説明

外用剤または経口用美肌促進剤

【課題】ターミナリアベリリカを用いた新たな用途を提供すること。
【解決手段】本発明の外用剤は、ターミナリアベリリカより得られる加工物を有効成分として含有する。ターミナリアベリリカより得られる加工物は、優れた活性酸素消去能、チロシナーゼ阻害作用、および乳酸デヒドロゲナーゼ阻害作用を有しており、シミ、ソバカス、シワなどの予防または改善作用、粘膜強度の維持または改善作用、歯周病予防、およびう蝕予防作用を有する。さらに、本発明の経口用美肌促進剤も本発明の外用剤と同様の作用を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターミナリアベリリカより得られる加工物を有効成分として含有する外用剤または経口用美肌促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ターミナリアベリリカ(Terminalia bellirica)は、シクンシ科の植物である。例えば、インドにおいては、その果実は主に下痢止めとして利用されており、完熟果実は止瀉剤として利用されている。
【0003】
近年、ターミナリアベリリカの果実には、血管の繊維化を防止する作用を有することが見出され、その乾燥粉末または抽出物からなる血管繊維化の予防または治療薬が開示されている(特許文献1)。しかし、ターミナリアが有する作用については、未だ十分な検討がされておらず、ターミナリアは、現状では十分に利用されていない。
【特許文献1】特開2004−75584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ターミナリアベリリカが有する新たな作用を見出すことにより、ターミナリアの用途拡大を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、ターミナリアベリリカが有する作用について鋭意検討を行った。その結果、ターミナリアベリリカは、肌を美しくするため、または肌、口腔内などの老化および疾病を予防するために必要とされる優れた活性酸素消去能、チロシナーゼ阻害作用、および乳酸デヒドロゲナーゼ阻害作用を有することを見出した。
【0006】
本発明は、ターミナリアベリリカより得られる加工物を有効成分として含有する、外用剤を提供する。
【0007】
さらに、本発明は、ターミナリアベリリカより得られる加工物を有効成分として含有する、経口用美肌促進剤を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ターミナリアベリリカが有する作用を効率よく利用し得る外用剤および経口用美肌促進剤を提供することができる。ターミナリアベリリカは、上述のように優れた活性酸素消去能、チロシナーゼ阻害作用、および乳酸デヒドロゲナーゼ阻害作用を有するため、肌質を改善する効果ならびに肌、口腔内などの老化および疾病を予防する効果を発揮し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(ターミナリアベリリカから得られる加工物)
本発明に用いるターミナリアベリリカより得られる加工物(以下、単に加工物ということがある)とは、葉、根、樹皮、花、木部、果実などの部位に、乾燥処理、粉砕処理、圧搾処理、抽出処理などを施して得られるものをいう。このような加工物としては、乾燥物、ペースト、搾汁、抽出物などが挙げられる。本発明においては、ターミナリアベリリカのいずれの部位を用いてもよく、特に、種子以外の部位が好ましく、果実の種子を除く部位(果皮または果肉部)がさらに好ましい。
【0010】
上記加工物の一様態である乾燥物は、例えば、ターミナリアベリリカの各部位を、日干し、半日干し、陰干し、加熱乾燥、常温乾燥、凍結乾燥などを行うことによって得られる。乾燥後、必要に応じて、ボールミル、ハンマーミルなどを用いて粉末化して、乾燥粉末としてもよい。
【0011】
上記加工物の一様態であるペーストは、例えば、ターミナリアベリリカの各部位を、乾燥せずにマスコロイダーなどで粉砕することによって得られる。さらに、このペーストをろ過または遠心分離をすることによって搾汁が得られる。搾汁は、上記ターミナリアベリリカの各部位を圧搾しても得られる。得られた搾汁は、そのまま用いてもよく、あるいは乾燥させてエキス末としてもよい。
【0012】
上記加工物の一形態である抽出物は、例えば、水または有機溶媒を用いて、上記ターミナリアベリリカの各部位をそのまま、ペースト、あるいは乾燥物から抽出して得られる。特に、ペーストまたは乾燥粉末から抽出することが好ましい。
【0013】
