説明

外用剤又は内用剤

【課題】活性酸素消去作用、MMP産生抑制作用、メラニン生成抑制作用及び細胞増殖促進作用に優れた新規な外用剤又は内用剤を提供する。
【解決手段】リュウキュウバライチゴの抽出物は、優れた活性酸素消去作用、MMP産生抑制作用、メラニン生成抑制作用及び細胞増殖促進作用を有し、安定性にも優れていた。リュウキュウバライチゴの抽出物は、皮膚の老化や美白といった美容分野だけでなく、老化による機能低下の抑制、ガンの予防、治療や創傷治癒などといった医療分野にも利用ででき、食品、化粧品、医薬部外品及び医薬品等への応用が期待される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性酸素消去、MMP産生抑制、メラニン生成抑制及び細胞増殖促進作用に優れた新規な外用剤又は内用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は生体の最外層に位置し、紫外線等の影響により活性酸素が発生しやすい臓器であり、絶えずその酸素ストレスに曝されている。一方、皮膚細胞内には活性酸素消去酵素が存在しており、その能力を超える活性酸素が発生しないかぎり活性酸素の傷害から皮膚細胞を防衛している。ところが、皮膚細胞内の活性酸素消去酵素の活性は加齢とともに低下することが知られており、活性酸素による傷害がその防御反応を凌駕したとき、皮膚は酸化され、細胞機能が劣化して老化してゆくと考えられる。また、皮膚以外の臓器においても、その活性酸素消去能を越える活性酸素に曝されたとき、機能低下が起こり老化してゆくと考えられる。そこで、活性酸素による傷害からの防御を目的として活性酸素消去剤や抗酸化剤が検討され、SODやカタラーゼ等の活性酸素消去酵素、SOD様活性物質などの活性酸素消去剤や抗酸化剤を配合した食品、化粧品、医薬部外品及び医薬品等が開発されている(特許文献1,2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−118630号公報
【特許文献2】特開平9−208484号公報
【0004】
皮膚の老化に伴う変化を誘導する因子として、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs;Matrix Metalloproteinases)の関与が指摘されている。このMMPsの中でも、マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)は、皮膚の真皮細胞外マトリックスの主要構成成分であるコラーゲンを分解する酵素として知られているが、その発現は紫外線の照射により大きく増加し、コラーゲンの減少・変性の一因となり、皮膚のしわの形成、弾力性の低下等の大きな要因となると考えられている。このようなMMP−1活性阻害作用を有するものとしては、例えば、マツ科マツ属二葉松類の樹皮の抽出物等が知られている(特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献3】特開2003−277223号公報
【0006】
ゼラチナーゼ群に属する酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼ−2(MMP−2)は、基底膜の主要構成成分であるIV型コラーゲンやラミニン5を分解する酵素として知られているが、その発現及び活性は紫外線の照射により大きく増加し、紫外線による基底膜成分の減少、基底膜の構造変化の原因となり、皮膚におけるシワやたるみの形成等の大きな要因となることが明らかとなっている(非特許文献1参照)。
【0007】
【非特許文献1】Gary J.Fisher et al.,Nature,1996年,第379巻,第25号,p.335
【0008】
さらに、MMP−2は、血管内皮細胞下に存在する基底膜を構成するIV型コラーゲン等を分解し、分解された血管内皮細胞は間質へ遊走していき、間質中で増殖し、管腔を形成し、新生血管を構築していく。そして、この新生された血管が腫瘍細胞に到達して、栄養源と酸素とを腫瘍細胞に供給し、腫瘍が大きくなっていくことが知られている(非特許文献2参照)。また、MMP−2のノックアウトマウスにおいて、血管新生の未発達やガンの増殖抑制が認められるなど、MMP−2は、ガンの増殖や血管新生において重要な役割を果たしている(非特許文献3参照)。
【0009】
【非特許文献2】血管新生とマトリックスメタロプロテアーゼ,「第120回日本医学会シンポジウム記録集 血管新生の基礎と臨床」,2001年12月13日,p.43−49
【非特許文献3】Itoh T et al.,Cancer Res,1998,58,1048−1051
【0010】
一般に、シミ、ソバカス、日焼け等に見られる皮膚の色素沈着は、ホルモンの異常や紫外線の刺激により、皮膚内に存在するメラニン色素生成細胞がメラニン色素を過剰に生成し、これが皮膚内に沈着することが原因と考えられている。このような色素沈着を防ぐ方法の一つに、メラニンの過剰な生成を抑制する方法が知られている。従来、色素沈着の治療には、内用や外用などにおいて、アスコルビン酸(ビタミンC)等が用いられてきた。
