説明

外用剤

【課題】CXCR4拮抗作用を有する3級アミン化合物の新たな外用剤を提供する。
【解決手段】CXCR4拮抗作用を有する3級アミン化合物と脂肪酸系イオン液体を使用することによって、皮膚透過性の高い外用剤を作製することができた。特に、KRH−3148(酒石酸塩)は、作用効果が強いものの経口吸収性が良好でないので、他の投与経路が検討された。当該化合物は結晶性が高く非水系有機溶媒に難溶であり、外用剤化は困難であったが、脂肪酸系イオン液体を使用することにより、高濃度で溶解させることが可能となった。そこで、この脂肪酸系イオン液体溶液を用いて外用製剤化を図り、その結果、経口吸収性を上回る経皮吸収性を持った外用剤を見出すことができた。これにより、CXCR4拮抗作用を有する3級アミン化合物の新たな外用剤を提供することができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケモカイン受容体CXCR4に対する拮抗作用を有するイオン性薬物及びイオン流体を成分として含有する外用剤に関する。特に、本発明は、CXCR4に対する拮抗作用を有する抗ウイルス剤、リウマチ疾患改善剤、癌転移疾患改善剤のいずれか1つであるイオン性薬物及びイオン流体を成分として含有する外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
HIV−1はCXCR4をレセプターの一つとして細胞に次々と感染して行くことが知られている。従って、CXCR4の適切なアンタゴニストを作製すれば、このアンタゴニスト化合物はHIV−1の感染を防ぐことができ、その結果として新しい作用機序を有する抗HIV−1剤になり得るとして期待されている。
現在、経口投与可能なCXCR4阻害剤の研究・開発が色々検討されており、その中でも、より高い抗HIV−1活性を有し経口利用可能なCXCR4アンタゴニストKRH−2731(非特許文献1)が見出されている。KRH−2731は活性化PBMCに対するHIV−1の増殖を低濃度(EC50:1.0−4.2nM)で抑制しするだけでなく、ラットに10mg/kgで経口投与したときのbioavailabilityは37%に達していた。
【0003】
本出願人らは新規CXCR4アンタゴニストとして、以下化学式のKRH−3148(「2−([4−(ジプロピルアミノ)ブチル]{[4−({[(1H−イミダゾール−2−イル)メチル][(1−メチル−1H−イミダゾール−2−イル)メチル]アミノ}メチル)フェニル]メチル}アミノ)酢酸・トリ−(2R,3R)−酒石酸」(2-([4-(dipropylamino)butyl]{[4-({[(1H-imidazol-2-yl)methyl] [(1-methyl-1H-imidazol-2-yl)methyl]amino}methyl)phenyl]methyl}amino)acetic acid tri-(2R,3R)-tartrate)(特許文献1、2)を見出している。
【0004】
【化1】

上記KRH−3148は、非特許文献2によれば、活性化PBMCに対するHIV−1の増殖を低濃度(EC50:4nM)で阻害することが見出されている。更に、R5ウイルスとの共感染もR5阻害剤との併用で完全に抑制していた。また、該化合物と相互作用するCXCR4のアミノ酸は、Asp171、Asp262、His281、Trp283と推定されている。このように、該化合物は良好な活性を示すものの、経口吸収性が良好でなく、bioavailabilityがあまり高くないと言う問題がある。
以上のことから、該化合物に関しては、経口投与以外の投与経路の可能性を色々検討され、薬剤ポテンシャルを十分に発揮させることが検討されてきた。しかし、これまで充分な効果を上げることはできなかった。
【0005】
また、CXCR4は、HIV感染以外にも種々疾患との関連が明らかになっている。例えば、リウマチ疾患(例えば、特許文献3参照)や癌転移(例えば、非特許文献3参照)等が報告されており、該化合物もこれらの疾患にも充分な薬理効果を挙げている(特許文献1、2)。
【0006】
これらの疾患に対する治療剤として、CXCR4拮抗作用を有する新規な、しかも毒性や副作用が少なくて長期の服用に付することのできる、経口投与を上回るbioavailabilityを有する外用剤の開発が強く望まれている。
【0007】
一方、最近薬物投与として、痛みを伴わず皮膚面を通して長期間にわたり投与でき、しかも副作用の少なく、適用箇所局部だけでなく全身にも作用できる経皮吸収製剤の開発が注目されている。そのなかでも経皮吸収性を高めるためにイオン性の薬物とその対イオンとなる物質がイオン性液体を形成する外用剤が開発されている(特許文献4)。しかし、ここではイオン性液体として、ジクロフェナクイオン液体、インドメタシンイオン液体が開示されているが、それ以外への適用は示されておらず、特にCXCR4拮抗作用を有す薬物への適用は検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2004/024697号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2005/085209号パンフレット
【特許文献3】国際公開第00/06086号パンフレット
【特許文献4】特開2005−82512号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】11th retroviruses and Opportunistic Infections abstract No.541(2004年)
【非特許文献2】The Journal of AIDS Research Vol.8 No.4 一般講演O−022(2006年)
【非特許文献3】ネイチャー(Nature)、410、50(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、優れたCXCR4拮抗作用を有し、かつ経口投与を上回るbioavailabilityを有する外用剤を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、以下の一般式(1)で示されるイオン性薬物の新たな剤形展開として、液剤又は貼付剤等の外用剤の作製に向けて鋭意検討を行った。
【化2】

