外壁目地の2次防水部材、外壁目地の2重防水構造、及び外壁目地の2重防水構造施工方法。
【課題】 屋外側から外壁目地の奥に挿入及び取り外しすることが可能であり、下地材や外壁パネル取付用金具5との干渉を抑えることができ、メンテナンス容易な外壁目地の2次防水部材1を提供する。
【解決手段】 外壁目地の2次防水部材1は、外壁パネル3間の縦目地の屋内側に収納されて、該縦目地から屋内側に水が浸入することを抑止する2次防水部材1であって、可撓性を有し、長尺の帯状に形成された防水性のシート体11と、該シート体11の両側に当該シート体11に沿ってそれぞれ形成される長尺の部材であって、縦目地の屋内側に収納されたときに屋内側にやや膨らむように、その幅方向が湾曲した前記シート体よりも硬質の防水性を有する湾曲部材12と、該湾曲部材12の前記シート体11と反対側の側縁に沿って形成され、外壁パネル3側に突出する水返し部13と、を備える。
【解決手段】 外壁目地の2次防水部材1は、外壁パネル3間の縦目地の屋内側に収納されて、該縦目地から屋内側に水が浸入することを抑止する2次防水部材1であって、可撓性を有し、長尺の帯状に形成された防水性のシート体11と、該シート体11の両側に当該シート体11に沿ってそれぞれ形成される長尺の部材であって、縦目地の屋内側に収納されたときに屋内側にやや膨らむように、その幅方向が湾曲した前記シート体よりも硬質の防水性を有する湾曲部材12と、該湾曲部材12の前記シート体11と反対側の側縁に沿って形成され、外壁パネル3側に突出する水返し部13と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁パネル間の縦目地から屋内側に水が侵入することを抑止する外壁目地の2次防水部材、この外壁目地の2次防水部材を用いた外壁目地の2重防水構造、及びこの外壁目地の2重防水構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の互いに隣接する外壁パネル間に形成される目地から建物内部に風雨などが侵入することを防ぎ、且つ、建物の外観を良好に保つために、乾式の外壁目地ガスケットが用いられる。外壁目地ガスケットは、例えばポリ塩化ビニル等の水密性及び弾性を有する材料で形成され、目地の幅よりも幅広の長手形状であって、屋外側から目地に圧入して固定するものである。
【0003】
このような外壁目地ガスケットにおいては、防水性をさらに高めるために、例えば図12(A)に示すように、対向する垂直板を底板部に立設して嵌着溝を形成してなるベース目地材101と、該ベース目地材101の嵌着溝106に嵌入する凸条103を筒形中空状のシール部104に垂設すると共に、シール部104のシール面にシリコン系被覆層を形成し、かつ、シール部104の下端部を目地幅に合わせて肉厚に形成してなるトップ目地材102とからなる外壁目地ガスケット100が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
このように構成することで外壁目地ガスケット100は、図12(B)に示すように、シール部104の防水性による一次防水に加えて、ベース目地材101が外壁パネル105の裏面105aに当接密着することによって、二次防水を行うことができ、より防水効果を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−74130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述のような外壁目地ガスケット100においては、ベース目地材101の幅が外壁目地の目地幅よりも広くなるので、ベース目地材101を外壁目地から屋内側に挿入することが困難であり、建物の屋内側からベース目地材101を取り付ける作業をする必要がある。したがって、外壁パネル105の屋内側に配置される下地材や外壁パネル取付用金具等が邪魔になって、ベース目地材101を取り付ける作業が困難となる場合も多く、また、外壁をリフォームする場合などのように内装材が固定されているためにベース目地材101を取り付けるために外壁パネル105を外す必要があった。
【0007】
また、ベース目地材101と外壁の下地材や外壁パネル取付用金具等とが狭い空間を取り合うことになるので、外壁パネル105の屋内側の空間の厚みによってはこのベース目地材101を設置することができない場合もあった。
【0008】
そこで、本発明は、屋外側から外壁目地の奥に挿入及び取り外しすることが可能であり、下地材や外壁パネル取付用金具との干渉を抑えることができ、メンテナンスが容易な外壁目地の2次防水部材、この外壁目地の2次防水部材を用いる外壁目地の2重防水構造、及びその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の外壁目地の2次防水部材は、外壁パネル間の縦目地の屋内側に収納されて、該縦目地から屋内側に水が浸入することを抑止する外壁目地の2次防水部材であって、可撓性を有し、長尺の帯状に形成された防水性のシート体と、該シート体の両側に当該シート体に沿ってそれぞれ形成される長尺の部材であって、縦目地の屋内側に収納されたときに屋内側に湾曲するように、その幅方向が湾曲した前記シート体よりも硬質の防水性を有する湾曲部材と、を備えることを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の外壁目地の2次防水部材は、前記湾曲部材の前記シート体と反対側の側縁に沿って形成され、外壁パネル側に突出する弾性体の水返し部、を更に備えることを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の外壁目地の2次防水部材は、前記シート体は少なくとも可視光を透過可能であることを特徴としている。
【0012】
なお、ここで「可視光を透過可能」とは、可視光を100パーセント透過することができるものに限られず、シート体の裏側に設置された部材を視認することができる程度に透明または半透明であればよい。
【0013】
請求項4に記載の外壁目地の2次防水部材は、前記シート体は前記縦目地の目地幅よりも幅広であることを特徴としている。
【0014】
請求項5に記載の外壁目地の2重防水構造は、外壁パネル間の縦目地よりも幅広に形成された弾性体により形成され、前記縦目地に圧入されて保持される1次防水部材と、前記縦目地の屋内側に形成された前記縦目地の目地幅よりも幅広の2次防水部材と、を備える外壁目地の2重防水構造であって、前記2次防水部材は、可撓性を有し、長尺の帯状に形成された防水性のシート体と、該シート体の両側に当該シート体に沿ってそれぞれ形成される長尺の部材であって、縦目地の屋内側に収納されたときに屋内側に湾曲するように、その幅方向が湾曲した前記シート体よりも硬質の湾曲部材と、を具備することを特徴としている。
