説明

外用剤キット

【課題】本発明の目的は、粉末成分を含有する軟膏剤を患部に対して衛生的で、簡便且つ均一に塗布できる外用剤キットを提供することである。
【解決手段】(i)(A)粉末成分を含有する外用軟膏剤と、(ii)指又は手に装着され、少なくとも指腹面を覆うように構成された塗布具とを組み合わせることにより、外用剤キットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外用剤キットに関する。より詳細には、本発明は、粉末成分を含有する軟膏剤、特に表在性真菌症治療用軟膏剤を患部に対して衛生的で、簡便且つ均一に塗布できる外用剤キットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外用剤に、皮膚患部に対する乾燥作用や保護作用等を付与する目的で、粉末成分の配合が行われている。例えば、湿潤型の症状を呈する表在性真菌症の治療に使用される外用剤において、抗真菌剤と共に粉末成分を配合することにより、患部を乾燥させた状態に保ち、該症状の治癒効果を高め得ることが知られている。
【0003】
これまでに、粉末成分及び抗真菌剤を含有する外用剤としては、エアゾール製剤が多く報告されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、粉末成分を含有するエアゾール製剤では、エアゾール容器のノズルに粉末が付着し、これによって抗真菌剤や粉末成分を均一に塗布できなくなるという欠点がある。また、粉末成分を含有するエアゾール製剤では、適用時に、噴射剤による冷感や刺激感を感じることがあり、使用感の点でも問題がある。
【0004】
一方、粉末成分及び抗真菌剤を含有する外用剤として、軟膏剤についても報告されている。このような軟膏剤では、適用時の刺激感がなく、使用感の点では、エアゾール製剤の欠点が解消されている。しかしながら、粉末成分を含有する軟膏剤では、単に、指で塗布したり、ガーゼ等を使用して塗布したりすると、軟膏が伸延しにくい、粉末成分が患部で不均一に分布する等の問題点もある。
【0005】
このような従来技術を背景として、外用剤として粉末成分を含有する軟膏剤を使用して、使用感が良好であり、衛生的に該剤を患部に対して均一でしかも容易に塗布する技術の確立が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−229845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、粉末成分を含有する軟膏剤を患部に対して衛生的に、簡便且つ均一に塗布できる外用剤キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、粉末成分を含有する外用軟膏剤を患部に塗布する際に、指又は手に装着されて少なくとも指腹面を覆うように構成された塗布具を使用することによって、衛生的且つ均一に患部に対して該軟膏剤を塗布でき、良好な使用感が得られることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて、更に検討を重ねて開発されたものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる発明を提供する:
項1. (i)(A)粉末成分を含有する外用軟膏剤と、
(ii)指又は手に装着され、少なくとも指腹面を覆うように構成された塗布具と
を含有することを特徴とする、外用剤キット。
項2. (i)の外用軟膏剤が、(A)粉末成分として、(A-1)デンプン、(A-2)撥水性粉末及び(A-3)酸化チタンを含有するものである、項1に記載の外用剤キット。
項3. (i)の外用軟膏剤が、更に、(B)クロタミトン、炭酸プロピレン、脂肪酸エステル及び多価アルコールよりなる群から選択される少なくとも1種の付着補助剤を含有するものである、項1又は2に記載の外用剤キット。
項4. (i)の外用軟膏剤が、更に、(C)抗真菌剤を含有するものである、項1乃至3のいずれかに記載の外用剤キット。
項5. (i)の外用軟膏剤が、更に、(D)鎮痒剤を含むものである、項1乃至4のいずれかに記載の外用剤キット。
【0010】
本発明の外用剤キットは、(i)(A)粉末成分を含有する外用軟膏剤と、(ii)指又は手に装着され、少なくとも指腹面を覆うように構成された塗布具と、を含有するものである。以下、該(i)外用軟膏剤、及び(ii)塗布具について、詳細に説明する。
【0011】
(i)外用軟膏剤
外用剤キットにおいて使用される外用軟膏剤は、必須成分として(A)粉末成分を含有す
る。
【0012】
外用軟膏剤に使用される(A)粉末成分としては、薬学的に許容される限り特に限定され