[式中、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4の低級アルキル基を表し、n、n、nは1から4の整数を表す。A、Aは、置換又は無置換の複素芳香環基を表す。Wは置換又は無置換のフェニレン基を表す。XはN−(カルボキシメチル)メチレン基を表し、Dは炭素数1〜4の低級アルキル基を有する2級アミノ基で置換された炭素数1〜5の低級アルキレン基を表す。式中の低級アルキル基、低級アルキレン基は置換基で置換されていても良い。]で表されるCXCR4拮抗剤(3級アミン化合物)を用いて、脂肪酸系イオン液体に溶解させると、該CXCR4拮抗剤の皮膚透過性が劇的に向上することを見出した。更に、この薬物の脂肪酸系イオン溶液を外用製剤化することにより、良好な経皮吸収製剤を作製できることを見出した。
【0012】
特に、前述のKRH−3148を使用して外用剤を作製した場合には、それを貼付することにより、KRH−3148の経口投与を上回るbioavailabilityを達成することができることを見出した。
以上のことから、本発明者らは、本発明を完成させることができた。
【0013】
すなわち、本発明の要旨は、以下の通りである。
[1]下記一般式(1)
【化3】

[式中、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4の低級アルキル基を表し、n、n、nは1から4の整数を表す。A、Aは、置換又は無置換の複素芳香環基を表す。Wは置換又は無置換のフェニレン基を表す。XはN−(カルボキシメチル)メチレン基を表し、Dは炭素数1〜4の低級アルキル基を有する2級アミノ基で置換された炭素数1〜5の低級アルキレン基を表す。式中の低級アルキル基、低級アルキレン基は置換基で置換されていても良い。]で示される3級アミン化合物を脂肪酸系イオン液体に溶解して作製されることを特徴とする、非水系外用剤。
[2]上記3級アミン化合物が、下記化学式(2)
【化4】

