説明

外壁塗装装置

【課題】安定して設置することができる外壁塗装装置を提供する。
【解決手段】外壁塗装装置は、塗装機本体付垂直レールと、一組の水平レール3、3とを備えている。水平レール3、3は、建物の外壁に沿って水平に配置されており、塗装機本体付垂直レール(塗装機本体)を移動可能に支持するものである。各水平レール3には係止部8が設けられている。この係止部8が、足場用の支柱12に設けられている受け部14に係止することにより、各水平レール3は受け部14に着脱可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、建物の外壁を塗装するために使用される外壁塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物の外壁を塗装する際には、例えば特許文献1に示すような外壁塗装装置が使用されている。この外壁塗装装置は、外壁に塗料を吹き付ける塗装機本体と、レールとを備えている。レールは塗装機本体を移動可能に支持するものであり、外壁に沿って水平に配置されている。具体的には、このレールは、外壁の周囲に設置されている壁つなぎ間に掛け渡されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−140461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、壁つなぎは建物の所定の取付部分に取り付けられるので、レールの取付位置は、この取付部分の位置に限定される。このため、取付部分の位置によっては、レールを安定して設置することができない。したがって塗装機本体も安定して設置することができないので、外壁塗装装置を安定して設置することができなかった。
【0005】
本件発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、安定して設置することができる外壁塗装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本件発明者等は、鋭意研究の結果、前記課題を解決するために以下のような外壁塗装装置を採用した。
【0007】
本件発明の外壁塗装装置は、建物の外壁に塗料を吹き付ける塗装機本体を移動可能に直接または間接的に支持するレールが、前記建物の外壁に沿って立設された足場の支柱に設けられた受け部に着脱可能とされていることを特徴としている。
【0008】
ここで、受け部は、足場に本来設けられている足場板や手摺棒を受けるための汎用の受け部であり、レールは、この汎用の受け部に着脱可能とされることが好ましい。なお、汎用の受け部とは、レール専用の受け部ではなく、足場板や手摺棒を受けるための既存の受け部や、既存の受け部の一部を改良したものである。
【0009】
また、受け部は、支柱の周面に設けられた平面視コ字型の部材であり、この受け部に係止する係止部をレールの両端部に設けても良い。
【0010】
また、係止部に加えて、支柱の周面に当接する当接部をレールの両端部に設けても良い。
【0011】
また、レールは水平レールでも良い。この場合には、水平レールを建物の外壁に沿って水平に且つ上下に2本配置して、双方の水平レール間に、塗装機本体を垂直に移動可能に支持する垂直レールを設け、双方の水平レールは垂直レールを水平に移動可能に支持するようにすることが好ましい。
【0012】
また、水平レールは、外壁の角部に対応して平面視で弧状の部分を有していることが好ましい。
【0013】
また、水平レールを延設方向に少なくとも2本連続して設け、隣接する2つの係止部を共通の受け部に取り付けるようにしても良い。
【発明の効果】
【0014】
本件発明の外壁塗装装置は、レールを足場用の支柱に取り付けるようにしたことにより、レールの取付位置を自由に設定することが可能になる。したがって、レールを安定して設置することが可能になり、これに伴い塗装機本体も安定して設置することが可能になる。よって、本件発明の外壁塗装装置は安定して設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本件発明の一実施の形態を示す外壁塗装装置と足場の斜視図である。
【図2】同実施の形態の受け部の斜視図である。
【図3】同実施の形態においてコーナーレールを足場に取り付けた状態の斜視図である。
【図4】図3において係止部の取付状態の拡大図である。
【図5】図4において係止部の正面図である。
【図6】同実施の形態においてコーナーレールと直線レールを足場に取り付けた状態の斜視図である。
【図7】図6のコーナーレールと直線レールの接続部分の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本件発明の実施の形態を図にしたがって説明する。
【0017】