【0011】
加齢とともに表皮細胞の増殖・分裂能は低下し、表皮層自体は薄くなる(非特許文献4参照)。生体因子であるEpidermal Growth Factor(EGF/上皮細胞成長因子)や女性ホルモン(エストロゲン)は皮膚の表皮細胞増殖に働きかけるが、加齢と共にその分泌は低下する。このような加齢による表皮細胞代謝機能の低下は、皮膚のターンオーバー速度を遅らせ、肌荒れや皮膚の老化の原因となる。また、角層表面から剥がれ落ちる角層細胞が滞留することで、表皮内メラニンの排泄がスムーズに行われなくなり、色素沈着や肌のくすみの原因となる。さらに表皮の創傷治癒が遅くなることなども知られている。これらの現象の進行を防止あるいは改善するために、表皮細胞の増殖を促進させる成分の探索や、多くの皮膚外用剤の提案がなされてきた。
【0012】
【非特許文献4】Varani J et al.,J Investig Dermatol Symp Proc,1998,3,5760
【0013】
しかしながら、これらの活性酸素消去効果、MMP産生抑制効果、メラニン生成抑制効果及び細胞増殖促進効果を有する植物由来の天然原料として、本発明に用いたリュウキュウバライチゴは検討されていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
安全で安定性に優れ、活性酸素消去作用、MMP産生抑制作用、メラニン生成抑制作用及び細胞増殖促進作用に優れた素材が望まれているが、未だ十分満足し得るものが提供されていないのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような事情により、本発明者らは鋭意検討した結果、リュウキュウバライチゴの抽出物が優れた活性酸素消去作用、MMP産生抑制作用、メラニン生成抑制作用及び細胞増殖促進作用を持ち、安定性においても優れていることを見出した。さらに、その抽出物を含有する外用剤又は内用剤が、安全で安定であり、活性酸素消去作用、MMP産生抑制作用、メラニン生成抑制作用及び細胞増殖促進作用に優れており、多機能性美容・健康用素材と成り得ることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0016】
本発明に用いるリュウキュウバライチゴの抽出物とは、バラ科キイチゴ属リュウキュウバライチゴ(学名:Rubus croceacanthus)(別名:オオバライチゴ)の花、茎、葉、枝、枝葉、根、種子等の植物体の一部又は全草から抽出したものである。その抽出方法は特に限定されず、例えば、加熱抽出したものであっても良いし、常温抽出したものであっても良い。
【0017】
抽出する溶媒としては、例えば、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等)、液状多価アルコール(1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)が挙げられる。好ましくは、水、低級アルコール及び液状多価アルコール等の極性溶媒が良く、特に好ましくは、水、エタノール、1,3−ブチレングリコール及びプロピレングリコールが良い。これらの溶媒は一種でも二種以上を混合して用いても良い。
【0018】
上記抽出物は、抽出した溶液のまま用いても良く、必要に応じて、濃縮、希釈及び濾過処理、活性炭等による脱色、脱臭処理等をして用いても良い。更には、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物として用いても良い。
【0019】
本発明の外用剤又は内用剤には、上記抽出物をそのまま使用しても良く、抽出物の効果を損なわない範囲内で、化粧品、医薬部外品、医薬品又は食品等に用いられる成分である油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、美白剤、キレート剤、賦形剤、皮膜剤、甘味料、酸味料等の成分を配合することもできる。
【0020】
本発明の剤型としては、例えば、化粧水、クリーム、マッサージクリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、打粉、口紅、軟膏、パップ剤、ペースト剤、プラスター剤、エッセンス、散剤、丸剤、錠剤、注射剤、坐剤、乳剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤(チンキ剤、流エキス剤、酒精剤、懸濁剤、リモナーデ剤等を含む)、錠菓、飲料等が挙げられる。
【0021】
