説明

外壁の補修構造及び外壁の補修方法

【課題】取り替えられた外壁材の表面に釘やビスなどの固着具を露出させずに外壁材を簡便に強固に固定できる外壁の補修構造を提供する。
【解決手段】対向する端部に凸部5と凹部6を有する複数枚の外壁材1が凹凸嵌合により接合され、これら外壁材1が下地材30に固定されて構成されている外壁において、この外壁を構成する既存外壁材が新しい外壁材20に取り替えられて固定される。下地材30には、取り替え対象の既存外壁材が設置されていた部分に、板状の固定部材40が固定され、この固定部材40の表面には、接着材層50を介して新しい外壁材20が固定される。新しい外壁材20は、凹部22を構成する裏面側の凸状の部分が切断されており、新しい外壁材20の凸部21は、上段の既存外壁材11の凹部6に嵌合され、新しい外壁材20の凹部22は、下段の既存外壁材12の凸部5の表面側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁の補修構造及び外壁の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対向する一方の端部に凸部、他方の端部に凹部を有する複数枚の外壁材が隣り合う外壁材の端部同士の凹凸嵌合により接合され、これら外壁材が下地材に固定されて構成されている外壁が知られている。このような外壁において、既存外壁材が外部からの衝撃を受けて表面に凹み、割れ、傷などが生じた場合には、損傷した外壁材の取り替えが必要となる。
【0003】
従来、損傷した外壁材は下記の方法で取り替えられる。以下、上端部に凸部、下端部に凹部を有する複数の外壁材が上下に配置され、上下に隣り合う外壁材の端部同士の凹凸嵌合により複数の外壁材が接合された外壁についての補修の手順について説明する。
【0004】
まず、交換用外壁材(新しい外壁材)を準備し、取り替え対象の既存外壁材を取り外す。次いで、取り外した既存外壁材の上段の外壁材を手前に引きだし、交換用外壁材の凸部を手前に引きだした外壁材の凹部に少し挿入し、交換用外壁材の凹部を下段の外壁材の凸部に挿入しながら交換用外壁材の上部を押すようにして納める。最後に、交換用外壁材に対して表面側から釘打ちして下地材に固定する。上段の外壁材が下地材に固定されて手前に引きだせない場合には、交換用外壁材の凹部を構成する表面側の凸状の部分と裏面側の凸状の部分のうち裏面側の凸状の部分を切断する。次いで、交換用外壁材の凸部を上段の外壁材の凹部に挿入し、交換用外壁材の凹部を納めた後、交換用外壁材に対して表面側から釘打ちして下地材に固定する。
【0005】
以上の補修方法においては、交換用外壁材の表面に釘頭が露出する。このため、釘頭を隠すための補修塗料による補修がさらに必要であり、また補修塗料で補修したとしても見栄えが低下することがある。
【0006】
そこで、別の補修方法として、特許文献1に記載されているように、外壁材の凹部の形状に対応したわん曲状のわん曲部を有する補修金具を用いる方法が提案されている。この方法は、次のような手順で損傷した外壁材を取り替えている。まず、交換用外壁材を準備し、取り替え対象の既存外壁材を取り外す。次いで、上段の外壁材の凹部に、補修金具のわん曲部を嵌合させたうえで補修金具を下地材に固定する。次いで、この補修金具に接着材を付設し、交換用外壁材の凸部を補修金具のわん曲部に差し込んだ後、下方に落とし込み、交換用外壁材の凸部を下段の外壁材の凸部に嵌合させる。交換用外壁材は、必要に応じて、上端部の凸部の先端部分や下端部の凹部の裏面側の凸状の部分が切断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−247847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の補修金具を用いる方法は、交換用外壁材が、その上部では補修金具のわん曲部にて交換用外壁材の凸部が挟持され、かつ、接着材の作用により固定され、下部では交換用外壁材の凹部が下段の外壁材の凸部に嵌合される。このため、交換用外壁材への釘打ちが不要となり、良好な外観が得られる。