ず、例えば、デンプン、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、酸化チタン、カオリン、含水二酸化珪素、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、コロイド性含水ケイ酸アルミニウム、ベントナイト、β−シクロデキストリン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸二水素カリウム、ナイロン、ポリエチレン、ゴム等の成分の粉末が例示される。
【0013】
これらの粉末成分の中で、好ましくは、デンプン、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、酸化チタンを挙げることができる。これらの成分の粉末を(A)粉末成分として使用することにより、患部に対する乾燥作用をより高めることができると共に、患部上に軟膏塗布面を一層均一に形成させることができる。
【0014】
また、上記(A)粉末成分として、(A-1)デンプン、(A-2)撥水性粉末、及び(A-3)酸化チタンを組み合わせて含有することにより、軟膏剤の塗布面のサラサラ感、軟膏剤の伸延性、軟膏剤の塗布面の均一性などの点で一層優れた効果が得られるので望ましい。
【0015】
上記(A-1)デンプンは、薬学的に許容されるものであれば、その起源については特に制
限されない。(A-1)デンプンの具体例として、トウモロコシデンプン、バレイショデンプ
ン、コムギデンプン等が例示される。これらのデンプンは1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。(A-1)デンプンとして、好ましくはト
ウモロコシデンプン及びバレイショデンプンであり、更に好ましくはトウモロコシデンプンである。
【0016】
上記(A-2)撥水性粉末とは、撥水特性を備える粉末成分のことであり、具体的には、底
面積6.25cmの容器に、1gの粉末と1mLの水を添加して放置した場合に、液相
と粉末相の2層に分離する性質を有する粉末成分のことである。また、(A-2)撥水性粉末
は、薬学的に許容されるものであれば、当業界において公知のものを使用できる。かかる撥水性粉末の一例として、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛等が例示される。これらの撥水性粉末は1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。(A-2)撥水性粉末として、好ましくはタルクである。
【0017】
上記(A-3)酸化チタンとしては、薬学的に許容されるものであれば、特に制限されない
。当該酸化チタンの好適なものとして、二酸化チタンが挙げられる。
【0018】
上記(A-1)デンプン、(A-2)撥水性粉末及び(A-3)酸化チタンの配合比としては、例えば
、これら三成分の総重量100重量部当たり、(A-1)デンプンが19.2〜79.7重量
部、(A-2)撥水性粉末が14.7〜59.3重量部、及び(A-3)酸化チタンが0.4〜51.9重量部;好ましくは(A-1)デンプンが23.5〜72.2重量部、(A-2)撥水性粉末が18.8〜54.6重量部、及び(A-3)酸化チタンが0.8〜47.1重量部;更に好ましくは(A-1)デンプンが28.6〜65.8重量部、(A-2)撥水性粉末が22.2〜49重量部、及び(A-3)酸化チタンが1.3〜42.9重量部となる割合が例示される。
【0019】
外用軟膏剤に含まれる(A)粉末成分の割合については、使用する粉末成分の組成、軟膏
剤の用途等に応じて適宜設定される。(A)粉末成分の配合割合の一例として、外用軟膏剤
の総重量に対して、該粉末成分が総重量で、通常10〜65重量%、好ましくは12.5〜57.5重量%、更に好ましくは15.2〜50重量%となる割合が挙げられる。このような割合で粉末成分を含有していても、本発明で使用される塗布具により、患部において均一な塗布面を容易に形成することが可能になる。
【0020】
本発明で使用される外用軟膏剤には、上記(A)粉末成分の皮膚への付着性を向上させる
