説明

外用組成物およびその製造方法

【課題】微少な粒子のセラミド類縁体含有粒子を含有する分散安定性に優れた外用組成物を提供する。
【解決手段】粒径0.001μm〜0.2μmのセラミド類縁体含有粒子と、水溶性高分子とを含有する外用組成物である、ここで、さらに、前記セラミド類縁体とは異なる油成分を、前記セラミド類縁体含有粒子1質量部に対し、20質量部以下の量含有し、且つ、前記セラミド類縁体含有粒子が該油成分中に存在することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミド類縁体含有粒子を含有する外用組成物、および、外用組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミドは、皮膚の角質層に存在し、水分保持に必要な脂質バリアを構築し、水分を維
持していくために重要な役割を果たしている。角質層にあるセラミドは、セレブロシドが、セレブロシダーゼという酵素により分解して生成したものである。セラミドの一部は、セラミダーゼと呼ばれる酵素により、フィトスフィンゴシンおよびスフィンゴシンに変化し、細胞の増殖および分化の調節剤として重要であることが知られている。人間の皮膚には、6 種類の異なったタイプのセラミドが存在し、機能もそれぞれ異なっている。
しかしながら、セラミドは結晶性の高い物質であり、他の油剤への溶解性が低く、低温で結晶を析出する等の理由のため、化粧料に配合する場合、安定性を確保することが困難であった。
【0003】
セラミド類を含有する組成物としては、保湿作用、肌荒れ防止作用及び乳化作用を有する特定スフィンゴ糖脂質群を含む乳化組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、コレステロール、脂肪酸、水溶性高分子を含有するセラミド配合化粧品添加物(例えば、特許文献2参照。)や、温度変化の激しい場合にも安定性に優れ、使用感が良好な外用組成物として、スフィンゴシン類と特定の脂肪酸で形成された塩を乳化剤として使用し、油溶性の酸化防止剤を特定割合で添加した油中水型乳化組成物(例えば、特許文献3参照。)が開示されている。
また、製剤化技術として、スフィンゴ糖脂質のエモリエント効果を十分に発揮させるために、スフィンゴ糖脂質の粗分散液を所定のジェット流を用いて微粒子化処理を行なう化粧料用添加剤の製造方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0004】
また、セラミド類を透明に可溶化し、安定に配合する技術として、特定の脂肪酸や特定の界面活性剤を配合することが開示されている(例えば、特許文献5、6参照。)。しかしながら、セラミドを透明に可溶化するためには、界面活性剤の配合を多くする必要があり、そのため安全性や使用感を損なう場合があった。一方、優れた使用感を得るために、界面活性剤の配合量を少なくした場合には、白濁ないし半透明の乳濁状になることが多く、セラミドを透明に可溶化しきれず、この場合、経時での分離やクリーミングが起こり、十分な経時安定性を確保することが難しい状況にあった。
このように、これらの技術によっても、セラミド類縁体の組成物中での安定性を損なうことなく、近年のエモリエント効果に対する高い要求を満足するには充分ではなかった。
【特許文献1】特開2000−51676号公報
【特許文献2】特開平7−187987号公報
【特許文献3】特開2006−335692号公報
【特許文献4】特開平11−310512号公報
【特許文献5】特開2001−139796公報
【特許文献6】特開2001−316217公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、微少な粒径のセラミド類縁体含有粒子を均一、且つ、安定に含有する外用組成物、及び、セラミド類縁体含有粒子の分散安定性が良好な外用組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 粒径0.001μm〜0.2μmのセラミド類縁体含有粒子と、水溶性高分子とを含有する外用組成物。
<2> さらに、前記セラミド類縁体含有粒子とは異なる油成分を、前記セラミド類縁体含有粒子1質量部に対し、20質量部以下の量含有する<1>に記載の外用組成物。
<3> 前記セラミド類縁体含有粒子とは異なる油成分の含有量が、前記セラミド類縁体含有粒子1質量部に対し、10質量部以下である<2>に記載の外用組成物。
【0007】
<4> 前記水溶性高分子が天然高分子である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の外用組成物。
<5> 前記水溶性高分子がコラーゲン誘導体である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の外用組成物。
<6> 前記コラーゲン誘導体の重量平均分子量が5000以下である<5>に記載の外用組成物。
<7> 前記水溶性高分子が多糖類である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の外用組成物。
<8> 前記多糖類の重量平均分子量が10万以下である<7>に記載の外用組成物。
<9> 前記水溶性高分子がヒアルロン酸類である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の外用組成物。
<10> 前記ヒアルロン酸類の重量平均分子量が30万以下である<9>に記載の外用組成物。
【0008】
<11> 前記セラミド類含有粒子が、水溶性高分子の存在下で形成されたものである<1>〜<10>のいずれか1項に記載の外用組成物。
<12> 水溶性高分子を含有する水相中においてセラミド類含有粒子を形成する工程を含む、セラミド類縁体含有粒子と、水溶性高分子とを含有する外用組成物の製造方法。
<13> 前記水相の粘度が30mPa・s以下である<12>に記載の外用組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、微少な粒径のセラミド類縁体含有粒子を均一、且つ、安定に含有する外用組成物、及び、セラミド類縁体含有粒子の分散安定性が良好な外用組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<外用組成物>
本発明の外用組成物は、粒径0.001μm〜0.2μmのセラミド類縁体含有粒子と、水溶性高分子とを含有する。
本発明においては、セラミド類縁体を微細な分散粒子の形状で含有することを大きな特徴としている。
このようなセラミド類縁体含有粒子は、そのまま水溶性高分子を含む水相成分に分散されていてもよいが、セラミド類縁体とは異なる油成分と共に分散粒子として油相を形成し、エマルジョンの形態を取っていてもよい。
このような油成分は、前記セラミド類縁体含有粒子1質量部に対し、20質量部以下の量含有することが好ましく、10質量部以下であることが更に好ましい。
以下、本発明の外用組成物に含まれる各種成分について順次説明する。
【0011】
〔水溶性高分子〕
本発明に使用される水溶性高分子は、少なくとも0.001質量%程度水(25℃)に溶解する高分子であれば何を用いてもよい。
本発明に用いうる水溶性高分子としては、ペクチン、カッパーカラギーナン、ローカストビーンガム、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアガム、キサンタンガム、カラヤガム、タマリンド種子多糖、アラビアガム、トラガカントガム、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、等の多糖類;
カゼイン、アルブミン、メチル化コラーゲン、加水分解コラーゲン、水溶性コラーゲン等のタンパク質;
カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、酸化エチレン・酸化プロピレンブロック共重合体等の合成高分子;
ヒドロキシエチルセルロース・メチルセルロース等の水溶性セルロース誘導体;
などが挙げられる。
【0012】
本発明に用いうる水溶性高分子は、合成されたものであっても、天然物であってもよいが、なかでも、天然高分子が好ましく、天然に存在する高分子である多糖類、蛋白質などが好ましく用いられる。
より好ましい例を挙げれば、コラーゲン誘導体、多糖類、ヒアルロン酸類が挙げられ、後述するセラミド類縁体粒子の安定化及び工程適性の点で、コラーゲン誘導体としては、重量平均分子量5000以下のものが好ましく、より好ましくは、200〜3000の範囲である。また、多糖類としては、具体的には、キサンタンガム、カッパーカラギーナン、デキストランなどが好ましく挙げられ、重量平均分子量300万以下のものが好ましく、より好ましい分子量としては、1万〜200万の範囲である。ヒアルロン酸類としては、重量平均分子量が30万以下のものが好ましく用いられ、より好ましい分子量は5000〜20万の範囲である。
なお、これらの高分子の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した値を用いている。
【0013】
本発明の外用組成物には、水溶性高分子は1種のみを用いてもよく、目的に応じて2種以上を併用してもよい。
外用組成物における水溶性高分子の含有量は、0.001〜5質量%の範囲であることが好ましく、0.01〜1質量%の範囲であることがより好ましい。
含有量が上記範囲において、べとつかず良好な感触が得られるなどの利点を有することになる。
【0014】
[水性成分]
本発明の外用組成物は、前記水溶性高分子を含有する水相に、以下に詳述するセラミド類縁体含有粒子が分散されて構成される。水相としては、前記水溶性高分子を含有する、水を主成分とする水溶液を用いることができる。水相には、本発明の効果を損なわない範囲で、水溶性抗酸化剤、植物抽出液等の水溶性機能性成分をさらに添加することが可能である。
【0015】
〔セラミド類縁体〕
本発明におけるセラミド類縁体としては、セラミド及びその誘導体を包含するものであり、合成品、抽出品等の由来は問わず、天然型のセラミド、スフィンゴ糖脂質などの糖修飾セラミドなどセラミド及びその類縁体のいずれであってもよい。本発明に用いうるセラミド類縁体としては、一般に、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、糖修飾セラミド等として知られている化合物が挙げられる。
【0016】
本発明においては、セラミド類縁体がそれを含有する粒子の形状で外用組成物に含有されることを特徴とする。このようなセラミド類縁体含有粒子は、そのまま水溶性高分子を含む水相成分に分散されていてもよいが、セラミド類縁体とは異なる油成分と共に分散粒子として油相を形成し、水相中に油相粒子として分散されていてもよい。セラミド類縁体含有粒子の形成方法については後述する。
【0017】
以下、本発明に用いうるセラミド類縁体について詳細に説明する。
(天然型セラミド類)
本発明においてセラミド類縁体として好適に用いうる天然型セラミドの基本構造式の例を(1−1)〜(1−9)に示す。(1−1)はセラミド1、(1−2)はセラミド9、(1−3)はセラミド4、(1−4)はセラミド2、(1−5)はセラミド3、(1−6)はセラミド5、(1−7)はセラミド6、(1−8)はセラミド7、(1−9)はセラミド8として知られた化合物である。
【0018】
【化1】

【0019】
【化2】

