説明

外壁の外張り断熱耐火構造

【課題】枠組壁工法による外壁に、優れた断熱性能と、屋外側からの火災に対する優れた耐火性能とを効果的に付与することのできる外壁の外張り断熱耐火構造を提供する。
【解決手段】枠組壁工法による木造住宅建築物に用いられる外張り断熱耐火構造10であって、縦枠12の屋外側に取り付けられた、構造用面材13と、第1外装下地材14と、断熱材15と、第1防水紙16と、複数の縦胴縁材17と、第1アルミニウム箔層18と、第2外装下地材19と、第2アルミニウム箔層20と、第3外装下地材21と、第2防水紙22と、ラスモルタル層23とを含んで構成される。縦胴縁材17の間の間隔部分に設けられて、火災時の熱による断熱材17の膨出を抑止することにより、火災時に、縦胴縁材17を介在させることで第1防水紙16と第1アルミニウム箔層18との間に形成された縦方向通気層24を保持できるようにする、膨出抑止部材25が取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁の外張り断熱耐火構造に関し、特に枠組壁工法による木造住宅建築物の外壁に用いられる外壁の外張り断熱耐火構造に関する。
【背景技術】
【0002】
枠組壁工法は、使用する木材の断面寸法の種類を少なくすると共に、複雑な仕口や継手を用いることなく、主として釘打ち施工によって建物の骨組みを組み立ててゆく工法であり、枠組壁工法による木造住宅建築物の外壁は、一般に、土台や梁部材の上に設置した下枠から、所定の間隔をおいて複数本の縦枠を立設させ、これらの縦枠の上端を頭繋ぎ(上枠)によって一体として連結することで骨組みである枠組体を形成し、これの屋外側の面や屋内側の面に壁下地材や壁仕上材を取り付けてゆくことによって構成される。
【0003】
また、枠組壁工法による間仕切り壁として、外壁の内部の、下枠と縦枠と頭繋ぎによって区画された複数の中空領域に、各々断熱材を充填配置することで断熱性能を向上させると共に、火災時に燃焼し難くするために、第1の強化石膏ボードと、アルミニウムシートと、第2の強化石膏ボードとを、枠組体の両側の面に取り付けることで、好ましくは建築基準法施行令第2条第7号に規定する耐火構造としての耐火性能が得られるようにした耐火木造壁が開発されている(例えば、特許文献1参照)。さらに、特許文献1には、当該特許文献1の耐火木造壁を建物の外壁として用いる場合には、枠組体の屋内側の面のみに第1の強化石膏ボードと、アルミニウムシートと、第2の強化石膏ボードとを取り付け、枠組体の屋外側の面には外壁材等を取り付けるようにしても良いことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3673517号公報
【発明の概要】
【0005】
一方、枠組壁工法による外壁は、例えば屋内側と屋外側との温度差が大きいと、枠組体の下枠と縦枠と頭繋ぎとによって区画された複数の中空領域に各々断熱材を充填配置した、いわゆる充填断熱仕様のものでは、断熱材が縦枠の部分で分断されることになるため、縦枠の部分が熱橋となって屋内側と屋外側との間で熱が伝わり易くなる。こにようなことから、枠組体の屋外側に、断熱材を分断させることなく連続して取り付けることで断熱機能を向上させた、いわゆる外張り断熱による断熱構造を採用することが検討されている。
【0006】
また、枠組壁工法による外壁では、屋内側で生じた火災が屋外側に広がらないようにすることに加えて、屋外側からの火災が屋内側に侵入しないようにする必要があるため、外張り断熱による断熱構造が設けられた枠組体(骨組み)の屋外側の部分を、相当の耐火性能を備える構造とすることが要望されている。
【0007】
本発明は、枠組壁工法による外壁に、優れた断熱性能と、屋外側からの火災に対する優れた耐火性能とを効果的に付与することのできる外壁の外張り断熱耐火構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、枠組壁工法による木造住宅建築物に用いられる外壁の外張り断熱耐火構造であって、縦枠の屋外側の面に取り付けられた構造用面材と、該構造用面材の屋外側の面に取り付けられた第1外装下地材と、該第1外装下地材の屋外側の面に取り付けられた断熱材と、該断熱材の屋外側の面に取り付けられた第1防水紙と、該第1防水紙の屋外側の面に所定のピッチで横方向に間隔をおいて複数取り付けられた縦胴縁材と、該縦胴縁材の屋外側の面に取り付けられた第1アルミニウム箔層と、該第1アルミニウム箔