説明

外断熱外装パネル

【課題】建物の外断熱性能を大きく向上させることができ、容易に安価に短期工期で設置可能な外断熱外装パネルを提供すること。
【解決手段】
外断熱外装パネル1が、建物の外壁Wの外壁面Waに設置されて外壁面Waとの間に空気断熱層Aを形成する板材2と、板材2を外壁面Waに対して点接触で支持する支持手段3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物外壁に取り付けられて遮熱や外断熱を行う外断熱外装パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
夏場における建物の外壁表面の温度上昇は極めて大きく、ときには70℃にも達すことがある。この熱は壁を通し室内に至り、冷房の利き目を著しく悪くする。一方、冬場における建物外壁は、寒風に吹きさらされたり、雪や冷たい雨に打ちつけられたりして、冷やされた外壁は室内の熱を吸収し屋外に流してしまい、暖房の効き目を著しく悪くする。このように屋外の太陽光や風雨の変化は室温に大きな影響を与え、暖房や冷房の効果を著しく減じてしまう。その結果、大量の熱エネルギーが必要となり、石油や電気の浪費が余儀なくされている。
【0003】
この問題を解決するために外壁に断熱材を吹き付けたり、内壁に発泡断熱板を張付けたりして、外部環境の変化による影響を緩和させる工夫もある。しかし、これらの方法では、外壁が受けた夏の太陽熱や冬の風雨や雪の影響が直接室内に伝わるので、その効果は小さいものとならざるを得ない。
【0004】
また、外壁に厚い断熱材を張り付けてその上に外装工事を行う事例もあるが、この場合は建築費が非常に高くつくので、一般的にはあまり採用されていない。
【0005】
断熱材を吹き付けるに際しては、被着面である外壁表面の下地処理を特殊技能を持つ職人の手を借りて丁寧に行う必要があり、加えて接着面の劣化という危険性もある。また、左官等の特殊な技能を有する職人の手間を多く必要とするなど、工事費も割高になるという傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−232855号公報
【特許文献2】特開2010−53619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような問題を解決するための提案が、特許文献1及び2においてなされている。特許文献1においては、胴縁片を介して2枚合わせの外装パネルを使用する例が挙げられている。しかしながら、パネル自体が非常に高額なものである上、胴縁片が大きいので、これを通じて熱が壁を通して逃げやすくなっている。
【0008】
特許文献2においては、空気が流れやすいような金属製の外装パネルを形成している。しかしながら、そのパネル材の一部が全長にわたって外壁に接しているため、建物外壁との接触面積が大きく、外装パネル表面温度が建物外壁に直接伝わる構造であり、断熱効果が大きく落ちている。
【0009】
本発明は、建物の外断熱性能を大きく向上させることができ、容易に安価に短期工期で設置可能な外断熱外装パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態は、建物の外壁の外壁面に設置されて前記外壁面との間に空気断熱層を形成する板材と、前記板材を前記外壁面に対して点接触で支持する支持手段と、を備えた外断熱外装パネルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態によれば、外断熱外装パネルを建物外壁面に対して点支承で支持したので、真夏の太陽熱や真冬の風雨、雪等の影響を建物外壁に直接与えないようにすることができ、建物の遮熱、外断熱性能を大きく向上させることができる。また、本発明の実施形態に係る外断熱外装パネルを取り付ける設置面は精度の良い仕上面でなくても良いので、外断熱外装パネルの取り付けに際して、一般外装仕上げ工事のような左官工事等の下地処理が必要ない。したがって、容易に取り付けられ、取り付けに係る工事費を安く、工期も短くすることができる。