説明

外用剤

【課題】 皮膚表面の酸化電位を軽減させることによって、皮膚の老化を防ぎ、肌を健やかに保つことに加え、皮膚の乾燥や各種皮膚疾患を緩和するのに十分な効果を発揮することができる、新たな外用剤を提供すること。
【解決手段】 下記の(A)に列挙される植物のエキス及び(B)の物質からなる群より選択される何れか一種以上を有効成分とし、pH4.5以上pH11.0以下の範囲において、200mV以下の酸化還元電位を有することを特徴とする外用剤とする。
(A)スベリヒユ、半醗酵茶、紅景天、厚朴、ウイキョウ、陳皮、タイソウ、ヨクイニン、クコ、シンイ
(B)平均分子量千〜1万のウロン酸含有多糖類及びその誘導体

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚表面の酸化電位を軽減させることによって、皮膚の老化を防ぎ、肌を健やかに保つ、新規の外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの皮膚表面は、常に酸性物質で汚染された大気や、強い紫外線による酸化反応、ラジカル反応に曝され刺激を受けている。又、水質の悪化により、水道水や、プールの水の塩素消毒は更に強力なものとなり、染色された衣類を退色させる程の酸化作用をもっている。その為、これらの水に接触する皮膚は常に酸化による劣化の脅威に曝されている。
このような状況下では、これら酸化作用を受けた皮膚の劣化が、皮膚の防御機能を弱め、皮膚の乾燥や各種皮膚疾患を生じさせ、掻痒性を助長する等の問題が生じていた。
【0003】
生体成分を酸化させる要因として、近年、活性酸素が注目されており、その生体への悪影響が問題となっている。活性酸素は動物の生体内において様々な反応を惹き起こすが、皮膚組織においても、これらの損傷や老化に深く関与することが知られている。
即ち、(活性酸素は)食細胞の殺菌機構にとって必須で、ウイルスや癌細胞の除去に重要な働きを果たしているが、活性酸素の過剰な生成は生体内の膜や組織を構成する生体内分子を攻撃し、各種疾患を誘発する。例えば、コラーゲン等の生体組織を分解、変性あるいは架橋したり、油脂類を酸化して細胞に障害を与える過酸化脂質を生成したりすると考えられており、活性酸素によって引き起こされるこれらの障害が、シワ形成や弾力性低下等の皮膚老化の原因になるものと考えられている。
【0004】
活性酸素は、紫外線,放射線,重金属等の外来刺激および生体内代謝(生体細胞内のエネルギー代謝過程)により生じるもので、スーパーオキサイド(酸素分子の一電子還元で生じるスーパーオキシドアニオン)、過酸化水素、一重項酸素、ヒドロキシラジカル等が挙げられる。これらの活性酸素は物質の酸化に関わり、抗酸化力評価の指標となる(抗酸化力は、ヒドロキシラジカル等の活性酸素を消去する力をもって評価されている)。
生体内において、酸素を基に最初に生成されるラジカルはスーパーオキサイドであり、ヒドロキシラジカル等、他のラジカルはスーパーオキサイドを経て生成される。又、紫外線等により活性酸素種の内、過酸化水素が細胞内に蓄積されることが知られているが、この過酸化水素から皮膚組織内に微量存在する鉄イオンや銅イオンによりフェントン反応が触媒され、最も組織傷害性の高いヒドロキシラジカルが生成するといわれている。
【0005】
細胞内のスーパーオキサイドは、細胞内で産生されたスーパーオキシドジスムターゼ(以下「SOD」と略)によって過酸化水素に変換されるが、SOD量は加齢に伴って減少し、SOD量の減少によってスーパーオキサイドの細胞内濃度が上昇し、スーパーオキサイドが生体に対して障害(例えば、関節リウマチやベーチェット病などの組織障害、心筋梗塞、脳卒中、白内障、糖尿病、動脈硬化、肩こり、冷え性、肌のしみ・シワ等の障害)を及ぼすようになる。
このような障害を予防又は治療するSOD様作用剤として、SOD量の減少を補うために、オウゴンからの抽出物(特許文献1)や、バラ科植物である棘梨の果汁(特許文献2)等が使用されているが、これらのSOD様作用剤は安全性等の点で問題がある。
【0006】
他にも、ヒドロキシラジカル等の活性酸素種に対して消去作用を有する物質のスクリーニングが行われ、ビタミンE群化合物や茶タンニンをはじめとする植物由来成分を皮膚外用剤に配合する試みがなされてきた。又、ヒドロキシラジカルの生成を阻害するべくキレート剤の配合も行われている。更に、ヒドロキシラジカルの生成前駆体となる過酸化水素を消去する物質が検索され、ボタン抽出物が知られている(特許文献3)。
