説明

外壁構造

【課題】壁面全体において統一感を保ちつつ、変化のある外観に壁面を形成することができる外壁構造を提供する。
【解決手段】同じ外形形状・寸法、同じ表面テクスチャーを有し、且つ表面に長手方向の全長に亘って連続する凹溝1が0本〜複数本の間の任意の本数で設けられた、凹溝1の本数(0本を含む)が異なる複数種類の外装板2を備える。そして2種類以上の外装板2を接続して張ることによって外壁の壁面を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹溝を設けた外装板を張り並べて形成される外壁構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セメント系など窯業系の材料で作製される外装板を張り並べて、家屋の外壁を形成することが従来から広く行われている。そしてこの外装板には、石、レンガ、タイルその他、様々な材料の素材をモチーフとした表面模様が施されており、一種類の同じ表面模様の外装板を張り並べたり、あるいは異なる表面模様に形成された複数種類の外装板を組み合わせて張り並べたりすることによって、外装板の表面模様に応じた外壁面の外観形成が行なわれている。例えば、長手方向の全長に亘って凹溝を設けた外装板を用いることによって、凹溝がストライプ状に配置された外観に外壁面を形成することができるものである(例えば特許文献1等参照)。
【特許文献1】特開平6−264586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、一種類の同じ表面模様の外装板を張り並べる場合には、壁面の全面が同じ表面模様の繰り返しになるため、外壁は単調で変化に乏しい外観になってしまうものであり、また異なる表面模様の複数種の外装板を組み合わせて張り並べる場合には、外壁の全体において外観の統一感を図ることが難しくなり、煩雑な外観になるものであった。
【0004】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、壁面全体において統一感を保ちつつ、変化のある外観に壁面を形成することができる外壁構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、同じ外形形状・寸法、同じ表面テクスチャーを有し、且つ表面に長手方向の全長に亘って連続する凹溝1が0本〜複数本の間の任意の本数で設けられた、凹溝1の本数(0本を含む)が異なる複数種類の外装板2を備え、2種類以上の外装板2を接続して張ることによって形成されたことを特徴とするものである。
【0006】
複数種の外装板2は凹溝1を有しないか、凹溝1の本数が異なるか以外、共通した外観に形成されているものであり、これらの外装板2を複数種張り並べることによって、凹溝1を基調とした模様で、外壁の壁面全面に統一感のある外観を形成することができると共に、凹溝1は単調な繰り返しで配置されることがなく、変化のある外観に壁面を形成することができるものである。
【0007】
また本発明は、上記複数種類の外装板2は、同じ表面色彩を有することを特徴とするものである。
【0008】
この発明によれば、外壁の壁面全面を色彩のうえでも統一感のある外観に形成することができるものである。
【0009】
また本発明は、上記凹溝1は、外装板2を短手方向に等間隔に分割する位置に設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
この発明によれば、凹溝1の配置が不規則で煩雑なものになることがなく、外壁の壁面全面に統一感のある外観を形成することが容易になるものである。
【0011】
また本発明は、凹溝1の本数が異なる外装板2を短手辺で接続した際に、凹溝1の本数が多い外装板2の凹溝1に、凹溝1の本数が少ない外装板2の総ての凹溝1が連続するように、凹溝1が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
この発明によれば、外装板2の接続部間において凹溝1の連続性を最大限に得ることができ、外装板2を連続性のある外観で接続することができるものであり、外壁面の全面に自然で統一感のある外観を形成することが容易になるものである。
【0013】
また本発明は、外装板2の表面には、凹溝1と交差する交差溝4が設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
