説明

外壁構造

【課題】外壁材を水平方向に突き合わせた場合の外壁間の目地からの雨水の浸入が抑制され、この目地へのシーリング材の充填が不要となる外壁構造を提供する。
【解決手段】壁下地2に設置されている第一の外壁材101及び第二の外壁材102と、壁下地2と第一の外壁材101及び第二の外壁材102との間の位置に設置されている目板材40とを備える。第一の外壁材101と第二の外壁材102とは、相互に水平方向に突き合わされる。目板材40が、第一の外壁材101と第二の外壁材102との突き合わせ部分を屋内側から覆う位置に配置される。目板材40には、突き合わせ部分よりも第一の外壁材101寄りの位置と、突き合わせ部分よりも第二の外壁材102寄りの位置の各々に、少なくとも2条の上下方向の凸条41が形成される。凸条41の各々が、第一の外壁材101又は第二の外壁材102の屋内側表面に接触し或いは近接する位置にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁に複数の外壁材を設置する場合、従来は、外壁材の縦目地に断面ハット型のバックアップ材を設け、更にこの縦目地にシーリグ材を充填することで、縦目地からの雨水の浸入を防止することが行われていた。
【0003】
このようなシーリング材の充填は、非常に手間がかかるものであった。また、シーリング材が経年劣化すると、シーリング材による防水性能が低下してしまって縦目地から屋内へ雨水が浸入しやすくなってしまう。また、経年劣化したシーリング材にひびや割れが生じるなどして、建物の外観が悪化してしまう。このため定期的に縦目地から経年劣化したシーリング材を取り除いて、この縦目地に新しいシーリング材を充填することが必要となる。
【0004】
しかし、縦目地材内に経年劣化したシーリング材が残っていると、新しいシーリング材の密着性に悪影響を及ぼすため、縦目地材内の経年劣化したシーリング材は全て取り除かれなければならず、このためには多大な手間が必要となる。また、外壁全体に亘ってシーリング材を取り除くためには、足場を組む必要があり、このため非常に大がかりな作業が必要となる。
【0005】
シーリング材が劣化しても縦目地の防水性を維持するための技術としては、例えば特許文献1に開示されているものがある。この特許文献1の記載の技術では、ハット型ジョイナーの翼片部の先端が、ハット状中央凸部の高さ方向に矩形に屈曲して延び、屈曲先端部は建築物外壁材に当接されて施工される。この特許文献1では、シーリング材が一部で切れて破損等した場合でも、翼片部と先端部と外壁裏面とで形成される空間に浸入した水が排出されると、されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−70842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載のようにハット型ジョイナーの翼片部の先端を屈曲しただけでは、十分な防水性は確保されず、シーリング材を不要とするまでには至らない。
【0008】
本発明は上記事由に鑑みてなされたものであり、外壁材を水平方向に突き合わせた場合の外壁間の目地からの雨水の浸入が抑制され、この目地へのシーリング材の充填が不要となる外壁構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る外壁構造は、壁下地と、前記壁下地に対して屋外側の位置に設置されている第一の外壁材及び第二の外壁材と、前記壁下地と前記第一の外壁材及び第二の外壁材との間の位置に設置されている目板材とを備え、
前記第一の外壁材と前記第二の外壁材とは、相互に水平方向に突き合わされ、
前記目板材が、前記第一の外壁材と前記第二の外壁材との突き合わせ部分を屋内側から覆う位置に配置され、
前記目板材には、前記突き合わせ部分よりも前記第一の外壁材寄りの位置と、前記突き合わせ部分よりも前記第二の外壁材寄りの位置の各々に、少なくとも2条の上下方向の凸条が形成され、
前記凸条の各々が、前記第一の外壁材又は前記第二の外壁材の屋内側表面に接触し或いは近接する位置にある。
【0010】
本発明において、前記目板材に、前記突き合わせ部分から屋外側へ突出する上下方向に長い目地ガイドが形成され、前記第一の外壁材と第二の外壁材との間に前記目地ガイドが介在することが好ましい。
【0011】
本発明において、前記第一の外壁材及び前記第二の外壁材を含む複数の外壁材から構成される外壁部を備え、前記外壁部が前記壁下地に対して屋外側の位置に設置され、
前記壁下地と前記外壁部との間に、屋外に連通する通気空間が形成されていることが好ましい。
【0012】
本発明において、壁下地に対して外壁材を固定する取付金具を更に備えることが好ましい。
【0013】
本発明において、前記通気空間と屋外とを接続する連通口を備え、前記通気空間内の壁下地の壁面の面積に対する、前記連通口の開口面積の割合が、65cm/m以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外壁材を水平方向に突き合わせた場合の外壁間に形成される目地からの雨水の浸入が抑制され、この目地へのシーリング材の充填が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態における外壁構造を示す、一部破断した斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態における外壁構造を示す、一部破断した斜視図である。
【図3】(a)は本発明の一実施形態における、取付金具を示す正面図、(b)は前記取付金具を示す側面図、(c)は前記取付金具を示す平面図である。