図1は、本件発明の一実施の形態を示す外壁塗装装置1と足場11の斜視図である。まず、足場11について説明する。足場11は、周知のように建物の外壁(図示せず)の周囲に配置される。図1では、足場11において外壁の角部を中心とした部分を内側から視た状態を示している。
【0018】
この足場11は、外壁に沿って立設された複数の足場用の支柱12と、支柱12、12間に掛け渡された足場板13とを備えている。
【0019】
また、この足場11では、図2に示すように各支柱12の周面12aに受け部14が設けられている。この受け部14は、足場11本来に設けられている手摺棒15(図1参照)や足場板13等の真っ直ぐな部材(水平部材)を複数の支柱12に係止させて水平に取り付けるものであり、既存の部材である。
【0020】
この受け部14は、支柱12の周面12aの左右方向と内外方向に設けられている。各受け部14は平面視コ字型に形成されており、支柱12の周面12aとの間に隙間Sを形成している。手摺棒15を支柱12に取り付ける際には、この隙間Sに手摺棒15の先端部分を差し込む。
【0021】
なお、受け部14は、本実施の形態のように平面視コ字型に形成されていなくても良く、手摺棒15や足場板13等の水平部材を複数の支柱12に係止させるように形成されていれば良い。
【0022】
次に、外壁塗装装置1について説明する。図1に示すように、外壁塗装装置1は足場11に取り付けられている。この外壁塗装装置1は、塗装機本体付垂直レール2と、一組の水平レール3、3とを備えている。
【0023】
一組の水平レール3、3は、塗装機本体付垂直レール2を外壁に沿って水平に移動可能に支持するものである。この水平レール3、3は、足場11の上部と下部に外壁に沿って水平に取り付けられている。
【0024】
一方、塗装機本体付垂直レール2は、外壁の塗装を行うものである。塗装機本体付垂直レール2は、垂直レール21と、塗装機本体22と、制御装置23とを備えている。垂直レール21は、双方の水平レール3、3に掛け渡されて水平に移動可能に支持されている。塗装機本体22は、外壁に塗料を吹き付けるものである。この塗装機本体22は、垂直レール21に上下に移動可能に支持されており、塗料を噴出するためのノズル等を備えている。制御装置23は、塗装機本体22の各種の動作(ノズルによる塗料の噴出、上下移動等)を制御するものであり、これらの動作を制御するための操作ボタンを備えている。
【0025】
次に、水平レール3の構造について説明する。水平レール3は、受け部14に着脱可能とされている。さらに、水平レール3は、延設方向に少なくとも2本連続して設けられており、コーナーレール4と直線レール5とを備えている。
【0026】
まず、コーナーレール4について説明する。コーナーレール4は、外壁(図示せず)の角部に沿ってL字状に配置される。図3に示すように、このコーナーレール4は、レール本体6と、当接部7と、係止部8とを備えている。
【0027】
レール本体6は、角部に沿ってL字状に形成されており、角部に対応する部分は平面視で弧状に形成されている。また、レール本体6は内側(外壁側)が開口した断面コ字型に形成されている。これにより、レール本体6の内側にはガイド溝6aが長さ方向に形成されている。このガイド溝6aは、上記で説明した垂直レール21を水平に移動可能に支持するように形成されている。
【0028】
当接部7は、レール本体6の曲がり角部6bの上面に設けられている。この当接部7は、曲がり角部6bの前方にある支柱12の周面12aに当接するように形成されている。具体的に説明すると当接部7は、支柱12に届くように長板状で且つ上方へ向いた断面コ字型に形成されており、先端側の部分7aが平面視U字状に形成されている。当接部7は、この先端側の部分7aが支柱12の周面12aを挟むことによって支柱12の周面12aに当接している。
【0029】
係止部8は、レール本体6の両端部に外嵌されている。この係止部8は、図4に示すように、手摺棒15(図1参照)が差し込まれない受け部14に着脱可能に係止するものである。本実施の形態の場合は、内側の受け部14である。この係止部8は、レール固定部81と、爪部82と、上当接部83と、下当接部84とを備えている。なお、上当接部83と下当接部84は、本件発明の当接部である。
【0030】
レール固定部81は、図5にも示すように、右側(外壁側)へ開口した断面略コ字状に形成されている。これにより、レール固定部81の右側には開口部81aが形成されており、この開口部81aでレール本体6を外嵌している。
【0031】
爪部82は、レール固定部81の上部81bの左側(支柱12側)に結合されている。この爪部82は、図4に示すように、受け部14に引っ掛けて係止するように形成されている。具体的には、この爪部82は、下方に延びる鉤状に形成されている。
【0032】