さらに、本発明の実施形態に係る外断熱外装パネルは、例えばタイル張り等の従来の仕上げ工事で施工された壁面にも直接取り付けることができるので、既築建物に対しても適用可能であり、適用範囲が広い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る、建物外壁に取り付けた状態の外断熱外装パネルの斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る、建物外壁に取り付けた状態の外断熱外装パネルの断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る外断熱外装パネルを建物外壁に取り付ける方法を説明するための説明図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る、建物外壁に取り付けた状態の外断熱外装パネルの断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る、建物外壁に取り付けた状態の外断熱外装パネルの断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係る、建物外壁に取り付けた状態の外断熱外装パネルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る外断熱外装パネル1について、図1乃至図3を参照して説明する。図1は、コンクリートや木でできた建物外壁Wの外壁面Waに取り付けた状態の外断熱外装パネル1の斜視図である。図2は、建物外壁Wの外壁面Waに取り付けた状態の外断熱外装パネル1の断面図である。図3は、外断熱外装パネル1を建物外壁Waに取り付ける方法を説明するための説明図である。なお、図1の上下方向が鉛直方向であり、図2及び図3は水平面で切った断面である。
【0015】
図1乃至図3に示すように、外断熱外装パネル1は、板材2と支持手段3とを備える。板材2は、金属製の板であり、略コ字状の形状を有している。図3に示すように、板材2は、外断熱外装パネル1の設置時に建物外部に向く外面部2a、外面部2aの両側から折り曲がって連続している側面部2b、2b、一方の側面部2bからさらに折り曲がって連続している取付面部2c、略コ字状の内部の面である裏面部2dを有している。
【0016】
取付面部2cは、外断熱外装パネル1の設置時に、外壁面Waに対向して略平行になるように形成されている。取付面部2cには、後述のねじ3aを通すための貫通孔が形成されており、支持手段3が設けられる。板材2は、主に外面部2a及び側面部2bで、真夏の太陽光や真冬の風雨、雪等の熱(温度を下げる側も含む)Sを受ける。
【0017】
支持手段3は、ねじ3a、樹脂性のリングや金属製のワッシャ(本実施形態では、ゴムパッキン)の断熱部材3b、連結金具3cを備える。断熱部材3bは、取付面部2cと外壁面Waとの間に挟まれて配置され、板材2と外壁面Waとの間の熱伝達を抑える。ねじ3aは、取付面部2cの貫通孔と断熱部材3bの開口部とに挿通された状態で、外壁面Waに一端が固定される。なお、ねじ3aは、釘やボルトであってもよい。連結金具3cは、孔を有し、この孔にねじ3aを挿通させて、取付面部2cの断熱部材3bとは反対側の面にねじ3aにより固定される。支持手段3は、平面視で1つの板材2に対して一箇所のみに設けられている。支持手段3の上下(垂直)方向における数は、設置に必要な強度等から求めて任意に決定する。
【0018】
図3に示すように、既に設置した1つ目の外断熱外装パネル1の隣に並行して2つ目の外断熱外装パネル1を取り付ける際、図中の矢印の方向に2つ目の外断熱外装パネル1を移動させ、2つ目の外断熱外装パネル1の側面部2bを1つ目の外断熱外装パネル1の側面部2bと連結金具3cとの間に入れ込む。その結果、2つ目の外断熱外装パネル1の側面部2bは、連結金具3cの弾性により1つ目の外断熱外装パネル1の側面部2bに対して付勢された状態となって、2つ目の外断熱外装パネル1が1つ目の外断熱外装パネル1に連結される。
【0019】
以上のような構成により、支持手段3は、一方の側面部2bが隣接する外断熱外装パネル1の側面部2bに固定され、他方の側面部2bに連続して形成されている取付面部2cが断熱部材3bを介して外壁Wに固定されるようになっている。したがって、板材2は、外壁Wに対して点接触で支持されるようになっている。ここで言う点接触は理論上の話であり、実際には面で接触しているが、板材2の面積に比べて断熱部材3bの外壁面Waへの接触面積は非常に小さいので、外断熱外装パネル1は外壁Wに対して点接触で取り付けられていると言える。
【0020】
上記のような構成を持つ外断熱外装パネル1が、建物の外壁Wの外壁面Waに複数枚並行(本実施形態では縦方向だが、横方向や斜方向でもよい)に設置される。その際、外断熱外装パネル1の板材2は、建物の外壁Wの外壁面Waから離間距離D(図3参照)だけ離して建物の外壁Wの外壁面Waに支持手段3により点接触で支持される。板材2と外壁面Waとの間に空気断熱層Aを形成して、空気対流F(図1参照)が流れるようにしてある。これにより、真夏の太陽光や真冬の風雨、雪等の熱Sの影響を建物の外壁Wに直接与えないようにすることができる。