であることを特徴とする、上記[1]に記載の非水系外用剤。
[3] 脂肪酸系イオン液体が、炭素数5〜20である脂肪酸の少なくとも1種と炭素数4〜14の有機アミン化合物の少なくとも1種からなる等モル塩の平衡混合物であることを特徴とする、上記[1]又は[2]に記載の非水系外用剤。
[4]有機酸又は有機塩基が更に添加されていることを特徴とする、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の非水系外用剤。
[5]有機溶媒が添加されていることを特徴とする、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の非水系外用剤。
[6]有機溶媒が、炭酸プロピレン、セバシン酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピルのうち少なくとも1つであることを特徴とする、上記[5]に記載の非水系外用剤。
[7]上記3級アミン化合物の含量が1〜10重量%であることを特徴とする、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の非水系外用剤。
[8]添加されている有機酸が、オレイン酸又はカプリン酸であることを特徴とする、上記[4]〜[7]のいずれかに記載の非水系外用剤。
[9]添加されている有機塩基が、ジエタノールアミン又はジイソプロパノールアミンであることを特徴とする、上記[4]〜[8]のいずれかに記載の非水系外用剤。
[10]脂肪族系イオン液体が、カプリン酸ジエタノールアミン、カプリン酸トリエタノールアミン、オレイン酸ジエタノールアミン、オレイン酸トリエタノールアミンの中から一つ以上選択されることを特徴とする、上記[1]〜[9]のいずれかに記載の非水系外用剤。
[11]脂肪族系イオン液体が、カプリン酸ジエタノールアミンまたはオレイン酸ジエタノールアミンであることを特徴とする、上記[1]〜[10]のいずれかに記載の非水系外用剤。
[12]脂肪酸系イオン液体の含量が3〜50w/w%である上記[1]〜[11]のいずれかに記載の非水系外用剤。
[13]非水系外用剤が、非水系の液剤、ゲル剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤または貼付剤のうちのいずれか1つであることを特徴とする、上記[1]〜[12]のいずれかに記載の非水系外用剤。
[14]上記[1]〜[13]のいずれかに記載の非水系外用剤を用いることを特徴とする、CXCR4に起因する疾患の治療剤。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、一般式(1)の3級アミン化合物を脂肪酸系イオン液体に溶解して、この溶液を用いて外用製剤を作製することにより、皮膚透過性の良好な外用剤が得られるようになった。特に、KRH−3148を脂肪酸系イオン液体に溶解させ、この溶液を用いて安定な非水系の液剤又は非水系の貼着剤が作製できるようになった。本発明の外用剤は、一般式(1)の3級アミン化合物の経口投与よりもbioavailabilityが優れている。従って、本発明外用剤を用いて経皮投与と言う新しい投与方法で、薬剤自体の優れたCXCR4拮抗作用を発揮できることを見出した。特に、KRH−3148において、経皮投与により、その薬効を充分に発揮できるようになった。このように、本発明の外用剤により、今までにない投与経路(経皮吸収経由)で、より利便性の高いCXCR4阻害剤が提供できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】フランツセルによる本発明製剤(KRH−3148)のラットの皮膚を用いたインビトロ経皮吸収試験による皮膚透過性を表した図である。
【図2】フランツセルによる本発明製剤(KRH−3148の液剤とテープ剤)のラットの皮膚を用いたインビトロ経皮吸収試験による皮膚透過性を表した図である。
【図3】本発明製剤(KRH−3148)による経皮投与と経口投与におけるバイオアベイラビリテイの比較実験の評価結果を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のイオン性薬物は、以下の一般式(1)で示される化合物であって、CXC
R4阻害剤として構成するものである。
【0017】
【化5】

【0018】
[式中、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4の低級アルキル基を表し、n、n、nは1から4の整数を表す。A、Aは、置換又は無置換のヘテロアリール基を表す。Wは置換又は無置換のフェニレン基を表す。XはN−(カルボキシメチル)メチレン基を表し、Dは炭素数1〜4の低級アルキル基を有する2級アミノ基で置換された炭素数1〜5の低級アルキレン基を表す。式中の低級アルキル基、低級アルキレン基は置換基で置換されていても良い。]で表されるCXCR4拮抗剤(3級アミン化合物)を示す。
【0019】
本発明の「炭素数1〜4の低級アルキル基」とは、直鎖状または分枝鎖状であって、鎖内に1〜4個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素基を意味する。好適なアルキル基は、鎖内に1個〜3個の炭素原子を含む。
本発明の「炭素数1〜5の低級アルキレン基」とは、直鎖状または分枝鎖状であって、直鎖状の場合にはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基を表し、分枝状の場合には、メチル基、エチル基、プロピル基等が側鎖に付いたエチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基を表す。
上記アルキル基とアルキレン基の置換基としては、同一または異なった1個以上の置換基が置換されていてもよい。これら各置換基は、ハロゲン原子、低級アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、シアノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アミノ基、−NH(低級アルキル)、−NH(シクロアルキル)、−N(低級アルキル)、カルボキシル基、および−C(O)O−(低級アルキル)からなる群から独立して選択される置換基によって上記低級アルキル基、低級アルキレン基が置換されうることを意味する。適当な低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が含まれる。ハロゲン原子はフッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味する。好適なものはフッ素、塩素および臭素である。
【0020】
本発明の「ヘテロアリール基」は、約5個〜約14個の環原子、好ましくは約5個〜約10個の環原子を含み、環原子の1個以上が、炭素以外の元素、例えば、単独または結合した、窒素、酸素、または硫黄である、芳香族性の単環式または多環式の環系を意味する。好適なヘテロアリール基は約5個〜約6個の環原子を含む。また、ヘテロアリール基は、必要に応じて、同一であって異なっていてもよい1個以上の置換基によって置換されていてもよい。
ヘテロアリール基としては、例えばイミダゾリル、ピリジル、ピラジニル、フラニル、チエニル、ピリミジニル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、フラザニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、キノキサリニル、フタラジニル、イミダゾ[1,2−a]ピリジニル、イミダゾ[2,1−b]チアゾリル、ベンゾフラザニル、インドリル、アザインドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチエニル、キノリニル、イミダゾリル、チエノピリジル、キナゾリニル、チエノピリミジル、ピロロピリジル、イミダゾピリジル、イソキノリニル、ベンゾアザインドリル、1,2,4−トリアジニル、ベンゾチアゾリルなどを挙げることができる。好ましいヘテロアリール基としては、イミダゾリル、ピリジル、ピラジニル、フラニル、チエニル、ピリミジニル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、フラザニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、1,2,4−チアジアゾリルなどを揚げることができる。
【0021】
ヘテロアリール基の置換基としては、例えば、環系上の利用可能な水素に置き換わる、芳香族環系または非芳香族環系に付着した置換基を意味する。当該置換基は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれが、低級アルキル基、ヒドロキシ基、ヒドロキシ低級アルキル基、低級アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、低級アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、低級アルキルチオ基、アリールチオ基、シクロアルキル基、YN−、YN−アルキル−、YNC(O)−、およびYNSO−、アリール基、ヘテロアリール基、からなる群から独立して選択される(ただし、YおよびYは同一であっても異なっていてもよく、水素、アルキル、アリール、およびアラルキルからなる群から独立して選択される)。好ましくは、例えばメチル基、エチル基等の低級アルキル基、ヒドロキシ基、ヒドロキシ低級アルキル基、低級アルコキシ基を挙げることができる。
【0022】
本発明の「フェニレン基」とは、1,3位または1,4位の2箇所が置換されたフェニル基を意味する。当該フェニレン基の置換基としては、フェニル環上の利用可能な水素に置き換わる置換基を意味し、前述と同様の置換基を挙げることができる。例えば、低級アルキル基、ヒドロキシ基、ヒドロキシ低級アルキル基、低級アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、低級アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、低級アルキルチオ基、アリールチオ基等を挙げることができる。
【0023】
一般式(1)の3級アミン化合物は有機酸または無機酸と反応して、酸付加塩を形成する。当該酸付加塩の例として、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、二グルコン酸、ドデシル硫酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、メチル硫酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩などを挙げることができる。より好ましい酸付加塩としては、一般式(1)の化合物の構造や塩基性によって異なるが、例えば塩酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、リン酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩等を挙げることができる。例えばKRH−3148の場合には、以下の化学式(2)に示されるように、酒石酸塩である。
【0024】
【化6】