この発明によれば、凹溝1と交差する交差溝4によって、変化のある外観に壁面を形成することができるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数種の外装板2は凹溝1を有しないか、凹溝1の本数が異なるか以外、共通した外観に形成されているものであり、これらの外装板2を複数種張り並べることによって、凹溝1を基調とした模様で、外壁の壁面全面に統一感のある外観を形成することができると共に、凹溝1は単調な繰り返しで配置されることがなく、変化のある外観に壁面を形成することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0017】
外装板2は、セメントなどの窯業系材料、鋼板などの金属系材料、あるいはポリ塩化ビニルなどのプラスチック系材料で製造されるものであり、図の実施の形態では横長の長方形に形成してある。外装板2としては複数種類のものが準備されるが、各種類とも、同じ外形形状・寸法に形成し、また同じ表面テクスチャーに形成するようにしてある。ここで、表面テクスチャーが同じとは、表面材質、細かい凹凸、肌触りなどが共通していることをいい、凹溝1以外の表面が同じ外観に形成されることをいう。また複数種類の各外装板2は同じ色彩に塗装して、同じ表面色彩を有するようにしてもよい。
【0018】
そして外装板2は、その表面に凹溝1を設けないか、表面に設けた凹溝1の本数が異なる、複数種類のものが準備されるものである。すなわち、表面に凹溝1が0本〜複数本の間の本数で設けられた、凹溝1の本数が異なる複数種類の外装板2が準備されるものである。この凹溝1は、外装板2の長手方向の全長に亘って、長手辺と平行な直線状に形成されるものであり、各外装板2において凹溝1の溝幅、溝深さは総て同一に形成してある。
【0019】
図1の実施の形態では、外装板2として、凹溝1を設けていない(つまり凹溝1が0本)外装板2a、凹溝1を1本設けた外装板2b、凹溝1を3本設けた外装板2cの3種類のものを用いるようにしてある。凹溝1の本数は勿論、これらに限定されるものではなく、2本、4本、さらにそれ以上のものであってもよい。また、各外装板2の一方の長手辺には凹段溝3が長手方向の全長に亘って直線状に形成してある。この凹段溝3は後述のように外装板2を長手辺で接合して接続する際に、隣り合う外装板2間に凹溝1と同じ溝幅・溝深さの凹溝1aが形成されるように、その幅や深さが設定されるものである。
【0020】
また各外装板2にあって、凹溝1は、外装板2を短手方向(凹段溝3を除く)で等間隔に分割する位置に設けられるものである。例えば外装板2bのように凹溝1を1本設ける場合は、外装板2を短手方向に2等分する位置に、外装板2cのように凹溝1を3本設ける場合は、外装板2を短手方向に4等分する位置に、凹溝1を設けるものであり、つまり凹溝1がn本(nは整数)のとき、外装板2を短手方向にn+1等分する位置に凹溝1を設けるものである。
【0021】
上記のように形成される外装板2を張り並べて家屋の外壁を形成することができる。外壁の施工構造の一例を図11に示す。外壁の下地構造材として、柱6と、柱6間の間柱7が立設してあり、柱6及び間柱7の屋外面間に防水紙8が張ってある。そして外壁板2を縦横に複数枚配置して、取付金具9で外壁板2の端縁を柱6や間柱7に固定することによって、縦横に接続した複数枚の外装板2で外壁の壁面を形成することができるものである。図11において10は外装板2と同材質の出隅用外装板である。
【0022】
そしてこのように外装板2を接続して張り並べて外壁面を形成するにあたって、図1の3種類の外装板2a,2b,2cを用いる場合、例えば図2(a)のように、下から、外装板2b、外装板2a、外装板2a、外装板2c、外装板2cの順に上下に接続することによって、外壁面を形成することができる。また図2(b)のように、下から、外装板2c、外装板2b、外装板2a、外装板2b、外装板2cの順に上下に接続することによっても、外壁面を形成することができる。
【0023】
