外来性分子の一過性の発現もしくは安定な発現のための発現カセットおよび発現ベクター
【課題】外来蛋白質の一過性もしくは安定な発現のために有用な、発現カセットおよび発現ベクターを提供する。
【解決手段】外来蛋白質をコードするポリヌクレオチド発現のための、プロモーター/エンハンサー、介在領域およびポリアデニル化シグナルドメインを含む発現カセット、および該カセットを含むベクター。1つの実施形態において、ヒトCMV最初期1(hCMV IE1)プロモーター/エンハンサー領域、目的のポリヌクレオチド、および改変体ヒト成長ホルモン(hGHv)ポリAシグナルドメインもしくはその改変体を含む発現カセット。
【解決手段】外来蛋白質をコードするポリヌクレオチド発現のための、プロモーター/エンハンサー、介在領域およびポリアデニル化シグナルドメインを含む発現カセット、および該カセットを含むベクター。1つの実施形態において、ヒトCMV最初期1(hCMV IE1)プロモーター/エンハンサー領域、目的のポリヌクレオチド、および改変体ヒト成長ホルモン(hGHv)ポリAシグナルドメインもしくはその改変体を含む発現カセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、発現ベクターおよび発現カセットに関し、より具体的には、生物における外来性分子の発現のための方法、組成物および系に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
核酸分子、ポリペプチド、ペプチドおよび低分子の、標的細胞および標的分子への導入は、治療用の送達系およびインビトロでの治療用分子の産生の両方において使用される。このアプローチの適用性は、宿主細胞、ならびに、細胞の分裂、分化および発現機構の分子生物学のさらなる理解と共に増加している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(要旨)
CMVプロモーターにより駆動され、改変体ヒト成長ホルモン(hGHv)遺伝子に由来するポリAドメインにより終結される転写は、このようなエレメントのうちの一方もしくはもう一方、または両方を欠く他の発現ベクターよりも効率が高いことが発見された。従って、本発明は、目的のポリヌクレオチドの発現において有用な発現カセットおよび発現ベクターを提供する。本発明の発現カセットは、効率的な転写、効率的な転写終結および転写産物の増加したmRNA安定性を提供する、調節性エレメントの組み合わせを含む。1つの実施形態において、発現カセットは、ヒトサイトメガロウイルスのプロモーター/エンハンサー、目的のクローニング部位またはポリヌクレオチド、およびhGHvポリアデニル化シグナルドメインを含む。必要に応じて、可変長介在配列が存在し得る。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
発現カセットであって、以下:
ヒトCMV最初期1(hCMV IE1)プロモーター/エンハンサー領域;
目的のポリヌクレオチド;および
改変体ヒト成長ホルモン(hGHv)ポリAシグナルドメインまたはその改変体
を含み、該hGHvポリAシグナルは、少なくとも100ヌクレオチド長であり、かつ配列AATAAAを含み、そして、該ポリA改変体は、hGHポリAシグナルドメインと少なくとも92%同一である、発現カセット。
(項目2)
前記ヒトCMV IE1プロモーター/エンハンサー領域が、配列番号1の約x1〜約x2に示されるような配列を含み、ここでx1が配列番号1の約1〜20の間のヌクレオチドを示し、そして、x2が配列番号1の約715〜720の間のヌクレオチドを示す、項目1に記載の発現カセット。
(項目3)
スプライスドナー部位およびスプライスアクセプター部位を含む可変長介在配列(VLIVS)をさらに含む、項目1に記載の発現カセット。
(項目4)
前記VLIVSが、hCMV IE1遺伝子のイントロンAを含む、項目3に記載の発現カセット。
(項目5)
前記VLIVSが、前記イントロンAの前記スプライスアクセプターとスプライスドナーとの間に欠失を有するhCMV IE1遺伝子のイントロンAを含む、項目3に記載の発現カセット。
(項目6)
前記VLIVSが、配列番号1の約x3〜x4の配列を含み、ここで、x3が配列番号1の約715〜720の間のヌクレオチドを示し、そして、x4が配列番号1の約1236〜1254の間のヌクレオチドを示す、項目5に記載の発現カセット。
(項目7)
前記目的のポリヌクレオチドが治療剤をコードする、項目1に記載の発現カセット。
(項目8)
前記ポリAシグナルドメインが、配列番号19の少なくとも100の連続するヌクレオチドを含む、項目1に記載の発現カセット。
(項目9)
前記ポリAシグナルドメインが、配列番号19を含む、項目8に記載の発現カセット。
(項目10)
DHFR遺伝子をさらに含む、項目1に記載の発現カセット。
(項目11)
項目1〜10のいずれか1項に記載の発現カセットを含む、発現ベクター。
(項目12)
項目11の発現ベクターを含む、宿主細胞。
(項目13)
項目1〜10のいずれか1項に記載の発現カセットを含む、宿主細胞。
【0004】
本発明は、ヒトCMV最初期1(hCMV IE1)プロモーター/エンハンサー領域、目的のポリヌクレオチド、および改変体ヒト成長ホルモン(hGHv)ポリAシグナルドメインもしくはその改変体を含む発現カセットを提供する。ポリAシグナル改変体は、少なくとも100ヌクレオチド長であり、かつ、配列AATAAAを含み、そして、hGHポリAシグナルドメインと少なくとも92%同一である。
【0005】
本発明はさらに、本発明の発現カセット、および本発明の発現カセットもしくは発現ベクターを含む宿主細胞を含む発現ベクターを提供する。
【0006】
本発明はさらに、ヒトCMV最初期1(hCMV IE1)プロモーター/エンハンサー領域、スプライスドナー部位およびスプライスアクセプター部位を含む可変長介在配列(VLIVS)、目的のポリヌクレオチド、および改変体ヒト成長ホルモン(hGHv)ポリAシグナルドメインまたはその改変体を含む発現カセットを提供する。ポリAシグナルドメインまたはその改変体は、少なくとも100ヌクレオチド長であり、かつ、配列AATAAAを含み、そしてhGHvポリAシグナルドメインと少なくとも92%同一である。
【0007】
本発明はまた、ヒトCMV最初期1(hCMV IE1)プロモーター/エンハンサー領域、スプライスドナー部位およびスプライスアクセプター部位を含む可変長介在配列(VLIVS)、目的のポリヌクレオチド、クローニング部位、hGHポリアデニル化領域および選択マーカーを含む発現ベクターを提供する。本発明の1つの局面において、hCMV E1プロモーター/エンハンサー領域は、クローニング部位の上流(5’)であり、そしてhGHポリアデニル化領域は、クローニング部位の下流(3’)である。
【0008】
本発明はまた、インビボにおいて目的の因子を送達する方法を含む。この方法は、被験体に対して、発現カセットを含む組成物を送達する工程を包含し、この発現カセットは、hCMV IE1プロモーター/エンハンサー領域;スプライスドナー部位およびスプライスアクセプター部位を含む可変長介在配列;目的の因子をコードするポリヌクレオチド;およびヒト成長ホルモン(hGH)ポリAシグナルドメインまたはその改変体を含む。
【0009】
本発明はさらに、発現系を含む。この発現系は、本発明の発現カセットを用いてトランスフェクトまたは形質転換された宿主細胞を含み、この宿主細胞は、目的のポリヌクレオチドを発現するような条件下で培養され、そして目的の因子を回収する。
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面および以下の説明に示される。本発明の他の特徴、対象および利点は、明細書および図面、および添付の特許請求の範囲から明らかである。本明細書中に引用される全ての参考文献は、参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、pV10ベクターのプラスミドマップである。サイトメガロウイルス最初期1(CMV IE1)プロモーター/イントロン(IVS)を、PCRにより作製し、HindIII部位およびBamHI部位にクローニングした。アンピシリン耐性遺伝子である、β−ラクタマーゼ(bla)がまた示される。
【図2】図2は、pV40のプラスミドマップである。サイトメガロウイルス最初期1(CMV IE1)プロモーター、イントロン(IVS)、長さ約600塩基対のhGHvポリアデニル化シグナルドメイン(ポリA)、およびアンピシリン耐性遺伝子であるβ−ラクタマーゼ(bla)が示される。
【図3】図3は、プラスミドpV70の模式図である。CMV IE1プロモーター、欠失接合部、ならびにスプライスドナー(SD)部位およびスプライスアクセプター部位を含むIVS、hGHvポリAシグナルドメイン、ならびにbla遺伝子が示される。欠失接合部は、BspE1’/’HpaIの平滑末端ライゲーションの結果を表す。
【図4】図4は、pXLC.1ベクターの作製の模式図である。pXLC.1ベクターは、発現ベクターpV70、および軽鎖コード配列を含むPCR産物を使用して構築した。pV70をBamHIで直線化し、PCR産物をBamHIで消化し、そして、この2つを、一緒に連結して、pXLC.1ベクターを作製した。
【図5】図5は、pXLC.2ベクターの作製の模式図である。
【図6】図6は、pV60ベクター、およびpXHCベクターの作製の模式図である。pXHCベクターは、発現ベクターpV60、および重鎖コード配列の大部分(N末端の52アミノ酸は含まれなかった)を含むPCR産物を使用して構築した。pV60をBamHIで直線化し、PCR産物をBamHIで消化し、そして、この2つを一緒に連結した。
【図7】図7は、pXHC.1ベクターの模式図である。
【図8】図8は、pXHC.3ベクターの模式図である。
【図9】図9は、pXHC.3へのdhfrカセットの追加により得た、pXHC.5ベクターの模式図である。発現カセットの制御エレメントtは、pSI(Promega,Genbank登録番号U47121)に由来し、そして、SV40プロモーター/エンハンサー、人工イントロン、およびSV40後期ポリアデニル化配列を含む。
【図10】図10は、ベクターpV80の模式図である。サイトメガロウイルス最初期1(CMV IE1)プロモーター/スプライスドナー(SD)部位およびスプライスアクセプター(SA)部位を含むイントロン(IVS)フラグメント、hGHvポリアデニル化シグナルドメイン(ポリA)、アンピシリン耐性遺伝子であるβ−ラクタマーゼ(bla)、SV40プロモーター/エンハンサー、人工イントロン、ならびにSV40後期ポリアデニル化配列が示される。
【図11A】図11Aおよび図11Bは、ベクターpV90の模式図および対応する注釈つきの配列である。図11Aは、ベクターマップである。サイトメガロウイルス最初期1(CMV IE1)プロモーター/スプライスドナー(SD)部位およびスプライスアクセプター(SA)部位を含むイントロン(IVS)フラグメント、hGHvポリアデニル化シグナルドメイン(ポリA)、アンピシリン耐性遺伝子であるβ−ラクタマーゼ(bla)、SV40プロモーター/エンハンサー、人工イントロン、ならびにSV40後期ポリアデニル化配列が示される。このベクターは、dhfr発現カセット内のNotI部位を欠く。
【図11B−1】図11Aおよび図11Bは、ベクターpV90の模式図および対応する注釈つきの配列である。図11Bは、pV90ベクターの注釈つきの配列である。図11Bにおいて、配列番号19のヌクレオチド1275〜1866は、約600ヌクレオチド長のhGHvポリAを表す。
【図11B−2】図11Aおよび図11Bは、ベクターpV90の模式図および対応する注釈つきの配列である。図11Bは、pV90ベクターの注釈つきの配列である。図11Bにおいて、配列番号19のヌクレオチド1275〜1866は、約600ヌクレオチド長のhGHvポリAを表す。
【図12】図12は、pSI−DHFRのベクターマップである。SV40プロモーターがdhfr遺伝子を駆動する。
【図13】図13は、トランスフェクトされたプールの相対特異的生産性を示すグラフである。3つのプールを、pCMV−hGHvPA−SEAPおよびpSEAP2について、そして1つはpUC18について分析した。
【図14】図14は、単離体の相対特異的生産性を示す一対のグラフである。各構築物からの上位20の単離体が、ランク順に示される。
【図15】図15は、GenBank登録番号K00470(配列番号18)の配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(詳細な説明)
本発明は、発現カセット、および発現カセットを含むベクターに関する。発現カセットは、真核生物宿主における転写を駆動し得る転写調節性領域、および転写終止領域を含む。本発明の発現カセットおよび発現ベクターは、強力な転写の開始および終止、ならびに、転写産物の増加したmRNA安定性を提供する。
【0012】
本発明は、プロモーターエレメント、および、必要に応じて、例えば、本明細書中もしくは米国特許第5,658,759号(その開示は、本明細書中に参考として援用される)のような参考文献に記載されるような、サイトメガロウイルスの任意の株に由来するエンハンサーエレメントを提供する。例えば、本発明の発現カセットにおいて有用な安定なCMV最初期プロモーター領域は、CMVが促進するβ−ガラクトシダーゼ発現ベクター、CMV(MacGregorら、Nucl.Acids Res.17:2365(1989))から得られ得る。
【0013】
本明細書中でさらに議論されるように、hGHvポリアデニル化シグナルドメインは、強力な転写終止シグナルを提供し、そして、mRNA転写物の安定性を増加させる。調節性/発現エレメントは、例えば、目的のポリヌクレオチドまたはクローニング部位(例えば、マルチクローニング部位)によってhGHvポリアデニル化シグナルドメインから分離され得る。
【0014】
本発明の1つの局面において、サイトメガロウイルス(CMV)転写調節性領域、可変長介在配列(例えば、CMVのイントロンAに由来する)、目的のポリヌクレオチド、およびポリアデニル化シグナルドメインを含むポリヌクレオチドが提供される。本発明はさらに、宿主細胞から異種性のポリペプチドを産生および回収するためのプロセスおよび発現ベクターに関する。
【0015】
別の局面において、本発明の発現カセットは、必要に応じて連結された、(i)CMV主要最初期1(IE1)プロモーター/エンハンサー領域および可変長介在配列(例えば、イントロンAの誘導体)、(ii)目的のポリヌクレオチド、および(iii)hGHvポリアデニル化シグナルドメインを含む。用語「必要に応じて連結された」とは、成分がその意図された様式(例えば、機能的に連結される)で機能することを可能にする関係にある、近位を指す。従って、例えば、目的のポリヌクレオチドに必要に応じて連結されたプロモーター/エンハンサーは、目的のポリヌクレオチドの発現が、プロモーター/エンハンサーからの発現の達成と適合する条件下で達成されるように、後者に連結される。
【0016】
本発明の特定の実施形態において、発現カセットは、配列番号1の約ヌクレオチド1〜約ヌクレオチド1867に示される配列(例えば、約1〜1865、1866、1867、1868または1869)を含む。配列番号1のヌクレオチド1〜1867に示される発現カセットは、配列番号1の約x1〜約x2に示される配列を有するCMV IE1プロモーター/エンハンサーのような多数の別個のドメインを含み、ここで、x1は、1〜20のヌクレオチドであり、そしてx2は約715〜720のヌクレオチドである(例えば、配列番号1の約1〜719)。発現カセットの別のドメインは、スプライスドナー部位およびスプライスアクセプター部位を含む可変長介在配列(VLIVS)を含む。VLIVSは、少なくとも50bp長(例えば、少なくとも100bp長、150bp長、200bp長または250bp長)であり得、かつ、当該分野で公知の任意の供給源に由来するスプライスドナーおよびスプライスアクセプターを含み得る。例えば、Varaniら、Annu Rev Biophys Biomol Struct 27:407−45(1998)およびKoning,Eur J Biochem 219:25−42(1994)を参照のこと。適切な介在ドメインは、任意の株のCMVゲノムの全てのイントロンAを含み得るか、または、スプライスアクセプター部位を含む3’配列に連結されたスプライスドナー部位を含む5’配列を含むより小さなフラグメントを含み得る。例えば、VLIVSは、配列番号1の約x3〜約x4のヌクレオチドを含み、ここで、x3は、715〜720のヌクレオチドであり、そしてx4は1236〜1254のヌクレオチドである(例えば、配列番号1の719〜1236)。CMV IE1プロモーター/エンハンサーに続く介在配列は、配列番号1に存在するものに由来する317ヌクレオチド程度のサイズで変化し得る。例えば、317ヌクレオチドは、pV40およびpV70(例えば、それぞれ、図2および3を参照のこと)に示されるようなIVS配列から欠失された。従って、本発明の別の局面において、発現カセットは、配列番号1の1〜約1254のヌクレオチドに由来する配列(例えば、CMV IE1プロモーター/エンハンサーおよび介在配列)を含む。マルチプルクローニング部位は、IVS領域の後(すなわち下流)に存在し得る(例えば、配列番号1の1255〜1272のヌクレオチドは、BamHI部位およびNotI部位を含む)。異なる制限部位またはさらなる制限部位は、当業者に公知の技術を用いて発現カセット中で遺伝子操作され得る。発現カセットはさらに、ポリAドメインを含む。
【0017】
ポリAシグナルドメインは、hGHv遺伝子に由来し、例えば、対立遺伝子ごとに、その3’UTR配列が変化し得る。hGHv遺伝子の片側の対立遺伝子は、GenBank登録番号K00470(配列番号18)に記載され、一方で、もう片側の配列は、図11Bに配列番号19として記載され、これは、配列番号18のヌクレオチド2032〜2625に対応する(図15を参照のこと)。ポリAシグナルドメインの天然に存在しない改変体は、ポリヌクレオチド、細胞または生物体に適用される技術を含む変異誘発技術によってなされ得る。hGHv遺伝子に由来するポリA改変体は、野生型のhGHvポリAシグナルドメインとは異なり、なお、シグナル転写終止に対する能力を保持し、そして/またはmRNAを安定化させる、ポリAシグナルドメインを含む。例えば、ポリアデニル化シグナルドメインとしては、配列番号18または10に示されるようなhGHvポリアデニル化シグナルドメイン配列が挙げられ得る。分子生物学の当業者はまた、この配列が、約600ヌクレオチド程度の長さである必要はないことを理解する。むしろ、少なくとも100nt(例えば、少なくとも200nt、300nt、400nt、500nt、または600nt)の連続したヌクレオチド配列を含み、hGHv遺伝子の基準のAATAAA部位を含む、任意のポリA配列ドメインが含まれる。さらに、本発明は、上記の配列から、8%まで異なる(例えば、配列番号18もしくは19、またはその別個のドメインと92%の同一性を有する)配列を包含する。例えば、配列番号1のヌクレオチド1〜1867と95%の同一性を有し、かつ配列AATAAAを含む100ntの長さのポリヌクレオチドは、転写を終結させる能力を保持する。
【0018】
本発明の別の局面において、発現カセットを含むベクターが提供される。本明細書中で使用される場合、「ベクター」は、レシピエント細胞(例えば、E.coliのような細菌)への導入の際に、自律的な複製が可能な核酸分子(DNAまたはRNAのいずれか)である。プラスミド、ウイルスおよびバクテリオファージが、ベクターの例である。発現ベクターからの「発現」のプロセスは周知であり、細胞の酵素の使用、および目的のポリヌクレオチドからの発現産物を生じるプロセスを含む。発現ベクターは、宿主細胞内にクローニングされたポリヌクレオチドの発現を媒介し得るベクターであり、この宿主細胞は、ベクターの複製または増殖に使用されるのと同じ型の細胞であっても、そうでなくともよい。多くの哺乳動物発現ベクターは、一般的な細菌(レシピエント細胞)において増殖され得るが、哺乳動物細胞(宿主細胞)において目的のポリヌクレオチドを発現するが、細菌においては、発現しない。
【0019】
本発明は、真核生物細胞(例えば、哺乳動物、および、最も具体的には、ヒト、マウス、サル、ウシ、ブタ、げっ歯類、またはヒツジの細胞)における、効率的なポリヌクレオチドの転写および翻訳を可能にし得る、ベクターの設計および使用に関する。本発明のベクターは、効率的な転写の終結とmRNAの安定性を提供する、ポリアデニル化シグナルドメインを含む上記に示されるような発現カセットを含む。
【0020】
本発明のベクターは、以下を含む:目的のポリヌクレオチドを受容するためのクローニング部位;宿主細胞において、クローニング部位に挿入されたポリヌクレオチドの転写を可能にするのに十分な転写調節性エレメント(例えば、CMV IE1プロモーター/エンハンサー領域);宿主細胞において上記ポリヌクレオチドのRNA転写物の翻訳を可能するのに十分な翻訳エレメント、および(所望される場合)宿主細胞またはベクターの増殖に使用される別のレシピエント細胞において上記ベクターの複製を可能にするのに十分な複製エレメント。本発明のベクターは、このような宿主細胞における一過性の発現か、または安定な発現を調節し得る。
【0021】
特定の実施形態において、本発明のベクターは、(1)配列番号1に示される配列;(2)配列番号1に示される配列に相補的な配列;(3)配列番号1またはその相補体に少なくとも80%(好ましくは、少なくとも90%;少なくとも95%;少なくとも98%または少なくとも99%)同一な配列;または(4)配列番号1の約ヌクレオチド1〜約ヌクレオチド1867を含み、かつ目的のポリヌクレオチドおよび/または選択マーカーを含むベクター。