【0007】
上記方法に基づいて評価された植物エキスが、抗酸化や抗老化を謳う、従来の外用剤や化粧品に使用されてきた。
しかしながら、これらの外用剤や化粧品は皮膚の乾燥や各種皮膚疾患を緩和するには不十分であることに加え、過酸化水素,ヒドロキシラジカル等の活性酸素種は、連鎖的な酸化反応に関与し、これらを個別に消去したとしても、生体内の一連の過酸化反応を防止するには不十分である等の問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開昭64−50877号公報
【特許文献2】特開平3−83548号公報
【特許文献3】特願平7−191060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
物質の酸化に関わるヒドロキシラジカル等の活性酸素を消去する力をもって評価する方法に基づいて、スクリーニングされた従前の(抗酸化や抗老化を謳う)外用剤や化粧品では、皮膚の乾燥や各種皮膚疾患を緩和するには不十分な点があった。
そこで本発明の目的は、皮膚の乾燥や各種皮膚疾患を緩和するのに十分な効果を発揮することができる(皮膚の老化を防ぎ、肌を健やかに保つ)新規な外用剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、従来の抗酸化力測定法とは全く異なる方法として、酸化還元電位に着目して鋭意研究した結果、「スベリヒユ、半醗酵茶、紅景天、厚朴、ウイキョウ、陳皮、タイソウ、ヨクイニン、クコ、シンイの各植物エキス、平均分子量千〜1万のウロン酸含有多糖類及びその誘導体」からなる群より選択される何れか一種以上を有効成分とし、pH4.5以上pH11.0以下の範囲において、200mV以下の酸化還元電位を有することを特徴とする外用剤が、皮膚の乾燥や各種皮膚疾患を修復緩和することを見出した為、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、請求項1に係る発明は、下記の(A)に列挙される植物のエキス及び(B)の物質からなる群より選択される何れか一種以上を有効成分とし、pH4.5以上pH11.0以下の範囲において、200mV以下の酸化還元電位を有することを特徴とする外用剤に関する。
(A)スベリヒユ、半醗酵茶、紅景天、厚朴、ウイキョウ、陳皮、タイソウ、ヨクイニン、クコ、シンイ
(B)平均分子量千〜1万のウロン酸含有多糖類及びその誘導体
請求項2に係る発明は、上記(A)に列挙される植物のエキスから選択される一種以上と、上記(B)の物質からなる群より選択される一種以上とを有効成分とし、pH4.5以上pH11.0以下の範囲において、200mV以下の酸化還元電位を有することを特徴とする外用剤に関する。
請求項3に係る発明は、前記有効成分の不揮発分の含有量が0.001〜5重量%である請求項1又は2に記載の外用剤に関する。
請求項4に係る発明は、前記(B)の平均分子量千〜1万のウロン酸含有多糖類及びその誘導体として、オリゴアルギン酸ナトリウムを含有することを特徴とする請求項1乃至3何れか記載の外用剤に関する。
請求項5に係る発明は、剤型が、パスタ剤、軟膏剤、クリーム剤、液剤、ゲル剤、貼付剤、パップ剤、パッチ剤からなる群より選択される何れか1つである請求項1乃至4いずれか記載の外用剤に関する。
請求項6に係る発明は、化粧品の形態である請求項1乃至5いずれか記載の外用剤に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる外用剤によれば、pH4.5以上pH11.0以下の範囲において、200mV以下の酸化還元電位を有する「各植物エキス(スベリヒユ、半醗酵茶、紅景天、厚朴、ウイキョウ、陳皮、タイソウ、ヨクイニン、クコ、シンイの各エキス)」および「平均分子量千〜1万のウロン酸含有多糖類」からなる群から選択される少なくとも一種以上を有効成分とすることにより、皮膚老化・乾燥・各種皮膚疾患により生じるカサカサ感、或いは掻痒感、若しくは火照り感を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明にかかる「pH4.5以上pH11.0以下の範囲において、200mV以下の酸化還元電位を有し、下記の(A)に列挙される各植物からのエキス及び(B)の物質からなる群より選択されるいずれか一種以上を有効成分とする外用剤」の実施形態について、以下に詳説する。