【0015】
請求項6に記載の外壁目地の2重防水構造は、前記2次防水部材が前記湾曲部材の前記シート体と反対側の側縁に沿って形成され、外壁パネル側に突出する弾性体の水返し部と、を更に具備することを特徴としている。
【0016】
請求項7に記載の外壁目地の2重防水構造施工方法は、可撓性を有し、長尺の帯状に形成された防水性のシート体の両側に、幅方向が湾曲した前記シート体よりも硬質の湾曲部材を形成し、外壁パネル間の縦目地よりも幅広の2次防水部材を、前記シート体を屈曲させた状態で屋外側から前記縦目地に挿入した後で、前記縦目地の屋内側で前記シート体を広げて、前記縦目地を屋内側から前記2次防水部材で覆うように配置し、次に、前記縦目地よりも幅広に形成された弾性体からなる1次防水部材を、屋外側から前記縦目地の間に圧入することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の外壁目地の2次防水部材によると、可撓性を有する帯状のシート体を挟んで両側に湾曲部材が形成されている。したがって、このシート体を屈曲させて、両側の湾曲部材を近接させることで、外壁の縦目地に簡単に2次防水部材を挿入することができ、外壁パネルの屋内側でシート体を広げることで、2次防水部材により、外壁の縦目地を屋内側から覆うことができる。したがって、極めて簡単に、目地幅よりも幅広の2次防水部材を外壁目地の奥に設置することができ、2次防水性能を高めることができる。
【0018】
しかも2次防水部材は、縦目地の屋内側に収納されたときに屋内側に湾曲するように、その幅方向が湾曲した前記シート体よりも硬質の湾曲部材を備えているので、目地幅よりも相当幅広に形成することができ、外壁パネル裏面との重なり寸法を大きくとることができ、より確実に縦目地から入った水を屋内側へ侵入することを防ぐことができるとともに、外壁パネル裏面と2次防水部材との間に比較的大きな2次防水空間を取ることができ、例えば、外壁の水平目地から侵入した水をこの2次防水空間で受けるように容易に設計することができる。
【0019】
また、この2次防水部材によると、下地材や外壁パネル取付用金具が設置される位置に可撓性を有するシート体が設置されるので、シート体を柔軟に変形させることにより、2次防水部材と、下地材や外壁パネル取付用金具との干渉を抑えることができる。さらに、この2次防水部材を挿入する際には、湾曲部材の先端を互いに引き寄せることで、より挿入しやすい形状に変形させることができ、この湾曲部材を挿入した後で、シート体を縦目地の屋外側から押し込むことでシート体が広がり、湾曲部材の先端を外壁パネルの屋内側に当接させることができる。
【0020】
請求項2に記載の外壁目地の2次防水部材によると、湾曲部材のシート体と反対側の側縁に沿って弾性体の水返し部が形成されているので、2次防水空間にまで水が侵入したとしてもこの水返し部で確実に防水することができる。しかもこの水返し部は弾性体で構成されているので、外壁パネル間の縦目地にこの2次防水部材を挿入する際に邪魔になることがなく、また、メンテナンスなどのために取り外す際には取り外しやすいように変形することができる。また、2次防水部材を挿入する際に、湾曲部材のシート体側の側縁を離反方向に移動させ、水返し部を互いに接近させて引き寄せることで、より挿入しやすい形状に変形させることができる。
【0021】
請求項3に記載の外壁目地の2次防水部材によると、2次防水部材の幅方向の中央に帯状に設けられるシート体が可視光を透過可能であるので、縦目地の奥にこの2次防水部材を設置した後でも、外壁パネル取付用金具を視認することができ、2次防水部材よりも後に取り付ける1次防水部材の外れ防止用の突起部材の取付け位置が外壁パネル取付用金具と重ならないように調整することができる。
【0022】
請求項4に記載の外壁目地の2次防水部材によると、シート体は縦目地の目地幅よりも幅広であるので、より容易に外壁パネル取付用金具を視認することができるとともに、2次防水部材と下地材や外壁パネル取付用金具との干渉をより確実に抑えることができる。
【0023】
請求項5に記載の外壁目地の2重防水構造によると、2次防水部材が縦目地の屋内側に収納されたときに屋内側に湾曲するように、その幅方向が湾曲した前記シート体よりも硬質の湾曲部材を備えているので、目地幅よりも相当幅広に形成することができ、外壁パネル裏面との重なり寸法を大きくとることができ、より確実に縦目地からの水の侵入を防ぐことができるとともに、外壁パネル裏面と2次防水部材との間に比較的大きな2次防水空間を取ることができ、例えば、外壁の水平目地から侵入した水をこの2次防水空間で受けるように容易に設計することができる。また、下地材や外壁パネル取付用金具が設置される位置に可撓性を有するシート体が設置されるので、シート体を柔軟に変形させることにより、2次防水部材と、下地材や外壁パネル取付用金具との干渉を抑えることができる。
【0024】
請求項6に記載の外壁目地の2重防水構造によると、湾曲部材のシート体と反対側の側縁に沿って弾性体の水返し部が形成されているので、2次防水空間にまで水が侵入したとしてもこの水返し部で確実に防水することができる。しかもこの水返し部は弾性体で構成されているので、外壁パネル間の縦目地にこの2次防水部材を挿入する際に邪魔になることがなく、また、メンテナンスなどのために取り外す際には取り外しやすいように変形することができる。
【0025】
請求項7に記載の外壁目地の2重防水構造施工方法によると、2次防水部材をそのシート体を屈曲させた状態で屋外側から外壁パネル間の縦目地に挿入した後で、縦目地の屋内側でシート体を広げて、縦目地を屋内側から2次防水部材で覆うように配置し、次に、縦目地よりも幅広に形成された弾性体からなる1次防水部材を、屋外側から縦目地の間に圧入するので、簡単に目地幅よりも幅広の2次防水部材を屋外側から目地の奥に挿入することができ、極めて容易に外壁目地の2重防水構造を施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】2重防水構造の全体構成を説明する外壁縦目地の水平断面図。
【図2】1次防水部材の外観構成を説明する一部省略斜視図。
【図3】2次防水部材の外観構成を説明する一部省略斜視図。
【図4】2次防水部材の断面形状を説明する断面図。