【0009】
しかしながら、補修金具のわん曲部による上段の外壁材の凹部との嵌合及び交換用外壁材の凸部の挟持のためには、補修金具のわん曲部の形成に精度の高い加工が必要であり、手間がかかる。上段の外壁材の凹部との嵌合及び交換用外壁材の凸部の挟持をより強固にするために、外壁材の凹部の幅方向全長に亘って補修金具を形成するなど補修金具を大型化、長尺状にした場合には特に顕著となる。複数の小型の補修金具を用いることもできるが、この場合には接着材の作用による交換用外壁材の固定強度が低下する場合がある。
【0010】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、取り替えられた外壁材の表面に釘やビスなどの固着具を露出させずに外壁材を簡便に強固に固定できる外壁の補修構造及び外壁の補修方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の外壁の補修構造は、対向する一方の端部に凸部、他方の端部に凹部を有する複数枚の外壁材が隣り合う外壁材の端部同士の凹凸嵌合により接合され、これら外壁材が下地材に固定されて構成されている外壁において、この外壁を構成する既存外壁材の少なくとも1枚が新しい外壁材に取り替えられて固定されている外壁の補修構造であって、前記下地材には、取り替え対象の既存外壁材が設置されていた部分に、板状の固定部材が固定され、この固定部材の表面には、接着材層を介して新しい外壁材が固定され、前記新しい外壁材は、前記外壁材において前記凹部を構成する表面側の凸状の部分と裏面側の凸状の部分のうち裏面側の凸状の部分が切断されており、前記新しい外壁材の凸部は、前記取り替え対象の既存外壁材の凸部側に隣接する既存外壁材の凹部に嵌合され、前記新しい外壁材の凹部は、前記取り替え対象の既存外壁材の凹部側に隣接する既存外壁材の凸部の表面側に配置されていることを特徴とする。
【0012】
この外壁の補修構造においては、前記既存外壁材の凹部を構成する裏面側の凸状の部分と係合可能に形成された凹部押さえ部材が前記下地材に固定され、前記既存外壁材の凹部が前記下地材に固定されていることが好ましい。
【0013】
本発明の外壁の補修方法は、対向する一方の端部に凸部、他方の端部に凹部を有する複数枚の外壁材が隣り合う外壁材の端部同士の凹凸嵌合により接合され、これら外壁材が下地材に固定されて構成されている外壁において、その外壁を構成する既存外壁材の少なくとも1枚を新しい外壁材に取り替えて固定する外壁の補修方法であって、取り替え対象の既存外壁材が設置されていた部分の下地材に、板状の固定部材を固定した後、外壁材の凹部を構成する表面側の凸状の部分と裏面側の凸状の部分のうち裏面側の凸状の部分を切断した新しい外壁材の凸部を、前記取り替え対象の既存外壁材の凸部側に隣接する既存外壁材の凹部に嵌合させ、前記新しい外壁材の凹部を、前記取り替え対象の既存外壁材の凹部側に隣接する既存外壁材の凸部の表面側に配置して、前記固定部材の表面に、前記新しい外壁材を接着材で固定することを特徴とする。
【0014】
この外壁の補修方法においては、前記新しい外壁材を前記固定部材に固定する前に、前記既存外壁材の凹部を構成する裏面側の凸状の部分と係合可能に形成された凹部押さえ部材を、前記既存外壁材の凹部の裏面側の凸状の部分に係合させて前記下地材に固定し、前記既存外壁材の凹部を前記下地材に固定することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の外壁の補修構造と外壁の補修方法によれば、取り替えられた外壁材の表面に釘やビスなどの固着具を露出させずに外壁材を簡便に強固に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の外壁の補修構造の一実施形態を示した断面図である。