【0020】
前記構造式は、それぞれのセラミドについての一例を示しているが、天然物であるために、実際に人や動物等に由来するセラミドは、上記アルキル鎖の長さには様々な変形例が存在し、上記骨格を有するものであれば、アルキル鎖長については、いかなる構造のものでもよい。
また、製剤化などの目的で溶解性を付与するために、分子内に二重結合を導入したり、浸透性を付与するために、疎水基を導入するなど、上記セラミド類に目的に応じて、修飾を加えたものを用いることもできる。
【0021】
これら天然型と称される一般的な構造を有するセラミドは、天然物(抽出物)であっても合成物であってもよく、市販のものを目的に応じて用いることができる。
これらのセラミドは天然型(D(−)体)の光学活性体を用いても、非天然型(L(+)体)の光学活性体を用いても、更に天然型と非天然型の混合物を用いてもよい。上記化合物の相対立体配置は、天然型の立体配置のものでも、それ以外の非天然型の立体配置のものでもよく、また、これらの混合物によるものでもよい。
なお、外用組成物を皮膚のエモリエントなどの目的に使用する場合には、バリア効果の観点から、天然型の光学活性体を使用するのが好ましい。
【0022】
このような天然型セラミド類は市販品としても入手可能であり、例えば、Ceramide I、Ceramide III、Ceramide IIIA、Ceramide IIIB、Ceramide IIIC、Ceramide VI(以上、コスモファーム社製)、Ceramide TIC-001(高砂香料社製)、CERAMIDE II(Quest International社製)、DS-Ceramide VI、DS-CLA-Phytoceramide、C6-Phytoceramide、DS-ceramide Y3S(DOOSAN社製)、CERAMIDE2(セダーマ社製)等が挙げられ、また、前記例示化合物(1−5)は、「セラミド3」〔商品名、エボニック(旧デグサ)社製〕として、前記例示化合物(1−7)は、「セラミド6」〔商品名、エボニック(旧デグサ)社製〕として入手可能である。
【0023】
(糖修飾セラミド)
本発明おけるセラミド類縁体の別の好ましい例として、分子内に糖類を含む糖修飾セラミド化合物(以下、「糖セラミド化合物」とも称する)が挙げられる。
セラミドの修飾に用いられる糖としては、例えば、グルコース、ガラクトースなどの単糖類、ラクトース、マルトースなどの二糖類、さらには、これらの単糖類や二糖類をグルコシド結合により高分子化したオリゴ糖類、多糖類などが挙げられる。また、糖の単位におけるヒドロキシル基を他の基で置き換えた糖誘導体であっても構わない。このような糖誘導体としては、例えば、グルコサミンやクルクロン酸、N-アセチルグルコサミンなどがある。
中でも、分散安定性の観点から、糖単位の数が1〜5である糖類が好ましく、具体的には、グルコース、ラクトースが好ましく、グルコースがより好ましい。
本発明に用いうる糖セラミド化合物の具体例としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
【0024】
【化3】

【0025】
前記糖セラミド化合物は、合成によっても、市販品としても入手可能である。例えば、前記例示化合物(4−1)は、岡安商店、「コメスフィンゴ糖脂質」(商品名)として入手可能である。
【0026】
(セラミド類似体)
本発明におけるセラミド類縁体として、セラミド類の構造を模倣して合成されたセラミド類似体を用いることも可能である。
このようなセラミド類似体の公知の化合物としては、例えば、下記構造式で示されるようなセラミド類似体を使用することもできる。
【0027】
【化4】

【0028】
このようなセラミド類似体としては、例えば、本発明の外用組成物を化粧品として使用した際の使用感と保湿感等の観点から、天然型セラミドや糖修飾セラミドの類似体であることが好ましく、天然型セラミドの類似体であることがより好ましい。
【0029】
(スフィンゴシン、フィトスフィンゴシン)
本発明におけるスフィンゴシン、フィトスフィンゴシンとしては、合成品、天然品を問わず、天然型のスフィンゴシン、スフィンゴシン類縁体を使用することができ、このような化合物も本発明のセラミド類縁体に包含される。
天然型スフィンゴシンとしては、具体的には、スフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、スフィンガジエニン、デヒドロスフィンゴシン、デヒドロフィトスフィンゴシン、及びこれらのN−アルキル体(例えばN−メチル体)、アセチル化体等が挙げられる。
これらのスフィンゴシンは天然型(D(−)体)の光学活性体を用いても、非天然型(L(+)体)の光学活性体を用いても、更に天然型と非天然型の混合物を用いてもよい。上記化合物の相対立体配置は、天然型の立体配置のものでも、それ以外の非天然型の立体配置のものでもよく、また、これらの混合物によるものでもよい。これらのなかでも、本発明に好適に使用しうるフィトスフィンゴシンの具体例として、例えば、PHYTOSPHINGOSINE(INCI名;8th Edition)及び以下に記載の例示化合物を挙げることができる。
【0030】
【化5】

【0031】
フィトスフィンゴシンは、天然からの抽出品、合成品のいずれを用いてもよい。また、合成によっても、市販品としても入手可能である。天然型スフィンゴシン類の市販のものとしては、例えば、D-Sphingosine(4-Sphingenine)(SIGMA-ALDRICH社)、DSphytosphingosine(DOOSAN社)、phytosphingosine(コス30モファーム社)が挙げられ、さらに、前記例示化合物(5−5)は、エボニック(旧デグサ)社製、「フィトスフィンゴシン」(商品名)として入手可能である。
【0032】
(酸)
本発明の外用組成物にセラミド類縁体としてスフィンゴシン類は使用する場合には、その化合物と塩を形成しうる酸性残基を有する化合物を併用することが好ましい。酸性残基を有する化合物としては、無機酸又は炭素数5以下の有機酸が好ましい。
無機酸としては、リン酸、塩酸、硝酸、硫酸、過塩素酸、炭酸等が挙げられ、リン酸、塩酸が好ましい。
有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸等のモノカルボン酸;コハク酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸等のジカルボン酸;グリコール酸、クエン酸、乳酸、ピルビン酸、リンゴ酸、酒石酸等のオキシカルボン40酸;グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸等が挙げられる。これらの化合物としては、リン酸、塩酸、コハク酸、クエン酸、乳酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等が好ましく、特に乳酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等が好ましい。
併用される酸は、フィトスフィンゴシンとあらかじめ混合して用いてもよく、セラミド類縁体含有粒子の形成時に添加してもよく、粒子形成後にpH調整剤として添加して使用してもよい。
酸を併用する場合、添加量としては、用いられるフィトスフィンゴシン100質量部に対して、1〜50質量部程度であることが好ましい。
【0033】
本発明の外用組成物には、セラミド類縁体を1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、セラミド類は一般に融点が高く、結晶性が高いので、2種以上併用すると、乳化安定・取り扱い性の観点で好ましい。
なかでも、天然型のセラミドを2種以上組み合わせるのが最も好ましい。また、天然型のセラミド類と、糖セラミド化合物から選択される1種以上、或いは、天然型のセラミド類と、フィトスフィンゴシンから選択される1種以上とを組み合わせて用いることが、粒子の微細化や乳化物の分散安定性向上の観点から好ましい。
なお、後者の組合せを用いる場合、スフィンゴシン類は天然セラミド類100重量部に対して、0.005〜1000重量部、更に0.05〜500重量部、特に0.5〜200重量部加えるのが好ましい。
【0034】
(セラミド類縁体含有粒子)
本発明に用いうるセラミド類縁体は粒径1nm〜0.2μm、好ましくは、1nm〜75nm、より好ましくは、1nm〜50nm、最も好ましくは、1nm〜13nmの粒子の形状で外用組成物に含有される。このような粒子を本発明においては、「セラミド類縁体含有粒子」と称する。
【0035】
セラミド類縁体含有粒子は予め固体粒子として形成した後、外用剤に配合してもよいが、セラミド類縁体を加熱して溶融状態とするか、或いは、適切な溶剤に溶解して液状とした後、水溶性高分子を含有する水相に添加して乳化分散させ、その後、常温に降温するか、或いは、溶剤を除去することで、系中で形成してもよい。例えば、油相中に他の有効成分を含有する場合などにおいては、高温条件下では有効成分が損なわれる懸念があるため、加温は、30〜60℃の範囲とすることが好ましく、以下に詳述するように、他の油成分と相溶させるか、有機溶剤に溶解して調製する方が好ましい。
外用組成物中におけるセラミド類縁体含有粒子の粒子径を、0.2μm以下とすることにより、本発明の外用組成物を医薬品、化粧品等に用いた場合、組成物の透明性が確保され、皮膚吸収性が良好となる。
【0036】
セラミド類縁体含有粒子を上記微細な粒径とするための造粒方法は公知の方法を適用できるが、本発明においては、微粒子化の観点から、例えば、100Mpa以上といった高剪断力を付加する高圧乳化法、析出法を用いて作製すること、あるいは、油相及び水相を各々独立に、最も狭い部分の断面積が1μm〜1mmであるマイクロ流路に通過させた後、各相を組み合わせて混合するマイクロミキサーを用いた方法をとることが好ましい。
本発明におけるセラミド類縁体含有粒子の粒径は、市販の粒度分布計等で計測することができる。本発明の外用組成物が、例えばエマルションであるとき、エマルションの粒度分布測定法としては、光学顕微鏡法、共焦点レーザー顕微鏡法、電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法、静的光散乱法、レーザー回折法、動的光散乱法、遠心沈降法、電気パルス計測法、クロマトグラフィー法、超音波減衰法等が知られており、それぞれの原理に対応した装置が市販されている。
【0037】
本発明における粒径範囲および測定の容易さから、分散粒子の粒子径測定では動的光散乱法が好ましい。動的光散乱を用いた市販の測定装置としては、ナノトラックUPA(日機装(株))、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))等が挙げられる。
本発明における粒子径は、前記動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)を用いて測定した値とし、具体的には、以下のよう計測した値を採用する。
前記粒子径の測定方法は、油成分の濃度が1質量%になるように純水で希釈を行い、石英セルを用いて測定を行う。粒子径は、試料屈折率として1.600、分散媒屈折率として1.333(純水)、分散媒の粘度として純水の粘度を設定した時のメジアン径として求めることができる。
【0038】