層の屋外側の面に取り付けられた第2外装下地材と、該第2外装下地材の屋外側の面に取り付けらた第2アルミニウム箔層と、該第2アルミニウム箔層の屋外側の面に取り付けられた第3外装下地材と、該第3外装下地材の屋外側の面に取り付けらた第2防水紙と、該第2防水紙の屋外側の面に施工されたラスモルタル層とを含んで構成され、所定のピッチで横方向に間隔をおいて複数取り付けられた前記縦胴縁材の間の間隔部分に設けられて、火災時の熱による前記断熱材の前記第1アルミニウム箔層側への膨出を抑止することにより、火災時に、前記縦胴縁材を介在させることで前記第1防水紙と前記第1アルミニウム箔層との間に形成された縦方向通気層を保持できるようにする、膨出抑止部材が取り付けられている外壁の外張り断熱耐火構造を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0009】
そして、本発明の外壁の外張り断熱耐火構造は、前記第1アルミニウム箔層及び前記第2アルミニウム箔層が、アルミガラス繊維クロスを用いて形成されていることが好ましい。
【0010】
また、本発明の外壁の外張り断熱耐火構造は、前記ラスモルタル層の屋外側の部分が、グラスファイバーネットによって補強されていることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の外壁の外張り断熱耐火構造は、前記第1外装下地材、前記第2外装下地材、及び前記第3外装下地材が、スラグせっこう板からなることが好ましい。
【0012】
さらにまた、本発明の外壁の外張り断熱耐火構造は、前記断熱材が、フェノールフォーム保温板からなることが好ましい。
【0013】
また、本発明の外壁の外張り断熱耐火構造は、前記縦枠の屋内側の面に取り付けられた内装面材と、該内装面材の屋内側の面に取り付けられた内装材とを含んで構成されることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明の外壁の外張り断熱耐火構造は、前記内装材が、強化石膏ボードによる下張内装材と、強化石膏ボードによる上張内装材とからなる2層構造を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の外壁の外張り断熱耐火構造によれば、枠組壁工法による外壁に、優れた断熱性能と、屋外側からの火災に対する優れた耐火性能とを効果的に付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係る外壁の外張り断熱耐火構造の構成を説明する略示斜視図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に係る外壁の外張り断熱耐火構造の構成を説明する、(a)は横方向略示断面図及びA部拡大図、(b)は縦方向略示断面図である。
【図3】本発明の好ましい一実施形態に係る外壁の外張り断熱耐火構造の施工状況を説明する、(a)は横方向略示断面図、(b)は縦方向略示断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示す本発明の好ましい一実施形態に係る外壁の外張り断熱耐火構造10は、枠組壁工法による外壁に、優れた断熱性能と耐火性能とを付与するために採用されたものである。すなわち、本実施形態の外張り断熱耐火構造10は、従来の木造の枠組壁工法による外壁では、これを例えば建築基準法施行令第2条第7号に規定する耐火性能が得られる耐火構造とする場合に、内部の骨組みの間の中空領域に断熱材を充填配置した、充填断熱仕様のものについては、種々の耐火構造が検討されていたが、骨組みの屋外側の部分に断熱材を分断させることなく連続して取り付けた、外張り断熱仕様のものについては、建築基準法施行令第2条第7号に規定する耐火性能を備える耐火構造は検討されていなかったことを鑑みてなされたものである。
【0018】
また、本実施形態の外張り断熱耐火構造10は、外張り用の断熱材を固定する金具の固定強度を補完したり、外張り用の断熱材の耐火性能を補強するために、骨組みである枠組体と外張り用の断熱材との間に不燃材を配置することに加えて、例えば1時間の耐火性能を確保するためには、外装材であるモルタル層の厚さを厚くするだけでは遮熱性能が不十分となることから、不燃板を複数層配置すると共に、空気層を形成し、且つ形成した空気層の機能が火災時に損われないようにすることで、建築基準法施行令第2条第7号に規定する所定の耐火性能を安定した状態で確保できるようにしたものである。