【図2】外壁材の一実施形態を示す断面図である。
【図3】図1の外壁の補修構造を施工順に示した説明図である。
【図4】凹部押さえ部材の一実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、複数枚の外壁材が隣り合う外壁材の端部同士の凹凸嵌合により接合され、これら外壁材が下地材に固定されて構成されている外壁を、補修の対象としている。この外壁を構成する既存外壁材の少なくとも1枚が外部からの衝撃を受けて表面に傷や凹みなどが生じた場合、その損傷した既存外壁材が新しい外壁材に取り替えられて固定される。
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の外壁の補修構造の一実施形態について説明する。図1は、本発明の外壁の補修構造の一実施形態を示した断面図である。
【0019】
図1の外壁を構成する既存外壁材11,12としての外壁材1は、図2に示されるように、長尺な金属製の薄板からなる表面材2と裏面材3の内部に芯材4が充填されて構成されている。
【0020】
表面材2と裏面材3の材料は、鉄板、アルミニウム板、銅板、ステンレス板、チタン板、アルミニウム・亜鉛合金メッキ鋼板などの金属薄板や、塩化ビニル樹脂板、ポリカーボネート樹脂板などの合成樹脂板などを例示することができる。表面材2と裏面材3は、これらの材料をロール成形、プレス成形、押出成形等によって各種形状に成形したものを利用することができる。また、これらの材料の表面を各種色調に塗装したものを利用することもできる。
【0021】
裏面材3は、アルミニウム蒸着紙、クラフト紙、アスファルトフェルト、金属箔(Al、Fe、Pb、Cuなどの箔)などの薄型のシート状物からなるものを利用することもできる。
【0022】
芯材4は、ポリウレタンフォーム、ポリイソシアヌレートフォーム、フェノール樹脂フォーム、塩化ビニル樹脂フォーム、ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォーム、ユリア樹脂フォームなどの合成樹脂発泡体を例示することができる。また、芯材4は、ロックウール、グラスウール、セラミックウールなどの無機質材を利用することもできる。
【0023】
外壁材1は、対向する端部のうち一方の端部に凸部5、他方の端部に凹部6が形成されており、隣り合う外壁材1の端部同士の凹凸嵌合により接合可能とされている。凹部6は、表面側の凸状の部分7と、裏面側の凸状の部分8とから構成されている。この二つの凸状の部分7,8は、基部側では互いに連続し、先端部側では互いに離間しており、二つの凸状の部分7,8の間に別の外壁材1の凸部5が挿入されて凹凸嵌合される。
【0024】
図2では、上端部に凸部5、下端部に凹部6が形成されており、上下に配置された複数枚の外壁材1は隣り合う端部同士の凹凸嵌合により接合される。この凸部5と凹部6は、外壁材1の幅方向(図2の紙面に対して奥行き方向)の全長に亘って形成されている。
【0025】
また、この外壁材1は、凸部5が形成されている端部の裏面側縁部に、凸部5と同じ方向に向かって起立する立ち上がり片9が形成されている。この立ち上がり片9も外壁材1の幅方向の全長に亘って形成されている。
図1に示されるように、外壁材1を下地材30の表面に配置し、この立ち上がり片9に釘やビスなどの固着具10を表面側から打ち込むことで外壁材1を下地材30に固定することができる。
【0026】
図1に示される外壁は、外壁材1が上下に配置される横張りの外壁である。補修前においては、上下両端部に凸部5と凹部6とを有する複数枚の外壁材1が、下地材30を構成する縦胴縁31の表面に上下に配置され、上下に隣り合う外壁材1の端部同士の凹凸嵌合によって接合されている。
【0027】