【0022】
配列番号1を含むベクターは、多数の別個のドメインおよびコード領域を有する。例えば、配列番号1の約x1〜約x2に示される配列を有するCMV IE1プロモーター/エンハンサー領域(ここで、x1は1〜20のヌクレオチドであり、そしてx2は約715〜720のヌクレオチドである(例えば、配列番号1の約1〜719))が、ベクター中に存在する。本発明の発現ベクターの別のドメインは、スプライスドナーおよびスプライスアクセプターを含む可変長介在配列(VLIVS)を含む。例えば、IVSは、配列番号1の約x3〜約x4のヌクレオチドを含み、ここで、x3は715〜720のヌクレオチドを含み、そしてx4は1236〜1254のヌクレオチドを含む(例えば、配列番号1の約719〜約1236のヌクレオチド)。発現ベクターのマルチプルクローニング部位は、配列番号1の1255〜1272のヌクレオチド(例えば、BamHI部位およびNotI部位)を含む。異なる制限部位または追加の制限部位が、当業者に公知の技術を使用して発現ベクター内で遺伝子操作され得る。発現ベクターはさらに、ポリAシグナルドメインを含む。ポリAシグナルドメインは、hGHvポリAシグナルドメインであるか、または、hGHポリAシグナルドメインの他の改変体である。例えば、ポリAシグナルドメインは、配列番号19に示されるhGHvポリAシグナルドメイン配列を含む。また、1つ以上の選択マーカーが、本発明のベクター中に存在する。例えば、配列番号1は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)遺伝子(例えば、配列番号1のヌクレオチド約2568〜ヌクレオチド約3132)を含む。本発明のベクターは、上に提供されるものに加えて、追加のプロモーター/エンハンサーエレメントおよび調節性エレメント(例えば、ポリアデニル化ドメイン)を含み得る。このような追加の調節性エレメントおよびポリアデニル化ドメインは、選択マーカーまたは目的のポリヌクレオチド(例えば、5’および3’に直ぐ近接して)に隣接し得る。例えば、配列番号1を含むベクターは、配列番号1のヌクレオチド約2568〜ヌクレオチド約3132のジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)遺伝子を含む。dhfr遺伝子は、SV40プロモーター/エンハンサーエレメントおよびSV40ポリアデニル化領域(例えば、それぞれ、配列番号1のヌクレオチド約1868〜ヌクレオチド約2210およびヌクレオチド約3144〜ヌクレオチド約3440)によって隣接される。
【0023】
選択マーカーの特定の例は、メトトレキサートに対する耐性を与えるDHFRタンパク質(Wiglerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:3567(1980);O’Hareら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78
1527(1981));ミコフェノール酸に対する耐性を与えるGPFタンパク質(Mulligan & Berg,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2072(1981));アミノグリコシドG−418に対する耐性を与えるネオマイシン耐性マーカー(Colberre−Garapinら,J.Mol.Biol.150:1(1981));ハイグロマイシンに対する耐性を与えるHygroタンパク質(Santerreら,Gene 30:147(1984));およびZeocinTM耐性マーカー(Invitrogenから市販されている)のような、細胞増殖抑止薬もしくは細胞傷害薬に対する耐性を与えるタンパク質をコードするものである。さらに、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ(Wiglerら,Cell 11:223(1977))、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski,Proc.Natl.Acad.Sci.USA
48:2026(1962))およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら,Cell 22:817(1980))が、それぞれtk−細胞、hgprt−細胞、またはaprt−細胞において使用され得る。他の選択マーカーは、ピューロマイシンN−アセチルトランスフェラーゼまたはアデノシンデアミナーゼをコードする。
【0024】
2つ以上の核酸分子の文脈において、用語「同一」または%「同一性」とは、比較アルゴリズムを使用するか、または手動での整列および視覚的な検査によって決定すると、比較ウィンドウにわたる、最大の一致について比較および整列した場合に、同じであるか、または、同じであるヌクレオチドの特定の割合を有する、2つ以上の配列もしくは下位配列を指す。この定義はまた、配列の相補体(例えば、配列番号1に示される配列の相補体、または発現カセットを含むそのフラグメント)も指す。例えば、発現カセットおよびそのフラグメントは、配列番号1の一部と少なくとも約80%同一、約90%同一および約95%同一、約97%同一、約98%同一、または約99%同一である、ヌクレオチド配列同一性を有するもの(例えば、配列番号1のヌクレオチド1〜719、1〜1254など)を含む。従って、配列が、配列番号1の全長配列またはそのドメインに対して必須の配列同一性を有する場合、この配列がまた、それぞれ、本発明の発現カセットまたはドメインとして機能し得る。
【0025】
配列比較について、代表的には、1つの配列は、参照配列として機能し、この配列に対して、試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列および参照配列がコンピュータに入力され、必要に応じて下位配列の座標が指定され、そして、配列アルゴリズムプログラムのパラメータが指定される。デフォルトのプログラムパラメータを使用しても、代替のパラメータを指定してもよい。次いで、配列比較アルゴリズムは、指定されたか、またはデフォルトのプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列の%配列同一性を算出する。本明細書中で使用される場合、「比較ウィンドウ」は、25〜600、通常は約50〜約200、より通常は約100〜約150からなる群より選択される連続する位置の数のいずれか1つのセグメントに対する参照を含み、ここで、2つの配列が最適に整列された後に、1つの配列が、同じ数の連続する位置の参照配列に対して比較され得る。比較のための配列の整列方法は、当該分野で周知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)による部分相同性アルゴリズムによってか、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)による相同性アラインメントアルゴリズムによってか、Pearson
& Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似法についての検索によってか、3つのアルゴリズムのコンピュータ実行(GAP、ILEUP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA、Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WI)によってか、または、手動の整列および視覚的な検査によって行なわれ得る。
【0026】
%配列同一性(すなわち、実質的な類似性または同一性)を決定するために適切なアルゴリズムの1つの例は、BLASTアルゴリズムであり、これは、Altschul,J.Mol.Biol.215:403−410,1990に記載されている。BLAST解析を行なうためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(ワールドワイドウェブ上、ncbi.nlm.nih.gov/にある)から公的に利用可能である。このアルゴリズムは、クエリー配列中の長さWの短いワードを同定することによって、高いスコアの配列対(HSP)をまず同定することを含み、これらのワードは、データベース配列中の同じ長さのワードと整列する場合に、いくらかポジティブな値の閾値スコアTと適合するか、これを満たすかのいずれかである。「T」は、隣接するワードスコア閾値として呼ばれる。これらの最初の隣接するワードヒットは、これらを含むより長いHSPを見出すための検索を開始するための種として機能する。次いで、ワードヒットが連続するアラインメントスコアが増やされ得る距離にわたって、各配列に沿って両方向に延ばされる。連続スコアは、ヌクレオチド配列については、パラメータM(適合した残基対に対する報酬スコア;常に>0)およびN(適合しなかった残基に対する罰則スコア;常に<0)を使用して計算される。各方向におけるワードヒットの延びは、以下の場合休止される:連続アラインメントスコアが、その最大達成値から量Xだけ落ちる場合;1つ以上のネガティブなスコア付けの残基アラインメントの蓄積に起因して連続スコアが0以下になる場合;または、いずれかの配列の末端に到達した場合。BLASTアルゴリズムパラメータW、TおよびXは、アラインメントの感度および速度を決定する。1つの実施形態において、核酸配列が本発明の範囲内であるかどうかを決定するために、デフォルトとして、11のワード長(W)、10の期待値(E)、M=5、N=4および両方の鎖の比較を組み込んで、(ヌクレオチド配列のための)BLASTNプログラムが使用される。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムが、デフォルトパラメータとして、3のワード長(W)、10の期待値(E)およびBLOSUM62スコア付けマトリクス(例えば、Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915,1989を参照のこと)を使用する。
【0027】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計学的解析を実施する(例えば、Karlin,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 90:5873−5787,1993を参照のこと)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの指標は、最小サム確率(smallest sum probability)(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間での適合が偶然生じる可能性の指標を提供する。例えば、核酸は、試験核酸の参照核酸に対する比較における最小サム確率が約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、そして最も好ましくは約0.001未満である場合に、参照配列と類似するとみなされる。
【0028】
配列番号1のヌクレオチド約1〜1867に示されるポリヌクレオチド配列またはそのフラグメントに特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドもまた本発明に含まれる。句「選択的に(または特異的に)ハイブリダイズする」とは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下での、特定の参照ポリヌクレオチドに対する分子の結合、二重化、またはハイブリダイゼーションを指す。句「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、プローブがその標的配列(代表的には、核酸の複合混合物中にある)に主にハイブリダイズするが、他の配列にはハイブリダイズしない条件である。ストリンジェントな条件は、例えば、プローブの長さに依存して、配列依存性であり、かつ、環境ごとに異なる。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに対する広範なガイドは、Tijssen,Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−−Hybridization with Nucleic Probes,「Overview of principles of hybridization and the
strategy of nucleic acid assays」(1993)において見出される。一般に、ストリンジェントな条件は、規定されたイオン強度およびpHにおいて、特定の配列についての熱融点(Tm)よりも約5〜10℃低く選択される。Tmは、平衡状態で、(規定されたイオン強度、pHおよび核酸濃度下で)標的に対して相補的なプローブの50%が、標的配列にハイブリダイズする(Tmにおいて標的配列が過剰に存在する場合、平衡状態において、プローブの50%が占有される)温度である。ストリンジェントな条件は、pH7.0〜8.3において、塩濃度が、約1.0Mのナトリウムイオンより少なく(代表的には、約0.01〜1.0Mのナトリウムイオン濃度)(または他の塩)、かつ、温度が、短いプローブ(例えば、10〜約50のヌクレオチド)については少なくとも約30℃、そして長いプローブ(例えば、約50より大きいヌクレオチド)については少なくとも60℃である、条件である。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドのような撹乱物質の添加により達成され得る。選択的または特異的なハイブリダイゼーションについて、ポジティブなシグナル(例えば、本発明の核酸の同定)は、バックグラウンドのハイブリダイゼーションの約2倍である。本発明の範囲内の実質的に同一な核酸を同定するために使用される「ストリンジェントな条件」は、長いプローブについて、42℃と65℃との間の温度において、50%ホルムアミド、5×SSCおよび1% SDSを含む緩衝液中でのハイブリダイゼーション、65℃において、0.2×SSCおよび0.1% SDS中での洗浄を含む。しかし、当業者に明らかなように、ハイブリダイゼーション条件は、配列組成に依存して改変され得る。例示的な「中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、37℃における40%ホルムアミド、1M NaClおよび1% SDSの緩衝液中でのハイブリダイゼーション、および45℃における1×SSC中での洗浄を含む。ポジティブなハイブリダイゼーションは、バックグラウンドの少なくとも2倍である。当業者は、代替のハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件が、同様のストリンジェンシーの条件を提供するために利用され得ることを容易に理解する。従って、本発明の発現カセットは、高いストリンジェンシーの条件下で、配列番号18または19のヌクレオチド配列を含むssDNAにハイブリダイズするhGHvポリAシグナルドメインを含み得る。
【0029】
発現カセットは、裸の核酸構築物の形態で使用され得る。あるいは、発現カセットは、核酸ベクター(例えば、上記のような発現ベクター)の一部として導入され得る。このようなベクターとしては、プラスミドベクターおよびウイルスベクターが挙げられる。ベクターは、真核生物のゲノム配列(例えば、哺乳動物のゲノム配列またはウイルスのゲノム配列)と相同な配列を含む、発現カセットに隣接する配列を含み得る。これは、真核生物細胞またはウイルスのゲノムへのこの発現カセットの相同組換えによる導入を可能にする。例えば、ウイルス配列により隣接された発現カセットを含むプラスミドベクターは、脊椎動物(魚類、鳥類または哺乳動物を含む)の細胞にこの発現カセットを送達するために適切なウイルスベクターを調製するために使用され得る。用いられる技術は、当業者に周知である。
【0030】
用語「目的のポリヌクレオチド」は、少なくとも転写され得る核酸分子を包含することが意図される。この分子は、プロモーターに関して、センス配向であってもアンチセンス配向であってもよい。アンチセンス構築物は、周知の技術に従って、細胞における遺伝子の発現を阻害するために使用され得る。目的のポリヌクレオチドは、異種性のポリヌクレオチドを含み得る。用語異種性のポリヌクレオチドは、任意の遺伝子を包含する。異種性のポリヌクレオチドは、代表的には、発現カセットもしくは発現ベクターにおいて、そのポリヌクレオチドが作動可能に連結されている調節性エレメントと比べて外来の種に由来するか、または、同じ起源に由来する場合、その本来の形態から改変された遺伝子である。従って、プロモーターに作動可能に連結された異種性のポリヌクレオチドは、そのプロモーターが由来する供給源とはことなる供給源に由来するか、または、同じ供給源に由来する場合は、その本来の形態から改変されたプロモーターである。異種性のポリヌクレオチドの改変は、例えば、DNAを制限酵素で処理して、プロモーターに作動可能に連結され得るDNAフラグメントを作製することによって生じ得る。特定部位の突然変異誘発がまた、異種性のポリヌクレオチドを改変するのに有用である。異種性のポリヌクレオチドはまた、マーカー遺伝子(例えば、β−ガラクトシダーゼまたは緑色蛍光タンパク質をコードするもの)、または、その生成物が他の遺伝子の発現を調節する遺伝子を含み得る。従って、mRNA、tRNAおよびrRNAのための鋳型として機能するポリヌクレオチドが、この定義の中に含まれる。異種性の遺伝子は、野生型遺伝子の任意の対立遺伝子変異体であっても、変異体遺伝子であってもよい。mRNAは、天然に、またはその他の方法により、翻訳されたコード配列に付随する、転写されたが翻訳されてない、5’および/または5’の隣接領域のいくつかまたは全てを必要に応じて含む。
【0031】
目的のポリヌクレオチドは、必要に応じてさらに、転写された分子に通常付随する、関連の転写制御エレメント(例えば、転写終止シグナル、ポリアデニル化ドメインおよび下流のエンハンサーエレメント)を含み得る。目的のポリヌクレオチドは、治療用生成物のための鋳型をコードし得るか、または鋳型として機能し得、治療用生成物は、例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質またはリボ核酸であり得る。目的のポリヌクレオチドは、代表的には、酵素(例えば、β−ガラクトシダーゼ);血液誘導体;ホルモン;サイトカイン;インターロイキン;インターフェロン;TNF;増殖因子(例えば、IGF−1);可溶性レセプター分子(例えば、可溶性TNFレセプター分子);神経伝達物質またはその前駆物質;栄養性因子(例えば、BDNF、CNTF、NGF、IGF、GMF、aFGF、bFGF、NT3およびNT5);アポリポタンパク質(例えば、ApoAIおよびApoAIV);ジストロフィンまたはミニジストロフィン;腫瘍抑制タンパク質(例えば、p53、Rb、RapIA、DCCおよびk−rev);凝血関連因子(例えば、第VII因子、第VIII因子および第IX因子);あるいは、天然もしくは人工の免疫グロブリンの全てもしくは一部(例えば、FabおよびScFv、または、クローニングされたIgGの軽鎖および重鎖)のようなポリペプチド生成物をコードするDNA配列(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)である。
【0032】
目的のポリヌクレオチドはまた、アンチセンス分子の作製のための鋳型を含み得、標的細胞におけるこの転写物が、遺伝子発現または細胞内mRNAの転写を制御し得る。このような分子は、例えば、標的細胞において、細胞のmRNAに相補的なRNAに、転写され、当該分野で公知の技術に従って、そのタンパク質への翻訳をブロックし得る。特に、アンチセンス分子は、関節炎の処置における炎症性サイトカインまたは異化サイトカインの翻訳、および、これらのサイトカインにより引き起こされる組織の喪失をブロックするために使用され得る。
【0033】
目的のポリヌクレオチド配列は、代表的には、診断用途または治療用途のポリペプチドをコードする。ポリペプチドは、本発明の発現カセットを含有する種々の宿主細胞(例えば、COS細胞もしくはCHO細胞、またはその誘導体)を使用して、インビトロでバイオリアクターにおいて産生され得る。あるいは、本発明の発現カセットおよび/またはベクターは、遺伝子送達、タンパク質送達および/または遺伝子治療のために使用され得る。
【0034】
本発明はまた、毒性の因子およびポリペプチドの発現のために使用され得る。後者は特に、細胞毒素(例えば、ジフテリア毒素、シュードモナス毒素およびリシンA)、外来因子(例えば、チミジンキナーゼおよびシトシンデアミナーゼ)に対する生成物誘導性の感受性、あるいは、細胞死を誘導し得る因子(例えば、Grb3−3および抗−ras ScFv)であり得る。
【0035】
治療的用途により、疾患もしくは障害からの救済を提供し得、疾患もしくは障害を治癒し得、そして/または疾患もしくは障害の重篤度を軽減し得る用途が意味される。診断的用途は、分子の疾患プロセスに対する原因または関係性に関する情報を決定または提供し得る分子の使用、疾患もしくは障害の存在もしくは非存在を決定することを含む。診断剤は、疾患もしくは障害の軽減に直接は寄与しない。
【0036】
目的のポリヌクレオチドはまた、ワクチンとしての用途のための抗原性ポリペプチドをコードし得る。抗原性のポリペプチドまたは核酸分子は、例えば、細菌またはウイルスのような病原性生物に由来する。例えば、抗原性ポリペプチドは、病原性生物(例えば、出血性敗血症ウイルス、腎臓病細菌、ビブリオおよびフルンケル症)のゲノムもしくは遺伝子産物に存在する抗原性決定基を含む。抗原性ポリペプチドは、例えば、C型肝炎ウイルスのゲノムおよび遺伝子産物の領域から選択され得る。