(A)スベリヒユ、半醗酵茶、紅景天、厚朴、ウイキョウ、陳皮、タイソウ、ヨクイニン、クコ、シンイ
(B)平均分子量千〜1万のウロン酸含有多糖類及びその誘導体
【0014】
先ず、本発明にかかる外用剤の有効成分となり得る、上記(A)に列挙された各植物のエキス(抽出物)について、スベリヒユ・半醗酵茶〔ウーロン茶、プーアル茶〕・紅景天・厚朴・ウイキョウ・陳皮・タイソウ・ヨクイニン・クコ・シンイの順に説明する。
尚、植物の抽出物とは、植物の各部位を常温、又は加温下にて抽出するか、若しくはソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて抽出することにより得られる各種溶媒抽出液、その希釈液、その濃縮液又はその乾燥末を意味する。
【0015】
〔スベリヒユ〕
本発明での「スベリヒユ」(別名イハイズルまたはトンボグサ)とは、スベリヒユ科スベリヒユ属の学名Portulaca oleracea L.を意味するが、当該属に属する類縁植物を用いることもできる。スベリヒユは、多肉質で茎が赤褐色を呈する1年生の草花植物であり、畑地や路傍の日当りの良いところに広く分布していて入手の容易なものである。
本発明の外用剤に於いて、スベリヒユは全草を使用するのが好ましい。
【0016】
〔半醗酵茶〕
茶(Thae sinensis)とは、一般の製造方法等により、不醗酵茶(緑茶)、半醗酵茶(ウーロン茶)、醗酵茶(紅茶)の3種類に分けることができる。
これらは何れもツバキ科ツバキ属の茶樹(学名:Camellia sinensis)の葉を原料とするものであるが、茶葉に含まれる酸化酵素(ポリフェノールオキシダーゼ)を加熱により失活させて製造される通常の緑茶を不醗酵茶、製造の最終段階まで加熱せず、酵素作用を十分利用して製造される通常の紅茶を醗酵茶、不醗酵茶と醗酵茶の中間の製法により製造されるウーロン茶などを半醗酵茶と呼ぶ。
本発明での「半醗酵茶」とは、「ウーロン茶」や「プーアル茶」を示す。
ここで、「プーアル茶」とは、加熱によって酸化醗酵を止めた緑茶を、高温多湿の場所に置き、コウジカビで半年から2年醗酵させて作る黒茶の代表的な茶である。
【0017】
〔紅景天〕
本発明での「紅景天」とは、ベンケイソウ科紅景天属植物を意味するが、当該属に属する類縁植物を用いることもでき、その種類や産地は特に限定されない。
前記紅景天属植物の産地としては、中華人民共和国のチベット、四川省、雲南省などが有名であるが、これらの紅景天属植物のうち、特に好ましいものとしては、大花紅景天(Rhodiola euryphylla)、茎地紅景天(全弁)(Rhodiola sacra)が挙げられる。
又、紅景天属植物抽出物の調製法も特に限定はされず、例えば、紅景天属植物の全草、或いは葉、茎、花弁、種子、根茎、根等のうち何れか1ヶ所以上を乾燥又は乾燥せずに裁断した後、低温もしくは常温〜加温下で溶剤により抽出することにより得られる。
尚、本発明で使用可能な紅景天属植物を例示すると、以下の通りである〔植物名(学名/産地)の順に例示〕。
喜冷紅景天(R.algida/青海、海北、海西)、唐古紅景天(R.algida var.Tangutica/青海、四川)、西川紅景天(R.alsia/四川)、小座紅景天(R.dumulosa/四川、甘粛)、大花紅景天(R.euryphylla/雲南西北、チベット)、長鞭紅景天(R.fastigiata/雲南西北、チベット)、長鱗紅景天(R.gilida/宇天山)、豌豆七紅景天(R.henryi/甘粛、河南、湖北、四川、貴州)、昇歯紅景天(R.heterodonta/新彊、チベット)、狭葉紅景天(R.kirillowii/河北、山西、雲南、四川、チベット)、四烈紅景天(R.quadrifida/甘粛、青海、新彊、四川、チベット)、庫頁紅景天(R.sachalinensis/黒龍江、吉林)、茎地紅景天(全弁)(R.sacra/雲南西北部、チベット東南)、粗造紅景天(R.scabrida/四川西部、雲南西北部)、粗茎紅景天(R.wallichiana/雲南西北部、チベット東南)、大株粗茎紅景天(R.wallichiana var. cholaensis/青海、雲南西北部)、雲南紅景天(R.yunnanensis/湖北西部)
【0018】
〔厚朴〕