【0019】
そして、本実施形態の外壁の外張り断熱耐火構造10は、枠組壁工法による木造住宅建築物に用いられる外壁11の断熱耐火構造であって、図1〜図3に示すように、外壁11の骨組み(枠組体)の構成部材である縦枠12の屋外側の面に取り付けられた構造用面材13と、構造用面材13の屋外側の面に取り付けられた第1外装下地材14と、第1外装下地材14の屋外側の面に取り付けられた断熱材15と、断熱材14の屋外側の面に取り付けられた第1防水紙16と、第1防水紙16の屋外側の面に所定のピッチで横方向に間隔をおいて複数取り付けられた縦胴縁材17と、縦胴縁材17の屋外側の面に取り付けられた第1アルミニウム箔層18と、第1アルミニウム箔層18の屋外側の面に取り付けられた第2外装下地材19と、第2外装下地材19の屋外側の面に取り付けらた第2アルミニウム箔層20と、第2アルミニウム箔層20の屋外側の面に取り付けられた第3外装下地材21と、第3外装下地材21の屋外側の面に取り付けらた第2防水紙22と、第2防水紙22の屋外側の面に施工されたラスモルタル層23とを含んで構成される。また所定のピッチで横方向に間隔をおいて複数取り付けられた縦胴縁材17の間の間隔部分に、好ましくは縦方向に延設して設けられて、火災時の熱による断熱材17の第1アルミニウム箔層18側への膨出を抑止することにより、火災時に、縦胴縁材17を介在させることで第1防水紙16と第1アルミニウム箔層18との間に形成された縦方向通気層24を保持できるようにする、膨出抑止部材25が取り付けられている。
【0020】
また、本実施形態の外壁の外張り断熱耐火構造10は、縦枠12の屋内側の面に取り付けられた内装面材26と、内装面材26の屋内側の面に取り付けられた内装材27とを含んで構成されており、内装材27は、強化石膏ボードによる下張内装材27aと、強化石膏ボードによる上張内装材27bとからなる2層構造を備えている。
【0021】
本実施形態では、縦枠12は、枠組壁工法用の木材として知られる例えば38mm×89mmの断面寸法を備える棒状部材であって、例えば梁部材30の上に合板等による床下地材を介して設置した下枠31から、或いは土台の上に合板等による床下地材を介して設置した下枠31から、例えば455mmのピッチで間隔をおいて複数本立設配置されると共に、これらの複数本の縦枠12の上端を頭繋ぎ(上枠)32によって一体として連結することで(図2(b)参照)、下枠31や頭繋ぎ(上枠)32と共に、外壁11の骨組みである枠組体33を形成する。なお、隣接して立設配置される縦枠12の間の部分には、両端を両側の縦枠12の側面に接合して、横方向に延設する転び止め34が適宜配設されており、これによって枠組体33が効果的に補強されている。
【0022】
縦枠12の屋外側の面に取り付けられた構造用面材13は、本実施形態では、例えば厚さが9mm、密度が0.55g/cm3の、日本農林規格に適合する構造用合板を用いることができる。また、構造用面材13としては、例えば9mm以上の構造用合板、厚さが9mm以上の構造用パネル、厚さが9mm以上のパーティクルボード、厚さが12mm以上のシージングボード等の木質系ボードや、厚さが12〜25mmの硬質木片セメント板、厚さが9mm以上のパルプセメント板、厚さが9mm以上のフレキシブル板、厚さが9mm以上のけい酸カルシウム板、厚さが9mm以上のパルプ・けい酸カルシウム混入セメント板、厚さが9mm以上の両面アクリル系樹脂塗装パルプ・けい酸質混入セメント板等のセメント板や、厚さが9mm以上の火山性ガラス質複層板や、厚さが12mm以上のせっこうボード等を用いることができる。
【0023】
構造用面材13は、枠組体33の構成部材である縦枠12や下枠31や頭繋ぎ32や転び止め34に向けて、構造用面材固定用留付材35aとして例えば鉄丸くぎを打ち込むことによって、縦枠12の屋外側の面に固定される(図3(a)、(b)参照)。
【0024】
構造用面材13の屋外側の面に取り付けられた第1外装下地材14は、本実施形態では、例えばJIS A 5430及び不燃第1001号、不燃第1002号並びに不燃第1061号一種、不燃第1039号に該当する、例えば厚さが11mm以上、密度が0.9g/cm3の不燃材であるスラグせっこう板を用いることができる。
【0025】