本発明に用いる上記抽出物の配合量は、外用の場合、全量に対し、固形物に換算して0.0001重量%以上が好ましく、0.001〜10重量%がより好ましい。さらに、0.01〜5重量%が最も好ましい。0.0001重量%未満では十分な効果は望みにくい。10重量%を越えて配合した場合、効果の増強は認められにくく不経済である。一方、内用の場合、投与量は年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常、成人1人当たりの1日の量としては、5mg以上が好ましく、10mg〜0.5gがより好ましい。さらに、20mg〜0.2gが最も好ましい。
【0022】
次に本発明を詳細に説明するため、実施例として本発明に用いる抽出物の製造例、処方例及び実験例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例に示す配合量の部とは重量部を、%とは重量%を示す。
【実施例1】
【0023】
製造例1 リュウキュウバライチゴの熱水抽出物
リュウキュウバライチゴの全草の乾燥物20gに精製水400mLを加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してリュウキュウバライチゴの熱水抽出物を2.5g得た。
【0024】
製造例2 リュウキュウバライチゴの50%エタノール抽出物
リュウキュウバライチゴの全草の乾燥物100gに50%エタノール水溶液1Lを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、リュウキュウバライチゴの50%エタノール抽出物を3.8g得た。
【0025】
製造例3 リュウキュウバライチゴのエタノール抽出物
リュウキュウバライチゴの葉の乾燥物100gにエタノール1Lを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、リュウキュウバライチゴのエタノール抽出物を4.1g得た。
【0026】
製造例4 リュウキュウバライチゴの50%1,3−ブチレングリコール抽出物
リュウキュウバライチゴの地上部の乾燥物20gに50%1,3−ブチレングリコール水溶液400mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、リュウキュウバライチゴの50%1,3−ブチレングリコール抽出物を370g得た。
【実施例2】
【0027】
処方例1 化粧水
処方 配合量(部)
1.リュウキュウバライチゴの熱水抽出物(製造例1) 1.0
2.1,3−ブチレングリコール 8.0
3.グリセリン 2.0
4.キサンタンガム 0.02
5.クエン酸 0.01
6.クエン酸ナトリウム 0.1
7.エタノール 5.0
8.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
9.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 0.1
10.香料 適量
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1〜6及び11と、成分7〜10をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合し濾過して製品とする。
【0028】
比較例1 従来の化粧水
処方例1において、リュウキュウバライチゴの熱水抽出物を精製水に置き換えたものを従来の化粧水とした。
【0029】
処方例2 クリーム
処方 配合量(部)
1.リュウキュウバライチゴの50%エタノール抽出物(製造例2) 0.5
2.スクワラン 5.5
3.オリーブ油 3.0
4.ステアリン酸 2.0
5.ミツロウ 2.0
6.ミリスチン酸オクチルドデシル 3.5
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ベヘニルアルコール 1.5
9.モノステアリン酸グリセリン 2.5
10.香料 0.1
11.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
12.パラオキシ安息香酸エチル 0.05
13.1,3−ブチレングリコール 8.5
14.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2〜9を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び11〜14を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分10を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0030】
処方例3 乳液
処方 配合量(部)
1.リュウキュウバライチゴの熱水抽出物(製造例1) 0.01
2.スクワラン 5.0
3.オリーブ油 5.0
4.ホホバ油 5.0
5.セタノール 1.5
6.モノステアリン酸グリセリン 2.0
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(20E.O.) 2.0