上記抽出物を得るために用い得る溶媒としては、水、有機溶媒、および水と有機溶媒との混合溶液が挙げられ、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、アセトン、ヘキサン、シクロヘキサン、プロピレングリコール、エチルメチルケトン、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、食用油脂、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、および1,1,2−トリクロロエテンなどが挙げられる。これらの中で、好ましくは極性有機溶媒、より好ましくはエタノール、n−ブタノール、メタノール、アセトン、プロピレングリコール、および酢酸エチル、最も好ましくはエタノールである。
【0014】
抽出に使用する溶媒の量は、ターミナリアベリリカに含まれる成分が十分に抽出される量であれば、特に制限されない。例えば、ターミナリアベリリカの乾燥物から抽出物を得る場合、溶媒の量は、乾燥物1質量部に対して、好ましくは1〜50質量部である。乾燥物以外から抽出物を得る場合、溶媒の量は、乾燥物1質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部である。
【0015】
抽出温度は、特に制限されず、用いる溶媒の沸点に応じて適宜設定され得る。効率よく抽出するために、抽出温度は、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上であり、好ましくは120℃以下、より好ましくは用いる溶媒の沸点以下である。
【0016】
抽出時間は、用いる抽出溶媒の量または抽出温度によって適宜設定され得る。抽出時間は、好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上であり、好ましくは72時間以下、より好ましくは48時間以下である。
【0017】
このようにしてターミナリアベリリカより抽出液を得ることができる。得られた抽出液を、そのまま抽出物として用いてもよく、必要に応じて、当業者が通常用いる方法で濃縮して、ペーストあるいは粉末の形態の抽出物として用いてもよい。抽出液を濃縮するために、加熱乾固、減圧濃縮乾固、凍結乾燥などが行われる。これらの中で、抽出液中の成分の変性を抑える点から、好ましくは、減圧濃縮乾固または凍結乾燥が行われる。
【0018】
さらに、得られた抽出物をより活性の高いものとするために、この抽出物を合成吸着剤(ダイアイオンHP20、セファビースSP825、アンバーライトXAD4、MCIgelCHP20Pなど)およびデキストラン樹脂(セファデックスLH−20など)を用いて、成分を分画または濃縮することも可能である。
【0019】
このようにして得られたターミナリアベリリカの加工物は、優れた活性酸素消去能、チロシナーゼ阻害作用、および乳酸デヒドロゲナーゼ阻害作用を有する。
【0020】
(活性酸素消去作用)
ターミナリアベリリカより得られる加工物は、優れた活性酸素除去作用を有しており、生体内に存在するSODと同様の活性を示し、速やかに活性酸素を消去し得る。
【0021】
活性酸素とは、通常の酸素よりも活性化された酸素およびその関連化合物をいい、特に生体との関連では、スーパーオキサイド、過酸化水素、ヒドロキシラジカル、一重項酸素などが挙げられる。これらの活性酸素は、生体内に過剰に存在すると様々な組織障害をもたらすことが明らかとなっている。
【0022】
生体内においては、通常、生体内で生産され他の活性酸素の出発物質ともなっているスーパーオキサイドは、細胞内に含まれているスーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)の触媒作用により逐次消去されている。しかし、スーパーオキサイドの産生が過剰である場合、あるいは老人の身体のようにSODの作用が低下している場合においては、スーパーオキサイドが十分に消去されず、生体内のスーパーオキサイド濃度が高くなる。その結果、関節リウマチ、ベーチェット病などの組織障害、白内障、シミ、ソバカス、しわ、肩凝り、冷え性などを引き起こす。したがって、活性酸素を速やかに消去することは、生体内における様々な疾病を予防するために重要である。特に、紫外線を直接受け、活性酸素を生じやすい表皮に、ターミナリアベリリカより得られる加工物を外用剤として適用することによって、シミ、ソバカス、シワなどを予防または改善することが可能であり、皮膚の老化を予防し得る。
【0023】
(チロシナーゼ阻害作用)
