説明

外壁横目地の防水構造

【課題】漏水時の補修工事を軽微なものとすることができ、しかもメンテナンス性を向上させることができる外壁横目地の防水構造を得る。
【解決手段】上階側外壁パネル22の下端部22Aの屋内側には、樹脂製の内水切り材54と金属製の通しアングル46が配設されている。内水切り材54は帯板状に形成されており、板厚方向に湾曲変形可能とされている。メンテナンス時等に内水切り材54を交換する際には、横目地36から古い内水切り材54を引き抜いて取外してから、新しい内水切り材54を一端部54A側から挿入し、通しアングル46にガイドさせながら止水材52の下面まで立ち上げていく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁横目地の防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、二次防水材に不具合が発生すると、補修工事が大掛かりとなる。具体的には、二次防水材が上下階の外壁間に挟まれる構造を採っているため、外壁補修を含んだ修繕工事となる。このため、前記のように補修工事が大掛かりになり、ユーザーの経済的負担が増加する。
【0003】
また、従来、二次防水材のメンテナンスについては、殆ど考慮されていなかった。しかし、住宅のライフサイクルが長期化する傾向にあることを考慮すると、二次防水材についてのメンテナンスは非常に重要な課題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4260644号公報
【特許文献2】実開平02−60102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、漏水時の補修工事を軽微なものとすることができ、しかもメンテナンス性を向上させることができる外壁横目地の防水構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明に係る外壁横目地の防水構造は、下階側外壁パネルと上階側外壁パネルとの間に形成される外壁横目地を二次シールするための外壁横目地の防水構造であって、下階側外壁パネルの上端部に形成され、横目地長手方向に沿って延在する凹溝と、アングル状に形成されると共に、上階側外壁パネルの下端部の屋内側に沿って配置された長尺状の支持部材と、一端部が前記支持部材と前記上階側外壁パネルの下端部の屋内側の面との間に装着されると共に他端部が前記凹溝に係止される水切り材と、を有し、前記水切り材の少なくとも前記他端部を含む部分が前記横目地の屋外側から着脱可能とされている。
【0007】
請求項2記載の本発明に係る外壁横目地の防水構造は、請求項1記載の発明において、前記水切り材は、前記横目地の屋外側から挿入可能な板状部材で構成されていると共に、前記支持部材に案内されて形状を板厚方向に変化させることで前記支持部材と前記上階側外壁パネルの下端部の屋内側の面との間に挿入可能とされている、ことを特徴としている。
【0008】
請求項3記載の本発明に係る外壁横目地の防水構造は、請求項1又は請求項2記載の発明において、前記水切り材は、板厚方向へ湾曲変形可能とされている、ことを特徴としている。
【0009】
請求項4記載の本発明に係る外壁横目地の防水構造は、請求項3記載の発明において、前記支持部材は、前記上階側外壁パネルの下端部の下端面との間に隙間をあけて対向して配置された基部と、この基部の屋内側の端部から立ち上げられて前記上階側外壁パネルの下端部の屋内側の面に沿って配置される立ち上がり部と、前記基部と前記立ち上がり部とを繋ぎかつ前記上階側外壁パネルの下端部と対向する面が凹曲面で構成された繋ぎ部と、を含んで構成されており、さらに、前記水切り材は、その一端部が前記繋ぎ部の凹曲面に案内されて湾曲変形することにより、前記支持部材の立ち上がり部と前記上階側外壁パネルの下端部の屋内側の面との間に立ち上げられながら装着されている、ことを特徴としている。
【0010】
請求項5記載の本発明に係る外壁横目地の防水構造は、請求項1記載の発明において、前記水切り材は、前記一端部を含む第1水切り材と、前記他端部を含む第2水切り材とに分割されており、前記第1水切り材は、前記支持部材と前記上階側外壁パネルの下端部の屋内側の面との間に予め装着されていると共に、前記第2水切り材の挿入方向側の端部は前記第1水切り材に対して離脱可能に接続されている、ことを特徴としている。