9.香料 0.1
10.プロピレングリコール 1.0
11.グリセリン 2.0
12.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
13.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2〜8を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び10〜13を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分9を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0031】
処方例4 ゲル剤
処方 配合量(部)
1.リュウキュウバライチゴのエタノール抽出物(製造例3) 1.0
2.エタノール 5.0
3.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
4.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 0.1
5.香料 適量
6.1,3−ブチレングリコール 5.0
7.グリセリン 5.0
8.キサンタンガム 0.1
9.カルボキシビニルポリマー 0.2
10.水酸化カリウム 0.2
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2〜5と、成分1及び6〜11をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合して製品とする。
【0032】
処方例5 パック
処方 配合量(部)
1.リュウキュウバライチゴの熱水抽出物(製造例1) 1.0
2.リュウキュウバライチゴの
50%1,3−ブチレングリコール抽出物(製造例4) 5.0
3.ポリビニルアルコール 12.0
4.エタノール 5.0
5.1,3−ブチレングリコール 8.0
6.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
7.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(20E.O.) 0.5
8.クエン酸 0.1
9.クエン酸ナトリウム 0.3
10.香料 適量
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1〜11を均一に溶解し製品とする。
【0033】
処方例6 ファンデーション
処方 配合量(部)
1.リュウキュウバライチゴの50%エタノール抽出物(製造例2) 1.0
2.ステアリン酸 2.4
3.ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(20E.O.) 1.0
4.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.0
5.セタノール 1.0
6.液状ラノリン 2.0
7.流動パラフィン 3.0
8.ミリスチン酸イソプロピル 6.5
9.カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1
10.ベントナイト 0.5
11.プロピレングリコール 4.0
12.トリエタノールアミン 1.1
13.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
14.二酸化チタン 8.0
15.タルク 4.0
16.ベンガラ 1.0
17.黄酸化鉄 2.0
18.香料 適量
19.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2〜8を加熱溶解し、80℃に保ち油相とする。成分19に成分9をよく膨潤させ、続いて、成分1及び10〜13を加えて均一に混合する。これに粉砕機で粉砕混合した成分14〜17を加え、ホモミキサーで撹拌し75℃に保ち水相とする。この水相に油相をかき混ぜながら加え、冷却し、45℃で成分18を加え、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0034】
処方例7 浴用剤
処方 配合量(部)
1.リュウキュウバライチゴの熱水抽出物(製造例1) 1.0
2.炭酸水素ナトリウム 50.0
3.黄色202号(1) 適量
4.香料 適量
5.硫酸ナトリウムにて全量を100とする
[製造方法]成分1〜5を均一に混合し製品とする。
【0035】
処方例8 軟膏
処方 配合量(部)
1.リュウキュウバライチゴの熱水抽出物(製造例1) 1.0
2.リュウキュウバライチゴの
50%1,3−ブチレングリコール抽出物(製造例4) 5.0
3.ポリオキシエチレンセチルエーテル(30E.O.) 2.0
4.モノステアリン酸グリセリン 10.0
5.流動パラフィン 5.0
