説明

外用塗布剤、外用塗布クリーム及び外用塗布ジェル

【課題】天然由来成分を用いて、優れた効果を有する外用塗布剤を提供することを目的とする。
【解決手段】上記目的を達成するため、キャッツクロー(Rubiaceae Uncaria)の抽出物を15wt%〜50wt%と、シアバターとを含むことを特徴とする外用塗布剤を採用し、即効性や効果の持続性に優れた外用塗布剤を提供可能とした。さらに、これを用いた外用塗布クリーム又は外用塗布ジェルを採用することによって、取り扱い性や使用感、塗布による効果を発揮しやすくした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚に塗布する外用塗布剤に関し、特に、鎮痛、消炎作用、肌の保湿、美白効果等の美容効果を奏する外用塗布剤、外用塗布クリーム及び外用塗布ジェルに関する。
【背景技術】
【0002】
古来より、火傷、外傷、痒み等の炎症や関節の痛みの鎮静効果、あるいは、肌の質を高めるための美容効果を得るために、天然成分を皮膚に塗布していた。そして、近年では、この古来より用いられてきた天然成分を用いたクリーム、ジェル、乳液等の外用塗布剤が種々検討され、流通している。
【0003】
これらの外用塗布剤に用いられる天然成分の一種として、例えば、特許文献1、特許文献2に開示の技術のように、キャッツクロー(Rubiaceae Uncaria)が挙げられる。
【0004】
キャッツクローは、アカネ科カギカズラ族に属する蔦植物で、アマゾンの熱帯雨林に生育し、ペルーでは伝統的な薬用植物として、樹皮を煎じて飲まれている。その一方で、近年では、薬用植物として、キャッツクローの効果が研究され、世界的に注目されている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−161044号公報
【特許文献2】特開2008−247783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような天然成分を配合した外用塗布剤は、即効性、効果の持続性等の効能の他、天然由来成分を用いることが望まれている。そこで、本件発明は、天然由来成分を用いて優れた効果を有する外用塗布剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本件発明者は、鋭意研究を行った結果、以下の外用塗布剤とすることで上記課題を達成するに到った。
【0008】
本件発明に係る外用塗布剤は、キャッツクロー(Rubiaceae Uncaria)の抽出物を15wt%〜50wt%と、シアバターとを含むことを特徴とする。
【0009】
そして、本件発明に係る外用塗布剤では、前記キャッツクローの抽出物は液状抽出物であることがより好ましい。
【0010】
また、本件発明に係る外用塗布クリームは、上述の外用塗布剤に、ココアバター、アボカドバター、アーモンドバター、マンゴーバターの中から選択される1種又は2種以上の植物性油脂を加えて得られることを特徴とする。
【0011】
更に、本件発明に係る外用塗布ジェルは、上述の外用塗布剤に、水、カラギナン、キサンタンガムを主成分とするジェル基材を加えて得られることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本件発明に係る外用塗布剤は、自然物由来の材料を用いるので、安心して使用できるものである上に、キャッツクローならびにシアバターの効能を十分に引き出すことができ、即効性ならびに効果の持続性に優れたものを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る外用塗布剤の最良の実施の形態に関して説明する。
【0014】
本発明に係る外用塗布剤は、キャッツクローとシアバターを主要な成分とし、皮膚に塗布して用いるものである。すなわち、キャッツクローの抽出物を15wt%〜50wt%含有し、その他の成分とし、更にシアバターを含むものである。
【0015】
なお、本件明細書においては、配合割合の単位を「wt%」と記載しているが、これは、外用塗布剤の全体量を100wt%としたときの、各成分の配合割合を示していることを明記しておく。また、外用塗布クリームならびに外用塗布ジェルの記載についても同様である。
【0016】