成分(以下、「(B)付着補助剤」と表記する)を含有していることが望ましい。当該(B)付着補助剤としては、当業界で公知のものを使用できる。当該付着補助剤の具体例としては、クロタミトン、炭酸プロピレン、脂肪酸エステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルド、ステアリン酸ブチル、オレイン酸エチル、オレイン酸オレイル、アジピン酸ジイソプロピル、グリセリン酸脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシル40、ステアリン酸ポリオキシル45、ステアリン酸ポリオキシル55、セバシン酸ジエチル、ソルビタン脂肪酸エステル、パルミチン酸イソプロピル、モノオレイン酸グリセリン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン等)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、濃グリセリン等)等を例示できる。これらの中で、好ましくはクロタミトン、炭酸プロピレン及び多価アルコールである。特に、クロタミトンは、粉末成分の皮膚患部への付着性に優れ、且つ粉末成分の分散性を保持させ、更には基剤成分との混和性の点でも優れているので、好適な付着補助剤である。また、多価アルコールは、軟膏剤の保型性や安定性を良好にし、塗布をし易くするため、好適な付着補助剤である。これらの(B)付着補助剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0021】
上記(B)付着補助剤の配合割合としては、使用する付着補助剤の種類、使用する粉末成
分の種類や量等によって異なり、一律に規定することはできないが、例えば、外用軟膏剤の総重量に対して、該付着補助剤を通常1〜15重量%、好ましくは1.5〜12.5重量%、更に好ましくは3〜10重量%となる割合が挙げられる。上記範囲内であれば、患部への付着特性及び使用感の双方の点で優れた効果が得られる。
【0022】
本発明で使用される外用軟膏剤には、その用途に応じて、細胞賦活剤、抗炎症剤、抗菌剤、鎮痒剤、保湿剤、組織修復剤、収斂剤、ビタミン類、清涼化剤、精油成分、温感・温熱成分、エキス類等の薬理成分を配合することができる。これらの薬理成分は、1種単独で使用しても、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
外用軟膏剤の好適な実施態様の一例として、(C)抗真菌剤を含有するものが挙げられる
。このように、(A)粉末成分に加えて、(C)抗真菌剤を含有する外用軟膏剤は、患部を乾燥させると共に抗真菌作用を発揮するので、表在性真菌症の治療剤、特に、湿潤型の症状を
呈する表在性真菌症の治療剤として有用である。
【0024】
外用軟膏剤に配合される(C)抗真菌剤としては、真菌に対して抗菌作用を発揮するもの
であれば、特に制限されない。当該抗真菌剤の具体例としては、例えば、ブテナフィン及びその塩等のベンジルアミン系抗真菌剤;ビフォナゾール、ネチコナゾール、ケトコナゾール、ラノコナゾール、クロトリマゾール、ミコナゾール、オキシコナゾール、チオコナゾール、クロコナゾール、オモコナゾール、スルコナゾール及びこれらの塩等のイミダゾール系抗真菌剤;テルビナフィン及びその塩等のアリルアミン系抗真菌剤;アモロルフィン及びその塩等のモルホリン系抗真菌剤;リラナフタート、トルナフテート及びトルシクラート等のチオカルバミン酸系抗真菌剤;並びに、ナイスタチン、トリコマイシン、バリオチン、シッカニン、ピロールニトリン等の抗生物質等の抗真菌剤が例示される。これらの中でも、角質への浸透性や貯留性が高く、より優れた抗真菌作用を発揮するという観点から、好ましくは、ベンジルアミン系抗真菌剤、イミダゾール系抗真菌剤、アリルアミン系抗真菌剤及びモルホリン系抗真菌剤である。更に好ましくはオキシコナゾール、ビフォナゾール、スルコナゾール、ネチコナゾール、テルビナフィン、ブテナフィン、アモロルフィン及びラノコナゾール及びこれらの塩であり、これらの抗真菌剤によれば、1日に1回の適用回数で所望の抗真菌効果を得ることができる。これらの抗真菌剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0025】
本発明に使用される外用軟膏剤において、上記(C)抗真菌剤の配合割合は、使用する抗
真菌剤の種類、患者の年齢や性別、期待される抗真菌効果等に応じて異なるが、例えば、該軟膏剤の総重量に対して0.3〜3重量%、好ましくは0.4〜2.5重量%、更に好ましくは0.5〜2重量%が挙げられる。
【0026】
本発明で使用される外用軟膏剤は、更に(D)鎮痒剤を含有していてもよい。特に、本発