【0025】
本発明の「脂肪酸系イオン液体」とは、炭素数5〜20である脂肪酸の少なくとも1種と炭素数4〜14の有機アミン化合物の少なくとも1種とからなる常温で液体状態となっている等モル塩あるいは等モルの平衡混合物を言う。炭素数5〜20の脂肪酸としては、例えば、カプリン酸、オクタン酸、カプリン酸等の炭素数5〜10の中級脂肪酸、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の飽和、不飽和の炭素数11〜20の高級脂肪酸を挙げることができる。好ましくは、カプリン酸、ミリスチン酸、イソステアリン酸、オレイン酸を挙げることができる。更にこれらの酸を適宜、1種ないし複数用いて本発明のイオン液体を作製することができる。
【0026】
炭素数4〜14の有機アミン化合物とは、例えば、n−オクチルアミン、n−ヘキシルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、3−ジメチルアミノ−1−プロピルアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、リドカイン、キシロカイン等の置換または無置換である直鎖または分枝状アルキルアミン化合物、例えば、ピペラジン、ピペリジン、ピペロニルアミン、N−ヒドロキシエチルピロリジン等の置換または無置換の環状アルキルアミン化合物、例えば、ベンジルアミン等の置換または無置換の芳香族アミン化合物、例えば、1−エチルー3−メチル−イミダゾール等の置換または無置換の複素芳香環アミン化合物などを挙げることができる。置換基としては、水酸基、例えば塩素、臭素等のハロゲン原子、水酸基またはハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1〜5の低級アルキル基を表す。好ましい有機アミン化合物としては、水酸基で置換された直鎖または分枝状アルキルアミン化合物を挙げることができる。より好ましいものとしては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンを挙げることができる。
【0027】
例えば、本発明での脂肪酸系イオン液体の製法の一例を示すと、上記炭素数5〜20の脂肪酸と炭素数4〜14の有機アミン化合物からイオン液体を製造できる方法ならば、いかなるものでもよい。例えば、特開2008−184402号公報に記載の方法に準じて製造することができる。即ち、炭素数5〜20の脂肪酸に等モル量の炭素数4〜14の有機アミン化合物を添加し、加温攪拌することにより当該イオン液体を作製することができる。あるいは、炭素数5〜20の脂肪酸のメタノール溶液に等モル量の炭素数4〜12の有機アミン化合物を添加して、攪拌加温する。その後、メタノールを留去して当該イオン液体を作製することができる。
【0028】
一つ以上の炭素数5〜20の脂肪酸と一つ以上の炭素数4〜14の有機アミン化合物の両者の混合比率は、酸と塩基の量が等モルの塩を形成すればよく、炭素数5〜20の脂肪酸はいかなる混合割合で形成されていてもよい。また、炭素数4〜14の有機アミン化合物も、いかなる混合割合でも形成されていてもよい。
【0029】
本発明の「有機酸」とは、炭素数2〜20のカルボン酸化合物を言い、イオン性薬物の経皮吸収性の向上を図るために経皮吸収促進剤として使用する。ここで使用されるカルボン酸化合物としては、例えば乳酸、プロピオン酸、カプリン酸、ソルビン酸、サリチル酸、没食子酸、酢酸、酪酸、吉草酸、レブリン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸などのモノカルボン酸、例えばアジピン酸、マレイン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、リンゴ酸、セバシン酸などのジカルボン酸、例えばクエン酸などのトリカルボン酸を挙げることができる。スルホン酸化合物としては、例えばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、メントールスルホン酸等のアルキルスルホン酸、例えばベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等のアリルスルホン酸を挙げることができる。その他、薬学的に許容しうる有機酸であればよい。好ましいものとしては、酢酸、オレイン酸、レブリン酸、カプリン酸、ミリスチン酸、ソルビン酸等のカルボン酸化合物を挙げることができる。また、使用量は、外用剤の全重量を基準に通常0.5〜10重量%、好ましくは、0.5〜5重量%を用いることができる。
【0030】
本発明の「有機塩基」とは、前段で言う炭素数4〜14の有機アミン化合物と同じ意味のことを言うが、使用されるものとしては、目的に応じて、有機アミン化合物とは異なるものを使用することができる。有機塩基は、イオン性薬物の溶解度を高め、経皮吸収性の向上を図るため使用する。また、使用量は、外用剤の全重量を基準に通常0.5〜10重量%、好ましくは、0.5〜5重量%を用いることができる。
【0031】
