説明

外用剤組成物

【課題】 融点をコントロールすることにより得られる使用性及び熱安定性に優れた固体脂を含有する外用剤組成物を提供すること。
【解決手段】 (1)モリンガの種子から得られる油性成分と該油性成分の水素添加反応生成物とをエステル交換反応させて得られる融点40〜55℃の生成物を固体脂成分として含有することを特徴とする外用剤組成物。
(2)前記の水素添加反応物が完全水素添加反応による反応物であることを特徴とする(1)記載の外用剤組成物。
(3)固体脂成分が0.001〜100重量%である(1)および(2)記載の外用剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモリンガの種子から得られる油性成分とその水素添加物とのエステル交換反応物を含有する外用剤組成物に関する。ここで外用剤組成物とは、シャンプー、リンス、洗顔フォーム等の洗浄剤、基礎化粧品、メーキャップ化粧品、毛髪化粧品、芳香化粧品、ボディー化粧品等の化粧品、医薬部外品、医薬品を含む。
【背景技術】
【0002】
洗浄剤、化粧品、医薬品等の外用剤組成物には皮膚からの水分の蒸散を抑制したり、毛髪をセットしたり、使用感触を向上させる等多種多用な目的で油性成分が配合される。この油性成分には動植物油脂、ロウ類、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル類、シリコーン油等があり、その化学的、物理的性質、使用感触等の特徴に応じて使い分けられている。これらの中でも植物起源で、常温で固体のカルナウバロウ、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、ミツロウ、シア脂、カカオ脂などはエモリエント剤、光沢剤、液状油の固化剤として特にクリーム、リップスティック、ファンデーション、ヘアスチックなどに用いられて来た。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記の固体脂の内、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、ミツロウなどは融点が60℃以上であり、一方、シア脂、カカオ脂は融点が30〜40℃である。従来、外用剤組成物を設計する際、融点が60℃以上もあると、例えば皮膚に塗布した時に速やかに液状化しないため、意図する使用感のクリームが出来ないということがあった。或いは逆に、融点が30〜40℃であると、高温下で融解してしまい、安定な外用剤組成物を設計することが困難であった。
更に、低融点側の固体脂は、組成的に不飽和脂肪酸であるオレイン酸、リノール酸を比較的多量に含有している。そのため、酸化安定性、特に高温下、長期の安定性に関して満足する外用剤組成物を得ることが出来なかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記のような状況下でなされたものであり、融点が40〜55℃で酸化安定性に優れた固体脂成分を含有する外用剤組成物を提供するものである。
【0005】
本発明は、
(1)モリンガの種子から得られる油性成分と該油性成分の水素添加反応生成物とをエステル交換反応させて得られる融点40〜55℃の生成物を固体脂成分として含有することを特徴とする外用剤組成物。
(2)前記の水素添加反応物が完全水素添加反応による反応物であることを特徴とする(1)記載の外用剤組成物。
(3)固体脂成分が0.001〜100重量%である(1)および(2)記載の外用剤組成物。
なる手段によって前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の固体脂成分を配合することにより、皮膚又は毛髪上に適用した時、体温によって該成分が液状化し、且つ長期に安定な外用剤組成物の設計が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について詳述する。本発明の固体脂は、モリンガ(Moringa Oleifera)の種子を圧搾して得られるオイルと、該オイルを水素添加反応させて得られる水素添加反応物とをエステル交換反応させ、融点を40〜55℃に調整することにより得られる。このエステル交換反応生成物は前記の低融点側の固体脂に比べて幾分不飽和脂肪酸が少ないため、熱安定性的に有利である。
【0008】
本発明の外用剤組成物においては、前記の水素添加反応物は、完全に水素添加反応をさせて、不飽和の炭素鎖が全くない完全水素添加反応物であることが好ましい。この完全水素添加により、次のエステル交換反応において、トランス体を生成することがない。
この固体脂はアメリカ合衆国のフローラテック社の市販原料「フローラリピッズ モリンガバター」の商品名で入手することができる。
【0009】
本発明の外用剤組成物において、上記の固体脂の好ましい配合量はその剤型、機能にもよるが、外用剤組成物中0.001〜100%である。0.001%未満では固体脂成分としての機能を発揮するには不十分である。また、その製剤の機能によっては、100%配合する。
【0010】
本発明の外用剤組成物には上記の必須成分以外に、通常、化粧品や医薬品等の外用剤組成物に使用される他の成分を配合することができる。かかる他の成分としては下記成分が例示される。本発明の外用剤組成物は、上記必須成分にこれらの一種又は二種以上を配合して常法に従って製造される。
【0011】