ヒトの表皮は、紫外線を受けると、生体防御反応の一つとして、紫外線からの損傷を防ぐために、メラニンを生成し、肌を黒色化することで、紫外線からのダメージを軽減している。通常、このメラニンは、肌の代謝とともに消失する。しかし、老化とともに肌の代謝が悪くなると、肌の深部にメラニンが蓄積してしまう。さらに、紫外線などの影響でメラニンを生成するメラノサイトが、メラニンを過剰に生成する場合もある。これらの要因によって、シミ、そばかすなどが形成され、肌に黒色の沈着が生じる。
【0024】
これらの一連のメラニン生成過程を抑制することによって、シミ、そばかすなどが少ない見た目に美しい肌、すなわち美肌となる。メラニンは、チロシナーゼという酵素によって生成される。ターミナリアベリリカより得られる加工物は、このチロシナーゼを阻害する。したがって、外用剤として適用するだけでなく経口摂取によっても、チロシナーゼを阻害する効果が期待され、シミ、ソバカスなどの予防および改善をし得る。
【0025】
(乳酸デヒドロゲナーゼ阻害作用)
肌、粘膜などを構成するタンパク質であるコラーゲンは、肌、歯茎などの強度を保つだけではなく、シワになりにくい肌を作る、粘膜強度を維持する、または粘膜強度を向上させる点で注目されている。このコラーゲンの合成は、真皮の繊維芽細胞によって行われる。しかし、年齢とともにコラーゲン合成能力は低下し、変性したコラーゲンが真皮中に多くなることによって、シワが形成される。したがって、コラーゲン合成促進作用は、肌の老化および粘膜の強度低下を防ぐ点で重要な作用であり、乳酸デヒドロゲナーゼの阻害によって、コラーゲン合成を促進し得る。
【0026】
ターミナリアベリリカより得られる加工物は、この乳酸デヒドロゲナーゼを阻害する。したがって、肌、口腔内のような粘膜などに適用する外用剤として使用することで、コラーゲン合成を促進し得るため、肌のシワを防止し、または粘膜の強度を維持あるいは向上し得る。
【0027】
さらに、乳酸デヒドロゲナーゼを阻害することは、特に口腔内においては歯周病を予防するだけでなく、う蝕も予防することが可能である。う蝕の発生過程の一要因として、乳酸デヒドロゲナーゼが生成する乳酸が挙げられる。この乳酸が、歯を溶解してう蝕となるため、乳酸デヒドロゲナーゼを阻害することによって、う蝕を予防することができる。
【0028】
(外用剤)
本発明の外用剤は、ターミナリアベリリカより得られる加工物を有効成分として含有する。本発明の外用剤を肌または粘膜に投与することによって、シミ、ソバカス、およびシワといった肌の症状の予防または改善(美肌促進作用)、粘膜強度を向上し、歯周病などの疾病予防、う蝕予防などの効果が得られる。
【0029】
このような効果を得るために、本発明の外用剤に含有されるターミナリアベリリカより得られる加工物の量は、特に制限されない。本発明の外用剤中に、この加工物(乾燥質量)は、好ましくは0.00001質量%〜40質量%、より好ましくは0.001質量%〜20質量%の割合で含有される。
【0030】
本発明の外用剤は、必要に応じて種々の基剤または添加剤を添加し得る。このような基剤としては、例えば、グリセロール、エタノール、パラベン、ブチレングリコールなどが挙げられる。添加剤としては、例えば、外観、使用感、保存安定性などをより向上させるために、デキストリンなどの賦形剤、香料、色素、保存剤、シリコン系ポリマー、アクリル系ポリマー、カルボキシビニル系ポリマーなどの増粘剤、EDTAなどのキレート剤、スクラロースなどの甘味料、メントールなどの清涼剤、フェノキシエタノールなどの防腐防黴剤などが挙げられる。
【0031】
本発明の外用剤は、医薬品、医薬部外品、化粧品、トイレタリー用品などとして使用できる。例えば、ローション剤,乳剤,ゲル剤,クリーム剤,軟膏剤,粉末,顆粒などの形態に加工され得る。具体的には、化粧水、化粧クリーム、乳液、クリーム、パック、ヘアトニック、ヘアクリーム、シャンプー、ヘアリンス、トリートメント、ボディシャンプー、洗顔剤、石鹸、ファンデーション、白粉、口紅、リップグロス、頬紅、アイシャドー、整髪料、育毛剤、水性軟膏、油性軟膏、目薬、アイウォッシュ、シップ、ジェルなどの形態が挙げられる。また、口腔へ適用する場合は、歯磨剤、マウスウォッシュ、スプレーなどの形態が挙げられる。
【0032】
さらに、本発明の外用剤が有する作用をより増強したり、補填したりする目的で、様々な助剤を添加することもできる。このような助剤としては、例えば、他の薬効成分(活性酸素除去剤、抗酸化剤、抗炎症剤、細胞賦活剤、ビタミン剤、ホルモン剤、これらの作用を有する動植物由来の抽出物など)、他の油剤(リノール酸、リノレン酸、パルミチン酸、DHA、EPAなどの不飽和脂肪酸およびその誘導体、亜麻仁油、ヤシ油、ホホバ油、オリーブ油、スクワラン、スクワレン、馬油、コメヌカ油、ヒマシ油などの動植物より抽出された油およびその誘導体など)、保湿剤(コラーゲンまたはその分解物、カロットエキスなどに含まれるコラーゲン類似ペプチド、大豆ペプチド、アミノ酸、ヒアルロン酸などのムコ多糖類、コンドロイチンなどのアミノ糖、トレハロースなどの糖類、海藻類、アルギン酸、グルコマンナン、ペクチンなどの水溶性食物繊維など)、界面活性剤(レシチンや脂肪酸エステル、アミノ酸誘導体など)、紫外線吸収剤(酸化亜鉛、酸化チタンなど)、紫外線吸収促進剤などが挙げられる。