本発明での「厚朴(コウボク)」とは、モクレン科(Magnoliaceae)モクレン属(Magnolia)植物のホオノキ(ワコウボク)(Magnolia obovata Thunb.)、センボク、コホクコウボク、カラホオ(Magnolia officinalis Rehd. et Wils.)、ウンボク、ウンシュウコウボク(Magnolia officinalis Rehd. et Wils. var. biloba Rehd. etWils.)等、一般に「コウボク」と呼ばれている植物全部の花、花穂、果皮、果実、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根茎、根皮、根、種子又は全草を用いることができるが、樹皮を用いるのが好ましい。
その他、同属種を用いることもできる。又、コウボクの樹皮を乾燥させたものは、「コウボク」と呼ばれる生薬の一種であり、かかる生薬を用いることもできる。
【0019】
〔ウイキョウ〕
本発明での「ウイキョウ(茴香)」とは、セリ科(Umbelliferae)に属する多年草で、葉,茎,根,花,果実等の各部位及び全草を用いることができるが、果実を用いることが好ましい。ウイキョウの果実を乾燥させたものは、「ウイキョウ」と呼ばれる生薬の一種であり、かかる生薬を用いることもできる。
【0020】
〔陳皮〕
本発明での「陳皮(チンピ)」とは、ミカン科(Rutaceae)ミカン属(Citrus)の植物:ウンシュウミカン(Citrus unshiu Marcov.)又はその他近縁植物の成熟果皮を乾燥させた生薬である。陳皮は、そのまま若しくは粉砕して用いる。又、溶媒を用いて抽出した陳皮抽出物を用いることもできる。陳皮抽出物は抽出溶媒に浸漬することにより得られる。浸漬時、抽出効率を上げるため撹拌を行ったり、抽出溶媒中でホモジナイズしてもよい。抽出温度としては、5℃程度から抽出溶媒の沸点以下の温度とするのが適切である。抽出時間は抽出溶媒の種類や抽出温度によっても異なるが、4時間〜2週間程度とするのが適切である。
【0021】
〔タイソウ〕
本発明での「タイソウ(大棗)」とは、ナツメ(Zizyphus jujuba Miller var.inermis Rehder)またはその近緑植物の果実であり、ナツメは、南欧の原産で、日本各地に栽培される落葉小喬木である。そのエキス(Jujube Extract)としては、エタノール、1,3−ブチレングリコール、精製水などで抽出されるエキスが好適に使用できる。
【0022】
〔ヨクイニン〕
本発明に於ける「ヨクイニン」とは、イネ科ジュズダマ属のハトムギ(Coix lacryma-jobi L.var.ma-yuen Stapf)の種皮を除いた種子(詳細には、種皮を除いた成熟種子を乾燥させたもの)等を指す。ここで、ハトムギとは、中国、インドシナ原産で日本に古くから渡来し、西南部の暖地で栽培される一年草のことで、鎮痛、消炎、排膿などの薬効を有する生薬として用いられてきたが、それらの産地は特に限定されるものではない。
本発明に用いられるヨクイニンのエキス(抽出物)は、イネ科ジュズダマ属のハトムギの種皮を除いた種子(生薬名・ヨクイニン)から適当な溶媒を用いて抽出して得ることができる(例えば、ハトムギの種皮を除いた種子を、水、エタノール又は1,3−ブチレングリコールで温浸し、濾別して得ることができる。)。
【0023】
〔クコ〕
本発明に於いて「クコ(枸杞)」(学名:Lycium chinense)とは、川岸など水辺に自生する(開花期は夏〜初秋)中国原産のナス科の落葉低木を指す。
本発明に於けるクコのエキス(抽出物)には、(クコの)果実、根皮、葉,茎,根,花等の各部位及び全草の何れを用いてもよいが、果実、根皮、葉が好ましい。
クコの果実・根皮・葉は、それぞれ枸杞子(くこし)・地骨皮(じこっぴ)・枸杞葉(くこよう)という生薬にされる。枸杞子には、血圧や血糖の低下作用、抗脂肪肝作用等が、地骨皮には、抗炎症作用、解熱作用等が、枸杞葉は、血圧の低下作用等がある。
尚、本発明のクコのエキスは、適当な溶媒を用いて抽出することができる。
【0024】
〔シンイ〕
本発明での「シンイ(辛夷)」(学名:Magnolia liliflora)とは、モクレン科モクレンの花蕾を乾燥したもの(より好ましくは、早春、開花前の膨らんだ毛の生えた蕾を採集し、軸を除き、風通しの良い日陰で十分乾燥させたもの)をいう。