6.セタノール 6.0
7.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
8.プロピレングリコール 10.0
9.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分3〜6を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1、2及び7〜9を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0036】
処方例9 散剤1
処方 配合量(部)
1.リュウキュウバライチゴの熱水抽出物(製造例1) 1.0
2.乾燥コーンスターチ 39.0
3.微結晶セルロース 60.0
[製造方法]成分1〜3を混合し、散剤とする。
【0037】
処方例10 散剤2
処方例9において、リュウキュウバライチゴの熱水抽出物をエタノール抽出物(製造例3)に置き換えたものを散剤2とした。
【0038】
処方例11 錠剤
処方 配合量(部)
1.リュウキュウバライチゴのエタノール抽出物(製造例3) 5.0
2.乾燥コーンスターチ 25.0
3.カルボキシメチルセルロースカルシウム 20.0
4.微結晶セルロース 40.0
5.ポリビニルピロリドン 7.0
6.タルク 3.0
[製造方法]成分1〜4を混合し、次いで成分5の水溶液を結合剤として加えて顆粒成型する。成型した顆粒に成分6を加えて打錠する。1錠0.52gとする。
【0039】
処方例12 錠菓
処方 配合量(部)
1.リュウキュウバライチゴのエタノール抽出物(製造例3) 2.0
2.乾燥コーンスターチ 49.8
3.エリスリトール 40.0
4.クエン酸 5.0
5.ショ糖脂肪酸エステル 3.0
6.香料 0.1
7.精製水 0.1
[製造方法]成分1〜4及び7を混合し、顆粒成型する。成型した顆粒に成分5及び6を加えて打錠する。1粒1.0gとする。
【0040】
処方例12 飲料
処方 配合量(部)
1.リュウキュウバライチゴの熱水抽出物(製造例1) 0.05
2.ステビア 0.05
3.リンゴ酸 5.0
4.香料 0.1
5.精製水 94.8
[製造方法]成分2及び3を少量の水に溶解する。次いで、成分1、4及び5を加えて混合する。
【0041】
次に、本発明の効果を詳細に説明するため、実験例を挙げる。
【実施例3】
【0042】
実験例1 活性酸素消去作用
フリーラジカル捕捉除去作用の評価を行った。陽性対照としてはアスコルビン酸を用いた。フリーラジカルのモデルとしては、安定なフリーラジカルであるα,α−ジフェニル−β−ピクリルヒドラジル(以下DPPHとする)を用い、試料と一定の割合で一定時間反応させ、減少するラジカルの量を波長517nmの吸光度の減少量から測定した。
【0043】
フリーラジカル捕捉除去作用の測定方法
各試料を、最終濃度0.01mg/mL(アスコルビン酸は0.01mg/mL)となるように加えた0.1M酢酸緩衝液(pH5.5)2mLに無水エタノール2mL及び0.5mM DPPH無水エタノール溶液1mLを加えて反応液とした。また、油溶性の試料の場合は無水エタノール2mLに試料を加えて反応液とした。その後、37℃で30分間反応させ、水を対照として波長517nmの吸光度(A)を測定した。また、ブランクとして試料の代わりに精製水を用いて吸光度(B)を測定した。フリーラジカル捕捉除去率は、以下に示す式より算出した。
フリーラジカル捕捉除去率(%)=(1−A/B)×100
【0044】
これらの試験結果を表1に示した。本発明のリュウキュウバライチゴの熱水及び50%エタノール抽出物は、安定で優れたフリーラジカル捕捉除去作用を有していることが認められた。また、その他の抽出物についても効果が認められた。なお、アスコルビン酸は、100℃、1時間の熱処理で失活するが、本発明のリュウキュウバライチゴの抽出物は、活性に変化はなかった。

【0045】
実験例2 MMP産生抑制作用
MMP産生抑制作用をMMP−1及びMMP−2のmRNA発現量を指標として評価した。
【0046】
MMP−1及びMMP−2のmRNA発現量の測定方法
正常ヒト皮膚線維芽細胞を10%FCS含有DMEM培地にて37℃、5%CO条件下で培養し、コンフルエントな状態になったところで試料(終濃度10μg/mL)を添加したDMEM培地にてさらに24時間培養した後、総RNAの抽出を行った。総RNAの抽出にはISOGEN(ニッポンジーン)を用いた。線維芽細胞から抽出した総RNAを基にリアルタイムRT−PCR法によりMMP−1及びMMP−2mRNA発現量の測定を行った。リアルタイムRT−PCR法にはTaKaRa SYBR ExScript RT−PCR Kitを用い、MMP−1用のprimerとしては5’GGGAGATCATCGGGACAACTC3’(配列番号1)及び5’TGAGCATCCCCTCCAATACC3’(配列番号2)を用いた。MMP−2用のprimerとしては5’CCGTCGCCCATCATCAA3’(配列番号3)及び5’CTTCTGCATCTTCTTTAGTGTGTCCTT3’(配列番号4)を用いた。また、内部標準としてはGAPDHを用い、GAPDH用のprimerとしては5’TGCACCACCAACTGCTTAGC3’(配列番号5)及び5’TCTTCTGGGTGGCAGTGATG3’(配列番号6)を用いた。その他の操作は定められた方法に従い、MMP−1及びMMP−2のmRNA発現量を内部標準であるGAPDHのmRNA発現量に対する割合として求めた。