第1外装下地材14は、枠組体33の構成部材である縦枠12や下枠31や頭繋ぎ32や転び止め34に向けて、外装下地材固定用留付材35bとして例えばスクリューくぎを打ち込むことによって、縦枠12の屋外側の面に固定される。外装下地材固定用留付材35bとして、リングくぎ、鉄丸くぎ、ビス等を用いることもできる。
【0026】
第1外装下地材14の屋外側の面に取り付けられた断熱材15は、外張り用の断熱材であり、本実施形態では、例えばJIS A 9511による、厚さが35(±4)mm、密度が27(±3)kg/m3のフェノールフォーム保温板を用いることができる。
【0027】
断熱材15は、例えば横張り又は縦張りによる張付けによって第1外装下地材14の屋外側の面に取り付けられると共に、例えば鉄丸くぎによって四周が仮止め固定される。断熱材15には、枠組体33の構成部材である縦枠12や下枠31や頭繋ぎ32や転び止め34に向けて打ち込まれる、胴縁を固定するための胴縁固定用留付材35cが貫通する。
【0028】
断熱材15の屋外側の面に取り付けられた第1防水紙16は、本実施形態では、例えばJIS A 6111による、ポリエステルからなる単位面積質量が238g/m2の透湿防水シートを用いることができる。また、第1防水紙16としては、例えばJIS A 6111による、ポリエステルやポリエチレンやポリプロピレンからなる単位面積質量が238g/m2以下の透湿防水シートを用いることもできる。
【0029】
第1防水紙16は、例えば合成ゴム系樹脂からなるスプレー糊や、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂等からなる両面粘着テープを用いて、断熱材15の表面に張り付けることができる。第1防水紙16は、横張り又は縦張りとし、継ぎ目は縦横ともに90mm以上重ね合わせることが好ましい。例えば第1防水紙16の4隅に両面粘着テープを取り付けたり、スプレー糊を全面に吹き付けて、たわみやしわがないように断熱材15の表面に張り付けることが好ましい。
【0030】
第1防水紙16の屋外側の面に取り付けられた縦胴縁材17は、本実施形態では、胴縁材として知られる、例えばすぎ材からなる18mm×90mmの断面寸法を備える縦長の帯板状部材であって、縦枠12が立設する位置と対応させて、例えば455mmのピッチで間隔をおいて、縦方向に延設して複数本配設される。
【0031】
縦胴縁材17は、例えば縦枠12に向けて、胴縁固定用留付材35cとして例えばJIS G 3507-2による冷感圧造用炭素鋼線からなるビスを、例えば200mm程度の留付間隔で、第1防水紙16、断熱材15、第1外装下地材14、及び構造用面材13を貫通させて打ち込むことによって、第1防水紙16の屋外側の面に固定される。
【0032】
縦胴縁材17の屋外側の面に取り付けられた第1アルミニウム箔層18は、本実施形態では、例えば厚さが0.15mmのアルミニウム箔張ガラス繊維クロスを用いることができる。
【0033】
アルミニウム箔張ガラス繊維クロスによる第1アルミニウム箔層18は、留付材として例えばステンレス鋼線からなるステープルを用いて、縦胴縁材17や、後述する膨出抑止部材25としての補助縦胴縁材に固定する。ステープルは、例えば水平方向に1500mm、鉛直方向に1000mm程度の留付間隔で留付る。アルミニウム箔張ガラス繊維クロス18は、横張り又は縦張りとし、継ぎ目は縦横ともに90mm以上重ね合わせることが好ましい。
【0034】
第1アルミニウム箔層18の屋外側の面に取り付けられた第2外装下地材19は、本実施形態では、第1外装下地材14と同様に、例えばJIS A 5430及び不燃第1001号、不燃第1002号並びに不燃第1061号一種、不燃第1039号に該当する、例えば厚さが11mm以上、密度が0.9g/cm3の不燃材であるスラグせっこう板を用いることができる。
【0035】
第2外装下地材19は、例えば縦胴縁材17や、後述する膨出抑止部材25としての補助縦胴縁材に向けて、外装下地材固定用留付材35bとして例えばスクリューくぎを第1アルミニウム箔層18を貫通させて打ち込むことによって、第1アルミニウム箔層18の屋外側の面に固定される。外装下地材固定用留付材35bとして、リングくぎ、鉄丸くぎ、ビス等を用いることもできる。
【0036】
第2外装下地材19の屋外側の面に取り付けられた第2アルミニウム箔層20は、本実施形態では、第1アルミニウム箔層18と同様に、例えば厚さが0.15mmのアルミニウム箔張ガラス繊維クロスを用いることができる。
【0037】