尚、モクレン科モクレンの植物とは、タムシバ(Magnolia salicifolia Maximowicz)、コブシ(Magnolia kobus De Candolle)、又はその他近縁植物(Magnoliaceae)をいい、本発明のシンイ(モクレン科モクレンの花蕾を乾燥したもの)のエキスは、適当な溶媒を用いて抽出できる。
【0025】
〔ウロン酸含有多糖類〕
本発明に於ける外用剤には、上記した各植物のエキスに加え、若しくは、それ単独として、(B)に示される「平均分子量千〜1万のウロン酸含有多糖類及びその誘導体」を含有することができる。
但し、(A)に列挙される植物のエキスから選択される一種以上と、(B)の物質からなる群より選択される一種以上の双方を有効成分とするのが、皮膚老化・乾燥・各種皮膚疾患により生じるカサカサ感、或いは掻痒感、若しくは火照り感を防止する効果を発揮するのにより好ましい。
ここで多糖類とは、単糖類が約10以上重合したものをいい、ウロン酸含有多糖類とは、海藻、微生物、植物又は動物の由来のカルボキシル基を含む多糖類であり、例えば、オキナワモズク等から得られるフコイダン、褐藻類のアルギン酸;ペクチン;ヘパリン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸のようなムコ多糖(グリコサミノグリカン)、テイクロン酸が例示される。また、薬学的に許容できる塩も含まれる。
本発明での「平均分子量千〜1万のウロン酸含有多糖類」とは、「高分子アルギン酸塩を微生物、又は酵素で分解して得たオリゴアルギン酸塩」を、或いは「モロヘイヤやツルムラサキなどのウロン酸含有多糖類を微生物、又は酵素で分解して得たオリゴアルギン酸塩を含有してなる多糖類混合物」を示す。
平均分子量千〜1万のウロン酸含有多糖類の誘導体とは、カルボキシメチル誘導体、ヒドロキシエチル誘導体、脱アセチル化誘導体等が挙げられる。上記その他の多糖およびそれらの誘導体中、キチン、キトサン、アルギン酸あるいはカルボキシメチルセルロースが最も好ましい。
尚、本発明の外用剤に於いて、(B)に示される「平均分子量千〜1万のウロン酸含有多糖類及びその誘導体」としては、「オリゴアルギン酸ナトリウム」を用いるのが、最も好ましい。
【0026】
上記した(A)に列挙される各植物のエキス、および(B)の物質からなる群より選択される何れか一種でも含有されている外用剤であって、pH4.5以上pH11.0以下の範囲において、200mV以下の酸化還元電位を有する外用剤は、本発明にかかる外用剤である。
以下に、pH4.5以上pH11.0以下の範囲において、200mV以下の酸化還元電位を有するエキス類等のスクリーニング方法について説明する。
【0027】
〔調製方法〕
各植物のエキス(スベリヒユ、半醗酵茶、紅景天、厚朴、ウイキョウ、陳皮、タイソウ、ヨクイニン、クコ、シンイの各エキス)の調製は、上記各植物エキスの欄においても説明したとおり、使用剤型などを考慮して臨機応変に調製することが出来る。
即ち、水単独、アルコールやグリコールなどの水溶性溶媒単独、あるいは水と水溶性溶媒の混合物で抽出することが出来る。
抽出された植物エキスのpHは用いた溶媒のpH、植物材料、酸・アルカリの使用にも左右される。
【0028】
本発明に使用する(上述した)各植物エキスの調製方法は、例えば、次のように行うことが出来る。
1)乾燥植物5gにイオン交換水(酸化還元電位300mV)200gを加えて1時間煮沸した後室温まで冷却し濾過して植物エキスを得る。
2)このようにして得られた植物エキスのpHは4.5〜7.5の範囲になる。
【0029】
酸化還元電位の測定は、弱酸性、中性、アルカリ性のpHで行い、pH変化による酸化還元電位の変化を測定するため、抽出エキスが弱酸性の場合はpH無調整とし、中性・アルカリ性のpH調整は炭酸ナトリウムによりpH7±0.5、pH10に調整する。
このようにエキスを酸化還元電位計(佐藤商事社製)にて測定し、200mV以下の電位を示すエキスが還元性を有すると判定する。
より好適には、エキスのpHが5.5〜8.0の範囲で、200mV以下の酸化還元電位を有するエキス類をスクリーニングし、有効とする。
【0030】
(A)に列挙される各植物のエキス、および(B)の物質からなる群より選択されるいずれか一種以上を有効成分とする外用剤について、上述の如く、pH4.5以上pH11.0以下の範囲において、200mV以下の酸化還元電位とすることにより、日焼け・乾燥などによるカサカサ感と火照り感、虫刺され・水虫・たむしなどの皮膚疾患による掻痒感と火照り感を抑える外用剤として有効に使用することができる。