【0037】
本明細書中で使用される場合、例えば、本発明のベクターもしくは発現カセット、または目的のポリヌクレオチドのような、分子もしくは組成物に対して言及する場合、「単離された」とは、分子または組成物が、インビボにおいて、またはその天然に存在する状態において関連する、タンパク質、DNA、RNAまたは他の汚染物質のような、少なくとも互いの化合物から分離されていることを意味する。従って、目的のポリヌクレオチドは、天然に関連する任意の他の成分から単離されている場合、単離されているとみなされる。しかし、単離された組成物はまた、実質的に純粋であり得る。単離された組成物は、均質な状態であり得る。単離された組成物は、乾燥/凍結されているか、または、水溶液であり得る。純度および均質性は、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)、アガロースゲル電気泳動、または高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)のような分析化学技術を使用して決定され得る。
【0038】
本明細書中で使用される場合、用語「核酸分子」および「ポリヌクレオチド」は、交換可能に使用され、そして、オリゴヌクレオチド(すなわち、短いポリヌクレオチド)を含む。これらはまた、合成および/または天然に存在しない核酸分子(例えば、ヌクレオチドアナログまたは改変骨格残基もしくは結合を含む)を指す。この用語はまた、一本鎖形態または二本鎖形態のいずれかのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのオリゴヌクレオチドを指す。この用語は、天然のヌクレオチドのアナログを含む核酸を包含する。この用語はまた、合成骨格を有する核酸様構造を包含する。本発明により提供されるDNA骨格アナログとしては、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチル−ホスホネート、ホスホラミデート、アルキルホスホトリエステル、スルファメート、3’−チオアセタール、メチレン(メチルイミノ)、3’−N−カルバメート、モルホリノカルバメート、およびペプチド核酸(PNA)が挙げられる;Oligonucleotides and Analogues,a Practical Approach,F.Eckstein編,IRL Press at Oxford University Press(1991);Antisense Strategies,Annals of the New York Academy of Sciences,Volume 600,BasergaおよびDenhardt編(NYAS 1992);Milligan(1993)J.Med.Chem.36:1923−1937;Antisense Research and Applications(1993,CRC Press)を参照のこと。PNAは、非イオン性の骨格(例えば、N−(2−アミノエチル)グリシン単位)を含む。ホスホロチオエート骨格は、WO 97/03211;WO 96/39154;Mata(1997)Toxicol.Appl.Pharmacol.144:189−197に記載される。この用語に包含される他の合成骨格としては、メチル−ホスホネート結合または代替的なメチルホスホネートとホスホジエステルとの結合(Strauss−Soukup(1997)Biochemistry 36:8692−8698)、およびベンジル−ホスホネート結合(Samstag(1996)Antisense Nucleic Acid Drug Dev 6:153−156)が挙げられる。
【0039】
本明細書中で使用される場合「組換え体」とは、インビトロにおいて合成されたか、もしくは他の方法により操作されたポリヌクレオチド(例えば、「組換えポリヌクレオチド」)、組換えポリヌクレオチドを使用して細胞もしくは他の生物系において生成物を産生する方法、または、組換えポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド(「組換えタンパク質」)を指す。組換えポリヌクレオチドは、例えば、融合タンパク質の発現のために発現カセットもしくはベクターに連結された、異なる供給源に由来する核酸分子;またはポリペプチドの誘導性もしくは構成的な発現により産生されるもの(例えば、ポリペプチドコード配列のような異種性のポリヌクレオチドに作動可能に連結された本発明の発現カセットまたはベクター)を包含する。
【0040】
代表的な発現系において、異種性のポリヌクレオチドからのポリペプチドの産生は、調節されていないか、または、異種性のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの上流に作動可能に連結されている転写プロモーターにからの転写を調節することによって調節されているかのいずれかである。しかし、この調節は、適切な転写の終結およびmRNA安定性を提供するために、適切に下流に存在しなければならない。本発明の1つの局面において、ヒト成長ホルモン改変体(hGHv)ポリアデニル化(ポリA)シグナルドメインは、本発明の発現カセットまたはベクター中に存在する目的のポリヌクレオチドの下流(3’)に提供される。hGHvポリAシグナルドメインは、ヒト成長ホルモンの遺伝子配列番号に由来する配列を含む。hGHvポリアデニル化シグナルドメイン配列は、強力な転写の終結を提供し、かつ、真核生物細胞において、mRNAの増加した安定性を提供する。このhGHvポリアデニル化シグナルドメインは、CMVプロモーター/エンハンサーを利用し得るものを含む、先行技術の発現カセットおよび/またはベクターに対して、特有の利点を提供する。
【0041】
翻訳エレメントがまた存在し得、これは、RNA転写物をタンパク質に翻訳させるのに必須の特定の配列(例えば、リボソーム結合部位および開始コドン)を包含することが意図される。翻訳エレメントはまた、コンセンサス配列、リーダー配列、スプライスシグナルなどを含み得、これらは、翻訳の程度を促進もしくは増強するか、または、発現された産物の安定性を増加するために機能する。例えば、hGHvポリアデニル化シグナルドメインは、増加したmRNA安定性を提供する。本発明のベクターは、付属的な転写領域(例えば、イントロン、ポリアデニル化シグナル、Shine/Dalgamo翻訳シグナルおよびKozakコンセンサス配列)を保有し得る(Shineら、Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)71:1342−1346(1974);Kozak,Cell 44:283−292(1986))。
【0042】
用語「複製エレメント」は、レシピエント細胞においてベクターの複製を可能にするのに必須の特定の配列(例えば、複製起点)を包含することが意図される。一般に、このようなベクターは、レシピエント細胞においてベクターの自立的かつ安定な複製を可能にするのに十分な、少なくとも1つの複製起点を含む。
【0043】
本発明のベクターの選択および維持を容易にするために、1つ以上の選択マーカー(例えば、抗生物質に対する耐性、または、最低量の培地中でか、もしくは、毒性代謝物の存在下において増殖する細胞能を与えるポリヌクレオチド)が、ベクター内に含められ得る。
【0044】
さらなる実施形態において、本発明は、上記の構築物(例えば、本発明の発現カセットまたはベクター)を含む宿主細胞に関する。本発明の発現カセットは、所望の目的のポリヌクレオチドを発現するように、宿主細胞をトランスフェクトするか、または、宿主細胞を形質転換することによって、宿主細胞を組換え的に修飾するために使用され得る。本明細書中で使用される場合、用語「組換え的に修飾される」とは、本発明の発現カセットまたはベクターを、生細胞または発現系に導入することを意味する。通常、目的のポリヌクレオチドを含む発現カセットが、ベクター(例えば、プラスミド)中に存在する。発現系は、本明細書中に記載されるような、その生成物が発現されるべき目的のポリヌクレオチドが導入されている、生きている宿主細胞を含む。
【0045】
宿主細胞は、発現カセット(発現カセットを含むベクターを含む)が、増殖され得、かつ、生成物をコードするポリヌクレオチドが発現され得る細胞である。宿主細胞はまた、主体の宿主細胞またはその誘導体の任意の子孫を含む。複製の間に生じる変異が存在し得るので、全ての子孫は、親細胞と同一であるわけではないことが理解される。しかし、このような子孫は、用語「宿主細胞」が使用される場合、含められる。本発明において有用な宿主細胞としては、細菌細胞、真菌細胞(例えば、酵母細胞)、植物細胞および動物細胞が挙げられる。例えば、宿主細胞は、哺乳動物細胞のような高等真核生物細胞であっても、酵母細胞のような下等真核生物細胞であってもよく、そしてまた、宿主細胞は、細菌細胞のような原核細胞生物細胞であってもよい。構築物の宿主細胞への導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介性のトランスフェクション、またはエレクトロポレーションにより達成され得る(Davis,L.,Dibner,M.,Battey,I.,Basic Methods in Molecular
Biology(1986))。適切な宿主の代表例として、以下が言及され得る:酵母細胞のような真菌細胞;Drosophila S2およびSpodoptera Sf9のような昆虫細胞;CHO、COSまたはBowes黒色腫のような動物細胞;植物細胞など。適切な宿主の選択は、本明細書中の教示から、当業者の技術範囲内であると判断される。
【0046】
本発明において使用するための宿主細胞は、真核生物宿主細胞(例えば、哺乳動物細胞)である。本発明の1つの局面において、宿主細胞は、細胞培養において増殖するように適合された哺乳動物の産生細胞である。産業において一般に使用されるこのような細胞の例は、CHO細胞、VERO細胞、BHK細胞、HeLa細胞、CV1細胞(Cos細胞;Cos−7細胞を含む)、MDCK細胞、293細胞、3T3細胞、C127細胞、骨髄腫細胞株(特にマウス)、PC 12細胞およびW138細胞である。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、いくつかの複合組換えタンパク質(例えば、サイトカイン、凝固因子および抗体)の産生のために広く使用される(Braselら,Blood 88:2004−2012(1996);Kaufmanら,J.Biol Chem 263:6352−6362(1988);McKinnonら,J Mol Endocrinol 6:231−239(1991);Woodら,J.Immunol 145:3011−3016(1990))。ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)欠失変異細胞株(Urlaubら,Proc Natl Acad Sci USA 77:4216−4220(1980))は、最適のCHO宿主細胞株である。なぜならば、有効なDHFR選択が可能であり、かつ、増幅可能な遺伝子発現系が、これらの細胞における高レベルの組換えタンパク質発現を可能にするからである(Kaufman,Meth Enzymol 185:527−566(1990))。さらに、これらの細胞は、接着培養物または懸濁培養物として扱いやすく、比較的良好な遺伝的安定性を示す。CHO細胞およびこれらにおいて発現される組換えタンパク質は、広範に特徴付けられており、そして、監督官庁によって、臨床用製造における用途について認可されている。さらに、上記の細胞株のいずれかに由来し、所望の表現型を有する宿主細胞がまた使用され得ることが意図される。例えば、派生の宿主細胞としては、(例えば、ポジティブ選択および/またはネガティブ選択のプロセスにより)所望の表現型について選択的に培養されたCHO細胞(例えば、DG44細胞株)が挙げられる。
【0047】
本発明の1つの局面において、目的のポリヌクレオチドによりコードされる因子のインビトロ産生のための発現系が提供される。本明細書において議論されるように、目的のポリヌクレオチドは、薬学的、医療的、栄養的および/または産業的に価値のあるポリペプチドをコードし得る。例えば、目的のポリヌクレオチドは、ポリペプチドベースの薬物をコードし得る。代表的に、このようなポリペプチドは、細胞外生成物として発現される。例えば、本発明の発現カセットおよび/またはベクターを使用して産生され得るポリペプチドとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:Flt3リガンド、CD40リガンド、エリスロポエチン、トロンボポエチン、カルシトニン、Fasリガンド、NF−κBのレセプターアクチベーターに対するリガンド(RANKL)、TNF関連アポトーシス誘導性リガンド(TRAIL)、ORK/Tek、胸腺支質由来リンフォポエチン(lymphopoietin)、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子、肥満細胞増殖因子、幹細胞増殖因子、上皮増殖因子、RANTES、成長ホルモン、インシュリン、インシュリノトロピン(insulinotropin)、インシュリン様増殖因子、甲状腺ホルモン、インターフェロン(例えば、インターフェロン−β)、神経成長因子、グルカゴン、インターロイキン1〜18、コロニー刺激因子、リンフォトキシン−β、腫瘍壊死因子、白血病阻害因子、オンコスタチン−M、細胞表面分子ElkおよびHekに対する種々のリガンド(例えば、eph関連キナーゼすなわちLERKSに対するリガンド)、ならびに、抗体軽鎖または重鎖。
【0048】
上記のタンパク質のいずれかに対するレセプターはまた、本発明の方法および組成物を使用して発現され得、これらとしては、腫瘍壊死因子レセプター(p55およびp75と呼ばれる)、インターロイキン−1レセプター(1型および2型)、インターロイキン−4レセプター、インターロイキン−15レセプター、インターロイキン−17レセプター、インターロイキン−18レセプター、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子レセプター、顆粒球刺激因子レセプター、オンコスタチン−Mおよび白血病阻害因子に対するレセプター、NF−κBに対するレセプターアクチベーター(RANK)、TRAILに対するレセプター、BAEFレセプター、リンフォトキシンβレセプター、TGFレセプターI型およびII型、ならびに、Fasもしくはアポトーシス誘導性レセプター(AIR)のようなデスドメイン(death domain)を含むレセプターの両方の形態が挙げられる。
【0049】
本発明の発現カセットおよび/またはベクターを使用して発現され得る他のタンパク質としては、分化抗原のクラスター(CDタンパク質と呼ばれる)(例えば、Leukocyte Typing VI(Proceedings of the VIth International Workshop and Conference;Kishimoto,Kikutaniら編;Kobe,Japan,1996)において開示されるもの)、または、その後のワークショップで開示されたCD分子が挙げられる。このような分子の例としては、CD27、CD30、CD39、CD40およびこれらに対するリガンド(CD27リガンド、CD30リガンドおよびCD40リガンド)が挙げられる。これらのいくつかは、TNFレセプターファミリーのメンバーであり、そしてまた、41BBおよびOX40を含む;このリガンドは、しばしば、TNFファミリーのメンバーであり(41BBリガンドおよびOX40リガンドであるので);従って、TNFファミリーおよびTNFRファミリーのメンバーはまた、本発明を使用して発現され得る。
【0050】
酵素的に活性なポリペプチドがまた、本発明に従って発現され得る。例としては、メタロプロテイナーゼ−ジスインテグリンファミリーメンバー、種々のキナーゼ、グルコセレブロシド、スーパーペルオキシドジスムターゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーター、第VIII因子、第IX因子、アポリポタンパク質E、アポリポタンパク質A−1、グロビン、IL−2アンタゴニスト、α−1アンチトリプシン、TNF−α変換酵素(TACE)、および多数の他の酵素が挙げられる。酵素的に活性なタンパク質のリガンドはまた、本発明のカセットおよびベクターを使用して発現され得る。
【0051】
本発明の組成物および方法はまた、他の型の組換えタンパク質および組換えポリペプチド(免疫グロブリン分子またはその一部およびキメラ抗体(例えば、マウス抗原結合領域に結合したヒト定常領域)を含む)またはそのフラグメントの発現に有用である。免疫グロブリン分子をコードするDNAを加工して、組換えタンパク質をコードするDNA(例えば、単鎖抗体、親和性の増強した抗体、または他の抗体ベースのポリペプチド(例えば、Larrickら,Biotechnology 7:934−938(1989);Reichmannら,Nature 332:323−327(1988);Robertsら,Nature 328:731−734(1987);Verhoeyenら,Science 239:1534−1536(1988);Chaudharyら,Nature 339:394−397(1989)を参照のこと))を生じ得る、多数の技術が公知である。クローン化したヒト化抗体としては、リンフォトキシン−βレセプターおよびインテグリン(例えば、VLA−1、VLA−4およびαvβ6)に特異的に結合するものが挙げられる。このような抗体は、アゴニストであってもアンタゴニストであってもよい。
【0052】
種々の融合タンパク質がまた、本発明の方法および組成物を使用して発現され得る。このような融合タンパク質の例としては、免疫グロブリン分子の一部との融合物として発現されるタンパク質、ジッパー部分を有する融合タンパク質として発現されるタンパク質、ならびにサイトカインおよび増殖因子(例えば、GM−CSFおよびIL−3、MGFおよびIL−3)の融合タンパク質のような新規な多機能タンパク質が挙げられる:WO 93/08207およびWO 96/40918は、CD40Lと呼ばれる分子の種々の可溶性オリゴマー形態の調製を記載し、これらは、それぞれ、免疫グロブリン融合タンパク質およびジッパー融合タンパク質を含み;これらにおいて議論される技術は、他のタンパク質に適用可能である。
【0053】
一旦目的のポリヌクレオチドが発現されると、発現産物(例えば、タンパク質またはポリペプチド)は、当該分野で標準的な技術を使用して精製され得る。例えば、目的のポリヌクレオチドが精製タグを含む融合ポリペプチドをコードする場合、このポリペプチドは、このタグに特異的に結合する抗体を使用して精製され得る。1つの局面において、タグ分子をコードするオリゴヌクレオチドは、所望のポリペプチドをコードする目的のポリヌクレオチドの5’末端または3’末端において連結されている;このオリゴヌクレオチドは、ポリHis(例えば、6His)または他の「タグ」(例えば、既存の市販の抗体について、FLAG、HA(ヘマグルチニンインフルエンザウイルス)またはmyc)をコードし得る。このタグは、代表的に、ポリペプチドの発現の際に、ポリペプチドに融合し、そして、宿主細胞からの所望のポリペプチドの親和性精製のための手段として機能し得る。親和性精製は、例えば、親和性マトリクスとしてタグに対する抗体を使用するカラムクロマトグラフィーによって達成され得る。必要に応じて、タグは、その後、タンパク質分解性の切断のような種々の手段によって精製したポリペプチドから除去され得る。
【0054】
本発明の発現カセットおよびベクターは、宿主細胞への目的のポリヌクレオチドの安定な移送を提供するために使用され得る。安定な移送とは、目的のポリヌクレオチドが、宿主において継続的に維持されることを意味する。本発明の発現カセットまたはベクターはまた、宿主細胞内での目的のポリヌクレオチドの一過性の発現を提供し得る。一過的にトランスフェクトされた宿主細胞は、細胞の複製および増殖の間に、外来性DNAを欠失する。
【0055】
本発明の発現カセットは、処置の必要なヒトまたは動物に治療剤を送達するために使用され得る。あるいは、本発明の発現カセットは、被験体(例えば、ヒト)へのワクチン目的のため、特に、魚、ブタ、ウマ、ウシ、イヌおよびネコの種のような食用の動物を含む、家畜動物のワクチン摂取のために、インビボにおいて免疫原性ポリペプチドをコードする因子を送達するために使用され得る。
【0056】
本発明の発現カセットは、代表的に宿主細胞のゲノムと相同な隣接配列を含む、裸の核酸構築物として直接投与され得る。脊椎動物細胞による裸の核酸構築物の取込みは、微粒子銃形質転換およびリポフェクチンを含むいくつかの公知の技術によって増強される。
【0057】
あるいは、発現カセットは、プラスミドベクターまたはウイルスベクターを含む、ベクターの一部として投与され得る。
【0058】
代表的には、発現カセットまたはベクターは、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と合わせられて、薬学的組成物を生成する。適切なキャリアおよび希釈剤としては、等張の生理食塩溶液(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水を含む)が挙げられる。発現カセットまたはベクターを含む組成物は、例えば、筋肉内投与を含む種々の型の投与のために処方され得る。
【0059】
発現カセットまたはベクターを含む組成物が、注射可能な形態で使用される場合、この組成物は、代表的に、処置されるべき部位における直接注射のための注射可能処方物について、薬学的に受容可能であるビヒクルと混合される。薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤は、例えば、滅菌等張溶液であり得る。発現カセットまたはベクターを含む組成物はまた、経口的に活性な形態で処方され得る。