油性成分として次のものを挙げることができる。オリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、アボガド油、小麦胚芽油、サフラワー油、モリンガ油、綿実油、大豆油、茶実油、ヒマワリ油、月見草油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、牛脂、馬脂、カカオ脂、モクロウ等の油脂類、カルナバロウ、キャンデリラロウ、ホホバ油、ミツロウ、ラノリン等のワックス類、流動パラフィン、パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン等の炭化水素、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の高級脂肪酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、バチルアルコール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール等の高級アルコール、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、オクタン酸セチル、2−エチルヘキサン酸セチル、ペンタエリスリトールテトラエステル、リンゴ酸ジイソステアリル、クエン酸トリエチル、ステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸フィトステアリル、エトキシジグリコールベヘネート、エトキシジグリコールオレエート、ヤシ油脂肪酸ブチレングリコール等のエステル類、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環状ジメチルシリコーン油、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、3次元網目構造シリコーン、シリコーンゴム等のシリコーン。
【0012】
多価アルコールとして次のものを挙げることができる。グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、エトキシジグリコール、ペンタンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール等。
【0013】
糖類として次のものを挙げることができる。ソルビトール、マンニトール、ショ糖、乳糖、キシリトール、マルチトール、トレハロース等。
【0014】
高分子化合物として次のものを挙げることができる。グアーガム、クインスシード、ペクチン、マンナン、カンテン、カラギ−ナン、キサンタンガム、カードラン、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン等の天然高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩等の半合成高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ソーダ、POE・POP共重合体等の合成高分子、ベントナイト、ヘクトライト、マグネシウムケイ酸ナトリウム等の無機系増粘剤、両性メタクリル酸エステル共重合体、カチオン化セルロース、ポリ塩化ジメチルピペリジニウム、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース、高分子シリコーン、シリコーンレジン等の被膜形成性高分子。
【0015】
界面活性剤として次のものを挙げることができる。高級脂肪酸石鹸、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、POEアルキルエーテル硫酸塩、アシルN−メチルタウリン塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、N−アシルアミノ酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、POEアルキルエーテルカルボン酸塩等のアニオン性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム等のカチオン性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等の両性界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、POEグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、POEソルビタン脂肪酸エステル、POEソルビット脂肪酸エステル、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油、POEアルキルエーテル、POEPOPアルキルエーテル、POEアルキルアミン・脂肪酸アミド、PEG脂肪酸エステル、アルキルアミンオキサイド等のノニオン界面活性剤。
【0016】
色剤及び粉体、粒体として次のものを挙げることができる。黒酸化鉄、ベンガラ、黄酸化鉄、群青、カーボンブラック等の無機顔料、パール顔料、有機顔料、タール色素、天然色素等の色素、タルク、カオリン、雲母、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、無水ケイ酸、酸化チタン、雲母チタン、亜鉛華、ゼオライト等の無機粉体、ナイロンパウダー、ポリエチレン末、セルロースパウダー、シルクパウダー等の有機粉体、ナイロン、ポリエチレン、セルロース、ワックス、脂肪酸エステル、天然物からなる粒体。
【0017】
動植物抽出物として次のものを挙げることができる。ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム等のムコ多糖類、キチン・キトサン、コラーゲン、エラスチン、ペプチド等の動物抽出物、アロエエキス、オオバクエキス、オオヒレアザミ、オドリコソウエキス、カモミラエキス、カンゾウエキス、クルミの種子エキス、シコンエキス、シラカバエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、茶エキス、トウキエキス、ニンニクエキス、ニンジンエキス、ハマメリスエキス、ヒノキチオール、ビワ葉エキス、ブナの木の幼芽エキス、ヘチマエキス、ベニバナエキス、ヤナギランエキス、ケーパーエキス、キバナオランダセンニチエキス、クルミ種子エキス、モモ葉エキス、ユーカリエキス、ローズ水、アスパラゴプシスアルマタエキス等の植物抽出物。
【0018】
鉱物抽出物として次のものを挙げることができる。孔雀石、菱マンガン鉱石、菱亜鉛鉱石、赤鉄鉱等の抽出物。
【0019】
殺菌・防腐剤として次のものを挙げることができる。安息香酸、安息香酸ナトリウム、サリチル酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸エステル(エチルパラベン、ブチルパラベン等)、トリクロロカルバニリド、フェノキシエタノール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン、ジンクピリチオン、トリクロサン等。