【0011】
請求項6記載の本発明に係る外壁横目地の防水構造は、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の発明において、前記水切り材の前記他端部は、自然状態では水切り材の中間部に対して略面直角下方へ屈曲されており、弾性変形することにより当該中間部側へ折り曲げ可能とされている、ことを特徴としている。
【0012】
請求項7記載の本発明に係る外壁横目地の防水構造は、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の発明において、前記凹溝は、前記水切り材の前記他端部が弾性復帰する際に当該他端部と非接触となるように切欠形状とされている、ことを特徴としている。
【0013】
請求項8記載の本発明に係る外壁横目地の防水構造は、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の発明において、前記水切り材の屋外側の端部には、水通し孔が形成された水通し材が一体化されている、ことを特徴としている。
【0014】
請求項9記載の本発明に係る外壁横目地の防水構造は、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の発明において、前記横目地の屋外側は、湿式の防水シール材でシールされている、ことを特徴としている。
【0015】
請求項1記載の本発明によれば、上階側外壁パネルの下端部の屋内側には、アングル状に形成された長尺状の支持部材が配置されている。そして、この支持部材と上階側外壁パネルの下端部の屋内側の面との間に水切り材の一端部が装着されている。水切り材の他端部は、下階側外壁パネルの上端部に形成された凹溝に係止される。これにより、下階側外壁パネルと上階側外壁パネルとの間に形成された外壁横目地の二次シールがなされる。
【0016】
ここで、本発明では、水切り材の少なくとも他端部を含む部分が横目地の屋外側から着脱可能とされているので、水切り材が経年劣化したり或いは地震力等の外力が作用することによって亀裂等が入った場合等に、当該水切り材の他端部を含む部分を横目地の屋外側から引抜いて新品の水切り材と交換することができる。また、メンテナンス時にも同様の手法によって、水抜き材の他端部を含む部分を引抜いて新品の水切り材と交換することができる。従って、従来のように上階側外壁パネルを外す等の大掛かりな作業は不要になると共に、メンテナンスも容易になる。
【0017】
請求項2記載の本発明によれば、水切り材は板状部材で構成されており、横目地の屋外側から挿入すると、支持部材に案内されて形状を板厚方向へ変化させ、これにより支持部材と上階側外壁パネルの下端部の屋内側の面との間に挿入される。
【0018】
請求項3記載の本発明によれば、水切り材自身が板厚方向へ湾曲変形可能とされているので、水切り材の変形を利用して横目地の二次シール位置に水切り材を装着することが可能になる。
【0019】
請求項4記載の本発明によれば、支持部材が基部と立ち上がり部と繋ぎ部とを含んで構成されており、メンテナンス時等において水切り材を交換する際には、新しい水切り材はその一端部側から横目地内へ挿入される。そして、水切り材の一端部が支持部材の基部の上面に沿って挿入されると、当該水切り材の一端部は繋ぎ部に到達する。繋ぎ部における上階側外壁パネルの下端部と対向する面は凹曲面で構成されているため、水切り材の一端部は当該凹曲面上を摺動しながら支持部材の立ち上がり部と上階側外壁パネルの屋内側の面との間に立ち上げられていく。これにより、水切り材の一端部側が、支持部材の立ち上がり部と上階側外壁パネルの屋内側の面との間に装着される。
【0020】
請求項5記載の本発明によれば、水切り材が一端部を含む第1水切り材と他端部を含む第2水切り材とに分割されている。第1水切り材は、支持部材と上階側外壁パネルの下端部の屋内側の面との間に予め装着される。そして、メンテナンス時等には、第2水切り材のみを第1水切り材から離脱させた後に、新しい第2水切り材を第1水切り材に装着させればよい。このように本発明によれば、必要最低限の部位のみを交換すればよい。