【0033】
ターミナリアベリリカより得られる加工物は、活性酸素消去能を有するが、さらに活性酸素除去剤および抗酸化剤と併用することによって、より優れた抗酸化作用などを有する外用剤が得られる。このような活性酸素除去剤および抗酸化剤としては、カロテノイド類、L−システインおよびこれらの誘導体またはその塩、SOD、マンニトール、ハイドロキノン、トリプトファン、ヒスチジン、ケルセチン、ヘスペリジンなどのフラボノイド類、没食子酸およびその誘導体、ボタンピ抽出物、トマト抽出物、パセリ抽出物、メリッサ抽出物、オウゴン抽出物などの植物抽出物、BHT、BHAなどが挙げられる。これらの活性酸素除去剤および抗酸化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
ビタミン剤としては、例えば、レチノール、レチナール、レチノイン酸、3−デヒドロレチノール、3−デヒドロレチナール、3−デヒドロレチノイン酸などのビタミンA類;α−カロテン、β−カロテン、γ−カロテン、クリプトキサンチンなどのプロビタミンA類;チアミン(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン(以上ビタミンB6)、コバラミン(ビタミンB12)、ニコチン酸、ニコチンアミド、パントテン酸、ビオチン(ビタミンH)、葉酸(ビタミンM)などのビタミンB群類;アスコルビン酸(ビタミンC);エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)、コレカルシフェロール(ビタミンD3)などのビタミンD類;7−デヒドロコレステロール、エルゴステロールなどのプロビタミンD類;α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノールなどのビタミンE類;フィロキノン(ビタミンK1)、メナキノン(ビタミンK2)、メナジオン(ビタミンK3)などのビタミンK類などが挙げられる。立体異性体または光学異性体を有するものについては、いずれの異性体を用いることができ、cis、trans体混合物およびラセミ体を用いることもできる。
【0035】
次に、ビタミン様作用因子としては、ユビキノン、リポ酸(チオクト酸)、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの必須脂肪酸(ビタミンF)類;オロト酸(ビタミンB13)、カルニチン(ビタミンB)、 myo-イノシトール、コリン、ルチン、ヘスペリジン、エリオシトルリンなどのビタミンP類;メチオニンメチルスルホニウム(ビタミンU);パントテニルアルコールなどが挙げられる。立体異性体または光学異性体を有するものについては、いずれの異性体を用いることができ、cis、trans体混合物およびラセミ体を用いることもできる。
【0036】
また、上記ビタミン類およびビタミン様作用因子の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩;塩酸塩、硫酸塩、アンモニウム塩などの無機塩;乳酸塩、酢酸塩、トリエタノールアミン塩などの有機塩などが挙げられる。上記ビタミン類などの誘導体としては、アルキル、アルケニルもしくはアリールエステル、リン酸エステル、硫酸エステル、ホスファチジルエステル、グルコシド、ガラクトシド、マルトシド、ラクトシドなどの配糖体などが挙げられる。これらのビタミン剤などは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
本発明においては、上記ビタミン、ビタミン様作用因子、およびこれらの塩ならびに誘導体としては、動植物、藻類、微生物などから抽出または精製して得られた天然物由来のもの、あるいは化学的もしくは酵素反応を利用して合成したものを用いることができる。さらに、ポリフェノール化合物を配合することもでき、カテコール、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、タンニン酸(ガロイル没食子酸)、ハマメリタンニン(1、5−ジガロイルハマメロース)、プロアントシアニジン、カフェー酸誘導体、没食子酸、種々のピロガロールタンニン、カテコールタンニン、これらを含有する茶抽出物、ブドウ種子抽出物、松樹皮抽出物、甘藷茎葉抽出物などが挙げられる。