【図4】本発明の一実施形態における目板材を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態における、縦胴縁、目板材、取付金具、及び外壁材の位置関係を示す、概略の断面図である。
【図6】本発明の一実施形態における、上下方向に隣合う外壁材同士の接続部分の構造を示す断面図である。
【図7】本発明の一実施形態の変形例における、縦胴縁、目板材、取付金具、及び外壁材の位置関係を示す、概略の断面図である。
【図8】(a)は前記一実施形態における外壁構造の平面視断面図、(b)は前記一実施形態における外壁構造の側面視断面図である。
【図9】前記一実施形態における外壁構造を示す正面図である。
【図10】前記一実施形態における外壁構造を示す側面視断面図である。
【図11】(a)、(b)及び(c)は、前記一実施形態の変形例を示す正面図である。
【図12】(a)、(b)及び(c)は、前記一実施形態の変形例を示す側面視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態では、建物の外壁構造は、壁下地2と、壁下地2に対して屋外側の位置に設置されている複数の外壁材10と、壁下地2と外壁材10との間の位置に設置されている目板材40とを備える。更に本実施形態では、建物の外壁構造は、取付金具50を備える。図1及び図2に、本実施形態による外壁構造を示す。
【0017】
外壁材10は平板矩形状の板材などで構成される。外壁材10の材質は特に制限されないが、セメントを主成分とする窯業系材料から形成されることが好ましい。
【0018】
外壁材10の上端には受け部31形成され、下端には重ね部32が形成されている (図6参照)。受け部31は外壁材10の上端において、屋内側に偏向した位置から上方に突出している。重ね部32は外壁材10の下端において、屋外側に偏向した位置から下方に突出している。このような受け部31及び重ね部32が形成されていることで、後述するとおり外壁材10の上下あいじゃくり接続が可能となっている。更に外壁材10の下端には、重ね部32よりも屋内側の位置で下方に開口する凹溝33が形成されている。外壁材10の両側の側端面は平坦に形成されている。
【0019】
図3に示すように、取付金具50の略中央部には下向き係止片51が形成されている。下向き係止片51は、取付金具50の略中央部から屋外側に向けて突出する突出片511と、この突出片511の先端から下方に向けて突出する係止爪512とを備えている。取付金具50には二つの上向き係止片52が、下向き係止片51を挟むように、外壁に沿った水平方向に並んで形成されている。二つの上向き係止片52の各々は、屋外側へ突出する突出片521と、この突出片521の先端から上方へ突出する係止爪522とを備える。取付金具50には、上向き係止片52及び下向き係止片51よりも上方に、取付孔53が形成されている。更に、取付金具50の両側部には屋外側へ向けて突出する支持部54が形成されている。
【0020】
この取付金具50は、例えば厚み0.8〜1.2mm程度の金属板に曲げ加工等が施されることで作製される。金属板としては、耐食性の高い亜鉛アルミニウムマグネシウム合金メッキ鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板等が挙げられる。
【0021】
取付金具50の、下向き係止片51及び上向き係止片52を除く屋外側−屋内側方向の寸法(取付金具50の屋外側の面から支持部54の屋内側先端までの厚み寸法)は薄い方が好ましく、例えば2〜5mmの範囲であることが好ましい。
【0022】
図4及び図5に示すように、目板材40は、上下方向に長い板状の部材であり、目板材40の厚み方向は、外壁構造における屋内側−屋外側方向と一致する。
【0023】
目板材40の材質は特に制限されず、金属板材、樹脂、アルミ押出成形品等の適宜の材質から形成されてよいが、特に金属板材から形成されることが好ましい。
【0024】
目板材40には上下方向に長く且つ屋外側へ突出する複数の凸条41が形成されている。目板材40の中央部分には凸条41が形成されていない領域(中央領域42)があり、この中央領域42の、外壁に沿った水平方向の両側の各々に2条の凸条41(411,412)が形成されている。中央領域42の中央部には上下方向に長く且つ屋外側へ突出する目地ガイド43が形成され、それ以外は中央領域42は平坦に形成されている。中央領域42の両側の各々では、2条の凸条411,412が間隔をあけて並行並列に並んでいる。目板材40の、外壁に沿った水平方向の両側の各々における、複数の凸条411,412の更に外側には、凸条41が形成されていない平坦な領域(側部領域44)が形成されている。
【0025】
凸条41及び目地ガイド43は、例えば目板材40が屈曲されることで屋外側に向けて隆起した部分で構成される。尚、凸条41及び目地ガイド43が適宜のパッキン材から形成されてもよい。凸条41の形状は断面三角形状などが挙げられるが、特に制限はない。尚、中央領域42の両側の各々における凸条41の数は、2条以上であれば、特に制限されない。目地ガイド43は、断面矩形状に形成されることなどが挙げられるが、特に制限はない。
【0026】
壁下地2は外壁の下地である。本実施形態では、壁下地2は複数の柱17と、柱17に取り付けられている面材によって構成されている。面材は、隣合う柱17間の隙間を閉塞する部材である。面材としては適宜の板材などの構造用面材20、防水シート14(防水紙)などが挙げられる。本実施形態では、面材として、構造用面材20と防水シート14とが併用され、柱17に対してその屋外側に構造用面材20が設置され、更にこの板材などの構造用面材20に対してその屋外側に防水シート14が設置されている。これにより、防水シート14によって雨水などの水が屋内側に浸入することが抑制される。
