説明

外壁改修方法

【課題】ゴンドラを用いて既存構造物の外壁に新たに外壁パネルを取り付ける場合に、移動するゴンドラにより外壁パネルが損傷するのを防止できる外壁改修方法を提供すること。
【解決手段】外壁改修方法は、建物1の屋上階の外壁面にゴンドラ30を配置する初期工程と、ゴンドラ30を利用して外壁パネル4を建物1の外壁2に取り付けるパネル取り付け工程と、ゴンドラ30を1フロア分だけ下降させる移動工程と、パネル取り付け工程および移動工程を繰り返すことで、建物1の上部から下部に向かって外壁パネル4を取り付ける繰り返し工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁改修方法に関する。詳しくは、既存の高層建物の外壁を改修する外壁改修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高層建物の外壁に新たに外壁パネルを取り付ける場合がある。この場合、高層建物に枠組み足場を設置することが困難であるうえに、外壁パネルはかなりの重量物であるため、例えば、以下のような施工システムが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
すなわち、施工システムは、建物の屋上階に設けられた支持フレームと、支持フレームに支持されて外壁面の所定位置まで作業員を搬送するゴンドラ機構と、支持フレームに支持されて外壁面の所定位置まで外壁パネルを搬送する走行式搬送機構と、支持フレームに吊り下げ支持されてゴンドラ機構および走行式搬送機構の移動範囲を覆う養生する吊り足場と、地表から建物上部に向かって外壁パネルを搬送する仮設リフトと、を備える。
【0004】
支持フレームは、建物の屋上階に設けられて外方に張り出した複数の支持アームと、これら支持アームの先端に設けられて建物の外周に沿って延びる2条の軌条と、を備える。
ゴンドラ機構は、作業員が搭乗するゴンドラと、ワイヤを介してゴンドラを吊り下げ支持しつつ支持フレーム先端の軌条に沿って移動可能な台車と、を備える。このゴンドラ機構によれば、作業員が搭乗したゴンドラを、水平方向あるいは上下方向に移動することができる。
【0005】
走行式搬送機構は、支持フレーム先端の軌条に沿って移動可能であり、ワイヤを介して外壁パネルを吊り下げ支持可能である。この走行式搬送機構によれば、外壁パネルを、水平方向あるいは上下方向に移動することができる。
仮設リフトは、外壁面に沿って地表から建物上部まで延びた軌条と、この軌条に沿って移動するケージと、を備えている。この仮設リフトによれば、ケージを軌条に沿って上昇させることにより、外壁パネルを地表から建物上部まで搬送できる。
【0006】
この施工システムによれば、以下の手順で外壁パネルを取り付ける。
まず、ゴンドラ機構および走行式搬送機構の作業範囲を決定し、この作業範囲を覆うように吊り足場をセットする。
次に、仮設リフトのケージに外壁パネルを載せて、その後、ケージを軌条に沿って上昇させて、外壁パネルを地表から建物上部まで搬送する。次に、仮設リフトのケージ上の外壁パネルを走行式搬送機構により吊り下げ支持させる。次に、ゴンドラ機構によりゴンドラを所定位置まで移動させるととともに、走行式搬送機構により外壁パネルを所定位置まで移動させる。次に、ゴンドラ上の作業員により、走行式搬送機構に支持された外壁パネルを所定位置に取り付ける。このような作業を繰り返すことにより、所定の作業範囲に外壁パネルを取り付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−348691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のような施工システムでは、ゴンドラを作業範囲内で上下あるいは水平に自在に移動させて、外壁パネルの取り付け作業を進めてゆく。そのため、既に取り付けた外壁パネル上をゴンドラが通過する場合がある。このとき、ゴンドラが既に取り付けた外壁パネルに接触して、この外壁パネルが損傷する虞があった。
【0009】
本発明は、ゴンドラを用いて既存構造物の外壁に新たに外壁パネルを取り付ける場合に、移動するゴンドラにより外壁パネルが損傷するのを防止できる外壁改修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の外壁改修方法は、既存構造物の外壁に新たに外壁パネルを取り付ける外壁改修方法であって、前記構造物の最上部の外壁面にゴンドラを配置する初期工程と、前記ゴンドラを利用して外壁パネルを前記構造物の外壁に取り付けるパネル取り付け工程と、前記ゴンドラを所定量だけ下降させる移動工程と、前記パネル取り付け工程および前記移動工程を繰り返すことで、前記構造物の上部から下部に向かって外壁パネルを取り付ける繰り返し工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、構造物の上部から下部に向かって外壁パネルを取り付けてゆく。したがって、既に取り付けた外壁パネルの上をゴンドラが通過することはないので、外壁パネルにゴンドラが接触することはない。よって、移動するゴンドラにより外壁パネルが損傷するのを防止できる。