各外装板2は凹溝1を除いて共通した外観を有するために、図2(a)(b)にみられるように、外装板2に設けた凹溝1と、外装板2の長手端縁の凹段溝3によって隣り合う外壁板2間に形成される凹溝1aとによって、凹溝1(及び凹溝1a)を基調とした模様で、外壁面の全面に統一感のある外観を形成することができるものである。また凹溝1の本数の異なる複数種の外装板2を組み合わせているため、凹溝1の配置が単調な繰り返しになるようなことがなく、凹溝1の間隔が疎な部分と密な部分とができて、変化のある外観に壁面を形成することができるものである。しかも凹溝1は、外装板2を短手方向に等間隔に分割する位置に設けられているため、凹溝1の配置は不規則で煩雑なものになることがなく、変化を与えつつ統一感のある外観を形成することができるものである。そして、図2(a)(b)のように複数種の外装板2を任意に組み合わせて任意の位置に配置することによって、各種の異なる外観の外壁面を形成することができるものである。
【0024】
特に凹溝1は日差しと見る位置との関係による陰影効果で意匠変化を得ることができ、壁面の外観向上の効果を高く得ることができるものである。例えば図2(a)のものでは、壁面の上部で凹溝1(及び凹溝1a)の間隔が密であるため、壁面の上部の陰影を強調した意匠変化を与えることができ、また図2(b)のものでは壁面の上部と下部で凹溝1(及び凹溝1a)の間隔が密であるため、壁面の上部と下部の陰影を強調して意匠変化を与えることができるものである。
【0025】
図3は、外装板2として図1の3種類の外装板2a,2b,2cを用い、この各外装板2を長手辺で上下に接続すると共に、短手辺で左右にも接続するようにした例を示すものである。このように外装板2を短手辺で接続するにあたって、凹溝1の本数が異なる外装板2を接続する際に、凹溝1の本数が多い外装板2の凹溝1の端部に、凹溝1の本数が少ない外装板2の総ての凹溝1の端部が一致して、この凹溝1が連続するようになっている。本数が異なる外装板2を短手辺で接続する場合、隣り合う外装板2の凹溝1が連続していないと、外装板2の連続性が途切れることになるが、上記のようにすれば、本数が異なる外装板2において最大限の凹溝1を連続させることができ、外装板2を連続性のある外観で接続することができるものであり、外壁面の全面に自然で統一感のある外観を形成することが容易になるものである。図3の実施の形態では、外装板2は短手辺で直接接続するようにしたが、外装板2の接続端部間に溝が形成されるようにしてもよい。
【0026】
尚、上記のように外装板2を短手方向に等間隔に分割する位置に凹溝1を設ける場合、凹溝1が1本の外装板2bと凹溝1が3本の外装板2cを短手辺で接続するときには、最大限の凹溝1を連続させることができる。凹溝1がその他の本数の外装板2を短手辺で接続するときには必ずしも最大限の凹溝1を連続させることはできないので、その場合には、外装板2を短手方向に等間隔に分割する位置以外の位置に凹溝1を設けることになる。
【0027】
図4は、外装板2として、凹溝1を設けていない(つまり凹溝1が0本)外装板2a、凹溝1を3本設けた外装板2cの2種類のものを用いるようにした実施の形態である。
【0028】
そしてこの2種類の外装板2a,2cを用いて、例えば図5(a)のように、下から、外装板2a、外装板2a、外装板2c、外装板2cの順に上下に接続することによって、外壁面を形成することができ、また図5(b)のように、下から、外装板2a、外装板2c、外装板2a、外装板2cの順に上下に接続することによっても、外壁面を形成することができる。
【0029】
図6は、外装板2として、凹溝1を設けていない外装板2aと、凹溝1を7本設けた外装板2dの2種類のものを用いるようにした実施の形態である。そしてこの2種類の外装板2a,2dを用いて、例えば下から、外装板2aを3枚、外装板2dを3枚上下に接続することによって、外壁面を形成することができる。このものでは、壁面の上部で凹溝1の間隔が密であるため、壁面の上部の陰影を強調した意匠変化を与えることができる。
【0030】
図7は、外装板2として、凹溝1を設けていない外装板2aと、凹溝1を1本設けた外装板2bと、凹溝1を7本設けた外装板2dの3種類のものを用いるようにした実施の形態である。そしてこの3種類の外装板2a,2b,2dを用いて、例えば下から、外装板2a、外装板2b、外装板2a、外装板2b、外装板2d、外装板2dを上下に接続することによって、外壁面を形成することができる。このものでは、壁面の上部で凹溝1の間隔を密に、下部で凹溝1の間隔を疎に配置して意匠変化を与えることができる。
【0031】