【0021】
請求項6記載の本発明によれば、水切り材を横目地へ装着させる際には、他端部を弾性変形させながら中間部側へ折り曲げる。これにより、水切り材の他端部が下階側外壁パネルの上端部に引っ掛かって、水切り材を横目地内へ挿入することができないといった事態は生じなくなる。そして、水切り材の他端部が下階側外壁パネルの上端部に形成された凹溝に対応すると、当該他端部が弾性復帰する。これにより、当該他端部は中間部に対して略面直角方向へ屈曲した状態となり、凹溝に係合された状態となる。なお、このように他端部が凹溝に係合した後、メンテナンス時等に水切り材を取り替える際には、水切り材を引きちぎればよい。
【0022】
請求項7記載の本発明によれば、凹溝が切欠形状とされているので、仕切り材の他端部が弾性復帰する際に当該他端部と凹溝を形成する壁とが接触しない。よって、水切り材の他端部が凹溝の周縁部に引っ掛かって凹溝になかなか係止されないといった不具合が生じ難い。
【0023】
請求項8記載の本発明によれば、水切り材の屋外側の端部には水通し孔が形成された水通し材が一体化されているので、水切り材の装着と同時に水通し材も装着される。つまり、水通し材専用の組付作業が不要になる。
【0024】
請求項9記載の本発明によれば、横目地の屋外側が湿式の防水シール材でシールされているので、この防水シール材が一次シールとなる。つまり、防水シール材と水切り材とで横目地を二重シールすることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る外壁横目地の防水構造は、漏水時の補修工事を軽微なものとすることができ、しかもメンテナンス性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0026】
請求項2記載の本発明に係る外壁横目地の防水構造は、水切り材を横目地の屋外側から組付けるのに特別の追加部品が不要であり、コストの上昇を招かないという優れた効果を有する。
【0027】
請求項3記載の本発明に係る外壁横目地の防水構造は、部品点数の増加を招くことなく、水切り材の横目地への装着を可能とすることができるという優れた効果を有する。
【0028】
請求項4記載の本発明に係る外壁横目地の防水構造は、支持部材の繋ぎ部の形状を凹曲面で構成することにより、メンテナンス時等に水切り材を横目地の二次シール位置へ容易に組付けることができるという優れた効果を有する。
【0029】
請求項5記載の本発明に係る外壁横目地の防水構造は、必要最低限の部位のみを交換すればよいので、ユーザーに対する経済的負担を軽減することができると共に、交換部品の保管スペースも少なくて済むという優れた効果を有する。
【0030】
請求項6記載の本発明に係る外壁横目地の防水構造は、水切り材が組付後に二次シール位置から不用意にずれることを抑制又は防止することができるという優れた効果を有する
【0031】
請求項7記載の本発明に係る外壁横目地の防水構造は、水切り材の他端部が折れ曲がったまま装着され、二次防水材としての機能が阻害されることを未然に防止することができるという優れた効果を有する。
【0032】
請求項8記載の本発明に係る外壁横目地の防水構造は、施工時の作業性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0033】
請求項9記載の本発明に係る外壁横目地の防水構造は、水切り材と一般にはコストがあまりかからない防水シール材とで横目地を二重シールするので、メンテナンス費用を削減することができ、ユーザーの経済的負担を軽減することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(A)〜(C)は第1実施形態に係る外壁横目地の防水構造の要部を示しており、内水切り材を横目地に装着する際の作業工程を示す工程図である。
【図2】(A)〜(C)は第1実施形態に係る外壁横目地の防水構造の要部を示しており、(A)は漏水が起こる現象を説明するための説明図であり、(B)及び(C)は内水切り材を横目地から取り外す際の作業工程を示す工程図である。
【図3】上階側外壁パネル及び下階側外壁パネルに使用される押出し成形セメント板(ECP)を示す斜視図である。