【0021】
本実施形態では、板材2の外面部2aを段差のついた形状としているが、本発明はこれに限定されず、板材2の外面部2aを段差のない平らな形状としてもよい。また、本実施形態では、板材2の取付面部2cを側面部2bの外方に突き出るように形成した例を示したが、本発明はこれに限定されず、板材2の取付面部2cを側面部2bの内方に突き出るように形成してもよい。この場合には、連結金具3cは、取付面部2cの断熱部材3bと同じ側の面に配置して、取付面部2cと断熱部材3bとで挟み込んで固定すればよい。また、本実施形態では、支持手段3を平面視で1つの板材2に対して一箇所のみに設けているが、本発明はこれに限定されず、板材2の両側の側面部2b、2bのそれぞれに支持手段3を設けてもよい。また、板材2以外の構成についても本実施形態に限定されず、点接触を実現可能な構成であればよい。
【0022】
本実施形態によれば、外断熱外装パネル1を建物の外壁面Waに対して点支承(点接触)で支持したので、真夏の太陽光や真冬の風雨、雪等の影響を建物の外壁Wに直接与えないようにすることができ、建物の遮熱、外断熱性能を大きく向上させることができる。例えば、屋内の冷暖房効果を改善することができる。
【0023】
本実施形態によれば、外断熱外装パネル1を取り付ける設置面(外壁面Wa)は精度の良い仕上面でなくても良いので、外断熱外装パネル1の取り付けに際して、一般外装仕上げ工事のような左官工事等の下地処理が必要ない。したがって、外断熱外装パネル1は、設置面に対して容易に取り付けられ、取り付けに係る工事費を安く、工期も短くすることができる。
【0024】
本実施形態によれば、外断熱外装パネル1は、例えばタイル張り等の従来の仕上げ工事で施工された外壁面Waにも直接取り付けることができるので、既築建物に対しても適用可能であり、適用範囲が非常に広い。
【0025】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る外断熱外装パネル1Aについて、図4を参照して説明する。第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付し、説明を省略する。図4は、第2実施形態に係る、建物外壁Wの外壁面Waに取り付けた状態の外断熱外装パネル1Aの断面図である。外断熱外装パネル1Aは、断熱材10を備えている点のみ第1実施形態の外断熱外装パネル1と異なり、これ以外は同じである。
【0026】
図4に示すように、外断熱外装パネル1Aは、板材2の外壁Wへの取り付け前に外壁面Waに接触して取り付けられる断熱材10を備える。断熱材10は、図4に示すように、板材2及び支持手段3が取り付けられていない外壁面Waの面すべてを覆うように設けられている。断熱材10は、例えば、工場で一定形状に生産される。
【0027】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。同時に、外断熱外装パネル1Aは外壁面Waに取り付けられる断熱材10を備えているので、建物の遮熱、外断熱性能をより大きく向上させることができる。
【0028】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る外断熱外装パネル1Bについて、図5を参照して説明する。第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付し、説明を省略する。図5は、第3実施形態に係る、建物外壁Wの外壁面Waに取り付けた状態の外断熱外装パネル1Bの断面図である。外断熱外装パネル1Bは、断熱材11を備えている点のみ第1実施形態の外断熱外装パネル1と異なり、これ以外は同じである。
【0029】
図5に示すように、外断熱外装パネル1Bは、板材2の外壁Wへの取り付け前に板材2の裏面部2dに接触して取り付けられる断熱材11を備える。断熱材11は、図5に示すように、板材2の裏面部2dのほとんどの面を覆うように設けられている。断熱材11は、例えば、工場で一定形状に生産される。断熱材11の板材2への取り付けは、工場で予め行ってもよいし、現場で取り付けるようにしてもよい。
【0030】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。同時に、外断熱外装パネル1Bは板材2の裏面部2dに取り付けられる断熱材11を備えているので、建物の遮熱、外断熱性能をより大きく向上させることができる。