【0060】
実際の処方は、当業者により容易に決定され得、そして、投与される物質の性質および投与経路に依存して変化する。
【0061】
使用される物質の用量は、種々のパラメータによって、特に、使用される物質、処置されるべき被験体の年齢、体重および状態、使用される投与経路、ならびに、必要とされる臨床レジメンによって、調節され得る。医師は、任意の特定の被験体および状態に必要とされる投与経路および投薬量を決定し得る。
【実施例】
【0062】
(pV10ベクターの構築)
pV10の構築のさらなる詳細を、図1に概説する。ゲノムDNAを、ヒトサイトメガロウイルス株AD169(ATCC番号VR−538)に感染したヒト2倍体線維芽細胞から単離し、これを鋳型として使用して、CMV最初期遺伝子1プロモーター/エンハンサー領域(CMV IE1 P/E)(CMV IE1遺伝子の5’UTRの詳細については、図11(B)(配列番号1)を参照のこと)をPCRにより増幅した。プロモーターを、5’末端にHindIII部位を含むプライマー
【0063】
【数1】
および3’末端にBamHI部位を含むプライマー
【0064】
【数2】
を使用して増幅した。制限部位に先行する末端の「t」ヌクレオチドは、制限酵素消化を促進するためにオリゴヌクレオチド設計に含められ、クローニング工程において排除される。
【0065】
全てのPCR反応を、DNAエンジンPTC−200 Pelier Thermal
Cycler(MJ Research,Watertown,MA)にて行なった。合計反応容量は、100μl(1×NEB Ventポリメラーゼ緩衝液(10mM KCl、20mM Tris、25℃にてpH8.8、10mM (NH4)SO4、2mM MgSO4、0.1% Triton X−100)、2.5mM dNTP、2単位のVent DNAポリメラーゼ(New England Biolabs,Beverly,MA)、1μgの各プライマー、鋳型としてCMV感染細胞から単離した1μgのゲノムDNA)であった。反応条件は以下の通りであった:99℃で1分間、55℃で30秒間、75℃で1.5分間を15サイクル。得られたフラグメントを、制限酵素BamHIおよびHindIII(New England Biolabs)で消化し、BamHIおよびHindIIIで消化したクローニングベクターpUC19にサブクローニングした。インサートの配列解析を決定し、これは、クローニングされたCMV IE1プロモーター/エンハンサー領域の公開された配列と一致した。
【0066】
(pV40ベクターの構築)
pV40の構築を図2に概説する。ポリAシグナルを含むhGHv遺伝子の3’UTRを、ヒト線維芽細胞から単離したゲノムDNAからPCRにより増幅した。5’プライマーの(+)鎖(TTTTGGATCCCTGCCCGGGTGGCATCC;配列番号20)は、末端にBamHI制限部位を含み、そして、3’プライマーの(−)鎖は、末端にEcoRI部位を含んだ(TTTTGAATTCATGAGAGGACAGTGCCAAGC;配列番号21)。PCR条件は、pV10の構築について記載したのと同じであった。得られたPCRフラグメントを、BamHIおよびEcoRIで消化し、ゲル精製し、そして、BamHIおよびEcoRIで消化したベクターpV10に連結した。得られたプラスミド(pV40と命名)を、制限酵素分析により評価した。その後の配列決定により、少数のヌクレオチドが、このhGHv遺伝子の3’UTR(配列番号19)とGenBank登録番号K00470において公開されたhGHv遺伝子配列(配列番号18)との間で異なることが示された。少なくともいくつかの変化が、対立遺伝子の改変によるものである。
【0067】
(pV70ベクターの構築)
pV40ベクターを、BspEIおよびHpaIで消化して、イントロンA領域の317ヌクレオチド部分(IVS)を除去した(例えば、図2および3を参照のこと)。pV40のdhfrコード領域のBspEI−HpaIへの平滑末端ライゲーションにより、pV60を作製した。pV70発現ベクターは、転写を調節するために、ヒトサイトメガロウイルス最初期1(hCMV IE1)プロモーター/エンハンサー領域を含む。このベクターはまた、hCMV IE1 5’UTRおよびイントロンAを含み、このイントロンは、317塩基対の欠失を含む。転写の終結のために、ベクターは、ヒト成長ホルモン改変体ポリアデニル化(hGHvポリA)領域、配列番号19を含む。pV40、pV60およびpV70の構築は以下に詳説され、そして、図面にさらに記載される。
【0068】
(A.pXLC.1の作製)
抗体に対する軽鎖コード配列を含むPCR産物をBamHIで消化して、発現ベクターpV70における固有のBamHIにクローニングした(図3)。軽鎖コード領域を、hCMV IE1イントロンの3’末端の5’UTR配列と、hGHvポリA領域の5’末端との間の固有のBamHIに挿入した。このプラスミドをpXLC.1と名付けた。図4は、pXLC.1ベクターの作製の概略図を示す。
【0069】
(B.neoカセット−pXLC.2の追加)
ネオマイシントランスフェラーゼ(neo)発現カセットを、選択マーカーとして機能するように、pXLC.1に導入した(図5)。neoカセットを、市販のpGT−N28と呼ばれるプラスミド(New England Biolabs、カタログ番号307−28)からBamHI/EcoRIフラグメントとして調製した。このプラスミドにおいて、neo遺伝子は、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターにより駆動され、PGKポリアデニル化部位において終結される。neoカセットの5’末端にあるBamHI部位を、以下のアダプターオリゴ:
【0070】
【数3】
を使用して、NarI末端に変換した。
【0071】
これらのリンカーを用いて、新しいEcoRI部位をまた追加した。このアダプターをまずBamHI/EcoRI切断したneoフラグメントに連結し、この変換されたNarI/EcoRIフラグメントを、次いで、NarIおよびEcoRIで消化したpXLC.1にクローニングした。このようにして、neo発現カセットを、プラスミドの軽鎖配列の3’末端に挿入した。このプラスミドを、pXLC.2と名付けた(図5)。
【0072】
(重鎖発現ベクターpXHC.5の構築)
(A.重鎖のRT−PCR)
重鎖を、5’PCRプライマー:
【0073】
【数4】
を使用するRT−PCR反応から増幅し、この配列において、斜体の配列は、BamHI部位を有する追加されたリンカー領域であり、そして、下線の塩基は、重鎖コード配列内の第2のメチオニンに対応する。使用した3’PCRプライマー:
【0074】
【数5】
はまた、BamHI部位を有する追加されたリンカー領域(斜体)、および終止コドンを含む重鎖コード配列に対応する配列(下線)を含む。予想された1268塩基対のPCR産物を得た。
【0075】
(B.pXHCの構築)
使用した5’PCRプライマーは、PCR産物に含まれるコード領域の開始ATGではなく、コード領域の第2のATGコドンにハイブリダイズしたので、重鎖コード領域は不完全であった。不完全な重鎖を含むBamHIフラグメントを、プラスミドpV60にクローニングした(図6)。このベクターは、イントロン内の欠失の部位にdhfrコード領域を含むこと以外は、pV70(上記)と同一である。重鎖コード領域を、hCMV IE1イントロンの3’末端にある5’非翻訳配列と、hGHv改変体ポリA領域の5’末端との間の、固有のBamHI部位に挿入した。不完全な重鎖を有するこのプラスミドを、pXHCと名付けた。
【0076】
(C.重鎖コード配列−pXCH.1の完成)
重鎖配列から欠失しているコード領域をpXHC内に挿入して、pXHC.1と命名されたプラスミドを作製した(図7)。これを行なうために、鋳型として抗体に対するコード配列を含むプラスミドを使用するPCRによって、フラグメントを作製した。使用した5’CRプライマーは、以下の通りであった:
【0077】
【数6】
斜体の配列は、BamHI部位のpXHC配列5’に対応し、太字の配列は、重鎖配列内の開始コドンより2塩基前から始まる配列に対応する。使用した3’プライマーは、CTGAGGAGACGGTGACCAGGGTCCCTTGGCCCC(配列番号9)であった。このプライマーは、第1エキソンの末端、重鎖可変領域にハイブリダイズする。予測されたように、445塩基対のPCR産物が得られ、PstIおよびStuIで切断した。PstII−StuIフラグメントを、PstIおよびStuIで切断したpXHCにクローニングして、pXHC.1を得た。
【0078】
(D.イントロンのdhfr−pXHC.3の除去)
pXHC.1は、hCMV IE1イントロン内にdhfr遺伝子を含んだ。この構成で見出される増幅の潜在的な問題に起因して、dhfr遺伝子をイントロンから除去し、そして、発現カセットを、重鎖カセットの3’に挿入した(図8)。第1の工程は、イントロンからのdhfr遺伝子の除去であった。この工程を、PstI/EcoRIフラグメントとしてpXHC.1から重鎖コード配列を切断し、同じ酵素を用いて切断したpXLC.1プラスミドにクローニングすることによって達成した。このクローニング工程は、単に、プラスミド内の重鎖と軽鎖とを交換した。得られたプラスミドは、dhfr遺伝子を含むイントロンが、pXLC.1について上述したような欠失を有するイントロンにより置き換えられていることを除いて、pXHC.1と同一であった。この重鎖プラスミドを、pXHC.3と名付けた(図8)。
【0079】
(E.dhfrカセット−pXHC.5の挿入)
dhfr構成の変更における第2の工程は、重鎖発現カセットの3’へのdhfr発現カセットの挿入であった(図9)。dhfr発現カセットは、BglII/BamHIフラグメント上のプラスミドpSI−DHFRに由来し、SV40初期プロモーター、dhfr遺伝子およびSV40ポリA領域を含む。このフラグメントを、以下のアダプターオリゴを使用して、pXHC.3のhGHvポリA領域の3’末端に位置するEcoRI部位にクローニングした:
【0080】
【数7】
このアダプターをまず、EcoRI切断したプラスミドに連結し、次いで、BglII/BamHI dhfrカセットをこのアダプタープラスミドに連結した。このプラスミドを、pXHC.5と名付けた(図9)。
【0081】
(pXLC.2およびpXHC.5の特徴づけ)
両方のプラスミドを、制限酵素を使用して分析し、挿入されたフラグメントの存在および配向を確認した。さらに、プラスミドのコード領域を配列決定して、PCRまたはクローニングの工程の間に変異が蓄積されていないことを確認した。
【0082】
機能的なneo選択マーカーの存在を、pXLC.2をCHO細胞にトランスフェクトし、G418に対する耐性を示すことによって確認した。二重選択を行なう能力は、pXLC.2プラスミドおよびpXHC.5プラスミドを、血清を含まない、アダプターDG44 CHO宿主に同時にトランスフェクトした場合に示された。二重選択培地(α−MEM 10% dFBS + 400mg/ml G418)において、同時トランスフェクションからコロニーが芽生えた。同じ条件下で、いずれかの選択単独(α−MEMまたは400mg/ml G418)は、トランスフェクトされていない細胞を殺傷し得た。
【0083】
(ベクターの構築:pV80ベクターおよびpV90ベクター)
pV80を、重鎖発現ベクターpXHC.5から作製した(図10)。重鎖コード配列を、BamHIを使用してpXHC.5から欠失させた。骨格を、BamHI部位において連結して再度環状にした。
【0084】
pV80ベクターに対して2つの変更を行なって、pV90を作製した(図11)。pV80構築物の位置3166(dhfrコード領域の末端、添付の配列を参照のこと)において見出されるNotI部位を破壊した。このことを達成するために、プラスミドをNotIで消化し、そして、Klenowポリメラーゼを使用して、突出を「埋めた」。結果として、再連結されたプラスミドは、位置3166のNotI部位がなくなった。次いで、新しいNoI部位を、BamHIでベクターを消化し、そして、それ自体と以下の14マー:GATCCGCGGCCGCG(配列番号12)とをアニーリングすることによって作製されるNotIリンカーを導入することにより、クローニング部位において作製した。互いにアニーリングすると、リンカー配列は以下のようになる:
【0085】
【数8】
このクローニング工程は、NotI部位のいずれかの側にBamHI部位を再現した。これらのBamHI部位は、このベクターを用いて作製された安定な細胞株の遺伝学的分析において有用であり得る。pV90のクローニング部位の配列を、配列決定解析により確認した。
【0086】
pV80ベクターにおいて、ポリヌクレオチド(例えば、コード配列)が、BamHI部位
【0087】
【数9】
にクローニングされ得る。太字の配列がBamHI部位を表す。pV90ベクターにおいて、ポリヌクレオチド(例えば、コード配列)が、BamHI部位またはNotI部位
【0088】
【数10】
にクローニングされ得る。ここで、太字の配列はBamHI部位を表し、そして、下線の配列はNotI部位を表す。最適な結果について、NotI部位を使用する場合、「C」は、Kozak配列(例えば、GGATCC GCGGCCGC C ATG(配列番号17))に最も良く適合するために、PCRプライマーの開始コドンより前に追加されるべきである。
【0089】
(pV80およびpV90における制限部位)
pV80およびpV90は、NotI制限部位を除いて、同一である:pV80は、位置3166(dhfrコード領域の末端)に単一のNotI部位を有し、そしてpV90は、位置1260(クローニング部位)に単一のNotI部位を有する。
【0090】
2つ以下が見出された一般的な制限部位としては、表1に列挙されるものが挙げられる。
【0091】
【表1】
以下の一般的な酵素切断部位は見出されなかった:
【0092】
【表2】
。
【0093】
(レポーター遺伝子のクローニング)
CMV IE1、イントロンAフラグメントおよびhGHvポリA構築物を含む発現カセット/ベクターを、市販のSV40ベースの高発現ベクターと比較した。
【0094】
分泌されたアルカリホスファターゼ(SEAP)を、プラスミドの比較のためのレポーターとして使用した。SV40ベースの発現ベクターである、pSEAP2−コントロール(カタログ番号6052−1,Clontech)は、SV40初期プロモーターおよびSV40エンハンサーの制御下でSEAPを発現する。SEAPをコードする配列の次に、SV40後期ポリアデニル化シグナルが続き、真核生物細胞におけるSEAP転写物の適切かつ効率的なプロセシングを保証する。MCSの上流に位置する隣接するポリアデニル化部位および転写ポーズ部位から構成される合成転写ブロッカー(TB)は、バックグラウンドの転写を減らす。このベクターは、SEAPの発現効率を増加することによってSEAPの感度を改善するか、または、ベクターの利用性を向上させる多数の特徴を組み込む。これらとしては以下が挙げられる:改善されたKozakコンセンサス転写開始部位;いくつかの遺伝子および/または細胞型において潜在性のスプライシングを生じ、そして、発現を減少させ得る、SV40の小さなtイントロンの除去;代表的に、mRNAレベルの5倍の増加をもたらす、SV40の初期ポリアデニル化シグナルから後期ポリアデニル化シグナルへの切り替え;拡張されたマルチプルクローニング部位(MCS);コンパクトなプラスミドのサイズ;ならびにSEAP mRNAの3’非翻訳領域に由来する外来性配列の除去。Genbank登録番号U89938。
【0095】
pCMV−hGHvPA−SEAPプラスミドを作製するために、PCRによりpSEAP2−コントロールプラスミドからSEAPをコードする配列を抽出し、これをpV100ベクターにクローニングした。pV110プラスミドは、pV90の派生物である(dhfr発現カセットがなく、ポリリンカーが異なるが、その他は同じである)。pCMV−hGHvPA−SEAPプラスミド構築物を、配列決定により評価した。
【0096】
トランスフェクションに使用した宿主は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)欠失チャイニーズハムスター卵巣細胞株DG44(Urlaubら、Cell 33,405−412(1983))であった。CMV−SEAPおよびpSEAP2−コントロールレポータープラスミドを、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)をコードし得るプラスミドと共に同時にトランスフェクトし、その結果、安定なトランスフェクト体を(pSI−DHFR.2、図12)について選択し得る。各トランスフェクションは、50μgのレポータープラスミドおよび5μgのpSI−DHFR.2を含んだ。全てのDNAを、Megaprepキット(Qiagen)により調製した。トランスフェクションの前に、DNAをETOH沈殿し、70% EtOHで洗浄し、乾燥させ、HEBS(20mM
Hepes、pH7.05、137mM NaCl、5mM KCl、0.7mM Na2HPO4、6mMデキストロース)中に再懸濁し、トランスフェクションの前に定量した。ネガティブコントロールは、レポーターコントロールとしてpUC18(ATCC番号37253)を含み、そして、トランスフェクションコントロールとしてはDNAなしのトランスフェクションを含んだ(表3)。
【0097】
細胞およびDNAを、0.28kVおよび950mFにて0.4cmのキュベット(BioRad)を使用して、0.8mlのHEBS中でのエレクトロポレーションによりトランスフェクトした。5E6細胞を各トランスフェクションに使用した。エレクトロポレーションのパルスの後、細胞を、室温にて5〜10分間キュベット内でインキュベートさせた。次いで、これらを、ヌクレオシドを含むαMEMおよび10% dFBS 10mlを含む遠心チューブに移し、1K RPMで5分間ペレット化した。再懸濁したペレットを、10%dFBSを含み、ヌクレオシドを含まないアルファMEM中、6ウェルプレート内に撒き、コロニーが形成するまで、加湿したインキュベーター内で、36℃にて5% CO2でインキュベートした。
【0098】
【表3】
トランスフェクションの約2週間後、pSIDHFR.2プラスミドのみを含むトランスフェクション中に、コロニーが形成した。安定なトランスフェクト体を、プールまたは単離体のいずれかとして分析した。特定の生産性を、アッセイにおいて評価した。このアッセイにおいて、培地を、新しい培地と交換し、そして24時間後に、培地をサンプリングし、細胞を計数した。24時間のアッセイの終わりに、生成物の力価を細胞数に対して規準化し、そして、生産性を細胞1個あたりのSEAP活性として表した。
【0099】
(SEAPアッセイ)
馴化培地を、Great EscAPeTM SEAP Reporter System 3(Clontech)を使用して分析した。このアッセイは、馴化培地においてSEAP活性を検出するために、蛍光基質を使用する。このキットを、以下の例外を除いて、製造業者の指示書に従って、96ウェル形式において使用した。キットのアッセイ緩衝液を、1.5M ジエタノールアミン、0.75mM MgCl2、15mM L−ホモアルギニンおよび10% Emerald II(カタログ番号9761、Applied Biosystems)で置き換えた。全ての標準およびサンプルを、添付の希釈緩衝液ではなく、新しい培地に希釈した。60分後に1回の読み取りを行なう代わりに、複数の読み取りを、10〜20分間隔で行い、これを使用して、1分あたりの相対蛍光単位(RFU/分)としてSEAP活性を表した。プレートリーダー(Cytofluor
II,PerSeptive Biosystems)に使用した発光フィルターは、推奨される449nmの代わりに460nmであった。
【0100】
RFU/分の値を、キットに添付される標準物質に基づく標準曲線に対して基準化した。添付される標準物質は定量化されていなかったので、全ての値は相対値である。これらの相対値を、細胞数およびインキュベーション期間に対して規準化し、相対特異的生産性(1日あたりの、細胞1個あたりのSEAP活性)を生じた。
【0101】
(プール)
コロニーが出現した後、各トランスフェクションから細胞を回収し、プールした。プールを、6ウェルプレート内の各ウェルに2×105個の細胞で撒いた。次の日に、培地を2mlの新しい培地と交換した。24時間後、細胞を計数し、培地のサンプルを使用して、SEAP活性を評価した。プールアッセイからの結果を図13に示す。
【0102】
(単離体)
単離体を、トランスフェクションからコロニーを「ピックアップ」することによって得た。「ピックアップ」は、50μlに設定したP200 Pipetmanを用いてコロニーの上で直接吸引することによって達成した。吸引したコロニーを、まず、48ウェルプレートに移し、次いで、十分な細胞数になると6ウェルプレートに移した。特定の生産性を、上記の24時間アッセイを使用して、ほぼコンフルエントな細胞密度の6ウェルプレートにおいて評価した(図14)。
【0103】
図13および14に要約したように、CMV IEプロモーターおよびhGHvポリAシグナルドメインの組合せに基づく発現ベクターは、高い発現能力を誇る市販のベクターよりもかなり優れていた。
【0104】
本発明の多数の実施形態が記載された。それでもなお、種々の改変が、本発明の精神および範囲から逸脱することなくなされ得ることが理解される。従って、他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内である。