【0020】
酸化防止剤として次のものを挙げることができる。没食子酸エステル、亜硫酸水素ナトリウム等、リン酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマール酸、ケファリン、フィチン酸、EDTA等。
【0021】
金属封鎖剤として次のものを挙げることができる。エデト酸塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸、リン酸、クエン酸、コハク酸、フィチン酸等。
【0022】
紫外線吸収剤として次のものを挙げることができる。2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸等のベンゾフェノン誘導体、パラアミノ安息香酸、パラジメチルアミノ安息香酸オクチル等のパラアミノ安息香酸誘導体、パラメトキシ桂皮酸オクチル、ジパラメトキシ桂皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル等のメトキシ桂皮酸誘導体、サリチル酸オクチル等のサリチル酸誘導体、ウロカニン酸等。
【0023】
pH調整剤として次のものを挙げることができる。水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア水、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールアミン等のアルカリ剤、クエン酸、リン酸等の酸。
【0024】
各種薬剤して次のものを挙げることができる。アルブチン、コウジ酸、ビタミンC類等の美白剤、センブリエキス、γ−オリザノール、トウガラシチンキ、ニコチン酸ベンジルエステル、エストラジオール、エチニルエストラジオール、パントテン酸、感光素301等の育毛用薬剤、β−グリチルレチン酸、グリチルリチン酸誘導体、アラントイン、ε−アミノカプロン酸、酸化亜鉛、硫酸アルミニウム、タンニン酸、乳酸、メントール、副腎皮質ホルモン、抗ヒスタミン剤等の肌荒れ防止用薬剤、イオウ、サリチル酸、レゾルシン、塩化ベンザルコニウム、ハロカルバン等のニキビ用薬剤、クロルヒドロキシアルミニウム、塩化アルミニウム、酸化亜鉛等の制汗剤、ビタミンA及びその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2及びその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15及びその誘導体等のビタミンB類、アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステル(塩)、アスコルビン酸ジパルミテート等のビタミンC類、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート、ビタミンEニコチネート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン等のビタミン類、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン、タウリン、アルギニン、ヒスチジン等のアミノ酸とこれらの塩酸塩。
【0025】
本発明の外用剤組成物の剤型は液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、エアゾールフォーム状、固形、粉末分散系など、通常外用剤組成物として用いられる形態をとることができる。
【実施例】
【0026】
次に本発明について、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。配合量は特に断りがない限り重量%で示す。
【0027】
実施例1 リップスティック
二酸化チタン 0.5
赤色201号 0.6
赤色202号 1.0
赤色201号 0.2
フローラリピッズ モリンガバター*1) 10.0
セレシン 5.0
リンゴ酸ジイソステアリル 10.0
2−エチルヘキサン酸セチル 20.0
ミリスチン酸オクチルドデシル 10.0
トリエチルヘキサノイン 残部
酸化防止剤 適量
香科 適量
100.0
*1)「フローラリピッズモリンガバター」:フローラテック社商品
上記成分配合のリップスティックを常法に従って調製した。得られたリップスティックは唇に塗布した時、なめらかにのびて良好な使用感であった。また、長期に保管しても、変色、変臭することがなかった。
【0028】
実施例2 保湿クリーム
1,3−BG 10.0
キサンタンガム 0.3
セタノール 3.0
フローラリピッズ モリンガバター*1) 5.0
マカデミアナッツ油 5.0
マカデミアナッツ脂肪酸エチル 3.0
ミリスチン酸オクチルドデシル 3.0
モノステアリン酸グリセリル 2.0
イソステアリン酸POEグリセリル 2.0
防腐剤 適量
香料 適量
精製水 残部
100.0
上記成分配合の保湿クリームを常法に従って調製した。得られた保湿クリームは肌に塗布した時、なめらかにのびて良好な使用感であった。また、長期に保管しても、変色、変臭することがなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリンガの種子から得られる油性成分と該油性成分の水素添加反応生成物とをエステル交換反応させて得られる融点40〜55℃の生成物を固体脂成分として含有することを特徴とする外用剤組成物。
【請求項2】
前記の水素添加反応物が完全水素添加反応による反応物であることを特徴とする請求項1に記載の外用剤組成物。
【請求項3】
固体脂成分が0.001〜100重量%である請求項1および2に記載の外用剤組成物。

【公開番号】特開2013−40157(P2013−40157A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191094(P2011−191094)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(391056701)池田物産株式会社 (22)
【Fターム(参考)】