図8は、外装板2として、凹溝1を設けていない外装板2aと、凹溝1を7本設けた外装板2dの2種類のものを用いるようにした実施の形態である。そしてこの2種類の外装板2a,2dを用いて、例えば、複数枚の外装板2aを長手辺同士で上下に接続して配置し、また複数枚の外装板2dを長手辺同士で上下に接続して配置し、これらの外装板2aと外装板2dを短手辺で左右に接続することによって、外壁面を形成することができる。このものでは、外壁の左右で凹溝1の疎密に大きな変化を与えることができ、左右でイメージが大きく異なる壁面を形成することができるものである。
【0032】
図9の実施の形態は、凹溝1と直交して交差する交差溝4を外装板2の表面に設けるようにしたものである。交差溝4は隣り合う凹溝1間、あるいは隣り合う凹溝1と凹段溝3を繋ぐように形成されるものである。図の実施の形態では凹溝1を横溝、交差溝4を縦溝として形成されるようにしてあり、交差溝4の溝幅は凹溝1の溝幅より狭く形成してある。
【0033】
そして図9の実施の形態では、外装板2として、凹溝1を1本設けると共に交差溝4を複数本設けた外装板2eと、凹溝1を3本設けると共に交差溝4を複数本設けた外装板2fの2種類のものを用いるようにしてある。この2種類の外装板2e,2fを用いて、例えば図10(a)のように、下から、外装板2e、外装板2e、外装板2f、外装板2fの順に上下に接続することによって、外壁面を形成することができ、また図9(b)のように、下から、外装板2e、外装板2f、外装板2e、外装板2fの順に上下に接続することによっても、外壁面を形成することができる。この図10(a)(b)にみられるように、凹溝1と交差する交差溝4によって、変化のある外観に壁面を形成することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態の一例における、外装板を示すものであり、(a)(b)(c)はそれぞれ正面図である。
【図2】同上の外装板から形成される外壁面の一例を示すものであり、(a)(b)はそれぞれ正面図である。
【図3】同上の外装板から形成される外壁面の他の一例を示す正面図である。
【図4】本発明の実施の形態の他の一例における、外装板を示すものであり、(a)(b)はそれぞれ正面図である。
【図5】同上の外装板から形成される外壁面を示すものであり、(a)(b)はそれぞれ正面図である。
【図6】本発明の実施の形態の他の一例の外壁面を示す正面図である。
【図7】本発明の実施の形態の他の一例の外壁面を示す正面図である。
【図8】本発明の実施の形態の他の一例の外壁面を示す正面図である。
【図9】本発明の実施の形態の他の一例における、外装板を示すものであり、(a)(b)はそれぞれ正面図である。
【図10】同上の外装板から形成される外壁面を示すものであり、(a)(b)はそれぞれ正面図である。
【図11】外壁の施工構造の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1 凹溝
2 外装板
3 凹段溝
4 交差溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じ外形形状・寸法、同じ表面テクスチャーを有し、且つ表面に長手方向の全長に亘って連続する凹溝が0本〜複数本の間の任意の本数で設けられた、凹溝の本数(0本を含む)が異なる複数種類の外装板を備え、2種類以上の外装板を接続して張ることによって形成されたことを特徴とする外壁構造。
【請求項2】
上記複数種類の外装板は、同じ表面色彩を有することを特徴とする請求項1に記載の外壁構造。
【請求項3】
凹溝は、外装板を短手方向に等間隔に分割する位置に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の外壁構造。
【請求項4】
凹溝の本数が異なる外装板を短手辺で接続した際に、凹溝の本数が多い外装板の凹溝に、凹溝の本数が少ない外装板の総ての凹溝が連続するように、凹溝が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の外壁構造。
【請求項5】
外装板の表面には、凹溝と交差する交差溝が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の外壁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−57724(P2009−57724A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224601(P2007−224601)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】