【図4】図3に示される押出し成形セメント板(ECP)を用いて構築された建物を示す全体斜視図である。
【図5】(A)及び(B)は従来例に係る外壁横目地の防水構造の要部を示しており、(A)は組付状態の縦断面図であり、(B)は内水切り材を取外す補修工事をする際の様子を示す工程図である。
【図6】(A)〜(C)は第2実施形態に係る外壁横目地の防水構造の要部を示しており、内水切り材を横目地に装着する際の作業工程を示す工程図である。
【図7】(A)は第3実施形態に係る外壁横目地の防水構造で用いる内水きり材の平面図であり、(B)はその縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
〔第1実施形態〕
以下、図1〜図5を用いて、本発明に係る外壁横目地の防水構造の第1実施形態について説明する。
【0036】
図4に示されるように、住宅等の建物10は、地階部分12と、一階部分14と、二階部分16と、を含んで構成されている。地階部分12の外周部には、地下二重壁18が立設されている。また、一階部分14の外周部には、下階側外壁パネル20が立設されている。さらに、二階部分16の外周部には、上階側外壁パネル22が立設されている。上階側外壁パネル22は、下階側外壁パネル20に対して上下に隣接して同一平面上に配設されている。
【0037】
図3に示されるように、上述した下階側外壁パネル20及び上階側外壁パネル22は、押出し成形セメント板(ECP)24で構成されている。押出し成形セメント板24は、屋外側に配置されて意匠面を形成する外壁部26と、この外壁部26に対して平行に配置された内壁部28と、外壁部26と内壁部28とを所定のピッチで垂直に繋ぐ複数の連結部30と、によって構成されている。上記構成により、押出し成形セメント板24は、その内部に所定のピッチで複数本の空洞部32が形成されている。空洞部32は、建物高さ方向に沿って延在されており、上階側外壁パネル22の空洞部32と下階側外壁パネル20の空洞部32とが建物高さ方向に連続するように配置されている。
【0038】
上述した下階側外壁パネル20と上階側外壁パネル22とが左右に隣接する部位には縦目地34が形成され、上下に隣接する部位には横目地36が形成されている。以下、横目地36の防水構造(二重シール構造)について詳細に説明する。
【0039】
図1(C)に示されるように、横目地36の屋外側には一次シール部38が設けられており、又横目地36の屋内側には二次シール部40が設けられている。なお、図3では、押出し成形セメント板24の概略構造を示すことを目的としているので、二次シール部40も一次シール部38と同様に図示している。一次シール部38は、湿式シール材であるシーリング材42と、その奥側に配置された水通し材44と、によって構成されている。水通し材44はバックアップ材であり、水通し材44には建物高さ方向に貫通する図示しない複数の孔部が形成されている。
【0040】
一方、上階側外壁パネル22の下端部22Aの屋内側の角部には、アングル状の長尺部材で構成された支持部材としての通しアングル46が配設されている。通しアングル46は、内壁部28の下側に水平に配置された基部46Aと、内壁部28の屋内側の垂直面に対して平行に配置された立ち上がり部46Bと、基部46Aと立ち上がり部46Bとを繋ぐ円弧面形状の繋ぎ部46Cと、によって構成されている。このうち、繋ぎ部46Cの内周側は、所定曲率半径の凹曲面である円弧面48で構成されている。また、通しアングル46と上階側外壁パネル22との間には、所定の隙間50が形成されている。なお、通しアングル46は、その下縁側に適宜間隔で複数個所に設定された図示しない固定金具(例えば、Z状のクリップ等)を用いて差込み固定されている。さらに、通しアングル46の上端部の屋外側の面と上階側外壁パネル22の下端部22Aの屋内側の面との間には、長尺状の止水材52が配設されており、両面間をシールしている。なお、止水材52は、通しアングル46を取り付ける際に、通しアングル46側に取り付けておけばよい。
【0041】