【図5】外壁パネル取付用金具を用いて、軸組に外壁パネルを固定する工程を説明する一部省略断面図。
【図6】外壁の縦目地に2次防水部材の湾曲部材を挿入する工程を説明する一部省略断面図。
【図7】外壁の縦目地に2次防水部材を挿入する工程で、湾曲部材の先端が縦目地の屋内側に挿入されて、湾曲部材同士が相互に離反する方向に広がる状態を説明する一部省略断面図。
【図8】外壁の縦目地を屋内側から2次防水部材で覆った状態を示す一部省略断面図。
【図9】外壁の縦目地に1次防水部材を圧入した状態を示す一部省略断面図であって、外壁取付用金具が設置されている高さの断面を示す図。
【図10】(A)は、外壁の縦目地に1次防水部材を圧入した状態を示す一部省略断面図であって、外れ防止部材が設置されている高さの断面を示す図、(B)は、(A)の2点鎖線で囲んだ部分の拡大図。
【図11】2次防水部材を外壁の縦目地から取り外す作業を説明する図。
【図12】従来の縦目地防水に用いられる外壁目地ガスケットの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、外壁目地の2次防水部材1、外壁目地の2重防水構造2、及び外壁目地の2重防水構造施工方法の最良の実施形態について、各図を参照しつつ説明する。外壁目地の2次防水部材1及び外壁目地の2重防水構造2が用いられる外壁は、図1に示すように、複数の外壁パネル3を建物の構造躯体を構成する軸組4に外壁パネル取付用金具5を用いて固定して形成される。外壁パネル3は、矩形平板状に形成された例えば樹脂系、セメント系、セラミック系、又は金属系のサイディング材である。この外壁パネル3の周縁の屋内側にはこの外壁パネル3を建物の梁や柱に固定するために断面C型の金属枠31が目地方向に開口して取り付けられている。
【0028】
この外壁パネル3を軸組4に固定する外壁パネル取付用金具5は、軸組4に固定され、軸組4から屋外方向に突出する基部51と、基部51を軸として回転可能に固定されており、外壁パネル3の金属枠31を軸組4との間に挟持するパネル固定部52と、このパネル固定部52を回転動作させる操作部53とを備える。外壁パネル3を固定する際には、軸組4に外壁パネル3の金属枠31を押し当てて、外壁パネル取付用金具5の操作部53を操作してパネル固定部52を回転させ、パネル固定部52と軸組4とで外壁パネル3の金属枠31を挟持して固定する。このとき、操作部53は、外壁パネル3間の縦目地の奥に位置するように構成されている。したがって、屋外側から目地内にドライバーなどの工具を挿入しつつ操作することにより、外壁パネル3を屋外側から取り付けることができ、また、リフォームなどの際にも外壁パネル3を屋外側から取り外すことができる。
【0029】
外壁目地の2重防水構造2は、このような外壁パネル3間の縦目地に配置されるものであって、外壁パネル3間の縦目地を通過して建物の屋内側に雨水等が侵入することを防止するものである。この外壁目地の2重防水構造2は、図1に示すように、外壁パネル3間の縦目地に圧入される1次防水部材6と、縦目地の屋内側に配置される2次防水部材1とにより構成される。
【0030】
1次防水部材6は、図1及び図2に示すように、縦目地に水密的に圧入される本体61と、この本体61が縦目地から脱落することを防止する複数の外れ防止部材62から成る。本体61は、例えばポリ塩化ビニル等の水密性及び弾性を有する材料で形成されており、目地幅よりも幅広の長手形状に形成されている。この本体61の内部は複数の空間が形成されており、縦目地にこの本体61を圧入したときには、この本体61が弾性変形して縦目地をシールすることができる。また、縦目地に圧入した際に屋内側になる部分には、先端が膨らんだ凸条61aが形成されている。外れ防止部材62は、本体61の凸条61aに一定間隔で固定される弾性体であって、目地幅よりも広くひろがって外壁パネル3の屋内側面に引っ掛かる係止部62aと、凸条61aを嵌め込む嵌着部62bと、係止部62a及び嵌着部62bを連結する連結部62cとから構成されている。このような1次防水部材6は、図10(B)に示すように、本体61の凸条61aに所定間隔で外れ防止部材62を固定した状態で、縦目地に圧入されることにより縦目地に固定される。
【0031】
外壁目地の2次防水部材1は、図1、図3、及び図4に示すように、縦目地の屋内側に収納される防水部材である。この外壁目地の2次防水部材1は、帯状に形成された柔軟な樹脂製のシート体11と、このシート体11の両側に形成され、縦目地の屋内側に収納されたときに屋内側に湾曲するように湾曲した湾曲部材12と、この湾曲部材12の側縁に形成される水返しヒレ13と、により構成されている。シート体11は、例えばポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネートなどのような透明な軟質樹脂により形成されており、可撓性、防水性を有する。このシート体11は、長さが例えば外壁パネル3の高さとほぼ等しく、例えば幅が10mmから20mm程度の帯状に形成されており、縦目地の目地幅とほぼ等しいか、目地幅よりも幅広に形成されている。
【0032】
湾曲部材12は、例えば断面が半径25mmから30mm程度で中心角が60度から65度程度の屋内側に向かって湾曲する略円弧状に形成されており、シート体11よりも硬質の樹脂により形成されている。この湾曲部材12は、例えば幅が20mm程度で、外壁パネル3の屋内側に挿入したときの奥行きが4.2mmほどに形成されている。この湾曲部材12は、例えば硬質ポリプロピレン、硬質ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂、薄い鋼板といった弾性材料で形成されている。また、水返しヒレ13は、湾曲部材12のシート体11と反対側の側縁に形成されており弾性を有して形成されている。この水返しヒレ13は、例えば、軟質ポリプロピレン、軟質ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂、ゴム材といった軟質材料で形成されている。
【0033】
以上のように構成される外壁目地の2次防水部材1、及び外壁目地の2重防水構造2を施工する際には、図5に示すように、まず外壁パネル3を建物の軸組4に固定する。具体的には、軸組4に外壁パネル取付用金具5を取り付け、外壁パネル3の金属枠31の屋内側面を軸組4に当接させる。そして、外壁パネル取付用金具5の操作部53を操作してパネル固定部52を回転させ、このパネル固定部52を金属枠31の屋外側面に当接させ、このパネル固定部52と軸組4とで金属枠31を挟持して固定する。
【0034】