【0027】
壁下地2には縦胴縁11が取り付けられている。本実施形態において、縦胴縁11は、壁下地2に対して目板材40及び外壁材10を取り付けるために用いられる、上下方向に長い部材である。縦胴縁11は、壁下地2よりも屋外側で、面材を介して柱に重ねられている。縦胴縁11は、例えば釘、ビスなどの固定具が縦胴縁11を貫通して柱17まで打ち込まれることで、壁下地2に取り付けられている。
【0028】
目板材40は縦胴縁11の屋外側の面に重なるように取り付けられる。本実施形態では、図5に示すように、目板材40は取付金具50、並びにビス、釘などの固定具13によって、縦胴縁11に取り付けられている。取付金具50は、目板材40の屋外側の面で、側部領域44と重なるように配置される。この状態で、固定具13が取付金具50から目板材40を貫通して縦胴縁11まで打ち込まれることで、目板材40が縦胴縁11に固定されると共に、同時に取付金具50が縦胴縁11に取り付けられる。一つの目板材40における中央領域42の両側の各々において、複数個の取付金具50が上下に並んで取り付けられる。目板材40は、壁下地2に取り付けられる複数の縦胴縁11のうち、外壁材10の水平方向の突き合わせ部分と重なる位置にある縦胴縁11に取り付けられる。複数の縦胴縁11のうち、目板材40が取り付けられない縦胴縁11にも、必要に応じて取付金具50が取り付けられる。尚、取付金具50は目板材40を固定するために用いられなくてもよく、この場合、目板材40はビス、釘などの固定具13のみによって固定されてもよい。目板材40の取り付けにあたって、取付金具50が用いられる場合と、用いられない場合とのいずれにおいても、固定具13は目板材40における側部領域44に打ち込まれることが好ましい。この場合、後述するとおり雨水等は側部領域44までは浸入しにくいため、固定具が打ち込まれている部分からの屋内側への雨水の浸入が抑制される。
【0029】
この壁下地2、目板材40、及び取付金具50の屋外側に、複数の外壁材10が設置される。複数の外壁材10の集合によって外壁部1が構成される。複数の外壁材10は、水平方向及び上下方向に並ぶように設置される。水平方向に隣合う外壁材10同士は互いの端面が対向するように配置される。一方、上下方向に隣合う外壁材10同士は、上側の外壁材10の下端の重ね部32と、下側の外壁材10の上端の受け部31とが嵌合することで、あいじゃくり接続されている。
【0030】
外壁材10は、図6に示すように取付金具50によって壁下地2に取り付けられている。すなわち、外壁材10の下端の重ね部32及び凹溝33に取付金具50の上向き係止片52が嵌合し、外壁材10の上端の受け部31に取付金具50の下向き係止片51が嵌合することで、外壁材10が固定されている。この場合、一つの取付金具50の上向き係止片52と下向き係止片51とが、上下に隣合う外壁材10同士の間に介在することで、一つの取付金具50によって上側の外壁材10の下端と下側の外壁材10の上端とが同時に固定される。外壁部1における最も下側に設置されている外壁材10の下端は、上向き係止片52を備えると共に下向き係止片51を備えない取付金具(スタータ金具55(図8(b)参照)によって固定される。外壁材10の設置にあたっては、例えばまずスタータ金具55が設置され、続いて外壁の下側から外壁材10と取付金具50とが順次繰り返して設置されることで、外壁材10が設置される。
【0031】
このような外壁部1における、水平方向に隣合う二つの外壁材10(便宜上、第一の外壁材101及び第二の外壁材102という)の突き合わせ部分は、屋内側から目板材40によって覆われる位置に配置される。第一の外壁材101と第二の外壁材102との突き合わせ部分と重なる位置には、目板材40における凸条41が形成されていない中央領域42が配置される。更に、第一の外壁材101と第二の外壁材102との突き合わせ部分において、両者の間には目地ガイド43が介在する。このため、第一の外壁材101と第二の外壁材102との突き合わせ部分に目地が形成される。また、このように突き合わせ部分と重なる位置に中央領域42が配置されるため、突き合わせ部分よりも第一の外壁材101寄りの位置と、突き合わせ部分よりも第二の外壁材102寄りの位置の各々に、少なくとも2条の上下方向の凸条41が配置される。突き合わせ部分よりも第一の外壁材101寄りに位置する凸条41の稜線は、第一の外壁材101の屋内側表面に接触し或いは近接し、突き合わせ部分よりも第二の外壁材102寄りに位置する凸条41の稜線は、第二の外壁材102の屋内側表面に接触し或いは近接する。
【0032】
外壁に沿った水平方向に隣合う外壁材10間の隙間(目地)には、シーリング材は充填されない。すなわち、本実施形態に係る外壁構造は、ノンシーリング工法により構成される。
【0033】
このように構成される外壁構造では、外壁部1が風雨に曝されると、シーリングがされていない水平方向に隣合う外壁材10間に形成される目地から屋内側へ雨水が浸入することがある。しかし、目地は屋内側で目板材40によって覆われているため、この目板材40によって屋内側への雨水の浸入は抑制される。更に、この雨水の水平方向の移動(横走り)は複数の凸条41によって阻まれ、このため目板材40の外側へ移動することが抑制されると共に、この雨水は下方に流れるように誘導される。このため屋内への雨水の浸入が抑制される。下方に流れる雨水は外壁部1の下端(本実施形態では後述する第一の連通口401)から外部へ排出される。
【0034】
本実施形態では、突き合わせ部分よりも第一の外壁材101寄りの位置と、突き合わせ部分よりも第二の外壁材102寄りの位置の各々に、少なくとも2条の上下方向の凸条41(411,412)が形成されているため、目地から浸入した雨水が水平方向に移動して一つの凸条41(411)を乗り越えたとしても、もう一つの凸条41(412)によって水平方向移動が阻止される。このため、屋内への雨水の浸入が著しく抑制される。