明で使用される軟膏外用剤に、上記(C)抗真菌剤と共に(D)鎮痒剤を配合すると、患部の掻痒感を抑制し、より優れた使用感を備えることができる。当該鎮痒剤としては、例えば、リドカイン、塩酸リドカイン、ジブカイン、塩酸ジブカイン、プロカイン、塩酸プロカイン、アミノ安息香酸エチル、オキシポリエントキシドデカン、塩酸ジフェニルプラリン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、サリチル酸ジフェンヒドラミン等が挙げられる。これらの鎮痒剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。鎮痒剤として、好ましくはリドカイン、塩酸リドカイン、ジブカイン、塩酸ジブカイン、プロカイン及び塩酸プロカインであり、更に好ましくはリドカイン、ジブカイン及びプロカインである。
【0027】
(D)鎮痒剤を配合する場合、その配合割合としては、使用する鎮痒剤の種類、組成物の
形態、期待される効果等によって異なり、一律に規定することはできないが、例えば、外用軟膏剤の総重量に対して、該鎮痒剤を通常0.05〜10重量%、好ましくは0.25〜7.5重量%、更に好ましくは0.5〜5重量%となる割合が挙げられる。
【0028】
外用軟膏剤には、本発明の効果を妨げないことを限度として、前述の配合成分の他に、必要に応じて、香料、着色剤、他の粉末成分、界面活性剤、溶剤、溶解剤、pH調整剤、緩衝剤、基剤、発泡剤、消泡剤、乳化剤、懸濁剤、軟化剤、粘ちょう剤、分散剤、賦形剤、滑沢剤、酸化防止剤、防腐剤、保存剤、可塑剤等の任意成分を適当量配合してもよい。
【0029】
また、外用軟膏剤には、配合成分の混和性や患部への浸透性を高めるという観点から、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等の低級アルコール、水、又はこれらの低級アルコールと水の混合物等の溶剤を配合することが望ましい。粉末成分の乾燥作用を皮膚上で効果的に発揮させることや有効成分の溶解性という観点から、上記溶剤の内、好ましくは低級アルコール、及び低級アルコール
と水の混合物、更に好ましくは低級アルコールと水の混合物、特に好ましくはエタノールと水の混合物である。当該エタノールは、メタノールやベンゼンを加えることにより変性アルコールにして使用することもできる。
【0030】
外用軟膏剤は、上記成分に、軟膏剤として調製されるための基剤を適当量含有する。このような基剤として、例えば、ワセリン、スクワラン、パラフィン、流動パラフィン、白ロウ、プラスチベース、ポリエチレングリコール、マクロゴール等の油系基剤;エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピル、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、カラギーナン、ポリビニルブチラート、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート、メタアクリル酸メチルコポリマー、メタアクリル酸ジエチルアミノエチルメタアクリル酸メチルコポリマー、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール等の高分子;セタノール、ステアリルアルコール等の高級アルコール;1.3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン類等の多価アルコール等が挙げられる。これらの基剤の内、好ましくは親水性のものである。親水性の基剤を配合した軟膏剤は、使用後の塗布具の洗浄が容易になるので、塗布具として繰り返し洗浄して使用されるものを使用する場合に、好適に使用できる。これらの基剤成分は、1種単独で使用しても、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0031】
(ii)塗布具
本発明の外用剤キットにおいて使用される塗布具は、手の指(以下、単に「指」と表記することもある)又は手に装着され、少なくとも指腹面を覆うように構成されたものである。ここで、指腹面とは、指先の内側の面(指端の腹面)のことである。
【0032】
当該塗布具は、指腹面を覆うように指又は手に装着されて、指腹面を覆っている部分を用いて、上記外用軟膏剤の適量を患部に塗り拡げるように使用される。
【0033】
本発明で使用される塗布具は、指又は手に装着されて、少なくとも指腹面を覆うように構成されている限り、その具体的態様については特に制限されない。例えば、当該塗布具の具体的態様として、指サック、手袋、指腹面を覆うテープ又はシート等が挙げられる。指サックとしては、具体的には、筒状の指サック(図1参照)、環状の指サック(図2参照)、爪の部分が開放されるように構成されている指サック(図3参照)、2又は3本の指が挿入できるように構成されている指サック等が例示される。また、指腹面を覆うテープ又はシートとしては、装着される指と接する面に接着剤層や粘着剤層が設けられていればよく、具体的には、図4に示すテープや、図5及び6に示すシート等が例示される。