【0012】
請求項2に記載の外壁改修方法は、前記構造物の所定階および当該所定階の下階の外壁面にゴンドラを対向配置し、当該ゴンドラを固定部材により少なくとも前記下階の外壁に固定し、この状態で前記所定階の外壁に外壁パネルを取り付けることで、前記繰り返し工程を実行することを特徴とする。
【0013】
高層階では強風が吹いているため、パネルの取り付け時にゴンドラが強風に煽られて、ゴンドラの姿勢が不安定となる場合がある。
しかしながら、この発明によれば、ゴンドラを所定階の下階の外壁に固定した状態で、所定階に外壁パネルを取り付けるので、ゴンドラの姿勢が不安定になるのを防止でき、作業効率を向上できる。
【0014】
請求項3に記載の外壁改修方法は、前記ゴンドラは、前記構造物の外壁面に水平方向に所定長さに亘って複数連結して配置されることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、ゴンドラを水平方向に所定長さに亘って配置したので、移動足場としての剛性を確保できるから、作業効率をさらに向上できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、構造物の上部から下部に向かって外壁パネルを取り付けてゆく。したがって、既に取り付けた外壁パネルの上をゴンドラが通過することはないので、外壁パネルにゴンドラが接触することはない。よって、移動するゴンドラにより外壁パネルが損傷するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る外壁改修方法が適用された建物の立面図である。
【図2】前記実施形態に係る建物の平面図である。
【図3】前記実施形態に係る建物に設けられた外壁施工システムのゴンドラの立面図および側面図である。
【図4】前記実施形態に係る建物の外壁を改修する手順を説明するための立面図(その1)である。
【図5】前記実施形態に係る建物の外壁を改修する手順を説明するための立面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る外壁改修方法が適用された既存構造物としての建物1の立面図である。図2は、建物1の平面図である。
建物1は、15階建てであり、この建物1の外壁2は、タイル貼りである。この外壁2には、上下方向に延びるシール目地6が所定間隔おきに設けられている。
また、建物1には、水平方向に連続する連続窓3が設けられている。これら連続窓3と外壁2との取り合いには、図示しない水切りが設けられている。
【0019】
この建物1には、外壁2の上に新たな外壁パネル4を取り付けるための外壁施工システム10が設けられている。外壁2のシール目地6および外壁2の水切り部分には、外壁施工システム10のための壁繋ぎアンカー5(図1中黒丸で表す)が打ち込まれている。
【0020】
外壁施工システム10は、建物1の外壁面に沿って全周に亘って配置された複数の移動足場機構20および4つのリフト機構40からなる。リフト機構40は移動足場機構20とほぼ同様の構成であるが、図1および図2では、理解の容易のため、リフト機構40を斜線で表す。
【0021】
移動足場機構20は、それぞれ、建物1の屋上階に設けられて外方に張り出した2本の支持アーム21と、これら支持アーム21の先端からワイヤ22で吊り下げられたゴンドラ30と、を備える。ゴンドラ30には、ワイヤ22を巻き取る図示しない昇降装置が設けられており、この昇降装置を駆動することにより、ゴンドラ30を自在に昇降することができる。
移動足場機構20の隣り合うゴンドラ30同士は、互いに連結されている。これにより、ゴンドラ30は、建物1の外壁面に水平方向に所定長さに亘って配置される。
【0022】
図3は、ゴンドラ30の立面図および側面図である。
ゴンドラ30は、箱状であり、下段部31と、この下段部31の上に設けられた上段部32と、下段部31および上段部32を連結するタラップ33と、を備える。
下段部31は、床部311と、この床部311の正面側(つまり建物側)および背面側に設けられた固定手摺312と、床部311のゴンドラ両側面側に設けられた連結板313と、を備える。
連結板313は、床部311に回動可能に設けられており、隣接するゴンドラ30の床部311に架け渡すことにより、隣接するゴンドラ30同士が連結され、この連結板313の上を通って、作業員がゴンドラ30同士を往来できる。
上段部32は、下段部31と同様の構成である。
【0023】
ここで、ゴンドラ30は、図3(b)に示すように、上段部32が所定階に対向し、下段部31が所定階の下階に対向するように配置されている。
下段部31の正面側(つまり建物側)には、複数の固定部材としての下側壁繋ぎ314Aが設けられており、この下側壁繋ぎ314Aは、下階の外壁2に打ち込まれた壁繋ぎアンカー5に連結されている。
上段部32の正面側には、複数の上側壁繋ぎ314Bが設けられている。この上側壁繋ぎ314Bは、所定階の外壁2に打ち込まれた壁繋ぎアンカー5に連結されている。
これにより、ゴンドラ30は、複数箇所で建物1に固定されている。
【0024】