【0031】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態に係る外断熱外装パネル1Cについて、図6を参照して説明する。第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付し、説明を省略する。図6は、第4実施形態に係る、建物外壁Wの外壁面Waに取り付けた状態の外断熱外装パネル1Cの断面図である。外断熱外装パネル1Cは、断熱材12を備えている点のみ第1実施形態の外断熱外装パネル1と異なり、これ以外は同じである。
【0032】
図6に示すように、外断熱外装パネル1Cは、板材2の外壁Wへの取り付け後に板材2の裏面部2d及び外壁面Waに付着される断熱材12を備える。断熱材12は、図6に示すように、板材2の裏面部2dと外壁面Waのすべての面を覆うように付着される。断熱材12は、例えば、現場発泡断熱材である。
【0033】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。同時に、外断熱外装パネル1Cは板材2の裏面部2d及び外壁面Waの全面に付着される断熱材12を備えているので、建物の遮熱、外断熱性能をより大きく向上させることができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0035】
1、1A、1B、1C 外断熱外装パネル
2 板材
2a 外面部
2b 側面部
2c 取付面部
2d 裏面部
3 支持手段
3a ねじ
3b 断熱部材(樹脂リング、金属製ワッシャ等)
3c 連結金具
10、11、12 断熱材
W 建物外壁
Wa 外壁面
S 太陽光、冷風、雨、雪などの熱
F 空気対流
A 空気断熱層
D 離間距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁の外壁面に設置されて前記外壁面との間に空気断熱層を形成する板材と、
前記板材を前記外壁面に対して点接触で支持する支持手段と、
を備えた外断熱外装パネル。
【請求項2】
前記支持手段は、前記板材と前記外壁面との間に配置されて前記板材と前記外壁との間の熱伝達を抑える断熱部材を含む
請求項1に記載の外断熱外装パネル。
【請求項3】
前記支持手段は、前記外壁に一端が固定されるねじ又は釘を含む
請求項1または2に記載の外断熱外装パネル。
【請求項4】
前記支持手段は、
前記板材と前記外壁面との間に挟まれて前記板材と前記外壁との間の熱伝達を抑える樹脂製のリング状の断熱部材と、
前記断熱部材の開口部に挿通された状態で前記外壁に一端が固定されるねじ又は釘と、を含む
請求項1に記載の外断熱外装パネル。
【請求項5】
前記板材は、前記外壁面に対向する、貫通孔を有する取付面部を有し、
前記支持手段は、
前記取付面部と前記外壁面との間に挟まれて前記板材と前記外壁との間の熱伝達を抑える樹脂製のリング状の断熱部材と、
前記取付面部の前記貫通孔と前記断熱部材の開口部とに挿通された状態で前記外壁に一端が固定されるねじ又は釘と、を含む
請求項1記載の外断熱外装パネル。
【請求項6】
前記支持手段は、前記板材の両側面部のいずれか一方のみに設けられている
請求項1乃至5のいずれかに記載の外断熱外装パネル。
【請求項7】
前記板材は、複数枚並列して配置され、
前記支持手段は、第1の板材に隣接して配置される第2の板材の側面部を弾性により前記第1の板材の側面部とで挟み込んで前記第2の板材を前記第1の板材に連結する連結金具を含む
請求項1乃至6のいずれかに記載の外断熱外装パネル。
【請求項8】
前記板材と前記外壁面との間に配置された断熱材をさらに備えた
請求項1乃至7のいずれかに記載の外断熱外装パネル。
【請求項9】
前記断熱材は、前記外壁面を覆うように前記外壁面に接触して設けられる
請求項8記載の外断熱外装パネル。
【請求項10】
前記断熱材は、前記外壁面側の前記板材の面を覆うように前記板材に接触して設けられる
請求項8記載の外断熱外装パネル。
【請求項11】
前記断熱材は、前記外壁面及び前記外壁面側の前記板材の面を覆うように前記外壁面及び前記板材に付着している
請求項8記載の外断熱外装パネル。
【請求項12】
前記断熱材は、現場発泡断熱材である
請求項11記載の外断熱外装パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−53436(P2013−53436A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191671(P2011−191671)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(511074578)フリージアハウス株式会社 (5)
【Fターム(参考)】