【0034】
本発明で使用される塗布具では、上記外用軟膏剤と接触し、該軟膏剤を患部に塗り拡げる部分について、該部分の摩擦係数が0.1〜1、好ましくは0.15〜0.9、更に好ましくは0.2〜0.8であることが望ましい。なお、ここでいう摩擦係数とは、同一素材同士の動摩擦係数であり、JIS K 7125に規定の方法に従って測定される。
【0035】
本発明で使用される塗布具は、その構成材料については、特に制限されず、例えば、天然ゴム;イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ポリエステルエラストマー等の合成ゴム;スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ニトリル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂;合成繊維から構成される布帛(不織布、織物、編物);天然繊維から構成される布帛(不
織布、織物、編物);金属フォイル等が挙げられる。塗布具に伸縮性や弾力性を備えさせるという観点から、これらの中で好ましくは、可撓性または弾力性を有するものであり、具体的には、天然ゴム、合成ゴム、熱可塑性エラストマー及び熱可塑性樹脂が挙げられる。上記構成材料は1種単独で使用しても、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
本発明で使用される塗布具は、単層又は多層のいずれの構造であってもよく、また表面にエンボス加工等の処理が施されているものであってもよい。
【0037】
また、本発明で使用される塗布具は、塗布具の装着の容易性や外用軟膏剤の塗布面の均一性を高めるという観点から、該塗布具を構成する素材は、柔軟性や伸縮性を備えていることが望ましい。更に、塗布具を構成する素材として、好ましくは低アレルギー性やリサイクル性を備えているものである。
【0038】
また、本発明で使用される塗布具は、使い捨てタイプのものであっても、また洗浄することにより繰り返し使用されるタイプのものであってもよい。塗布具が繰り返し使用されるタイプのものである場合、該塗布具を構成する素材は、耐久性を備えていることが望ましい。
【発明の効果】
【0039】
本発明の外用剤キットは、所定の塗布具を使用して粉末成分を含有する外用軟膏剤を患部に塗布できるように構成されており、該軟膏剤を指で塗布した際に生じる「不衛生感」を感じずに使用することが可能である。
【0040】
また、従来、粉末成分を含有する軟膏剤を患部に指やガーゼで塗布すると、粉末成分が患部で不均一に分布して軟膏塗布面が不均一となるという問題点や、軟膏剤を患部に十分に伸展させることができず、使用感が悪くなるという問題点があった。本発明の外用剤キットによれば、所定の塗布具を使用することによって、粉末成分を患部で均一に分散させて、更に軟膏剤の伸展性を向上させることができるので、上記従来技術の問題点が解消されている。
【0041】
このように、本発明の外用剤キットによれば、簡便な方法で、(1)粉末成分を含む外用
軟膏剤の使用による「不衛生感」心理を払拭できる、(2)皮膚患部に対する均一な塗布面
の形成ができる、(3)軟膏剤塗布時に良好な使用感が得られる、という利点が得られる。
【0042】
また、本発明の外用剤キットに使用される外用軟膏剤に抗真菌剤を含有させることにより、該軟膏剤は、粉末成分による乾燥作用や抗真菌剤による薬効作用を効率的に発揮させることが可能になる。即ち、本発明の外用剤キットの内、外用軟膏剤に抗真菌剤を含むものは、白癬、癜風、カンジダ症等の表在性真菌症、特に、湿潤型の症状を呈する表在性真菌症の治療用キットとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の外用剤キットに使用される塗布具の一態様である筒状の指サック(a)、及び該指サックを装着した状態(b)を示す図である。
【図2】本発明の外用剤キットに使用される塗布具の一態様である環状の指サック(a)、及び該指サックを装着した状態(b)を示す図である。
【図3】本発明の外用剤キットに使用される塗布具の一態様である、爪の部分が開放されるように構成されている指サック(a)、及び該指サックを装着した状態(b)を示す図である。
【図4】本発明の外用剤キットに使用される塗布具の一態様であるテープ(a)、及び該テープを装着した状態(b)を示す図である。
【図5】本発明の外用剤キットに使用される塗布具の一態様であるシート(a)、及び該シートを装着した状態(b)を示す図である。
【図6】本発明の外用剤キットに使用される塗布具の一態様であるシート(a)、及び該シートを装着した状態(b)を示す図である。