【0035】
このように本実施形態では、目地にシーリングがされていないにもかかわらず、目地から屋内への雨水の浸入が抑制される。また目地にシーリングがされていないため、シーリング材を削減することが可能であり、このため施工コストや施工の手間の削減が可能となる。更に、シーリング材の経年劣化を考慮する必要がなくなり、このため、経年劣化したシーリング材を除去して新たなシーリング材を充填するために要する多大な手間が削減される。
【0036】
凸条41によって雨水の移動が十分に阻止されるためには、凸条41の屋外側への突出寸法は2mm以上であることが好ましい。凸条41の突出寸法の上限は特に制限されないが、外壁材10の施工性や施工後の外壁の外観の向上、特に窓枠などの開口部材の良好な納まりのためには、10mm以下であることが好ましい。また、凸条41と外壁材10との間で雨水が移動することが抑制されるためには、凸条41の稜線と外壁材10の屋内側表面との間の隙間寸法は0〜1.5mmの範囲であることが好ましく、0〜1.0mmの範囲であれば更に好ましい。
【0037】
目地ガイド43の屋外側への突出寸法は凸条41の突出寸法よりも大きく、且つ外壁材10の厚み寸法よりも小さい。また、目地ガイド43の、外壁に沿った水平方向の幅寸法は、外壁の意匠性を向上する観点からは12mm以下であることが好ましい。なお、目地ガイド43の最小値は特に制限されず、外壁材10を施工する際の横方向の位置決め、施工後の外壁材10の伸縮に伴うズレの抑制などが可能な程度の幅寸法に設定されればよい。例えば、目地ガイド43の幅寸法は、目地ガイド43を構成する材料厚み(折り返して成形される材料、例えば鋼板などであれば材料厚みの略2倍)以上に形成される。また、目地ガイド43と第一の外壁材101との間、並びに目地ガイド43と第二の外壁材102との間に形成される隙間の幅は、屋内への雨水の浸入が十分に抑制されるためには、10mm以下であることが好ましく、2mm以下であれば更に好ましい。
【0038】
目地から浸入した雨水が下方へ流れ落ちるためのスペースを十分に確保するためには、目地ガイド43とこの目地ガイド43の直ぐ隣に配置されている凸条411との間隔は6mm以上であることが好ましい。また、目地における外壁材10の端面とこの端面の直ぐ外側に配置されている凸条411との間隔(オーバーハング)は、2mm以上であることが好ましい。また、中央領域42の両側の各々において、隣合う凸条411,412間の間隔は3〜10mmの範囲であることが好ましい。
【0039】
なお、上記の好ましい範囲は、縦胴縁11と取付金具50を併用する場合、縦胴縁11を用いることなく取付金具50のみで施工する場合を想定して設定したものであり、施工状態に応じて適宜選択することができるものである。
【0040】
本実施形態では、目板材40に目地ガイド43が形成されているため、この目地ガイド43に合わて外壁材10が設置されることで外壁材10の設置位置の位置合わせが容易となり、また目地幅を一定の幅に設定することが容易になる。更に設置後の外壁材10の位置ずれが抑制される。また、水平方向に隣合う外壁材10の間に一定の幅の隙間(目地)が形成されるにもかかわらず、この隙間に目地ガイド43が介在することで目地からの水の浸入が抑制される。
【0041】
尚、目板材40は目地ガイド43を備えなくてもよい。図7に、目地ガイド43を備えない目板材40、及びこの目板材40を備える外壁構造の概略構成を示す。この外壁構造は、目板材40が目地ガイド43を備えない以外は、上記実施形態と同じ構成を有する。このような目板材40が用いられる場合でも、目地ガイド43による機能が発揮されない以外は、目地からの屋内への雨水の浸入が十分に抑制される。目地ガイド43が形成されない場合の、目板材の好ましい寸法は、目地ガイド43が形成される場合と同じである。更に、目地ガイド43が形成されない場合は、屋内への雨水の浸入が十分に抑制されるためには、第一の外壁材101と第二の外壁材102との間の隙間で形成される目地の幅は12mm以下であることが好ましい。
【0042】
本実施形態では、前記壁下地2と前記外壁部1との間に、屋外に連通する通気空間3が形成されており、このため、目地からの雨水の浸入が更に抑制される。以下、この点につき詳述する。
【0043】
図8〜図10に、本実施形態による外壁構造における通気空間3を示す。尚、図8(a)に示すように、柱17よりも屋内側には、適宜の内壁材で構成される内壁部19が設置されている。面材2と内壁部19とに挟まれた空間には断熱材18が配設されている。内壁部19の屋外側には、図示の形態のように防湿シート14aが設けられてもよい。防湿シート14aが設けられることで、屋内への湿気の侵入が抑制される。
【0044】
本実施形態において、通気空間3は、外壁部1と壁下地2との間に形成されている空間である。通気空間3の厚み(屋内−屋外方向寸法)は、縦胴縁11の厚みと取付金具50の突出幅により確保されている。すなわち、縦胴縁11及び取付金具50がスペーサとなって通気空間3が形成されている。
【0045】
通気空間3の厚み(屋内−屋外方向寸法)は、例えば、20〜23mmに設定される。通気空間3の厚みがこの範囲になることにより通気が確実に確保される。具体的には、縦胴縁11の厚さが18mm、取付金具50の突出幅(働き幅)が5mmであれば、厚み23mmの通気空間3が形成される。
【0046】