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、発現ベクターおよび発現カセットに関し、より具体的には、生物における外来性分子の発現のための方法、組成物および系に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
核酸分子、ポリペプチド、ペプチドおよび低分子の、標的細胞および標的分子への導入は、治療用の送達系およびインビトロでの治療用分子の産生の両方において使用される。このアプローチの適用性は、宿主細胞、ならびに、細胞の分裂、分化および発現機構の分子生物学のさらなる理解と共に増加している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(要旨)
CMVプロモーターにより駆動され、改変体ヒト成長ホルモン(hGHv)遺伝子に由来するポリAドメインにより終結される転写は、このようなエレメントのうちの一方もしくはもう一方、または両方を欠く他の発現ベクターよりも効率が高いことが発見された。従って、本発明は、目的のポリヌクレオチドの発現において有用な発現カセットおよび発現ベクターを提供する。本発明の発現カセットは、効率的な転写、効率的な転写終結および転写産物の増加したmRNA安定性を提供する、調節性エレメントの組み合わせを含む。1つの実施形態において、発現カセットは、ヒトサイトメガロウイルスのプロモーター/エンハンサー、目的のクローニング部位またはポリヌクレオチド、およびhGHvポリアデニル化シグナルドメインを含む。必要に応じて、可変長介在配列が存在し得る。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
発現カセットであって、以下:
ヒトCMV最初期1(hCMV IE1)プロモーター/エンハンサー領域;
目的のポリヌクレオチド;および
改変体ヒト成長ホルモン(hGHv)ポリAシグナルドメインまたはその改変体
を含み、該hGHvポリAシグナルは、少なくとも100ヌクレオチド長であり、かつ配列AATAAAを含み、そして、該ポリA改変体は、hGHポリAシグナルドメインと少なくとも92%同一である、発現カセット。
(項目2)
前記ヒトCMV IE1プロモーター/エンハンサー領域が、配列番号1の約x1〜約x2に示されるような配列を含み、ここでx1が配列番号1の約1〜20の間のヌクレオチドを示し、そして、x2が配列番号1の約715〜720の間のヌクレオチドを示す、項目1に記載の発現カセット。
(項目3)
スプライスドナー部位およびスプライスアクセプター部位を含む可変長介在配列(VLIVS)をさらに含む、項目1に記載の発現カセット。
(項目4)
前記VLIVSが、hCMV IE1遺伝子のイントロンAを含む、項目3に記載の発現カセット。
(項目5)
前記VLIVSが、前記イントロンAの前記スプライスアクセプターとスプライスドナーとの間に欠失を有するhCMV IE1遺伝子のイントロンAを含む、項目3に記載の発現カセット。
(項目6)
前記VLIVSが、配列番号1の約x3〜x4の配列を含み、ここで、x3が配列番号1の約715〜720の間のヌクレオチドを示し、そして、x4が配列番号1の約1236〜1254の間のヌクレオチドを示す、項目5に記載の発現カセット。
(項目7)
前記目的のポリヌクレオチドが治療剤をコードする、項目1に記載の発現カセット。
(項目8)
前記ポリAシグナルドメインが、配列番号19の少なくとも100の連続するヌクレオチドを含む、項目1に記載の発現カセット。
(項目9)
前記ポリAシグナルドメインが、配列番号19を含む、項目8に記載の発現カセット。
(項目10)
DHFR遺伝子をさらに含む、項目1に記載の発現カセット。
(項目11)
項目1〜10のいずれか1項に記載の発現カセットを含む、発現ベクター。
(項目12)
項目11の発現ベクターを含む、宿主細胞。
(項目13)
項目1〜10のいずれか1項に記載の発現カセットを含む、宿主細胞。
【0004】
本発明は、ヒトCMV最初期1(hCMV IE1)プロモーター/エンハンサー領域、目的のポリヌクレオチド、および改変体ヒト成長ホルモン(hGHv)ポリAシグナルドメインもしくはその改変体を含む発現カセットを提供する。ポリAシグナル改変体は、少なくとも100ヌクレオチド長であり、かつ、配列AATAAAを含み、そして、hGHポリAシグナルドメインと少なくとも92%同一である。
【0005】
本発明はさらに、本発明の発現カセット、および本発明の発現カセットもしくは発現ベクターを含む宿主細胞を含む発現ベクターを提供する。
【0006】
本発明はさらに、ヒトCMV最初期1(hCMV IE1)プロモーター/エンハンサー領域、スプライスドナー部位およびスプライスアクセプター部位を含む可変長介在配列(VLIVS)、目的のポリヌクレオチド、および改変体ヒト成長ホルモン(hGHv)ポリAシグナルドメインまたはその改変体を含む発現カセットを提供する。ポリAシグナルドメインまたはその改変体は、少なくとも100ヌクレオチド長であり、かつ、配列AATAAAを含み、そしてhGHvポリAシグナルドメインと少なくとも92%同一である。
【0007】
本発明はまた、ヒトCMV最初期1(hCMV IE1)プロモーター/エンハンサー領域、スプライスドナー部位およびスプライスアクセプター部位を含む可変長介在配列(VLIVS)、目的のポリヌクレオチド、クローニング部位、hGHポリアデニル化領域および選択マーカーを含む発現ベクターを提供する。本発明の1つの局面において、hCMV E1プロモーター/エンハンサー領域は、クローニング部位の上流(5’)であり、そしてhGHポリアデニル化領域は、クローニング部位の下流(3’)である。
【0008】
本発明はまた、インビボにおいて目的の因子を送達する方法を含む。この方法は、被験体に対して、発現カセットを含む組成物を送達する工程を包含し、この発現カセットは、hCMV IE1プロモーター/エンハンサー領域;スプライスドナー部位およびスプライスアクセプター部位を含む可変長介在配列;目的の因子をコードするポリヌクレオチド;およびヒト成長ホルモン(hGH)ポリAシグナルドメインまたはその改変体を含む。
【0009】
本発明はさらに、発現系を含む。この発現系は、本発明の発現カセットを用いてトランスフェクトまたは形質転換された宿主細胞を含み、この宿主細胞は、目的のポリヌクレオチドを発現するような条件下で培養され、そして目的の因子を回収する。
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面および以下の説明に示される。本発明の他の特徴、対象および利点は、明細書および図面、および添付の特許請求の範囲から明らかである。本明細書中に引用される全ての参考文献は、参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、pV10ベクターのプラスミドマップである。サイトメガロウイルス最初期1(CMV IE1)プロモーター/イントロン(IVS)を、PCRにより作製し、HindIII部位およびBamHI部位にクローニングした。アンピシリン耐性遺伝子である、β−ラクタマーゼ(bla)がまた示される。
【図2】図2は、pV40のプラスミドマップである。サイトメガロウイルス最初期1(CMV IE1)プロモーター、イントロン(IVS)、長さ約600塩基対のhGHvポリアデニル化シグナルドメイン(ポリA)、およびアンピシリン耐性遺伝子であるβ−ラクタマーゼ(bla)が示される。
【図3】図3は、プラスミドpV70の模式図である。CMV IE1プロモーター、欠失接合部、ならびにスプライスドナー(SD)部位およびスプライスアクセプター部位を含むIVS、hGHvポリAシグナルドメイン、ならびにbla遺伝子が示される。欠失接合部は、BspE1’/’HpaIの平滑末端ライゲーションの結果を表す。
【図4】図4は、pXLC.1ベクターの作製の模式図である。pXLC.1ベクターは、発現ベクターpV70、および軽鎖コード配列を含むPCR産物を使用して構築した。pV70をBamHIで直線化し、PCR産物をBamHIで消化し、そして、この2つを、一緒に連結して、pXLC.1ベクターを作製した。
【図5】図5は、pXLC.2ベクターの作製の模式図である。
【図6】図6は、pV60ベクター、およびpXHCベクターの作製の模式図である。pXHCベクターは、発現ベクターpV60、および重鎖コード配列の大部分(N末端の52アミノ酸は含まれなかった)を含むPCR産物を使用して構築した。pV60をBamHIで直線化し、PCR産物をBamHIで消化し、そして、この2つを一緒に連結した。
【図7】図7は、pXHC.1ベクターの模式図である。
【図8】図8は、pXHC.3ベクターの模式図である。
【図9】図9は、pXHC.3へのdhfrカセットの追加により得た、pXHC.5ベクターの模式図である。発現カセットの制御エレメントtは、pSI(Promega,Genbank登録番号U47121)に由来し、そして、SV40プロモーター/エンハンサー、人工イントロン、およびSV40後期ポリアデニル化配列を含む。
【図10】図10は、ベクターpV80の模式図である。サイトメガロウイルス最初期1(CMV IE1)プロモーター/スプライスドナー(SD)部位およびスプライスアクセプター(SA)部位を含むイントロン(IVS)フラグメント、hGHvポリアデニル化シグナルドメイン(ポリA)、アンピシリン耐性遺伝子であるβ−ラクタマーゼ(bla)、SV40プロモーター/エンハンサー、人工イントロン、ならびにSV40後期ポリアデニル化配列が示される。
【図11A】図11Aおよび図11Bは、ベクターpV90の模式図および対応する注釈つきの配列である。図11Aは、ベクターマップである。サイトメガロウイルス最初期1(CMV IE1)プロモーター/スプライスドナー(SD)部位およびスプライスアクセプター(SA)部位を含むイントロン(IVS)フラグメント、hGHvポリアデニル化シグナルドメイン(ポリA)、アンピシリン耐性遺伝子であるβ−ラクタマーゼ(bla)、SV40プロモーター/エンハンサー、人工イントロン、ならびにSV40後期ポリアデニル化配列が示される。このベクターは、dhfr発現カセット内のNotI部位を欠く。
【図11B−1】図11Aおよび図11Bは、ベクターpV90の模式図および対応する注釈つきの配列である。図11Bは、pV90ベクターの注釈つきの配列である。図11Bにおいて、配列番号19のヌクレオチド1275〜1866は、約600ヌクレオチド長のhGHvポリAを表す。
【図11B−2】図11Aおよび図11Bは、ベクターpV90の模式図および対応する注釈つきの配列である。図11Bは、pV90ベクターの注釈つきの配列である。図11Bにおいて、配列番号19のヌクレオチド1275〜1866は、約600ヌクレオチド長のhGHvポリAを表す。
【図12】図12は、pSI−DHFRのベクターマップである。SV40プロモーターがdhfr遺伝子を駆動する。
【図13】図13は、トランスフェクトされたプールの相対特異的生産性を示すグラフである。3つのプールを、pCMV−hGHvPA−SEAPおよびpSEAP2について、そして1つはpUC18について分析した。
【図14】図14は、単離体の相対特異的生産性を示す一対のグラフである。各構築物からの上位20の単離体が、ランク順に示される。
【図15】図15は、GenBank登録番号K00470(配列番号18)の配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(詳細な説明)
本発明は、発現カセット、および発現カセットを含むベクターに関する。発現カセットは、真核生物宿主における転写を駆動し得る転写調節性領域、および転写終止領域を含む。本発明の発現カセットおよび発現ベクターは、強力な転写の開始および終止、ならびに、転写産物の増加したmRNA安定性を提供する。
【0012】
本発明は、プロモーターエレメント、および、必要に応じて、例えば、本明細書中もしくは米国特許第5,658,759号(その開示は、本明細書中に参考として援用される)のような参考文献に記載されるような、サイトメガロウイルスの任意の株に由来するエンハンサーエレメントを提供する。例えば、本発明の発現カセットにおいて有用な安定なCMV最初期プロモーター領域は、CMVが促進するβ−ガラクトシダーゼ発現ベクター、CMV(MacGregorら、Nucl.Acids Res.17:2365(1989))から得られ得る。
【0013】
本明細書中でさらに議論されるように、hGHvポリアデニル化シグナルドメインは、強力な転写終止シグナルを提供し、そして、mRNA転写物の安定性を増加させる。調節性/発現エレメントは、例えば、目的のポリヌクレオチドまたはクローニング部位(例えば、マルチクローニング部位)によってhGHvポリアデニル化シグナルドメインから分離され得る。
【0014】
本発明の1つの局面において、サイトメガロウイルス(CMV)転写調節性領域、可変長介在配列(例えば、CMVのイントロンAに由来する)、目的のポリヌクレオチド、およびポリアデニル化シグナルドメインを含むポリヌクレオチドが提供される。本発明はさらに、宿主細胞から異種性のポリペプチドを産生および回収するためのプロセスおよび発現ベクターに関する。
【0015】
別の局面において、本発明の発現カセットは、必要に応じて連結された、(i)CMV主要最初期1(IE1)プロモーター/エンハンサー領域および可変長介在配列(例えば、イントロンAの誘導体)、(ii)目的のポリヌクレオチド、および(iii)hGHvポリアデニル化シグナルドメインを含む。用語「必要に応じて連結された」とは、成分がその意図された様式(例えば、機能的に連結される)で機能することを可能にする関係にある、近位を指す。従って、例えば、目的のポリヌクレオチドに必要に応じて連結されたプロモーター/エンハンサーは、目的のポリヌクレオチドの発現が、プロモーター/エンハンサーからの発現の達成と適合する条件下で達成されるように、後者に連結される。
【0016】
本発明の特定の実施形態において、発現カセットは、配列番号1の約ヌクレオチド1〜約ヌクレオチド1867に示される配列(例えば、約1〜1865、1866、1867、1868または1869)を含む。配列番号1のヌクレオチド1〜1867に示される発現カセットは、配列番号1の約x1〜約x2に示される配列を有するCMV IE1プロモーター/エンハンサーのような多数の別個のドメインを含み、ここで、x1は、1〜20のヌクレオチドであり、そしてx2は約715〜720のヌクレオチドである(例えば、配列番号1の約1〜719)。発現カセットの別のドメインは、スプライスドナー部位およびスプライスアクセプター部位を含む可変長介在配列(VLIVS)を含む。VLIVSは、少なくとも50bp長(例えば、少なくとも100bp長、150bp長、200bp長または250bp長)であり得、かつ、当該分野で公知の任意の供給源に由来するスプライスドナーおよびスプライスアクセプターを含み得る。例えば、Varaniら、Annu Rev Biophys Biomol Struct 27:407−45(1998)およびKoning,Eur J Biochem 219:25−42(1994)を参照のこと。適切な介在ドメインは、任意の株のCMVゲノムの全てのイントロンAを含み得るか、または、スプライスアクセプター部位を含む3’配列に連結されたスプライスドナー部位を含む5’配列を含むより小さなフラグメントを含み得る。例えば、VLIVSは、配列番号1の約x3〜約x4のヌクレオチドを含み、ここで、x3は、715〜720のヌクレオチドであり、そしてx4は1236〜1254のヌクレオチドである(例えば、配列番号1の719〜1236)。CMV IE1プロモーター/エンハンサーに続く介在配列は、配列番号1に存在するものに由来する317ヌクレオチド程度のサイズで変化し得る。例えば、317ヌクレオチドは、pV40およびpV70(例えば、それぞれ、図2および3を参照のこと)に示されるようなIVS配列から欠失された。従って、本発明の別の局面において、発現カセットは、配列番号1の1〜約1254のヌクレオチドに由来する配列(例えば、CMV IE1プロモーター/エンハンサーおよび介在配列)を含む。マルチプルクローニング部位は、IVS領域の後(すなわち下流)に存在し得る(例えば、配列番号1の1255〜1272のヌクレオチドは、BamHI部位およびNotI部位を含む)。異なる制限部位またはさらなる制限部位は、当業者に公知の技術を用いて発現カセット中で遺伝子操作され得る。発現カセットはさらに、ポリAドメインを含む。
【0017】
ポリAシグナルドメインは、hGHv遺伝子に由来し、例えば、対立遺伝子ごとに、その3’UTR配列が変化し得る。hGHv遺伝子の片側の対立遺伝子は、GenBank登録番号K00470(配列番号18)に記載され、一方で、もう片側の配列は、図11Bに配列番号19として記載され、これは、配列番号18のヌクレオチド2032〜2625に対応する(図15を参照のこと)。ポリAシグナルドメインの天然に存在しない改変体は、ポリヌクレオチド、細胞または生物体に適用される技術を含む変異誘発技術によってなされ得る。hGHv遺伝子に由来するポリA改変体は、野生型のhGHvポリAシグナルドメインとは異なり、なお、シグナル転写終止に対する能力を保持し、そして/またはmRNAを安定化させる、ポリAシグナルドメインを含む。例えば、ポリアデニル化シグナルドメインとしては、配列番号18または10に示されるようなhGHvポリアデニル化シグナルドメイン配列が挙げられ得る。分子生物学の当業者はまた、この配列が、約600ヌクレオチド程度の長さである必要はないことを理解する。むしろ、少なくとも100nt(例えば、少なくとも200nt、300nt、400nt、500nt、または600nt)の連続したヌクレオチド配列を含み、hGHv遺伝子の基準のAATAAA部位を含む、任意のポリA配列ドメインが含まれる。さらに、本発明は、上記の配列から、8%まで異なる(例えば、配列番号18もしくは19、またはその別個のドメインと92%の同一性を有する)配列を包含する。例えば、配列番号1のヌクレオチド1〜1867と95%の同一性を有し、かつ配列AATAAAを含む100ntの長さのポリヌクレオチドは、転写を終結させる能力を保持する。
【0018】
本発明の別の局面において、発現カセットを含むベクターが提供される。本明細書中で使用される場合、「ベクター」は、レシピエント細胞(例えば、E.coliのような細菌)への導入の際に、自律的な複製が可能な核酸分子(DNAまたはRNAのいずれか)である。プラスミド、ウイルスおよびバクテリオファージが、ベクターの例である。発現ベクターからの「発現」のプロセスは周知であり、細胞の酵素の使用、および目的のポリヌクレオチドからの発現産物を生じるプロセスを含む。発現ベクターは、宿主細胞内にクローニングされたポリヌクレオチドの発現を媒介し得るベクターであり、この宿主細胞は、ベクターの複製または増殖に使用されるのと同じ型の細胞であっても、そうでなくともよい。多くの哺乳動物発現ベクターは、一般的な細菌(レシピエント細胞)において増殖され得るが、哺乳動物細胞(宿主細胞)において目的のポリヌクレオチドを発現するが、細菌においては、発現しない。
【0019】
本発明は、真核生物細胞(例えば、哺乳動物、および、最も具体的には、ヒト、マウス、サル、ウシ、ブタ、げっ歯類、またはヒツジの細胞)における、効率的なポリヌクレオチドの転写および翻訳を可能にし得る、ベクターの設計および使用に関する。本発明のベクターは、効率的な転写の終結とmRNAの安定性を提供する、ポリアデニル化シグナルドメインを含む上記に示されるような発現カセットを含む。
【0020】
本発明のベクターは、以下を含む:目的のポリヌクレオチドを受容するためのクローニング部位;宿主細胞において、クローニング部位に挿入されたポリヌクレオチドの転写を可能にするのに十分な転写調節性エレメント(例えば、CMV IE1プロモーター/エンハンサー領域);宿主細胞において上記ポリヌクレオチドのRNA転写物の翻訳を可能するのに十分な翻訳エレメント、および(所望される場合)宿主細胞またはベクターの増殖に使用される別のレシピエント細胞において上記ベクターの複製を可能にするのに十分な複製エレメント。本発明のベクターは、このような宿主細胞における一過性の発現か、または安定な発現を調節し得る。
【0021】
特定の実施形態において、本発明のベクターは、(1)配列番号1に示される配列;(2)配列番号1に示される配列に相補的な配列;(3)配列番号1またはその相補体に少なくとも80%(好ましくは、少なくとも90%;少なくとも95%;少なくとも98%または少なくとも99%)同一な配列;または(4)配列番号1の約ヌクレオチド1〜約ヌクレオチド1867を含み、かつ目的のポリヌクレオチドおよび/または選択マーカーを含むベクター。
【0022】