本発明の外用組成物におけるセラミド類縁体の含有量としては、0.01質量%〜5質量%の範囲であることが、使用者の感触の観点から好ましく、0.1質量%〜3質量%の範囲であることより好ましい。
【0039】
(セラミド類縁体とは異なる油成分)
本発明の外用剤は、前記水溶性高分子を含有する水相に、前記セラミド類縁体含有粒子を分散させてなるものであるが、さらに、セラミド類縁体とは異なる油成分(本明細書においては、適宜、他の油成分と称する)を含有し、該油成分中に、前記セラミド類縁体を含む形態を取ることもできる。
なお、本発明における油成分とは、セラミド類縁体と分離しない油成分を指す。
ここで併用されるセラミド類縁体とは異なる油成分には特に制限はなく、外用組成物の使用目的に応じて添加される有効成分としての油成分であってもよく、また、分散安定性や皮膚に対する使用感の改善や組成物の物性制御のために用いられる油成分であってもよい。
以下、本発明に使用しうる他の油成分について述べる。
【0040】
(ステノン、ステロール)
本発明の外用組成物には、他の油成分として、ステノン、ステロールの少なくとも一つを含むことができる。この化合物は、セラミド類縁体含有粒子の分散安定性向上に有用である。
本発明において他の油成分として用いうるステノンの具体例として、例えば、以下のものを挙げることができる。
【0041】
【化6】

【0042】
また、ステロールの具体例として、例えば、以下のものを挙げることができる。
【0043】
【化7】

【0044】
ステノン化合物やステロール化合物は、合成によっても、市販品としても入手可能である。
例えば、フィトステノンは、東洋発酵社製UNIFETHとして、PEO−ステロールは、日光ケミカルズ社製NIKKOL BPS−20として入手可能である。
前記ステノン化合物、及び前記ステロール化合物は、それぞれ単独種でまたは複数種用いてもよい。
前記ステノン化合物のみを用いる場合の、ステノン化合物を油成分として添加する場合には、外用組成物に含まれる油相成分の全質量に対する含有量は、分散粒子の分散安定性の観点から、30質量%〜70質量%であることが好ましく、40質量%〜60質量%であることがより好ましい。
【0045】
(有効成分としての油成分)
本発明外用組成物を化粧品用途、医薬品用途に用いる場合は、水性媒体、特に水に不溶または難溶の、化粧品用機能性材料や医薬品用機能性材料を油成分として含むことが好ましい。本発明の外用組成物が、例えば、後述するアスタキサンチン等の機能性油成分を含むことで、本発明の外用組成物に優れたエモリエント効果、皮膚の老化防止効果や酸化防止効果を付与することができる。
本発明で使用することのできる油成分としては、水性媒体、特に水に不溶または難溶の、油性媒体に溶解する成分であれば、特に限定は無いが、カロチノイド類、トコフェロール等の油溶性ビタミンを含むラジカル捕捉剤、またココナッツ油等の油脂類が好ましく用いられる。
なお、水性媒体に不溶とは、水性媒体100mLに対する溶解度が、25℃において、0.01g以下であることをいい、水性媒体に難溶とは、水性媒体100mLに対する溶解度が、25℃において、0.01gを超え0.1g以下であることをいう。
【0046】
(カロチノイド類)
前記油成分としては、天然色素を含むカロチノイド類を好ましく用いることができる。
本発明の外用組成物に使用可能なカロチノイド類は、黄色から赤のテルペノイド類の色素であり、植物類、藻類、及びバクテリア等の天然物のものを含む。
また、天然由来のものに限定されず、常法に従って得られるものであればいずれのものも、本発明におけるカロチノイドに含まれる。例えば、後述のカロチノイド類のカロチン類の多くは合成によっても製造されており、市販のβ−カロチンの多くは合成により製造されている。
【0047】
カロチノイド類としては、炭化水素類(カロチン類)及びそれらの酸化アルコール誘導体類(キサントフィル類)が挙げられる。
カロチノイド類としては、アクチニオエリスロール、アスタキサンチン、ビキシン、カンタキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、β−8’−アポ−カロテナール(アポカロテナール)、β−12’−アポ−カロテナール、α−カロチン、β−カロチン、”カロチン”(α−及びβ−カロチン類の混合物)、γ−カロチン、β−クリプトキサンチン、ルテイン、リコピン、ビオレリトリン、ゼアキサンチン、及びそれらのうちヒドロキシル又はカルボキシルを含有するもののエステル類が挙げられる。
【0048】
カロチノイド類の多くは、シス及びトランス異性体の形で天然に存在するが、合成物はしばしばラセミ混合物である。
カロチノイド類は一般に植物素材から抽出することができる。これらのカロチノイド類は種々の機能を有しており、例えば、マリーゴールドの花弁から抽出するルテインは家禽の餌の原料として広く使用され、家禽の皮フ及び脂肪並びに家禽が産む卵に色を付ける機能がある。
【0049】
本発明において、特に好ましく用いられるカロチノイド類としては、酸化防止効果、抗炎症効果、皮膚老化防止効果、美白効果などを有し、黄色から赤色の範囲の着色料として知られるアスタキサンチン及びアスタキサンキチンのエステル等の誘導体の少なくとも一方(以下、「アスタキサンチン類」と総称する。)である。
【0050】
前記天然物とは、例えば、赤色酵母ファフィア、緑藻ヘマトコッカス、海洋性細菌、オキアミ等が挙げられる。また、その培養物からの抽出物等からの抽出物を挙げることができる。
前記アスタキサンチン類は、アスタキサンチン類を含有する前記他の天然物から分離・抽出(さらに必要に応じて適宜精製)したアスタキサンチン含有オイルとして、本発明のエマルション組成物に含まれていてもよい。
前記アスタキサンチン類としては、ヘマトコッカス藻から抽出されたもの(ヘマトコッカス藻抽出物ともいう。)が、品質、生産性の点から特に好ましい。
【0051】
前記アスタキサンチン及びそのエステル(アスタキサンチン類)の少なくとも一方は、アスタキサンチン及びそのエステルの少なくとも一方を含有する天然物から分離・抽出したアスタキサンチン含有オイルとして、本発明の外用組成物に含まれていてもよい。このようなアスタキサンチン含有オイルとして、例えば、赤色酵母ファフィア、緑藻ヘマトコッカス、海洋性細菌等を培養し、その培養物からの抽出物、南極オキアミ等からの抽出物を挙げることができる。
ヘマトコッカス藻抽出物(ヘマトコッカス藻由来色素)は、オキアミ由来の色素や、合成されたアスタキサンチンとはエステルの種類、及び、その含有率の点で異なることが知られている。
【0052】
本発明において用いることができるアスタキサンチン類は、前記抽出物、また更にこの抽出物を必要に応じて適宜精製したものでもよく、また合成品であってもよい。
前記アスタキサンチン類としては、ヘマトコッカス藻から抽出されたもの(ヘマトコッカス藻抽出物ともいう。)が、品質、生産性の点から特に好ましい。
【0053】
本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物の由来としては、具体的には、ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis)、ヘマトコッカス・ラキュストリス(Haematococcus lacustris)、ヘマトコッカス・カペンシス(Haematococcus capensis)、ヘマトコッカス・ドロエバゲンシス(Haematococcus droebakensis)、ヘマトコッカス・ジンバビエンシス(Haematococcus zimbabwiensis)等が挙げられる。
【0054】
また、本発明において、広く市販されているヘマトコッカス藻抽出物を用いることができ、例えば、武田紙器(株)製のASTOTS−S、同−2.5 O、同−5 O、同−10 O等、富士化学工業(株)製のアスタリールオイル50F、同 5F等、東洋酵素化学(株)製のBioAstin SCE7等として入手できる。
【0055】
本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物中のアスタキサチン類の色素純分としての含有量は、外用組成物製造時の取り扱いの観点から、好ましくは0.001〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜25質量%である。
なお、本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物は、特開平2−49091号公報記載の色素同様色素純分としてはアスタキサンチンもしくはそのエステル体を含むが、エステル体を、一般的には50モル%以上、好ましくは75モル%以上、より好ましくは90%モル以上含むものである。
さらに詳細な説明は「アスタキサンチンの化学」、平成17年、インターネット〈URL:http://www.astaxanthin.co.jp/chemical/basic.htm〉に記載されている。
【0056】
(油脂類)
他の油成分として用いられる油脂類としては、常温で、液体の油脂(脂肪油)及び固体の油脂(脂肪)が挙げられる。
前記液体の油脂としては、例えばオリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、アボガド油、月見草油、タートル油、トウモロコシ油、ミンク油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルチミン酸グリセリン、サラダ油、サフラワー油(ベニバナ油)、パーム油、ココナッツ油、ピーナッツ油、アーモンド油、ヘーゼルナッツ油、ウォルナッツ油、グレープシード油等が挙げられる。
また、前記固体の油脂としては、牛脂、硬化牛脂、牛脚脂、牛骨脂、ミンク油、卵黄油、豚脂、馬脂、羊脂、硬化油、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム硬化油、モクロウ、モクロウ核油、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
上記の中でも、外用組成物の分散粒子径、安定性の観点から、中鎖脂肪酸トリグリセライドである、ココナッツ油が、好ましく用いられる。
【0057】
本発明において、前記油脂は市販品を用いることができる。また、本発明において、前記油脂は1種単独で用いても混合して用いてもよい。
【0058】
本発明に使用しうる他の油成分であるフェノール性水酸基を有する化合物として、ポリフェノール類(例えば、カテキン)、グアヤク脂、ノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA)、没食子酸エステル類、BHT(ブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、ビタミンE類およびビスフェノール類等が挙げられる。没食子酸エステル類として、没食子酸プロピル、没食子酸ブチルおよび没食子酸オクチルが挙げられる。
【0059】
また、アミン系化合物として、フェニレンジアミン、ジフェニル−p−フェニレンジアミンまたは4−アミノ−p−ジフェニルアミンが挙げられ、ジフェニル−p−フェニレンジアミンまたは4−アミノ−p−ジフェニルアミンがより好ましい。
【0060】
アスコルビン酸、エリソルビン酸の油溶化誘導体として、ステアリン酸L−アスコルビルエステル、テトライソパルミチン酸L−アスコルビルエステル、パルミチン酸L−アスコルビルエステル、パルミチン酸エリソルビルエステル、テトライソパルミチン酸エリソルビルエステル、などが挙げられる。