次に、図6に示すように、外壁目地の2次防水部材1のシート体11を屈曲させて、両側の湾曲部材12の膨らんだ側を互いに近接させた状態で、縦目地に挿入する。このとき水返しヒレ13は縦目地の形状に合わせて弾性変形する。そして、図7に示すように、湾曲部材12の先端を縦目地の屋内側に挿入しきると、湾曲部材12の先端を互いに離反するように広げつつ、シート体11を縦目地内に挿入する。そして、さらにシート体11を縦目地の屋内側に挿入して、図8に示すように、シート体11を広げて、縦目地を屋内側からこの2次防水部材1で覆うように配置する。2次防水部材は外壁パネル3の屋内側との重なり幅を大きく取っているので、目地から侵入した水が屋内側にさらに侵入することを十分に抑制できるが、さらに、湾曲部材12が外壁パネル取付用金具5に規制されて、水返しヒレが外壁パネル3の金属枠31の屋外側片に当接するので、水返しヒレと外壁パネルとの隙間を極力小さくすることができ、より確実に水の屋内側への侵入を抑制できる。また、透明なシート体11の幅は、縦目地の幅とほぼ等しいか数ミリ程度幅広に形成されているので、縦目地を屋内側から2次防水部材1で覆った後も、屋外側から外壁パネル取付用金具5を視認することができる。
【0035】
そして、次に1次防水部材6の外れ防止部材62の嵌着部62bに本体61の凸条61aを嵌め込む。このとき、外れ防止部材62の位置が外壁パネル取付用金具5の位置からずれるように配置する。そして、図9及び図10に示すように、1次防水部材6を縦目地に圧入して、外れ防止部材62が縦目地の奥まで挿入されるようにする。図9に示すように、外壁パネル取付用金具5が設置されている高さ位置には、外れ防止部材62が配置されておらず、図10(A)及び(B)に示すように外れ防止部材62が配置されている高さ位置には、外壁パネル取付用金具5が設置されていないので、お互いの部材が干渉しあって1次防水部材6が上手く縦目地に挿入されないといった不具合を防止することができる。
【0036】
以上のように、シート体11を屈曲させて、両側の湾曲部材12を互いに近接させることで、2次防水部材1よりも幅の狭い外壁の縦目地に簡単に2次防水部材1を挿入することができ、外壁パネル3の屋内側でシート体11を広げることで、2次防水部材1で外壁の縦目地を屋内側から覆うことができる。したがって、極めて簡単に、目地幅よりも幅広の2次防水部材1を外壁目地の奥に設置することができ、2次防水性能を高めることができる。
【0037】
また、湾曲部材12が目地幅よりも相当幅広に形成されるので、外壁パネル3裏面との重なり寸法を大きくとることができ、より確実に縦目地からの水の侵入を防ぐことができるとともに、外壁パネル3裏面と2次防水部材1との間に比較的大きな2次防水空間を取ることができ、例えば、外壁の水平目地から侵入した水をこの2次防水空間で受けるように容易に設計することができる。
【0038】
なお、外壁目地の2重防水構造2を取り外す際には、まず、1次目地部材6をドライバなどの工具7で引っ掛けて屋外側に引き出す。そしてその後、図11に示すように、2次防水部材1のシート体11の上下方向の端部にドライバなどの先端がやや尖った工具7を引っ掛けて、屋外側に引き出す。このように可撓性を有するシート体11を引き出すことで、このシート体11の両側に形成されている湾曲部材12もまた互いに近接して、外壁の縦目地から引き出される。したがって、メンテナンスなどの際に外壁パネルを取り外すことなく、2次防水部材1を殆ど破壊することなく取り外すことができるので、メンテナンス作業を容易にすることができる。
【0039】
なお、本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る外壁目地の2次防水部材1、外壁目地の2重防水構造2、及び外壁目地の2重防水構造施工方法を用いると、外壁の縦目地をより確実に防水することができる外壁目地の2次防水部材1、外壁目地の2重防水構造2、及び外壁目地の2重防水構造施工方法として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 2次防水部材
2 2重防水構造
3 外壁パネル
6 1次防水部材
11 シート体
12 湾曲部材
13 水返しヒレ(水返し部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁パネル間の縦目地から屋内側に水が侵入することを抑止する外壁目地の2次防水部材、この外壁目地の2次防水部材を用いた外壁目地の2重防水構造、及びこの外壁目地の2重防水構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の互いに隣接する外壁パネル間に形成される目地から建物内部に風雨などが侵入することを防ぎ、且つ、建物の外観を良好に保つために、乾式の外壁目地ガスケットが用いられる。外壁目地ガスケットは、例えばポリ塩化ビニル等の水密性及び弾性を有する材料で形成され、目地の幅よりも幅広の長手形状であって、屋外側から目地に圧入して固定するものである。
【0003】
このような外壁目地ガスケットにおいては、防水性をさらに高めるために、例えば図12(A)に示すように、対向する垂直板を底板部に立設して嵌着溝を形成してなるベース目地材101と、該ベース目地材101の嵌着溝106に嵌入する凸条103を筒形中空状のシール部104に垂設すると共に、シール部104のシール面にシリコン系被覆層を形成し、かつ、シール部104の下端部を目地幅に合わせて肉厚に形成してなるトップ目地材102とからなる外壁目地ガスケット100が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
このように構成することで外壁目地ガスケット100は、図12(B)に示すように、シール部104の防水性による一次防水に加えて、ベース目地材101が外壁パネル105の裏面105aに当接密着することによって、二次防水を行うことができ、より防水効果を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−74130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述のような外壁目地ガスケット100においては、ベース目地材101の幅が外壁目地の目地幅よりも広くなるので、ベース目地材101を外壁目地から屋内側に挿入することが困難であり、建物の屋内側からベース目地材101を取り付ける作業をする必要がある。したがって、外壁パネル105の屋内側に配置される下地材や外壁パネル取付用金具等が邪魔になって、ベース目地材101を取り付ける作業が困難となる場合も多く、また、外壁をリフォームする場合などのように内装材が固定されているためにベース目地材101を取り付けるために外壁パネル105を外す必要があった。
