説明

外用剤組成物

【課題】皮膚老化防止効果に優れた外用剤の提供。
【解決手段】脂肪酸モノグリセリドを主成分とするラメラベシクルであって、平均粒子径0.05〜5μmのラメラベシクルと平均粒子径6〜30μmラメラベシクルとを含有することを特徴とする外用剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の肥厚や弾力性の低下を抑制する効果に優れた外用剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの皮膚は、紫外線や加齢とともに肥厚や弾力性の低下が進行し、その結果としてしわ、たるみ、くすみ等が生じる。かかる皮膚の老化に対して、合成又は天然の保湿成分、種々の植物抽出物、ルチン糖誘導体、セリシン等の蛋白質、α−ヒドロキシ酸等を配合した化粧料が提案されている。
また、脂肪酸モノグリセリドを主成分とするラメラ構造体(特許文献1)、脂肪酸モノグリセリドを主成分とするラメラ構造体とビタミンAを含有する皮膚外用剤(特許文献2)及び脂肪酸モノグリセリドを主成分とするラメラ構造体とそのラメラ構造体に内包されたアスコルビン酸を含有する皮膚外用剤(特許文献3)が優れた保湿作用や老化防止効果を有することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2606761号公報
【特許文献2】特開2000−239140号公報
【特許文献3】特開2002−145751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらのラメラ構造体の効果は未だ十分満足すべきものではなく、さらに皮膚老化防止効果に優れた外用剤素材が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者らは皮膚の老化防止効果に優れた素材を探索してきたところ、全く意外にも、平均粒子径の大きな脂肪酸モノグリセリドを主成分とするラメラベシクルと平均粒子径の小さな脂肪酸モノグリセリドを主成分とするラメラベシクルとを併用すると、極めて顕著な皮膚の肥厚抑制効果及び弾力性低下抑制効果が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
また、平均粒子径の小さなラメラベシクルの製造法についても検討した結果、脂肪酸モノグリセリドを含む脂質成分を特定の濃度範囲で用い、油相に水相を添加することにより、簡便な操作で粒度分布の狭い平均粒子径0.05〜1μmの微小ラメラベシクルが効率良く得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、脂肪酸モノグリセリドを主成分とする脂質成分20〜40重量部に水相成分60〜80重量部を添加して撹拌することを特徴とする平均粒子径0.05〜1μmのラメラベシクルの製造法を提供するものである。ここでいう、平均粒子径とは、粒度分布から求められた粒子径の中央値(メジアン)をいう。
【発明の効果】
【0008】
本発明の外用剤組成物は、優れた皮膚の肥厚抑制効果や皮膚弾力性の改善効果を示し、総合的な皮膚の改善に有用である。さらに皮膚に対する刺激性もなく、これを用いることで優れた皮膚化粧料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ラメラベシクルの粒度分布を示す図である。
【図2】各試料の皮膚の肥厚に及ぼす作用を示す図である。
【図3】各試料の皮膚弾力性に及ぼす作用を示す図である。
【図4】ラメラベシクルの粒度分布を示す図である。
【図5】各試料の皮膚の肥厚に及ぼす作用を示す図である。