(A)に列挙される各植物のエキス、および(B)の物質からなる群の中でも、スベリヒユエキス、プーアル茶エキス、厚朴エキス、ヨクイニンエキス、クコエキス、シンイエキス、平均分子量千〜1万のオリゴアルギン酸塩は、日焼け・乾燥などによるカサカサ感と火照り感、虫刺され・水虫・たむしなどの皮膚疾患による掻痒感と火照り感を抑えるのに、特に有効である。
【0031】
〔含有量〕
スベリヒユ、半醗酵茶(プーアル茶、ウーロン茶)、紅景天、厚朴、ウイキョウ、陳皮、タイソウ、ヨクイニン、クコ、シンイ、平均分子量千〜1万のウロン酸含有多糖類及びその誘導体の中から選ばれる一種又は二種以上のエキス類の不揮発分は、本発明の外用剤中に於いて、0.001〜5質量%配合するのが好ましく、さらに0.005〜2質量%配合するのが好ましい。
その理由は、0.001質量%未満では、本発明の効果(皮膚老化・乾燥・各種皮膚疾患により生じるカサカサ感、或いは掻痒感、若しくは火照り感を防止する効果)を十分に発揮することができず、5質量%以上配合しても好ましい範囲の効果に比較して期待されるほどの効果は得られない為、いずれの場合も好ましくないからである。
【0032】
本発明の外用剤は、上記の有効成分〔各植物エキス(スベリヒユ、半醗酵茶、紅景天、厚朴、ウイキョウ、陳皮、タイソウ、ヨクイニン、クコ、シンイの各エキス)および平均分子量千〜1万のウロン酸含有多糖類〕と共に薬学的に許容される製剤担体を用いて、外用剤として従来から公知の剤型とすることができる。
特に、パスタ剤、軟膏剤、クリーム剤、液剤、ゲル剤、貼付剤、パップ剤、パッチ剤などの剤型とすることが好ましい。
また、本発明の外用剤の調製・製造は、上記の剤型に応じ、前記植物エキス成分およびウロン酸含有多糖類と、製剤学的に慣用されている製剤技術を常法により混合、均一化することにより行うことができる。
【0033】
上記有効成分に加え、本発明の外用剤の調製・製造において用いられる成分のうち、基剤成分の具体例としては、例えば以下の成分が挙げられる。
脂肪類としては、例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリド、ハードファット等の合成油、オリーブ油、ダイズ油、ナタネ油、ラッカセイ油、ベニバナ油、ヌカ油、ゴマ油、ツバキ油、トウモロコシ油、メンジツ油、ヤシ油等の植物油、豚脂、牛脂等の動物油及びこれらの硬化油等を挙げることができる。
ロウ類としては、例えばラノリン、ミツロウ、カルナウバロウ、鯨ロウ等の天然ロウや、モンタンロウ等の鉱物ロウ、合成ロウ等を使用することができる。
炭化水素としては、例えば、ワセリン、シマルゲル、パラフィン、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン、ポリエチレン末、ゲル化炭化水素等を挙げることができる。
高級脂肪酸としては、例えばステアリン酸、ベヘニン酸、パルミチン酸、オレイン酸等を使用することができる。
高級アルコールとしては、例えば、ベヘニルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、コレステロール等を使用することができ、さらに、多価アルコールとしては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール等を挙げることができる。
合成及び天然高分子としては、例えばカラギーナン、デンプン、デキストリン、デキストリンポリマー(カデキソマー)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ポロクサマー)トラガント、アラビアゴム、ローカストビーンガム、ペクチン、ゼラチン、キサンタンガム、プルラン、アルギン酸塩、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等を使用することができる。
界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル等を使用することができる。
低級アルコールとしては、例えばエタノール、イソプロピルアルコール等を使用することができる。
ケトン類としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン等を使用することができる。