外壁構造の下部には土台部(土台)8が設けられている。土台部8の上側には、柱17などを取り付けるための基礎となる長尺の基台柱(根太)16が横方向に亘って設けられている。図示の形態では、基台柱16の上側に、基台柱16と垂直に縦方向に柱17が配設され、面材は基台柱16と柱17とを覆うようにしてこれらの屋外側表面に配設されている。土台部8の上側における面材の屋外側表面には、外壁に沿った水平方向に長い土台水切り9が設けられている。土台水切り9は、壁下地2の屋外側表面に重ねて配置される固定片9aと、固定片9aの下端から屋外側に向かってわずかに下り傾斜しながら突出する水切り片9bと、水切り片9bの屋外側端部から下方に突出する水切り先端片9cとを備える。固定片9aが壁下地2にビスなどの固定具で固定されるなどして、土台水切り9が設置される。水切り片9bは外壁部1の下端よりも下方に配置されることで、通気空間3と上下に対向する。外壁部1の下端と水切り片9bの屋外側端部との間には、外壁に沿った水平方向に長い開口が形成されており、この開口が、通気空間3と屋外とを接続する連通口4(第一の連通口401)となる。
【0047】
このような土台水切り9が設けられているため、通気空間3を流れ落ちる雨水、例えば目板材40の凸条41によって遮蔽されて下方へ誘導される雨水が、第一の連通口401から排出される際には、雨水が土台水切り9の水切り片9b上に落下する。更に雨水は土台水切り9の表面をつたって外部に排出され、このとき水は所定の位置に落下する。また、土台水切り9によって通気空間3の下方が閉塞されるので、下から巻き上がる風雨が通気空間3に吹き込まれにくくなり、このため通気空間3内への風力の浸入が抑制される。
【0048】
更に、外壁構造の上部においては、外壁部1の上端と軒天部(軒天井)7との間に隙間が形成されており、この隙間が通気空間3と屋外とを接続する連通口4(第二の連通口402)となる。また、第二の連通口402よりも屋外側には通気見切り縁15が設けられている。通気見切り縁15は外壁部1から屋外側に所定の距離をおいて配置されることで、第二の連通口402を遮蔽する。通気見切り縁15の下面は開放されており、このため、第二の連通口402を介して通気空間3と外部とが連通する。このような通気見切り縁15により、第二の連通口402が外観上目立たなくなり、また、この通気見切り縁15によって第二の連通口402から通気空間3内への風雨の浸入が抑制される。
【0049】
このようにして通気空間3が連通口4を介して外部と連通しているため、図10の矢印で示すように外気が通気空間3に侵入して通り抜けやすくなる。すなわち、例えば外気が第一の連通口401から通気空間3内に侵入し、侵入した外気が通気空間3内を上昇し、更に第二の連通口402を通って外部に排出される。このとき、通気見切り縁15が軒天部7の下側に設けられていれば、外気の流れ方向を軒天部7から遠ざけることができ、外気をスムーズに流すことができる。また、外気が湿気を含んでいる場合であっても、外気が直接軒天部7にあたりにくくなる。
【0050】
このように建物の外部(屋外)と通気空間3とを連通する連通口4が形成されていると、通気空間3と外部との圧力差が小さくなり、このため外壁部1における目地などから屋内への風雨の浸入が抑制される。これにより、更に防水性の高い外壁構造が実現される。連通口4は、例えば壁下地2が部分的に外壁材10で覆われていない箇所などで形成される。
【0051】
連通口4が形成されていない場合には、例えば外壁部1に風が吹き当てられることで外壁部1の屋外側の圧力が高くなると、隣合う外壁材10間の目地などから屋内側へ外気が流入することで雨水等が流れ込みやすくなる。しかし、本実施形態では連通口4が形成されることで通気空間3と屋外との間の圧力差が小さくなるため、屋外から屋内へ外気や雨水等が流れ込みにくくなる。連通口4から外気や雨水等が流入するとしても、その量は僅かであり、しかも例えば本実施形態では第一の連通口401から速やかに外部に排出される。また多少の水分が壁下地2に付着した程度であれば、屋内への水分の浸入は防水シート14によって十分に抑制される。
【0052】
このように本実施形態では、外壁部1に風が吹き当てられるなどしても、目地からの雨水の浸入が十分に抑制される。
【0053】
屋内への雨水等の流入が十分に抑制されるためには、通気空間3と屋外との圧力差は、外壁部1へ吹き当てられる風の風速が20m/sec以下の条件下で50Pa以下となることが好ましい。この場合の外壁部1へ吹き当てられる風は、正面風(壁面に垂直な風)と斜面風(上斜め45°から壁面に向って吹き降ろす風)の少なくとも一方であればよいが、両方の場合に共に前記圧力差が50Pa以下となることが好ましい。このような外壁構造の性能評価をおこなうための建物に対する散水加圧試験は、JIS A1414「建築構成材(パネル)およびその構造部分の性能試験、6.5 水密試験」に準じて行われ得る。
【0054】
屋内への雨水等の流入が十分に抑制されるためには、通気空間3内の壁下地2の壁面の面積に対する、連通口4の開口面積が、65cm/m以上であることが好ましい。すなわち、壁面1m当たりの連通口4の開口面積が65cm以上であることが好ましい。ここでいう壁面とは、建物の壁を構成する面のことであり、壁下地2の屋外側の面で構成される、壁面は、概ね土台部8よりも上側でかつ軒天部7よりも下側の面状の部分である。壁面には、窓や換気口などの開口部30の領域は含まれない。通気空間3に連通する連通口4が複数ある場合には、この複数の連通口4の開口面積の合計量が65cm/m以上であることが好ましい。すなわち、本実施形態では、通気空間3に連通する第一の連通口401と第二の連通口402の開口面積の合計量が65cm/m以上であることが好ましい。尚、連通口4は壁面の一部分に集中して設けたり、あるいは、壁面に分散させて設けたりしてもよい。したがって、壁面の面積をSmとした場合に連通口4の面積の合計が65×Scm以上となっていればよい。連通口4の開口面積の割合がこれより小さいと圧力差を小さくすることができなくなるおそれがある。この連通口4の開口面積の割合の上限には特に制限がない。水仕舞いが十分になされることで連通口4からの雨水等の流入が十分に抑制されていれば、連通口4の開口面積の割合は大きいほどよい。なお、連通口4の開口面積の割合が110cm/mまでの範囲では、連通口4の開口面積の割合が増大するに従って差圧が小さくなることが実験により確認されている。