【0061】
以上の中でも、安全性、及び、酸化防止の機能に優れる観点から、特にビタミンE類が好ましく用いられる。
ビタミンE類としては、特に限定されず、例えばトコフェロール及びその誘導体からなる化合物群、並びにトコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群から選ばれるものを挙げることができる。これらは単独で用いても、複数併用して用いてもよい。またトコフェノール及びその誘導体からなる化合物群とトコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群からそれぞれ選択されたものを組み合わせて使用してもよい。
【0062】
トコフェロール及びその誘導体からなる化合物群としては、dl−α−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸−dl−α−トコフェロール、リノール酸−dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール等が含まれる。これらの内で、dl−α−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、及び、これらの混合物(ミックストコフェロール)がより好ましい。また、トコフェロール誘導体としては、これらの酢酸エステルが好ましく用いられる。
トコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群としては、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール等が含まれる。また、トコトリエノール誘導体としては、これらの酢酸エステルが好ましく用いられる。トコトリエノールは麦類、米糠、パーム油等に含まれるトコフェロール類似化合物で、トコフェロールの側鎖部分に二重結合が3個含まれ、優れた酸化防止性能を有する。
【0063】
これらのビタミンE類は、油溶性酸化防止剤として本外用組成物の特に油相に含まれていることが、効果的に油成分の酸化防止機能を発揮することができるため好ましい。上記ビタミンE類の中でも酸化防止効果の観点から、トコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群から選択されたものを少なくとも1種を含有することが更に好ましい。
【0064】
本発明の外用組成物において、このような他の油成分を用いる場合の含有量としては、外用組成物の医薬品、化粧料への応用を考慮すれば、分散粒子径・乳化安定性の観点から、好ましくは0.1質量%〜50質量%、より好ましくは0.2質量%〜25質量%、更に好ましくは0.5質量%〜10質量%である。
油成分の含有量を前記0.1質量%以上とすると、有効成分の効能を十分に発揮できることから、外用組成物の医薬品、化粧品へ応用し易くなる。一方、50質量%以下であると、分散粒子径の増大や乳化安定性の悪化を抑制し、安定な組成物が得られる。
【0065】
[界面活性剤]
本発明の外用組成物は、油相に界面活性剤を含有してもよい。
上述したように、他の油成分として、前記特定ステノン化合物、または前記特定ステロール化合物を油相に含有することで、油相分散粒子の乳化安定性を向上することができるが、本発明においては、必ずしも他の油成分を必要とせず、油相を構成する成分としてセラミド類縁体含有粒子のみを用いる場合もあり、そのような場合には、界面活性剤を用いることが分散粒子の乳化安定性、分散安定性の向上に有用である。なお、界面活性剤を用いる場合でも、特定ステノン化合物や特定ステロール化合物を用いることができることはいうまでもない。
【0066】
本発明における界面活性剤としては、外用組成物中の油相/水相の界面張力を大きく下げることができ、その結果、粒子径を細かくすることができる点で好ましい。
本発明における界面活性剤としては、乳化安定性の観点から、HLB8以上のものが好ましく、10以上のものがより好ましく、12以上のものが特に好ましい。またHLB値の上限値は、特に限定されないが、一般的には、20以下であり、18以下が好ましい。
【0067】
ここで、HLBは、通常界面活性剤の分野で使用される親水性−疎水性のバランスで、通常用いる計算式、例えば川上式等が使用できる。本発明においては、下記の川上式を採用する。
【0068】
HLB=7+11.7log(M/M
ここで、Mは親水基の分子量、Mは疎水基の分子量である。
【0069】
また、カタログ等に記載されているHLBの数値を使用してもよい。
また、上記の式からも分かるように、HLBの加成性を利用して、任意のHLB値の界面活性剤を得ることができる。
【0070】
本発明で使用することのできる界面活性剤には、カチオン性、アニオン性、両性、非イオン性の各界面活性剤を挙げることができ、特に制限は無いが、非イオン性界面活性剤が好ましい。非イオン性界面活性剤の例としては、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、およびショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。より好ましくは、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである。また、上記の界面活性剤は蒸留などで高度に精製されたものであることは必ずしも必要ではなく、反応混合物であってもよい。
【0071】
本発明に用いられる、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、平均重合度が2以上、好ましくは6〜15、より好ましくは8〜10のポリグリセリンと、炭素数8〜18の脂肪酸、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、およびリノール酸とのエステルである。ポリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノパルミチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル等が挙げられる。
これらの中でも、より好ましくは、デカグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB=12)、デカグリセリンモノステアリン酸エステル(HLB=12)、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル(HLB=13)、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル(HLB=14)、デカグリセリンモノラウリン酸エステル(HLB=16)などである。
これらのポリグリセリン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0072】
市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL DGMS,NIKKOL DGMO−CV,NIKKOL DGMO−90V,NIKKOL DGDO,NIKKOL DGMIS,NIKKOL DGTIS,NIKKOL Tetraglyn 1−SV,NIKKOL Tetraglyn 1−O,NIKKOL Tetraglyn 3−S,NIKKOL Tetraglyn 5−S,NIKKOL Tetraglyn 5−O,NIKKOL Hexaglyn 1−L,NIKKOL Hexaglyn 1−M,NIKKOL Hexaglyn 1−SV,NIKKOL Hexaglyn 1−O,NIKKOL Hexaglyn 3−S,NIKKOL Hexaglyn 4−B,NIKKOL Hexaglyn 5−S,NIKKOL Hexaglyn 5−O,NIKKOL Hexaglyn PR−15,NIKKOL Decaglyn 1−L,NIKKOL Decaglyn 1−M,NIKKOL Decaglyn 1−SV,NIKKOL Decaglyn 1−50SV,NIKKOL Decaglyn 1−ISV,NIKKOL Decaglyn 1−O,NIKKOL Decaglyn 1−OV,NIKKOL Decaglyn 1−LN,NIKKOL Decaglyn 2−SV,NIKKOL Decaglyn 2−ISV,NIKKOL Decaglyn 3−SV,NIKKOL Decaglyn 3−OV,NIKKOL Decaglyn 5−SV,NIKKOL Decaglyn 5−HS,NIKKOL Decaglyn 5−IS,NIKKOL Decaglyn 5−OV,NIKKOL Decaglyn 5−O−R,NIKKOL Decaglyn 7−S,NIKKOL Decaglyn 7−O,NIKKOL Decaglyn 10−SV,NIKKOL Decaglyn 10−IS,NIKKOL Decaglyn 10−OV,NIKKOL Decaglyn 10−MAC,NIKKOL Decaglyn PR−20,
【0073】
三菱化学フーズ(株)社製リョートーポリグリエステル、L−7D、L−10D、M−10D、P−8D、SWA−10D、SWA−15D、SWA−20D、S−24D、S−28D、O−15D、O−50D、B−70D、B−100D、ER−60D、LOP−120DP、DS13W、DS3、HS11、HS9、TS4、TS2、DL15、DO13、太陽化学(株)社製サンソフトQ−17UL、サンソフトQ−14S、サンソフトA−141C、理研ビタミン(株)社製ポエムDO−100、ポエムJ−0021などが挙げられる。
上記の中でも、好ましくは、NIKKOL Decaglyn 1−L,NIKKOL Decaglyn 1−M,NIKKOL Decaglyn 1−SV,NIKKOL Decaglyn 1−50SV,NIKKOL Decaglyn 1−ISV,NIKKOL Decaglyn 1−O,NIKKOL Decaglyn 1−OV,NIKKOL Decaglyn 1−LN,リョートーポリグリエステル L−7D、L−10D、M−10D、P−8D、SWA−10D、SWA−15D、SWA−20D、S−24D、S−28D、O−15D、O−50D、B−70D、B−100D、ER−60D、LOP−120DPである。
【0074】
本発明に用いられる、ソルビタン脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が8以上のものが好ましく、12以上のものがより好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルの好ましい例としては、モノカプリル酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セスキテアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。
これらのソルビタン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL SL−10,SP−10V,SS−10V,SS−10MV,SS−15V,SS−30V,SI−10RV,SI−15RV,SO−10V,SO−15MV,SO−15V,SO−30V,SO−10R,SO−15R,SO−30R,SO−15EX,第一工業製薬(株)社製の、ソルゲン30V、40V、50V、90、110、花王(株)社製の、レオドールAS−10V、AO−10V、AO−15V、SP−L10、SP−P10、SP−S10V、SP−S30V、SP−O10V、SP−O30Vなどが挙げられる。