アルミニウム箔張ガラス繊維クロスによる第2アルミニウム箔層20は、留付材として例えばステンレス鋼線からなるステープルを用いて、第2外装下地材19に固定する。ステープルは、例えば水平方向に1500mm、鉛直方向に1000mm程度の留付間隔で留付る。アルミニウム箔張ガラス繊維クロス20は、横張り又は縦張りとし、継ぎ目は縦横ともに90mm以上重ね合わせることが好ましい。
【0038】
第2アルミニウム箔層20の屋外側の面に取り付けられた第3外装下地材21は、本実施形態では、第1外装下地材14や第2外装下地材19と同様に、例えばJIS A 5430及び不燃第1001号、不燃第1002号並びに不燃第1061号一種、不燃第1039号に該当する、例えば厚さが11mm以上、密度が0.9g/cm3の不燃材であるスラグせっこう板を用いることができる。
【0039】
第3外装下地材21は、例えば縦胴縁材17や、後述する膨出抑止部材25としての補助縦胴縁材に向けて、外装下地材固定用留付材35bとして例えばスクリューくぎを第2アルミニウム箔層20、第2外装下地材19、及び第1アルミニウム箔層18を貫通させて打ち込むことによって、第2アルミニウム箔層20の屋外側の面に固定される。外装下地材固定用留付材35bとして、リングくぎ、鉄丸くぎ、ビス等を用いることもできる。第3外装下地材21は、これの目地の位置を、第2外装下地材19の目地の位置と重なり合わないように配置して取り付ける。
【0040】
第3外装下地材21の屋外側の面に取り付けられた第2防水紙22は、本実施形態では、例えばJIS A 6005による、単位面積質量が860g/m2(2枚張り)のアスファルトフェルト430を、1枚張り又は2枚張りとして用いることができる。また、第2防水紙16としては、単位面積質量が860g/m2以下のアスファルトフェルト(1枚張り又は2枚張り)や、飽和ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ABS、ポリエチレン、ポリスチレン等からなる単位面積質量が800g/m2以下のプラスチックシート(1枚張り又は2枚張り)や、単位面積質量が800g/m2以下のオレフィンシート(1枚張り又は2枚張り)や、単位面積質量が800g/m2以下の吸水ポリマーやメチルセルロース等の高分子吸収体を含むオレフィンシート(1枚張り又は2枚張り)や、JIS A 6111による、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等からなる単位面積質量が800g/m2以下の透湿防水シート(1枚張り又は2枚張り)や、単位面積質量が444g/m2以下のポリエチレンフォームシート等を用いることができる。
【0041】
第2防水紙22は、第1防水紙16と同様に、例えば合成ゴム系樹脂からなるスプレー糊や、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂等からなる両面粘着テープを用いて、断熱材15の表面に張り付けることができる。第2防水紙22は、横張り又は縦張りとし、継ぎ目は縦横ともに90mm以上重ね合わせることが好ましい。例えば第2防水紙22の4隅に両面粘着テープを取り付けたり、スプレー糊を全面に吹き付けて、たわみやしわがないように第3外装下地材21の表面に張り付けることが好ましい。
【0042】
なお、第2防水紙22や第1防水紙16の目地材として、アクリル系、EPDMゴム系、ブチルゴム系、アスファルト系等の気密テープや、グラスファイバーテープ等を用いることができる。
【0043】
第2防水紙22の屋外側の面に施工されたラスモルタル層23は、好ましくはモルタル外壁を形成するための公知の方法と略同様の施工方法によって形成されたもので、本実施形態では、鉄網23aと軽量セメントモルタル23bとからなる。また、本実施形態では、ラスモルタル層23の屋外側の部分にグラスファイバーネット28が伏込まれていることで、当該屋外側の部分がグラスファイバーネット28によって補強されている。
【0044】
ラスモルタル層23を構成する鉄網23aは、本実施形態では、例えばJIS A 5505による、防錆処理された単位面積質量が500g/m2のメタルラスを用いることができる。また、鉄網23aとして、例えばJIS A 5505による、防錆処理された単位面積質量が500g/m2以上のメタルラスの他、JIS G 3547による亜鉛めっき鉄線に、JIS P 3401によるクラフト紙や単位面積質量が150g/m2以下のターボリン紙(2枚のクラフト紙の間にアスファルトを充填した防水紙)や単位面積質量が150g/m2以下のポリミック紙(2枚のクラフト紙の間にポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂を充填した防水紙)を取り付けた、防錆処理された単位面積質量が700g/m2以上の防水紙付鉄網を好ましく用いることができる。