【0055】
本実施形態のように通気空間3の下端と連通する第一の連通口401が形成されていると、通気空間3に雨水等が浸入しても、この雨水等が第一の連通口401から排出されやすくなる。また、このような第一の連通口401が形成されると、風雨が壁下地2に直接あたる割合が低減する。そのため、連通口4が複数形成される場合には、通気空間3の下端と連通する第一の連通口401の開口面積が、他の連通口4の開口面積よりも大きいことが好ましい。
【0056】
特にこの第一の連通口401の開口面積は、間口(壁面の横方向の長さ)1mあたり150cm以上であることが好ましい。この場合、屋外と通気空間3の間における空気の移動が確実におこなわれるようになる。そのためには、第一の連通口401の上下方向の長さ(隙間幅)が10〜30mm程度、例えば、18mmであることが好ましい。また、第一の連通口401の上下方向の長さが縦胴縁11の厚みよりも大きいことも好ましい。
【0057】
第一の連通口401の開口面積は、通気空間3の水平方向での最小断面積の50%よりも大きいことが好ましい。通気空間3の水平方向での最小断面積を基準にするのは、この値が通気空間3内での空気の流れやすさを大きく律するからである。このように第一の連通口401の開口面積は、通気空間3の水平方向での最小断面積の50%より大きければ、第一の連通口401によって通気空間3内の空気の流通が妨げられにくくなり、このため、屋外と通気空間3内との圧力差が更に小さくなる。通気空間3の水平方向での最小断面積とは、外壁材10と壁下地2との間の、縦胴縁11と取付金具50とを除いた領域の面積のことである。ただし、取付金具50は断面積が他に比べて十分小さいので計算上無視してもよい。したがって、通気空間3の水平方向での最小断面積は、通気空間3の幅(外壁材10と壁下地2との間の距離)と、壁面の横方向の長さとを掛け合わせ、壁面に配された縦胴縁11の断面積を減じて得られる値とみなしてよい。
【0058】
第二の連通口402の開口面積の合計は、壁面1mに対して6.0cm以下であることが好ましい。第二の連通口402の開口面積がこれよりも大きくなると、通気見切り縁15が大きくなりすぎるおそれがある。
【0059】
図8(a)に示すように、建物の外壁においては、一の壁面(例えば図面において下側の壁面)と、他の壁面(例えば図面において右側又は左側の壁面)とによってコーナー部5が形成されるが、外壁構造にあっては、コーナー部5において一の壁面に設けられた通気空間3と他の壁面に設けられた通気空間3とを分断する通気分断部6が設けられていることが好ましい。本形態においては、長尺に形成された気密パッキン6aを縦方向に亘って配置することによって通気分断部6が形成されている。このように通気分断部6によって、壁面毎に通気空間3を区画することにより、一の壁面における通気空間3から他の壁面における通気空間3へ空気が流れるのを防ぐことができ、通気空間3と外部との圧力差を小さくすることができるものである。
【0060】
通気空間3と外部との圧力差を小さくするためには、壁下地2には隙間が形成されないことが理想的である。但し、実際の外壁の施工においては、面材と開口部30との接合部分など、具体的にはサッシ(窓枠)や換気扇といった設備の取り付け部などにおいて、わずかな隙間が形成されてしまうことがある。そこで、通気空間3と外部との圧力差を小さくするためには、壁下地2の隙間をできるだけ少なくし、その壁面に対する合計面積が9cm/m以下になるようにすることが好ましい。隙間の壁面に対する合計面積が9cm/mよりも大きいと通気空間3から屋内側へ空気が移動して通気空間3と外部との圧力差を小さくすることができなくなるおそれがある。隙間の合計面積は、開口部30などを設けずに合板などの面材で隙間なく壁一面を覆うことができれば、理論的には0cm/mとなるが、現場の施工においては3cm/m以下であることが現実的である。
【0061】
開口部30など、屋内外を貫通する開口が設けられる場合は、壁下地2における開口部30の周囲に気密テープを貼着することが好ましい。それにより、気密性を確保することが可能になる。面材を構成する板材などの構造用面材20同士の突合せ部分にも隙間ができることがあるが、この突合せ部分には、板材などの構造用面材20間を架け渡して防水シート14を貼着するようにすれば、気密性を高めることができる。
【0062】
壁下地2にはエアコン等により、外壁の施工後に、開口が設けられることがある。そこで、外壁施工時における壁面に対する隙間の開口面積の合計は5cm/m以下であることが好ましい。隙間の開口面積をこの範囲にすることにより、気密性を確保することがより可能となる。
【0063】
図11に、壁面の高さの高い外壁構造の形態を示す。このような形態は、二階建て又は三階建て以上の建物に用いられるものである。壁面の高さが高くなると、壁面の面積も必然的に大きくなるため、それに従い連通口4の開口面積も大きくする必要がある。
【0064】
図11(a)では、土台部8の上側に面積の大きい連通口4を形成し、軒天部7の下側に面積の小さい連通口4を形成している。このような設計では、開口面積を上記に示す範囲にしようとした場合、土台部8での連通口4による開口が大きくなりすぎるおそれがあり、例えば、一階建てであれば開口幅18mmにて設計される連通口4が二階建てでは開口幅36mmになり、風雨が入り込んだり外観が悪くなったりするおそれがある。