【0075】
本発明に用いられる、ショ糖脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が12以上のものが好ましく、12〜20のものがより好ましい。
ショ糖脂肪酸エステルの好ましい例としては、ショ糖ジオレイン酸エステル、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖ジパルミチン酸エステル、ショ糖ジミリスチン酸エステル、ショ糖ジラウリン酸エステル、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステル等が挙げられ、これらの中でも、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステルがより好ましい。
本発明においては、これらのショ糖脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0076】
市販品としては、例えば、三菱化学フーズ(株)社製リョートーシュガーエステル S−070、S−170、S−270、S−370、S−370F、S−570、S−770、S−970、S−1170、S−1170F、S−1570、S−1670、P−070、P−170、P−1570、P−1670、M−1695、O−170、O−1570、OWA−1570、L−195、L−595、L−1695、LWA−1570、B−370、B−370F、ER−190、ER−290、POS−135、第一工業製薬(株)社製の、DKエステルSS、F160、F140、F110、F90、F70、F50、F−A50、F−20W、F−10、F−A10E、コスメライクB−30、S−10、S−50、S−70、S−110、S−160、S−190、SA−10、SA−50、P−10、P−160、M−160、L−10、L−50、L−160、L−150A、L−160A、R−10、R−20、O−10、O−150等が挙げられる。
上記の中で、好ましくは、リュートーシュガーエステルS−1170、S−1170F、S−1570、S−1670、P−1570、P−1670、M−1695、O−1570、L−1695、DKエステルSS、F160、F140、F110、コスメライクS−110、S−160、S−190、P−160、M−160、L−160、L−150A、L−160A、O−150である。
【0077】
本発明に用いられるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が8以上のものが好ましく、12以上のものがより好ましい。またポリオキシエチレンのエチレンオキサイドの長さ(付加モル数)としては、2〜100が好ましく、4〜50がより好ましい。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ポリオキシエチレンモノカプリル酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノラウリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンセスキステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレントリステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンイソステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンセスキイソステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンセスキオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレントリオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。
これらのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0078】
市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL TL−10、NIKKOL TP−10V、NIKKOL TS−10V、NIKKOL TS−10MV、NIKKOL TS−106V、NIKKOL TS−30V、NIKKOL TI−10V、NIKKOL TO−10V、NIKKOL TO−10
MV、NIKKOL TO−106V、NIKKOL TO−30V、花王(株)社製の、レオドールTW−L106、TW−L120、TW−P120、TW−S106V、TW−S120V、TW−S320V、TW−O106V、TW−O120V、TW−O320V、TW−IS399C、レオドールスーパーSP−L10、TW−L120、第一工業製薬(株)社製の、ソルゲンTW−20、TW−60V、TW−80V等が挙げられる。
【0079】
本発明には上記の水溶性非イオン性界面活性剤と併用してレシチンを用いることができる。本発明に用いられるレシチンは、グリセリン骨格と脂肪酸残基及びリン酸残基を必須構成成分とし、これに、塩基や多価アルコール等が結合したもので、リン脂質とも称されるものである。
レシチンは、分子内に親水基と疎水基を有しているため、従来から、食品、医薬品、化粧品分野で、広く乳化剤として使用されている。
【0080】
産業的にはレシチン純度60%以上のものがレシチンとして利用されており、本発明でも利用できるが、微細な油滴粒径の形成及び機能性油成分の安定性の観点から、好ましくは一般に高純度レシチンと称されるものであり、これはレシチン純度が80%以上、より好ましくは90%以上のものである。
【0081】
レシチンとしては、植物、動物及び微生物の生体から抽出分離された従来公知の各種のものを挙げることができる。
このようなレシチンの具体例としては、例えば、大豆、トウモロコシ、落花生、ナタネ、麦等の植物や、卵黄、牛等の動物及び大腸菌等の微生物等から由来する各種レシチンを挙げることができる。
このようなレシチンを化合物名で例示すると、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルメチルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ビスホスアチジン酸、ジホスファチジルグリセリン(カルジオリピン)等のグリセロレシチン;スフィンゴミエリン等のスフィンゴレシチン等を挙げることができる。
また、本発明においては、上記の高純度レシチン以外にも、水素添加レシチン、酵素分解レシチン、酵素分解水素添加レシチン、ヒドロキシレシチン等を使用することができる。本発明で用いることができるこれらのレシチンは、単独又は複数種の混合物の形態で用いることができる。
【0082】
本発明の外用組成物における前記界面活性剤の量は、界面活性剤以外の油相成分の全質量(セラミド類縁体含有粒子と他の油成分との総量)に対し、質量基準で0.5倍量を超え、且つ、リン脂質量に対して、質量基準で5倍量を超える量が好ましい。前記界面活性剤量が、界面活性剤以外の油相成分の全質量に対して0.5倍量以上とすることにより微細な粒子径の乳化物を得ることができ、またリン脂質量に対して5倍以上とすることにより乳化安定性を損ないにくくすることができる。このような界面活性剤の量は、特に、アスコルビン酸、クエン酸、又はそれらの塩等が本組成物中に同時に存在する場合に、乳化安定性を顕著に良好なものとすることができる。
界面活性剤以外の油相成分の全質量に対する前記界面活性剤量は、微細な粒子径を得るために、質量基準で0.5倍量を超えることが好ましく、2倍量以下がより好ましく、1.5倍量以下がさらに好ましく、1倍量以下が特に好ましい。前記界面活性剤量を2倍量以下とすることにより、泡立ちがひどくなる等の問題がなくなる傾向となる点で好ましい。
また、リン脂質量に対して界面活性剤量は、乳化安定性を良好とするために、質量基準で5倍量を超えることが好ましく、50倍量以下がより好ましく、30倍量以下がさらに好ましく、15倍量以下が特に好ましい。前記界面活性剤量が50倍量以下とすることにより、粒子径の微細化、乳化安定性に適切な量とすることができ、また、組成物の泡立ち等の問題発生の防止を抑制する傾向となり好ましい。
【0083】
前記界面活性剤の添加量は、外用組成物に対して、0.5〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましく、2〜15質量%が更に好ましい。
前記界面活性剤量の添加量が上記範囲において、油相/水相間の界面張力を下げ易くなり、安定性が向上するとともに、界面活性剤添加による泡立ちを抑制しうる点で好ましい。
【0084】
[水溶性有機溶媒]
本発明の外用組成物は、水溶性有機溶媒を含有することが好ましい。
本発明における水溶性有機溶媒は、天然成分を含む油相として、後述する水性溶液との混合に用いられる。この水性有機溶媒は同時に、天然成分を抽出する抽出液の主成分である。即ち、本発明において天然成分は、水溶性有機溶媒を主成分とする抽出液へ抽出された状態で、水性溶液との混合に使用される。
本発明に用いられる水溶性有機溶媒とは、水に対する25℃での溶解度が10質量%以上の有機溶媒を指す。水に対する溶解度は出来上がった乳化物または分散物の安定性の観点から30質量%以上が好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
水溶性有機溶媒は、単独で用いてもよく、複数の水溶性有機溶媒の混合溶媒でもよい。また、水との混合物として用いてもよい。水との混合物を用いる場合には、上記水溶性有機溶媒は、少なくとも50容量%以上含まれていることが好ましく、70容量%以上であることがより好ましい。
なお、水溶性有機溶媒は、油相成分を混合し、油相を調製するために好ましく用いられるが、本明細書における「油成分」には包含されない。
【0085】
このような水溶性有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−ブタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸メチル、アセト酢酸メチル、N−メチルピロリドン、ジメチルスルフォキシド、エチレングリコール、1,3ブタンジオール、1,4ブタンジオール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等及びそれらの混合物を挙げられる。これらの中でも、食品への用途に限定した場合、エタノール、プロピレングリコール、又はアセトンが好ましく、エタノール、又はエタノールと水との混合液が特に好ましい。
【0086】
[多価アルコール]
本発明の外用組成物は、粒子径、安定性、及び防腐性の観点から多価アルコールを含有することが好ましい。
多価アルコールは、保湿機能や粘度調整機能等を有している。また、多価アルコールは、水と油脂成分との界面張力を低下させ、界面を広がりやすくし、微細で、かつ、安定な微粒子を形成しやすくする機能も有している。