配列番号1を含むベクターは、多数の別個のドメインおよびコード領域を有する。例えば、配列番号1の約x1〜約x2に示される配列を有するCMV IE1プロモーター/エンハンサー領域(ここで、x1は1〜20のヌクレオチドであり、そしてx2は約715〜720のヌクレオチドである(例えば、配列番号1の約1〜719))が、ベクター中に存在する。本発明の発現ベクターの別のドメインは、スプライスドナーおよびスプライスアクセプターを含む可変長介在配列(VLIVS)を含む。例えば、IVSは、配列番号1の約x3〜約x4のヌクレオチドを含み、ここで、x3は715〜720のヌクレオチドを含み、そしてx4は1236〜1254のヌクレオチドを含む(例えば、配列番号1の約719〜約1236のヌクレオチド)。発現ベクターのマルチプルクローニング部位は、配列番号1の1255〜1272のヌクレオチド(例えば、BamHI部位およびNotI部位)を含む。異なる制限部位または追加の制限部位が、当業者に公知の技術を使用して発現ベクター内で遺伝子操作され得る。発現ベクターはさらに、ポリAシグナルドメインを含む。ポリAシグナルドメインは、hGHvポリAシグナルドメインであるか、または、hGHポリAシグナルドメインの他の改変体である。例えば、ポリAシグナルドメインは、配列番号19に示されるhGHvポリAシグナルドメイン配列を含む。また、1つ以上の選択マーカーが、本発明のベクター中に存在する。例えば、配列番号1は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)遺伝子(例えば、配列番号1のヌクレオチド約2568〜ヌクレオチド約3132)を含む。本発明のベクターは、上に提供されるものに加えて、追加のプロモーター/エンハンサーエレメントおよび調節性エレメント(例えば、ポリアデニル化ドメイン)を含み得る。このような追加の調節性エレメントおよびポリアデニル化ドメインは、選択マーカーまたは目的のポリヌクレオチド(例えば、5’および3’に直ぐ近接して)に隣接し得る。例えば、配列番号1を含むベクターは、配列番号1のヌクレオチド約2568〜ヌクレオチド約3132のジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)遺伝子を含む。dhfr遺伝子は、SV40プロモーター/エンハンサーエレメントおよびSV40ポリアデニル化領域(例えば、それぞれ、配列番号1のヌクレオチド約1868〜ヌクレオチド約2210およびヌクレオチド約3144〜ヌクレオチド約3440)によって隣接される。
【0023】
選択マーカーの特定の例は、メトトレキサートに対する耐性を与えるDHFRタンパク質(Wiglerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:3567(1980);O’Hareら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78
1527(1981));ミコフェノール酸に対する耐性を与えるGPFタンパク質(Mulligan & Berg,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2072(1981));アミノグリコシドG−418に対する耐性を与えるネオマイシン耐性マーカー(Colberre−Garapinら,J.Mol.Biol.150:1(1981));ハイグロマイシンに対する耐性を与えるHygroタンパク質(Santerreら,Gene 30:147(1984));およびZeocinTM耐性マーカー(Invitrogenから市販されている)のような、細胞増殖抑止薬もしくは細胞傷害薬に対する耐性を与えるタンパク質をコードするものである。さらに、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ(Wiglerら,Cell 11:223(1977))、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski,Proc.Natl.Acad.Sci.USA
48:2026(1962))およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら,Cell 22:817(1980))が、それぞれtk−細胞、hgprt−細胞、またはaprt−細胞において使用され得る。他の選択マーカーは、ピューロマイシンN−アセチルトランスフェラーゼまたはアデノシンデアミナーゼをコードする。
【0024】
2つ以上の核酸分子の文脈において、用語「同一」または%「同一性」とは、比較アルゴリズムを使用するか、または手動での整列および視覚的な検査によって決定すると、比較ウィンドウにわたる、最大の一致について比較および整列した場合に、同じであるか、または、同じであるヌクレオチドの特定の割合を有する、2つ以上の配列もしくは下位配列を指す。この定義はまた、配列の相補体(例えば、配列番号1に示される配列の相補体、または発現カセットを含むそのフラグメント)も指す。例えば、発現カセットおよびそのフラグメントは、配列番号1の一部と少なくとも約80%同一、約90%同一および約95%同一、約97%同一、約98%同一、または約99%同一である、ヌクレオチド配列同一性を有するもの(例えば、配列番号1のヌクレオチド1〜719、1〜1254など)を含む。従って、配列が、配列番号1の全長配列またはそのドメインに対して必須の配列同一性を有する場合、この配列がまた、それぞれ、本発明の発現カセットまたはドメインとして機能し得る。
【0025】
配列比較について、代表的には、1つの配列は、参照配列として機能し、この配列に対して、試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列および参照配列がコンピュータに入力され、必要に応じて下位配列の座標が指定され、そして、配列アルゴリズムプログラムのパラメータが指定される。デフォルトのプログラムパラメータを使用しても、代替のパラメータを指定してもよい。次いで、配列比較アルゴリズムは、指定されたか、またはデフォルトのプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列の%配列同一性を算出する。本明細書中で使用される場合、「比較ウィンドウ」は、25〜600、通常は約50〜約200、より通常は約100〜約150からなる群より選択される連続する位置の数のいずれか1つのセグメントに対する参照を含み、ここで、2つの配列が最適に整列された後に、1つの配列が、同じ数の連続する位置の参照配列に対して比較され得る。比較のための配列の整列方法は、当該分野で周知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)による部分相同性アルゴリズムによってか、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)による相同性アラインメントアルゴリズムによってか、Pearson
& Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似法についての検索によってか、3つのアルゴリズムのコンピュータ実行(GAP、ILEUP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA、Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WI)によってか、または、手動の整列および視覚的な検査によって行なわれ得る。
【0026】
%配列同一性(すなわち、実質的な類似性または同一性)を決定するために適切なアルゴリズムの1つの例は、BLASTアルゴリズムであり、これは、Altschul,J.Mol.Biol.215:403−410,1990に記載されている。BLAST解析を行なうためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(ワールドワイドウェブ上、ncbi.nlm.nih.gov/にある)から公的に利用可能である。このアルゴリズムは、クエリー配列中の長さWの短いワードを同定することによって、高いスコアの配列対(HSP)をまず同定することを含み、これらのワードは、データベース配列中の同じ長さのワードと整列する場合に、いくらかポジティブな値の閾値スコアTと適合するか、これを満たすかのいずれかである。「T」は、隣接するワードスコア閾値として呼ばれる。これらの最初の隣接するワードヒットは、これらを含むより長いHSPを見出すための検索を開始するための種として機能する。次いで、ワードヒットが連続するアラインメントスコアが増やされ得る距離にわたって、各配列に沿って両方向に延ばされる。連続スコアは、ヌクレオチド配列については、パラメータM(適合した残基対に対する報酬スコア;常に>0)およびN(適合しなかった残基に対する罰則スコア;常に<0)を使用して計算される。各方向におけるワードヒットの延びは、以下の場合休止される:連続アラインメントスコアが、その最大達成値から量Xだけ落ちる場合;1つ以上のネガティブなスコア付けの残基アラインメントの蓄積に起因して連続スコアが0以下になる場合;または、いずれかの配列の末端に到達した場合。BLASTアルゴリズムパラメータW、TおよびXは、アラインメントの感度および速度を決定する。1つの実施形態において、核酸配列が本発明の範囲内であるかどうかを決定するために、デフォルトとして、11のワード長(W)、10の期待値(E)、M=5、N=4および両方の鎖の比較を組み込んで、(ヌクレオチド配列のための)BLASTNプログラムが使用される。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムが、デフォルトパラメータとして、3のワード長(W)、10の期待値(E)およびBLOSUM62スコア付けマトリクス(例えば、Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915,1989を参照のこと)を使用する。
【0027】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計学的解析を実施する(例えば、Karlin,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 90:5873−5787,1993を参照のこと)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの指標は、最小サム確率(smallest sum probability)(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間での適合が偶然生じる可能性の指標を提供する。例えば、核酸は、試験核酸の参照核酸に対する比較における最小サム確率が約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、そして最も好ましくは約0.001未満である場合に、参照配列と類似するとみなされる。
【0028】
配列番号1のヌクレオチド約1〜1867に示されるポリヌクレオチド配列またはそのフラグメントに特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドもまた本発明に含まれる。句「選択的に(または特異的に)ハイブリダイズする」とは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下での、特定の参照ポリヌクレオチドに対する分子の結合、二重化、またはハイブリダイゼーションを指す。句「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、プローブがその標的配列(代表的には、核酸の複合混合物中にある)に主にハイブリダイズするが、他の配列にはハイブリダイズしない条件である。ストリンジェントな条件は、例えば、プローブの長さに依存して、配列依存性であり、かつ、環境ごとに異なる。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに対する広範なガイドは、Tijssen,Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−−Hybridization with Nucleic Probes,「Overview of principles of hybridization and the
strategy of nucleic acid assays」(1993)において見出される。一般に、ストリンジェントな条件は、規定されたイオン強度およびpHにおいて、特定の配列についての熱融点(Tm)よりも約5〜10℃低く選択される。Tmは、平衡状態で、(規定されたイオン強度、pHおよび核酸濃度下で)標的に対して相補的なプローブの50%が、標的配列にハイブリダイズする(Tmにおいて標的配列が過剰に存在する場合、平衡状態において、プローブの50%が占有される)温度である。ストリンジェントな条件は、pH7.0〜8.3において、塩濃度が、約1.0Mのナトリウムイオンより少なく(代表的には、約0.01〜1.0Mのナトリウムイオン濃度)(または他の塩)、かつ、温度が、短いプローブ(例えば、10〜約50のヌクレオチド)については少なくとも約30℃、そして長いプローブ(例えば、約50より大きいヌクレオチド)については少なくとも60℃である、条件である。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドのような撹乱物質の添加により達成され得る。選択的または特異的なハイブリダイゼーションについて、ポジティブなシグナル(例えば、本発明の核酸の同定)は、バックグラウンドのハイブリダイゼーションの約2倍である。本発明の範囲内の実質的に同一な核酸を同定するために使用される「ストリンジェントな条件」は、長いプローブについて、42℃と65℃との間の温度において、50%ホルムアミド、5×SSCおよび1% SDSを含む緩衝液中でのハイブリダイゼーション、65℃において、0.2×SSCおよび0.1% SDS中での洗浄を含む。しかし、当業者に明らかなように、ハイブリダイゼーション条件は、配列組成に依存して改変され得る。例示的な「中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、37℃における40%ホルムアミド、1M NaClおよび1% SDSの緩衝液中でのハイブリダイゼーション、および45℃における1×SSC中での洗浄を含む。ポジティブなハイブリダイゼーションは、バックグラウンドの少なくとも2倍である。当業者は、代替のハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件が、同様のストリンジェンシーの条件を提供するために利用され得ることを容易に理解する。従って、本発明の発現カセットは、高いストリンジェンシーの条件下で、配列番号18または19のヌクレオチド配列を含むssDNAにハイブリダイズするhGHvポリAシグナルドメインを含み得る。
【0029】
発現カセットは、裸の核酸構築物の形態で使用され得る。あるいは、発現カセットは、核酸ベクター(例えば、上記のような発現ベクター)の一部として導入され得る。このようなベクターとしては、プラスミドベクターおよびウイルスベクターが挙げられる。ベクターは、真核生物のゲノム配列(例えば、哺乳動物のゲノム配列またはウイルスのゲノム配列)と相同な配列を含む、発現カセットに隣接する配列を含み得る。これは、真核生物細胞またはウイルスのゲノムへのこの発現カセットの相同組換えによる導入を可能にする。例えば、ウイルス配列により隣接された発現カセットを含むプラスミドベクターは、脊椎動物(魚類、鳥類または哺乳動物を含む)の細胞にこの発現カセットを送達するために適切なウイルスベクターを調製するために使用され得る。用いられる技術は、当業者に周知である。
【0030】
用語「目的のポリヌクレオチド」は、少なくとも転写され得る核酸分子を包含することが意図される。この分子は、プロモーターに関して、センス配向であってもアンチセンス配向であってもよい。アンチセンス構築物は、周知の技術に従って、細胞における遺伝子の発現を阻害するために使用され得る。目的のポリヌクレオチドは、異種性のポリヌクレオチドを含み得る。用語異種性のポリヌクレオチドは、任意の遺伝子を包含する。異種性のポリヌクレオチドは、代表的には、発現カセットもしくは発現ベクターにおいて、そのポリヌクレオチドが作動可能に連結されている調節性エレメントと比べて外来の種に由来するか、または、同じ起源に由来する場合、その本来の形態から改変された遺伝子である。従って、プロモーターに作動可能に連結された異種性のポリヌクレオチドは、そのプロモーターが由来する供給源とはことなる供給源に由来するか、または、同じ供給源に由来する場合は、その本来の形態から改変されたプロモーターである。異種性のポリヌクレオチドの改変は、例えば、DNAを制限酵素で処理して、プロモーターに作動可能に連結され得るDNAフラグメントを作製することによって生じ得る。特定部位の突然変異誘発がまた、異種性のポリヌクレオチドを改変するのに有用である。異種性のポリヌクレオチドはまた、マーカー遺伝子(例えば、β−ガラクトシダーゼまたは緑色蛍光タンパク質をコードするもの)、または、その生成物が他の遺伝子の発現を調節する遺伝子を含み得る。従って、mRNA、tRNAおよびrRNAのための鋳型として機能するポリヌクレオチドが、この定義の中に含まれる。異種性の遺伝子は、野生型遺伝子の任意の対立遺伝子変異体であっても、変異体遺伝子であってもよい。mRNAは、天然に、またはその他の方法により、翻訳されたコード配列に付随する、転写されたが翻訳されてない、5’および/または5’の隣接領域のいくつかまたは全てを必要に応じて含む。
【0031】
目的のポリヌクレオチドは、必要に応じてさらに、転写された分子に通常付随する、関連の転写制御エレメント(例えば、転写終止シグナル、ポリアデニル化ドメインおよび下流のエンハンサーエレメント)を含み得る。目的のポリヌクレオチドは、治療用生成物のための鋳型をコードし得るか、または鋳型として機能し得、治療用生成物は、例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質またはリボ核酸であり得る。目的のポリヌクレオチドは、代表的には、酵素(例えば、β−ガラクトシダーゼ);血液誘導体;ホルモン;サイトカイン;インターロイキン;インターフェロン;TNF;増殖因子(例えば、IGF−1);可溶性レセプター分子(例えば、可溶性TNFレセプター分子);神経伝達物質またはその前駆物質;栄養性因子(例えば、BDNF、CNTF、NGF、IGF、GMF、aFGF、bFGF、NT3およびNT5);アポリポタンパク質(例えば、ApoAIおよびApoAIV);ジストロフィンまたはミニジストロフィン;腫瘍抑制タンパク質(例えば、p53、Rb、RapIA、DCCおよびk−rev);凝血関連因子(例えば、第VII因子、第VIII因子および第IX因子);あるいは、天然もしくは人工の免疫グロブリンの全てもしくは一部(例えば、FabおよびScFv、または、クローニングされたIgGの軽鎖および重鎖)のようなポリペプチド生成物をコードするDNA配列(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)である。
【0032】
目的のポリヌクレオチドはまた、アンチセンス分子の作製のための鋳型を含み得、標的細胞におけるこの転写物が、遺伝子発現または細胞内mRNAの転写を制御し得る。このような分子は、例えば、標的細胞において、細胞のmRNAに相補的なRNAに、転写され、当該分野で公知の技術に従って、そのタンパク質への翻訳をブロックし得る。特に、アンチセンス分子は、関節炎の処置における炎症性サイトカインまたは異化サイトカインの翻訳、および、これらのサイトカインにより引き起こされる組織の喪失をブロックするために使用され得る。
【0033】
目的のポリヌクレオチド配列は、代表的には、診断用途または治療用途のポリペプチドをコードする。ポリペプチドは、本発明の発現カセットを含有する種々の宿主細胞(例えば、COS細胞もしくはCHO細胞、またはその誘導体)を使用して、インビトロでバイオリアクターにおいて産生され得る。あるいは、本発明の発現カセットおよび/またはベクターは、遺伝子送達、タンパク質送達および/または遺伝子治療のために使用され得る。
【0034】
本発明はまた、毒性の因子およびポリペプチドの発現のために使用され得る。後者は特に、細胞毒素(例えば、ジフテリア毒素、シュードモナス毒素およびリシンA)、外来因子(例えば、チミジンキナーゼおよびシトシンデアミナーゼ)に対する生成物誘導性の感受性、あるいは、細胞死を誘導し得る因子(例えば、Grb3−3および抗−ras ScFv)であり得る。
【0035】
治療的用途により、疾患もしくは障害からの救済を提供し得、疾患もしくは障害を治癒し得、そして/または疾患もしくは障害の重篤度を軽減し得る用途が意味される。診断的用途は、分子の疾患プロセスに対する原因または関係性に関する情報を決定または提供し得る分子の使用、疾患もしくは障害の存在もしくは非存在を決定することを含む。診断剤は、疾患もしくは障害の軽減に直接は寄与しない。
【0036】
目的のポリヌクレオチドはまた、ワクチンとしての用途のための抗原性ポリペプチドをコードし得る。抗原性のポリペプチドまたは核酸分子は、例えば、細菌またはウイルスのような病原性生物に由来する。例えば、抗原性ポリペプチドは、病原性生物(例えば、出血性敗血症ウイルス、腎臓病細菌、ビブリオおよびフルンケル症)のゲノムもしくは遺伝子産物に存在する抗原性決定基を含む。抗原性ポリペプチドは、例えば、C型肝炎ウイルスのゲノムおよび遺伝子産物の領域から選択され得る。
【0037】
本明細書中で使用される場合、例えば、本発明のベクターもしくは発現カセット、または目的のポリヌクレオチドのような、分子もしくは組成物に対して言及する場合、「単離された」とは、分子または組成物が、インビボにおいて、またはその天然に存在する状態において関連する、タンパク質、DNA、RNAまたは他の汚染物質のような、少なくとも互いの化合物から分離されていることを意味する。従って、目的のポリヌクレオチドは、天然に関連する任意の他の成分から単離されている場合、単離されているとみなされる。しかし、単離された組成物はまた、実質的に純粋であり得る。単離された組成物は、均質な状態であり得る。単離された組成物は、乾燥/凍結されているか、または、水溶液であり得る。純度および均質性は、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)、アガロースゲル電気泳動、または高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)のような分析化学技術を使用して決定され得る。
【0038】