【図6】各試料の皮膚弾力性に及ぼす作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に用いるラメラベシクルの主成分は、脂肪酸モノグリセリドであるが、保湿効果、トランスグルタミナーゼ1活性化効果、皮膚の肥厚及び弾力性低下抑制効果の点から、特に炭素数8〜20の飽和又は不飽和脂肪酸モノグリセリドが好ましい。脂肪酸モノグリセリドの構成脂肪酸の具体例としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、パルミトオレイン酸等が挙げられ、これらのモノグリセリドは2種以上のものを組み合わせて用いてもよい。特に平均粒子径0.05〜1μmの小さなラメラベシクルを得ようとする場合には、モノパルミチン酸を構成脂肪酸とする脂肪酸モノグリセリドを用いることで、平均粒子径が0.05〜1μm、より好ましくは0.1〜1μmで、かつほぼ均一の粒子径の微粒子ラメラベシクルを得ることができる。これに組み合わせるモノグリセリドとしては、その脂肪酸組成がステアリン酸、ミリスチン酸であるものが好ましい。
【0011】
また、このラメラベシクルの他の構成成分としては、コレステロール、アルキル又はアルケニルモノグリセリンエーテル等が挙げられる。コレステロールの配合は、ラメラベシクルの安定性を向上させるため、特に好ましい。アルキル又はアルケニルモノグリセリンエーテルとしては、炭素数8〜20のアルキル又はアルケニルモノグリセリンエーテルが好ましい。これらコレステロールやモノグリセリンエーテルの添加量は、合計で脂肪酸モノグリセリド100重量部に対し、1〜100重量部、特に5〜25重量部が好ましい。
【0012】
本発明においては、このような脂肪酸モノグリセリドを主成分とするラメラベシクルであって、平均粒子径0.05〜5μmのラメラベシクルと平均粒子径6〜30μmのラメラベシクルとを併用することを特徴とする。好ましい組み合せは平均粒子径0.05〜5μmのラメラベシクルと6〜20μmのラメラベシクルで、特に好ましい組み合わせは平均粒子径0.1〜5μmのラメラベシクルと6〜20μmのラメラベシクルである。これら粒子径の異なる2種のラメラベシクルを併用することにより、それぞれ単独の作用からは全く予想し得ない程優れた皮膚肥厚抑制効果及び皮膚の弾力性低下抑制効果が得られる。
【0013】
このような平均粒子径の異なるラメラベシクルは、粒度分布の広いラメラベシクルを調製した後、ゲルろ過や遠心分離、異なるポアサイズのろ過膜を用いて逐次ろ過することにより製造することもできるが、それぞれ別途に製造してもよい。
【0014】
かかるラメラベシクルの調製は、例えば水相中で脂肪酸モノグリセリドを含有する油相混合物を物理的に撹拌せしめることにより行なわれる。このような方法としては、たとえば、脂肪酸モノグリセリド又はこれを含有する油相混合物をジクロロメタン、クロロホルム、アセトン等の有機溶媒に溶解した後、回転容器中で溶媒を留去して脂肪層を乾固させ(油相)、水又は適当な水溶液(水相)を添加し、物理的に撹拌して水相中に徐々に油相を分散・混合させることによって、本発明に用いるラメラベシクルの分散液を調製することができる(薄相法)。また別法として、水相を加熱して溶融混合した後、同程度の温度に保持され溶解された0.1〜15%程度の濃度の脂肪酸モノグリセリド又はこれを含有する油相混合物を添加し、物理的に油相を水相に分散・混合させ本発明に用いるラメラベシクルの分散液を調製することができる。上記加熱温度としては、40〜100℃、さらに45〜80℃が好ましく、50〜70℃が特に好ましい。
【0015】
なお、粒子径の小さなラメラベシクルを得る為には、従来、物理的撹拌時の回転速度やせん断力を高める、すなわちより高いエネルギーをかけてやることが好ましいとされていたが、このような方法では平均粒子径0.05〜1μm、さらに0.05〜0.5μm、特に0.1〜0.5μmの微粒子ラメラを得ることはできなかった。
【0016】
一方、特定の脂質を膜構成成分として用いる、特にモノパルミチン酸を構成脂肪酸とする脂肪酸モノグリセリドを用い、Ca2+の非存在下で上記の薄膜法で調整することで、平均粒子径0.5μm以下の微粒子ラメラが得られることは知られていたが、工程が複雑な上、溶媒を留去できる回転容器等、特殊な機器を必要とする為、コストがかかる等の問題があり、現実的ではなかった。