【0047】
これらの試験結果を表2に示した。本発明のリュウキュウバライチゴの50%エタノール抽出物は、優れたMMP産生抑制作用を有していることが認められた。また、その他の抽出物についても効果が認められた。

【0048】
実験例3 B16マウスメラノーマを用いたメラニン生成抑制試験
対数増殖期にあるB16マウスメラノーマをφ60mmdishに3×10個の細胞を播種し、各試料(最終濃度1μg/mL)を含むEagles’MEM(10%牛胎児血清含有)培地を加え、37℃、5%COの条件下にて培養した。培養5日後に細胞をdishから剥離し、細胞を超音波破砕した後、4NNaOHを加え60℃で2時間の処理を行い、分光光度計でO.D.475nmを測定した。尚、超音波処理後の細胞破砕液をLowryの方法(J.Biol.Chem.,193,265−275,1951)でタンパク定量し、タンパク量当りのメラニン量を比較することによって、メラニン生成抑制効果の指標とした。
【0049】
これらの試験結果を表3に示した。本発明のリュウキュウバライチゴの熱水抽出物は、優れたメラニン生成抑制作用を有していることが認められた。また、その他の抽出物についても効果が認められた。

【0050】
実験例4 細胞増殖促進試験
HaCaT細胞を0.1%FBSを含むDMEM培養液にて、96wellプレートに1wellあたり5,000個播種し、各試料を添加した後、37℃、5%CO条件下にて3日間培養した。細胞数の測定は、MTT法により行った。すなわち、培養終了後、培養液を除き、500μg/mLの濃度にて、MTTを溶解させたDMEMに培地を入れ替え、2時間培養した後、150μLのDMEMに細胞を溶解させ、マイクロプレートリーダーをもちいて590及び650nmにおける吸光度を測定した。細胞数は、590nmの吸光度値から、650nmの吸光度値を引いた値にて算出し、試料を添加しない細胞群(未添加細胞群)を100%とした換算値として示した。
【0051】
これらの実験結果を表4に示した。その結果、本発明のリュウキュウバライチゴの50%エタノール抽出物は、優れた細胞増殖促進作用を示した。また、その他の抽出物についても効果が認められた。

【0052】
実験例5 使用試験1
処方例1の化粧水及び比較例1の従来の化粧水を用いて、シミ、ソバカスに悩む女性10人(23〜50才)を対象に1ヶ月間の使用試験を行った。使用後、シミ、ソバカスの改善効果をアンケートにより判定した。
【0053】
その結果、本発明の抽出物を含有する皮膚外用剤は、優れたシミ、ソバカスの改善作用を示した。なお、試験期間中、皮膚トラブルは一人もなく、安全性においても問題なかった。また、処方成分の劣化についても問題なかった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上のことから、本発明のリュウキュウバライチゴの抽出物は、優れた活性酸素消去作用、MMP産生抑制作用、メラニン生成抑制作用及び細胞増殖促進作用を有し、安定性にも優れていた。よって、本発明のリュウキュウバライチゴの抽出物は、皮膚の老化や美白といった美容分野だけでなく、老化による機能低下の抑制、ガンの予防、治療や創傷治癒などといった医療分野にも利用ででき、食品、化粧品、医薬部外品及び医薬品等への応用が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リュウキュウバライチゴの抽出物を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項2】
リュウキュウバライチゴの抽出物を含有することを特徴とする抗酸化剤。
【請求項3】
リュウキュウバライチゴの抽出物を含有することを特徴とするMMP産生抑制剤。
【請求項4】
リュウキュウバライチゴの抽出物を含有することを特徴とする美白剤。
【請求項5】
リュウキュウバライチゴの抽出物を含有することを特徴とする細胞増殖促進剤。


【公開番号】特開2012−148989(P2012−148989A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7413(P2011−7413)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【出願人】(509036274)オーピーバイオファクトリー株式会社 (3)
【Fターム(参考)】