以上より、外用組成物が多価アルコールを含有することは、外用組成物の分散粒子径をより微細化でき、かつ該粒子径が微細な粒子径の状態のまま長期に亘り安定して保持できるとの観点から好ましい。
また、多価アルコールの添加により、外用組成物の水分活性を下げることができ、微生物の繁殖を抑えることができる。
【0087】
本発明に使用できる前記多価アルコールとしては、二価以上のアルコールであれば特に限定されず用いることができる。
前記多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、マルチトール、還元水あめ、蔗糖、ラクチトール、パラチニット、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、キシロース、グルコース、ラクトース、マンノース、マルトース、ガラクトース、フルクトース、イノシトール、ペンタエリスリトール、マルトトリオース、ソルビタン、トレハロース、澱粉分解糖、澱粉分解糖還元アルコール等が挙げられ、これらを、単独又は複数種の混合物の形態で用いることができる。
【0088】
また、多価アルコールとしては、その1分子中における水酸基の数が、3個以上であるものを用いるのが好ましい。これにより、水系溶媒と油脂成分との界面張力をより効果的に低下させることができ、より微細で、かつ、安定な微粒子を形成させることができる。その結果、食品用途の場合は腸管吸収性を、経皮医薬品用途や化粧品用途の場合は皮膚吸収性をより高いものとすることができる。
【0089】
上述したような条件を満足する多価アルコールの中でも、特に、グリセリンを用いた場合、外用組成物の油的粒子径がより小さくなり、かつ該粒子径が小さいまま長期に亘り安定して保持されるため、好ましい。
【0090】
前記多価アルコールの含有量は、前述の粒子径、安定性、防腐性に加えて、外用組成物の粘度の観点から、外用組成物に対して10〜60質量%が好ましく、より好ましくは20〜55質量%、さらに好ましくは30〜50質量%である。
多価アルコールの含有量が10質量%以上であると、油脂成分の種類や含有量等によっても、十分な保存安定性が得られ易い点で好ましい。一方、多価アルコールの含有量が60質量%以下であると、最大限の効果が得られ、外用組成物の粘度が高くなるのを抑え易い点で好ましい。
【0091】
本発明の外用組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、例えば、種々の薬効成分、防腐剤、着色剤など、通常、外用組成物に使用される他の添加物を併用することができる。
【0092】
〔その他の成分〕
上記の成分の他に必要に応じて、皮膚外用剤などの外用組成物に使用される成分を、目的に応じて適宜用いることができる。
このような化合物としては、例えば、グリシンベタイン・キシリトール・トレハロース・尿素・中性アミノ酸・塩基性アミノ酸等の保湿剤、アラントイン・酢酸トコフェロール等の薬効剤、セルロースパウダー・ナイロンパウダー・架橋型シリコーン末・架橋型メチルポリシロキサン・多孔質セルロースパウダー・多孔質ナイロンパウダー等の有機粉体、無水シリカ・酸化亜鉛・酸化チタン等の無機粉体、メントール・カンファー等の清涼剤などの他、植物エキス、pH緩衝剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、香料、殺菌剤、色素等が挙げられる。
【0093】
前記外用組成物において、セラミド類縁体含有粒子を前記した油相に他の油成分とともに用いる場合、油相の粒子径は、前述した外用組成物の成分による因子以外に、後述する外用組成物の製造方法における攪拌条件(剪断力・温度・圧力)やマイクロミキサーの使用条件、油相と水相比率、などの要因によって目的とする0.2μm以下の微細化された油相粒子(セラミド類縁体含有粒子を含む)を得ることができる。
【0094】
<外用組成物の製造方法>
本発明の外用組成物は、セラミド類縁体含有粒子と水溶性高分子とを含んで構成され、一般的には、水溶性高分子を含有する水相中に、セラミド類縁体含有粒子或いは、他の油成分とセラミド類縁体とで形成される油相が分散してなる形態をとる。
このような分散物を製造する方法としては、セラミド類縁体を含有する油相、或いは、セラミド類縁体と他の油成分とを含む油相と、水溶性高分子を含有する水相とを、それぞれ調製する工程、及び、調製された油相及び水相を乳化させることで、水溶性高分子を含有する水相中においてセラミド類含有粒子を形成する工程を含むことを特徴とする。
このとき、水溶性高分子を含有する水相の粘度は30mPa・s以下であることが、セラミド類縁体含有粒子の微粒子化の観点から好ましい。
【0095】
この乳化によるセラミド類縁体含有粒子の調製工程においては、前記それぞれべつに調製された油相及び水相を各々独立に、最も狭い部分の断面積が1μm〜1mmであるマイクロ流路に通過させた後、各相を組み合わせて混合することが、微粒子化の観点から好ましい。調製温度は、使用する溶媒の沸点に応じて変更可能であるが、通常、20℃〜80℃で実施することが好ましい。より好ましくは、20℃〜60℃である。また、先に述べたように、別々に調製した油相と水相とを混合し、例えば、100MPa以上といった高い剪断力を付加する高圧乳化法を適用する方法も好ましく挙げられる。
このようにして、体積平均粒子径が1nm〜200nmのセラミド類縁体含有粒子が分散してなる外用組成物を得ることができる。
【0096】
本発明の外用組成物の製造方法としては、例えば、a)水性媒体(水等)を用いて水溶性高分子を含有する水相を調製し、b)油相全質量に対して少なくとも、1質量%のセラミド類縁体を含み、所望により、水溶性有機溶媒、前記特定ステノン化合物等及び他の油成分(カロチノイド等)を混合して油相を調製し、c)前記油相と、前記水相とを、マイクロミキサーを用いて、後に詳述する方法にて混合して、乳化分散を行い、体積平均粒子径が1nm〜200nmの分散粒子を含む外用組成物(エマルション)を得るステップが挙げられる。
本発明の外用組成物を粉末状態で得たい場合は、上記により得られたエマルション状態のセラミド分散物を噴霧乾燥等により乾燥させるステップを追加することで、粉末状態の外用組成物を得ることができる。
前記製造方法における油相、水相に含有される成分は、前述の本発明の外用組成物の構成成分と同様であり、好ましい例及び好ましい量も同様であり、好ましい組合せがより好ましい。
【0097】
前記乳化分散における油相と水相との比率(質量)は、特に限定されるものではないが、油相/水相比率(質量%)として0.1/99.9〜50/50が好ましく、0.5/99.5〜30/70がより好ましく、1/99〜20/80が更に好ましい。
油相/水相比率を上記範囲とすることにより、有効成分を十分に含み、実用上十分な乳化安定性が得られるため好ましい。
【0098】
[マイクロミキサー]
本発明の外用組成物の製造方法においては、本発明に規定する0.2μm以下のセラミド類縁体含有粒子を安定に含む目的で、油相と、水相とを、各々独立に、最も狭い部分の断面積が1μm〜1mmであるマイクロ流路に通過させた後、各相を組み合わせて混合する製造方法をとることが好ましい。
油相と水相との前記混合は、より微小な分散粒子を得るとの観点から、対向流衝突による混合であることが好ましい。
対向流衝突により混合させる最も適切な装置は、対抗衝突型マイクロミキサーである。マイクロミキサーは、主に2つの異なる液を微小空間中で混合するもので、一方の液が機能性油成分を含有する有機溶媒相であり、もう一方が水性溶液とする水相である。
マイクロ化学プロセスの一つである粒径が小さなエマルション調製にマイクロミキサーを適用した場合、比較的低エネルギーで発熱が少なく、通常の攪拌乳化分散方式や高圧ホモジナイザー乳化分散に比べて、粒径が揃っていて、保存安定性にも優れる良好なエマルションまたはディスパージョンを得易い。熱劣化し易い天然成分を含む乳化に最適な方法である。
【0099】
マイクロミキサーを用いて乳化または分散する方法の概要は、水相と油相をそれぞれ微小空間に分け、それぞれの微小空間同士を接触、あるいは衝突させることにある。片方だけを微小空間に分け、もう一方がバルクであるような方法である、膜乳化法やマイクロチャネル乳化法とは明らかに異なるものであり、実際に片方だけを微小空間に分けても本発明のような効果は得られない。公知となっているマイクロミキサーとしては、種々の構造のものがある。マイクロ流路中の流れと混合に着目すると、層流を維持してミキシングする方法と、流れを乱して、すなわち乱流でミキシングする方法の2種を挙げることができる。層流を維持してミキシングする方法では、流路幅より流路深さの寸法を大きくとることで、2液の境界面積をなるべく大きくし、両層の厚さを薄くすることで混合の効率化を図っている。また、2液の入り口を多数に分割して交互に流す多層流にする方法も考案されている。
【0100】
一方、乱流でミキシングする方法では、それぞれの液を狭い流路に分けて比較的高速で流す方法が一般的である。アレイ化したマイクロノズルを用いて片方の液を、微小空間に導入されたもう一方の液中に噴出させる方法も考案されている。また、高速で流れる液同士を種々の手段を用いて強制的に接触させる方法は特に混合効果が良好である。前者の層流を用いた方法は一般に、できる粒子は大きいが比較的分布が揃ったものになるが、後者の乱流を用いた方法は、非常に微細なエマルションが得る可能性があり、安定性及び透明性の点では乱流を用いた方法が好ましい場合が多い。乱流を用いた方法としては、櫛歯型と衝突型が代表的なものである。前記櫛歯型マイクロミキサーとしては、IMM社製に代表されるように、2つの櫛歯状の流路が対面して交互に入り組むように配置された構造となっている。
【0101】
本発明においては、特開2004−33901号公報に示されるマイクロミキサーも好ましく用いることができる。
図2は、T字型マイクロリアクターによる混合機構の一例を示すT字型マイクロリアクターの概略断面図である。図3は、T字型マイクロリアクターによる混合機構の一例を示すT字型マイクロリアクターの概念図である。
図2には、T字型マイクロリアクターのT字型流路200の断面が示されている。T字型流路200は、流入口202aから矢印Dの方向に流入した流体と、流入口202bから矢印Eの方向に流入した流体は、T字型流路200の流路内中央部で衝突し、混合して微細な流体粒子となる。微細な流体粒子は、流出口204から矢印Fの方向へ流出する。このT字型マイクロリアクターは、流路の容積が小さいときには混合するのに有用である。
【0102】
図3には、他のT字型マイクロリアクターの流体混合機構(概念)300が示されている。図3に示す流体混合機構は、2つの流路302aと302bから流出した流体が互いに衝突・混合して、微細な流体粒となるものである。すなわち、流体は、一方で、矢印Gの方向に流路302aに流入し、矢印Hの方向に流出する。他方で、矢印Iの方向に流路302bに流入し、矢印Jの方向に流出する。流路302aと302bからそれぞれ流出した流体は、衝突し、混合して、矢印G〜Jの方向とおよそ直交する方向に飛散する。流路図3に記載した流体混合機構は、霧化等の手法により拡散させた流体を衝突・混合させるものである。この衝突・混合により、流体はより微細となり、大きな接触面を得ることができる。
【0103】
