を振動的にするように構成する。
【0024】
帯2を引っ張る際にはモータ等の動力で引っ張ってもよいし、手動で引っ張ってもよい。摩擦力の影響を低減し、計測対象に対して均一に力を負荷するために帯と計測対象との間に潤滑剤を塗布したり、帯の材質として摩擦係数の低いものを選択したりすることが望まれる。
【0025】
帯2を評価対象物体に巻き付けて引張手段3に接続する場合、図3に示すように帯2の端部を1又は2のローラ7(又は7a、7b)を介して引張手段又は固定点に接続するように配置することが望ましい。ローラを2個(7a、7b)使用する場合、それらは評価対象物体の評価断面に出来る限り直角方向に平行にならべ、かつ、両ローラの中心間の間隔(rr)は評価対象物体の大きさ(又は半径r)と比較してなるべく小さくすることが必要である。
【発明の効果】
【0026】
本発明の滑らかな形状の外周を有する物体の弾性を評価する装置ならびに方法は、簡便で、被評価物体の大きさの影響を受けずに、また、評価者の技量や経験に依存せず、かつ一度の計測で評価対象物体の全周にわたる平均弾性係数を得ることが可能である。これは、これまでの方法ないしは装置では実現できなかった効果である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図6にヒトの腕を計測対象としてその硬さを計測するための形態を示す。計測装置は帯、張力取得装置として力センサ、変位取得装置としてリニアスライダとロータリエンコーダを組み合わせたものを用いる。スライダを移動させて計測対象である腕を帯で締め付けていく。このときの張力fとスライダ移動量xは演算装置に逐次取り込まれ記憶される。記憶された力とスライダ移動量から上述した方法により対象物体の弾性特性を評価することが出来る。
【0028】
図7に本計測装置を用いて、計測されたバンドの引張量と引張り力との関係を示す。引張量xは一定の速度で増加していく。この場合、8秒の時点で計測対象と帯とが密着し、力が発生していることが分かる。この時系列応答から式(4)、式(5)に従って計測対象の半径変化と力の変化に変換し、プロットしたものを図8に示す。このときの計測データから求めた体積弾性係数Kは、K=7.2x105[Pa]であった。本計測手法の有効性を検証するために、表1に示すように、直径について3種類、硬さについて2種類それぞれ異なる計6種類の計測対象についてそれぞれ弾性を求めた結果を図9に示す。軟らかい計測対象はヒト肌の硬さに合わせている。この結果から、特にヒト肌のような柔軟物体については大きさに依存することなく正確に弾性を評価できていることがわかる。
【0029】
【表1】
【実施例1】
【0030】
本発明によるヒトの腕の弾性評価を実施する工程を以下に説明する。
【0031】
(工程1)帯2は一方の端部を固定し、他方の端部を引張手段3に接続してあるものとする。両端部に引張手段3を接続する場合は両端部の移動量の和を後記Lbに対応させる。制御手段14の指令により引張手段3を動作させて帯2を引張り、引張力計測手段4の信号を制御手段14が受けてf1以上の引張力を検知した時点で、制御手段14は帯2の引張手段との接続点の位置を引張距離計測手段から入力し、その値をLbとして制御手段14のメモリに格納する。
【0032】
(工程2)その後、引張手段3による帯2の引張りを一旦開放し、帯2をループ状にして、該ループ内に計測対象であるヒトの腕を挿入し、計測部上に帯2を位置させる(図5の状態1参照)。
【0033】
(工程3)工程1と同様に帯2の端部を引張り、制御手段14が引張力計測手段4の信号により引張力がf1に達したことを検知した時、帯2の端部位置を引張距離計測手段からの入力値をL1として制御手段14のメモリに格納する(図5の状態2を参照)。
【0034】
(工程4)制御手段14により引張手段3を続けて動作させ、制御手段14が引張距離計測手段5の信号により帯2の端部位置が変化しなくなったことを検知し、その時点の引張力計測手段4の信号(引張力f2に相当する)をメモリする。なお安全のため、制御手段14には引張手段3により帯2に加える引張力の最大値が設定されており、帯2の端部位置の変化の有無にかかわらず前記設定値を超えた場合は引張手段を停止、開放する。ヒトに適用する場合は最大引張力を略25N程度とすることが望ましい。
【0035】