上階側外壁パネル22の下端部22Aと上述した通しアングル46との隙間50には、内水切り材54が装着されている。図1(A)、(C)から判るように、内水切り材54は薄い帯状の板材で構成されており、一端部54Aと他端部54Bと中間部54Cとから成る。一端部54Aは中間部54Cからそのまま延設された部分とされ、この一端部54Aが横目地36内へ装着するときに挿入方向側の端部となる。また、他端部54Bは中間部54Cに対して直角に折り曲げられた部分とされている。さらに、他端部54Bは、作業者が当該他端部54Bを指で中間部54Cに接近する方向へ押圧すると、自身の弾性力に抗してV字状に折れ曲がるようになっている。
【0042】
また、下階側外壁パネル20の上端部20Aの屋内側、即ち下階側外壁パネル20を構成する方の押出し成形セメント板24の複数の繋ぎ部30には、内水切り材54の他端部54Bの形状に対応して、上階側に開放された切欠形状の凹溝56が形成されている。凹溝56は、横目地36の長手方向に沿って延在されている。但し、「長手方向に沿って延在」といっても、連続して延在するのではなく、繋ぎ部30ごとに延在されているという意味である。上記凹溝56の溝幅Bは、内水切り材54が横目地36内へ装着された状態において、弾性復元力によって復元した他端部54Bの位置を基準として、当該他端部54Bの先端が弾性復元時に接触しない幅に設定されている。
【0043】
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
図2(A)に示されるように、上階側外壁パネル22は押出し成形セメント板24で構成されているため、水の抜き道となる空洞部32がゴミや埃、害虫等によって塞がれると、空洞部32に水58が溜まることがある。
【0044】
この場合、上階側外壁パネル22の空洞部32に溜まった水58の水位が、通しアングル46の上端位置である防水ラインPを越えると、屋内側へオーバーフローする。なお、オーバーフローした水を符号「60」で示す。また、内水切り材54が経年劣化等により破損することも考えられる。内水切り材54が破損すると、そこから屋内側へ漏水する。なお、内水切り材54の破損により漏水した水を符合「62」で示す。
【0045】
このような不具合が生じた場合や定期的なメンテナンス時等に、以下の要領で、内水切り材54の交換作業が行われる。まず、図2(B)に示されるように、横目地36の屋外側の一次シール部38が切り取られる。次いで、内水切り材54が他端部54B側から引っ張られ、図2(C)に示されるように内水切り材54がそのまま横目地36から引き抜かれる。
【0046】
上記の要領で内水切り材54を横目地36から抜き取ったら、図1に示される要領で新しい内水切り材54が装着される。具体的には、まず、図1(A)に示されるように、内水切り材54の一端部54Aを横目地36の内部へ挿入した後、通しアングル46の基部46Aと上階側外壁パネル22の下端部22Aとの隙間50へ臨ませる。次いで、内水切り材54の他端部54Bを中間部54C側へ折り曲げて、横目地36に挿入可能な状態とする。次に、図1(B)に示されるように、通しアングル46の基部46Aに沿って内水切り材54を押し込んでいく。そして、通しアングル46の繋ぎ部46Cの円弧面48に沿って内水切り材54の一端部54A側を湾曲させていき、前述した防水ラインPまで立ち上がらせる。図1(C)に示されるように、内水切り材54の一端部54A側を防水ラインP(正確には、止水材52の下面)まで立ち上がらせると、内水切り材54の他端部54Bが下階側外壁パネル20の上端部20Aの凹溝56に対応する。このため、他端部54Bは元の状態に弾性復元力によって復帰する。他端部54Bが復帰すると、凹溝56の側面に係止された状態となるので、内水切り材54が不用意に外れることがなくなる。これにより、下階側外壁パネル20と上階側外壁パネル22との間に形成された横目地36の二次シール部40の施工が完了する。その後、横目地36の屋外側に一次シール部38の施工を実施すると、横目地36の二重シールが完了する。
【0047】
このように本実施形態に係る外壁横目地の防水構造では、内水切り材54が横目地36の屋外側から着脱可能とされているので、内水切り材54が経年劣化したり或いは地震力等の外力が作用することによって亀裂等が入った場合等に、当該内水切り材54を横目地36の屋外側から引抜いて新品の内水切り材54と交換することができる。また、メンテナンス時にも同様の手法によって、内水切り材54を引抜いて新品の内水切り材54と交換することができる。