【図7】試験例1において、比較例2の塗布具として使用した棒状プラスチック製塗布具を示す図である。試験例1の比較例2において、軟膏剤の塗布は、符号1で示す面で行った。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の表中に示す数値の単位は、特段示さない限り、重量(g)である。
【0045】
試験例1
表1に示す組成の表在性真菌症治療用軟膏剤を調製した。これらの軟膏剤を表2に示す塗布方法で、被験者(湿潤型水虫患者2人及び健常者3人の合計5人)が自身の足指間に適当量塗布した。
【0046】
塗布時の「軟膏剤の伸展性」、「軟膏剤の均一性」、「軟膏剤の塗りやすさ」、「さらさら感」、及び「総合的使用感」のそれぞれについて、下記5段階の評点で評価を行った。
5点:極めて良好である
4点:良好である
3点:普通である
2点:悪い
1点:極めて悪い。
【0047】
また、塗布時の衛生感について、下記5段階の評点で評価を行った。なお、以下の各評点の欄に示す「塗布に用いた指」とは、塗布具を使用した場合では塗布具を装着した指又は塗布具を保持した指を示し、塗布具を使用しなかった場合では軟膏剤を患部に塗布した指を示す。
5点:塗布に用いた指に殆ど軟膏剤の付着が認められない
4点:気にならない程度に、塗布に用いた指及び/又はその周辺部の一部分に軟膏剤の付着が認められる
3点:気になる程度に、塗布に用いた指及び/又はその周辺部の一部分に軟膏剤の付着が認められる
2点:塗布に用いた指の指腹面のほぼ全面に軟膏剤の付着が認められる
1点:塗布に用いた指の指腹面のほぼ全面及び爪先に軟膏剤の付着が認められる。
【0048】
得られた各被験者の評点を合計して、下記基準に従って、本試験で使用した上記軟膏剤と塗布具の組み合わせ(外用剤キット)の官能評価について判定した。
<官能評価の評価基準>
◎:評点の合計21以上25以下
○:評点の合計16以上20以下
△:評点の合計11以上15以下
×:評点の合計5以上10以下
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
得られた結果を表3に示す。この結果から、実施例1及び2では、指に表在性真菌症治療用軟膏剤を接触させることなく衛生的に該軟膏剤を塗布でき、しかも該軟膏剤の伸展性や均一性が良好で、塗りやすさ、サラサラ感及び総合的使用感の点でも優れていた。これに対して、表在性真菌症治療用軟膏剤を指で直接塗布した比較例1では、指に該軟膏剤の粉末成分が付着することにより不衛生を感じ、伸展性、均一性、塗りやすさ、サラサラ感及び総合的使用感の点でも満足できるものではなかった。また、棒状プラスチック製塗布具、天然ゴム製シート又は綿棒を使用した比較例2−4でも、実施例1に比して上記評価項目の点で劣っていることが確認された。更に、粉末成分を含んでいない表在性真菌症治療用軟膏剤を使用した比較例5−8では、指による塗布によっても不衛生感を感じることが無く、また塗布具を使用しても格段の使用感の向上は認められなかった。また、比較例5−8では、軟膏塗布部にサラサラ感を付与することができず、患部に対する乾燥作用の点で劣っていることも確認された。
【0052】
【表3】

【0053】
参考試験例1 表面特性確認試験
表4−8に示す処方の組成物(処方例3−17及び比較処方例3−23)を調製し、下記試験を行い、使用感及び塗布面の均一性について評価した。
(1)使用感の評価方法
使用感を評価するために、下記方法に従って動摩擦計数(MIU)を計測した。
1.人工皮革(5cm×13cm)のMIUをKES-SE表面特性試験機(カトーテック社製)
で測定した。
2.同じ人工皮革に1gの各組成物(処方例3−17及び比較処方例3−23)を3cm×6cmの範囲に、指で均一に塗り広げ、その塗布面のMIUをKES-SE表面特性試験機(カ
トーテック社製)で測定した。本使用感の評価試験は、n=3で行った。
3.下記評価基準に従って、測定したMIUの平均値から使用感を評価した。
<使用感の評価基準>
○ 塗布後のMIUの平均値が、塗布前のMIUの平均値よりも小さい
× 塗布後のMIUの平均値が、塗布前のMIUの平均値よりも大きい
#:MIUは、すべりの特性と相関する値であり、MIU値の減少はすべりの改善、MIU値の増
加はすべりの改悪を意味する。
【0054】
(2)塗布面の均一性の評価方法
人工皮革(5cm×13cm)に1gの各組成物(処方例3−17及び比較処方例3−23)を3cm×6cmの範囲に、指で均一に塗布し、塗布面の性状を下記評価基準に基づいて評価した。
<塗布面の均一性の評価基準>
○ 斑状や切片状の塗布面が形成されることのない均一な塗布面である