本明細書中で使用される場合、用語「核酸分子」および「ポリヌクレオチド」は、交換可能に使用され、そして、オリゴヌクレオチド(すなわち、短いポリヌクレオチド)を含む。これらはまた、合成および/または天然に存在しない核酸分子(例えば、ヌクレオチドアナログまたは改変骨格残基もしくは結合を含む)を指す。この用語はまた、一本鎖形態または二本鎖形態のいずれかのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのオリゴヌクレオチドを指す。この用語は、天然のヌクレオチドのアナログを含む核酸を包含する。この用語はまた、合成骨格を有する核酸様構造を包含する。本発明により提供されるDNA骨格アナログとしては、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチル−ホスホネート、ホスホラミデート、アルキルホスホトリエステル、スルファメート、3’−チオアセタール、メチレン(メチルイミノ)、3’−N−カルバメート、モルホリノカルバメート、およびペプチド核酸(PNA)が挙げられる;Oligonucleotides and Analogues,a Practical Approach,F.Eckstein編,IRL Press at Oxford University Press(1991);Antisense Strategies,Annals of the New York Academy of Sciences,Volume 600,BasergaおよびDenhardt編(NYAS 1992);Milligan(1993)J.Med.Chem.36:1923−1937;Antisense Research and Applications(1993,CRC Press)を参照のこと。PNAは、非イオン性の骨格(例えば、N−(2−アミノエチル)グリシン単位)を含む。ホスホロチオエート骨格は、WO 97/03211;WO 96/39154;Mata(1997)Toxicol.Appl.Pharmacol.144:189−197に記載される。この用語に包含される他の合成骨格としては、メチル−ホスホネート結合または代替的なメチルホスホネートとホスホジエステルとの結合(Strauss−Soukup(1997)Biochemistry 36:8692−8698)、およびベンジル−ホスホネート結合(Samstag(1996)Antisense Nucleic Acid Drug Dev 6:153−156)が挙げられる。
【0039】
本明細書中で使用される場合「組換え体」とは、インビトロにおいて合成されたか、もしくは他の方法により操作されたポリヌクレオチド(例えば、「組換えポリヌクレオチド」)、組換えポリヌクレオチドを使用して細胞もしくは他の生物系において生成物を産生する方法、または、組換えポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド(「組換えタンパク質」)を指す。組換えポリヌクレオチドは、例えば、融合タンパク質の発現のために発現カセットもしくはベクターに連結された、異なる供給源に由来する核酸分子;またはポリペプチドの誘導性もしくは構成的な発現により産生されるもの(例えば、ポリペプチドコード配列のような異種性のポリヌクレオチドに作動可能に連結された本発明の発現カセットまたはベクター)を包含する。
【0040】
代表的な発現系において、異種性のポリヌクレオチドからのポリペプチドの産生は、調節されていないか、または、異種性のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの上流に作動可能に連結されている転写プロモーターにからの転写を調節することによって調節されているかのいずれかである。しかし、この調節は、適切な転写の終結およびmRNA安定性を提供するために、適切に下流に存在しなければならない。本発明の1つの局面において、ヒト成長ホルモン改変体(hGHv)ポリアデニル化(ポリA)シグナルドメインは、本発明の発現カセットまたはベクター中に存在する目的のポリヌクレオチドの下流(3’)に提供される。hGHvポリAシグナルドメインは、ヒト成長ホルモンの遺伝子配列番号に由来する配列を含む。hGHvポリアデニル化シグナルドメイン配列は、強力な転写の終結を提供し、かつ、真核生物細胞において、mRNAの増加した安定性を提供する。このhGHvポリアデニル化シグナルドメインは、CMVプロモーター/エンハンサーを利用し得るものを含む、先行技術の発現カセットおよび/またはベクターに対して、特有の利点を提供する。
【0041】
翻訳エレメントがまた存在し得、これは、RNA転写物をタンパク質に翻訳させるのに必須の特定の配列(例えば、リボソーム結合部位および開始コドン)を包含することが意図される。翻訳エレメントはまた、コンセンサス配列、リーダー配列、スプライスシグナルなどを含み得、これらは、翻訳の程度を促進もしくは増強するか、または、発現された産物の安定性を増加するために機能する。例えば、hGHvポリアデニル化シグナルドメインは、増加したmRNA安定性を提供する。本発明のベクターは、付属的な転写領域(例えば、イントロン、ポリアデニル化シグナル、Shine/Dalgamo翻訳シグナルおよびKozakコンセンサス配列)を保有し得る(Shineら、Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)71:1342−1346(1974);Kozak,Cell 44:283−292(1986))。
【0042】
用語「複製エレメント」は、レシピエント細胞においてベクターの複製を可能にするのに必須の特定の配列(例えば、複製起点)を包含することが意図される。一般に、このようなベクターは、レシピエント細胞においてベクターの自立的かつ安定な複製を可能にするのに十分な、少なくとも1つの複製起点を含む。
【0043】
本発明のベクターの選択および維持を容易にするために、1つ以上の選択マーカー(例えば、抗生物質に対する耐性、または、最低量の培地中でか、もしくは、毒性代謝物の存在下において増殖する細胞能を与えるポリヌクレオチド)が、ベクター内に含められ得る。
【0044】
さらなる実施形態において、本発明は、上記の構築物(例えば、本発明の発現カセットまたはベクター)を含む宿主細胞に関する。本発明の発現カセットは、所望の目的のポリヌクレオチドを発現するように、宿主細胞をトランスフェクトするか、または、宿主細胞を形質転換することによって、宿主細胞を組換え的に修飾するために使用され得る。本明細書中で使用される場合、用語「組換え的に修飾される」とは、本発明の発現カセットまたはベクターを、生細胞または発現系に導入することを意味する。通常、目的のポリヌクレオチドを含む発現カセットが、ベクター(例えば、プラスミド)中に存在する。発現系は、本明細書中に記載されるような、その生成物が発現されるべき目的のポリヌクレオチドが導入されている、生きている宿主細胞を含む。
【0045】
宿主細胞は、発現カセット(発現カセットを含むベクターを含む)が、増殖され得、かつ、生成物をコードするポリヌクレオチドが発現され得る細胞である。宿主細胞はまた、主体の宿主細胞またはその誘導体の任意の子孫を含む。複製の間に生じる変異が存在し得るので、全ての子孫は、親細胞と同一であるわけではないことが理解される。しかし、このような子孫は、用語「宿主細胞」が使用される場合、含められる。本発明において有用な宿主細胞としては、細菌細胞、真菌細胞(例えば、酵母細胞)、植物細胞および動物細胞が挙げられる。例えば、宿主細胞は、哺乳動物細胞のような高等真核生物細胞であっても、酵母細胞のような下等真核生物細胞であってもよく、そしてまた、宿主細胞は、細菌細胞のような原核細胞生物細胞であってもよい。構築物の宿主細胞への導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介性のトランスフェクション、またはエレクトロポレーションにより達成され得る(Davis,L.,Dibner,M.,Battey,I.,Basic Methods in Molecular
Biology(1986))。適切な宿主の代表例として、以下が言及され得る:酵母細胞のような真菌細胞;Drosophila S2およびSpodoptera Sf9のような昆虫細胞;CHO、COSまたはBowes黒色腫のような動物細胞;植物細胞など。適切な宿主の選択は、本明細書中の教示から、当業者の技術範囲内であると判断される。
【0046】
本発明において使用するための宿主細胞は、真核生物宿主細胞(例えば、哺乳動物細胞)である。本発明の1つの局面において、宿主細胞は、細胞培養において増殖するように適合された哺乳動物の産生細胞である。産業において一般に使用されるこのような細胞の例は、CHO細胞、VERO細胞、BHK細胞、HeLa細胞、CV1細胞(Cos細胞;Cos−7細胞を含む)、MDCK細胞、293細胞、3T3細胞、C127細胞、骨髄腫細胞株(特にマウス)、PC 12細胞およびW138細胞である。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、いくつかの複合組換えタンパク質(例えば、サイトカイン、凝固因子および抗体)の産生のために広く使用される(Braselら,Blood 88:2004−2012(1996);Kaufmanら,J.Biol Chem 263:6352−6362(1988);McKinnonら,J Mol Endocrinol 6:231−239(1991);Woodら,J.Immunol 145:3011−3016(1990))。ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)欠失変異細胞株(Urlaubら,Proc Natl Acad Sci USA 77:4216−4220(1980))は、最適のCHO宿主細胞株である。なぜならば、有効なDHFR選択が可能であり、かつ、増幅可能な遺伝子発現系が、これらの細胞における高レベルの組換えタンパク質発現を可能にするからである(Kaufman,Meth Enzymol 185:527−566(1990))。さらに、これらの細胞は、接着培養物または懸濁培養物として扱いやすく、比較的良好な遺伝的安定性を示す。CHO細胞およびこれらにおいて発現される組換えタンパク質は、広範に特徴付けられており、そして、監督官庁によって、臨床用製造における用途について認可されている。さらに、上記の細胞株のいずれかに由来し、所望の表現型を有する宿主細胞がまた使用され得ることが意図される。例えば、派生の宿主細胞としては、(例えば、ポジティブ選択および/またはネガティブ選択のプロセスにより)所望の表現型について選択的に培養されたCHO細胞(例えば、DG44細胞株)が挙げられる。
【0047】
本発明の1つの局面において、目的のポリヌクレオチドによりコードされる因子のインビトロ産生のための発現系が提供される。本明細書において議論されるように、目的のポリヌクレオチドは、薬学的、医療的、栄養的および/または産業的に価値のあるポリペプチドをコードし得る。例えば、目的のポリヌクレオチドは、ポリペプチドベースの薬物をコードし得る。代表的に、このようなポリペプチドは、細胞外生成物として発現される。例えば、本発明の発現カセットおよび/またはベクターを使用して産生され得るポリペプチドとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:Flt3リガンド、CD40リガンド、エリスロポエチン、トロンボポエチン、カルシトニン、Fasリガンド、NF−κBのレセプターアクチベーターに対するリガンド(RANKL)、TNF関連アポトーシス誘導性リガンド(TRAIL)、ORK/Tek、胸腺支質由来リンフォポエチン(lymphopoietin)、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子、肥満細胞増殖因子、幹細胞増殖因子、上皮増殖因子、RANTES、成長ホルモン、インシュリン、インシュリノトロピン(insulinotropin)、インシュリン様増殖因子、甲状腺ホルモン、インターフェロン(例えば、インターフェロン−β)、神経成長因子、グルカゴン、インターロイキン1〜18、コロニー刺激因子、リンフォトキシン−β、腫瘍壊死因子、白血病阻害因子、オンコスタチン−M、細胞表面分子ElkおよびHekに対する種々のリガンド(例えば、eph関連キナーゼすなわちLERKSに対するリガンド)、ならびに、抗体軽鎖または重鎖。
【0048】
上記のタンパク質のいずれかに対するレセプターはまた、本発明の方法および組成物を使用して発現され得、これらとしては、腫瘍壊死因子レセプター(p55およびp75と呼ばれる)、インターロイキン−1レセプター(1型および2型)、インターロイキン−4レセプター、インターロイキン−15レセプター、インターロイキン−17レセプター、インターロイキン−18レセプター、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子レセプター、顆粒球刺激因子レセプター、オンコスタチン−Mおよび白血病阻害因子に対するレセプター、NF−κBに対するレセプターアクチベーター(RANK)、TRAILに対するレセプター、BAEFレセプター、リンフォトキシンβレセプター、TGFレセプターI型およびII型、ならびに、Fasもしくはアポトーシス誘導性レセプター(AIR)のようなデスドメイン(death domain)を含むレセプターの両方の形態が挙げられる。
【0049】
本発明の発現カセットおよび/またはベクターを使用して発現され得る他のタンパク質としては、分化抗原のクラスター(CDタンパク質と呼ばれる)(例えば、Leukocyte Typing VI(Proceedings of the VIth International Workshop and Conference;Kishimoto,Kikutaniら編;Kobe,Japan,1996)において開示されるもの)、または、その後のワークショップで開示されたCD分子が挙げられる。このような分子の例としては、CD27、CD30、CD39、CD40およびこれらに対するリガンド(CD27リガンド、CD30リガンドおよびCD40リガンド)が挙げられる。これらのいくつかは、TNFレセプターファミリーのメンバーであり、そしてまた、41BBおよびOX40を含む;このリガンドは、しばしば、TNFファミリーのメンバーであり(41BBリガンドおよびOX40リガンドであるので);従って、TNFファミリーおよびTNFRファミリーのメンバーはまた、本発明を使用して発現され得る。
【0050】
酵素的に活性なポリペプチドがまた、本発明に従って発現され得る。例としては、メタロプロテイナーゼ−ジスインテグリンファミリーメンバー、種々のキナーゼ、グルコセレブロシド、スーパーペルオキシドジスムターゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーター、第VIII因子、第IX因子、アポリポタンパク質E、アポリポタンパク質A−1、グロビン、IL−2アンタゴニスト、α−1アンチトリプシン、TNF−α変換酵素(TACE)、および多数の他の酵素が挙げられる。酵素的に活性なタンパク質のリガンドはまた、本発明のカセットおよびベクターを使用して発現され得る。
【0051】
本発明の組成物および方法はまた、他の型の組換えタンパク質および組換えポリペプチド(免疫グロブリン分子またはその一部およびキメラ抗体(例えば、マウス抗原結合領域に結合したヒト定常領域)を含む)またはそのフラグメントの発現に有用である。免疫グロブリン分子をコードするDNAを加工して、組換えタンパク質をコードするDNA(例えば、単鎖抗体、親和性の増強した抗体、または他の抗体ベースのポリペプチド(例えば、Larrickら,Biotechnology 7:934−938(1989);Reichmannら,Nature 332:323−327(1988);Robertsら,Nature 328:731−734(1987);Verhoeyenら,Science 239:1534−1536(1988);Chaudharyら,Nature 339:394−397(1989)を参照のこと))を生じ得る、多数の技術が公知である。クローン化したヒト化抗体としては、リンフォトキシン−βレセプターおよびインテグリン(例えば、VLA−1、VLA−4およびαvβ6)に特異的に結合するものが挙げられる。このような抗体は、アゴニストであってもアンタゴニストであってもよい。
【0052】
種々の融合タンパク質がまた、本発明の方法および組成物を使用して発現され得る。このような融合タンパク質の例としては、免疫グロブリン分子の一部との融合物として発現されるタンパク質、ジッパー部分を有する融合タンパク質として発現されるタンパク質、ならびにサイトカインおよび増殖因子(例えば、GM−CSFおよびIL−3、MGFおよびIL−3)の融合タンパク質のような新規な多機能タンパク質が挙げられる:WO 93/08207およびWO 96/40918は、CD40Lと呼ばれる分子の種々の可溶性オリゴマー形態の調製を記載し、これらは、それぞれ、免疫グロブリン融合タンパク質およびジッパー融合タンパク質を含み;これらにおいて議論される技術は、他のタンパク質に適用可能である。
【0053】
一旦目的のポリヌクレオチドが発現されると、発現産物(例えば、タンパク質またはポリペプチド)は、当該分野で標準的な技術を使用して精製され得る。例えば、目的のポリヌクレオチドが精製タグを含む融合ポリペプチドをコードする場合、このポリペプチドは、このタグに特異的に結合する抗体を使用して精製され得る。1つの局面において、タグ分子をコードするオリゴヌクレオチドは、所望のポリペプチドをコードする目的のポリヌクレオチドの5’末端または3’末端において連結されている;このオリゴヌクレオチドは、ポリHis(例えば、6His)または他の「タグ」(例えば、既存の市販の抗体について、FLAG、HA(ヘマグルチニンインフルエンザウイルス)またはmyc)をコードし得る。このタグは、代表的に、ポリペプチドの発現の際に、ポリペプチドに融合し、そして、宿主細胞からの所望のポリペプチドの親和性精製のための手段として機能し得る。親和性精製は、例えば、親和性マトリクスとしてタグに対する抗体を使用するカラムクロマトグラフィーによって達成され得る。必要に応じて、タグは、その後、タンパク質分解性の切断のような種々の手段によって精製したポリペプチドから除去され得る。
【0054】
本発明の発現カセットおよびベクターは、宿主細胞への目的のポリヌクレオチドの安定な移送を提供するために使用され得る。安定な移送とは、目的のポリヌクレオチドが、宿主において継続的に維持されることを意味する。本発明の発現カセットまたはベクターはまた、宿主細胞内での目的のポリヌクレオチドの一過性の発現を提供し得る。一過的にトランスフェクトされた宿主細胞は、細胞の複製および増殖の間に、外来性DNAを欠失する。
【0055】
本発明の発現カセットは、処置の必要なヒトまたは動物に治療剤を送達するために使用され得る。あるいは、本発明の発現カセットは、被験体(例えば、ヒト)へのワクチン目的のため、特に、魚、ブタ、ウマ、ウシ、イヌおよびネコの種のような食用の動物を含む、家畜動物のワクチン摂取のために、インビボにおいて免疫原性ポリペプチドをコードする因子を送達するために使用され得る。
【0056】
本発明の発現カセットは、代表的に宿主細胞のゲノムと相同な隣接配列を含む、裸の核酸構築物として直接投与され得る。脊椎動物細胞による裸の核酸構築物の取込みは、微粒子銃形質転換およびリポフェクチンを含むいくつかの公知の技術によって増強される。
【0057】
あるいは、発現カセットは、プラスミドベクターまたはウイルスベクターを含む、ベクターの一部として投与され得る。
【0058】
代表的には、発現カセットまたはベクターは、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と合わせられて、薬学的組成物を生成する。適切なキャリアおよび希釈剤としては、等張の生理食塩溶液(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水を含む)が挙げられる。発現カセットまたはベクターを含む組成物は、例えば、筋肉内投与を含む種々の型の投与のために処方され得る。
【0059】
発現カセットまたはベクターを含む組成物が、注射可能な形態で使用される場合、この組成物は、代表的に、処置されるべき部位における直接注射のための注射可能処方物について、薬学的に受容可能であるビヒクルと混合される。薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤は、例えば、滅菌等張溶液であり得る。発現カセットまたはベクターを含む組成物はまた、経口的に活性な形態で処方され得る。
【0060】
実際の処方は、当業者により容易に決定され得、そして、投与される物質の性質および投与経路に依存して変化する。
【0061】
使用される物質の用量は、種々のパラメータによって、特に、使用される物質、処置されるべき被験体の年齢、体重および状態、使用される投与経路、ならびに、必要とされる臨床レジメンによって、調節され得る。医師は、任意の特定の被験体および状態に必要とされる投与経路および投薬量を決定し得る。
【実施例】
【0062】
(pV10ベクターの構築)
pV10の構築のさらなる詳細を、図1に概説する。ゲノムDNAを、ヒトサイトメガロウイルス株AD169(ATCC番号VR−538)に感染したヒト2倍体線維芽細胞から単離し、これを鋳型として使用して、CMV最初期遺伝子1プロモーター/エンハンサー領域(CMV IE1 P/E)(CMV IE1遺伝子の5’UTRの詳細については、図11(B)(配列番号1)を参照のこと)をPCRにより増幅した。プロモーターを、5’末端にHindIII部位を含むプライマー
【0063】