【0048】
これに対し、従来では内水きり材を交換する必要が生じた場合、以下のように対処していた。図5(A)には、従来の内水切り材70の納まりを示した縦断面図が示されている。この図に示されるように、従来の内水切り材70は、形状こそ本実施形態の内水切り材54と同様であり、一端部70Aと他端部70Bと中間部70Cとを備えているが、この内水切り材70はそもそも弾性変形するような材質及び構造にはなっていない。なお、止水テープ72は内水切り材70の一端部70A側に予め固着されている。また、従来では、下階側外壁パネル74の上端部74Aにはスリット76が形成されている。その結果、漏水箇所が生じると、図5(B)に示されるように、まず、上階側外壁パネル22を取外し、次いで内水切り材70及び通しアングル46を取外すことになる。そのため、従来では、大掛かりな作業が必要になり、ユーザーの経済的負担も大きかった。
【0049】
しかし、本実施形態によれば、上記のように上階側外壁パネル22を取外す等の大掛かりな作業は不要になると共に、メンテナンスも容易になる。その結果、本実施形態によれば、漏水時の補修工事を軽微なものとすることができ、しかもメンテナンス性を向上させることができる。
【0050】
また、本実施形態で用いる内水切り材54は薄い板状部材で構成されており、横目地36の屋外側からこの内水切り材54を挿入すると、通しアングル46に案内されて湾曲変形し、これにより通しアングル46と上階側外壁パネル22の下端部22Aの屋内側との隙間50に装着されるようになっている。このため、内水切り材54を横目地36の屋外側から組付けるための特別の追加部品が不要であり、コストの上昇を招かない。
【0051】
さらに、内水切り材54はその板厚方向へ湾曲変形可能とされているので、内水切り材54の変形を利用して横目地36の二次シール位置に内水切り材54を装着することが可能になる。その結果、部品点数の増加を招くことなく、内水切り材54の横目地36への装着を可能とすることができる。
【0052】
また、本実施形態では、通しアングル46の基部46Aと立ち上がり部46Bとを繋ぐ繋ぎ部46Cにおける上階側外壁パネル22の下端部22Aと対向する面が円弧面48で構成されているため、内水切り材54の一端部54Aに円弧面48上をなぞらせることにより、当該一端部54A側を立ち上げることができる。従って、メンテナンス時等に内水切り材54を横目地36の二次シール位置へ容易に組付けることができる。
【0053】
さらに、本実施形態では、内水切り材54を横目地36へ装着させる際には、他端部54Bを弾性変形させながら中間部54C側へ折り曲げる。これにより、内水切り材54の他端部54Bが下階側外壁パネル20の上端部20Aの凹溝56に引っ掛かって、内水切り材54を横目地36内へ挿入することができないといった事態は生じなくなる。そして、内水切り材54の他端部54Bが下階側外壁パネル20の上端部20Aに形成された凹溝56に対応すると、当該他端部54Bが弾性復帰する。これにより、当該他端部54Bは中間部54Cに対して略面直角方向へ屈曲した状態となり、凹溝56に係合された状態となる。よって、本実施形態によれば、内水切り材54が組付後に二次シール位置から不用意にずれることを抑制又は防止することができる。
【0054】
また、本実施形態では、凹溝56がスリット形状ではなく、切欠形状とされているので、内水切り材54の他端部54Bが弾性復帰する際に当該他端部54Bと凹溝56を形成する側壁とが接触しない。よって、内水切り材54の他端部54Bが凹溝56の周縁部に引っ掛かって凹溝56になかなか係止されないといった不具合が生じ難い。その結果、内水切り材54の他端部54Bが折れ曲がったまま装着され、二次防水材としての機能が阻害されることを未然に防止することができる。
【0055】
さらに、本実施形態では、横目地36の屋外側が、(一般にコストが低い)湿式のシーリング材42でシールされているので、このシーリング材42が一次シールとなる。つまり、シーリング材42と内水切り材54とで横目地36を二重シールすることができる。よって、メンテナンス費用を削減することができ、ユーザーの経済的負担を軽減することができる。
【0056】
〔第2実施形態〕