粉体としては、例えばカオリン、タルク、酸化亜鉛、酸化チタン、ステアリン酸マグネシウム、無水ケイ酸、デンプン等を使用することができる。
セルロース誘導体としては、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース等を使用することができる。
無機塩類としては、例えばヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、ポリリン酸ナトリウム、塩化アンモニウム、硫酸鉄、リン酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、チオ硫酸ナトリウム、セスキ炭酸ナリウム、硫化ナトリウム、ホウ砂、酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、塩化カリウム等を使用することができる。
【0034】
より具体的に、各剤型と添加成分の関係を示せば次の通りである。
即ち、パスタ剤は、油性パスタ剤あるいは水性パスタ剤の剤型で使用でき、油性パスタ剤の場合には、基剤成分として、例えば脂肪類、ロウ類、炭化水素等が使用され、水性パスタ剤には、基剤成分として、例えば合成及び天然高分子、多価アルコール、界面活性剤等を使用することができる。
また、軟膏剤の場合には、基剤成分として、例えば脂肪類、多価アルコール、炭化水素等を使用することができる。
クリーム剤の場合には、基剤成分として、例えば界面活性剤、高級アルコール、高級脂肪酸、炭化水素、多価アルコール、水(精製水)等を使用することができる。
液剤及びゲル剤の場合には、基剤成分として、例えば水(精製水)、低級アルコール、ケトン類、脂肪類、多価アルコール、界面活性剤、炭化水素、合成及び天然高分子等を使用することができる。
【0035】
さらに本発明の外用剤には、必要に応じてpH調整剤として水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物等を使用してもよく、また、防腐・保存剤として、例えば安息香酸ナトリウム等の安息香酸アルカリ金属塩、パラオキシ安息香酸エステル、ソルビン酸、フェノキシエタノール等を配合してもよい。さらに、これも必要により、抗酸化剤として、例えばトコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等を用いてもよい。
【0036】
上記により得られた本発明の外用剤は、エマルジョン型の製剤とすることもできるが、エマルジョンの形態はW/O型、O/W型どちらの形態であっても構わない。
又、本発明の皮膚外用剤は、それ自体をそのまま皮膚(患部)に塗布してもよいが、例えば、当該外用剤をさらに伸縮性を有する布や不織布あるいはプラスチックシート等に塗布したパップ剤やプラスター剤等の貼付剤として皮膚(患部)に適用してもよい。
【0037】
上記により得られた本発明の外用剤は、皮膚老化・乾燥・各種皮膚疾患により生じるカサカサ感、或いは掻痒感、若しくは火照り感の防止に十分な効果を発揮できる。
【0038】
〔用途〕
本発明の外用剤は、主に皮膚外用剤として利用することができ、皮膚老化・乾燥・各種皮膚疾患により生じるカサカサ感、或いは掻痒感、若しくは火照り感を防止する効果を奏することから、化粧料(化粧品)、浴用剤、医薬部外品等にも適用することが可能である。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例に基づき更に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0040】
本発明のエキス調製は次のようにして行った。
又、このエキスの酸化還元電位を測定した。
〔試料の調製〕
(1)乾燥植物5gにイオン交換水(酸化還元電位300mV)200gを加えて1時間煮沸した後室温まで冷却し濾過して植物エキスを得た。
(2)平均分子量約10万のアルギン酸ナトリウムの5質量%水溶液100gにアルギン酸リアーゼ50mgを添加し37℃で48時間作用させた後、濾過して平均分子量約千〜4千のオリゴアルギン酸ナトリウム液を得た。
結果を〔表1〕に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
〔表1〕に列挙された植物のエキス類等を用いて、本発明にかかる外用剤(実施例1〜14)、並びに比較対照としての外用剤(比較例1)を作成した。