【0007】
また、ベース目地材101と外壁の下地材や外壁パネル取付用金具等とが狭い空間を取り合うことになるので、外壁パネル105の屋内側の空間の厚みによってはこのベース目地材101を設置することができない場合もあった。
【0008】
そこで、本発明は、屋外側から外壁目地の奥に挿入及び取り外しすることが可能であり、下地材や外壁パネル取付用金具との干渉を抑えることができ、メンテナンスが容易な外壁目地の2次防水部材、この外壁目地の2次防水部材を用いる外壁目地の2重防水構造、及びその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の外壁目地の2次防水部材は、外壁パネル間の縦目地の屋内側に収納されて、該縦目地から屋内側に水が浸入することを抑止する外壁目地の2次防水部材であって、可撓性を有し、長尺の帯状に形成された防水性のシート体と、該シート体の両側に当該シート体に沿ってそれぞれ形成される長尺の部材であって、縦目地の屋内側に収納されたときに屋内側に湾曲するように、その幅方向が湾曲した前記シート体よりも硬質の防水性を有する湾曲部材と、を備えることを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の外壁目地の2次防水部材は、前記湾曲部材の前記シート体と反対側の側縁に沿って形成され、外壁パネル側に突出する弾性体の水返し部、を更に備えることを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の外壁目地の2次防水部材は、前記シート体は少なくとも可視光を透過可能であることを特徴としている。
【0012】
なお、ここで「可視光を透過可能」とは、可視光を100パーセント透過することができるものに限られず、シート体の裏側に設置された部材を視認することができる程度に透明または半透明であればよい。
【0013】
請求項4に記載の外壁目地の2次防水部材は、前記シート体は前記縦目地の目地幅よりも幅広であることを特徴としている。
【0014】
請求項5に記載の外壁目地の2重防水構造は、外壁パネル間の縦目地よりも幅広に形成された弾性体により形成され、前記縦目地に圧入されて保持される1次防水部材と、前記縦目地の屋内側に形成された前記縦目地の目地幅よりも幅広の2次防水部材と、を備える外壁目地の2重防水構造であって、前記2次防水部材は、可撓性を有し、長尺の帯状に形成された防水性のシート体と、該シート体の両側に当該シート体に沿ってそれぞれ形成される長尺の部材であって、縦目地の屋内側に収納されたときに屋内側に湾曲するように、その幅方向が湾曲した前記シート体よりも硬質の湾曲部材と、を具備することを特徴としている。
【0015】
請求項6に記載の外壁目地の2重防水構造は、前記2次防水部材が前記湾曲部材の前記シート体と反対側の側縁に沿って形成され、外壁パネル側に突出する弾性体の水返し部と、を更に具備することを特徴としている。
【0016】
請求項7に記載の外壁目地の2重防水構造施工方法は、可撓性を有し、長尺の帯状に形成された防水性のシート体の両側に、幅方向が湾曲した前記シート体よりも硬質の湾曲部材を形成し、外壁パネル間の縦目地よりも幅広の2次防水部材を、前記シート体を屈曲させた状態で屋外側から前記縦目地に挿入した後で、前記縦目地の屋内側で前記シート体を広げて、前記縦目地を屋内側から前記2次防水部材で覆うように配置し、次に、前記縦目地よりも幅広に形成された弾性体からなる1次防水部材を、屋外側から前記縦目地の間に圧入することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の外壁目地の2次防水部材によると、可撓性を有する帯状のシート体を挟んで両側に湾曲部材が形成されている。したがって、このシート体を屈曲させて、両側の湾曲部材を近接させることで、外壁の縦目地に簡単に2次防水部材を挿入することができ、外壁パネルの屋内側でシート体を広げることで、2次防水部材により、外壁の縦目地を屋内側から覆うことができる。したがって、極めて簡単に、目地幅よりも幅広の2次防水部材を外壁目地の奥に設置することができ、2次防水性能を高めることができる。
【0018】
しかも2次防水部材は、縦目地の屋内側に収納されたときに屋内側に湾曲するように、その幅方向が湾曲した前記シート体よりも硬質の湾曲部材を備えているので、目地幅よりも相当幅広に形成することができ、外壁パネル裏面との重なり寸法を大きくとることができ、より確実に縦目地から入った水を屋内側へ侵入することを防ぐことができるとともに、外壁パネル裏面と2次防水部材との間に比較的大きな2次防水空間を取ることができ、例えば、外壁の水平目地から侵入した水をこの2次防水空間で受けるように容易に設計することができる。
【0019】
また、この2次防水部材によると、下地材や外壁パネル取付用金具が設置される位置に可撓性を有するシート体が設置されるので、シート体を柔軟に変形させることにより、2次防水部材と、下地材や外壁パネル取付用金具との干渉を抑えることができる。さらに、この2次防水部材を挿入する際には、湾曲部材の先端を互いに引き寄せることで、より挿入しやすい形状に変形させることができ、この湾曲部材を挿入した後で、シート体を縦目地の屋外側から押し込むことでシート体が広がり、湾曲部材の先端を外壁パネルの屋内側に当接させることができる。
【0020】
請求項2に記載の外壁目地の2次防水部材によると、湾曲部材のシート体と反対側の側縁に沿って弾性体の水返し部が形成されているので、2次防水空間にまで水が侵入したとしてもこの水返し部で確実に防水することができる。しかもこの水返し部は弾性体で構成されているので、外壁パネル間の縦目地にこの2次防水部材を挿入する際に邪魔になることがなく、また、メンテナンスなどのために取り外す際には取り外しやすいように変形することができる。また、2次防水部材を挿入する際に、湾曲部材のシート体側の側縁を離反方向に移動させ、水返し部を互いに接近させて引き寄せることで、より挿入しやすい形状に変形させることができる。
【0021】
請求項3に記載の外壁目地の2次防水部材によると、2次防水部材の幅方向の中央に帯状に設けられるシート体が可視光を透過可能であるので、縦目地の奥にこの2次防水部材を設置した後でも、外壁パネル取付用金具を視認することができ、2次防水部材よりも後に取り付ける1次防水部材の外れ防止用の突起部材の取付け位置が外壁パネル取付用金具と重ならないように調整することができる。