上当接部83は、爪部82の左端部の後面に結合されている。この上当接部83は、爪部82とともに受け部14に引っ掛けて係止するように形成され、さらにこの状態で支柱12の周面12aに当接するように板状に形成されている。
【0033】
一方、下当接部84は、レール固定部81の下部81cの左側に結合されている。この下当接部84は左方へ延びており、爪部82と上当接部83が受け部14に係止した状態で支柱12の周面12aに当接するように形成されている。
【0034】
そして、このコーナーレール4を足場11に取り付ける際には、作業者はレール本体6を持って、図3に示すように、曲がり角部6bに設けられている当接部7を前方の支柱12に当てながら両端側の係止部8、8をそれぞれ受け部14に引っ掛けて係止する。
【0035】
次に、直線レール5について説明する。図6に示すように直線レール5は、外壁の角部以外の部分(図示せず)に沿って直線状に配置されている。この直線レール5は、レール本体9と、係止部8と、補強部材10とを備えている。
【0036】
レール本体9は直線状に形成されており、さらに内側(外壁側)へ開口した断面コ字型に形成されている。これによりレール本体9の内周側には、ガイド溝9aが長さ方向に形成されている。このガイド溝9aは、上記で説明したコーナーレール4のガイド溝6aと同じものであり、上記で説明した垂直レール21を水平に移動可能に支持するように形成されている。
【0037】
係止部8は、レール本体9の両端部に外嵌されている。この係止部8はコーナーレール4の係止部8と同じものであり、レール固定部81と、爪部82と、上当接部83と、下当接部84とを備えている。これらの構造については、コーナーレール4の係止部8のところで説明した通りである。
【0038】
補強部材10は、レール本体9の外面の係止部8、8の間の部分に外嵌している。この補強部材10は外壁側へ開口した断面略コ字型に形成されている。補強部材10は、この外壁に形成された開口部(図示せず)によりレール本体9に外嵌されている。
【0039】
そして、この直線レール5を足場11に取り付ける際には、作業者はレール本体9を持って、両端側の係止部8、8をそれぞれ受け部14に引っ掛けて係止する。これにより、直線レール5がコーナーレール4の両端に接続される。なお、図6ではコーナーレール4の一端側に直線レール5が接続された状態を示す。
【0040】
このように本実施の形態の外壁塗装装置1では、水平レール3を足場11に取り付けるようにした。これにより、外壁塗装装置1の取付位置を自由に設定することが可能になる。したがって、水平レール3を安定して設置することが可能になり、これに伴い塗装機本体22も安定して設置することが可能になる。よって、本実施の形態の外壁塗装装置1は安定して設置することができる。また、この結果、この外壁塗装装置1は、外壁の塗装作業を常に安定した状態で行うことができる。
【0041】
また、本実施の形態の外壁塗装装置1では、受け部14に着脱可能とされた水平レール3が塗装機本体22を移動可能に間接的に支持するようにした。しかし、レールによる塗装機本体22の支持形態としては、本実施の形態に限定されない。例えば、塗装機本体22を直接支持するように水平レールを構成しても良い。その他には、受け部14に着脱可能とするレールを垂直レールにして、この垂直レールが塗装機本体22を移動可能に直接支持しても良い。
【0042】
また、本実施の形態の外壁塗装装置1では、水平レール3と垂直レール21とを用いて塗装機本体22を水平方向と垂直方向とに移動可能に支持するようにした。これにより、塗装機本体22の移動範囲が広がるので、外壁の塗装作業を効率良く行うことができる。
【0043】
また、受け部14は既存の部材であり、水平レール3は、この既存の受け部14に着脱可能となるようにした。そのため、水平レール3の取り付けに際しては、足場11側に水平レール3専用の取付部材を設ける必要はない。よって、本実施の形態の外壁塗装装置1は、設置作業の作業効率を上げることができる。
【0044】
さらに、本実施の形態の外壁塗装装置1では、既存の受け部14が平面視でコ字型に形成されているため、この受け部14に係止するように係止部8を水平レール3の両端部に設けた。したがって、水平レール3の取り付け作業を容易に行うことが可能になる。よって、本実施の形態の外壁塗装装置1は、設置作業の作業効率をさらに上げることができる。
【0045】
また、当接部(上当接部83と下当接部84)を設けたことにより、係止部8の取り付け状態が安定する。よって、本実施の形態の外壁塗装装置1は、設置状態をさらに安定させることができ、外壁の塗装作業をさらに安定した状態で行うことができる。
【0046】
また、水平レール3は、コーナーレール4を備えたことにより、外壁の角部に対応して平面視で弧状の部分を有している。これにより、塗装機本体付垂直レール2(塗装機本体22)を外壁の角部に沿って曲がれるようにすることが可能になる。よって、本実施の形態の外壁塗装装置1は、外壁の塗装作業の作業効率を上げることができる。