本発明の「有機溶媒」とは、イオン性薬物と脂肪酸系イオン液体とで形成される複合イオン組成物を溶解し、溶媒和する働き示すものを言う。更には、皮膚表面に対して経皮吸収性を向上させるために働きかけるものが望ましい。例えば、例えばTHF、ブチルエーテル、ポリエチレングリコールメチルエーテル等のエーテル類、例えばメチルイソブチルケトン等のケトン類、例えば酢酸エチル、酢酸プロピル、酪酸エチル等の低級アルキルカルボン酸エステル、例えばセパシン酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、パルミチン酸ミリスチル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸トリグリセリド、リグノセリン酸セリル、セロリン酸ラクセリル、ラクセル酸ラクセリル等の脂肪酸エステル類、例えば炭酸プロピレン等の炭酸エステル類、例えばオリーブ油、やし油等の植物油類等を挙げることができる。好ましいものとしては、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル等の脂肪酸エステル類、炭酸プロピレン等の炭酸エステル類、やし油、オリーブ油等の植物油類を挙げることができる。
【0032】
本発明において、一般式(1)の3級アミン化合物は外用剤の全重量を基準として通常1〜10重量%、好ましくは2〜10重量%を含まれることが望ましい。
本発明で言う「外用剤」とは、イオン性薬剤と脂肪酸系イオン液体とを含有する種々の剤形の外用剤のことを言い、例えば液剤、ゲル剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、貼付剤などが挙げることができる。また、その製造は、製剤学的に汎用されている手段を採用して行うことができる。
本発明の「非水系」とは、特に外用剤の組成として、精製水を加えるようなものでないものを言う。有機溶媒に微量含まれているような水分は無視している。
【0033】
本発明では、外用剤を適用部位へ貼付又は塗布した後、これを粘着シートや包帯等で保護、固定することが好ましく、これにより衣服や手指を汚すことなく使用できる。また、特に外用剤をシート状の支持体の片面に形成した貼付剤の形態で使用すると、投与すべき薬物量を調整しやすく、貼付操作も簡便に行うことができるため好ましい。外用剤を貼付剤の形態で使用する場合には、粘着性を有するように、その主成分に粘着剤を用いて支持体の片面に粘着剤層を形成すると好適である。また、製造、運搬又は保存中の劣化を防止するために、皮膚面へ貼付する直前まで粘着剤層の露出面を剥離ライナーで被覆、保護することが望ましい。そして、使用時に剥離ライナーを剥離して粘着剤層を露出させ、皮膚に貼付して投与する。
【0034】
粘着剤層に含まれる粘着剤としては、15〜30℃程度で粘着性を有し、皮膚面に接した際にカブレ等を生じなければ特に限定されるものではない。粘着剤は、当該技術分野において医療用の粘着剤として従来から用いられている、アクリル系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤(合成イソプレンゴム、ポリイソブチレン、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体)、シリコーン系粘着剤、ビニルエステル系粘着剤、ビニルエーテル系粘着剤等で構成されることが好ましい。
【0035】
また、本発明の外用剤においては、必要に応じて上記以外の添加剤を配合することができる。かかる添加剤としては、イオン性薬物の種類、配合量又は外用剤の使用方法等に応じて、通常使用されているもの、例えば、安定化剤、防腐・殺菌剤、抗酸化剤、充填剤、粘着付与剤、軟化剤等を、薬理効果に影響を与えない範囲内で用いることができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例および試験例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれによってなんら限定されるものではない。
[実施例1]:イオン性薬物を溶解した脂肪酸系イオン液体溶液の経皮吸収性
「2−([4−(ジプロピルアミノ)ブチル]{[4−({[(1H−イミダゾール−2−イル)メチル][(1−メチル−1H−イミダゾール−2−イル)メチル]アミノ}メチル)フェニル]メチル}アミノ)アセチックアシッド・トリ−(2R,3R)−酒石酸塩」(以下、KRH−3148という)は酒石酸と1:3の塩を形成しているため、有機溶媒に対する溶解度は低く、それに伴い経皮吸収性も低くなっていた。そこで、「KRH−3148」の溶解度を高め、経皮吸収性の向上を図るため、有機酸や有機塩基、またはイオン液体を利用して溶解度を上げ、経皮吸収性の向上を検討した。なお、酒石酸と塩を形成していないフリー体を「KRH−3153」という。
以下の表1の組成(w/w%)で試剤を秤取し、液剤組成物を作成し、その経皮吸収性を評価した。経皮吸収性は、フランツ・セルを用いて測定し、試験開始から6時間後の経皮吸収性(μg/cm)を評価した。これらの結果を併せて表1に記載した。
【0037】
【表1】