(工程5)以上の工程で取得し、メモリしたLb、L1、L2により制御手段14の演算部は式(7)〜(9)の計算に使用するデータr、r1を、r1=(Lb−L1)/2π、r=r1―(L2−L1)/2πにより計算する。さらに制御手段14の演算部は前記のようにメモリしたf1、f2と前記r、r1を使用して数4による演算を行い、弾性評価対象物体の直径により影響されない弾性評価係数Kを計算し、必要な形態(表示、印字等)で出力する。なお、上記に工程は(ただし工程2を除く)制御手段14に組み込まれた制御機能として実行することが可能であり、また工程1から工程5を手動操作として引張手段3を操作し、あるいは引張力計測手段4や引張距離計測手段5の計測値を読み取り、それらデータを式(7)〜(10)に示す式の計算を行ない、弾性係数評価値Kを得ることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
ヒトの腕の硬さを評価する装置や、食品の硬さなどの評価する装置、方法は産業上重要な利用があるが、従来は簡便な方式がなく、面倒な不正確な方法によっていた、本発明による装置は産業上の要求に応える有効性の高いものであり、産業上の利用価値は高い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の基本構成を示す説明図である。
【図2】本発明における帯を引張る手段の配置例を示す説明図である。
【図3】本発明における帯を引張るローラの配置を示す図である。
【図4】本発明の制御装置のブロックダイアグラムである。
【図5】本発明おける被評価対象物体の半径を計測する方法を示す説明図である。
【図6】本発明の装置実施形態の一例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態における帯の引張力と引張距離の時間変化の計測結果を示すグラフである。
【図8】弾性評価物体に加えた張力(ε)と応力(α)の関係を示す実験データである。
【図9】本発明の実施において得られた弾性評価の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0038】
1 弾性評価対象物体(断面)
2 帯
3 引張手段
3a 引張手段のアクチュエータ
4 引張力計測手段
5 引張距離計測手段
5a アクチュエータ位置計測手段
6 固定点
7 ローラ
7a、7b ローラ
10 直線運動移動機構(リニアスライダ)
11 リニアスライダアクチュエータ
12 アクチュエータ位置計測手段
13 接続環
14 制御装置
20 駆動手段
21 ドラム
22 エンコーダ
23 力センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
滑らかな形状の外周を持った物体の弾性を評価する装置であって、
帯2と、帯2の端部に接続して帯2を引っ張る引張手段3と、前記引張手段3が帯2に加える引張力を計測する引張力計測手段4と、前記引張手段3が帯2を引っ張り移動する距離を計測する引張距離計測手段5、および制御装置14から成り、
前記弾性評価対象物体1に帯2を巻き付けた後に、制御手段14により引張手段3を動作させて帯2に引張力を加えるとともに、引張力計測手段4の検出信号により帯2に加わる引張力が所定の引張力(f1)に達したと検知した時点から、引張距離計測手段5の検出信号により帯2の引張距離の変化が停止したことを検知した時点までの間に、帯2が引っ張られた距離Δxを引張距離計測手段5の信号から取得し、また、前記の帯2の引っ張り距離の変化の停止時点における引張力f2を引張力計測手段4の信号から取得し、該取得した値から(f2−f1)/Δxの値を演算し、該演算された値により弾性評価対象物体1の弾性値を評価するように構成したことを特徴とする滑らかな形状の外周を持った物体の弾性評価装置。
【請求項2】
請求項1に記載の帯2の一端を固定する点6を有し、帯2の他の端部は引張手段3に接続され、帯2の端部であって引張手段3と接続される側には帯2に加わる引張力を計測する引張力計測手段4と、引張手段3が帯2を引っ張って移動する距離を計測する引張距離計測手段5を備え、引張手段3により帯2を引張り、引張力計測手段4により帯2に所定の引張力(f1)が生じたことを検出した時点から、引張手段3による帯2の引っ張り距離の変化が止まった時点までの間に生じた帯2の引っ張り距離を引張距離計測手段5によって得てΔxとし、前記の帯2の引っ張り距離変化停止時点において帯2に掛かる引張力をf2とすることを特徴とする、請求項1に記載した滑らかな形状の外周を持った物体の弾性を計測評価する装置。
【請求項3】
請求項1に記載の帯2の端部各々は引張手段3a又は3bに接続され、前記帯2の各々の端部には、引張力計測手段4a又は4b、ならびに引張手段3aと3bが帯2を引っ張る距離を計測する引張距離計測手段5a又は5bを備え、