KMミキサーに代表される衝突型マイクロミキサーでは、運動エネルギーを利用して強制接触をはかる構造となっている。具体的には、長澤ら(「H.Nagasawa et al, Chem.Eng.Technol,28,No.3,324−330(2005)」、特開2005−288254号公報)によって開示された、中心衝突型マイクロミキサーが挙げられる。水相と有機溶媒相とを対向衝突させる方法は、混合時間が極めて短く、瞬時に油相滴が形成されるため、極めて微細なエマルションまたはディスパージョンを形成し易い。
【0104】
本発明において、衝突型マイクロミキサーでミクロ混合して乳化する場合、乳化時の温度(乳化温度)は、得られるエマルションの粒径均一性の観点からマイクロミキサーの前記別な微小空間の温度(マイクロミキサーのミクロ混合部の温度)を80℃以下としてミクロ混合することが好ましく、0℃〜80℃がより好ましく、5℃〜75℃が特に好ましい。前記乳化温度0℃以上とすることにより、分散媒の主体が水であるため、乳化温度管理でき好ましい。マイクロミキサーの前記微小空間の保温温度は100℃以下であることが好ましい。前記保温温度を100℃以下とすることにより、保温温度の管理が容易に制御でき、また、乳化性能に悪影響があるミクロな突沸現象を無くすことができる。前記保温温度は80℃以下の温度で制御することがさらに好ましい。
【0105】
マイクロミキサーの前記微小空間に分けられた油相、水相、及びマイクロミキサーの前記微小空間の保温温度は、水相及び油相に含まれる成分によっても異なるが、それぞれ独立に、0℃〜50℃が好ましく、5℃〜25℃が特に好ましい。マイクロミキサーの前記微小空間の保温温度と、マイクロミキサーの前記微小空間に分けられた油相および水相の保温温度と、マイクロミキサーの前記微小空間に分けられる前の油相および水相の保温温度(即ち、油相および水相供給タンクの保温温度)がそれぞれ異なっていてもよいが、同じ温度にする事が混合の安定性の点で好ましい。
【0106】
本発明において、マイクロミキサーの微小空間に分けられる前後の水相、油相、及びマイクロミキサーの前記微小空間及び前記別な微小空間の保温温度を室温より高くして、ミクロ混合して乳化した後は、マイクロミキサーにより得られた水中油滴型エマルションは採取後、冷却して常温にすることは特に好ましい。
【0107】
本発明におけるマイクロミキサーの微小空間(流路)の最も狭い部分の断面積は、1μm〜1mmであり、エマルション粒径の微細化および粒径分布のシャープネス化の観点から、500μm〜50,000μmが好ましい。
本発明における水相に用いるマイクロミキサーの微小空間(流路)の最も狭い部分の断面積は、混合安定性の観点から、1,000μm〜50,000μmが特に好ましい。
油相に用いるマイクロミキサーの微小空間(流路)の最も狭い部分の断面積は、エマルション粒径の微細化および粒径分布のシャープネス化の観点から、500μm〜20,000μmが特に好ましい。
【0108】
また、マイクロミキサーで乳化分散する場合、乳化分散時の油相と水相の流量としては、用いるマイクロミキサーによっても異なるが、エマルション粒径の微細化および粒径分布のシャープ化の観点から、水相の流量としては、10ml/min〜500ml/minが好ましく、20ml/min〜350ml/minがより好ましく、50ml/min〜200ml/minが特に好ましい。
油相の流量としては、エマルション粒子径の微細化および粒子径分布のシャープ化の観点から、1ml/min〜100ml/min が好ましく、さらには3ml/min〜50ml/minがより好ましく、5ml/min〜50ml/minが特に好ましい。
【0109】
両相の流量をマイクロチャンネルの断面積で割った値、すなわち両相の流速比(Vo/Vw)は、粒子の微細化とマイクロミキサーの設計上、0.05以上5以下の範囲であることが好ましい。但し、Voは水不溶性天然成分を含む有機溶媒相の流速であり、Vwは水相の流速である。また、流速比(Vo/Vw)が0.1以上3以下であることが、さらなる粒子の微細化の観点から最も好ましい範囲である。
【0110】
また、水相及び油相の送液圧力としては、水相と油相は0.030MPa〜5MPaと0.010MPa〜1MPaが好ましく、さらには、0.1MPa〜2MPaと0.02MPa〜0.5MPaがより好ましく、0.2MPa〜1MPaと0.04MPa〜0.2MPaが特に好ましい。前記水相の送液圧力を0.030MPa〜5MPaとすることにより、安定な送液流量を維持できる傾向となり、油相の送液圧力を0.010MPa〜1MPaとすることにより、均一な混合性が得られる傾向となり好ましい。
本発明において、前記流量、送液圧力及び保温温度はそれぞれ好ましい例の組み合せがより好ましい。
【0111】
次に、前記水相、油相がマイクロミキサーに導入され、水中油滴型エマルションとして排出されるまでの経路について、本発明におけるマイクロミキサーの一例としてマイクロデバイスの例(図1)を用いて説明する。
図1に示されるようにマイクロデバイス100は、それぞれが円柱状の形態の供給要素102、合流要素104および排出要素106により構成されている。
供給要素102の合流要素104に対向する面には、本発明における油相又は水相の流路としての断面が矩形の環状チャネル108および110が同心状に形成されている。供給要素102にはその厚さ(または高さ)方向に貫通してそれぞれの環状チャンネルに至るボア112および114が形成されている。
合流要素104には、その厚さ方向に貫通するボア116が形成されている。このボア116は、マイクロデバイス100を構成するために要素を締結した場合、供給要素102に対向する合流要素104の面に位置するボア116の端部120が環状チャンネル108に開口するようになっている。図示した態様では、ボア116は4つ形成され、これらが環状チャンネル108の周方向で等間隔に配置されている。
【0112】
合流要素104には、ボア116と同様にボア118が貫通して形成されている。ボア118も、ボア116と同様に、環状チャンネル110に開口するように形成されている。ボア118も環状チャンネル110の周方向で等間隔に配置され、かつ、ボア116とボア118が交互に位置するように配置されている。
合流要素104の排出要素106に対向する面122には、マイクロチャンネル124および126が形成されている。このマイクロチャンネル124または126の一端はボア116または118の開口部であり、他方の端部は、面122の中心128であり、全てのマイクロチャンネルはこの中心128に向かってボアから延在し、中心で合流している。マイクロチャンネルの断面は、例えば矩形であってよい。
【0113】
排出要素106は、その中心を通過して厚さ方向に貫通するボア130が形成されている。従って、このボアは、一端にて合流要素104の中心128に開口し、他端にてマイクロデバイスの外部に開口している。
本マイクロデバイス100では、ボア112および114の端部にてマイクロデバイス100の外部から供給される流体AおよびBは、それぞれボア112および114を経由して環状チャンネル108および110に流入する。
【0114】
環状チャンネル108とボア116が連通し、環状チャンネル108に流入した流体Aは、ボア116を経由してマイクロチャンネル124に入る。また、環状チャンネル110とボア118が連通し、環状チャンネル110に流入した流体Bは、ボア118を経由してマイクロチャンネル126に入る。流体AおよびBは、それぞれマイクロチャンネル124および126に流入した後、中心128に向かって流れて合流する。
前記合流した流体は、ボア130を経由してマイクロデバイスの外部にストリームCとして排出される。
【0115】
このようなマイクロデバイス100は、下記のような仕様とすることができる。
環状チャンネル108の断面形状、幅/深さ/直径:矩形、1.5/1.5/25mm
環状チャンネル110の断面形状、幅、深さ、直径:矩形、1.5/1.5/20mm
ボア112の直径、長さ:1.5/10mm(円形断面)
ボア114の直径、長さ:1.5/10mm(円形断面)
ボア116の直径、長さ:0.5/4mm(円形断面)
ボア118の直径、長さ:0.5/4mm(円形断面)
マイクロチャンネル124の断面形状、幅、深さ、長さ:矩形、断面積、
350μm/100μm/12.5mm/35000μm
マイクロチャンネル126の断面形状、幅、深さ、長さ:矩形、断面積、
50μm/100μm/10mm/5000μm
ボア130の直径、長さ:500μm、10mm(円形断面)
【0116】
水相と油相が衝突するマイクロチャンネル(図1中、124及び126)の寸法は、水相および油相の流量との関係において好ましい範囲が規定される。
【0117】
本発明の製造方法では、用いられた水溶性有機溶媒は、マイクロ流路を通して乳化または分散後、除去することが好ましい。溶媒を除去する方法としては、ロータリーエバポレーター、フラッシュエバポレーター、超音波アトマイザー等を用いた蒸発法、限外濾過膜、逆浸透膜等の膜分離法が知られているが、特に限外濾過膜法が好ましい。
【0118】
限外濾過(Ultra Filter:略してUF)とは、原液(水、高分子物質、低分子物質、コロイド物質等の混合水溶液)を加圧し、UF装置に注水することにより、原液を透過液(低分子物質)と濃縮液(高分子物質、コロイド物質)2系統の溶液に分離し、取り出すことができる装置である。
【0119】
限外濾過膜はロブ−スリーラーヤン法により作製される典型的な非対称膜である。使用される高分子素材は、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル−ポリアクリロニトリル共重合体、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、フッ化ビニリデン、芳香族ポリアミド、酢酸セルロースなどである。最近ではセラミックス膜も使われるようになってきた。限外濾過法では逆浸透法等と異なり、前処理をおこなわないので、膜面に高分子などが堆積するファウリングがおこる。そのため膜を薬品や温水で定期的に洗浄するのが普通である。このため膜素材は薬品に対する耐性や耐熱性が求められる。限外濾過膜の膜モジュールは平膜型、管状型、中空糸型、スパイラル型と各種ある。限外濾過膜の性能指標は分画分子量であり、これが1,000〜300,000まで各種の膜が市販されている。市販の膜モジュールとしては、マイクローザーUF(旭化成ケミカルズ(株))、キャピラリー型エレメントNTU−3306(日東電工(株))等があるがこれに限定されるものではない。
【0120】
本発明にかかる乳化物からの溶媒除去には、膜の材質は溶媒耐性の観点から、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、芳香族ポリアミドが特に好ましい。膜モジュールの形態としては、実験室スケールでは平膜が主に用いられるが工業的には中空糸型、スパイラル型が用いられるが、中空糸型が特に好ましい。また、分画分子量は有効成分の種類によって異なるが、通常、5,000〜100,000の範囲のものが用いられる。
操作温度は0℃〜80℃まで可能であるが、有効成分の劣化を考慮すると10〜40℃の範囲が特に好ましい。
【0121】
ラボスケールの限外濾過装置としては、平膜型モジュールを用いる、ADVANTEC−UHP(アドバンテック(株))、フロータイプラボテストユニットRUM−2(日東電工(株))等がある。工業的にはそれぞれの膜モジュールを必要能力に応じた大きさと本数を任意に組み合わせてプラントを構成することができる。ベンチスケールのユニットとしては、RUW−5A(日東電工(株))等が市販されている。