上段部32の正面側には、ゴンドラ30の幅方向に延びるハンガーレール316、および、このハンガーレール316に沿って移動可能な電動チェーンブロック317が設けられている。
下段部31の正面側の下端には、可動式の落下防止板315が設けられている。落下防止板315を建物1の外壁2に立て掛けて、ゴンドラ30と外壁2との隙間を塞ぐことにより、工具や資材が落下するのを防止する。
【0025】
外壁施工システム10によれば、以下の手順で、外壁2の上に新たな外壁パネル4を取り付ける。
まず、リフト機構40の直下の近傍に図示しないストックヤードを設け、このストックヤードに外壁パネル4をストックしておく。また、図4に示すように、全ての移動足場機構20のゴンドラ30を建物1の屋上階に位置させて、壁繋ぎ314A、314Bにて建物1に固定するとともに、互いに連結しておく。
【0026】
次に、リフト機構40のゴンドラ30を地表まで下降させて、ストックヤードから外壁パネル4を取り出し、リフト機構40のゴンドラ30に外壁パネル4を載せる。そして、このリフト機構40のゴンドラ30を、移動足場機構20のゴンドラ30の高さまで上昇させる。
次に、リフト機構40のゴンドラ30上の外壁パネル4を、移動足場機構20のゴンドラ30に載せ換えて、所定位置まで搬送し、電動チェーンブロック317を用いて外壁パネル4を吊り上げる。そして、移動足場機構20のゴンドラ30上の作業員により、上側壁繋ぎ314Bのみを取り外しながら、外壁2の上に外壁パネル4を取り付ける(図3(B)参照)。このようにして、建物1の屋上階に全周に亘って外壁パネル4を取り付ける。
【0027】
次に、ゴンドラ30間に掛け渡された連結板313を直立させて、ゴンドラ30同士の連結を解除する。次に、壁繋ぎ314を取り外すとともに、落下防止板315を直立させる。
次に、図5に示すように、移動足場機構20の全てのゴンドラ30を1フロア分だけ下降させ、15階の高さに位置させる。その後、ゴンドラ30間に再び連結板313を掛け渡し、壁繋ぎ314を壁繋ぎアンカー5に連結して、落下防止板315を外壁2に立て掛ける。
次に、これらゴンドラ30を利用して、建物1の15階に全周に亘って外壁パネル4を取り付ける。
【0028】
以上のゴンドラ30の移動および外壁パネル4の取り付けを、1階に至るまで繰り返す。
【0029】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)建物1の上部から下部に向かって外壁パネル4を取り付けてゆく。したがって、既に取り付けた外壁パネル4の上をゴンドラ30が通過することはないので、外壁パネル4にゴンドラ30が接触することはない。よって、移動するゴンドラ30により外壁パネルが損傷するのを防止できる。
【0030】
(2)壁繋ぎ314Aによりゴンドラ30を所定階の下階の外壁2に固定した状態で、所定階に外壁パネル4を取り付けるので、ゴンドラ30の姿勢が不安定になるのを防止でき、作業効率を向上できる。
【0031】
(3)ゴンドラ30を水平方向に所定長さに亘って配置したので、移動足場としての剛性を確保できるから、作業効率をさらに向上できる。
【0032】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0033】
1…建物(既存構造物)
2…外壁
3…連続窓
4…外壁パネル
5…壁繋ぎアンカー
6…シール目地
10…外壁施工システム
20…移動足場機構
21…支持アーム
22…ワイヤ
30…ゴンドラ
31…下段部
32…上段部
33…タラップ
40…リフト機構
311…床部
312…固定手摺
313…連結板
314A…下側壁繋ぎ(固定部材)
314B…上側壁繋ぎ
315…落下防止板
316…ハンガーレール
317…電動チェーンブロック


【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存構造物の外壁に新たに外壁パネルを取り付ける外壁改修方法であって、
前記構造物の最上部の外壁面にゴンドラを配置する初期工程と、
前記ゴンドラを利用して外壁パネルを前記構造物の外壁に取り付けるパネル取り付け工程と、
前記ゴンドラを所定量だけ下降させる移動工程と、
前記パネル取り付け工程および前記移動工程を繰り返すことで、前記構造物の上部から下部に向かって外壁パネルを取り付ける繰り返し工程と、を備えることを特徴とする外壁改修方法。
【請求項2】
前記構造物の所定階および当該所定階の下階の外壁面にゴンドラを対向配置し、当該ゴンドラを固定部材により少なくとも前記下階の外壁に固定し、この状態で前記所定階の外壁に外壁パネルを取り付けることで、前記繰り返し工程を実行することを特徴とする請求項1に記載の外壁改修方法。
【請求項3】
前記ゴンドラは、前記構造物の外壁面に水平方向に所定長さに亘って複数連結して配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の外壁改修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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