以下、図6を用いて、本発明に係る外壁横目地の防水構造の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0057】
図6(A)〜(C)に示されるように、この第2実施形態に係る外壁横目地の防水構造では、内水切り材80が、複数の要素、即ち第1水切り材82と第2水切り材84とに分割されている点に特徴がある。詳細には、第1水切り材82は、第1実施形態で説明した一端部54Aを含む立ち上がり部46Bに相当する部分として構成されている。また、第2水切り材84は、第1実施形態で説明した他端部54Bを含む基部46Aに相当する部分として構成されている。第1水切り材82は後述するように基本的には交換しない部材であるので、金属製とされている。但し、樹脂製でもよい。また、第2水切り材84は後述するように交換することを前提としているため、樹脂製のものが使用されているが、金属製でもよい。
【0058】
第1水切り材82の上端部82Aの屋外側の面には、止水材52と同様構成の第1止水材86が予め固着されている。また、第1水切り材82の下端部82Bの屋外側の面には、第2止水材88が予め固着されている。この第2止水材88の横目地36と対向する側部には、横目地36に臨むようにV字状の係合部90が形成されている。上記構成の第1水切り材82は、上階側外壁パネル22の下端部22Aに通しアングル92と共に予め組付けられている。なお、この第2実施形態で用いられる通しアングル92は、内水切り材80が第1水切り材82と第2水切り材84とに分かれているので、第1実施形態で用いた通しアングル46とは異なり、円弧面48は形成されていない。
【0059】
一方、第2水切り材84の屋外側の端部には、前述したように第1実施形態で説明した他端部54Bに相当する折り曲げ部84Aが一体に形成されている。また、第2水切り材84の屋内側の端部84Bは、第1水切り材82の下端部82Bに取付けられた第2止水材88の係合部90に離脱可能に係合(接続)されている。
【0060】
(作用・効果)
上記構成によれば、メンテナンス時等には、図6(A)に示されるように、第2水切り材84のみを第1水切り材82の係合部90から離脱させた後に、新しい第2水切り材84を第1水切り材82の第2止水材88の係合部90に係合(接続)させればよい。このように本実施形態によれば、必要最低限の部位のみを交換すればよい。このため、ユーザーに対する経済的負担を軽減することができると共に、前述した第1実施形態の内水切り材54を保管する場合に比べて、交換部品の保管スペースも少なくて済む。
【0061】
〔第3実施形態〕
以下、図7を用いて、本発明に係る外壁横目地の防水構造の第3実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態等と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0062】
図7(A)、(B)に示されるように、この第3実施形態に係る外壁横目地の防水構造では、内水切り材94が、第1実施形態で説明した内水切り材54と水通し材44とを一体化させることにより構成されている点に特徴がある。具体的には、内水切り材54の他端部54Bの上部の屋外側の面に、複数の水通し孔96が形成された水通し材44が予め接着剤等によって固着されている。なお、水通し材44の屋外側の面に一次シール用の定型ガスケットを更に一体化させて、三者一体構造にしてもよい。
【0063】
(作用・効果)
上記構成によれば、内水切り材94の屋外側の端部には水通し孔96が形成された水通し材44が一体化されているので、内水切り材94の横目地36への装着と同時に水通し材44も装着される。つまり、水通し材専用の組付作業が不要になる。その結果、本実施形態によれば、施工時の作業性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0064】
20 下階側外壁パネル
20A 上端部
22 上階側外壁パネル
22A 下端部
36 横目地
42 シーリング材(防水シール材)
44 水通し材
46 通しアングル(支持部材)
46A 基部
46B 立ち上がり部
46C 繋ぎ部
48 円弧面(凹曲面)
50 隙間
54 内水切り材(水切り材)
54A 一端部
54B 他端部