【0017】
本発明者等は、より容易に微粒子ラメラを調製する方法を検討した結果、従来行なわれていた少ない油相を多量の水相に分散する方法ではなく、意外にも従来よりも多量の油相混合物に水相を添加して撹拌する方法、より詳細には、多量の油相混合物を加熱して溶融混合した後、同程度、又は油相より低温に保持された水相を添加し、物理的に撹拌して油相中に徐々に水相を分散・混合させることによって、0.05〜1μm、さらに0.05〜0.5μm、特に0.1〜0.5μmの微粒子ラメラ分散液を調製できることを見出した。
【0018】
当該調製方法における油相濃度としては、全量の20〜40%程度が好ましい。従って、20〜40重量部の油相成分に60〜80重量部の水相成分を添加することになる。また、油相としては、パルミチン酸、ステアリン酸、及びミリスチン酸の1種又は2種以上を構成脂肪酸とする脂肪酸モノグリセリドが好ましく、特にこれらを併用することが好ましい。油相及び水相の温度は、混合時の温度として50〜80℃、さらに52〜78℃が好ましく、57〜63℃が特に好ましい。或いは、50〜90℃、好ましくは70〜80℃の条件下に保った油相と、30〜80℃、好ましくは40〜50℃の条件下に保った水相を混合して行うこともできる。当該方法であれば、得られたラメラベシクルの50%以上が0.5μm以下でほぼ均質な粒子径を有する、微粒子ラメラベシクルを得ることができる。
【0019】
何れの調製方法においても、物理的分散には、例えば超音波乳化装置、高圧均一分散装置、ナノマイザー、ホモジナイザー、コロイドミル、マイクロフルイタイザー等を用いることが好ましい。さらに、水相中にCa2+が存在する状態で調整すると、多層膜ラメラベシクルを得ることができる。
【0020】
また、本発明のラメラベシクルとしては、単層膜ラメラベシクル、多層膜ラメラベシクルいずれを用いてもよく、単層膜と多層膜のラメラベシクルを併用することもできる。
【0021】
本発明の組成物中の粒子径の異なるラメラベシクルの配合比率は特に制限するものではなく、使用するラメラベシクルの活性等により適宜選択して行なえばよい。例えば平均粒子径0.05〜5μmのラメラベシクルと平均粒子径6〜30μmのラメラベシクルの配合比率は、重量比率として1:100〜100:1、さらに1:50〜50:1、特に1:20〜20:1とすることが好ましい。
【0022】
また、平均粒子径0.05〜5μmのラメラベシクルの場合には、1種でもよいが、0.05〜1μmのラメラベシクルと1〜5μmのラメラベシクルを併用してもよい。
【0023】
また、本発明に用いる2種のラメラベシクルの水相成分中には、種々のアスコルビン酸塩、ビタミンAエステル、及びそれらの誘導体、乳酸菌培養上清、防腐剤、保湿剤、ヒアルロン酸等の水溶性高分子などの水溶性成分が含まれていてもよい。
【0024】
本発明の外用剤組成物は、粒子径の異なるラメラベシクルを2種以上配合した組成物をそのまま使用してもよいが、本発明の効果を妨げない範囲で公知の外用剤成分、例えば水、アルコール類、油成分、界面活性剤、防腐剤、香料、色素、保湿剤、増粘剤、水溶性高分子、酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤、発泡剤、顔料、紫外線吸収・散乱剤、紛体、ビタミン類、アミノ酸類、抗菌剤、植物抽出物、動物由来成分、微生物由来成分、微生物培養上清、海藻抽出物、各種薬剤、添加剤等を配合することができる。
【0025】
本発明の外用剤組成物は、常法により製造することができ、化粧水、乳液、保湿クリーム、クレンジングクリーム、洗顔クリーム、パック、美容液等の基礎化粧品、シャンプーやリンス等の頭髪用製品、入浴剤等の浴用化粧品、ファンデーション等のメイクアップ化粧品、日焼け止め等の特殊化粧品等、種々の形態とする事ができるが、皮膚化粧料とするのが好ましい。
【0026】