[注記]
・トリイソ:トリイソプロパノールアミン、ジエタ:ジエタノールアミン
・MIP:ミリスチン酸イソプロピル
【0038】
上記結果から、参考例2に示されるように、イオン液体が存在しなければ系中に生成すると考えられる「KRH−3153」の経皮吸収性は良くないが、試験No.2に示されるように、イオン液体が存在すれば「KRH−3153」の経皮吸収性が良好になることが分かる。更に、試験No.1に示されるように「KRH−3148」を使用した場合、イオン液体が存在することにより、有機溶媒に難溶であった「KRH−3148」が溶解し、経皮吸収性を促進できることが示された。溶液中に存在する各試剤の酸性、塩基性は以下の表2に整理される。
【0039】
【表2】

【0040】
上記表1の試験No.2においては、オレイン酸が「KRH−3153」の約2倍モル量存在するので、溶液中には「KRH−3153」のオレイン酸塩が形成されていると考えられる。
一方、試験No.1では、「KRH−3148」の22倍モル量のジエタノールアミンが存在するので、酒石酸の多くの部分はジエタノールアミン塩となっており、溶液中で遊離した「KRH−3153」は、酸としてカプリン酸は22倍モル量、オレイン酸は6倍モル量が存在することから、溶液中で主に「KRH−3153」のカプリン酸塩になっていると考えられる。
【0041】
[実施例2]:イオン液体の含量変化と経皮吸収性への影響
脂肪酸系イオン液体の含量の最適化を検討するため、オレイン酸過剰の中でのイオン液体の含量と経皮吸収性の傾向を検討した。
実施例1に準じて、以下の表3の組成(w/w%)の液剤を作製した。これら液剤の経皮吸収性を評価し、以下の表3に併せて示す。
【0042】
【表3】

[注記]
・ジエタ:ジエタノールアミン ・MIP:ミリスチン酸イソプロピル
【0043】
上記表3に示されるように、イオン液体の含量が少なくなってくれば、経皮吸収性は向上する傾向が見られる。
このことは、脂肪酸系イオン液体の量が50w/w%以下であることが望ましいことを示しており、好ましくは40w/w%以下であることを示している。
【0044】
[実施例3]:液剤組成の変化と経皮吸収性への影響
実施例2においては、オレイン酸が過剰にあるため、液剤の液性が酸性に傾いている。経皮吸収性を向上させるために、液剤の液性が酸性が適切か否かを検討した。
実施例1に準じて、以下の表4の組成(w/w%)の液剤を作製した。これら液剤の経皮吸収性を評価し、以下の表4に併せて示す。
【0045】
【表4】