56 凹溝
80 内水切り材(水切り材)
82 第1水切り材
84 第2水切り材
84B 屋内側の端部(挿入方向側の端部)
92 通しアングル(支持部材)
94 内水切り材(水切り材)
96 水通し孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下階側外壁パネルと上階側外壁パネルとの間に形成される外壁横目地を二次シールするための外壁横目地の防水構造であって、
下階側外壁パネルの上端部に形成され、横目地長手方向に沿って延在する凹溝と、
アングル状に形成されると共に、上階側外壁パネルの下端部の屋内側に沿って配置された長尺状の支持部材と、
一端部が前記支持部材と前記上階側外壁パネルの下端部の屋内側の面との間に装着されると共に他端部が前記凹溝に係止される水切り材と、
を有し、
前記水切り材の少なくとも前記他端部を含む部分が前記横目地の屋外側から着脱可能とされている、
ことを特徴とする外壁横目地の防水構造。
【請求項2】
前記水切り材は、前記横目地の屋外側から挿入可能な板状部材で構成されていると共に、前記支持部材に案内されて形状を板厚方向に変化させることで前記支持部材と前記上階側外壁パネルの下端部の屋内側の面との間に挿入可能とされている、
ことを特徴とする請求項1記載の外壁横目地の防水構造。
【請求項3】
前記水切り材は、板厚方向へ湾曲変形可能とされている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の外壁横目地の防水構造。
【請求項4】
前記支持部材は、前記上階側外壁パネルの下端部の下端面との間に隙間をあけて対向して配置された基部と、この基部の屋内側の端部から立ち上げられて前記上階側外壁パネルの下端部の屋内側の面に沿って配置される立ち上がり部と、前記基部と前記立ち上がり部とを繋ぎかつ前記上階側外壁パネルの下端部と対向する面が凹曲面で構成された繋ぎ部と、を含んで構成されており、
さらに、前記水切り材は、その一端部が前記繋ぎ部の凹曲面に案内されて湾曲変形することにより、前記支持部材の立ち上がり部と前記上階側外壁パネルの下端部の屋内側の面との間に立ち上げられながら装着されている、
ことを特徴とする請求項3記載の外壁横目地の防水構造。
【請求項5】
前記水切り材は、前記一端部を含む第1水切り材と、前記他端部を含む第2水切り材とに分割されており、
前記第1水切り材は、前記支持部材と前記上階側外壁パネルの下端部の屋内側の面との間に予め装着されていると共に、前記第2水切り材の挿入方向側の端部は前記第1水切り材に対して離脱可能に接続されている、
ことを特徴とする請求項1記載の外壁横目地の防水構造。
【請求項6】
前記水切り材の前記他端部は、自然状態では水切り材の中間部に対して略面直角下方へ屈曲されており、弾性変形することにより当該中間部側へ折り曲げ可能とされている、
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の外壁横目地の防水構造。
【請求項7】
前記凹溝は、前記水切り材の前記他端部が弾性復帰する際に当該他端部と非接触となるように切欠形状とされている、
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の外壁横目地の防水構造。
【請求項8】
前記水切り材の屋外側の端部には、水通し孔が形成された水通し材が一体化されている、
ことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の外壁横目地の防水構造。
【請求項9】
前記横目地の屋外側は、湿式の防水シール材でシールされている、
ことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の外壁横目地の防水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−117270(P2012−117270A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267352(P2010−267352)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【Fターム(参考)】