引張手段3aおよび3bにより帯2の各端部を引張り、引張力計測手段(4a又は4b)により帯2の各々の側の端部に所定の引張り力(f1)が生じたことを検知した時点から、各々の引張手段(3a又は3b)による帯2の各々の端部についての引っ張り距離の変化停止までの間に、帯2の各々の端部に生じた帯2の引っ張り距離を引張距離計測手段(5a又は5b)によって得て、その距離を帯2のそれぞれの端部についてΔxa、Δxbとし、また前記の帯2の引っ張り距離変化停止時点における帯2の各々の端に掛かる引張力を各々fa、fbとし、
請求項1に記載したΔxを、Δx=(Δxa+Δxb)とし、請求項1に記載したf2を、f2=(fa+fb)/2として、(f2−f1)/Δxの値を演算することを特徴とする請求項1に記載した滑らかな形状の外周を持った物体の弾性を評価する装置。
【請求項4】
請求項1に記載した帯2の一端が弾性評価対象物体の近傍に並べて配置したローラ7に掛けられた後に、又は帯2の両端が該被評価対象物体1の半径(r)に対して充分小さい間隔rrを持って同物体1の近傍に並べて配置した2つのローラ7a、7bに各々掛けられた後に、該帯2の端又はその延長部を固定部6又は引張手段3に接続する構成であることを特徴とする請求項1ないし3に記載の滑らかな形状の外周を持った物体の弾性を評価する装置。
【請求項5】
請求項1に記載した引張手段が駆動手段20で駆動されるドラム21に帯2の端部または該端部の延長部を巻き付けた構成であることを特徴とする請求項1ないし4に記載の滑らかな形状の外周を持った物体の弾性を評価する装置。
【請求項6】
請求項1に記載した引張手段3が直線運動をする移動機構10に帯2の端部または該端部の延長部を接続した構成であることを特徴とする請求項1ないし4に記載の滑らかな形状の外周を持った物体の弾性を評価する装置。
【請求項7】
請求項1に記載した引張力を加える手段3は、帯2の引張力を所定の中心引張力に対して上下に振動的に変動させることが可能であるように構成したことを特徴とする請求項1ないし6に記載の滑らかな形状の外周を持った物体の弾性を評価する装置。
【請求項8】
請求項1に記載した弾性評価対象物体に巻きつけた帯2の引張力が所定値(f1とする)に達した時点の帯2の引張距離を引張距離計測手段で計測してL1と、前記帯2の引張距離の変化が停止した時点における帯2の引張距離をL2と、引張距離変化が停止した時点に帯2に加わる引張力をf2と、帯2を弾性評価対象物体1に巻き付けずに直線状に引っ張った状態における同帯の引張距離をLbとし、弾性評価対象物体1の断面の大きさに影響されることなく弾性を評価する係数をKとして、Kを下記式により演算することを特徴とする請求項1ないし7に記載の滑らかな形状の外周を持った物体の弾性を評価する装置。
【数1】
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の構成であって、下記工程(1)から(5)に従って運転する制御手段を有することを特徴とする滑らかな形状の外周を持った物体の弾性を評価する装置。ただし工程2については手動操作とすることができる。
(工程1)制御手段14の指令により引張手段3を動作させて帯2を引張り、引張力計測手段4の信号を受けてf1以上の引張力を検知した時点で、制御手段14は帯2の引張距離を入力し、その値をLbとしてメモリに格納する。
(工程2)引張手段3による帯2の引張りを一旦開放し、帯2をループ状にして、該ループ内に弾性評価対象を挿入し、該物体の評価対象部位上に帯2を位置させる。
(工程3)工程1と同様に帯2の端部を引張り、引張力計測手段4の信号により引張力がf1に達したことを検知した時、帯2の引張距離を引張距離計測手段5から入力し、その値をL1としてメモリに格納する。
(工程4)制御手段14により引張手段3を続けて動作させ、制御手段14が引張距離計測手段5の信号により帯2の引張距離変化がなくなったことを検知し、引張距離を引張距離計測手段4から取得してL2と、その時点の引張力計測手段4の信号をf2としてメモリする。
(工程5)以上の工程で取得し、メモリしたLb、L1、L2、f2により請求項8に記載の数1により、弾性評価対象物体の断面の大きさに影響されない弾性評価係数Kを計算する。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれかに記載の構成の装置を使用して、下記工程(1)から(5)の操作により、滑らかな形状の外周を持った物体の弾性を評価することを特徴とする、弾性評価方法。
(工程1)引張手段3を動作させて帯2を引張り、引張力計測手段4の信号がf1以上の引張力を検知した時点で、帯2の引引張距離を入力し、その値をLbとする。
(工程2)引張手段3による帯2の引張りを一旦開放し、帯2をループ状にして、該ループ内に弾性評価対象を挿入し、該物体の評価対象部分上に帯2を位置させる。