外用剤組成物へのラメラベシクルの配合量は特に制限されないが、外用剤組成物中に合計で0.01〜100重量%、さらに0.1〜90重量%とすることが好ましく、特に0.3〜80重量%が好ましい。
【実施例】
【0027】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下%は重量%を示す。
【0028】
製造例1
蒸留水1mLに対し、1%モノパルミチン、0.3%バチルアルコール及び0.1%コレステロールとなる量に各々の脂質を秤量し、脂質混合物Aを調整した。容器中で脂質混合物Aを乾固した後、10mMのCaCl2溶液を加え、60℃の温浴中で超音波処理(Branson sonifer250;Branson社製、20kHz、55W、10分間)を行った。得られた混合液を遠心処理にて上清を蒸留水に置換し、試料1を得た。
【0029】
製造例2
実施例1と同様に脂質混合物Aを調整し、容器中で乾固した後に蒸留水を加え、60℃の温浴中製造例1と同じ条件で超音波処理を行い、試料2を得た。
【0030】
製造例3
蒸留水1mLに対し、0.5%モノミリスチン、0.5%モノパルミチン、0.3%バチルアルコール及び0.1%コレステロールとなる量に各々の脂質を秤量し、脂質混合物Bを調整した。容器中で脂質混合物Bを乾固した後に蒸留水を加え、60℃の温浴中で製造例1と同じ条件で超音波処理を行い、試料3を得た。
【0031】
製造例4
製造例1及び2で得られた試料1及び試料2を当量ずつ混合して、実施品1を得た。
【0032】
試験例1
ラメラベシクルの粒度分布
測定には、製造例1〜3で得られた試料1〜3を用い、常法に従い、各々のラメラベシクルの粒子分布を測定した。すなわち計測カップに試料を0.1〜1mL分散後直ちに室温にて下で島津レーザー回折式粒度分布計(SALD−2000;島津製作所製)を用いて測定した。結果を図1に示す。
【0033】
図1に示したとおり、試料1の平均粒子径は10μmだが、粒度の分布は広範囲に及び、大きいものでは20〜30μmのものもあることが明らかとなった。それに対して試料2は平均粒子径が3μmで、粒度分布の幅は狭かった。試料3の粒度分布はさらに狭く、その平均粒子径は0.2μmであった。
【0034】
試験例2
皮膚の肥厚に及ぼす影響
試験には、製造例1〜2、及び4で得られた試料1及び2、並びに実施品1を用いた。ヘアレスマウス(Hr−1:Hos、雌、7週令)に40mJ/cm2/日の紫外線を1日1回、4日間照射した。各照射直後に、試料1、2及び実施品1を各々200μlずつ背部皮膚に連日塗布した(n=4〜6)。試料としては蒸留水を用いた。実験終了日(照射4日目)に皮膚を剥がし、皮膚の厚さをデジマジック・インジケータ543(三豊社製)を用いて測定した。結果を図2に示す。
【0035】
図2に示したとおり、平均粒子径10μm、及び平均粒子径3μmのいずれのラメラベシクルも、紫外線による皮膚の肥厚を抑制傾向は示したが、有意な抑制効果は示さなかった。一方、これらの粒子径を併用することで、単独で使用した場合に比べ相乗的に抑制することがわかった。
【0036】
試験例3
皮膚弾力性に及ぼす影響
試験には、製造例1〜2、及び4で得られた試料1及び2、並びに実施品1を用いた。試験例2と同様に紫外線照射及び試料の塗布を行い、Cutometer SM575(C+K社製)を用い、直径2mmの計測センサーを用いて、吸引圧50mbarで皮膚弾力性を測定した。結果を図3に示す。
【0037】
図3に示したとおり、平均粒子径10μm、及び平均粒子径3μmのいずれのラメラベシクルも、紫外線による皮膚の弾力性の低下を抑制できなかった。一方、これらの粒子径を併用した場合は、皮膚弾力性の低下は全く生じず、極めて優れた抑制効果が得られることがわかった。
【0038】
試験例4
ラメラベシクルの粒子径に及ぼす脂質量の影響