【0038】
細胞賦活剤としては、例えば、酵母抽出物、酵母培養上清、アスパラガス(Asparagus)属植物、アボカド(Persea americana Mill.)、アロエ(Aloe)属植物、アンズ(Prunus armeniaca L. var. ansu Maxim.)、イチョウ(Ginkgo biloba L.)、イヌブナ(Fagus japonica Maxim.)、オオニンニク(Allium sativum L. f. pekinense Makino)、オタネニンジン(Panax ginseng C.A.Meyer)、カミツレ(Matricaria chamomilla L.)、キハダ(Phellodendron amurense Rupr.)およびその同属植物、キュウリ(Cucumis sativus L.)、キンセンカ(Calendula arvensis L.)、シイタケ(Lentinus edodes Sing.)、シナサルナシ(キウイ)(Actinidia chinensis Planch.)、スギナ(Equisetum arvense L.)、セイヨウトチノキ(Aesculus hippocastanum L.)、セイヨウニンニク(Allium sativum L.)、センブリ(Swertia japonica Makino)、タマサキツヅラフジ(Stephania cepharantha Hayata)、チシャ(レタス)(Lactuca sativa L.)、トウガラシ(Capsicum annuum L.)、トウキンセンカ(Calendula officinalis L.)、トチノキ(Aesculus turbinata Blume)、ニンジン(Daucus carota L.)、ブクリョウ(マツホド)(Poria cocos Wolf)、ブドウ(Vitis vinifera L.)、ブナ(Fagus crenata Blume)、ヘチマ(Luffa cylindrica M.Roemen)、ベニバナ(Carthamus tinctorius L.)、マンネンロウ(Rosmarinus officinalis L.)、ミカン(Citrus)属植物、ムクロジ(Sapindus mukurossi Gaertn.)、ムラサキ(Lithospermum officinale L. var. erythrorhizon Maxim.)、ユーカリノキ(Eucalyptus)属植物、ユリ(Lilium)属などに属する植物の抽出物、ヒドロキシ脂肪酸およびその塩ならびにその誘導体、核酸およびその関連物質、卵殻膜より抽出されたタンパク質および異性化糖の混合物などが挙げられる。これらの細胞賦活剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
抗炎症剤としては、例えば、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、ベクロメタゾンおよびこれらのリン酸塩、プロピオン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩などのステロイド性抗炎症剤;サリチル酸、アスピリン、サリチルアミド、エテンザミド、サリチル酸メチルなどのサリチル酸誘導体;インドメタシン、スリンダクなどのインドール酢酸誘導体;フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾンなどのピラゾリジンジオン誘導体;メフェナム酸、フルフェナム酸などのアントラニル酸誘導体;イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセンなどのプロピオン酸誘導体;ジクロフェナック、フェンブフェン、ブフェキサマクなどのフェニル酢酸誘導体;ピロキシカムなどのベンゾチアジン誘導体などの非ステロイド性抗炎症剤;グリチルリチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウムなどのグリチルリチン酸塩およびグリチルリチン酸誘導体;グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ステアリル、ステアリン酸グリチルレチニル、3−サクシニルオキシグリチルレチン酸二ナトリウムなどのグリチルレチン酸塩およびグリチルレチン酸誘導体;グアイアズレン、グアイアズレンスルホン酸エチル、グアイアズレンスルホン酸ナトリウム、カマズレンなどのアズレン誘導体;アラントイン、アロイン、アロエエモジン、シコニン、イソブチルシコニン、アセチルシコニン、イソバレリルシコニンなどのシコニン誘導体;ギンセノシドRa1、ギンセノシドRa2、ギンセノシドRb1などのギンセノシド、20−グルコギンセノシドRfなどのギンセノシド誘導体;ペオニフロリン、ペオノール、ペオノシド、ペオノリドなどのペオノール誘導体などが挙げられる。