図1の外壁の補修構造では、取り替え対象の既存外壁材が設置されていた部分の縦胴縁31に、板状の固定部材40が固定され、この固定部材40の表面には、接着材層50を介して新しい外壁材20が固定されている。
【0028】
固定部材40は、例えば、平面視矩形形状を有する平板状の部材とされ、その表面は、接着を容易にし、また接着性を高めるために、平坦面とすることができる。このような固定部材40は、例えば、鉄板、アルミニウム板、溶融亜鉛メッキ鋼板を含む鋼板などの金属薄板で構成することができる。固定部材40は、新しい外壁材20との接着性を高めるために、より大きな接着面を有していることが望ましい。このため、固定部材40の大きさとしては、例えば、新しい外壁材20と同程度であるか、一回り小さい大きさとすることができる。固定部材40は複数枚であってもよい。この場合、複数枚の固定部材40を合わせた全体の大きさが新しい外壁材20と同程度であるか、一回り小さい大きさとされる。固定部材40は、隣接する縦胴縁31間に跨って配置され、釘やビスなどの固着具41を表面側から縦胴縁31に向けて打ち込むことにより縦胴縁31に固定することができる。
【0029】
固定部材40表面の接着材層50は、新しい外壁材20を固定部材40に接着固定する層である。この接着材層50は、新しい外壁材20を固定部材40に仮固定する層を含む。接着材層50は、例えば、接着剤の硬化物層や両面接着テープなどで構成される。接着剤は、固定部材40と新しい外壁材20の裏面材とが接着可能なものが選択され、その種類は特に限定されず、公知のものを使用できる。例えば、変性シリコーン樹脂系接着剤、エポキシ変性シリコーン樹脂系接着剤、ポリウレタン系接着剤などを挙げることができる。両面接着テープも固定部材40と新しい外壁材20の裏面材とが接着可能なものが選択され、その種類は特に限定されず、公知のものを使用できる。例えば、アルミニウム箔などの金属箔の両面にアクリル系粘着剤やシリコーン系粘着剤などの粘着剤が付与されたものを挙げることができる。
【0030】
新しい外壁材20は、図2に示される外壁材1において、凹部6を構成する表面側の凸状の部分7と裏面側の凸状の部分8のうち裏面側の凸状の部分8が切断されたものを挙げることができる。新しい外壁材20は、さらに立ち上がり片9が切断されたものであってもよい。図1の外壁の補修構造では、裏面側の凸状の部分8及び立ち上がり片9が切断されたものが新しい外壁材20として採用されている。
【0031】
この新しい外壁材20は、上端部の凸部21が、上段の既存外壁材11の下端部の凹部6に嵌合される。立ち上がり片9が切断されていないものを新しい外壁材20として採用したときは、立ち上がり片9は上段の既存外壁材11の下端部と縦胴縁31との間に差し込まれる。図1に示されるように、取り替え対象の既存外壁材の立ち上がり片15が縦胴縁31に固着具10で固定されたまま残されている場合には、その表面側に、新しい外壁材20の立ち上がり片9を差し込めばよい。
新しい外壁材20の下端部の凹部22は、下段の既存外壁材12の凸部5の表面側に配置される。
【0032】
このように本実施形態では、固定部材40が縦胴縁31に固定され、新しい外壁材20が接着材層50によって固定部材40に固定されており、新しい外壁材20を簡便に強固に固定することができる。固定部材40の固定に固着具41を使用しても、固定部材40の表面に新しい外壁材20が固定されるので、新しい外壁材20の表面に固着具41は露出しない。
【0033】
また、本実施形態では、新しい外壁材20の凸部21が上段の既存外壁材11の凹部6と嵌合し、新しい外壁材20の凹部22が下段の既存外壁材12の凸部5の表面側に配置されている。背景技術で説明したような、外壁材の凹部の形状に対応したわん曲状のわん曲部を有する補修金具を使用しなくても、新しい外壁材20と隣接する既存外壁材11,12とを容易に接合でき、新しい外壁材20を簡便に強固に固定することができる。また、新しい外壁材20の凸部21が上段の既存外壁材11の凹部6と嵌合しているので、上段の既存外壁材11のがたつきを抑えることができる。