【0045】
鉄網23aは、横張り又は縦張りとし、千鳥に配置すると共に、継ぎ目は縦横ともに30mm以上重ね合わせ、浮き上がりやたるみがないようにする。また、鉄網固定用留付材として、例えばJIS G 4309によるステンレス鋼線や、JIS G 3532による鉄線からなるステープルを、第3外装下地材21に向けて打ち込むことで、第2防水紙22によって覆われた第3外装下地材21の屋外側の面に固定される。
【0046】
ラスモルタル層23を構成する軽量セメントモルタル23bは、例えば普通ポルトランドセメントと、無機質軽量骨材、無機質骨材、無機質混和材、無機質少量添加剤等の公知の各種の無機質混和材料と、有機質骨材、有機質少量添加剤、有機質繊維等の公知の各種の有機質混和材料とを含んで形成される。
【0047】
ラスモルタル層23の屋外側の部分に伏込まれるグラスファイバーネット28は、例えば厚さが0.3mm以上、単位面積質量が80g/m2以上、メッシュ間隔が4×4〜10×10mm以上の耐アルカリ性グラスファイバーネットを用いることができる。
【0048】
本実施形態では、軽量セメントモルタル23bとグラスファイバーネット28とは、鉄網23aが取り付けられた第2防水紙22の屋外側の面に、例えば以下のようにして施工される。
【0049】
すなわち、例えば市販されている軽量セメントモルタルと、これの包装材に表示されている標準加水量の水とをモルタルミキサーで混練した後に、混練リ後の軽量セメントモルタルを、ラス付け用の下塗りとして、例えば10mm程度の厚さで、下こすりしながら鏝圧を充分にかけて、第2防水紙22の屋外側の面に塗り付ける。下塗り後、1〜2日間の養生期間をとったら、上塗りとして、鏝圧を充分にかけて、混練した軽量セメントモルタルを、5mm程度の厚さで下塗りモルタルの表面に強固に密着するように塗り付ける。また、上塗りを行う際に、下塗りモルタルの乾燥状態を見て、適宜水湿したり、吸水調製材の塗布を行う。さらに、上塗りをモルタルの水引き具合を見て、適宜ムラ直しを行う。
【0050】
上塗り後、直ちにグラスファイバーネット28を張り、鏝で押さえて上塗りモルタルと馴染ませることで、軽量セメントモルタル23bの屋外側の部分である上塗りモルタルにグラスファイバーネット28を伏込む。上塗り後、塗り付けられた軽量セメントモルタル23bの養生期間は、10日以上(冬季は14日以上)とする。
【0051】
そして、本実施形態では、第1防水紙16によって覆われた断熱材15の屋外側の面に、例えば455mmの所定のピッチで横方向に間隔をおいて複数取り付けられた縦胴縁材17の間の間隔部分に、火災時の熱による断熱材17の第1アルミニウム箔層18側への膨出を抑止する膨出抑止部材25として、好ましくは補助胴縁材が、縦方向に延設して設けられている。
【0052】
膨出抑止部材25となる補助胴縁材は、本実施形態では、例えばすぎ材からなる18mm×45mmの断面寸法を備える縦長の帯板状部材であって、各隣接する縦胴縁材17の間の間隔部分の中央部に各々配置されて、例えば455mmのピッチで縦方向に延設して複数本配設される。
【0053】
膨出抑止部材25としての補助胴縁材は、例えば断熱材15に向けて、胴縁固定用留付材35dとして例えばJIS G 4315による冷感圧造用ステンレス鋼線からなるビスを、例えば300mm程度の留付間隔で、第1防水紙16を貫通させて打ち込むことによって、第1防水紙16によって覆われた断熱材15に向屋外側の面に取り付けられる。
【0054】
縦胴縁材17の間の間隔部分に、断熱材15に取り付けられた補助胴縁材による膨出抑止部材25が設けられていることにより、火災時の熱によって、隣接する縦胴縁材17の間の間隔部分において断熱材15が膨出するのを、当該補助胴縁材の断熱材15とは反対の屋外側の面が、第1アルミニウム箔層18によって覆われた第2外装下地材19の屋内側の面に密着当接することで、効果的に抑止することが可能になる。これによって、縦胴縁材17が介在することで第1防水紙16と第1アルミニウム箔層18との間に形成されている縦方向通気層24が、火災時に断熱材15が第1アルミニウム箔層18側に膨出することによって閉塞するのを効果的に回避して、縦方向通気層24による通気機能を容易に保持することが可能になる。