【0040】
抗炎症剤としては、抗炎症作用を有する植物抽出物も利用し得、例えば、オウゴン(Scutellariae Radix)、カンゾウ(Glycyrrhizae Radix)、クジン(Sophorae Radix)、サイコ(BupleuriRadix)、シャクヤク(Paeoniae Radix)、ショウマ(Cimicifugae Rhizoma)、タイソウ(Zizyphi Fructus)、チモ(Anemarrhenae Rhizoma)、ボタンピ(Moutan Cortex)、リュウタン(Gentianae Scabrae Radix)、レンギョウ(Forsythiae Fructus)などが挙げられる。
【0041】
保湿効果および細胞賦活効果をより向上させる目的で、上記以外の物質としてリン脂質を用いてもよい。このようなリン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール(カルジオリピン)、ホスファチジン酸などのグリセロリン脂質;リゾホスファチジルコリン(リゾレシチン)、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジン酸などのリゾグリセロリン脂質;スフィンゴミエリンなどのスフィンゴリン脂質;これらの水素添加物などが挙げられる。これらのリン脂質としては、大豆、卵黄など動植物より抽出または分離して得られるもの、あるいは化学的もしくは酵素的方法により合成されて得られる市販の化粧料または医薬品用原料を用いることができる。
【0042】
さらに、ホルモン剤としては、例えば、エストラジオールまたはその誘導体;ゲネスチン、ダイゼンなどのようなイソフラボン類などの植物性のホルモン様物質などが挙げられる。
【0043】
(経口用美肌促進剤)
本発明の経口用美肌促進剤は、ターミナリアベリリカより得られる加工物を有効成分として含有する。本発明の経口用美肌促進剤の形態としては、例えば、飲料、顆粒、錠剤、ガム、キャンディー、トローチ、ゼリー、グミ、ティーバッグなどが挙げられる。このように、美肌促進作用を得るために、経口摂取することも可能である。
【0044】
本発明の経口用美肌促進剤に含有されるターミナリアベリリカより得られる加工物の量は、特に制限されず、抽出物、乾燥粉末などの加工物の態様により異なる。例えば、ターミナリアベリリカの抽出物の場合、本発明の経口用美肌促進剤中に、乾燥質量換算で、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上の割合で含有され、好ましくは90質量%以下、より好ましくは60質量%以下の割合で含有される。ターミナリアベリリカの乾燥粉末の場合、本発明の経口用美肌促進剤中に、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上の割合で含有され、好ましくは90質量%以下、より好ましくは60質量%以下の割合で含有される。ペースト、搾汁、およびエキス末を用いる場合は、乾燥質量でターミナリアベリリカの乾燥粉末と同等量となるようにすればよい。
【0045】
その摂取量、特に制限されず、抽出物、乾燥粉末などの加工物の態様により異なる。例えば、ターミナリアベリリカの抽出物の場合、成人の1日あたりの摂取量は、乾燥質量換算で、好ましくは10mg以上、より好ましくは20mg以上であり、好ましくは1000mg以下、より好ましくは600mg以下である。ターミナリアベリリカの乾燥粉末の場合、成人の1日あたりの摂取量は、好ましくは100mg以上、より好ましくは200mg以上であり、好ましくは10000mg以下、より好ましくは6000mg以下である。
【0046】