【0034】
さらに本実施形態では、凹部押さえ部材60が縦胴縁31に固定されている。凹部押さえ部材60は、図4に示されるように、外壁材の凹部を構成する裏面側の凸状の部分と係合可能な係合部61と縦胴縁に固定可能な固定部62とを有する。
【0035】
係合部61は、V字形状を有し、外壁材の凹部の裏面側の凸状の部分を挟持して係合される。固定部62は、平板形状を有し、表裏に貫通する貫通孔63が設けられている。このような凹部押さえ部材60は、鉄板、アルミニウム板、銅板などの一枚の金属板の折り曲げ加工により形成することができる。
凹部押さえ部材60の大きさは、例えば、その幅方向の長さが縦胴縁の幅方向の長さと同程度であるか、それよりもやや短い大きさとすることができる。
【0036】
凹部押さえ部材60の縦胴縁31への固定は、まず、上段の既存外壁材11の凹部6の裏面側の凸状の部分8にV字形状の係合部61を差し込んで凸状の部分8を挟持する。また、取り替え対象の既存外壁材が設置されていた部分の縦胴縁31表面に固定部62を配置する。次いで、釘やビスなどの固着具64を表面側から貫通孔(図1では図示なし)に挿入して縦胴縁31に向けて打ち込む。これによって凹部押さえ部材60が縦胴縁31に固定され、上段の既存外壁材11の凹部6が縦胴縁31に固定され、上段の既存外壁材11のがたつきが低減し、その後の新しい外壁材20の固定が容易となる。凹部押さえ部材60は複数個使用することができ、取り替え対象の既存外壁材が設置されていた部分の縦胴縁31の各々に一個ずつ取り付けることができる。
【0037】
上記したように凹部押さえ部材60は、取り替え対象の既存外壁材が設置されていた部分の縦胴縁31に固定される。新しい外壁材20が取り付けられると、凹部押さえ部材60は係合部61を含めて新しい外壁材20に覆われるので、凹部押さえ部材60の露出に伴う見栄えの低下の心配はない。
【0038】
凹部押さえ部材60の係合部61の形状は、上段の既存外壁材11の凹部6の裏面側の凸状の部分8と係合可能であればよく、上記のV字形状に限定されるものではない。例えば、U字形状とし、凸状の部分を挟持して係合することもできる。係合状態は、固着具64の打ち込みにより係合部61が縦胴縁31に向けて押圧されて上段の既存外壁材11の凹部6の裏面側の凸状の部分8が表面側から縦胴縁31に押し付けられるなどの係合状態を含む。このため、平板形状の係合部61を採用することもできる。
このように凹部押さえ部材60は構造が簡単であり、またその大きさも縦胴縁31の幅方向の長さと同程度もしくはそれよりも短くできるなど小型であるため、加工が容易である。
【0039】
次に、図3を参照して、本発明の外壁の補修方法の一実施形態について説明する。図3は、図1の外壁の補修構造を施工順に示した説明図である。
【0040】
図3(a)に示されるように、外壁材1の表面に凹み17などが発生して取り替えが必要になった場合には、取り替え対象の既存外壁材16を、図中のAの箇所にて丸鋸やカッターなどの切断具で上下2つに切断する。次いで、ペンチなどを用いて下側の切断部分16aを下段の既存外壁材12の凸部5から取り外し、上側の切断部分16bを下方に引っ張り引き剥がす。上側の切断部分16bは、立ち上がり片15が固着具10によって縦胴縁31に固定されているので、その引き剥がしには力を要する。このため、図中のBの箇所を切断し、立ち上がり片15を含む部分を縦胴縁31に残したまま、上側の切断部分16bを取り外すことができる。
【0041】