キャッツクローの樹皮から抽出して得られる抽出物(以下、「キャッツクロー抽出物」と記す。)には、テロポディン、イソテロポディン、リンコフィリン、イソリンコフィリン、ミトラフィリン、イソミトラフィリンの6種類のアルカロイドが存在することが明らかになっている。これらのアルカロイドの他に、キノビック酸グルコシド、ステロイン、トリテルペン、フラボノイド等の成分が含まれていることが確認されている。これらの成分が、鎮痛効果、消炎効果、免疫強化作用等を発揮するものと考えられている。
【0017】
従来、キャッツクロー抽出物を含む外用塗布剤では、キャッツクロー抽出物の配合割合が低いものが多かった。しかし、本件発明者は、研究の結果、キャッツクロー抽出物の含有量を高めると、上述のキャッツクローの効果が高まることを確認した。更に、本件発明者は、キャッツクロー抽出物を高い割合で配合し、そこにとシアバターを介在させて用いることにより、それぞれを単体で用いた場合よりも、鎮痛、抗炎効果や美容効果が著しく高く得られることを見出した。そして、検討の結果、キャッツクロー抽出物を15wt%〜50wt%と、シアバターを配合することにより、より即効性が高く、効果を持続させることができる外用塗布剤を見出したのである。
【0018】
すなわち、キャッツクロー抽出物は、配合割合が15wt%未満であると、即効性が得られない。一方、キャッツクロー抽出物は、配合割合が高いほどにキャッツクローの効能を発揮しやすいが、シアバター等の他の成分の配合割合との関係で、配合割合の上限が50wt%となる。
【0019】
ここで、キャッツクロー抽出物は、液状の抽出物を用いることが好ましい。キャッツクローの樹皮を、低級アルコールあるいは含水低級アルコール等の有機溶媒に混合して、キャッツクロー抽出物を得ることが好ましい。
【0020】
シアバターは、サバンナ地域に生息するシアの木(butyrospermum parkii)の果実の種から採取された植物油脂である。シアバターには、オレイン酸、ステアリン酸、トリテルペンアルコール等の成分を含有することが明らかにされており、抗酸化作用、肌の保湿効果等が得られる。
【0021】
そして、シアバターの配合割合は、好ましくは、2wt%〜80wt%である。シアバターの配合割合が2wt%未満であると、キャッツクロー抽出物と併用して得られる相乗効果が現れない。一方、シアバターの配合割合の上限は、キャッツクロー抽出物の配合量との関係で80wt%となる。なお、シアバターは液状、固体状の態様のどちらを用いることも可能である。特に、剤型をクリームにする場合に固体状のものを用いると、常温での粘度を適度に保持でき、剤型を維持しやすいので好ましい。また、剤型をゲル状とする場合は、液状シアバターを用いると、ジェル基材となじみ易いので好ましい。
【0022】
本件発明の外用塗布剤の剤型は特に限定されるものではなく、クリーム、ジェル、乳液、軟膏、ローション、オイル等種々の剤型とすることができる。特に、クリーム、ジェルとすると、塗布後に、皮膚になじみやすいので好ましい。ここで、外用塗布剤をクリームタイプとした場合と、ジェルタイプとした場合の実施形態について説明する。
【0023】
外用塗布クリーム: 本件発明に係る外用塗布クリームは、上述の外用塗布剤に、更に、ココアバター、アボカドバター、アーモンドバター、マンゴーバター等から選択される1種又は2種以上の植物性油脂を加えるものである。これらの植物性油脂を加えると、常温ではクリームとしての粘度を維持しつつ、人の体温程度の温度で溶解し始めるので、肌に塗布したときに、より滑らかとなり、使用感に優れるとともに、保湿等の美容効果が向上する。これらの植物性油脂の配合割合は、0.1wt%以上とすると、外用塗布クリームの取り扱い性に優れ、また、保湿等の美容効果を向上させることができる。一方、これらの植物性油脂の配合割合の上限は、キャッツクロー抽出物ならびにシアバターの配合割合を考慮すると、82wt%となる。
【0024】
外用塗布ジェル: 本件発明に係る外用塗布ジェルは、上述の外用塗布剤に対して、水、カラギナン、キサンタンガムを主成分とするジェル基材を加えて得られることを特徴とする。
【0025】