脂肪酸モノグリセリド(モノステアリン:モノパルミチン=7:3)、バチルアルコール、及びコレステロールを表1の比率で混合し、脂質混合物を得た。得られた脂質混合物を、各々容器内に投与し、75℃下で溶融した後、撹拌機(ポリトロンホモジナイザー PT3000型;KINEMATICA社製、6000rpm、1分)で撹拌した。次いで45℃に加温した精製水を投入し、全体を100%とした後、撹拌機を用いて、6000rpm、2分間撹拌し、均一化した。均一化後撹拌下で(1000rpm)水浴により冷却を開始し、32℃まで冷却して試料4〜7を得た。得られた試料の状態を肉眼で観察し、試料の状態を確認した。また得られたラメラベシクル混合物を蒸留水により25倍に希釈し、偏光顕微鏡下(10×40倍)でラメラの状態を比較した。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
表2に示したように、試料4、5に比べ、試料6、7のラメラベシクルは比較的粒子が均一で、特に試料6は組成物の状態も良好であった。一方、試料7は得られるラメラベシクルの粒子径は最も小さかったが、試料6に比べて組成物の状態が悪かった。
また試料6のラメラベシクルについて粒子分布を測定した。すなわち、試料を4000倍希釈した条件下でFPIA−2100(SYSMEX社製)を用いて測定し、平均粒子径を求めた結果、試料6の平均粒子径は0.45μmであった。従って、20〜40重量部の高濃度の脂質に60〜80重量部の水相を添加して撹拌することにより平均粒子径0.05〜1μmの状態の良好なラメラベシクルが得られることがわかった。
【0042】
試験例5
ラメラベシクルの粒子径に及ぼす撹拌速度及び温度の影響
脂肪酸モノグリセリド(モノステアリン:モノパルミチン=7:3)、バチルアルコール、及びコレステロールを製造例1と同じ比率で混合し、脂質混合物を得た。得られた脂質混合物を全量の28%となるよう秤量して容器内に投与し、表3に記載した温度下で溶融した。次いで表3に示した温度に加温した精製水を投入し、全体を100%とした後、撹拌機を用いて撹拌し、均一化した。均一化後撹拌下で(1000rpm、又は500rpm)水浴により冷却を開始し、32℃まで冷却して試料8〜11を得た。得られた試料の状態を肉眼で観察し、試料の状態を確認した。また得られたラメラベシクル混合物を蒸留水により25倍に希釈し、試験例4と同じ条件下でラメラの状態及びラメラベシクルの粒子分布を測定した。結果を表4に示す。
【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【0045】
表4に示したように、試料8〜10はいずれもラメラベシクルの状態、及びラメラベシクルの粒子径は試料6とほぼ同一であり、ラメラベシクル製造開始時の撹拌速度はラメラベシクルの粒子径や状態に影響しなかった。また、試料11もラメラベシクルの状態、及びラメラベシクルの粒子径は試料6とほぼ同一であり、製造時の油相の温度が40℃以上、或いは撹拌時の油相成分と水相成分の混合物の温度が50℃以上であれば、平均0.45μmのラメラベシクルが得られることがわかった。
【0046】
製造例5
下記成分のうち、1〜3各々の脂質を秤量し、60〜85℃で加熱溶解して脂質混合物Dを得た。一方、4、5を秤量、混合し60〜85℃で加熱溶解して水相成分を得た。得られた水相成分に脂質混合物を投入し撹拌機(ポリトロンホモジナイザー PT3000型;KINEMATICA社製、6000rpm、1分)で撹拌し、試料12を得た。
【0047】
1.モノパルミチン 5.0(重量%)
2.バチルアルコール 1.5
3.コレステロール 0.5
4.塩化カルシウム 0.1
5.精製水 92.9
【0048】
製造例6
製造例1及び5で得られた試料1及び12を当量ずつ混合して、実施品2を得た。
【0049】
製造例7
製造例1、2及び5で得られた試料1、試料2及び試料12を当量ずつ混合して、実施品3を得た。
【0050】
試験例6
ラメラベシクルの粒度分布
測定には、製造例1、2及び4で得られた試料1、試料2及び試料12を用い、試験例1と同様にラメラベシクルの粒度分布を測定した。結果を図4に示す。