取り替え対象の既存外壁材16を取り外した後は、その上段の既存外壁材11は凹部6側が縦胴縁31に対してフリーな状態となっている。このため、図3(b)に示されるように、上段の既存外壁材11の凹部6に凹部押さえ部材60を取り付けて上段の既存外壁材11の凹部6を縦胴縁31に固定することができる。例えば、凹部押さえ部材60のV字形状の係合部61を上段の既存外壁材11の凹部6の裏面側の凸状の部分8に差し込んで凸状の部分8を挟持し、凹部押さえ部材60の固定部62を取り替え対象の既存外壁材が設置されていた部分の縦胴縁31表面に配置する。次いで、固着具64を表面側から固定部62の貫通孔(図3(b)では図示なし)に挿入して縦胴縁31に向けて打ち込み、凹部押さえ部材60を縦胴縁31に固定し、上段の既存外壁材11の凹部6を縦胴縁31に固定する。これによって、その後の新しい外壁材20の固定を容易にすることができる。
【0042】
取り替え対象の既存外壁材の立ち上がり片15を含む部分が残されている場合には、その残された部分を上段の既存外壁材11の凹部6とともにこの凹部押さえ部材60で固定することもできる。
【0043】
取り替え対象の既存外壁材が取り外された部分に設置される新しい外壁材20を準備する。例えば、図3(c)に示されるように、外壁材1において凹部6を構成する表面側の凸状の部分7と裏面側の凸状の部分8のうち裏面側の凸状の部分8を切断具で切断する。上段の既存外壁材11の凹部6との嵌合を容易にするために、さらに立ち上がり片9を切断することができる。凹部押さえ部材60を用いる場合には、立ち上がり片9が切断された新しい外壁材20を使用する。
新しい外壁材20の準備は、図3(d)に示される新しい外壁材20への接着材51の付設までになされていればよく、図3に示された順序に限定されない。
【0044】
次に、新しい外壁材20を固定するための固定部材40を準備する。図3(d)に示されるように、準備した固定部材40を、取り替え対象の既存外壁材が設置されていた部分の縦胴縁31に固着具41で固定する。また、固定部材40の表面に、接着剤や両面接着テープなどの接着材51を付設する。本実施形態では、エポキシ変性シリコーン樹脂系接着剤52をハシゴ状に塗布している。また、新しい外壁材20の裏面材23表面にも接着材51を付設してもいる。ここでは、新しい外壁材20の裏面材23に、上下左右の4箇所に両面接着テープ53を貼付している。この両面接着テープ53によって、新しい外壁材20と固定部材40とを仮固定し、エポキシ変性シリコーン樹脂系接着剤52によって、新しい外壁材20と固定部材40とを固定する。
【0045】
最後に、図3(e)に示されるように、新しい外壁材20の凸部21を上段の既存外壁材11の凹部6に差し込んで嵌合させ、新しい外壁材20の凹部22を下段の既存外壁材12の凸部5の表面側に配置する。そして、固定部材40の表面に新しい外壁材20を固定して補修が完了する。
【0046】
このように本実施形態では、固定部材40を縦胴縁31に固定し、新しい外壁材20を接着材51で固定部材40に固定しており、新しい外壁材20を簡便に強固に固定することができる。固定部材40の固定に固着具41を使用しても、固定部材40の表面に新しい外壁材20を固定するので、新しい外壁材20の表面に固着具は露出しない。
【0047】
また、本実施形態では、新しい外壁材20の凸部21を上段の既存外壁材11の凹部6に嵌合させ、新しい外壁材20の凹部22を下段の既存外壁材12の凸部5の表面側に配置している。背景技術で説明したような、わん曲部を有する補修金具を使用しなくても、新しい外壁材20と隣接する既存外壁材11,12とを容易に接合でき、新しい外壁材20を簡便に強固に固定することができる。また、新しい外壁材20の凸部21を上段の既存外壁材11の凹部6に嵌合させているので、上段の既存外壁材11のがたつきを抑えることができる。
【0048】
さらにまた本実施形態では、凹部押さえ部材60を用いて上段の既存外壁材11の凹部6を縦胴縁31に固定しているので、上段の既存外壁材11のがたつきが低減し、その後の新しい外壁材20の固定が容易となる。凹部押さえ部材60は係合部61を含めて新しい外壁材20に覆われるので、凹部押さえ部材60の露出に伴う見栄えの低下の心配はない。この凹部押さえ部材60は構造が簡単であり、またその大きさも縦胴縁31の幅方向の長さと同程度もしくはそれよりも短くできるなど小型であるため、加工が容易である。