【0022】
請求項4に記載の外壁目地の2次防水部材によると、シート体は縦目地の目地幅よりも幅広であるので、より容易に外壁パネル取付用金具を視認することができるとともに、2次防水部材と下地材や外壁パネル取付用金具との干渉をより確実に抑えることができる。
【0023】
請求項5に記載の外壁目地の2重防水構造によると、2次防水部材が縦目地の屋内側に収納されたときに屋内側に湾曲するように、その幅方向が湾曲した前記シート体よりも硬質の湾曲部材を備えているので、目地幅よりも相当幅広に形成することができ、外壁パネル裏面との重なり寸法を大きくとることができ、より確実に縦目地からの水の侵入を防ぐことができるとともに、外壁パネル裏面と2次防水部材との間に比較的大きな2次防水空間を取ることができ、例えば、外壁の水平目地から侵入した水をこの2次防水空間で受けるように容易に設計することができる。また、下地材や外壁パネル取付用金具が設置される位置に可撓性を有するシート体が設置されるので、シート体を柔軟に変形させることにより、2次防水部材と、下地材や外壁パネル取付用金具との干渉を抑えることができる。
【0024】
請求項6に記載の外壁目地の2重防水構造によると、湾曲部材のシート体と反対側の側縁に沿って弾性体の水返し部が形成されているので、2次防水空間にまで水が侵入したとしてもこの水返し部で確実に防水することができる。しかもこの水返し部は弾性体で構成されているので、外壁パネル間の縦目地にこの2次防水部材を挿入する際に邪魔になることがなく、また、メンテナンスなどのために取り外す際には取り外しやすいように変形することができる。
【0025】
請求項7に記載の外壁目地の2重防水構造施工方法によると、2次防水部材をそのシート体を屈曲させた状態で屋外側から外壁パネル間の縦目地に挿入した後で、縦目地の屋内側でシート体を広げて、縦目地を屋内側から2次防水部材で覆うように配置し、次に、縦目地よりも幅広に形成された弾性体からなる1次防水部材を、屋外側から縦目地の間に圧入するので、簡単に目地幅よりも幅広の2次防水部材を屋外側から目地の奥に挿入することができ、極めて容易に外壁目地の2重防水構造を施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】2重防水構造の全体構成を説明する外壁縦目地の水平断面図。
【図2】1次防水部材の外観構成を説明する一部省略斜視図。
【図3】2次防水部材の外観構成を説明する一部省略斜視図。
【図4】2次防水部材の断面形状を説明する断面図。
【図5】外壁パネル取付用金具を用いて、軸組に外壁パネルを固定する工程を説明する一部省略断面図。
【図6】外壁の縦目地に2次防水部材の湾曲部材を挿入する工程を説明する一部省略断面図。
【図7】外壁の縦目地に2次防水部材を挿入する工程で、湾曲部材の先端が縦目地の屋内側に挿入されて、湾曲部材同士が相互に離反する方向に広がる状態を説明する一部省略断面図。
【図8】外壁の縦目地を屋内側から2次防水部材で覆った状態を示す一部省略断面図。
【図9】外壁の縦目地に1次防水部材を圧入した状態を示す一部省略断面図であって、外壁取付用金具が設置されている高さの断面を示す図。
【図10】(A)は、外壁の縦目地に1次防水部材を圧入した状態を示す一部省略断面図であって、外れ防止部材が設置されている高さの断面を示す図、(B)は、(A)の2点鎖線で囲んだ部分の拡大図。
【図11】2次防水部材を外壁の縦目地から取り外す作業を説明する図。
【図12】従来の縦目地防水に用いられる外壁目地ガスケットの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、外壁目地の2次防水部材1、外壁目地の2重防水構造2、及び外壁目地の2重防水構造施工方法の最良の実施形態について、各図を参照しつつ説明する。外壁目地の2次防水部材1及び外壁目地の2重防水構造2が用いられる外壁は、図1に示すように、複数の外壁パネル3を建物の構造躯体を構成する軸組4に外壁パネル取付用金具5を用いて固定して形成される。外壁パネル3は、矩形平板状に形成された例えば樹脂系、セメント系、セラミック系、又は金属系のサイディング材である。この外壁パネル3の周縁の屋内側にはこの外壁パネル3を建物の梁や柱に固定するために断面C型の金属枠31が目地方向に開口して取り付けられている。
【0028】
この外壁パネル3を軸組4に固定する外壁パネル取付用金具5は、軸組4に固定され、軸組4から屋外方向に突出する基部51と、基部51を軸として回転可能に固定されており、外壁パネル3の金属枠31を軸組4との間に挟持するパネル固定部52と、このパネル固定部52を回転動作させる操作部53とを備える。外壁パネル3を固定する際には、軸組4に外壁パネル3の金属枠31を押し当てて、外壁パネル取付用金具5の操作部53を操作してパネル固定部52を回転させ、パネル固定部52と軸組4とで外壁パネル3の金属枠31を挟持して固定する。このとき、操作部53は、外壁パネル3間の縦目地の奥に位置するように構成されている。したがって、屋外側から目地内にドライバーなどの工具を挿入しつつ操作することにより、外壁パネル3を屋外側から取り付けることができ、また、リフォームなどの際にも外壁パネル3を屋外側から取り外すことができる。
【0029】
外壁目地の2重防水構造2は、このような外壁パネル3間の縦目地に配置されるものであって、外壁パネル3間の縦目地を通過して建物の屋内側に雨水等が侵入することを防止するものである。この外壁目地の2重防水構造2は、図1に示すように、外壁パネル3間の縦目地に圧入される1次防水部材6と、縦目地の屋内側に配置される2次防水部材1とにより構成される。
【0030】
1次防水部材6は、図1及び図2に示すように、縦目地に水密的に圧入される本体61と、この本体61が縦目地から脱落することを防止する複数の外れ防止部材62から成る。本体61は、例えばポリ塩化ビニル等の水密性及び弾性を有する材料で形成されており、目地幅よりも幅広の長手形状に形成されている。この本体61の内部は複数の空間が形成されており、縦目地にこの本体61を圧入したときには、この本体61が弾性変形して縦目地をシールすることができる。また、縦目地に圧入した際に屋内側になる部分には、先端が膨らんだ凸条61aが形成されている。外れ防止部材62は、本体61の凸条61aに一定間隔で固定される弾性体であって、目地幅よりも広くひろがって外壁パネル3の屋内側面に引っ掛かる係止部62aと、凸条61aを嵌め込む嵌着部62bと、係止部62a及び嵌着部62bを連結する連結部62cとから構成されている。このような1次防水部材6は、図10(B)に示すように、本体61の凸条61aに所定間隔で外れ防止部材62を固定した状態で、縦目地に圧入されることにより縦目地に固定される。