図4に示したとおり、試料12の平均粒子径は0.1μmであった。
【0051】
試験例7
皮膚の肥厚に及ぼす影響
試験には、製造例2及び7で得られた試料2及び実施品3を用い、試験例2と同様に皮膚の厚さを測定した。結果を図5に示す。
図5に示したとおり、平均粒子径10μm、3μm及び0.1μmのラメラベシクルを併用することで、紫外線による皮膚の肥厚に対し、優れた抑制効果が得られることがわかった。
【0052】
試験例8
皮膚弾力性に及ぼす影響
試験には、製造例1及び7で得られた試料1及び実施品3を用い、試験例3と同様に皮膚弾力性を測定した。結果を図6に示す。
図6に示したとおり、平均粒子径10μm、3μm及び0.1μmのラメラベシクルを併用することで、皮膚弾力性の低下は生じず、優れた抑制効果が得られることがわかった。
【0053】
処方例1 保湿クリーム
下記成分のうち、油相成分(1〜13)を加熱溶解し、また同様に水相成分(14〜22)も加熱溶解する。前記の加熱した水相に油相を混合しホモジナイザーで撹拌しその後冷却する。冷却途中で添加成分(23〜32)を投入、混合して保湿クリームを得た。
【0054】
1.スクワラン 4.30%(重量%)
2.2−エチルヘキサン酸セチル 4.50
3.ミリスチン酸オクチルドデシル 4.50
4.重質流動イソパラフィン 4.00
5.サラシミツロウ 2.40
6.ステアリン酸 2.40
7.ステアリン酸バチル 1.20
8.ベヘニルアルコール 1.20
9.モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40) 0.50
10.グリチルレチン酸ステアリル 0.10
11.酢酸dl−α−トコフェロール 0.10
12.天然ビタミンE 0.001
13.メチルポリシロキサン 0.20
14.精製水 15.879
15.アクリル酸・メタクリル酸共重合体 3.00
16.ホエイ(2) 19.90
17.グリセリン 10.00
18.ポリオキシエチレンメチルグルコシド 1.50
19.1.3−ブチレングリコール 7.00
20.カンゾウ抽出物 0.12
21.エデト酸ニナトリウム 0.10
22.パラオキシ安息香酸エステル 0.20
23.KOH 0.20
24.ヒアルロン酸Na液(0.6%) 4.90
25.2−メタクロイルオキシエチルホスコリン・メタクリル酸ブチル
共重合体 3.00
26.ブクリョウエキス 0.10
27.ニンジンエキス 0.05
28.酵母エキス 0.05
29.ロイヤルゼリー 0.05
30.グルコン酸クロルヘキシジン 0.05
31.ラメラベシクル組成物(試料12、平均粒子径10μm)
8.00
32.ラメラベシクル組成物(試料6、平均粒子径0.45μm)
0.50
【0055】
得られた保湿クリームは、使用感、保湿等に優れたクリームであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸モノグリセリドを主成分とする脂質成分20〜40重量部に水相成分60〜80重量部を添加して撹拌することを特徴とする平均粒子径0.05〜1μmのラメラベシクルの製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−248257(P2010−248257A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173504(P2010−173504)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【分割の表示】特願2004−207104(P2004−207104)の分割
【原出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000006884)株式会社ヤクルト本社 (132)
【Fターム(参考)】