【0055】
また、本実施形態では、外張り断熱耐火構造10の下端部に、水切り部材29が取り付けられている。水切り部材29は、これの接合片部29aを、構造用面材13の下端部と第1外装下地材14の下端部との間に挟みこんで接合すると共に、張出し片部29bを、第3外装下地材21の前方まで張り出させた状態で取り付けられている。
【0056】
本実施形態では、縦枠12の屋内側の面に取り付けられた内装面材26は、例えば厚さが9mm、密度が0.48g/cm3の、日本農林規格に適合する構造用合板を用いることができる。また、構造用面材13としては、例えば9mm以上の構造用合板、厚さが9mm以上の構造用パネル、厚さが9mm以上のパーティクルボード、厚さが12mm以上のシージングボード等の木質系ボードや、厚さが12〜25mmの硬質木片セメント板、厚さが9mm以上のパルプセメント板、厚さが9mm以上のフレキシブル板、厚さが9mm以上のけい酸カルシウム板、厚さが9mm以上のパルプ・けい酸カルシウム混入セメント板、厚さが9mm以上の両面アクリル系樹脂塗装パルプ・けい酸質混入セメント板、厚さが9mm以上の繊維強化セメント板等のセメント板や、厚さが9mm以上の火山性ガラス質複層板や、厚さが12.5mm以上のせっこうボード等を用いることができる。
【0057】
内装面材26は、枠組体33の構成部材である縦枠12や下枠31や頭繋ぎ32や転び止め34に向けて、内装面材固定用留付材35eとして例えば太め鉄丸くぎを、例えば300mm程度の留付間隔で打ち込むことによって、縦枠12の屋内側の面に固定される(図3(a)、(b)参照)。
【0058】
内装面材26の屋内側の面に取り付けられた内装材27の下張内装材27aは、本実施形態では、例えばJIS A 6901による、厚さが21mmの強化せっこうボードを用いることができる。
【0059】
下張内装材27aは、枠組体33の構成部材である縦枠12や下枠31や頭繋ぎ32や転び止め34に向けて、下張内装材固定用留付材35fとして、例えば例えばJIS A 5508によるせっこうボード用くぎを用いて、例えば周辺部は100mm、中間部は200mm程度の留付間隔で打ち込むことによって、内装面材26の屋内側の面に固定される。
【0060】
下張内装材27aの屋内側の面に取り付けられた上張内装材27bは、本実施形態では、下張内装材27aと同様に、例えばJIS A 6901による、例えば厚さが21mmの強化せっこうボードを用いることができる。
【0061】
上張内装材27bは、下張内装材27aに向けて、上張内装材固定用留付材35gとして、例えば例えばJIS G 4309によるステンレス鋼線からなるステープルを用いて、例えば水平方向は200mm、鉛直方向は200mmの留付間隔で打ち込むことによって、下張内装材27aの屋内側の面に固定される。上張内装材27bの目地部には、内装材用目地処理材として、例えばJIS A 6914によるせっこうボード用目地処理材を施し、平滑に仕上る。
【0062】
そして、上述の構成を備える本実施形態の外壁の外張り断熱耐火構造10によれば、枠組壁工法による外壁11に、優れた断熱性能と、屋外側からの火災に対する優れた耐火性能とを効果的に付与することが可能になる。
【0063】
すなわち、本実施形態によれば、枠組体33の屋外側に、断熱材15が分断されることなく連続して取り付けられているので、縦枠12が熱橋になるのを回避して、外壁の断熱性能を効果的に向上させることが可能になる。
【0064】
また、本実施形態によれば、外張り用の断熱材15を固定する金具の固定強度を補完したり、外張り用の断熱材15の耐火性能を補強するために、枠組体33と断熱材15との間には、構造用面材13に加えて、不燃材である第1外装下地材14が配置されていると共に、縦胴縁材17が介在することで第1防水紙16と第1アルミニウム箔層18との間に縦方向通気層24が形成されており、且つこの縦方向通気層24は、膨出抑止部材25である補助胴縁材によって、火災時に断熱材15が膨出することで閉塞するのを効果的に回避できるようになっており、さらに断熱材15の屋外側にには、不燃材である第2外装下地材19及び第3外装下地材21による不燃板が複数層配置されているので、これらによって、屋外側からの火災に対する耐火性能を効果的に向上させることが可能になる。
【0065】