【0031】
外壁目地の2次防水部材1は、図1、図3、及び図4に示すように、縦目地の屋内側に収納される防水部材である。この外壁目地の2次防水部材1は、帯状に形成された柔軟な樹脂製のシート体11と、このシート体11の両側に形成され、縦目地の屋内側に収納されたときに屋内側に湾曲するように湾曲した湾曲部材12と、この湾曲部材12の側縁に形成される水返しヒレ13と、により構成されている。シート体11は、例えばポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネートなどのような透明な軟質樹脂により形成されており、可撓性、防水性を有する。このシート体11は、長さが例えば外壁パネル3の高さとほぼ等しく、例えば幅が10mmから20mm程度の帯状に形成されており、縦目地の目地幅とほぼ等しいか、目地幅よりも幅広に形成されている。
【0032】
湾曲部材12は、例えば断面が半径25mmから30mm程度で中心角が60度から65度程度の屋内側に向かって湾曲する略円弧状に形成されており、シート体11よりも硬質の樹脂により形成されている。この湾曲部材12は、例えば幅が20mm程度で、外壁パネル3の屋内側に挿入したときの奥行きが4.2mmほどに形成されている。この湾曲部材12は、例えば硬質ポリプロピレン、硬質ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂、薄い鋼板といった弾性材料で形成されている。また、水返しヒレ13は、湾曲部材12のシート体11と反対側の側縁に形成されており弾性を有して形成されている。この水返しヒレ13は、例えば、軟質ポリプロピレン、軟質ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂、ゴム材といった軟質材料で形成されている。
【0033】
以上のように構成される外壁目地の2次防水部材1、及び外壁目地の2重防水構造2を施工する際には、図5に示すように、まず外壁パネル3を建物の軸組4に固定する。具体的には、軸組4に外壁パネル取付用金具5を取り付け、外壁パネル3の金属枠31の屋内側面を軸組4に当接させる。そして、外壁パネル取付用金具5の操作部53を操作してパネル固定部52を回転させ、このパネル固定部52を金属枠31の屋外側面に当接させ、このパネル固定部52と軸組4とで金属枠31を挟持して固定する。
【0034】
次に、図6に示すように、外壁目地の2次防水部材1のシート体11を屈曲させて、両側の湾曲部材12の膨らんだ側を互いに近接させた状態で、縦目地に挿入する。このとき水返しヒレ13は縦目地の形状に合わせて弾性変形する。そして、図7に示すように、湾曲部材12の先端を縦目地の屋内側に挿入しきると、湾曲部材12の先端を互いに離反するように広げつつ、シート体11を縦目地内に挿入する。そして、さらにシート体11を縦目地の屋内側に挿入して、図8に示すように、シート体11を広げて、縦目地を屋内側からこの2次防水部材1で覆うように配置する。2次防水部材は外壁パネル3の屋内側との重なり幅を大きく取っているので、目地から侵入した水が屋内側にさらに侵入することを十分に抑制できるが、さらに、湾曲部材12が外壁パネル取付用金具5に規制されて、水返しヒレが外壁パネル3の金属枠31の屋外側片に当接するので、水返しヒレと外壁パネルとの隙間を極力小さくすることができ、より確実に水の屋内側への侵入を抑制できる。また、透明なシート体11の幅は、縦目地の幅とほぼ等しいか数ミリ程度幅広に形成されているので、縦目地を屋内側から2次防水部材1で覆った後も、屋外側から外壁パネル取付用金具5を視認することができる。
【0035】
そして、次に1次防水部材6の外れ防止部材62の嵌着部62bに本体61の凸条61aを嵌め込む。このとき、外れ防止部材62の位置が外壁パネル取付用金具5の位置からずれるように配置する。そして、図9及び図10に示すように、1次防水部材6を縦目地に圧入して、外れ防止部材62が縦目地の奥まで挿入されるようにする。図9に示すように、外壁パネル取付用金具5が設置されている高さ位置には、外れ防止部材62が配置されておらず、図10(A)及び(B)に示すように外れ防止部材62が配置されている高さ位置には、外壁パネル取付用金具5が設置されていないので、お互いの部材が干渉しあって1次防水部材6が上手く縦目地に挿入されないといった不具合を防止することができる。
【0036】
以上のように、シート体11を屈曲させて、両側の湾曲部材12を互いに近接させることで、2次防水部材1よりも幅の狭い外壁の縦目地に簡単に2次防水部材1を挿入することができ、外壁パネル3の屋内側でシート体11を広げることで、2次防水部材1で外壁の縦目地を屋内側から覆うことができる。したがって、極めて簡単に、目地幅よりも幅広の2次防水部材1を外壁目地の奥に設置することができ、2次防水性能を高めることができる。
【0037】
また、湾曲部材12が目地幅よりも相当幅広に形成されるので、外壁パネル3裏面との重なり寸法を大きくとることができ、より確実に縦目地からの水の侵入を防ぐことができるとともに、外壁パネル3裏面と2次防水部材1との間に比較的大きな2次防水空間を取ることができ、例えば、外壁の水平目地から侵入した水をこの2次防水空間で受けるように容易に設計することができる。
【0038】
なお、外壁目地の2重防水構造2を取り外す際には、まず、1次目地部材6をドライバなどの工具7で引っ掛けて屋外側に引き出す。そしてその後、図11に示すように、2次防水部材1のシート体11の上下方向の端部にドライバなどの先端がやや尖った工具7を引っ掛けて、屋外側に引き出す。このように可撓性を有するシート体11を引き出すことで、このシート体11の両側に形成されている湾曲部材12もまた互いに近接して、外壁の縦目地から引き出される。したがって、メンテナンスなどの際に外壁パネルを取り外すことなく、2次防水部材1を殆ど破壊することなく取り外すことができるので、メンテナンス作業を容易にすることができる。
【0039】
なお、本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る外壁目地の2次防水部材1、外壁目地の2重防水構造2、及び外壁目地の2重防水構造施工方法を用いると、外壁の縦目地をより確実に防水することができる外壁目地の2次防水部材1、外壁目地の2重防水構造2、及び外壁目地の2重防水構造施工方法として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 2次防水部材