本発明の経口用美肌促進剤は、必要に応じて、その他の成分を含有し得る。このようなその他の成分としては、例えば、ローヤルゼリー、プロポリス、ビタミン類(A、B、B、B、B12、ナイアシン、C、D、E、K、葉酸、パントテン酸、ビオチン、これらの誘導体など)、ミネラル(鉄、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、セレンなど)、キチン、キトサン、レシチン、ポリフェノール(フラボノイド、これらの誘導体など)、カロテノイド(リコピン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、ルテインなど)、キサンチン誘導体(カフェインなど)、タンパク質またはペプチド(大豆タンパク、コラーゲン、エラスチン、シルクまたはこれらの分解物など)、ムコ多糖類(ヒアルロン酸、コンドロイチン、デルマタン、ヘパラン、ヘパリン、ケタラン、これらの誘導体など)、アミノ糖(グルコサミン、アセチルグルコサミン、ガラクトサミン、アセチルガラクトサミン、ノイラミン酸、アセチルノイラミン酸、ヘキソサミン、それらの塩など)、アミノ酸(プロリン、グリシン、アルギニン、グルタミン酸など)、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖、環状オリゴ糖など)、リン脂質(ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリンなど)、スフィンゴ脂質およびその誘導体(スフィンゴミエリン、セラミドなど)、含硫化合物(アリイン、セパエン、タウリン、グルタチオン、メチルスルホニルメタンなど)、リグナン類(セサミンなど)、真珠粉末、ゴレンシ抽出物、ザクロ種子抽出物、α−リポ酸またはこの誘導体、CoQ10、およびこれらを含有する動植物抽出物、根菜類(ショウガなど)などが挙げられる。特に、肌、粘膜などの状態を改善し得るビタミン類(アスコルビン酸、パントテン酸、ビオチンなど)、ポリフェノール、ムコ多糖類、アミノ糖、カロテノイド、タンパク質またはペプチド(特にコラーゲン、エラスチン、ラミニンおよびこれらの分解物)、アミノ酸、リン脂質、スフィンゴ脂質、ゴレンシ抽出物、ライチ種子抽出物、α−リポ酸、CoQ10が好ましく含有される。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、この範囲に限定されるものではない。
【0048】
(調製例1)
ターミナリアベリリカの果実から種子を除去した残りの部分5gに水200mLを加え、100℃で30分間加熱還流抽出を行った。抽出後、ろ過してろ液を得、残渣に水200mLをさらに加え、100℃で30分間加熱還流抽出を行った。抽出後、ろ過して得られたろ液を合わせて凍結乾燥し、抽出物粉末A(2.3g)を得た。
【0049】
(調製例2)
上記調製例1で用いた水の代わりに50容量%のエタノール水溶液を用い、加熱温度を80℃にしたこと以外は、上記調製例1と同様の手順で抽出物粉末B(2.4g)を得た。
【0050】
(調製例3)
上記調製例1で用いた果実から種子を除去した残りの部分の代わりに種子2gを用いたこと以外は、上記調製例1と同様の手順で抽出物粉末C(0.4g)を得た。
【0051】
(調製例4)
上記調製例2で用いた果実から種子を除去した残りの部分の代わりに種子2gを用いたこと以外は、上記調製例2と同様の手順で抽出物粉末D(0.6g)を得た。
【0052】
(実施例1:活性酸素消去能の評価)
上記調製例1〜4で得られた抽出物粉末A〜Dを、それぞれ3mg/mLとなるように水に溶解してサンプル1〜4を調製した。次いで、測定キット(SODテストワコー、和光純薬工業株式会社)を用いて、サンプル1〜4のSOD活性を測定し、抽出物粉末1mgあたりのSOD様活性(unit)を算出した。比較として、緑茶抽出物(三井農林株式会社製)を用い、SOD様活性を算出した。結果を表1に示す。測定結果は、三重測定の平均値である。
【0053】
【表1】

【0054】
表1に示すように、ターミナリアベリリカの果実より得られた加工物(抽出物粉末)は、いずれもSOD様活性を有し、特に種子以外の部位において、SOD様活性を有することが知られている緑茶抽出物よりも非常に優れたSOD様活性を有することがわかる。すなわち、ターミナリアベリリカの果実より得られた加工物は、優れた活性酸素消去能を有しており、外用剤または経口用美肌促進剤として利用し得ることが分かる。
【0055】
(実施例2:チロシナーゼ阻害作用の評価)
以下のようにしてチロシナーゼ阻害活性を測定した。
【0056】
まず、上記調製例1〜4で得られた抽出物粉末A〜Dを、それぞれ0.3質量%の濃度となるように精製水に溶解して試験溶液1〜4を調製した。
【0057】
チロシナーゼ阻害活性を有することが知られているアスコルビン酸を、0.3質量%の濃度となるように精製水に溶解して比較溶液を調製した。
【0058】
次いで、100μLの試験溶液1〜4および比較溶液に、1/15Mリン酸緩衝液(pH6.8)90μLと1.1units/μLのチロシナーゼ含溶液(和光純薬工業株式会社製)10μLとを添加し、37℃で10分間保温した。次いで、各溶液に0.03%DOPA(和光純薬工業株式会社製)を100μL加えて、37℃で5分間反応させた。反応後、各溶液の480nmの吸光度を測定した(測定値をAとする)。チロシナーゼ溶液の代わりに1/15Mリン酸緩衝液で同様に反応させて、ブランクの吸光度を測定した(測定値をaとする)。