[注記]
・ジエタ:ジエタノールアミン ・MIP:ミリスチン酸イソプロピル
【0046】
上記表4の結果に示されるように、組成内容から液剤の液性は、試験No.4においては酸性であり、試験No.5においては中性である。一方、試験No.6においては塩基性であると言える。
従って、中性から塩基性にかけての液性であることが、「KRH−3148」の経皮吸収性を向上させるのに有効であることが分かった。
【0047】
[実施例4]:経皮吸収性に対する薬物含量の影響
経皮吸収性は、一般に薬物含量(薬物濃度)の影響を受けると言われている。そこで、「KRH−3148」に関する薬物含量の効果を検討した。
そのため、実施例1に準じて、以下の表5の組成(w/w%)の液剤を作製し、経皮吸収性を評価した。以下の表5にその結果を併せて示す。
【0048】
【表5】

[注記]
・ジエタ:ジエタノールアミン ・MIP:ミリスチン酸イソプロピル
【0049】
上記表5の結果から示されるように、「KRH−3148」の経皮吸収性は液剤中の「KRH−3148」の濃度に影響されることが分かった。
「KRH−3148」の薬物濃度が2.5倍になれば、概ね経皮吸収性も3倍に向上することが示されて、KRH−3148の経皮吸収性は濃度依存であることが示された。
【0050】
[実施例5]:テープ剤における基剤等の影響
「KRH−3148」を用いたテープ剤を作成し、テープ剤における経皮吸収性の向上を検討した。そのため、実施例1に準じて、以下の表6の組成(w/w%)のテープ剤を作製した。該テープ剤の経皮吸収性を評価し、以下の表6に併せて示す。
【0051】
【表6】

[注記]
・ジエタ:ジエタノールアミン
・BHT:ジブチルヒドロキシトルエンの略号
・水添石油系樹脂:粘着付与剤として使用される石油系樹脂を言う。
・SIS樹脂:スチレン−イソプレン−スチレン・ブロック共重合体
【0052】
脂肪酸系イオン液体の有無によって、「KRH−3148」の経皮吸収性は大きく影響される。脂肪酸系イオン液体が存在することによって、テープ剤の経皮吸収性は、5〜18倍に向上した。
テープ剤の添加物として、軟化剤(流動パラフィン)が多いと、経皮吸収性が向上する傾向にあることが分かった。
【0053】
[実施例6]:液剤とテープ剤における経皮吸収性の効果の相違
液剤では薬剤成分が有機溶媒に溶解しているが、テープ剤では薬効成分が基剤中に分散、可溶化または乳化している。有機溶媒と基剤との間では、薬効成分の物質移動が大きく相違する。液剤については、経皮吸収律速と考えられており、テープ剤等では基剤中の物質移動律速と考えられる。そこで、溶媒と基剤の変換における経皮吸収性の相違を検討した。
そこで、表4の試験No.5と表6の試験No.8と9の経皮吸収性を比較した。以下の表7にその結果を示す。
【0054】
【表7】