【0065】
そこで、図11(b)では、土台部8の上側と、階高の途中(上階部と下階部の境界部分など)とに、面積の大きい連通口4を形成し、軒天部7の下側に面積の小さい連通口4を形成している。このとき、それぞれの連通口4、4間の距離は3m以内であることが好ましい。この形態では、連通口4による開口が所定の箇所に分散されるため、それぞれの開口面積を小さくすることができる。
【0066】
また、図11(c)では、土台部8の上側に面積の大きい連通口4を形成するとともに、軒天部7の下側に面積の小さい連通口4を形成し、さらに上下に隣り合う外壁材10、10間(いわゆる横目地部)に横方向に延伸する隙間として連通口4を形成するようにしている。この場合、連通口4の開口がさらに分散されて、開口をより目立たなくすることができる。
【0067】
図12に、階高の途中に連通口4が形成された構造の一例を示す。図12(a)及び(b)は、図11(b)の形態に対応するものであり、階高水切り22によって外壁部1が分断されており、この階高水切り22の上下両側に連通口4が設けられている。階高水切り22を用いることにより階高の途中で水切りを行うことができ、垂下する階高水切り先端片22aが、階高水切り22の下側に設けられた連通口4の開口前面を覆っているので、階高水切り22の下側の連通口4に直接風雨が吹き込み難くすることができる。
【0068】
図12(a)では、階高水切り22は縦胴縁11の屋外側の表面に取り付けられている。また、図12(b)では、階高水切り22は壁下地2の表面に取り付けられており、外壁部1及び縦胴縁11が上下方向で分断されている。この形態では、各階毎に縦胴縁11と外壁部1とを形成することが可能となる。図12(a)及び(b)においては、下階部と上階部との境界に屋根部21が形成される場合、連通口4をこの屋根に隣接して形成すると開口がより目立たなくなるので好ましい。
【0069】
図12(c)は、図11(c)の形態に対応するものであり、外壁材10、10間の隙間により連通口4が形成されている。外壁材10、10間の隙間を連通口4にする場合、開口を分散してより目立たなくすることができる。外壁材10、10間の隙間の幅Lは、適宜に設計することができ、例えば1〜5mm程度、具体的には3mmなどにすることができる。連通口4の開口面積の合計量が上記の範囲を満たすためには、外壁材10、10間の隙間の幅Lは1.5mm以上であることが好ましい。
【0070】
縦胴縁11は通気空間3内に配置されるため空気の移動を妨げるおそれがある。したがって、空気の流れをスムーズにするために、連通口4は縦胴縁11の長手方向と垂直な方向に形成されること、すなわち縦胴縁11と連通口4とが略直交して形成されることが好ましい。例えば上述したように、壁面の下端部(土台部8の上側)と壁面の上端部(軒天部7の下側)に連通口4を設けることができ、さらに上下の外壁材10の隙間にも連通口4を設けることができる。これにより、縦胴縁11と垂直な方向である横方向に直線状の連通口4を形成することができる。
【0071】
なお、上記の実施の形態では、外壁部1の下端部で開口する第一の連通口401と、外壁部1の上端部で開口する第二の連通口402の両方が形成された形態を主に示したが、第一の連通口401と第二の連通口402のいずれか一方が形成されていてもよい。あるいは、第一の連通口401と第二の連通口402をいずれも形成せずに、外壁材10間の隙間などに連通口4を形成し、これにより連通口4の必要な開口面積を確保してもよい。
【実施例】
【0072】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0073】
[試験例1〜5]
図1,2に示すような構造に見立てた外壁構造モデルを作製し、この外壁構造モデルに試験用の目板材を取り付けた。試験用の目板材としては、目地ガイドを備えず、凸条を中央領域の両側の各々に10条備えるものを用意した。凸条間の間隔は10mm、凸条の屋外側への突出寸法は3mm、凸条の稜線と外壁材の屋内側面との距離は1.5mmであった。
【0074】
更に、試験例1で目地幅24mm、目地における外壁材の端面とこの端面の直ぐ外側に配置されている凸条との間隔(オーバーハング)2mmとし、試験例2では目地幅12mm、オーバーハング2mmとし、試験例3では目地幅12mm、オーバーハング4mmとし、試験例4では目地幅12mm、オーバーハング14mmとし、試験例5では目地幅12mm、オーバーハング16mmとした。
【0075】
各外壁構造モデルに対して、圧力50Pa、散水量4L/m・min(240mm/hr)の条件で10分間散水した。続いて、目板材上で水が横走りによりいくつの凸条を越えたかを確認した。
【0076】
その結果、オーバーハングが同一で目地幅が異なる試験例1,2ではいずれも二つ目の凸条までで水の横走りはほぼ阻止されたが、目地幅24mmとした試験例1よりも、目地幅12mmとした試験例2の方が、水の横走りが抑制されることが確認された。このため、目板材が目地ガイドを有しない場合には、目地幅は12mm以下であることが好ましい。
【0077】
また、目地幅が同一でオーバーハングが異なる試験例2〜5では、オーバーハングの違いによる明確な優劣は特に認められなかったが、実験結果からオーバーハングは2mm以上であることが好ましいと判断される。
【0078】
また、いずれの試験例においても、水が横走りによって一つ目の凸条をかなりの頻度で乗り越えるため、目板材の中央領域の両側の各々での凸条の個数は少なくとも2個以上であるべきである。