【数1】
および3’末端にBamHI部位を含むプライマー
【0064】
【数2】
を使用して増幅した。制限部位に先行する末端の「t」ヌクレオチドは、制限酵素消化を促進するためにオリゴヌクレオチド設計に含められ、クローニング工程において排除される。
【0065】
全てのPCR反応を、DNAエンジンPTC−200 Pelier Thermal
Cycler(MJ Research,Watertown,MA)にて行なった。合計反応容量は、100μl(1×NEB Ventポリメラーゼ緩衝液(10mM KCl、20mM Tris、25℃にてpH8.8、10mM (NH4)SO4、2mM MgSO4、0.1% Triton X−100)、2.5mM dNTP、2単位のVent DNAポリメラーゼ(New England Biolabs,Beverly,MA)、1μgの各プライマー、鋳型としてCMV感染細胞から単離した1μgのゲノムDNA)であった。反応条件は以下の通りであった:99℃で1分間、55℃で30秒間、75℃で1.5分間を15サイクル。得られたフラグメントを、制限酵素BamHIおよびHindIII(New England Biolabs)で消化し、BamHIおよびHindIIIで消化したクローニングベクターpUC19にサブクローニングした。インサートの配列解析を決定し、これは、クローニングされたCMV IE1プロモーター/エンハンサー領域の公開された配列と一致した。
【0066】
(pV40ベクターの構築)
pV40の構築を図2に概説する。ポリAシグナルを含むhGHv遺伝子の3’UTRを、ヒト線維芽細胞から単離したゲノムDNAからPCRにより増幅した。5’プライマーの(+)鎖(TTTTGGATCCCTGCCCGGGTGGCATCC;配列番号20)は、末端にBamHI制限部位を含み、そして、3’プライマーの(−)鎖は、末端にEcoRI部位を含んだ(TTTTGAATTCATGAGAGGACAGTGCCAAGC;配列番号21)。PCR条件は、pV10の構築について記載したのと同じであった。得られたPCRフラグメントを、BamHIおよびEcoRIで消化し、ゲル精製し、そして、BamHIおよびEcoRIで消化したベクターpV10に連結した。得られたプラスミド(pV40と命名)を、制限酵素分析により評価した。その後の配列決定により、少数のヌクレオチドが、このhGHv遺伝子の3’UTR(配列番号19)とGenBank登録番号K00470において公開されたhGHv遺伝子配列(配列番号18)との間で異なることが示された。少なくともいくつかの変化が、対立遺伝子の改変によるものである。
【0067】
(pV70ベクターの構築)
pV40ベクターを、BspEIおよびHpaIで消化して、イントロンA領域の317ヌクレオチド部分(IVS)を除去した(例えば、図2および3を参照のこと)。pV40のdhfrコード領域のBspEI−HpaIへの平滑末端ライゲーションにより、pV60を作製した。pV70発現ベクターは、転写を調節するために、ヒトサイトメガロウイルス最初期1(hCMV IE1)プロモーター/エンハンサー領域を含む。このベクターはまた、hCMV IE1 5’UTRおよびイントロンAを含み、このイントロンは、317塩基対の欠失を含む。転写の終結のために、ベクターは、ヒト成長ホルモン改変体ポリアデニル化(hGHvポリA)領域、配列番号19を含む。pV40、pV60およびpV70の構築は以下に詳説され、そして、図面にさらに記載される。
【0068】
(A.pXLC.1の作製)
抗体に対する軽鎖コード配列を含むPCR産物をBamHIで消化して、発現ベクターpV70における固有のBamHIにクローニングした(図3)。軽鎖コード領域を、hCMV IE1イントロンの3’末端の5’UTR配列と、hGHvポリA領域の5’末端との間の固有のBamHIに挿入した。このプラスミドをpXLC.1と名付けた。図4は、pXLC.1ベクターの作製の概略図を示す。
【0069】
(B.neoカセット−pXLC.2の追加)
ネオマイシントランスフェラーゼ(neo)発現カセットを、選択マーカーとして機能するように、pXLC.1に導入した(図5)。neoカセットを、市販のpGT−N28と呼ばれるプラスミド(New England Biolabs、カタログ番号307−28)からBamHI/EcoRIフラグメントとして調製した。このプラスミドにおいて、neo遺伝子は、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターにより駆動され、PGKポリアデニル化部位において終結される。neoカセットの5’末端にあるBamHI部位を、以下のアダプターオリゴ:
【0070】
【数3】
を使用して、NarI末端に変換した。
【0071】
これらのリンカーを用いて、新しいEcoRI部位をまた追加した。このアダプターをまずBamHI/EcoRI切断したneoフラグメントに連結し、この変換されたNarI/EcoRIフラグメントを、次いで、NarIおよびEcoRIで消化したpXLC.1にクローニングした。このようにして、neo発現カセットを、プラスミドの軽鎖配列の3’末端に挿入した。このプラスミドを、pXLC.2と名付けた(図5)。
【0072】
(重鎖発現ベクターpXHC.5の構築)
(A.重鎖のRT−PCR)
重鎖を、5’PCRプライマー:
【0073】
【数4】
を使用するRT−PCR反応から増幅し、この配列において、斜体の配列は、BamHI部位を有する追加されたリンカー領域であり、そして、下線の塩基は、重鎖コード配列内の第2のメチオニンに対応する。使用した3’PCRプライマー:
【0074】
【数5】
はまた、BamHI部位を有する追加されたリンカー領域(斜体)、および終止コドンを含む重鎖コード配列に対応する配列(下線)を含む。予想された1268塩基対のPCR産物を得た。
【0075】
(B.pXHCの構築)
使用した5’PCRプライマーは、PCR産物に含まれるコード領域の開始ATGではなく、コード領域の第2のATGコドンにハイブリダイズしたので、重鎖コード領域は不完全であった。不完全な重鎖を含むBamHIフラグメントを、プラスミドpV60にクローニングした(図6)。このベクターは、イントロン内の欠失の部位にdhfrコード領域を含むこと以外は、pV70(上記)と同一である。重鎖コード領域を、hCMV IE1イントロンの3’末端にある5’非翻訳配列と、hGHv改変体ポリA領域の5’末端との間の、固有のBamHI部位に挿入した。不完全な重鎖を有するこのプラスミドを、pXHCと名付けた。
【0076】
(C.重鎖コード配列−pXCH.1の完成)
重鎖配列から欠失しているコード領域をpXHC内に挿入して、pXHC.1と命名されたプラスミドを作製した(図7)。これを行なうために、鋳型として抗体に対するコード配列を含むプラスミドを使用するPCRによって、フラグメントを作製した。使用した5’CRプライマーは、以下の通りであった:
【0077】
【数6】
斜体の配列は、BamHI部位のpXHC配列5’に対応し、太字の配列は、重鎖配列内の開始コドンより2塩基前から始まる配列に対応する。使用した3’プライマーは、CTGAGGAGACGGTGACCAGGGTCCCTTGGCCCC(配列番号9)であった。このプライマーは、第1エキソンの末端、重鎖可変領域にハイブリダイズする。予測されたように、445塩基対のPCR産物が得られ、PstIおよびStuIで切断した。PstII−StuIフラグメントを、PstIおよびStuIで切断したpXHCにクローニングして、pXHC.1を得た。
【0078】
(D.イントロンのdhfr−pXHC.3の除去)
pXHC.1は、hCMV IE1イントロン内にdhfr遺伝子を含んだ。この構成で見出される増幅の潜在的な問題に起因して、dhfr遺伝子をイントロンから除去し、そして、発現カセットを、重鎖カセットの3’に挿入した(図8)。第1の工程は、イントロンからのdhfr遺伝子の除去であった。この工程を、PstI/EcoRIフラグメントとしてpXHC.1から重鎖コード配列を切断し、同じ酵素を用いて切断したpXLC.1プラスミドにクローニングすることによって達成した。このクローニング工程は、単に、プラスミド内の重鎖と軽鎖とを交換した。得られたプラスミドは、dhfr遺伝子を含むイントロンが、pXLC.1について上述したような欠失を有するイントロンにより置き換えられていることを除いて、pXHC.1と同一であった。この重鎖プラスミドを、pXHC.3と名付けた(図8)。
【0079】
(E.dhfrカセット−pXHC.5の挿入)
dhfr構成の変更における第2の工程は、重鎖発現カセットの3’へのdhfr発現カセットの挿入であった(図9)。dhfr発現カセットは、BglII/BamHIフラグメント上のプラスミドpSI−DHFRに由来し、SV40初期プロモーター、dhfr遺伝子およびSV40ポリA領域を含む。このフラグメントを、以下のアダプターオリゴを使用して、pXHC.3のhGHvポリA領域の3’末端に位置するEcoRI部位にクローニングした:
【0080】
【数7】
このアダプターをまず、EcoRI切断したプラスミドに連結し、次いで、BglII/BamHI dhfrカセットをこのアダプタープラスミドに連結した。このプラスミドを、pXHC.5と名付けた(図9)。
【0081】
(pXLC.2およびpXHC.5の特徴づけ)
両方のプラスミドを、制限酵素を使用して分析し、挿入されたフラグメントの存在および配向を確認した。さらに、プラスミドのコード領域を配列決定して、PCRまたはクローニングの工程の間に変異が蓄積されていないことを確認した。
【0082】
機能的なneo選択マーカーの存在を、pXLC.2をCHO細胞にトランスフェクトし、G418に対する耐性を示すことによって確認した。二重選択を行なう能力は、pXLC.2プラスミドおよびpXHC.5プラスミドを、血清を含まない、アダプターDG44 CHO宿主に同時にトランスフェクトした場合に示された。二重選択培地(α−MEM 10% dFBS + 400mg/ml G418)において、同時トランスフェクションからコロニーが芽生えた。同じ条件下で、いずれかの選択単独(α−MEMまたは400mg/ml G418)は、トランスフェクトされていない細胞を殺傷し得た。
【0083】
(ベクターの構築:pV80ベクターおよびpV90ベクター)
pV80を、重鎖発現ベクターpXHC.5から作製した(図10)。重鎖コード配列を、BamHIを使用してpXHC.5から欠失させた。骨格を、BamHI部位において連結して再度環状にした。
【0084】
pV80ベクターに対して2つの変更を行なって、pV90を作製した(図11)。pV80構築物の位置3166(dhfrコード領域の末端、添付の配列を参照のこと)において見出されるNotI部位を破壊した。このことを達成するために、プラスミドをNotIで消化し、そして、Klenowポリメラーゼを使用して、突出を「埋めた」。結果として、再連結されたプラスミドは、位置3166のNotI部位がなくなった。次いで、新しいNoI部位を、BamHIでベクターを消化し、そして、それ自体と以下の14マー:GATCCGCGGCCGCG(配列番号12)とをアニーリングすることによって作製されるNotIリンカーを導入することにより、クローニング部位において作製した。互いにアニーリングすると、リンカー配列は以下のようになる:
【0085】
【数8】
このクローニング工程は、NotI部位のいずれかの側にBamHI部位を再現した。これらのBamHI部位は、このベクターを用いて作製された安定な細胞株の遺伝学的分析において有用であり得る。pV90のクローニング部位の配列を、配列決定解析により確認した。
【0086】
pV80ベクターにおいて、ポリヌクレオチド(例えば、コード配列)が、BamHI部位
【0087】
【数9】
にクローニングされ得る。太字の配列がBamHI部位を表す。pV90ベクターにおいて、ポリヌクレオチド(例えば、コード配列)が、BamHI部位またはNotI部位
【0088】
【数10】
にクローニングされ得る。ここで、太字の配列はBamHI部位を表し、そして、下線の配列はNotI部位を表す。最適な結果について、NotI部位を使用する場合、「C」は、Kozak配列(例えば、GGATCC GCGGCCGC C ATG(配列番号17))に最も良く適合するために、PCRプライマーの開始コドンより前に追加されるべきである。
【0089】
(pV80およびpV90における制限部位)
pV80およびpV90は、NotI制限部位を除いて、同一である:pV80は、位置3166(dhfrコード領域の末端)に単一のNotI部位を有し、そしてpV90は、位置1260(クローニング部位)に単一のNotI部位を有する。
【0090】
2つ以下が見出された一般的な制限部位としては、表1に列挙されるものが挙げられる。
【0091】
【表1】
以下の一般的な酵素切断部位は見出されなかった:
【0092】
【表2】
。
【0093】
(レポーター遺伝子のクローニング)
CMV IE1、イントロンAフラグメントおよびhGHvポリA構築物を含む発現カセット/ベクターを、市販のSV40ベースの高発現ベクターと比較した。
【0094】
分泌されたアルカリホスファターゼ(SEAP)を、プラスミドの比較のためのレポーターとして使用した。SV40ベースの発現ベクターである、pSEAP2−コントロール(カタログ番号6052−1,Clontech)は、SV40初期プロモーターおよびSV40エンハンサーの制御下でSEAPを発現する。SEAPをコードする配列の次に、SV40後期ポリアデニル化シグナルが続き、真核生物細胞におけるSEAP転写物の適切かつ効率的なプロセシングを保証する。MCSの上流に位置する隣接するポリアデニル化部位および転写ポーズ部位から構成される合成転写ブロッカー(TB)は、バックグラウンドの転写を減らす。このベクターは、SEAPの発現効率を増加することによってSEAPの感度を改善するか、または、ベクターの利用性を向上させる多数の特徴を組み込む。これらとしては以下が挙げられる:改善されたKozakコンセンサス転写開始部位;いくつかの遺伝子および/または細胞型において潜在性のスプライシングを生じ、そして、発現を減少させ得る、SV40の小さなtイントロンの除去;代表的に、mRNAレベルの5倍の増加をもたらす、SV40の初期ポリアデニル化シグナルから後期ポリアデニル化シグナルへの切り替え;拡張されたマルチプルクローニング部位(MCS);コンパクトなプラスミドのサイズ;ならびにSEAP mRNAの3’非翻訳領域に由来する外来性配列の除去。Genbank登録番号U89938。
【0095】
pCMV−hGHvPA−SEAPプラスミドを作製するために、PCRによりpSEAP2−コントロールプラスミドからSEAPをコードする配列を抽出し、これをpV100ベクターにクローニングした。pV110プラスミドは、pV90の派生物である(dhfr発現カセットがなく、ポリリンカーが異なるが、その他は同じである)。pCMV−hGHvPA−SEAPプラスミド構築物を、配列決定により評価した。
【0096】
トランスフェクションに使用した宿主は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)欠失チャイニーズハムスター卵巣細胞株DG44(Urlaubら、Cell 33,405−412(1983))であった。CMV−SEAPおよびpSEAP2−コントロールレポータープラスミドを、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)をコードし得るプラスミドと共に同時にトランスフェクトし、その結果、安定なトランスフェクト体を(pSI−DHFR.2、図12)について選択し得る。各トランスフェクションは、50μgのレポータープラスミドおよび5μgのpSI−DHFR.2を含んだ。全てのDNAを、Megaprepキット(Qiagen)により調製した。トランスフェクションの前に、DNAをETOH沈殿し、70% EtOHで洗浄し、乾燥させ、HEBS(20mM
Hepes、pH7.05、137mM NaCl、5mM KCl、0.7mM Na2HPO4、6mMデキストロース)中に再懸濁し、トランスフェクションの前に定量した。ネガティブコントロールは、レポーターコントロールとしてpUC18(ATCC番号37253)を含み、そして、トランスフェクションコントロールとしてはDNAなしのトランスフェクションを含んだ(表3)。
【0097】
細胞およびDNAを、0.28kVおよび950mFにて0.4cmのキュベット(BioRad)を使用して、0.8mlのHEBS中でのエレクトロポレーションによりトランスフェクトした。5E6細胞を各トランスフェクションに使用した。エレクトロポレーションのパルスの後、細胞を、室温にて5〜10分間キュベット内でインキュベートさせた。次いで、これらを、ヌクレオシドを含むαMEMおよび10% dFBS 10mlを含む遠心チューブに移し、1K RPMで5分間ペレット化した。再懸濁したペレットを、10%dFBSを含み、ヌクレオシドを含まないアルファMEM中、6ウェルプレート内に撒き、コロニーが形成するまで、加湿したインキュベーター内で、36℃にて5% CO2でインキュベートした。
【0098】
【表3】
トランスフェクションの約2週間後、pSIDHFR.2プラスミドのみを含むトランスフェクション中に、コロニーが形成した。安定なトランスフェクト体を、プールまたは単離体のいずれかとして分析した。特定の生産性を、アッセイにおいて評価した。このアッセイにおいて、培地を、新しい培地と交換し、そして24時間後に、培地をサンプリングし、細胞を計数した。24時間のアッセイの終わりに、生成物の力価を細胞数に対して規準化し、そして、生産性を細胞1個あたりのSEAP活性として表した。
【0099】
(SEAPアッセイ)
馴化培地を、Great EscAPeTM SEAP Reporter System 3(Clontech)を使用して分析した。このアッセイは、馴化培地においてSEAP活性を検出するために、蛍光基質を使用する。このキットを、以下の例外を除いて、製造業者の指示書に従って、96ウェル形式において使用した。キットのアッセイ緩衝液を、1.5M ジエタノールアミン、0.75mM MgCl2、15mM L−ホモアルギニンおよび10% Emerald II(カタログ番号9761、Applied Biosystems)で置き換えた。全ての標準およびサンプルを、添付の希釈緩衝液ではなく、新しい培地に希釈した。60分後に1回の読み取りを行なう代わりに、複数の読み取りを、10〜20分間隔で行い、これを使用して、1分あたりの相対蛍光単位(RFU/分)としてSEAP活性を表した。プレートリーダー(Cytofluor
II,PerSeptive Biosystems)に使用した発光フィルターは、推奨される449nmの代わりに460nmであった。
【0100】
RFU/分の値を、キットに添付される標準物質に基づく標準曲線に対して基準化した。添付される標準物質は定量化されていなかったので、全ての値は相対値である。これらの相対値を、細胞数およびインキュベーション期間に対して規準化し、相対特異的生産性(1日あたりの、細胞1個あたりのSEAP活性)を生じた。
【0101】
(プール)
コロニーが出現した後、各トランスフェクションから細胞を回収し、プールした。プールを、6ウェルプレート内の各ウェルに2×105個の細胞で撒いた。次の日に、培地を2mlの新しい培地と交換した。24時間後、細胞を計数し、培地のサンプルを使用して、SEAP活性を評価した。プールアッセイからの結果を図13に示す。
【0102】
(単離体)
単離体を、トランスフェクションからコロニーを「ピックアップ」することによって得た。「ピックアップ」は、50μlに設定したP200 Pipetmanを用いてコロニーの上で直接吸引することによって達成した。吸引したコロニーを、まず、48ウェルプレートに移し、次いで、十分な細胞数になると6ウェルプレートに移した。特定の生産性を、上記の24時間アッセイを使用して、ほぼコンフルエントな細胞密度の6ウェルプレートにおいて評価した(図14)。
【0103】
図13および14に要約したように、CMV IEプロモーターおよびhGHvポリAシグナルドメインの組合せに基づく発現ベクターは、高い発現能力を誇る市販のベクターよりもかなり優れていた。
【0104】
本発明の多数の実施形態が記載された。それでもなお、種々の改変が、本発明の精神および範囲から逸脱することなくなされ得ることが理解される。従って、他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B−1】
【図11B−2】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B−1】
【図11B−2】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−213718(P2010−213718A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114785(P2010−114785)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【分割の表示】特願2006−503592(P2006−503592)の分割
【原出願日】平成16年2月13日(2004.2.13)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【分割の表示】特願2006−503592(P2006−503592)の分割
【原出願日】平成16年2月13日(2004.2.13)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】
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