【0059】
対照として、各試験溶液または比較溶液の代わりに精製水を用いて、上記の手順と同様にして、反応溶液の吸光度(測定値をBとする)およびフランクの吸光度(測定値をbとする)を測定した。それぞれの値を測定後、下記の式(I)を用いて、チロシナーゼの阻害活性(%)を測定した。
【0060】
【数1】

【0061】
結果を表2に示す。表中の値は、三重測定の平均値および標準偏差である。
【0062】
【表2】

【0063】
表2に示すように、ターミナリアベリリカの加工物、特に、果実の種子を除く部分より得られた加工物(抽出物粉末)は、アスコルビン酸と同等の阻害活性を有することが分かる。したがって、本発明の外用剤または経口用美肌促進剤は、優れたチロシナーゼ阻害活性を有し、シミ、ソバカスなどを予防または改善し得ることが分かる。
【0064】
(実施例3:乳酸デヒドロゲナーゼ阻害作用の評価)
上記試験溶液1〜4を50μL用いて、乳酸デヒドロゲナーゼ測定キット(LDH Cytotoxicity Detection Kit、タカラバイオ株式会社製)で、乳酸デヒドロゲナーゼ阻害活性(%)を測定した。結果を表3に示す。表中の値は、三重測定の平均値および標準偏差である。
【0065】
【表3】

【0066】
表3に示すように、ターミナリアベリリカの加工物、特に、果実の種子を除く部分より得られた加工物(抽出物粉末)は、優れた乳酸デヒドロゲナーゼ活性を有することが分かる。したがって、本発明の外用剤または経口用美肌促進剤は、乳酸の生成阻害またはコラーゲン合成促進によって、シワの防止、粘膜強度の維持または向上、歯周病予防、う蝕予防効果を発揮し得ることが分かる。
【0067】
(製造例1)
下記の原料を用いて、飲料形態の経口用美肌促進剤(500mL)を調製した。
【0068】
<配合成分> 配合量(質量%)
上記調製例1で得られた抽出物粉末A 0.003
ヒアルロン酸(生化学工業株式会社製) 0.001
コラーゲンペプチド(株式会社ニッピ製) 0.001
エラスチンペプチド(株式会社アズウェル製) 0.001
コンドロイチン複合蛋白質(マルハ株式会社製) 0.001
アスコルビン酸ナトリウム(BASF武田ビタミン株式会社製) 0.1
シスチン(味の素株式会社製) 0.001
【0069】
(製造例2)
下記の原料を用いて、化粧水を調製した。
【0070】
<配合成分> 配合量(g)
上記調製例1で得られた抽出物粉末A 0.1
グリセリン 6
プロピレングリコール 4
オレイルアルコール 0.1
ポリオキシエチレンラウリルエーテル 1
エタノール 5
フェノキシエタノール 0.1
アスコルビン酸 1
精製水 82.7
【0071】
(製造例3)
下記の原料を用いて、W/O型エモリエントクリームを調製した。
【0072】
<配合成分> 配合量(質量%)
上記調製例2で得られた抽出物粉末B 0.1
マイクロクリスタリンワックス 3
ラノリン 3
ワセリン 5
スクワラン 9
オリーブ油 12
セスキオレイン酸ソルビタン 3
トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 1
ソルビトール 9
精製水 53.9
防腐剤 適量
香料 適量
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、ターミナリアベリリカより得られる加工物を有効成分として含有する優れた活性酸素消去能、チロシナーゼ阻害作用、および乳酸デヒドロゲナーゼ阻害作用を有する外用剤が提供される。この外用剤は、これらの効果に基づくシミ、ソバカス、シワなどの予防または改善、粘膜強度の維持または改善、歯周病予防、およびう蝕予防に有用である。さらに、本発明によれば、経口用美肌促進剤が提供され、本発明の外用剤と同様の効果を発揮し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターミナリアベリリカより得られる加工物を有効成分として含有する、外用剤。
【請求項2】
ターミナリアベリリカより得られる加工物を有効成分として含有する、経口用美肌促進剤。

【公開番号】特開2006−188494(P2006−188494A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351327(P2005−351327)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(398028503)株式会社東洋新薬 (182)
【Fターム(参考)】