【0122】
本発明の製造方法では、溶媒除去に引き続き、得られた乳化物を濃縮化する工程を加えてもよい。濃縮方法としては、蒸発法、濾過膜法等溶媒除去と同じ方法、装置を用いることができる。濃縮の場合も限外濾過膜法が好ましい方法である。溶媒除去と同一膜を使うことができれば好ましいが、必要に応じて、分画分子量の異なる限外濾過膜を使用することもできる。また、溶媒除去とは異なる温度で運転し、濃縮効率を高めることも可能である。
【0123】
上記マイクロミキサーによる混合により得られた外用組成物(乳化物)は、水中油滴型エマルションである。本発明の外用組成物の製造方法では、前記乳化物の分散粒子の体積平均粒径(メジアン径)を、1nm〜100nmとするものである。得られた乳化物の透明性の観点から、より好ましくは1nm〜50nmである。
本発明の外用組成物の製造方法により得られた分散粒子の粒径は市販の粒度分布計等で計測することができ、その詳細は、既述のとおりである。
【0124】
<用途>
本発明の外用組成物は、セラミド化合物によるエモリエント効果に優れた微細なエマルション組成物である。このため、セラミド化合物の機能に応じた種々の用途に好ましく用いられる。
このような用途としては、例えば、医薬品(外用剤、皮膚製剤)、化粧品などに広く使用することができる。ここで、医薬品としては、坐剤、塗布剤等(皮膚外用剤)の非経口剤など、化粧品としてはスキンケア化粧料(化粧水、美容液、乳液、クリームなど)、日焼け止め化粧料、口紅やファンデーションなどのメークアップ化粧料などを挙げることができるが、これらに制限されるものではない。
本発明の外用組成物を、皮膚外用剤、化粧品に使用する場合、必要に応じて、医薬品、や化粧品に添加可能な成分を適宜添加することができる。
【0125】
本発明の外用組成物を、化粧水、美容液、乳液、クリームパック・マスク、パック、洗髪用化粧品、フレグランス化粧品、液体ボディ洗浄料、UVケア化粧品、防臭化粧品、オーラルケア化粧品等、鎮痛剤や消炎剤含有ゲル、消炎剤含有貼付剤の薬効成分含有層などの水性製品に使用した場合には、透明感のある製品が得られ、且つ、長期保存または滅菌処理などの苛酷条件下での不溶物の析出、沈殿またはネックリングなどの不都合な現象の発生を抑制することができる。
【実施例】
【0126】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0127】
(実施例1−A〜1−F、比較例1−G)
下記油相液1組成物に記載の各成分を室温にて1時間攪拌し、油相液1を調製した
<油相液1組成>
セラミド3〔セラミド化合物、具体例1−5〕 0.1g
セラミド6〔セラミド化合物、具体例1−7〕 0.1g
フィトスフィンゴシン 0.07g
エタノール〔水溶性有機溶媒〕 150g
1N塩酸 (分散直後のpHが7以下になるように調整)
【0128】
得られた油相液1(油相)と水(水相)を、1:7の比率(質量比)で、衝突型であるKM型マイクロミキサ100/100を用いてミクロ混合して、乳化物(セラミド分散組成物)1を得た。
なお、マイクロミキサーの使用条件は、下記のとおりである。
−マイクロチャンネル−
油相側マイクロチャンネル
断面形状/幅/深さ/長さ = 矩形/70μm/100μm/10mm
水相側マイクロチャンネル
断面形状/幅/深さ/長さ = 矩形/490μm/100μm/10mm
−流量−
外環に水相を21.0ml/min.の流量で導入し、内環に油相を3.0ml/min.の流量で導入してミクロ混合した。
【0129】
得られた乳化物(セラミド分散組成物)を大川原製作所 エバポール(CEP−lab)を使用し、エタノール濃度が0.1%以下になるまで、脱溶媒し、乳化物濃度が2.0%になるように濃縮、調整し、乳化物Aを得た。ここで言う乳化物濃度とは、油相に添加された固形分の総計を基準とした濃度である。
次に下記表1に記載の各成分を室温にて5時間攪拌し、添加液1−A〜1−Fを調製した。
得られた添加液1−A〜1−Fを50gとり、それぞれ油相液1から得られた乳化物(セラミド分散組成物)1 50gに添加して、マグネティックスターラーにより、300rpmで30分攪拌を行い、最終乳化物濃度1.0%の外用組成物1−A〜1−Fを得た。
また、乳化物(セラミド分散組成物)1 50gに対して水を50g加えて、比較外用剤1−Gを同じ方法で作製した。
【0130】
【表1】

【0131】
(実施例2−A〜2−F、比較例2−G)
下記成分を室温にて1時間攪拌し、油相液2を調製した。
セラミド3〔セラミド化合物、具体例1−5〕 0.1g
セラミド6〔セラミド化合物、具体例1−7〕 0.1g
フィトスフィンゴシン 0.03g
エタノール〔水溶性有機溶媒〕 150g
1N塩酸 (分散直後のpHが7以下になるように調整)
【0132】
次に下記表2に記載の各成分を室温にて5時間攪拌し、添加液2−A〜2−Fを調製した。(単位 g)
得られた油相液2(油相)と水相としての添加液2−A〜2−Fを、1:7の比率(質量比)で、衝突型であるKM型マイクロミキサ100/100を用いてミクロ混合して、外用剤組成物2−A〜−Fを得た。
また、油相液2に対して、上記各添加液に代えて水を50g加えた以外は、前記と同様にして比較外用剤2−Gを調製した。
なお、マイクロミキサーの使用条件は、下記のとおりである。
−マイクロチャンネル−
油相側マイクロチャンネル
断面形状/幅/深さ/長さ = 矩形/70μm/100μm/10mm
水相側マイクロチャンネル
断面形状/幅/深さ/長さ = 矩形/490μm/100μm/10mm
−流量−
外環に水相を21.0ml/min.の流量で導入し、内環に油相を3.0ml/min.の流量で導入してミクロ混合した。
得られた乳化物(セラミド分散組成物)を大川原製作所 エバポール(CEP−lab)を使用し、エタノール濃度が0.1%以下になるまで、脱溶媒し、乳化物濃度が1.0%になるように濃縮、調整し、実施例の外用組成物2−A〜2−F及び比較外用組成物2−Gを得た。
ここでいう乳化物濃度とは、油相に添加された固形分の総計を基準とした濃度である。
【0133】
【表2】

【0134】
<評価>
1.セラミド類縁体含有粒子の粒子径
調製直後の外用剤粗組成物中におけるセラミド類縁体含有粒子或いはそれを含む油相粒子の粒径を、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)を用いて測定した。
該粒子径の測定は、外用剤組成物をセラミド類縁体含有粒子の濃度が1質量%になるように純水で希釈を行い、石英セルを用いて行った。粒子径は、試料屈折率として1.600、分散媒屈折率として1.333(純水)、分散媒の粘度として純水の粘度を設定した時のメジアン径として求めることができる。
【0135】
2.サンプルの経時安定性の評価
経時安定性の評価として、濁度を用いて以下の方法で評価を行った。
実施例の外用組成物1−A〜1−F、2−A〜2−F及び比較外用組成物1−G、2−Gの各乳化組成物の調製直後の濁度を、UV−VIBLEスペクトルフォトメーターUV−2550(島津製作所製)を使用し、10mmセルにて600nmの吸光度として測定した。(温度25℃)
さらに、各サンプルを60℃の恒温槽に24時間保管し、次に4℃の冷蔵庫に24時間保管するという繰り返しを7サイクル(2週間)実施した後、25℃に戻して再度濁度を測定し、調製直後の濁度との差を比較し、以下の基準で評価した。結果を下記表3に示す。
×:濁度の変化が0.1以上(商品価値上不可)
△:濁度の変化が0.05〜0.1未満(商品価値上なんとか許容できる)
○:濁度の変化が0.01〜0.05未満(変化はわかるが商品価値上問題なし)
◎:濁度の変化が0.01未満(目視では、変化を認知し難い)
【0136】
【表3】

【0137】
前記表3に明らかなように、本発明の外用組成物は、含有されるセラミド類縁体含有粒子の粒子径が小さく、且つ、このような粒子の分散性、分散安定性に優れることがわかった。
なお、実施例1−A〜1−Fと実施例2−A〜2−Fとの対比において、油相、水相をそれぞれ別に調製し、その後、それらを混合して乳化する製造方法により得られた外用剤組成物において、本発明の効果がより向上していることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】マイクロミキサーの一例としてのマイクロデバイスの分解斜視図である。
【図2】T字型マイクロリアクターによる混合機構の一例を示すT字型マイクロリアクターの概略断面図である。
【図3】T字型マイクロリアクターによる混合機構の一例を示すT字型マイクロリアクターの概念図である。
【符号の説明】
【0139】
100 マイクロデバイス
102 供給要素
104 合流要素
106 排出要素
124 マイクロチャンネル
126 マイクロチャンネル
128 中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径0.001μm〜0.2μmのセラミド類縁体含有粒子と、水溶性高分子とを含有する外用組成物。
【請求項2】
さらに、前記セラミド類縁体とは異なる油成分を、前記セラミド類縁体含有粒子1質量部に対し、20質量部以下の量含有する請求項1に記載の外用組成物。
【請求項3】
前記セラミド類縁体含有粒子とは異なる油成分の含有量が、前記セラミド類縁体含有粒子1質量部に対し、10質量部以下である請求項2に記載の外用組成物。
【請求項4】
前記水溶性高分子が天然高分子である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の外用組成物。
【請求項5】
前記水溶性高分子がコラーゲン誘導体である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の外用組成物。
【請求項6】
前記コラーゲン誘導体の重量平均分子量が5000以下である請求項5に記載の外用組成物。
【請求項7】
前記水溶性高分子が多糖類である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の外用組成物。
【請求項8】
前記多糖類の重量平均分子量が10万以下である請求項7に記載の外用組成物。
【請求項9】
前記水溶性高分子がヒアルロン酸類である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の外用組成物。
【請求項10】
前記ヒアルロン酸類の重量平均分子量が30万以下である請求項9に記載の外用組成物。
【請求項11】
前記セラミド類含有粒子が、水溶性高分子の存在下で形成されたものである請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の外用組成物。
【請求項12】
水溶性高分子を含有する水相中においてセラミド類含有粒子を形成する工程を含む、セラミド類縁体含有粒子と、水溶性高分子とを含有する外用組成物の製造方法。
【請求項13】
前記水相の粘度が30mPa・s以下である請求項12に記載の外用組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−269882(P2009−269882A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123688(P2008−123688)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】