【0079】
[試験例6,7]
図1,2に示すような構造に見立てた外壁構造モデルを作製し、この外壁構造モデルに試験用の目板材を取り付けた。試験用の目板材としては、目地ガイドを備え、凸条を中央領域の両側の各々に2条備えるものを用意した。目地ガイドの幅は10mm、目地ガイドの屋外側への突出寸法は11mm、凸条間の間隔は、凸条の屋外側への突出寸法は3mm、凸条の稜線と外壁材の屋内側面との距離は1.5mmであった。目地における外壁材の端面と目地ガイドとの間の隙間は2mmとした。
【0080】
更に、目地ガイドとその直ぐ外側の凸条との間隔を、試験例6では6mmとし、試験例7では10mmとした。
【0081】
各外壁構造モデルに対して、圧力50Pa、散水量4L/m・min(240mm/hr)の条件で10分間散水した。続いて、目板材上で水が横走りによりいくつの凸条を越えたかを確認した。
【0082】
その結果、試験例6,7のいずれでも、二つ目の凸条までで水の横走りはほぼ阻止された。
【0083】
[試験例8〜16]
通気空間内の壁下地の壁面の面積に対する、前記連通口の開口面積が、65cm/m以上である場合に、通気空間3と外部空間との圧力差が特に低くなることについて検証したので、その結果を示す。
【0084】
図8〜図10に示すような外壁構造の試験体(家屋)を用い、通気空間3に発生する差圧(外部空間との圧力差)を測定した。試験体には、厚み18mmの縦胴縁11、突出幅5mmの取付金具50を使用し、通気空間3の厚みを23mmとした。矩形状の外壁材10を横張りして外壁部1を形成した。また、壁面を通気分断部6(気密パッキン6a)によって面毎に区画分けした。壁面内では区画分けしなかった。また、壁下地2には合板による構造面材を用い、軒天部7の下側には通気見切り縁15を配設した。壁下地2の開口面積は、実際の隙間が9cm/mであり、抵抗を計算した有効開口面積が5cm/mであった。壁面の寸法は、縦2.4m×横5.4m(面積:13.0m)とした。開口部30は設けなかった。連通口4の位置は、土台部8の上側と、軒天部7の下側(見切部)と、外壁材10、10間の隙間(基材部)とし、連通口4の形状は、横方向に延伸する直線状とした。その他の仕様は、表1の通りである。
【0085】
試験体の壁面に対して、風速5m/sec(想定風速20m/secの評価を、設備の制約上、風速5m/secにて計測し、下記換算式により換算することにより行う)にて、正面風(壁面に対し垂直方向の風、水平方向に対する角度0°)、又は、斜面風(壁面に対し斜め方向から吹く風、水平方向に対する角度45°)を当てて、通気空間3と外部との圧力差を壁面の多数箇所において測定し、その最大値に着目した。なお、想定風速20m/secにおける圧力差で評価するために、換算式P=V×1/2×ρ (P:風圧力、V:風速、ρ:空気密度)を用いて圧力差を求めた。圧力の測定は、バラトロン(日本エム・ケー・エス(株)、220DD−00001A2B)を用い、測定箇所1点につき30秒間300点を平均することにより行った。なお、想定風速20m/secにおいて、発生差圧が50Pa以下になるためには差圧係数ΔCpが約0.21以下になる必要がある。結果を表1に示す。
【0086】
表1に示すように、連通口4の開口面積が大きい方が、発生差圧ΔPが小さくなることが確認された。
【0087】
【表1】

【符号の説明】
【0088】
1 外壁部
101 第一の外壁材
102 第二の外壁材
2 壁下地
3 通気空間
4 連通口
40 目板材
41 凸条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁下地と、前記壁下地に対して屋外側の位置に設置されている第一の外壁材及び第二の外壁材と、前記壁下地と前記第一の外壁材及び第二の外壁材との間の位置に設置されている目板材とを備え、
前記第一の外壁材と前記第二の外壁材とは、相互に水平方向に突き合わされ、
前記目板材が、前記第一の外壁材と前記第二の外壁材との突き合わせ部分を屋内側から覆う位置に配置され、
前記目板材には、前記突き合わせ部分よりも前記第一の外壁材寄りの位置と、前記突き合わせ部分よりも前記第二の外壁材寄りの位置の各々に、少なくとも2条の上下方向の凸条が形成され、
前記凸条の各々が、前記第一の外壁材又は前記第二の外壁材の屋内側表面に接触し或いは近接する位置にある外壁構造。
【請求項2】
前記目板材に、前記突き合わせ部分から屋外側へ突出する上下方向に長い目地ガイドが形成され、前記第一の外壁材と第二の外壁材との間に前記目地ガイドが介在する請求項1に記載の外壁構造。
【請求項3】
前記第一の外壁材及び前記第二の外壁材を含む複数の外壁材から構成される外壁部を備え、前記外壁部が前記壁下地に対して屋外側の位置に設置され、
前記壁下地と前記外壁部との間に、屋外に連通する通気空間が形成されている請求項1又は2に記載の外壁構造。
【請求項4】
壁下地に対して外壁材を固定する取付金具を更に備える請求項1乃至3のいずれか一項に記載の外壁構造。
【請求項5】
前記通気空間と屋外とを接続する連通口を備え、前記通気空間内の壁下地の壁面の面積に対する、前記連通口の開口面積の割合が、65cm/m以上である請求項3又は4に記載の外壁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−229586(P2012−229586A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99872(P2011−99872)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(503367376)ケイミュー株式会社 (467)
【Fターム(参考)】