2 2重防水構造
3 外壁パネル
6 1次防水部材
11 シート体
12 湾曲部材
13 水返しヒレ(水返し部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁パネル間の縦目地の屋内側に収納されて、該縦目地から屋内側に水が浸入することを抑止する外壁目地の2次防水部材であって、
可撓性を有し、長尺の帯状に形成された防水性のシート体と、
該シート体の両側に当該シート体に沿ってそれぞれ形成される長尺の部材であって、縦目地の屋内側に収納されたときに屋内側に湾曲するように、その幅方向が湾曲した前記シート体よりも硬質の防水性を有する湾曲部材と、を備えることを特徴とする外壁目地の2次防水部材。
【請求項2】
前記湾曲部材の前記シート体と反対側の側縁に沿って形成され、外壁パネル側に突出する弾性体の水返し部、を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の外壁目地の2次防水部材。
【請求項3】
前記シート体は少なくとも可視光を透過可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の外壁目地の2次防水部材。
【請求項4】
前記シート体は前記縦目地の目地幅よりも幅広であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の外壁目地の2次防水部材。
【請求項5】
外壁パネル間の縦目地よりも幅広に形成された弾性体により形成され、前記縦目地に圧入されて保持される1次防水部材と、
前記縦目地の屋内側に形成された前記縦目地の目地幅よりも幅広の2次防水部材と、を備える外壁目地の2重防水構造であって、
前記2次防水部材は、可撓性を有し、長尺の帯状に形成された防水性のシート体と、
該シート体の両側に当該シート体に沿ってそれぞれ形成される長尺の部材であって、縦目地の屋内側に収納されたときに屋内側に湾曲するように、その幅方向が湾曲した前記シート体よりも硬質の湾曲部材と、
を具備することを特徴とする外壁目地の2重防水構造。
【請求項6】
前記2次防水部材は、前記湾曲部材の前記シート体と反対側の側縁に沿って形成され、外壁パネル側に突出する弾性体の水返し部、を更に具備することを特徴とする請求項5に記載の外壁目地の2重防水構造。
【請求項7】
可撓性を有し、長尺の帯状に形成された防水性のシート体の両側に、幅方向が湾曲した前記シート体よりも硬質の湾曲部材を形成しする外壁パネル間の縦目地よりも幅広の2次防水部材を、前記シート体を屈曲させた状態で屋外側から前記縦目地に挿入した後で、
前記縦目地の屋内側で前記シート体を広げて、前記縦目地を屋内側から前記2次防水部材で覆うように配置し、
次に、前記縦目地よりも幅広に形成された弾性体からなる1次防水部材を、屋外側から前記縦目地の間に圧入することを特徴とする外壁目地の2重防水構造施工方法。
【請求項1】
外壁パネル間の縦目地の屋内側に収納されて、該縦目地から屋内側に水が浸入することを抑止する外壁目地の2次防水部材であって、
可撓性を有し、長尺の帯状に形成された防水性のシート体と、
該シート体の両側に当該シート体に沿ってそれぞれ形成される長尺の部材であって、縦目地の屋内側に収納されたときに屋内側に湾曲するように、その幅方向が湾曲した前記シート体よりも硬質の防水性を有する湾曲部材と、を備えることを特徴とする外壁目地の2次防水部材。
【請求項2】
前記湾曲部材の前記シート体と反対側の側縁に沿って形成され、外壁パネル側に突出する弾性体の水返し部、を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の外壁目地の2次防水部材。
【請求項3】
前記シート体は少なくとも可視光を透過可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の外壁目地の2次防水部材。
【請求項4】
前記シート体は前記縦目地の目地幅よりも幅広であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の外壁目地の2次防水部材。
【請求項5】
外壁パネル間の縦目地よりも幅広に形成された弾性体により形成され、前記縦目地に圧入されて保持される1次防水部材と、
前記縦目地の屋内側に形成された前記縦目地の目地幅よりも幅広の2次防水部材と、を備える外壁目地の2重防水構造であって、
前記2次防水部材は、可撓性を有し、長尺の帯状に形成された防水性のシート体と、
該シート体の両側に当該シート体に沿ってそれぞれ形成される長尺の部材であって、縦目地の屋内側に収納されたときに屋内側に湾曲するように、その幅方向が湾曲した前記シート体よりも硬質の湾曲部材と、
を具備することを特徴とする外壁目地の2重防水構造。
【請求項6】
前記2次防水部材は、前記湾曲部材の前記シート体と反対側の側縁に沿って形成され、外壁パネル側に突出する弾性体の水返し部、を更に具備することを特徴とする請求項5に記載の外壁目地の2重防水構造。
【請求項7】
可撓性を有し、長尺の帯状に形成された防水性のシート体の両側に、幅方向が湾曲した前記シート体よりも硬質の湾曲部材を形成しする外壁パネル間の縦目地よりも幅広の2次防水部材を、前記シート体を屈曲させた状態で屋外側から前記縦目地に挿入した後で、
前記縦目地の屋内側で前記シート体を広げて、前記縦目地を屋内側から前記2次防水部材で覆うように配置し、
次に、前記縦目地よりも幅広に形成された弾性体からなる1次防水部材を、屋外側から前記縦目地の間に圧入することを特徴とする外壁目地の2重防水構造施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−179216(P2011−179216A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44057(P2010−44057)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【出願人】(390033075)積水ポリマテック株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【出願人】(390033075)積水ポリマテック株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]