処方例は、後述の〔表2〕及び〔表3〕に示されるとおりである。
【0043】
上記した本発明にかかる外用剤(実施例1〜14)および比較例1について、皮膚のカサカサ感抑制及び火照り感抑制の確認を行った。カサカサ感抑制及び火照り感抑制の試験は次のようにして行った。
【0044】
〔評価1〕
50歳以上で風呂上がり後に両足に掻痒感を持つ人20名を対象とした。
エキス配合外用剤の塗布条件は、風呂上がり後左右どちらか片方の足に限定し、一方の足にはエキス未配合外用剤をそれぞれ毎回塗布し、エキス配合外用剤とエキス未配合外用剤のカサカサ感抑制効果を比較し、カサカサ感の抑制効果を5段階評価した。また、カサカサ感と同時に火照り感も評価し、火照り感の抑制効果を5段階評価した。
(判定階級)
1:20%未満が効果有り
2:20%以上、40%未満が効果有り
3:40%以上、60%未満が効果有り
4:60%以上、80%未満が効果有り
5:80%以上が効果有り
【0045】
〔評価2〕
年齢を問わず、夏期期間中、虫に刺された人を対象にかゆみ抑制試験を行った。
虫に刺された人がかゆみを覚えた時点で外用剤を塗布し数分以内にかゆみが治まった割合を5段階評価した。また、同様に火照り感の抑制効果も5段階評価した。
(判定階級)
1:20%未満が効果有り
2:20%以上、40%未満が効果有り
3:40%以上、60%未満が効果有り
4:60%以上、80%未満が効果有り
5:80%以上が効果有り
【0046】
〔評価3〕
年齢を問わず、夏期期間中、日焼けした人を対象にヒリヒリ感と火照り感の抑制試験を行った。ヒリヒリ感抑制の効果を5段階評価した。また、火照り感抑制効果を5段階評価した。但し、各試験項目での効果判定は自己申告とした。
(判定階級)
1:20%未満が効果有り
2:20%以上、40%未満が効果有り
3:40%以上、60%未満が効果有り
4:60%以上、80%未満が効果有り
5:80%以上が効果有り
【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
〔考察〕
表2及び表3の結果より、本発明の外用剤(実施例1〜14)は、比較例1と比して、〔評価1〕〜〔評価3〕の何れに於いても、優れた評価を得ることができた。
以上より、本発明の外用剤は、皮膚老化・乾燥・各種皮膚疾患により生じるカサカサ感、或いは掻痒感、若しくは火照り感の防止に十分な効果を発揮できることが示された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)に列挙される植物のエキス及び(B)の物質からなる群より選択される何れか一種以上を有効成分とし、pH4.5以上pH11.0以下の範囲において、200mV以下の酸化還元電位を有することを特徴とする外用剤。
(A)スベリヒユ、半醗酵茶、紅景天、厚朴、ウイキョウ、陳皮、タイソウ、ヨクイニン、クコ、シンイ
(B)平均分子量千〜1万のウロン酸含有多糖類及びその誘導体
【請求項2】
下記の(A)に列挙される植物のエキスから選択される一種以上と、(B)の物質からなる群より選択される一種以上とを有効成分とし、pH4.5以上pH11.0以下の範囲において、200mV以下の酸化還元電位を有することを特徴とする外用剤。
(A)スベリヒユ、半醗酵茶、紅景天、厚朴、ウイキョウ、陳皮、タイソウ、ヨクイニン、クコ、シンイ
(B)平均分子量千〜1万のウロン酸含有多糖類及びその誘導体
【請求項3】
前記有効成分の不揮発分の含有量が0.001〜5重量%である請求項1又は2に記載の外用剤。
【請求項4】
前記(B)の平均分子量千〜1万のウロン酸含有多糖類及びその誘導体として、オリゴアルギン酸ナトリウムを含有することを特徴とする請求項1乃至3何れか記載の外用剤。
【請求項5】
剤型が、パスタ剤、軟膏剤、クリーム剤、液剤、ゲル剤、貼付剤、パップ剤、パッチ剤からなる群より選択される何れか1つである請求項1乃至4いずれか記載の外用剤。
【請求項6】
化粧品の形態である請求項1乃至5いずれか記載の外用剤。

【公開番号】特開2007−314462(P2007−314462A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−145463(P2006−145463)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(505432636)日本タブレット株式会社 (8)
【Fターム(参考)】