【0049】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。例えば、図1及び図3では、外壁材が上下に配置される横張りの外壁について説明しているが、外壁材が左右に配置される縦張りの外壁であってもよい。また、取り替え対象の既存外壁材は複数枚であってもよく、同数枚の新しい外壁材に取り替えることができる。さらにまた、凹部押さえ部材を使用せずに取り替え対象の既存外壁材を新しい外壁材に取り替えることもできる。
【符号の説明】
【0050】
1 外壁材
5 凸部
6 凹部
7 表面側の凸状の部分
8 裏面側の凸状の部分
20 新しい外壁材
21 凸部
22 凹部
30 下地材
40 固定部材
50 接着材層
51 接着材
60 凹部押さえ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一方の端部に凸部、他方の端部に凹部を有する複数枚の外壁材が隣り合う外壁材の端部同士の凹凸嵌合により接合され、これら外壁材が下地材に固定されて構成されている外壁において、この外壁を構成する既存外壁材の少なくとも1枚が新しい外壁材に取り替えられて固定されている外壁の補修構造であって、
前記下地材には、取り替え対象の既存外壁材が設置されていた部分に、板状の固定部材が固定され、この固定部材の表面には、接着材層を介して新しい外壁材が固定され、前記新しい外壁材は、前記外壁材において前記凹部を構成する表面側の凸状の部分と裏面側の凸状の部分のうち裏面側の凸状の部分が切断されており、前記新しい外壁材の凸部は、前記取り替え対象の既存外壁材の凸部側に隣接する既存外壁材の凹部に嵌合され、前記新しい外壁材の凹部は、前記取り替え対象の既存外壁材の凹部側に隣接する既存外壁材の凸部の表面側に配置されていることを特徴とする外壁の補修構造。
【請求項2】
前記既存外壁材の凹部を構成する裏面側の凸状の部分と係合可能に形成された凹部押さえ部材が前記下地材に固定され、前記既存外壁材の凹部が前記下地材に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の外壁の補修構造。
【請求項3】
対向する一方の端部に凸部、他方の端部に凹部を有する複数枚の外壁材が隣り合う外壁材の端部同士の凹凸嵌合により接合され、これら外壁材が下地材に固定されて構成されている外壁において、その外壁を構成する既存外壁材の少なくとも1枚を新しい外壁材に取り替えて固定する外壁の補修方法であって、
取り替え対象の既存外壁材が設置されていた部分の下地材に、板状の固定部材を固定した後、外壁材の凹部を構成する表面側の凸状の部分と裏面側の凸状の部分のうち裏面側の凸状の部分を切断した新しい外壁材の凸部を、前記取り替え対象の既存外壁材の凸部側に隣接する既存外壁材の凹部に嵌合させ、前記新しい外壁材の凹部を、前記取り替え対象の既存外壁材の凹部側に隣接する既存外壁材の凸部の表面側に配置して、前記固定部材の表面に、前記新しい外壁材を接着材で固定することを特徴とする外壁の補修方法。
【請求項4】
前記新しい外壁材を前記固定部材に固定する前に、前記既存外壁材の凹部を構成する裏面側の凸状の部分と係合可能に形成された凹部押さえ部材を、前記既存外壁材の凹部の裏面側の凸状の部分に係合させて前記下地材に固定し、前記既存外壁材の凹部を前記下地材に固定することを特徴とする請求項3に記載の外壁の補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−67961(P2013−67961A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205769(P2011−205769)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】