なお、本願発明者は、本実施形態の外壁の外張り断熱耐火構造10と同様の構成を備える外壁の試験体について、建築基準法施行令108の2による耐火性能試験を行ったところ、本実施形態の外壁の外張り断熱耐火構造10によれば、建築基準法施行令第2条第7号に規定する1時間の耐火性能が得られることが確認された。
【0066】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、縦胴縁材の間の間隔部分に配置される膨出抑止部材は、補助胴縁材である必要は必ずしもなく、火災時の熱による断熱材の膨出を抑止して縦方向通気層を保持できるようにすることが可能な、その他の種々の膨出抑止部材を用いることができる。膨出抑止部材は、縦方向に延設して設けられるものである必要は必ずしもない。
【符号の説明】
【0067】
10 外壁の外張り断熱耐火構造
11 外壁
12 縦枠
13 構造用面材
14 第1外装下地材
15 断熱材
16 第1防水紙
17 縦胴縁材
18 第1アルミニウム箔層
19 第2外装下地材
20 第2アルミニウム箔層
21 第3外装下地材
22 第2防水紙
23 ラスモルタル層
23a 鉄網
23b 軽量セメントモルタル
24 縦方向通気層
25 膨出抑止部材
26 内装面材
27 内装材
27a 下張内装材
27b 上張内装材
28 グラスファイバーネット
31 下枠
32 頭繋ぎ(上枠)
33 枠組体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠組壁工法による木造住宅建築物に用いられる外壁の外張り断熱耐火構造であって、
縦枠の屋外側の面に取り付けられた構造用面材と、該構造用面材の屋外側の面に取り付けられた第1外装下地材と、該第1外装下地材の屋外側の面に取り付けられた断熱材と、該断熱材の屋外側の面に取り付けられた第1防水紙と、該第1防水紙の屋外側の面に所定のピッチで横方向に間隔をおいて複数取り付けられた縦胴縁材と、該縦胴縁材の屋外側の面に取り付けられた第1アルミニウム箔層と、該第1アルミニウム箔層の屋外側の面に取り付けられた第2外装下地材と、該第2外装下地材の屋外側の面に取り付けらた第2アルミニウム箔層と、該第2アルミニウム箔層の屋外側の面に取り付けられた第3外装下地材と、該第3外装下地材の屋外側の面に取り付けらた第2防水紙と、該第2防水紙の屋外側の面に施工されたラスモルタル層とを含んで構成され、
所定のピッチで横方向に間隔をおいて複数取り付けられた前記縦胴縁材の間の間隔部分に設けられて、火災時の熱による前記断熱材の前記第1アルミニウム箔層側への膨出を抑止することにより、火災時に、前記縦胴縁材を介在させることで前記第1防水紙と前記第1アルミニウム箔層との間に形成された縦方向通気層を保持できるようにする、膨出抑止部材が取り付けられている外壁の外張り断熱耐火構造。
【請求項2】
前記第1アルミニウム箔層及び前記第2アルミニウム箔層は、アルミガラス繊維クロスを用いて形成されている請求項1記載の外壁の外張り断熱耐火構造。
【請求項3】
前記ラスモルタル層の屋外側の部分が、グラスファイバーネットによって補強されている請求項1又は2記載の外壁の外張り断熱耐火構造。
【請求項4】
前記第1外装下地材、前記第2外装下地材、及び前記第3外装下地材が、スラグせっこう板からなる請求項1〜3のいずれか1項記載の外壁の外張り断熱耐火構造。
【請求項5】
前記断熱材が、フェノールフォーム保温板からなる請求項1〜4のいずれか1項記載の外壁の外張り断熱耐火構造。
【請求項6】
前記縦枠の屋内側の面に取り付けられた内装面材と、該内装面材の屋内側の面に取り付けられた内装材とを含んで構成される請求項1〜5のいずれか1項記載の外壁の外張り断熱耐火構造。
【請求項7】
前記内装材が、強化石膏ボードによる下張内装材と、強化石膏ボードによる上張内装材とからなる2層構造を備えている請求項6記載の外壁の外張り断熱耐火構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−113033(P2013−113033A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261574(P2011−261574)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【出願人】(390025612)富士川建材工業株式会社 (22)
【Fターム(参考)】