ジェル基材は、ミネラル水、カラギナン、キサンタンガムを主成分とした水性のものを使用することが好ましい。天然成分を用い、外用塗布剤と混合しやすく、外用塗布ジェルを肌に塗布したときに、肌への浸透性に優れ、肌になじみやすいからである。なお、ジェル基材は、44wt%〜82wt%配合することが好ましい。ジェル基材の配合量が44wt%未満であると、肌になじみやすくするという効果が得られない。一方、ジェル基材の配合量の上限は、キャッツクロー抽出物やシアバター等、他の有効成分の配合量を考慮すると、82wt%となる。
【0026】
以下、実施例および比較例を示して本件発明を具体的に説明する。なお、本件発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【実施例1】
【0027】
実施例1の外用塗布剤は、液状のキャッツクロー抽出物を20wt%、シアバターを75wt%の割合で配合した。この他の成分として、グリセリン5wt%を配合した。すなわち、シアバター75gを40℃に熱して溶かして液体とし、この液体にしたシアバターにグリセリン5gを加えた後、次いでキャッツクローの抽出液を20g加え、その後撹拌、混合して混合液とした。実施例1では、その後、当該混合液を温度22℃に冷却して固化させてクリームタイプの外用塗布剤とした。
【実施例2】
【0028】
実施例2では、キャッツクロー抽出物を20wt%、シアバター70wt%、ココアバター0.1wt%、グリセリン5wt%を配合したクリームタイプの外用塗布剤(外用塗布クリーム)を作製した。すなわち、シアバター74.9g及びココアバター50.1gを40℃に熱して溶かして液体とし混合し、この液体にしたシアバター及びココアバターの混合油にグリセリン5gを加え、次いでキャッツクローの抽出液を20g加え、その後撹拌、混合して混合液とした。その後、当該混合液を温度22℃以下に冷却して固化させて外用塗布クリームとした。
【実施例3】
【0029】
実施例3では、キャッツクロー抽出物を40wt%、シアバター5wt%、水性ジェル基材54wt%及びグリセリン1wt%を配合したジェルタイプの外用塗布剤(外用塗布ジェル)を作製した。本実施例の場合、シアバターは、液状シアバターを用いた。液状シアバターとは、シアバターの脂肪酸の組成を変え、常温で液状になるように変化させたものである。ジェル基材54gに対して、液状シアバター5g、グリセリン1g、液状のキャッツクロー抽出物を40gそれぞれ加えて、その後撹拌、混合してゲル化させ、外用塗布ジェルとした。
【0030】
実施例1〜実施例3の外用塗布剤、外用塗布クリーム、外用塗布ジェルについて、被験者による官能試験を行ったところ、いずれも関節炎等の痛みの鎮静効果が得られ、また、保湿効果や美白効果の実感が得られたという結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係る外用塗布剤は、天然成分を用いたものである上に、クリーム、ジェル等の剤型に加工して用いることにより、使用感に優れ、抗炎作用、鎮痛作用、美容効果に優れた塗布剤として用いることができ、化粧品等の美容用途や、医薬部外品として利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャッツクロー(Rubiaceae Uncaria)の抽出物を15wt%〜50wt%と、
シアバターとを含むことを特徴とする外用塗布剤。
【請求項2】
前記キャッツクローの抽出物は液状抽出物である請求項1に記載の外用塗布剤。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の外用塗布剤に、ココアバター、アボカドバター、アーモンドバター、マンゴーバターの中から選択される1種又は2種以上の植物性油脂を加えて得られることを特徴とする外用塗布クリーム。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の外用塗布剤に、水、カラギナン、キサンタンガムを主成分とするジェル基材を加えて得られることを特徴とする外用塗布ジェル。

【公開番号】特開2010−120909(P2010−120909A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298243(P2008−298243)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(508347029)株式会社ヤマノ (2)
【Fターム(参考)】