△ 斑状の塗布面は形成されないが、少量の切片状の塗布面が形成される
× 斑状や切片状の塗布面が形成される
得られた結果を表4−8に併せて示す。この結果から、クロタミトンと共に、粉末成分として、デンプン、撥水性粉末及び酸化チタンを組み合わせて使用すると塗布面に優れた使用感と均一性が付与されることが明らかとなった。これに対して、デンプン、撥水性粉末及び酸化チタンの内、いずれか一つでも掛けていると、使用感と均一性の双方において優れた塗布面を形成できないことが確認された。
【0055】
【表4】

【0056】
【表5】

【0057】
【表6】

【0058】
【表7】

【0059】
【表8】

【0060】
参考試験例2
表9に示す組成の表在性真菌症治療用組成物(処方例18−21及び比較処方例24−25)を調製した。この表在性真菌症治療用組成物を使用して、以下の試験を行い、鎮痒効果の評価及び官能評価を行った。また、併せて、上記試験例と同様の方法で、MIU値の
測定による使用感の評価を行った。
【0061】
鎮痒効果の評価
1.ddY系クリーンマウス(雄、6週齢)を1週間飼育して、馴化させた。
2.マウスの体重を計測し、後背部をバリカンにて毛剃りした。
3.毛剃り部分に表在性真菌症治療用組成物(処方例18−21及び比較処方例24−25)200mgを満遍なく塗布し、指で擦り込んだ。
4.表在性真菌症治療用組成物塗布30分後に、エーテル麻酔を行い、かゆみ惹起物質(4.8mgのCompound48/80(ICN Biomedicals,Inc製)を1mLの生理食塩水に溶解したもの
)を体重40g当たり20μLの割合でマウスに皮内投与した。
5.皮内投与5分後から25分後までの間に、マウスのスクラッチ(マウスが口で皮内投与物質を投与した部分を直接掻く行動)回数をカウントした。
6.陽性コントロールとして、表在性真菌症治療用組成物を塗布せずにかゆみ惹起物質を投与したものについても、同様に試験を行い、スクラッチ回数をカウントした。なお、かかる鎮痒効果の評価試験はn=6で行った。
7.下記基準に従って、各表在性真菌症治療用組成物の鎮痒効果を評価した。
○:平均スクラッチ回数が、陽性コントロールの平均スクラッチ回数の1/4未満
△:平均スクラッチ回数が、陽性コントロールの平均スクラッチ回数の1/4以上1/2未満
×:平均スクラッチ回数が、陽性コントロールの平均スクラッチ回数の1/2以上。
【0062】
官能評価
被験者(湿潤型水虫患者2人及び健常者3人の合計5人)に足指間に表在性真菌症治療用組成物を適当量塗布した。塗布後、靴下及び靴を履いて1日通常の生活をおくった後に、各被験者が、付着性、均一性、さらさら感、治療効果実感、総合的使用感のそれぞれについて、下記5段階の評点で評価を行った。
5点:極めて良好である
4点:良好である
3点:普通である
2点:悪い
1点:極めて悪い
得られた各被験者の評点を合計して、下記基準に従って、各表在性真菌症治療用組成物の官能評価について判定した。
<官能評価の評価基準>
◎:評点の合計20以上25以下
○:評点の合計15以上19以下
△:評点の合計10以上14以下
×:評点の合計5以上9以下
得られた結果を表9に併せて示す。この結果、処方例18−21の表在性真菌症治療用組成物は、抗真菌作用に加えて、極めて良好な治療効果実感並びに使用感が得られることが明らかとなった。
【0063】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)粉末成分として、(A-1)デンプン、(A-2)撥水性粉末及び(A-3)酸化チタンを含有する外用軟膏剤。
【請求項2】
更に(B)クロタミトン、炭酸プロピレン、脂肪酸エステル及び多価アルコールよりなる群から選択される少なくとも1種の付着補助剤を含有するものである、請求項1に記載の外用軟膏剤。
【請求項3】
更に(C)抗真菌剤を含有するものである、請求項1又は2に記載の外用軟膏剤。
【請求項4】
更に(D)鎮痒剤を含むものである、請求項1乃至3のいずれかに記載の外用軟膏剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−148823(P2011−148823A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96883(P2011−96883)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【分割の表示】特願2005−100181(P2005−100181)の分割
【原出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】