[注記]
・ジエタ:ジエタノールアミン
・BHT:ジブチルヒドロキシトルエンの略号
・水添石油系樹脂:粘着付与剤として使用される石油系樹脂を言う。
・SIS樹脂:スチレン−イソプレン−スチレン・ブロック共重合体
【0055】
液剤の経皮吸収性は、皮膚吸収が律速であるとされている。そこで、上記表7の試験No.5(液剤処方)と試験No.8と9(テープ剤処方)を比較すると、テープ剤の場合には、基剤内の物質移動が律速となっていることが分かった。即ち、テープ剤の経皮吸収性は、液剤の1/3〜1/10に低下することが示された。
なお、テープ剤の場合、流動パラフィン等の軟化剤の含量が多くなれば、経皮吸収性が向上することが示されている。即ち、流動パラフィンの含量が高いと、テープ剤中の物質移動速度が速くなり、そのために経皮吸収性が向上したと考えられる。
【0056】
[試験例1]:フランツセルによる経皮吸収性の評価試験
5週齢のウイスター系雄ラットを用い、エーテルにて安楽死後、バリカンを用いて腹部を除毛して、腹部皮膚を摘出した。その腹部皮膚を縦型拡散セル(容量17ml、径20mmφ)に挟み、角質層側に表1〜7に記載の各試験No.のサンプルをそれぞれ600μl塗布する。また、生理食塩水を適用した。実験温度は32℃とし、実験開始後1、2、3、4及び6時間経過時に各600μLサンプリングし、皮膚を透過して生理食塩水中に溶出した「KRH−3148」の濃度を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定し、各時間における「KRH−3148」の累積透過量を測定した。経皮吸収性として6時間経過後の蓄積透過量(μg/cm)で表す。
上記結果を図1と図2に示す。
【0057】
[試験例2]:ラットの血中濃度評価試験
5週齢のSDラットを用い、経皮投与前日に、電気バリカン及びシェーバーを用いて背部の毛を剃る。試験No.1溶液を0.15m採取し、背部の5×7cmの範囲に1mlの注射器及び経口ゾンデを用いて塗布する。(「KRH−3148」として約40mg/Kgの塗布に相当する。)塗布後、塗布個所をラップで覆い、粘着性伸縮包帯で24時間固定する。
塗布後、ラット頚動脈より2、4、6、8、12、24時間後に血液を各400μl採取して血中濃度を測定した。
なお、同時比較実験として、ラットに「KRH−3148」を40mg/Kgの経口投与し、又ラットに「イオニックリキッドC」を「KRH−3148」と同様に塗布後、同様に経時的な血中濃度の変化を測定した。
上記結果を図3に示す。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、経口投与において吸収性があまり良くない3級アミン化合物の場合であっても、イオン液体を使用して経皮外用剤とすることにより、薬物の効果を発揮するのに充分な血中濃度が達成でき、しかも薬物の安定性が良好な経皮外用剤を得ることが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

[式中、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4の低級アルキル基を表し、n、n、nは1から4の整数を表す。A、Aは、置換又は無置換の複素芳香環基を表す。Wは置換又は無置換のフェニレン基を表す。XはN−(カルボキシメチル)メチレン基を表し、Dは炭素数1〜4の低級アルキル基を有する2級アミノ基で置換された炭素数1〜5の低級アルキレン基を表す。式中の低級アルキル基、低級アルキレン基は置換基で置換されていても良い。]で示される3級アミン化合物を脂肪酸系イオン液体に溶解して作製されることを特徴とする、非水系外用剤。
【請求項2】
上記3級アミン化合物が、下記化学式(2)
【化2】

であることを特徴とする、請求項1に記載の非水系外用剤。
【請求項3】
脂肪酸系イオン液体が、炭素数5〜20である脂肪酸の少なくとも1種と炭素数4〜14の有機アミン化合物の少なくとも1種からなる等モル塩の平衡混合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の非水系外用剤。
【請求項4】
有機酸又は有機塩基が更に添加されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の非水系外用剤。
【請求項5】
有機溶媒が添加されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の非水系外用剤。
【請求項6】
有機溶媒が、炭酸プロピレン、セバシン酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピルのうち少なくとも1つであることを特徴とする、請求項5に記載の非水系外用剤。
【請求項7】
上記3級アミン化合物の含量が1〜10重量%であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の非水系外用剤。
【請求項8】
添加されている有機酸が、オレイン酸又はカプリン酸であることを特徴とする、請求項4〜7のいずれかに記載の非水系外用剤。
【請求項9】
添加されている有機塩基が、ジエタノールアミン又はジイソプロパノールアミンであることを特徴とする、請求項4〜8のいずれかに記載の非水系外用剤。
【請求項10】
脂肪族系イオン液体が、カプリン酸ジエタノールアミン、カプリン酸トリエタノールアミン、オレイン酸ジエタノールアミン、オレイン酸トリエタノールアミンの中から一つ以上選択されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の非水系外用剤。
【請求項11】
脂肪族系イオン液体が、カプリン酸ジエタノールアミンまたはオレイン酸ジエタノールアミンであることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の非水系外用剤。
【請求項12】
脂肪酸系イオン液体の含量が3〜50w/w%である請求項1〜11のいずれかに記載の非水系外用剤。
【請求項13】
非水系外用剤が、非水系の液剤、ゲル剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤または貼付剤のうちのいずれか1つであることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の非水系外用剤。
【請求項14】
上記請求項1〜13のいずれかに記載の非水系外用剤を用いることを特徴とする、CXCR4に起因する疾患の治療剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−158521(P2012−158521A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101186(P2009−101186)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【出願人】(302005628)株式会社 メドレックス (35)
【Fターム(参考)】