【0047】
また、コーナーレール4の曲がり角部6bに当接部7を設けたので、コーナーレール4の取り付け状態が安定する。よって、本実施の形態の外壁塗装装置1は、設置状態をさらに安定させることができ、外壁の塗装作業をさらに安定した状態で行うことができる。
【0048】
また、係止部8は、図7に示すように、隣接する2つの係止部8(コーナーレール4側の係止部8、直線レール5側の係止部8)が共通の受け部14に係止されるように形成されている。具体的に説明すると、1つの受け部14に対して2つの係止部8が左右に配置した状態で係止するように係止部8の左右の厚みが調整されて形成されている。
【0049】
係止部8を上記のように形成することにより、コーナーレール4と直線レール5との接続状態が安定する。よって、本実施の形態の外壁塗装装置1は、設置状態をさらに安定させることができ、外壁の塗装作業をさらに安定した状態で行うことができる。
【0050】
以上、本件発明にかかる実施の形態を例示したが、これらの実施の形態は本件発明の内容を限定するものではない。また、本件発明の請求項の範囲を逸脱しない範囲であれば、各種の変更等は可能である。
【0051】
例えば、本実施の形態では、コーナーレール4と直線レール5が分割された場合について2つの係止部8を共通の受け部14に係止可能に形成したが、長い直線レールが分割可能に構成される場合にも、このような係止部8を使用できる。また、係止部8の形状や設置位置、各当接部7、83、84の形状や設置位置についても、請求項の範囲を逸脱しない範囲であれば本実施の形態に限定しなくても良い。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上説明したように本件発明の外壁塗装装置は、安定して設置することができる。したがって、本件発明の外壁塗装装置を、その技術分野で十分に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 外壁塗装装置
2 塗装機本体付垂直レール
3 水平レール
4 コーナーレール
5 直線レール
6b 曲がり角部
7 当接部
8 係止部
11 足場
12 支柱
12a 周面
13 足場板
14 受け部
15 手摺棒
21 垂直レール
22 塗装機本体
83 上当接部(当接部)
84 下当接部(当接部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁に塗料を吹き付ける塗装機本体を移動可能に直接または間接的に支持するレールが、前記建物の外壁に沿って立設された足場の支柱に設けられた受け部に着脱可能とされていることを特徴とする外壁塗装装置。
【請求項2】
前記受け部が、前記足場に本来設けられている足場板や手摺棒を受けるための汎用の受け部であり、この汎用の受け部に前記レールが着脱可能とされたことを特徴とする請求項1に記載の外壁塗装装置。
【請求項3】
前記受け部は、前記支柱の周面に設けられた平面視コ字型の部材であり、この受け部に係止する係止部が前記レールの両端部に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の外壁塗装装置。
【請求項4】
前記係止部に加えて、前記支柱の周面に当接する当接部が前記レールの両端部に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の外壁塗装装置。
【請求項5】
前記レールは、前記建物の外壁に沿って水平に配置された水平レールであり、この水平レールは上下に2本配置されて、双方の水平レール間には、前記塗装機本体を垂直方向に移動可能に支持する垂直レールが設けられ、前記双方の水平レールは、この垂直レールを水平に移動可能に支持することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の外壁塗装装置。
【請求項6】
前記レールは、前記建物の外壁に沿って水平に配置された水平レールであり、この水平レールは、前記外壁の角部に対応して平面視で弧状の部分を有していることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の外壁塗装装置。
【請求項7】
前記レールは、前記建物の外壁に沿って水平に配置された水平レールであり、この水平レールは延設方向に少なくとも2本連続して設けられ、隣接する2つの前記係止部が共通の前記受け部に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の外壁塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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