(工程3)工程1と同様に帯2の端部を引張り、引張力計測手段4の信号により引張力がf1に達したことを検知した時、帯2の引張距離を引張距離計測手段5から取得し、その値をL1とする。
(工程4)引張手段3を続けて動作させ、引張距離計測手段5の信号により帯2の引張距離変化がなくなったことを検知し、引張距離を引張距離計測手段4から取得してL2と、その時点の引張力計測手段4の信号をf2とする。
(工程5)以上の工程で取得し、メモリしたLb、L1、L2、f2により請求項8に記載の数1により、弾性評価対象物体の断面の大きさに影響されない弾性評価係数Kを計算する。
【請求項11】
請求項1ないし9に記載の装置であって、評価対象が人体部位の弾性又は硬さであることを特徴とする人体皮膚の弾性評価装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2008−96315(P2008−96315A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
物理学 | 測定;試験 | 材料の化学的または物理的性質の決定による材料の調査または分析 | 機械的応力の負荷による固体材料の強さの調査 | 定張力または定圧縮力によるもの
生活必需品 | 医学または獣医学;衛生学 | 診断;手術;個人識別 | 診断のための検出,測定または記録;個体の識別
物理学 | 測定;試験 | 材料の化学的または物理的性質の決定による材料の調査または分析 | 機械的応力の負荷による固体材料の強さの調査
生活必需品 | 医学または獣医学;衛生学 | 診断;手術;個人識別 | 他の診断法または診断機器,例.診断ワクチン接種用機器;性の決定;排卵期の決定;咽喉をたたく器具
【出願番号】特願2006−279251(P2006−279251)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年9月14日 社団法人日本ロボット学会発行の「第24回日本ロボット学会学術講演会講演概要集」に発表、平成18年9月15日 社団法人日本ロボット学会主催の「第24回日本ロボット学会学術講演会」において文書をもって発表
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学
【Fターム(参考)】
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 調査方法;試験の仕方 | 圧縮、耐圧試験
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 力を掛ける方法(時間的、空間的) | 静的負荷による試験
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 調査対象項目 | 弾性率 | 体積弾性率
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 試験片、材料 | 有機材料
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 試験片、材料 | 有機材料 | ゴム、プラスチック
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 試験片、形状、構造及び部分、部品 | 柱状、棒状
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 試験装置;構成、部分構成(治具を含む) | 荷重負荷装置
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 測定対象 | 荷重
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 測定対象 | 変位
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 測定対象の検出手段 | 電気的
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 測定された変化量の取扱い | データの電気的処理 | 演算処理
診断用測定記録装置 | 対象(人・機械・データ) | 単一対象
診断用測定記録装置 | 目的 | 測定
診断用測定記録装置 | 測定部位 | 頭 | 顔 | 皮膚
診断用測定記録装置 | 測定部位 | 腕
診断用測定記録装置 | 測定部位 | 胴体
診断用測定記録装置 | 測定部位 | 脚
診断用測定記録装置 | 測定部の特徴 | 対象接触 | その場で測定 | 圧力
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